(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「〜」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る広告表示化粧板10の構造を例示する断面図である。広告表示化粧板10は、化粧シート12を備え、広告媒体に対して脱着可能に構成されている。化粧シート12は、表面または内部に印刷部121を含み、広告表示化粧板10の第1面101側から広告コンテンツの少なくとも一部が視認可能に構成されている。以下に詳しく説明する。
【0014】
本実施形態に係る広告表示化粧板10は、広告媒体に取り付けられて広告コンテンツを表示する。広告表示化粧板10は広告媒体に脱着可能に構成されていることで、広告期間が終了した場合には広告媒体から取り外される。広告媒体は建物の内壁や柱、家具の表面等である。ここで、建物の内壁としてはたとえば具体的には部屋や通路、エレベータ等の内壁が挙げられる。
【0015】
広告コンテンツは、文字、写真、図形、記号等を適宜組み合わせて構成され、一連の広告内容を示している。広告コンテンツは、なかでも文字を含むことが好ましい。
【0016】
本実施形態において広告表示化粧板10は、化粧シート12、接着層13、およびマグネット層14を備える。ただし、広告表示化粧板10は広告媒体に脱着可能に構成されていればよく、マグネット層14を備えていなくてもよい。その場合、広告表示化粧板10はたとえば化粧シート12の第2面102側に、広告媒体または化粧シート12に対して剥離可能な接着層を備えていてもよい。第2面102とは、広告表示化粧板10の主面のうち、第1面101とは反対側の面である。
【0017】
化粧シート12の構造は特に限定されないが、本実施形態において広告表示化粧板10は表面層120および芯材層129を含む。化粧シート12は、たとえばメラミン系樹脂、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、および(メタ)クリル樹脂により構成される群から選択される一以上の樹脂を含んで構成される。
【0018】
本図の例において表面層120は芯材層129と接している。さらに表面層120は、印刷基材122、印刷部121、第1樹脂層123、および第2樹脂層124を含んで構成されている。広告表示化粧板10の第1面101には、表面層120が露出している。
【0019】
広告表示化粧板10は全体として可撓性を有することが好ましい。そうすれば湾曲した広告媒体にも固定することができる。具体的には広告表示化粧板10は、25℃において10mmの曲げ半径で湾曲させたとき、亀裂が生じない程度の可撓性を有することが好ましい。
【0020】
化粧シート12は、広告コンテンツを表示する部分である。化粧シート12は、第1面101側から印刷部121、すなわち印刷された広告コンテンツを視認可能に構成されている。
【0021】
表面層120は、たとえば広告面となる第1面101側にメラミン樹脂を含有する樹脂(第1樹脂層123)を担持し、芯材層129と接する第2面102側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分(第2樹脂層124)を担持する印刷基材122からなる表面層材料で構成される。以下に詳しく説明する。
【0022】
印刷基材122は、たとえばパルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維である。また、印刷基材122は、酸化チタンなどの顔料を含有する酸化チタン含有化粧紙であってもよい。
【0023】
印刷部121は、広告コンテンツを示す。印刷部121は印刷により印刷基材122に担持されたインクである。印刷部121は、印刷基材122の表面に層状に形成されていてもよいし、少なくとも一部が印刷基材122に含浸していてもよい。印刷法は、特に限定されないが、グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等を用いることができる。
【0024】
第1樹脂層123は、樹脂(A)を含む層であり、印刷基材122の第1面101側に位置する透明な層である。樹脂(A)は、メラミン系樹脂を含む。樹脂(A)は中でもメラミン樹脂を含むことが好ましい。これにより、化粧シート12の表面に好適な硬度を付与することができ、広告表示化粧板10の耐久性を高めることができる。本図の例において、広告表示化粧板10の第1面101には、第1樹脂層123が露出している。
【0025】
メラミン樹脂としては、特に限定されず、例えば、メラミンとホルムアルデヒドを中性または弱アルカリ下において反応させて得られるものを用いることができる。
【0026】
また、メラミン樹脂としては、住友化学(株)製のメラミン樹脂等、市販のものを用いることもできる。
【0027】
樹脂(A)を印刷基材122の第1面101側に担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂(A)を溶媒に溶解した樹脂ワニスを、例えば、スプレー装置、シャワー装置、キスコーター、コンマコーター等の装置を用いて塗工した後、80〜130℃程度で加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0028】
樹脂(A)を溶解する溶剤としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール等が挙げられる。中でも水が好ましい。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。樹脂ワニスの固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、樹脂ワニスの30〜70質量%であるのが好ましく、45〜60質量%であるのがより好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を向上できる。
【0029】
第2樹脂層124は、樹脂(B)を含む層である。樹脂(B)は、たとえば熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分である。なお、本明細書中おいて、熱可塑性エマルジョン樹脂とは、熱可塑性樹脂を含むが溶剤に分散してエマルジョン状態となったものである。また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分とは、熱可塑性エマルジョン樹脂から溶剤を除いた成分を意味する。
【0030】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、エマルジョン樹脂粒子として存在する成分を含み、金属や各種素材との接着特性を有し、化粧シート12に柔軟性を付与する。したがって、表面層120の第2面102側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が担持されることにより、表面層120と芯材層129との接着強度を向上させることができるとともに、化粧シート12の曲げ加工性を向上させることができる。
【0031】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、たとえば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体、ウレタンアクリル複合粒子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等の熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子が挙げられる。これらの中でもウレタンアクリル複合粒子が好ましい。本明細書中において、ウレタンアクリル複合粒子とは、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するものを意味する。
【0032】
ウレタン樹脂とアクリル樹脂は、各々が芯材層129との接着強度が高いため、ウレタンアクリル複合粒子を用いることで、芯材層129との良好な接着強度を発現することができる。さらに、ウレタン樹脂は、特に強靭性、弾性、柔軟性に優れ、アクリル樹脂は、特に透明性、耐久性、耐候性、耐薬品性、造膜性に優れる。
【0033】
また、本明細書中において「異相構造」とは、1個の粒子内に異なる種類の樹脂からなる相が複数存在する構造を意味し、例えば、コアシェル構造、局在構造、海島構造等が挙げられる。
【0034】
なお、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、これらの中の1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
【0035】
また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分には、上記熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子以外にも、必要に応じて少量の増粘剤、浸透促進剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
【0036】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、平均粒径が30〜100nmのエマルジョン樹脂粒子を含むことが好ましく、エマルジョン樹脂粒子の平均粒径は、60〜90nmであることがより好ましい。これにより、表面層基材の繊維間への含浸性が向上し、より表面層基材の内部に含浸させることができるため、表面層120に良好な柔軟性を付与することができる。
【0037】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を印刷基材122の第2面102側に担持させる方法としては、特に限定されず、樹脂(A)を印刷基材122の第1面101側に担持させる上述の方法と同様にして行うことができる。つまり、溶剤に溶解されたエマルジョン状態の熱可塑性エマルジョン樹脂を塗工、加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0038】
熱可塑性エマルジョン樹脂に用いられる溶剤としては、特に限定されず、例えば、水等が挙げられる。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、熱可塑性エマルジョン樹脂の25〜60質量%であるのが好ましく、30〜45質量%であるのがより好ましい。これにより、熱可塑性エマルジョン樹脂の基材への含浸性を向上できる。
【0039】
なお、第1樹脂層123および第2樹脂層124は単独で層を形成していなくてもよい。すなわち、樹脂(A)および樹脂(B)は印刷基材122に担持されていればよい。ここで、印刷基材122が樹脂を担持するとは、樹脂が基材(担体)の表面に付着し、または、基材内部の空隙部に含浸され、表面層材料の成形後に担持させた樹脂の性能を発現することを可能にする状態であることを意味する。第1樹脂層123および第2樹脂層124はたとえば、表面層120において層状の分布を有している。なお、樹脂は、基材の表面および基材の内部に均一に分布していなくてもよい。
【0040】
芯材層129は、たとえばガラスクロス、またはガラスクロスを基材とするプリプレグを含んで構成されている。これにより、化粧シート12に、耐熱性、不燃性、剛性などを付与することができる。
【0041】
芯材層129の厚みは、50μm以上とすることが好ましい。これにより、化粧シート12に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほど化粧シート12の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、350μm以下にすることが好ましい。
【0042】
マグネット層14は、化粧シート12の第2面102側に固定されている。広告表示化粧板10がマグネット層14を備えることにより、表面または内部に磁性体を含む広告媒体に脱着可能に取り付けることができる。広告表示化粧板10が広告媒体に十分強く固定されるためにマグネット層14の磁束密度は20mT以上であることが好ましい。
【0043】
マグネット層14は、磁石粉末をバインダー(結合樹脂)で結合してなる層である。磁石粉末は、優れた磁気特性を有するものが好ましい。このような磁石粉末としては、例えば、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)を含む合金、特にR(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただし、TMは、遷移金属のうちの少なくとも1種)とB(ボロン)とを含む合金が挙げられる。
【0044】
バインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66、ナイロン6T、ナイロン9T)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでもよい。
【0046】
マグネット層14の厚さ(平均厚さ)は、審美的な観点から適宜変更されるが、0.15〜6mmであるのが好ましく、0.6〜2mmであるのがより好ましい。マグネット層14の大きさ・形状は、広告表示化粧板10の形状等によって適宜変更することができる。
【0047】
マグネット層14は、接着層13により化粧シート12に固定されている。接着層13は特に限定されないが、たとえば、主として粘着剤で構成されている。この粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を挙げることができる。
【0048】
アクリル系粘着剤としては、粘着性を与える低Tgの主モノマー成分、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマー成分、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体よりなる。
【0049】
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。
【0050】
コモノマー成分としてはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0051】
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0052】
また、ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、イソプレンゴム系、スチレン−ブタジエン系、再生ゴム系、ポリイソブチレン系のものや、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン等のゴムを含むブロック共重合体を主とするもの等を挙げることができる。
【0053】
また、シリコーン系粘着剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系、ジフェニルシロキサン系のもの等を挙げることができる。
【0054】
以上のような粘着剤は、非架橋型、架橋型のいずれのものも使用可能である。後者の場合、必要に応じ、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアナート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等が挙げられる。このような粘着剤は、有機溶剤系、エマルション系のいずれでもよい。
【0055】
また、接着層13には、例えば、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、充填材、老化防止剤、防腐剤、防カビ剤、染料、顔料等の各種添加剤が必要に応じ添加されていてもよい。
【0056】
なお、芯材層129に接着剤が含浸されている場合等、芯材層129が接着層13を兼ねていても良い。
【0057】
広告表示化粧板10の第1面101の表面粗さRaは5μm以下であることが好ましい。また、広告表示化粧板10の第1面101において、波長550nmの光の入射角45°での反射率が、受光角0°以上70°以下の範囲にわたり40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。そして、広告表示化粧板10の第1面101において、波長440nm、550nm、および700nmの各光の入射角45°での反射率がいずれも、受光角0°以上70°以下の範囲にわたり40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。そうすれば、広告表示化粧板10に表示された広告を特に視認しやすくなる。具体的には、見る角度による色味の違いが出にくくなったり、また、色のコントラストが認識しやすくなったりする。ここで、波長440nmの光は赤色の光であり、波長550nmの光は緑色の光であり、波長700nmの光は青色の光である。
【0058】
なかでも広告表示化粧板10が文字コンテンツを表示している場合、第1面101の表面粗さRaは0.3μm以上5μm以下であることが好ましい。そうすれば、第1面101の光沢を抑え、特に色のコントラストが視認しやすくなることで、広告表示化粧板10を見る人に文字情報が認識されやすくなるとともに、表面の凹凸が大きすぎることによって文字が見にくくなることがない。
【0059】
一方、広告表示化粧板10が図形や写真を表示している場合には、第1面101の表面粗さRaは0.3μm以下であることが好ましい。そうすれば広告表示化粧板10の第1面101に、適度な光沢をもたせ、広告表示化粧板10を見る人にインパクトを与えることができる。
【0060】
広告表示化粧板10の第1面101の表面粗さや反射率は、たとえば第1面101を構成する層を、所定の凹凸パターンを付したロール等で加圧成型することで調整できる。
【0061】
化粧板を単に内装の壁紙として用いる場合には意匠性のみを重視すればよいのに対し、広告表示化粧板10では、上記のように、単なる意匠性、審美性とは異なった観点で広告コンテンツの内容に対応した表面形状等を有することが好ましい。
【0062】
広告表示化粧板10の製造方法について以下に説明する。広告表示化粧板10は、化粧シート12に接着層13を介してマグネット層14を固定することにより形成される。具体的には、化粧シート12に接着層13を構成する粘着剤等を塗布し、マグネット層14を積層する。ただし、粘着剤を塗布したマグネット層14を化粧シート12に積層してもよい。
【0063】
化粧シート12は、表面層120と芯材層129とを重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。また、化粧シート12の成形時に、所定の板材を重ねることにより、広告表示化粧板10の第1面101の表面粗さや光の反射率等を調整することができる。
【0064】
表面層120は、以下の様にして得られる。まず、印刷基材122に広告コンテンツを印刷することにより印刷部121を形成する。次いで、印刷部121を設けた印刷基材122の一方の面に第1樹脂層123を形成し、他方の面に第2樹脂層124を形成する。
【0065】
なお、広告表示化粧板10の製造方法は上記した方法に限定されない。たとえば、必要に応じて担体フィルムを使用してもよい。担体フィルムは製造時においていずれかの層を保護したり、製造を容易にしたりするために用いられる。担体フィルムは、その後除去されることにより、広告表示化粧板10には含まれない。
【0066】
図2は、本実施形態に係る広告表示化粧板10の施工方法を説明するための図である。本施工方法では、上述したような広告表示化粧板10を、広告媒体に対して脱着可能に固定する。以下に詳しく説明する。
【0067】
本図では、広告表示化粧板10を、エレベータの内壁に対して固定する例を示している。特に、複数の広告表示化粧板10a,10b,10c,10dを、並べて固定している。広告表示化粧板10のサイズは内壁のサイズに合わせて調整され、内壁は複数の広告表示化粧板10によりほぼ全体が覆われている。このように複数の広告表示化粧板10を用いることにより、一枚の広告表示化粧板10のみで覆う場合よりも広告表示化粧板10の製造や運搬、施工が容易になる。この場合、一つの広告コンテンツが複数に分割されて各広告表示化粧板10に表示されてもよい。すなわち、複数の広告表示化粧板10の組み合わせによりひとつの広告コンテンツが構成されていてもよい。なお、一つの広告媒体に複数の広告コンテンツ(たとえば広告主が互いに異なる)が表示されても良い。また、必ずしも内壁の全体が広告表示化粧板10で覆われていなくても良い。
【0068】
図3は、
図2の破線で示す領域を拡大して示す図である。本図の例では複数の広告表示化粧板10を、互いに離間させた状態で並べて固定している。化粧シート12が紙などを含む場合、吸湿により膨張が生じることがある。それに対し、このように複数の広告表示化粧板10を互いに離間させて施工することにより、膨張に起因する広告表示化粧板10の位置ずれや浮き上がりを防止することができる。ただし、広告表示化粧板10が紙などを含まない構造の場合など、複数の広告表示化粧板10は互いに接触させた状態で固定してもよい。
【0069】
また、複数の広告表示化粧板10は、第1の広告表示化粧板10aと、第1の広告表示化粧板10aとは表面粗さRaが異なる第2の広告表示化粧板10bとを含んでもよい。たとえば文字コンテンツを表示している面積が大きい広告表示化粧板10ほど、第1面101の表面粗さRaを大きくすることが好ましい。そうすれば、第1面101の光沢を抑え、広告表示化粧板10を見る人に文字情報が認識されやすくなる。
【0070】
本実施形態に係る広告表示化粧板10の施工方法によれば、表面または内部に印刷部121を含み、第1面101側から広告コンテンツの少なくとも一部が視認可能に構成された化粧シート12を備える広告表示化粧板10を複数含み、複数の広告表示化粧板10が広告媒体に対して脱着可能に固定されている広告体が得られる。
【0071】
なお、印刷部121が化粧シート12の内部に位置する例について上述したが、印刷部121は化粧シート12の第1面101側の表面に位置していてもよい。
【0072】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、広告表示化粧板10は建物の内壁や家具等の内壁材であると共に、単体又は複数で耐久性、審美性に優れた広告体として機能しうる。
【0073】
また、広告表示化粧板10が広告媒体に対して脱着可能に構成されていることにより、広告期間の終了時に容易に交換できる。
【0074】
さらに、本実施形態に係る広告表示化粧板10によれば、化粧板の施工コストを広告費でまかなうこともできる。具体的には、エレベータ等の内壁が老朽化して新しい化粧板を施工したい場合、施工費が必要となる。ここで、本実施形態のような広告表示化粧板を施工すれば、施工主は広告主から広告費を徴収でき、それを施工費にあてることができる。したがって、施工主は少ない費用負担で内装の審美性を高めることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る広告表示化粧板10の構造を例示する断面図である。本実施形態に係る広告表示化粧板10は、表面層120の構造を除いて第1の実施形態に係る広告表示化粧板10と同じである。
【0076】
本実施形態において、表面層120は、金属層125を含む。そうすることにより、第1面101側から見て広告表示化粧板10に金属光沢感を生じさせ、広告の印象を強めることができる。具体的には、広告表示化粧板10の第1面101と金属層125との間に印刷部121が位置することにより広告コンテンツの背景に金属光沢感が生じる。なお、広告表示化粧板10では、第1面101から見て金属層125の全体を覆うように印刷部121が形成されていてもよい。その場合であっても、印刷部121を透過して金属光沢感が感じられる。
【0077】
金属層125はアルミ、金、銀等である。金属層125の厚さは特に限定されないが、1nm以上300μm以下が好ましい。そうすれば、広告表示化粧板10の可撓性を損なうことなく、金属光沢感を生じさせることができる。
【0078】
本実施形態において、印刷基材122はたとえば透明な樹脂フィルムである。印刷基材122はたとえばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂のうちの一以上を含む。
【0079】
本実施形態に係る広告表示化粧板10は、表面層120の製造方法を除いて第1の実施形態に係る広告表示化粧板10と同様に製造できる。本実施形態において、印刷部121は印刷基材122のうち第2面102側となる面に印刷で形成される。そして、印刷部121を覆うように第2樹脂層124が形成され、さらに金属箔を重ねることにより金属層125が積層される。一方、印刷基材122のうち第1面101側となる面に第1樹脂層123が形成される。すなわち、第1樹脂層123、印刷基材122、印刷部121、第2樹脂層124、および金属層125がこの順に広告表示化粧板10の第1面101側から積層された表面層120を得られる。ただし、本実施形態に係る表面層120は、本図の例に限定されず、たとえば印刷部121が第1の実施形態と同様に印刷基材122のうち第1面101側となる面に印刷で形成されていてもよい。
【0080】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。くわえて、金属層125によって広告コンテンツの背景に金属光沢を付与することができる。
【0081】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る広告表示化粧板10の構造を例示する断面図である。本実施形態に係る広告表示化粧板10は、化粧シート12の構造を除いて第1の実施形態に係る広告表示化粧板10と同じである。
【0082】
本実施形態において化粧シート12は第1樹脂層123、第2樹脂層124、および印刷部121を備える。そして第2樹脂層124が印刷基材122として機能する。
【0083】
第1樹脂層123は、透明な樹脂フィルムである。第1樹脂層123は、合成樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、又は(メタ)クリル樹脂を含む。第1樹脂層123は、たとえばエンボス圧延加工によるラミネートによって、印刷部121が形成された第2樹脂層124に積層される。第1樹脂層123の厚さはたとえば10μm以上80μm以下である。
【0084】
第2樹脂層124は、合成樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンポリエステル、ポリオレフィン樹脂、又は(メタ)クリル樹脂を含む。第2樹脂層124は、さらに、不燃性の無機充填材を含んでもよい。無機充填材としては、CaCO
3、Mg(OH)
2、Al(OH)
3、SiO
2、粘土(例えば、モンモリロナイト又はカオリン)等が挙げられる。第2樹脂層124の厚さはたとえば60μm以上150μm以下である。第2樹脂層124はたとえばキャスティング、またはカレンダリングにより形成することができる。
【0085】
本実施形態に係る広告表示化粧板10は化粧シート12の形成方法を除いて第1の実施形態に係る広告表示化粧板10の製造方法と同じである。本実施形態において化粧シート12は、第2樹脂層124のうち第1面101側となる面に印刷により印刷部121を形成し、次いで、印刷部121を覆うように第1樹脂層123を形成することで得られる。
【0086】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0087】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る広告表示化粧板10の構造を例示する断面図である。本実施形態に係る広告表示化粧板10は、化粧シート12が金属層125を備える点を除いて第3の実施形態に係る広告表示化粧板10と同じである。
【0088】
本実施形態において化粧シート12は金属層125を含む。金属層125は、第2の実施形態で説明した金属層125と同様である。金属層125は、第2樹脂層124と接着層13との間に位置する。本実施形態において、第2樹脂層124は透明な樹脂である。ただし、第2樹脂層124は着色されていてもよい。
【0089】
本実施形態に係る広告表示化粧板10の製造方法において、第2樹脂層124に第1樹脂層123が積層された後、化粧シート12に接着層13が積層される前に、第2樹脂層124に対して蒸着することにより金属層125が積層される。
【0090】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。くわえて、金属層125によって広告コンテンツの背景に金属光沢を付与することができる。
【0091】
(第5の実施形態)
図7は、第5の実施形態に係る広告表示化粧板10の構造を例示する断面図である。本実施形態に係る広告表示化粧板10は、保護層126を備える点を除いて、第1〜第4の実施形態の少なくとも何れかに係る広告表示化粧板10と同じである。本図は、第3の実施形態に相当する例を示している。
【0092】
本実施形態において、広告表示化粧板10は、化粧シート12の第1面101側に保護層126をさらに備える。保護層126は、耐スクラッチ性を有する透明な層である。広告表示化粧板10の第1面101には保護層126が露出している。保護層126は特に限定されないが、たとえば樹脂(C)及び充填材を含んで構成される。保護層126の厚さは特に限定されないが、たとえば5μm以上100μm以下である。
【0093】
樹脂(C)は反応性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、シリコーン、およびフルオロポリマーのうち少なくともいずれかを含む。
【0094】
充填材としてはたとえばアルミナ、シリカ、酸化クロム、酸化鉄、ジルコニウム、チタニウム、又はこれらの混合物からなるビーズ又は粒子が挙げられる。ただし、これらに限定されない。充填材の粒子形状には、球形、房毛状、長球形、針状、多面体、円筒形又は不定形が挙げられるが、これらに限定されない。充填材の硬さは、たとえば8〜15モース硬度である。充填材の平均粒子径は乾燥後の保護層126の厚さ以上であってよく、たとえば10μm以上110μm以下である。充填材は、保護層126に均一に分散されていることが好ましい。
【0095】
保護層126はさらに架橋剤を含んでもよい。架橋剤としてはたとえば、ビスアミド架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤が挙げられる。架橋剤の含有量は、樹脂(C)100重量部に対し、固体分でたとえば5重量部以上30重量部以下である。
【0096】
保護層126は、上記の成分を混合した材料を例えばバーコーティング法等により第1樹脂層123の第1面101側となる面に塗布し、加熱したロールと非加熱のニップロールとで押圧することで形成できる。
【0097】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。加えて、保護層126により広告表示化粧板10の耐久性が向上する。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 表面または内部に印刷部を含み、第1面側から広告コンテンツの少なくとも一部が視認可能に構成された化粧シートを備え、
広告媒体に対して脱着可能に構成された広告表示化粧板。
2. 1.に記載の広告表示化粧板において、
前記化粧シートの、前記第1面とは反対側の第2面側に固定されたマグネット層をさらに備える広告表示化粧板。
3. 2.に記載の広告表示化粧板において、
前記マグネット層の磁束密度は20mT以上である広告表示化粧板。
4. 2.または3.に記載の広告表示化粧板において、
前記マグネット層は、接着層により前記化粧シートに固定されている広告表示化粧板。
5. 1.〜4.のいずれか一つに記載の広告表示化粧板において、
前記化粧シートは、メラミン系樹脂、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、および(メタ)クリル樹脂により構成される群から選択される一以上の樹脂を含む広告表示化粧板。
6. 1.〜5.のいずれか一つに記載の広告表示化粧板において、
前記化粧シートはガラスクロスを含む広告表示化粧板。
7. 1.〜6.のいずれか一つに記載の広告表示化粧板において、
可撓性を有する広告表示化粧板。
8. 1.〜7.のいずれか一つに記載の広告表示化粧板において、
前記化粧シートの前記第1面側に保護層をさらに備え
前記保護層は樹脂(C)及び充填材を含む広告表示化粧板。
9. 8.に記載の広告表示化粧板において、
樹脂(C)は反応性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、シリコーン、およびフルオロポリマーのうち少なくともいずれかを含む広告表示化粧板。
10. 1.〜9.のいずれか一つに記載の広告表示化粧板において、
前記第1面の表面粗さRaは5μm以下である広告表示化粧板。
11. 1.〜10.のいずれか一つに記載の広告表示化粧板において、
前記第1面において、波長550nmの光の入射角45°での反射率が、受光角0°以上70°以下の範囲にわたり40%以下である広告表示化粧板。
12. 表面または内部に印刷部を含み、第1面側から広告コンテンツの少なくとも一部が視認可能に構成された化粧シートを備える広告表示化粧板を、広告媒体に対して脱着可能に固定する広告表示化粧板の施工方法。
13. 12.に記載の広告表示化粧板の施工方法において、
複数の前記広告表示化粧板を、並べて固定する広告表示化粧板の施工方法。
14. 13.に記載の広告表示化粧板の施工方法において、
前記複数の広告表示化粧板を、互いに離間させた状態で並べて固定する広告表示化粧板の施工方法。
15. 13.または14.に記載の広告表示化粧板の施工方法において、
前記複数の広告表示化粧板は、第1の前記広告表示化粧板と、前記第1の広告表示化粧板とは表面粗さRaが異なる第2の前記広告表示化粧板とを含む広告表示化粧板の施工方法。
16. 表面または内部に印刷部を含み、第1面側から広告コンテンツの少なくとも一部が視認可能に構成された化粧シートを備える広告表示化粧板を複数含み、
前記複数の広告表示化粧板が広告媒体に対して脱着可能に固定されている広告体。
【実施例】
【0098】
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0099】
実施例1〜6において、第1の実施形態で説明したのと同様の構造を有する広告表示化粧板を作製した。実施例1〜6は、互いに表面形状が異なるようにした。また、各広告表示化粧板は、広告として白地に黒色の文字およびカラー写真を表示するものとした。
【0100】
実施例1〜5の表面粗さRaを、表面粗さ測定器(東京精密社製、SURFCOM 130A)を用いてJIS B 0633:2011に従い測定した。結果を表1に示す。各結果は、3つの試料を作製、計測した平均値である。また、各実施例において、文字の見やすさ(視認性)を確認した。いずれの角度からも文字を視認しやすかった場合を「○」、一部の角度からは文字を視認しにくかった場合を「△」、いずれの角度からも文字が視認しにくかった場合を「×」として評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示す結果の通り、表面粗さRaが0.3μm以上5μm以下の実施例3〜5において、文字の視認性が良かった。
【0103】
さらに、実施例2〜4および6の広告化粧板について、三次元変角分光測色システム(村上色彩技術研究所社製、GCMS−4)を用いて反射率を測定した。測定においては、入射角を45°、あおり角を0°とし、受光角を0°以上70°以下の範囲で変化させた。また、測定は440nm、550nm、および700nmの各波長の光で行った。
図8(a)〜(d)は、それぞれ実施例2〜4、および6における受光角と反射率との関係を示す図である。なお、本システムでは解析の都合上、正反射等の非常に反射率が高い場合において、100%を超える反射率が測定値とされることがある。得られた反射率のうち100%を超える値については、実際は90〜100%程度の反射率であると推測される。0°以上70°以下の複数の受光角で得た反射率のうち、受光角10°、43°、45°、47°、60°での反射率を表2〜表4に示す。表2では波長440nm、表3では波長550nm、表4では波長700nmの結果を示している。また、各実施例において、広告の見やすさ(視認性)を確認した。いずれの角度からも広告全体が視認しやすかった場合を「◎」、一部の角度からは広告の一部分が視認しにくかった場合を「○」、一部の角度からは広告の全体が視認しにくかった場合を「△」、いずれの角度からも広告の全体が視認しにくかった場合を「×」として評価した。結果を表3に合わせて示す。
【0104】
【表2】
【表3】
【表4】
【0105】
図8(a)〜(d)および表2〜4に示す結果の通り、実施例3および4では、440nm、550nm、および700nmのいずれの波長においても、0°以上70°以下の受光角の範囲にわたって反射率が40%以下であった。実施例2では、45°(正反射)において反射率が高かったが、正反射を除いては反射率が40%以下であった。そして実施例6では、45°近辺の受光角において反射率が高く、波長550nmにおいて40%を超えていた。そして、実施例3および4ではいずれの角度から見ても広告の視認性がよかったのに対し、実施例2および6では、一部の角度から見た場合において、照明灯が強く移り込むことにより少なくとも広告の一部分が視認しにくかった。
【0106】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。