(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878839
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F23K 1/04 20060101AFI20210524BHJP
F23K 1/00 20060101ALI20210524BHJP
F28C 3/10 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
F23K1/04
F23K1/00 Z
F28C3/10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-215852(P2016-215852)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2018-71941(P2018-71941A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 志宏
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−332134(JP,A)
【文献】
特開昭59−195093(JP,A)
【文献】
特開平05−340681(JP,A)
【文献】
特開昭57−159880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 1/00 − 3/22
F28C 3/10 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水石炭を加熱して乾燥することにより得られた被冷却物と、該被冷却物より低温の固体粒子とを混合して熱交換させる混合部と、
前記混合部によって生成された、前記被冷却物と前記固体粒子との混合物を、該被冷却物と、該固体粒子とに分離する分離部と、
前記分離部によって分離された前記固体粒子を冷却する冷却部と、
を備え、
前記混合部は、前記含水石炭を加熱して乾燥することにより得られた被冷却物と、前記冷却部によって冷却された前記固体粒子とを混合して熱交換させる冷却装置。
【請求項2】
前記固体粒子は、前記被冷却物より大粒子であり、
前記分離部は、前記被冷却物のみが通過する孔が形成された篩部を含んで構成される請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記分離部によって分離された前記被冷却物が、予め定められた温度未満になるように、前記混合部に導入する前記固体粒子の量を制御する制御部を備えた請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記固体粒子は、少なくとも銅を含んで構成される請求項1から3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱により乾燥された含水石炭を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は、可採年数が石油の3倍以上であり、また、石油と比較して埋蔵地が偏在していない。このため、石炭は、長期に亘り安定供給が可能な天然資源として期待されている。石炭は、炭素含有量の低い順に、泥炭、亜炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、半無煙炭、無煙炭に分類される。泥炭、亜炭、褐炭、亜瀝青炭(以下、含水石炭と称する)は、瀝青炭、半無煙炭、無煙炭(以下、無煙炭等と称する)と比較して水の含有率(含水率)が高い。
【0003】
含水石炭のうち、褐炭は、世界の石炭埋蔵量の半分を占めると言われているため、褐炭の有効利用が検討されている。しかし、上述したように、褐炭等の含水石炭は、無煙炭等と比較して含水率が高い。したがって、含水石炭は、単位重量あたりの発熱量が低く、輸送コストに対する燃料としてのエネルギー効率が低い。
【0004】
そこで、含水石炭に過熱蒸気を供給することで、含水石炭を流動させながら加熱乾燥させる技術が開発されている(例えば、特許文献1)。加熱により乾燥された含水石炭(以下、乾燥された含水石炭を「乾燥炭」と称する)は、高温の状態(例えば、80℃〜150℃程度)で大気に接触すると発火するおそれがある。このため、特許文献1の技術では、高温の乾燥炭を収容した収容槽の底面から低温の不活性ガスを供給することで、乾燥炭を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−173086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の技術では、乾燥炭の冷却に、大量の不活性ガスを使用する必要がある。このため、不活性ガスに要するコストがかかるという問題がある。
【0007】
本開示は、このような課題に鑑み、乾燥炭を低コストで冷却することが可能な冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る冷却装置は、含水石炭を加熱して乾燥することにより得られた被冷却物と、該被冷却物より低温の固体粒子とを混合して熱交換させる混合部と、前記混合部によって生成された、前記被冷却物と前記固体粒子との混合物を、該被冷却物と、該固体粒子とに分離する分離部と、
前記分離部によって分離された前記固体粒子を冷却する冷却部と、を備え
、前記混合部は、前記含水石炭を加熱して乾燥することにより得られた被冷却物と、前記冷却部によって冷却された前記固体粒子とを混合して熱交換させる。
【0009】
また、前記固体粒子は、前記被冷却物より大粒子であり、前記分離部は、前記被冷却物のみが通過する孔が形成された篩部を含んで構成されてもよい。
【0011】
また、前記分離部によって分離された前記被冷却物が、予め定められた温度未満になるように、前記混合部に導入する前記固体粒子の量を制御する制御部を備えてもよい。
【0012】
また、前記固体粒子は、少なくとも銅を含んで構成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
乾燥炭を低コストで冷却することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(乾燥システム100)
図1は、乾燥システム100を説明する図である。
図1に示すように、乾燥システム100は、乾燥装置110と、冷却装置120と、貯留部130とを含んで構成され、含水石炭を乾燥する。なお、ここでは、含水石炭として褐炭を例に挙げて説明する。
【0017】
乾燥装置110は、褐炭BCを加熱することで、褐炭BCを乾燥させる。乾燥装置110は、例えば、流動層乾燥炉であり、収容槽と、流動化ガス供給部と、伝熱管とを含んで構成される。収容槽は、褐炭BCを収容する。流動化ガス供給部は、収容槽の下部から流動化ガス(例えば、水蒸気)を供給する。伝熱管は、収容槽内に配され、褐炭BCより高温の熱媒体が通過する。なお、褐炭BCを乾燥させる技術については、様々な既存の技術を適用できるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0018】
冷却装置120は、乾燥装置110によって乾燥された褐炭BC(乾燥炭DC(被冷却物))を冷却する。冷却装置120の具体的な構成については、後に詳述する。
【0019】
貯留部130は、冷却装置120によって冷却された乾燥炭DCを貯留する。貯留部130に貯留された乾燥炭DCは、ボイラ等の乾燥炭利用設備に供給される。
【0020】
以下、本実施形態にかかる冷却装置120について詳述する。
【0021】
(冷却装置120)
図2は、冷却装置120を説明する図である。
図2に示すように、冷却装置120は、混合部210と、混合物搬送装置212と、分離部220と、乾燥炭搬送装置222と、固体粒子搬送装置224と、冷却部230と、返送装置232と、温度測定部240と、制御部250とを含んで構成される。
図2中、乾燥炭DC、固体粒子SP、混合物MXの流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線で示す。
【0022】
混合部210には、乾燥装置110から乾燥炭DCが導入される。また、混合部210には、後述する返送装置232によって固体粒子SPが導入される。混合部210は、乾燥炭DCと、乾燥炭DCより低温(例えば、常温(25℃)程度)の固体粒子SPとを、所定時間混合する。ここで、所定時間(接触時間)は、乾燥炭DCと固体粒子SPとが接触することにより、両者の温度が実質的に等しくなる程度の時間である。本実施形態において、固体粒子SPは、銅(Cu)で構成される。つまり、固体粒子SPは、銅粒子である。
【0023】
混合部210は、例えば、筐体と、シャフトと、回転羽根と、モータとを含んで構成される。筐体には、乾燥炭DCと固体粒子SPとが導入される。シャフトは、長手方向が水平方向に沿うように筐体内に設けられる。回転羽根は、平板形状であり、シャフトに固定される。回転羽根は、シャフトの外周面から放射状に立設される。モータは、シャフトを回転させる。なお、乾燥炭DCと固体粒子SPといった2種類の固体を混合する技術については、様々な既存の技術を適用できるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0024】
混合部210を備える構成により、乾燥炭DC(80℃〜150℃程度)と、低温の固体粒子SPとが、所定時間接触し、乾燥炭DCと固体粒子SPとで熱交換が為されることとなる。つまり、乾燥炭DCから固体粒子SPに熱が移動し、これにより、乾燥炭DCが冷却されることとなる。
【0025】
固体粒子SPは固体であるため、ガスと比較して、熱伝導率が大きい。したがって、不活性ガスで冷却する従来技術と比較して、極めて少量の固体粒子SPで乾燥炭DCを冷却することができる。これにより、乾燥炭DCを効率よく低コストで冷却することが可能となる。
【0026】
また、上記したように、本実施形態の固体粒子SPは銅粒子である。銅は、固体の中で熱伝導率が400W・m
−1・K
−1程度と相対的に大きい。このため、固体粒子SPとして銅粒子を用いることにより、乾燥炭DCをさらに効率よく冷却することが可能となる。
【0027】
このように、混合部210によって生成された、乾燥炭DCと、固体粒子SPとの混合物MX(例えば、50℃程度)は、混合物搬送装置212(例えば、コンベヤ)によって分離部220に導入される。
【0028】
分離部220は、混合部210によって生成された混合物MXを、乾燥炭DCと、固体粒子SPとに分離する。
【0029】
本実施形態において、固体粒子SPは、乾燥炭DCより大粒子である。つまり、固体粒子SPは、乾燥炭DCの最大粒径より大きい。分離部220は、乾燥炭DCのみが通過する孔が形成された篩部と、篩部を振動させる振動部とを含んで構成される。ここで、篩部は、例えば、孔が矩形形状であり、目開きの大きさが乾燥炭DCの最大粒径よりわずかに大きい篩である。例えば、乾燥炭DCの最大粒径が3mmである場合、篩部の目開きは3.1mm程度である。また、この場合、固体粒子SPは、孔を通過しない大きさ(例えば、5mm〜6mm程度)であるとよい。つまり、乾燥炭DCの最大粒径<篩部の孔の大きさ<固体粒子SPの粒径の関係が成立するように、篩部が設計される。なお、粒子の大きさで固体を分離する技術については、様々な既存の技術を適用できるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0030】
こうして、分離部220によって分離された乾燥炭DCは、乾燥炭搬送装置222(例えば、コンベヤ)によって貯留部130に導入され、貯留部130において貯留される。一方、分離された固体粒子SPは、固体粒子搬送装置224(例えば、コンベヤ)によって冷却部230に導入される。
【0031】
冷却部230は、例えば、空冷装置で構成され、分離部220によって分離された固体粒子SPを冷却する。返送装置232は、例えば、コンベヤで構成され、後述する制御部250による制御指令に基づいて、冷却された固体粒子SPを混合部210に導入する。
【0032】
冷却部230、返送装置232を備える構成により、固体粒子SPを再利用することができる。したがって、さらに、低コストで乾燥炭DCを冷却することが可能となる。
【0033】
温度測定部240は、混合部210に導入される乾燥炭DCの温度、すなわち、乾燥装置110から排出された乾燥炭DCの温度を測定する。また、温度測定部240は、分離部220によって分離された乾燥炭DCの温度を測定する。
【0034】
制御部250は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。制御部250は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して冷却装置120全体を管理および制御する。
【0035】
本実施形態において、制御部250は、温度測定部240が測定した乾燥炭DCの温度に基づいて、返送装置232を制御する。具体的に説明すると、制御部250は、混合部210に導入される乾燥炭DCの温度、混合部210に導入される乾燥炭DCの量、混合部210における乾燥炭DCの滞留時間(接触時間)、混合部210に導入される固体粒子SPの温度(冷却部230によって冷却された固体粒子SPの温度)に基づいて、分離部220によって分離された乾燥炭DCが、予め定められた温度(例えば、発火温度)未満になるように、混合部210に導入する固体粒子SPの量を導出する。そして、制御部250は、導出した量の固体粒子SPが混合部210に導入されるように、返送装置232を制御する。
【0036】
制御部250を備える構成により、分離部220によって分離された乾燥炭DCを、ユーザが所望する温度未満に維持することができる。例えば、分離部220によって分離された乾燥炭DCが発火温度未満になるように、制御部250が、混合部210に導入する固体粒子SPの量を導出するとする。この場合、分離部220で分離された乾燥炭DC(乾燥炭搬送装置222で搬送される乾燥炭DC、貯留部130に貯留される乾燥炭DC)が発火してしまう事態を回避することが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態にかかる冷却装置120によれば、乾燥炭DCより低温の固体粒子SPと、乾燥炭DCとを混合するだけといった簡易な構成で、乾燥炭DCを低コストで冷却することが可能となる。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に技術的範囲に属するものと了解される。
【0039】
例えば、上記実施形態において、固体粒子SPが、銅粒子である場合を例に挙げて説明した。しかし、固体粒子SPは、少なくとも銅を含んで構成されていればよい(例えば、銅合金等)。また、固体粒子SPは、銅に限らず、アルミニウム(Al)等の金属を含んで構成されてもよい。金属は、他の固体と比較して熱伝導率が大きい。したがって、固体粒子SPを、金属を含む固体で構成することにより、効率よく乾燥炭DCを冷却することができる。また、固体粒子SPは、金属に限らず、アルミナ等の金属酸化物(セラミック)等の不燃性の固体粒子、バイオマス等の可燃性の固体粒子等、固体であれば、材質に限定はない。いずれにせよ、固体粒子SPを固体で構成することにより、不活性ガスで冷却する従来技術と比較して、極めて少量の固体粒子SPで乾燥炭DCを冷却することができる。
【0040】
また、上記実施形態において、分離部220が、篩部を含んで構成される場合を例に挙げて説明した。このため、分離部220自体のコストを低くすることができる。しかし、分離部220は、粒子の大きさによって、乾燥炭DCと固体粒子SPとを分離できれば、構成に限定はない。分離部220は、例えば、遠心分離機で構成されてもよいし、沈降分離機で構成されてもよい。
【0041】
また、上記実施形態において、固体粒子SPが、乾燥炭DCの最大粒径より大きい場合を例に挙げて説明した。しかし、固体粒子SPは、乾燥炭DCと粒径が異なればよく、固体粒子SPが乾燥炭DCの最小粒径より小さくてもよい。
【0042】
また、分離部220として、粒子の質量密度で分離する装置(例えば、遠心分離機、沈降分離機等)を採用してもよい。この場合、固体粒子SPは、乾燥炭DCと質量密度が異なる物質で構成される。
【0043】
また、上記実施形態において、冷却部230として、空冷装置を例に挙げて説明した。しかし、冷却部230は、固体粒子SPを冷却できれば、構成に限定はない。例えば、冷却部230を、水冷装置や他の冷媒で冷却する装置、ペルチェ素子で構成してもよい。
【0044】
また、含水石炭として褐炭を例に挙げて説明した。しかし、含水石炭は、泥炭、亜炭、亜瀝青炭であってもよいし、泥炭、亜炭、褐炭、亜瀝青炭のうち、いずれか2以上の混合物であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示は、加熱により乾燥された含水石炭を冷却する冷却装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
120 冷却装置
210 混合部
220 分離部
230 冷却部
250 制御部