特許第6878819号(P6878819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878819
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】屋根の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/35 20060101AFI20210524BHJP
   E04H 3/12 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   E04B1/35 Q
   E04H3/12 Z
   E04B1/35 P
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-201221(P2016-201221)
(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公開番号】特開2018-62771(P2018-62771A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 康彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】布田 貴徳
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−220921(JP,A)
【文献】 特開平07−004020(JP,A)
【文献】 特開昭62−125163(JP,A)
【文献】 特開平04−237765(JP,A)
【文献】 特開2002−021321(JP,A)
【文献】 特開平07−197640(JP,A)
【文献】 特開平03−191173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/35
E04H 3/12
E04H 3/14
E04G 1/24
E04G 1/36
E04G 3/24
E04F 21/00
E04F 21/14
E04F 21/16
E04F 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根躯体の下面に軒天パネルが設置される屋根を備えた大空間建築物の屋根の構築方法であって、
前記屋根躯体の下方に作業ステージを配置し、該作業ステージ上に、支持した前記軒天パネルを押し上げ可能、かつ移動自在なパネル揚重装置を載置する第1の工程と、
前記作業ステージ上で前記パネル揚重装置を移動させ、前記軒天パネルを地組ヤードから揚重して前記パネル揚重装置上に載置したのち、該パネル揚重装置で、前記軒天パネルを前記屋根躯体の下面近傍における設置予定位置に位置決めし、該屋根躯体に前記軒天パネルを取り付ける第2の工程と、
を備えることを特徴とする屋根の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根の構築方法において、
あらかじめ、前記屋根躯体を複数の工区に区割りするとともに、前記作業ステージを移動自在に組み立てておき、
前記複数の工区のうちの1つにて、前記第1の工程および第2の工程を実施し、
前記第2の工程が終了した後、前記作業ステージを他の工区へ移動する第3の工程を備え、
前記複数の工区すべてに到達するまで、前記第2の工程と前記第3の工程を繰り返すことを特徴とする屋根の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根躯体の下面に軒天パネルが設置される屋根を備えた、大空間建築物の屋根の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外スタジアムやコンサートホール等の大空間建築物には、大空間を覆う屋根が設けられている。例えば、特許文献1では、フィールドを囲うように観客席が設置されるとともに、観客席の上方にキャンティレバー式の屋根が設けられており、これらキャンティレバー式の屋根は、屋根庇フレームと、屋根庇フレームの上面に設置される屋根板を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−277643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような屋根に対してさらに軒天パネルを設置しようとする場合、その設置方法としては、屋根庇フレームの上方から屋根庇フレームの開口を貫通させるようにして大型揚重機のクレーンフックやワイヤーを吊り下げ、これらクレーンフックやワイヤーに、地組した軒天パネルを吊持させる。この後、軒天パネルを屋根庇フレームの下面まで吊り上げるとともに設置位置や設置角度等の調整をしたうえで、軒天パネルを屋根庇フレームに取り付ける。
【0005】
上記の方法では、クレーンフックやワイヤーが屋根庇フレームの開口を貫通する状態で軒天パネルの設置作業が行われるため、屋根庇フレームの上面に配置される屋根板の設置作業を先行して実施することができない。
【0006】
また、屋根庇フレームがトラス構造を有していない場合には、クレーンフックやワイヤーを貫通させるための開口を屋根庇フレームに設けなければならず、作業工程が増えるとともに、安全性の面で課題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、大空間建築物に対して、作業効率よく迅速に、屋根躯体の下面に軒天パネルが設置される屋根を構築することの可能な、屋根の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の屋根の構築方法は、屋根躯体の下面に軒天パネルが設置される屋根を備えた大空間建築物の屋根の構築方法であって、前記屋根躯体の下方に作業ステージを配置し、該作業ステージ上に、支持した前記軒天パネルを押し上げ可能、かつ移動自在なパネル揚重装置を載置する第1の工程と、前記作業ステージ上で前記パネル揚重装置を移動させ、前記軒天パネルを地組ヤードから揚重して前記パネル揚重装置上に載置したのち、該パネル揚重装置で、前記軒天パネルを前記屋根躯体の下面近傍における設置予定位置に位置決めし、該屋根躯体に前記軒天パネルを取り付ける第2の工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上述する本発明の屋根の構築方法によれば、屋根躯体の下方に配置された作業ステージと、作業ステージ上を走行するパネル揚重装置とを利用して、軒天パネルを屋根躯体の下方から設置する。これにより、屋根躯体の上面に設置する屋根仕上げ材の取り付け作業を、軒天パネルの取り付け作業と同時期にもしくは先行して実施することができる等、軒天パネルを設置するための作業スペースと屋根の構築に係る他の作業スペースとの干渉を最小限に抑えることができ、迅速に屋根の構築作業を実施することが可能となる。
【0010】
また、クレーン等の大型揚重機にて吊持した状態の軒天パネルを、屋根躯体に対して位置合わせする等の煩雑な作業が発生しないため、安全で作業効率を大幅に向上することが可能となる。また、屋根躯体に開口を必要としないため、いずれの構造よりなる屋根躯体に対しても、容易に軒天パネルを設置することが可能となる。
【0011】
本発明の屋根の構築方法は、あらかじめ、前記屋根躯体を複数の工区に区割りするとともに、前記作業ステージを移動自在に組み立てておき、前記複数の工区のうちの1つにて、前記第1の工程および第2の工程を実施し、前記第2の工程が終了した後、前記作業ステージを他の工区へ移動する第3の工程を備え、前記複数の工区すべてに到達するまで、前記第2の工程と前記第3の工程を繰り返すことを特徴とする。
【0012】
本発明の屋根の構築方法によれば、現場に大掛かりな作業ステージを設ける必要がないため、省スペースでかつ経済的に屋根の構築作業を実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屋根躯体の下方に配置された作業ステージと、作業ステージ上を走行するパネル揚重装置とを利用して、軒天パネルを屋根躯体の下方から設置するから、軒天パネルを設置するための作業スペースと屋根の構築に係る他の作業スペースとの干渉を最小限に抑えることができ、迅速かつ作業効率よく屋根の構築作業を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の屋外スタジアムの平面を示す図である。
図2】本発明の屋外スタジアムの側面を示す図である。
図3】本発明のパネル揚重装置を示す図である。
図4】本発明の軒天パネル6の設置方法の手順を示すフロー図である。
図5】本発明の軒天パネル6の設置方法を示す図である(その1)。
図6】本発明の軒天パネル6の設置方法を示す図である(その2)。
図7】本発明の軒天パネル6の設置方法を示す図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の屋根の構築方法は、屋外スタジアムやコンサートホール等の大空間建築物に対して、屋根躯体の下面に軒天パネルを備えた屋根を構築する場合に好適な方法である。以下に、大空間建築物として、観客席の上方に屋根を備えた屋外スタジアムを事例に挙げ、図1図7を参照して屋根の構築方法を説明する。
【0016】
図1で示すように、屋外スタジアム100は、中央に位置するフィールド1と、これを囲うように配置されるスタンド2と、該スタンド2の上方に設置される屋根3を備えている。図2で示すように、屋根3は、スタンド2の外周に沿って設置された複数の支柱4に片持ち梁の態様で支持され、フィールド1側に張り出す屋根躯体5と、屋根躯体5の下面に設置された軒天パネル6と、屋根躯体5の上面に設置され屋根仕上げ材7を備えている。
【0017】
屋根躯体5は、いずれの構造を有するものでもよいが、本実施の形態では、図2で示すように、鉄骨材を用いたトラス構造よりなり、スタンド2を構成するスタンド躯体21と同時に、もしくはこれと前後して構築される。軒天パネル6は、一般に軒天に設置される板材と同様の材料よりなり、1枚の板材よりなるものであっても、板材を複数毎を連結してユニット化したものでもいずれでもよく、また、その形状も平板であっても湾曲板であってもいずれでもよい。屋根仕上げ材7は、雨水や雪等に対応するべく一般に採用される部材であり、いずれの形状や大きさのものであってもよい。
【0018】
上述する軒天パネル6および屋根仕上げ材7の設置作業は、スタンド躯体21の上方に配置された状態の屋根躯体5に対して実施される。本実施の形態において、軒天パネル6の設置作業は、屋根躯体5の下方に配置される作業ステージ10と、作業ステージ10上に装備される移動自在かつ軒天パネル6を押し上げ可能なパネル揚重装置20とを用いて実施される。
【0019】
作業ステージ10は、図2で示すように、スタンド2と屋根躯体5の間に配置される作業床11と、作業床11のフィールド1側に位置する内側部を支持する内側脚12と、作業床11の内側部と対向する外側部を支持する外側脚13とを備える。本実施の形態では、あらかじめ作業ステージ10を支持可能な固定式ステージSをスタンド2の内周側に構築し、作業ステージ10の内側脚12を固定式ステージSに、外側脚13をスタンド躯体21に支持させている。なお、固定ステージSは必ずしも構築しなくてもよく、内側脚12をスタンド躯体21やフィールド1に直接支持させてもよい。
【0020】
また、内側脚12と外側脚13には、作業ステージ10をスタンド2の周方向に移動させるための走行体14が設けられている。走行体14は、車輪やキャタピラ等いずれによるものであってもよく、また、固定式ステージSおよびスタンド躯体21の上面を直接走行させてもよいし、固定式ステージSおよびスタンド躯体21の上面に例えばレールを設け、このレールを介して走行するものであってもよい。
【0021】
さらに、作業ステージ10には、作業床11の内側部に張出し床15が設置されている。張出し床15は、荷受けスペースとして機能する領域であり、その上方は、屋根躯体5が存在しない状態となっている。したがって、フィールド1の予定位置に構築された地組ヤードYにて地組された屋根3の構築に必要な建設資材や工具等を、クレーン等の大型揚重機Mにて楊重し、これを張出し床15上に搬送することができる。
【0022】
一方、図3(a)で示すように、パネル揚重装置20は、作業床11上を自在に走行可能な台車21と、軒天パネル6が載置されるパネル支持機構23と、パネル支持機構23を支持する昇降機構22と、を備えている。
【0023】
昇降機構22は、軒天パネル6を載置した状態のパネル支持機構23を、屋根躯体5の下面近傍まで押し上げ可能な伸縮機構を備えた装置であればいずれを採用してもよいが、本実施の形態では、パンタグラフジャッキを採用している。
【0024】
パネル支持機構23は、長さを可変自在な複数の支柱よりなる姿勢制御機構231と、姿勢制御機構231の天端に設置されるレベル調整機構232を備えている。姿勢制御機構231およびレベル調整機構232はいずれの構造のものを採用してもよいが、本実施の形態では、姿勢制御機構231に着脱自在な複数の筒体を適宜組み合わせる支柱を4本備えるとともに、レベル調整機構232に油圧ジャッキを採用している。
【0025】
姿勢制御機構231は、4体の支柱各々の長さを適宜調整することにより、軒天パネル6のパネル支持機構23への載置姿勢を制御できる。したがって、軒天パネル6を、姿勢制御機構231を用いて屋根躯体5に設置される際の設置姿勢に対応する姿勢にてパネル支持機構23に載置することができ、また、レベル調整機構232にて、パネル支持機構23に載置された状態の軒天パネル6の姿勢を高さ方向に微調整することができる。
【0026】
さらに、昇降機構22とパネル支持機構23との間には、昇降機構22に対してパネル支持機構23の水平位置を微調整可能な、例えばボールベアリングやすべり板等のすべり支承を備えた水平調整機構24が配置されている。これにより、図3(b)で示すように、パネル支持機構23に載置された状態の軒天パネル6の水平位置を、昇降機構22に対して微調整することができる。
【0027】
上述する構成の作業ステージ10とパネル揚重装置20とにより、屋外スタジアム100の屋根3は、以下の手順により構築することができる。
【0028】
つまり、屋根躯体5を構築したのち、屋根躯体5の下方に作業ステージ10を組み立て、作業ステージ10上にパネル揚重装置20を装備する。この後、作業ステージ10上でパネル揚重装置20を介して、軒天パネル6を屋根躯体5の下面付近まで押上げ、かつ必要に応じて水平方向および高さ方向の微調整を行って軒天パネル6を屋根躯体5の設置予定位置に位置決めし、屋根躯体5に仮固定する。屋根躯体5の上面に屋根仕上げ材7を設置する作業は、上記の軒天パネル6を設置する作業と同時に実施してもよいし、先行して実施してもよい。
【0029】
このような屋根の構築方法において、軒天パネル6の設置作業の詳細を、屋根躯体5を複数の工区に区割りして工区ごとで実施する場合を事例に挙げ、図4で示すフロー図にしたがって説明する。なお、本実施の形態では、スタンド2の一部領域のみを覆うように屋根3を構築するべく、屋根躯体5を配置しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、スタンド2の全部を覆うように屋根3を構築するものであってもよい。
【0030】
(第1の工程:step1)
まず、図2で示すように、スタンド2の内周側に固定式ステージSを構築した後、固定式ステージSとスタンド躯体21に支持させるようにして、作業ステージ10を組み立てる。
【0031】
(第1の工程:step2)
図5で示すように、屋根躯体5をスタンド2の周方向に向かって複数の工区に区割りしたうえで、第1の工区Aに該当する領域に、上記のとおり組み立てた作業ステージ10を配置する。
【0032】
(第2の工程:step3)
図2で示すように、パネル揚重装置20を作業ステージ10の張出し床15まで移動させた後、地組ヤードYにて地組された軒天パネル6を大型揚重機Mにて楊重し、パネル揚重装置20のパネル支持機構23に載置させる。
【0033】
このとき、パネル揚重装置20のパネル支持機構23は、軒天パネル6を屋根躯体5に設置される際の設置姿勢を保持した状態で載置できるよう、姿勢制御機構231に備えた複数の支柱各々の長さを調整しておく。
【0034】
(第2の工程:step4)
図6で示すように、パネル揚重装置20を走行させて、軒天パネル6を屋根躯体5における設置予定位置の直下まで搬送するとともに、軒天パネル6の向きを屋根躯体5に設置するときの向きに合致させる。
【0035】
ここで例えば、図3(b)で示すように、パネル揚重装置20に端末装置25を備えておく。なお、端末装置25は、演算処理装置251、入力部252、表示部253及び記憶部254等を備えた、いわゆるノート型パソコンやタブレット端末である。演算処理装置251は、CPU、GPU、ROM、RAM及びハードウェアインタフェース等を有するコンピュータである。入力部252は、スイッチ、キーボード等の入力装置である。表示部253は、画面表示を行うディスプレイである。記憶部254は、半導体メモリ又はハードディスクドライブ等からなる記憶装置であり、演算処理装置251によって実行可能なプログラムが格納されている。
【0036】
そして、屋根3の設計図等の情報を格納したBIMデータから、設置しようとする軒天パネル6の重心位置および方位角を把握し、端末装置25の記憶部254に格納しておく。また、屋根躯体5の下面の形状を、ワールド座標系上で点群データよりなる点群モデルとして、端末装置25の記憶部254に格納しておき、軒天パネル6が屋根躯体5に設置された時の重心位置および方位角を演算処理装置251算出し、記憶部254に格納しておく。
【0037】
一方で、軒天パネル6を載置した状態のパネル揚重装置20の重心位置を、トータルステーションによる計測にて把握する。こうすると、端末装置25の記憶部254に格納した軒天パネル6の設置予定位置に関する情報と、パネル揚重装置20の重心位置に関する情報に基づいて、パネル揚重装置20に載置された状態の軒天パネル6について、その重心位置を屋根躯体5の設置予定位置の重心位置と同一鉛直線上に移動させることができ、また、その方位角を屋根躯体5に設置された時の方位角と合致させることができる。
【0038】
なお、屋根躯体5の下面の形状を、ワールド座標系上で点群データよりなる点群モデルとして把握させるための装置および方法は、例えば、特願2016-034256号を参照されたい。
【0039】
この後、パネル揚重装置20の昇降機構22により、軒天パネル6を屋根躯体5の下面に向けて所定高さまで押し上げる。そして、軒天パネル6の水平位置や高さ位置に微調整が必要な場合には、前述したパネル揚重装置20の水平調整機構24およびレベル調整機構232を用いてその位置を微調整する。こうして、軒天パネル6を屋根躯体5の設置予定位置に位置決めし、両者を図示しない仮固定手段を介して仮固定する。
【0040】
(第2の工程:step5)
屋根躯体5における第1の工区Aに該当する領域すべてに対して軒天パネル6を設置するまで、上記step3およびstep4の作業を繰り返す。
【0041】
(第3の工程:step6およびstep2)
図7で示すように、第1の工区Aに該当する領域すべてに対して軒天パネル6を設置し終わったのち、作業ステージ10を次の工区に移動させる。
【0042】
(第4の工程:step6およびstep7)
区割りした複数の工区すべてに到達するまで、上記の第2の工程および第3の工程を繰り返し、図1で示すように、屋根躯体5の全ての下面に軒天パネル6を設置する。これらが終了したのち、作業ステージ10を解体する。
【0043】
本発明の屋根の構築方法によれば、屋根躯体5に下方に配置された作業ステージ10と、作業ステージ10上を走行するパネル揚重装置20とを利用して、軒天パネル6を屋根躯体5の下方から設置することができる。これにより、屋根躯体5の上面に屋根仕上げ材7を設置する作業を、軒天パネル6の取り付け作業と同時期にもしくは先行して実施することができる等、軒天パネル6を設置するための作業スペースと屋根の構築に係る他の作業スペースとの干渉を最小限に抑えることができ、迅速に屋根3の構築作業を実施することが可能となる。
【0044】
また、人力によることなくパネル揚重装置20により屋根躯体5に対する軒天パネル6の位置合わせを実施できるため、従来のように、クレーン等の大型揚重機Mにて吊持した状態の軒天パネル6を、屋根躯体5に対して位置合わせする等の煩雑な作業が発生しない。このため、安全で作業効率を大幅に向上することが可能となる。また、屋根躯体5に開口を必要としないため、いずれの構造よりなる屋根躯体5に対しても、容易に軒天パネル6を設置することが可能となる。
【0045】
さらに、屋根躯体5を複数の工区に区割りして工区ごとに軒天パネル6の設置作業を実施できるため、現場に大掛かりな作業ステージ10を設ける必要がなく、省スペースでかつ経済的に屋根3の構築作業を実施することが可能となる。
【0046】
本発明の屋根の構築方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
例えば、本実施の形態では、屋根躯体5を複数の工区に区割りし、工区ごとに作業ステージ10を移動させて軒天パネルの設置作業を行ったが、必ずしもこれに限定されるものではない。屋根躯体5の下方前面に作業ステージ10を構築し、作業ステージ10を移動させることなく、パネル揚重装置20を用いて軒天パネルの設置作業を実施してもよい。
【0048】
本実施の形態では、第1の工区Aに1台の作業ステージ10を配置したが、必ずしもこれに限定するものではなく、複数台の作業ステージ10を隣接して配置し、軒天パネル6の設置作業が終了するごとに、複数台の作業ステージ10を次の工区に移動させてもよい。
【0049】
本実施の形態では、作業ステージ10に対して張出し床15を、作業床11のフィールド1側に位置する内側部に設けたが、その配置位置は必ずしもこれに限定されるものではなく、クレーン等の大型揚重機Mにて吊持された建設資材の荷受けスペースとして適した位置であれば、作業床11のいずれの位置に設置してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 フィールド
2 スタンド
3 屋根
4 支柱
5 屋根躯体
6 軒天パネル
7 屋根仕上げ材
10 作業ステージ
11 作業床
12 内側部脚
13 外側部脚
14 走行体
20 パネル揚重装置
21 台車
22 昇降機構
23 パネル支持機構
231 姿勢制御機構
232 レベル調整機構
24 水平調整機構
25 端末装置
251 演算処理装置
252 入力部
253 表示部
254 記憶部
100 屋外スタジアム(大空間建築物)
A 第1の工区
S 固定ステージ
Y 地組ヤード
M 大型揚重機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7