特許 6878732 支持・ドレネージ材、フィルタ、及び使用方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6878732

(24)【登録日】2021年5月7日

(45)【発行日】2021年6月2日

(54)【発明の名称】支持・ドレネージ材、フィルタ、及び使用方法

(51)【国際特許分類】

   B01D 29/07 20060101AFI20210524BHJP

【ＦＩ】

   B01D29/06 510D

【請求項の数】10

【外国語出願】

【全頁数】15

(21)【出願番号】特願2019-167297(P2019-167297)

(22)【出願日】2019年9月13日

(65)【公開番号】特開2020-104096(P2020-104096A)

(43)【公開日】2020年7月9日

【審査請求日】2019年9月13日

(31)【優先権主張番号】16/169,490

(32)【優先日】2018年10月24日

(33)【優先権主張国】US

(73)【特許権者】

【識別番号】596064112

【氏名又は名称】ポール・コーポレーション

【氏名又は名称原語表記】Ｐａｌｌ Ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎ

(74)【代理人】

【識別番号】100107456

【弁理士】

【氏名又は名称】池田 成人

(74)【代理人】

【識別番号】100162352

【弁理士】

【氏名又は名称】酒巻 順一郎

(74)【代理人】

【識別番号】100123995

【弁理士】

【氏名又は名称】野田 雅一

(72)【発明者】

【氏名】トーマス エム． ソレンセン

(72)【発明者】

【氏名】マーティン ツァイラー

(72)【発明者】

【氏名】ジェームズ エー． ベアー

【審査官】 青木 太一

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１４−０９７４９２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００７−０９８２３３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特表２００８−５４０１２０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ０１Ｄ ２４／００−３５／０５

Ｂ０１Ｄ ３５／１０−３７／０４

Ｂ０１Ｄ ３９／００−３９／２０

Ｂ０１Ｄ ４６／００−４６／５４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

要素を具備する支持・ドレネージ材であって、
第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに前記第１の端部から前記第２の端部へ延びると共に前記第１の端部から前記第２の端部にかけて深さが減る複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、
前記先細りした流れチャンネルが、平行に配置され及び前記第１の主表面から上方へ前記第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、前記先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、前記区域の前記第２の端部より前記区域の前記第１の端部で深い、支持・ドレネージ材。

【請求項2】

前記先細りした流れチャンネルが各々、連続する先細りを有する、請求項１に記載の支持・ドレネージ材。

【請求項3】

前記先細りした流れチャンネルが各々、少なくとも２つの段部を有する、請求項１に記載の支持・ドレネージ材。

【請求項4】

前記区域の前記第１の端部が、上方へ湾曲した端壁をさらに備える、請求項１〜３のいずれか一項に記載の支持・ドレネージ材。

【請求項5】

第１の支持・ドレネージ材と、別個の第２の支持・ドレネージ材とを具備する支持・ドレネージ材システムであって、
（ａ）前記第１の支持・ドレネージ材が、
（ｉ）第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに前記第１の端部から前記第２の端部へ延びると共に前記第１の端部から前記第２の端部にかけて深さが減る複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、
前記先細りした流れチャンネルが、平行に配置され及び前記第１の主表面から上方へ前記第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、前記先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、前記区域の前記第２の端部より前記区域の前記第１の端部で深く、
（ｂ）前記第２の支持・ドレネージ材が、
（ｉｉ）第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに前記第１の端部から前記第２の端部へ延びると共に前記第１の端部から前記第２の端部にかけて深さが減る複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、
前記先細りした流れチャンネルが、平行に配置され及び前記第１の主表面から上方へ前記第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、前記先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、前記区域の前記第２の端部より前記区域の前記第１の端部で深く、
前記第１の支持・ドレネージ材及び前記第２の支持・ドレネージ材が、プリーツ付きフィルタの両側に配置するのに適している、支持・ドレネージ材システム。

【請求項6】

複数のプリーツ並びに上流面及び下流面を有するプリーツ付き多孔質フィルタと、
前記プリーツ付き多孔質フィルタの前記上流面又は前記プリーツ付き多孔質フィルタの前記下流面に接触するように配置された請求項１〜４のいずれか一項に記載の支持・ドレネージ材と
を備えるフィルタ装置。

【請求項7】

複数のプリーツ並びに上流面及び下流面を有するプリーツ付き多孔質フィルタと、
請求項５に記載の支持・ドレネージ材システムと
を備え、前記プリーツ付き多孔質フィルタが、前記第１の支持・ドレネージ材と前記第２の支持・ドレネージ材との間に配置され、前記第１の支持・ドレネージ材及び第２の支持・ドレネージ材が、互いに対して１８０度反転している、フィルタシステム。

【請求項8】

前記プリーツ付き多孔質フィルタが、レイドオーバープリーツフィルタを備える、請求項７に記載のフィルタシステム。

【請求項9】

内側コア及び外側ケージをさらに備える、請求項７又は８に記載のフィルタシステム。

【請求項10】

請求項７〜９のいずれか一項に記載のフィルタシステムに流体を通すステップを含み、前記第１の支持・ドレネージ材、前記プリーツ付き多孔質フィルタの前記上流面、前記プリーツ付き多孔質フィルタの前記下流面、及び前記第２の支持・ドレネージ材に流体を通すことを含む、流体を濾過する方法。

【発明の詳細な説明】

【発明の背景】

【0001】

[0001]複数の濾過用途において、メッシュなどの支持・ドレネージ要素（スクリーン又はネッティングとも呼ばれる）が利用されており、支持・ドレネージ（「Ｓ＆Ｄ」）要素は、多孔質フィルタメディアの上流及び／又は下流に配置される。支持・ドレネージ要素は、フィルタメディアの孔よりはるかに大きい開口を有しており、フィルタメディアへの支持及び／又はフィルタメディアに対する良好な排水を提供する。

【0002】

[0002]しかし、改善された支持・ドレネージ要素が必要とされている。

【0003】

[0003]本発明は、従来技術の欠点のうちの少なくともいくつかを改良することを提供する。本発明の上記及びその他の利点は、以下に述べる説明から明らかになる。

【発明の概要】

【0004】

[0004]本発明の一実施形態は、要素を具備する支持・ドレネージ材を提供し、この要素は、第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに第１の端部から第２の端部へ延びる複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、先細りした流れチャンネルが、平行に配置され且つ第１の主表面から上方へ第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、区域の第２の端部より第１の区域の第１の端部で深くなっている。

【0005】

[0005]別の実施形態では、支持・ドレネージ材システムは、第１の支持・ドレネージ材及び第２の別個の支持・ドレネージ材を具備し、（ａ）第１の支持・ドレネージ材が、（ｉ）第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに第１の端部から第２の端部へ延びる複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、先細りした流れチャンネルが、平行に配置され且つ第１の主表面から上方へ第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、区域の第２の端部より区域の第１の端部で深く、（ｂ）第２の支持・ドレネージ材が、（ｉｉ）第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに第１の端部から第２の端部へ延びる複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、先細りした流れチャンネルが、平行に配置され且つ第１の主表面から上方へ第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、区域の第２の端部より区域の第１の端部で深く、第１の支持・ドレネージ材及び第２の支持・ドレネージ材が、プリーツ付きフィルタの両側に配置するのに適している。

【0006】

[0006]別の実施形態によれば、上流面及び下流面を有するプリーツ付き多孔質フィルタと、プリーツ付き多孔質フィルタの上流面又はプリーツ付き多孔質フィルタの下流面に接触するように配置された支持・ドレネージ材の一実施形態とを備えるフィルタ装置が提供される。

【0007】

[0007]本発明の別の実施形態によるフィルタシステムは、上流面及び下流面を有するプリーツ付き多孔質フィルタと、支持・ドレネージ材システムの一実施形態とを備え、プリーツ付き多孔質フィルタが、第１の支持・ドレネージ材と第２の支持・ドレネージ材との間に配置され、第１の支持・ドレネージ材及び第２の支持・ドレネージ材が、互いに対して１８０度反転しており、第１の支持・ドレネージ材と第２の支持・ドレネージ材との間にプリーツ付き多孔質フィルタが位置する。

【0008】

[0008]フィルタシステムの一実施形態では、プリーツ付き多孔質フィルタは、レイドオーバープリーツフィルタを備える。

【0009】

[0009]さらに別の実施形態では、流体を濾過する方法が提供され、この方法は、フィルタシステムの一実施形態に流体を通すステップを含み、第１の支持・ドレネージ材、プリーツ付き多孔質フィルタの上流面、プリーツ付き多孔質フィルタの下流面、及び第２の支持・ドレネージ材に流体を通すことを含む。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1A】平行な先細りした流れチャンネルを備える第１の区域を備える本発明の一実施形態による支持・ドレネージ材の正面図であり、先細りが連続している（階段状でない）ことを示している。

【図1B】平行な先細りした流れチャンネルを備える第１の区域を備える本発明の一実施形態による支持・ドレネージ材の上面図である。

【図1C】平行な先細りした流れチャンネルを備える第１の区域を備える本発明の一実施形態による支持・ドレネージ材の側面図である。

【図1D】平行な先細りした流れチャンネルを備える第１の区域を備える本発明の一実施形態による支持・ドレネージ材の斜視図である。

【図2A】平行な先細りした流れチャンネルを備える第１の区域を備える本発明の別の実施形態による支持・ドレネージ材の正面図であり、先細りが階段状であることを示している。

【図2B】平行な先細りした流れチャンネルを備える第１の区域を備える本発明の別の実施形態による支持・ドレネージ材の上面図である。

【図3A】図１Ａ〜図１Ｄに示す支持・ドレネージ材の実施形態を含む、本発明の一実施形態による平坦（まっすぐ）なプリーツ付きフィルタパックの正面図である（矢印は流れを示す）。

【図3B】図１Ａ〜図１Ｄに示す支持・ドレネージ材の実施形態を含む、本発明の一実施形態による平坦なプリーツ付きフィルタパックの上面図である。

【図3C】図１Ａ〜図１Ｄに示す支持・ドレネージ材の実施形態を含む、本発明の一実施形態による平坦なプリーツ付きフィルタパックの側面図である。

【図3D】図１Ａ〜図１Ｄに示す支持・ドレネージ材の実施形態を含む、本発明の一実施形態による平坦なプリーツ付きフィルタパックの斜視図である。

【図4A】図１Ａ〜図１Ｄに概略的に示す支持・ドレネージ材の実施形態を含むが、要素が湾曲している、本発明の一実施形態による湾曲したプリーツ付きフィルタパックの等角図である。

【図4B】図１Ａ〜図１Ｄに概略的に示す支持・ドレネージ材の実施形態を含むが、要素が湾曲している、本発明の一実施形態による湾曲したプリーツ付きフィルタパックの上面図である。

【図4C】図１Ａ〜図１Ｄに概略的に示す支持・ドレネージ材の実施形態を含むが、要素が湾曲している、本発明の一実施形態による湾曲したプリーツ付きフィルタパックの側面図である。

【図5】プリーツ付きフィルタがレイドオーバープリーツ（ＬＯＰ）構成を有する、フィルタケージ及びフィルタコア及びプリーツ付きフィルタを備えるフィルタカートリッジの一実施形態、並びにプリーツ付きフィルタの各プリーツ間に配置された、図４Ａ〜図４Ｃに概略的に示す個々の支持・ドレネージ材（インサート）の実施形態を示し、したがって各インサートの両面が各フィルタプリーツの面に接触し、インサートの湾曲した端壁が、ケージ及びコアに対して隔置することによってフィルタプリーツの根元及び頂上を保護することも示す、断面正面図である。

【図6A】従来の厚さが一定のＳ＆Ｄ材（左側）と本発明の一実施形態によるＳ＆Ｄ材（右側）とを比較して、プリーツ付きフィルタメディアの半プリーツを通っているフィルタメディアを横切る流体の流速と、上流及び下流の支持・ドレネージ（Ｓ＆Ｄ）材内の流体の流速との差を概略的に示す図である。

【図6B】先細りしたＳ＆Ｄ材と従来の厚さが一定のＳ＆Ｄ材とを比較して、プリーツ付きフィルタ内の最大フィルタ面積の例示的な利点を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

[0016]本発明の一実施形態によれば、要素を具備する支持・ドレネージ材が提供され、この要素は、第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに第１の端部から第２の端部へ延びる複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、先細りした流れチャンネルが、平行に配置され且つ第１の主表面から上方へ第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、区域の第２の端部より第１の区域の第１の端部で深い。

【0012】

[0017]支持・ドレネージ材の一実施形態では、先細りした流れチャンネルが各々、連続する先細りを有する。別の実施形態では、先細りした流れチャンネルが各々、少なくとも２つの段部を有する。

【0013】

[0018]支持・ドレネージ材のいくつかの実施形態では、区域の第１の端部は、上方へ湾曲した端壁をさらに備える。

【0014】

[0019]別の実施形態では、支持・ドレネージ材システムは、第１の支持・ドレネージ材及び第２の別個の支持・ドレネージ材を具備し、（ａ）第１の支持・ドレネージ材が、（ｉ）第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに第１の端部から第２の端部へ延びる複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、先細りした流れチャンネルが、平行に配置され且つ第１の主表面から上方へ第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、区域の第２の端部より区域の第１の端部で深く、（ｂ）第２の支持・ドレネージ材が、（ｉｉ）第１の端部及び第２の端部、並びに第１の主表面、並びに第１の端部から第２の端部へ延びる複数の平行な先細りした流れチャンネルを有する区域を備え、先細りした流れチャンネルが、平行に配置され且つ第１の主表面から上方へ第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁を備え、先細りした流れチャンネルが、より深い端部及びより浅い端部を有し、区域の第２の端部より区域の第１の端部で深く、第１の支持・ドレネージ材及び第２の支持・ドレネージ材が、プリーツ付きフィルタの両側に配置するのに適している。

【0015】

[0020]別の実施形態によれば、上流面及び下流面を有するプリーツ付き多孔質フィルタと、プリーツ付き多孔質フィルタの上流面又はプリーツ付き多孔質フィルタの下流面に接触するように配置された支持・ドレネージ材の一実施形態とを備えるフィルタ装置が提供される。

【0016】

[0021]本発明の別の実施形態によるフィルタシステムは、上流面及び下流面を有するプリーツ付き多孔質フィルタと、支持・ドレネージ材システムの一実施形態とを備え、プリーツ付き多孔質フィルタが、第１の支持・ドレネージ材と第２の支持・ドレネージ材との間に配置され、第１の支持・ドレネージ材及び第２の支持・ドレネージ材が、互いに対して１８０度反転している。

【0017】

[0022]フィルタシステムの一実施形態では、プリーツ付き多孔質フィルタは、レイドオーバープリーツフィルタを備える。別法又は追加として、フィルタシステムのいくつかの実施形態では、フィルタは、内側コア及び外側ケージをさらに備える。

【0018】

[0023]さらに別の実施形態では、流体を濾過する方法が提供され、この方法は、フィルタシステムの一実施形態に流体を通すステップを含み、第１の支持・ドレネージ材、プリーツ付き多孔質フィルタの上流面、プリーツ付き多孔質フィルタの下流面、及び第２の支持・ドレネージ材に流体を通すことを含む。

【0019】

[0024]支持・ドレネージ材は、フィルタメディア（プリーツ付き又はプリーツなし）の層同士の間に配置されたとき、支持及び均一の間隔を提供しながら（対向する表面の構造が互いに重なり合うのではなく互いの間に嵌合する入れ子状態を低減又は防止することを含む）、低減された沿層方向の流れ抵抗を呈し（したがって支持・ドレネージ材内の圧力降下が、フィルタ要素における圧力降下より小さくなる）、以てフィルタ要素の表面における流体の均等の分布及び低減された表面損失を提供することが有利な点である。

【0020】

[0025]プリーツ付きフィルタとともに使用されるとき、支持・ドレネージ材は、フィルタメディアの損傷（特に、膜の損傷）を低減させ、より均一の流れ分布（フィルタのプリーツ付き先端を通る流れを含む）を可能にし、安定したプリーツパックを提供することができる。

【0021】

[0026]さらに、プリーツ付きフィルタとともに使用されるとき、先細りした材料を使用することで、全体的により細いプリーツピッチが得られ、所与の体積につきより多くのフィルタ材を得ることを可能にしながら、望ましい差圧を維持し、濾過効率を改善することができる。

【0022】

[0027]さらに、局所流量が必要な流れ面積に相関しないために無駄になる面積があることを本発明者らが見出した従来の厚さが一定の支持・ドレネージ要素とは対照的に、本発明の支持・ドレネージ材は、局所流量を必要な流れ面積により良好に整合させることができることが有利な点である。

【0023】

[0028]例証として、図６Ａは、従来の厚さが一定のＳ＆Ｄ材（左側）と本発明の一実施形態によるＳ＆Ｄ材（右側）とを比較して、プリーツ付きフィルタメディアの半プリーツを通っているフィルタメディアを横切る流体の流速と、上流及び下流の支持・ドレネージ（Ｓ＆Ｄ）材内の流体の流速との差を概略的に示す。局所流量が必要な流れ面積に相関しないために面積が無駄になり、速度が変動する可能性がある、従来の厚さが一定のＳ＆Ｄ要素とは対照的に、本発明のＳ＆Ｄ材は、局所流量を必要な流れ面積により良好に整合させ、速度を一定に保つことができることが有利な点である。図６Ｂは先細りしたＳ＆Ｄ材と従来の厚さが一定のＳ＆Ｄ材とを比較して、プリーツ付きフィルタ内の最大フィルタ面積の例示的な利点を示し、ここで水平軸線上の「０」は、Ｓ＆Ｄ材が極小に薄く、Ｓ＆Ｄ材を先細りさせることによってフィルタ面積を増大させる可能性がないことを示し、水平軸線上の「１」は、フィルタ材が極小に薄く、この場合、フィルタ面積を２倍に増大させることができることを示す。図６Ｂは、Ｓ＆Ｄ材の一端がゼロの厚さまで先細りする限界内で実現することができる最大値を示唆しており、実際の状況はこの曲線を下回る。

【0024】

[0029]支持・ドレネージ材は、平坦若しくは平面、又は実質上平坦若しくは平面とすることができ、いくつかの実施形態では、支持・ドレネージ材は湾曲しており、又は湾曲させることができる。

【0025】

[0030]本発明の実施形態は、フラットプリーツフィルタパック、直流螺旋フィルタ、積層型ディスクフィルタ、直交流カセットを含む様々なフィルタ構成とともに使用するのに適しており、「レイドオーバープリーツ」（ＬＯＰ）フィルタ構成（たとえば、米国特許第５，５４３，０４７号に記載）に特に適している。

【0026】

[0031]本発明の各構成要素について、以下でより詳細に次に説明し、同様の構成要素は同様の参照番号を有する。上流及び下流のＳ＆Ｄ材がそれぞれ同じ構成要素で示されている場合、対応する構成要素は、類似の参照番号とそれに続く「’」によって識別される（たとえば、２００’は２００に対応し、１２１’は１２１に対応し、１６１’は１６１に対応し、以下同様である）。

【0027】

[0032]図１Ａ〜図１Ｄ、図２Ａ〜図２Ｂに示す実施形態によれば、支持・ドレネージ材２００が、要素１００を具備し、要素１００は、第１の端部１５１及び第２の端部１５２、第１の主表面１１０、第２の主表面１１１、並びに第１の端部から第２の端部へ延びる複数の平行な先細りした流れチャンネル１２０を有する少なくとも１つの第１の区域１５０を備え、先細りした流れチャンネルが、平行に配置され且つ第１の主表面から上方へ第１の主表面に直交して突出する先細りした側壁１２１を備え、先細りした流れチャンネルが、より深い端部１３１及びより浅い端部１３２を有し、第１の区域の第２の端部より第１の区域の第１の端部で深い。図示の実施形態では、チャンネル１２０は、第１の端部１５１で交差部材１４１によって連結され、第２の端部１５２で交差部材１４２によって連結される。

【0028】

[0033]図１Ａ〜図１Ｄに示す実施形態では、先細りした側壁１２１は、階段状でない（連続する）先細りを有する。

【0029】

[0034]図２Ａ〜図２Ｂに示す実施形態では、先細りした側壁は、異なる高さの段部を備え、また異なる深さの先細りした流れチャンネルを提供する。図２Ａ及び図２Ｂは、３つの段部を示し、側壁の段部１２１ａ、１２１ｂ、及び１２１ｃ、が順次高さを減らし、１２１ａが最大の高さを有する。それに対応して、先細りした流れチャンネルが、順次深さを減らす３つの段部１２０ａ、１２０ｂ、及び１２０ｃを有し、１２０ａが最大の深さを有することが示されている。支持・ドレネージ材は、任意の数の段部を有することができる。別法として、側壁及び流れチャンネルは、連続する先細り、又は連続及び階段状の組合せを有することができる。

【0030】

[0035]典型的には、支持・ドレネージ材がプリーツ付きフィルタとともに使用されるそれらの実施形態の場合、第１の端部は、上向きの、好ましくは上方へ湾曲している端壁１６１を有する。上向きの端壁は、フィルタプリーツの根元及び／又は頂上（たとえば、図５に示す）を保護し、たとえば損傷を低減させながら、流体流が通ることを可能にすることができることが有利な点である。

【0031】

[0036]支持・ドレネージ材の実施形態は、少なくとも１つの多孔質フィルタ要素を備える多孔質フィルタの上流及び／又は下流に配置することができる。いくつかの実施形態では、支持・ドレネージ要素は、上流の支持・ドレネージ要素及び下流の支持・ドレネージ要素を備える支持・ドレネージ要素システムを備える。

【0032】

[0037]湾曲した又は湾曲可能な支持・ドレネージ材を有する実施形態が、ＬＯＰフィルタ構成（たとえば、米国特許第５，５４３，０４７号に記載）に特に適している。たとえば、図５の断面正面図は、外側フィルタケージ１６１０、内側コア１６１１、及びプリーツ付きフィルタメディア１５０１を備えるプリーツ付きフィルタ１５００を備えるフィルタカートリッジ１６００を備え、プリーツ付きフィルタがＬＯＰ構成を有する、フィルタシステム２０００の一実施形態、並びにプリーツ付きフィルタの各プリーツ間に配置された図４Ａに概略的に示す個々の支持・ドレネージ材２００、２００’（インサート）の実施形態（第１の支持・ドレネージ材２００及び第２の支持・ドレネージ材２００’は、互いに対して１８０度反転している（Ｓ＆Ｄ要素システム２５００の一実施形態を提供する））を示し、したがって各インサート要素１００、１００’の両面（表面１１０、１１０’、及び１１１、１１１’）が、各フィルタプリーツの面に接触し、それぞれのインサートの外側先端を含む湾曲した端壁が、ケージの内面又は内側コアの内面に接触し、プリーツ先端又はプリーツ根元をケージ又はコアから隔置し、したがってプリーツ先端又はプリーツ根元を保護しながら、流体流が通ることを可能にする。

【0033】

[0038]上述したように（たとえば、図３Ａ〜図３Ｄ、図４Ａ〜図４Ｃ、及び図５に示す）、好ましくは、支持・ドレネージ材の実施形態は、多孔質フィルタ又は多孔質フィルタ要素の上流及び下流に別個に配置され、フィルタ又はフィルタ要素は、上流面及び下流面を有し、いくつかの実施形態では、支持・ドレネージ材はそれぞれ、フィルタ又はフィルタ要素の上流及び下流面に接触する。

【0034】

[0039]Ｓ＆Ｄ要素システムの実施形態に関して、図３Ａ〜図３Ｄ、図４Ａ〜図４Ｃ、及び図５に示す配置において、上流の支持・ドレネージ材及び下流の支持・ドレネージ材は、互いに対して１８０度反転しており、上流の支持・ドレネージ材と下流の支持・ドレネージ材との間にフィルタメディアが位置する。これにより、流速をフィルタ又はフィルタ要素を通る必要な流量に整合させることを可能にすることが有利な点である。

【0035】

[0040]例証として、図３Ａ〜図３Ｄ及び図４Ａ〜図４Ｃは、上流Ｓ＆Ｄ要素２００（図１Ａ〜図１Ｄに概略的に示す）と、下流Ｓ＆Ｄ要素２００’（図１に示すものに類似し、対応する構成要素は、類似の参照番号とそれに続く「’」によって識別される）との間に配置された少なくとも１つのプリーツ付き多孔質フィルタ要素１５０１を備えるプリーツ付き多孔質フィルタ１５００を備えるフィルタシステム２０００を示し、要素２００及び２００’は、Ｓ＆Ｄ要素システム２５００を備える。図３Ａ〜図３Ｄに示す実施形態では、Ｓ＆Ｄ要素は実質上平面であり、図４Ａ〜図４Ｃに示す実施形態では、Ｓ＆Ｄ要素は湾曲している。

【0036】

[0041]支持・ドレネージ材は、濾過される流体及び温度などの該当する濾過パラメータに適した任意の適した材料から製作することができる。

【0037】

[0042]支持・ドレネージ材は、たとえば、積層造形（「積層製造」又は「３Ｄ印刷」と呼ばれることもある）を含む当技術分野で周知の様々な方法によって作製することができる。

【0038】

[0043]多孔質フィルタ及び／又は多孔質フィルタ要素（たとえば、多孔質膜及び／又は多孔質の繊維メディア）は、任意の適した孔構造、たとえば孔径（たとえば、泡立ち点、若しくはたとえば米国特許第４，３４０，４７９号に記載のＫ_Ｌ、又は毛管凝縮流れ特性によって明らかである）、気孔率、孔直径（たとえば、米国特許第４，９２５，５７２号に記載の修正ＯＳＵ Ｆ２試験を使用して特徴付けられる）、又は流体が要素を通過するときに１つ又は複数の当該物質の通過を低減若しくは許可する除去率を有することができる。使用される孔構造は、処理すべき流体の組成及び処理済み流体の所望の廃水レベルに依存する。

【0039】

[0044]フィルタ要素は、任意の所望の臨界濡れ表面張力（ＣＷＳＴ、たとえば米国特許第４，９２５，５７２号に定義されている）を有することができる。ＣＷＳＴは、たとえば当技術分野で知られているように、たとえば米国特許第５，１５２，９０５号、第５，４４３，７４３号、第５，４７２，６２１号、及び第６，０７４，８６９号にさらに開示されているように選択することができる。要素の表面特性は、湿式若しくは乾式酸化、表面へのポリマーの被覆若しくは堆積、又はグラフト反応によって修正することができる（たとえば、ＣＷＳＴに影響を及ぼすように、表面電荷、たとえば正若しくは負の電荷を含むように、及び／又は表面の極性若しくは親水性を変えるように）。

【0040】

[0045]フィルタは、追加の要素、層、又は構成要素を含むことができ、追加の要素、層、又は構成要素は、異なる構造及び／又は機能、たとえばフィルタメディアの上流における前濾過（プレフィルトレーション）及び／又は緩衝（損傷保護のためのフィルタメディアの上流における緩衝又は損傷保護及び／若しくはメディア支持のためのフィルタメディアの下流における緩衝）を有することができる。

【0041】

[0046]本発明の実施形態によれば、フィルタ及び／又はフィルタ要素は、平面、プリーツ付き、及び中空円筒形を含む様々な構成を有することができる。

【0042】

[0047]プリーツ付きフィルタを含む例示的なフィルタ及びフィルタ要素は、米国特許第５，５４３，０４７号及び第５，５５２，０４８号に開示されている。

【0043】

[0048]複数のフィルタ要素を備えるいくつかの実施形態では、フィルタは典型的に、少なくとも１つの入口及び少なくとも１つの出口を備え、入口と出口との間に少なくとも１つの流体流路を画定するハウジング内に配置され、フィルタは、流体流路を横切って配置され、フィルタデバイスを形成する。フィルタデバイスは、滅菌可能であることが好ましい。少なくとも１つの入口及び少なくとも１つの出口を設けるのに適した形状の任意のハウジングを用いることができる。

【0044】

[0049]ハウジングは、処理される流体に適合している任意の不浸透性の熱可塑性材料を含む任意の適した剛性の不浸透性材料から製作することができる。たとえば、ハウジングは、ステンレス鋼などの金属又はポリマーから製作することができる。

【0045】

[0050]本明細書に引用した公開、特許出願、及び特許を含むあらゆる参照文献は、各参照文献が参照により組み込まれており、全体として本明細書に記載されると個別且つ具体的に示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。

【0046】

[0051]本発明を説明する文脈（特に以下の特許請求の範囲の文脈）において、「ａ」及び「ａｎ」及び「ｔｈｅ」及び「少なくとも１つ（ａｔ ｌｅａｓｔ ｏｎｅ）」という用語並びに類似の指示語の使用は、本明細書に別途指示しない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されたい。「少なくとも１つ（ａｔ ｌｅａｓｔ ｏｎｅ）」という用語と、それに続く１つ又は複数の項目の一覧の使用（たとえば、「Ａ及びＢのうちの少なくとも１つ（ａｔ ｌｅａｓｔ ｏｎｅ ｏｆ Ａ ａｎｄ Ｂ）」）は、本明細書に別途指示しない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、列挙された項目から選択された１つの項目（Ａ又はＢ）又は列挙された項目の２つ以上のあらゆる組合せ（Ａ及びＢ）を意味すると解釈されたい。「具備する、備える、含む、構成する（ｃｏｍｐｒｉｓｉｎｇ）」、「有する（ｈａｖｉｎｇ）」、「含む（ｉｎｃｌｕｄｉｎｇ）」、及び「含む（ｃｏｎｔａｉｎｉｎｇ）」という用語は、別途記載しない限り、オープンエンド（ｏｐｅｎ−ｅｎｄｅｄ）の用語であると解釈されたい（すなわち、「〜を含むが、それだけに限定されるものではない（ｉｎｃｌｕｄｉｎｇ， ｂｕｔ ｎｏｔ ｌｉｍｉｔｅｄ ｔｏ）」を意味する）。本明細書における値の範囲の記述は、本明細書に別途指示しない限り、その範囲内に入るそれぞれ別個の値を個別に参照する簡潔な方法として働くことのみを意図したものであり、それぞれ別個の値は、本明細書に個別に記述された場合と同様に、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載するあらゆる方法は、本明細書に別途指示しない限り、又はそうでない場合、文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適した順序で実行することができる。本明細書に提供されるあらゆる例又は例示的な言語（たとえば、「など（ｓｕｃｈ ａｓ）」）の使用は、別途記載しない限り、本発明にさらに光をあてることのみを意図したものであり、本発明の範囲に限定を加えるものではない。本明細書におけるいずれの言語も、記載されていない要素が本発明の実施に本質的であることを示すと解釈されるべきではない。

【0047】

[0052]本発明を実施する本発明者らには知られている最良の形態を含めて、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形例は、上記の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者であれば、そのような変形例を適当に用いることを予期し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載した以外の方法で本発明が実施されることも意図する。したがって、本発明は、準拠法によって認められる添付の特許請求の範囲に記載の主題のあらゆる修正例及び均等物を含む。さらに、本明細書に別途指示しない限り、又はそうでない場合、文脈に明らかに矛盾しない限り、本発明のあらゆる可能な変形例における前述の要素のあらゆる組合せが、本発明によって包含される。

【符号の説明】

【0048】

１００ 要素
１１０ 第１の主表面
１１１ 第２の主表面
１２０ 流れチャンネル
１２０ａ 段部
１２０ｂ 段部
１２０ｃ 段部
１２１ 先細りした側壁
１２１ａ 段部
１２１ｂ 段部
１２１ｃ 段部
１３１ より深い端部
１３２ より浅い端部
１４１ 交差部材
１４２ 交差部材
１５０ 第１の区域
１５１ 第１の端部
１５２ 第２の端部
１６１ 端壁
２００ 支持・ドレネージ材、第１の支持・ドレネージ材
２００’ 支持・ドレネージ材、第２の支持・ドレネージ材
１５００ プリーツ付きフィルタ
１５０１ プリーツ付きフィルタメディア
１６１０ 外側フィルタケージ
１６１１ 内側コア
２０００ フィルタシステム
２５００ Ｓ＆Ｄ要素システム

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図5】

【図6A】

【図6B】