(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の半導体装置は、FWD領域に注入するライフタイムキラーがIGBT領域にも打ち込まれているため、IGBTの電気的特性が犠牲となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体基板と、半導体基板に形成されたトランジスタ部と、半導体基板に形成され、半導体基板のおもて面側にライフタイムキラーを有するダイオード部と、トランジスタ部とダイオード部との間に設けられ、トランジスタ部のゲートと電気的に接続されたゲートランナとを備える半導体装置を提供する。
【0005】
半導体基板は、半導体基板のおもて面側であって、ゲートランナの下方の少なくとも一部の領域にライフタイムキラーを有してよい。
【0006】
半導体基板は、半導体基板のおもて面側であって、ゲートランナの下方の全域にライフタイムキラーを有してよい。
【0007】
半導体基板は、半導体基板のおもて面側であって、ゲートランナよりもトランジスタ部側の少なくとも一部にライフタイムキラーを有してよい。
【0008】
トランジスタ部のコレクタ領域は、ゲートランナの下方の少なくとも一部に形成されてよい。
【0009】
トランジスタ部のコレクタ領域は、ゲートランナの下方の全域に形成されてよい。
【0010】
トランジスタ部のコレクタ領域は、ゲートランナよりもダイオード部側の少なくとも一部に形成されてよい。
【0011】
ダイオード部のカソード領域は、ゲートランナの下方に形成されていなくてよい。
【0012】
半導体装置は、半導体基板と異なる導電型を有し、ゲートランナの下方に形成されたウェル領域を更に備えてよい。
【0013】
トランジスタ部は、半導体基板のおもて面に形成されたゲートトレンチ部を備え、ゲートトレンチ部の少なくとも一部は、ゲートランナの下方に形成されてよい。
【0014】
ダイオード部は、半導体装置の活性領域の端部に配置されてよい。
【0015】
ダイオード部は、半導体装置の活性領域の角部に配置されてよい。
【0016】
ダイオード部は、平面視で、トランジスタ部の周囲を囲んでよい。
【0017】
トランジスタ部は、平面視で、ダイオード部の周囲を囲んでよい。
【0018】
トランジスタ部に隣接して設けられ、トランジスタ部の温度に応じた信号を検出する温度センサ部と、センサ用配線を通じて温度センサ部と電気的に接続され、温度センサ部の検出した信号が入力される温度センサ端子とを更に備えてよい。
【0019】
ダイオード部は、ゲートランナおよびセンサ用配線の少なくとも一方がダイオード部を横断するための離間領域を有してよい。
【0020】
温度センサは、ウェル領域の上方に配置されてよい。
【0021】
温度センサは、トランジスタ部に囲まれてよい。
【0022】
ダイオード部は、半導体装置の活性領域の一端に形成される第1ダイオード領域と、一端と対向する活性領域の他端に形成される第2ダイオード領域とを有してよい。
【0023】
温度センサは、第1ダイオード領域および第2ダイオード領域の間に設けられてよい。
【0024】
半導体基板のおもて面に形成された第1導電型のエミッタ領域と、半導体基板のおもて面に形成された、第1導電型と異なる第2導電型のベース領域と、半導体基板のおもて面側に形成され、半導体基板の不純物濃度よりも高濃度である第1導電型の蓄積層と、半導体基板のおもて面上に形成された層間絶縁膜とを更に備えてよい。また、層間絶縁膜には、エミッタ領域およびベース領域の少なくとも一部の領域に対応して、層間絶縁膜を貫通するコンタクトホールが形成されてよい。蓄積層は、トランジスタ部が有するトレンチ部の延伸方向において、コンタクトホールが形成された領域の内側に形成されてよい。
【0025】
蓄積層は、ダイオード部が有するトレンチ部の延伸方向において、コンタクトホールが形成された領域の内側に形成されてよい。
【0026】
蓄積層は、トランジスタ部、ダイオード部およびゲートランナが形成された領域に形成されてよい。
【0027】
蓄積層の少なくとも一部は、ウェル領域内に形成されてよい。
【0028】
ダイオード部側のコンタクトホールは、平面視で、ウェル領域と離間して形成されてよい。
【0029】
トランジスタ部のトレンチ部の端部の少なくとも一部は、ウェル領域内に形成されてよい。
【0030】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0033】
図1は、実施例1に係る半導体装置100の一例を示す平面図である。半導体装置100は、活性領域102および外側領域105が形成された半導体基板を有する半導体チップである。半導体基板は、第1導電型を有する。本例においては、第1導電型をN型として、第2導電型をP型として説明する。ただし、第1導電型をP型として、第2導電型をN型としてもよい。
【0034】
活性領域102は、半導体装置100が駆動したときに電流が流れる領域である。活性領域102には、複数のトランジスタ部70およびダイオード部80が設けられる。また、活性領域102は、トランジスタ部70又はダイオード部80に隣接して、温度センサ90を有してもよい。
【0035】
トランジスタ部70は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタを含む。一例において、トランジスタ部70は、短冊状に配列された複数のトランジスタを備える。トランジスタ部70が備える複数のトランジスタは、互いに電気的に並列に接続され、ゲート、エミッタ、コレクタの各端子には同一の電位がそれぞれ印加される。本例のトランジスタ部70は、ダイオード部80の周囲を覆って形成されている。
【0036】
ダイオード部80は、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。一例において、ダイオード部80は、短冊状に配列された複数のダイオードを備える。ダイオード部80が備える複数のダイオードは、互いに電気的に並列に設けられ、エミッタ(又はアノード)、カソードの各端子にはそれぞれ同一の電位が印加される。
【0037】
温度センサ90は、半導体基板10のおもて面の上方に形成され、半導体装置100の温度に応じた信号を検出する。一例において、温度センサ90は、PNダイオードを備える。温度センサ90は、トランジスタ部70の温度を検出するために、トランジスタ部70の近傍に設けられるのが好ましい。但し、温度センサ90は、ダイオード部80の近傍に設けられてもよい。
【0038】
外側領域105は、活性領域102の外側に設けられる。活性領域102の外側とは、活性領域102により囲まれておらず、且つ、活性領域102の中心よりも半導体基板10の端部に近い領域を指す。外側領域105は、活性領域102を囲んでいてもよい。本例の外側領域105は、ゲートパッド106、センス部107および温度検出部108を備える。また、外側領域105の更に外側には、エッジ終端領域109等が設けられてよい。
【0039】
ゲートパッド106は、ゲートランナ46によりトランジスタ部70と接続されている。ゲートパッド106は、トランジスタ部70のゲートをゲート電位に設定する。トランジスタ部70のゲートとは、例えば、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部を指す。
【0040】
ゲートランナ46は、トランジスタ部70の周囲を覆うように形成されている。特に、ゲートランナ46は、トランジスタ部70とダイオード部80との間の境界領域に形成されることが好ましい。ゲートランナ46は、ポリシリコン等の導電性の材料で形成される。ゲートランナ46は、複数のトランジスタ部70と接続するとともに、ゲートパッド106に接続する。
【0041】
センス部107は、トランジスタ部70に流れる電流を検出する。一例において、センス部107には、トランジスタ部70に流れるメイン電流に比例し、且つ、メイン電流よりも小さい電流が流れる。例えば、センス部107は、トランジスタ部70と並列に接続され、同一のゲート電位が入力される。なお、センス部107には、トランジスタ部70に接続される抵抗よりも大きな抵抗が接続されてよい。
【0042】
温度検出部108は、温度センサ90と配線により接続された温度センサ端子の一例である。温度検出部108には、温度センサ90が検出した半導体装置100の温度を示す信号が入力される。温度検出部108は、入力された信号を外部に出力してもよい。また、半導体装置100は、温度センサ90の検出した温度に基づいて、駆動制御されてよい。なお、本例の温度センサ90の配線がゲートランナ46と一部交差している領域がある。この場合、一例において、ゲートランナ46を半導体基板のおもて面に熱酸化膜などの絶縁膜上に形成し、温度センサ90の配線をゲートランナ46の上方に層間絶縁膜などの絶縁膜を介して形成することにより、ゲートランナ46と温度センサ90の配線とが立体的に交差している。
【0043】
エッジ終端領域109は、半導体基板のおもて面側の電界集中を緩和する。エッジ終端領域109は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0044】
図2は、実施例1に係る半導体装置100のより詳細な平面図の一例を示す。本例の半導体装置100は、チップのおもて面側において、ゲートランナ46、エミッタ電極52、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタトレンチ部60、ウェル領域17、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15およびコンタクトホール54,55、56,57を備える。
【0045】
半導体基板のおもて面側の内部には、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタトレンチ部60、ウェル領域17、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15が形成される。また、半導体基板のおもて面の上方には、エミッタ電極52およびゲートランナ46が設けられる。なお、エミッタ電極52およびゲートランナ46と、半導体基板のおもて面との間には層間絶縁膜が形成されるが、
図1では省略している。
【0046】
コンタクトホール54,55、56,57は、半導体基板の上方に形成された層間絶縁膜を貫通して形成される。コンタクトホール54,55、56,57を形成する位置は特に本例に限られない。
【0047】
エミッタ電極52は、コンタクトホール54,56,57を通って半導体基板と接触する。エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。一例において、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミで形成される。エミッタ電極52は、タングステンを含む材料で形成される領域を有してもよい。本例のエミッタ電極52は、トランジスタ部70およびダイオード部80にそれぞれ対応して設けられている。
【0048】
トランジスタ部70は、トランジスタ動作を行う領域のことである。トランジスタ部70の端については、本図では便宜的に、トランジスタ動作を行う領域上に形成されたエミッタ電極52の端としているが、適宜変更可能である。
【0049】
ダイオード部80は、FWD等のダイオード動作を行う領域のことである。ダイオード部80の端については、本図では便宜的に、ダイオード動作を行う領域上に形成されたエミッタ電極52の端としているが、適宜変更可能である。
【0050】
ゲートランナ46は、コンタクトホール55を通って、ゲートランナ46下層のポリシリコン層45と電気的に接続される。本例のゲートランナ46は、ポリシリコン層45を介して半導体基板と接続されている。ゲートランナ46は、エミッタ電極52と同様に金属を含む材料で形成される。
【0051】
ダミートレンチ部30は、半導体基板のおもて面において予め定められた延伸方向に延伸して形成される。ダミートレンチ部30は、トランジスタ部70の領域において所定の配列方向に沿って、ゲートトレンチ部40と所定の間隔で1つ以上配列されている。本例のダミートレンチ部30の形状は、両端に曲線形状を有するループ型である。
【0052】
ゲートトレンチ部40は、対向部41および突出部43を有する。対向部41は、ダミートレンチ部30と対向する範囲において、上述した延伸方向に延伸して形成される。つまり、対向部41は、ダミートレンチ部30と平行に形成される。突出部43は、対向部41から更に延伸して、ダミートレンチ部30と対向しない範囲に形成される。本例において、ダミートレンチ部30の両側に設けられた2つの対向部41が、1つの突出部43により接続される。突出部43の少なくとも一部は曲線形状を有してよい。本例のゲートトレンチ部40は、両端に突出部43が形成されたループ型形状を有する。
【0053】
突出部43とゲートランナ46をつなぐように、ポリシリコン層45が形成される。本例の突出部43は、対向部41から最も離れた領域において、対向部41とは直交する方向に延伸する部分を有する。突出部43のうち、前記延伸する部分で、ゲートトレンチ部40内のポリシリコン層とポリシリコン層45とが接続されている。ポリシリコン層45は、コンタクトホール55を介してゲートランナ46と接続する。ゲートランナ46は、ゲートパッド106と接続する。以上により、外部回路等からゲートパッド106に印加されたゲート電位は、ゲートランナ46、ポリシリコン層45を介して、ゲートトレンチ部40内のポリシリコン層に印加される。
【0054】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、所定の配列方向において交互に配置される。また、各トレンチ部は一定の間隔で配置されてよい。ただし、各トレンチ部の配置は上記の例に限定されない。2つのダミートレンチ部30の間に複数のゲートトレンチ部40が配置されてよい。また、それぞれのダミートレンチ部30の間に設けられるゲートトレンチ部40の数は一定でなくともよい。
【0055】
コンタクトホール55は、ゲートランナ46下部の層間絶縁膜に形成される。
【0056】
エミッタトレンチ部60は、ダイオード部80が形成された領域に設けられる。エミッタトレンチ部60は、ループ型の形状と直線型の形状の両方を有してよい。また、本例のエミッタトレンチ部60は、ダミートレンチ部30および
ゲートトレンチ部40とトレンチ幅が対応するように設けられている。但し、エミッタトレンチ部60の形状は、トランジスタ部70およびダイオード部80のレイアウトに応じて適宜変更されてよい。
【0057】
ウェル領域17は、ゲートランナ46が設けられる領域から所定の範囲で形成される。また、ウェル領域17は、ゲートランナ46の下方に形成される。本例のウェル領域17は、ゲートランナ46からトランジスタ部70側とダイオード部80側とに延伸するように形成されている。ウェル領域17は、半導体基板が第1導電型の場合、半導体基板とは異なる第2導電型を有する。
【0058】
コンタクト領域15は、ベース領域14のおもて面において、ベース領域14よりも不純物濃度の高い第2導電型の領域である。本例のコンタクト領域15はP+型である。
【0059】
エミッタ領域12は、トランジスタ部70において、コンタクト領域15のおもて面の一部に、半導体基板よりも不純物濃度が高い第1導電型の領域として選択的に形成される。本例のエミッタ領域12はN+型である。コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成される。トランジスタ部70の1以上のコンタクト領域15および1以上のエミッタ領域12は、各トレンチ部に挟まれる領域において、トレンチ部の延伸方向に沿って交互に露出するように形成される。
【0060】
コンタクトホール54は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の上方に形成される。本例のコンタクトホール54は、エミッタ領域12とコンタクト領域15とにまたがって形成されている。コンタクトホール54は、エミッタ領域12のおもて面の全範囲を露出させるように形成されてよい。また、コンタクトホール54は、コンタクト領域15のおもて面の全範囲も露出させるように形成されてよい。但し、コンタクトホール54は、ベース領域14およびウェル領域17に対応する領域には形成されない。
【0061】
また、コンタクトホール54は、ダイオード部80において、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。一例において、トランジスタ部70のコンタクトホール54と、ダイオード部80のコンタクトホール54とは、各トレンチ部の延伸方向において同一の長さを有する。
【0062】
なお、ダイオード部80においては、ベース領域14の
おもて面にコンタクト領域15を形成せず、ベース領域14のみとしてもよい。これにより、ダイオード部80において、ドリフト領域18への少数キャリアの過剰な注入を抑制できる。
【0063】
コンタクトホール56は、トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30の上方に形成される。コンタクトホール56は、エミッタ電極52とダミートレンチ部30内に形成されたダミー導電部とを接続する。
【0064】
コンタクトホール57は、ダイオード部80において、エミッタトレンチ部60の上方に形成される。コンタクトホール57は、エミッタ電極52とエミッタトレンチ部60内に形成されたダミー導電部とを接続する。
【0065】
図3は、実施例1に係る半導体装置100のa−a'断面の一例を示す。本例の半導体装置100は、半導体基板10のドリフト領域18にライフタイムキラー47およびライフタイムキラー48を有する。なお、本例では、ゲートランナ46およびエミッタ電極52と、半導体基板10との間には層間絶縁膜26が図示されている。
【0066】
ライフタイムキラー47は、半導体基板10のおもて面側に形成され、キャリアのライフタイムを調整するために用いられる。ライフタイムキラー47を形成することにより、キャリアのライフタイムを短くできる。ライフタイムキラー47は、半導体基板10のおもて面側または裏面側からイオン等を照射して形成される。一例において、ライフタイムキラー47は、半導体基板10にヘリウムを照射することにより形成される。本例のライフタイムキラー47は、例えばダイオード部80のアノード領域側に形成され、アノード領域側のキャリアライフタイムを下げる。これにより、半導体装置100は、テール電流を小さくして、逆回復損失Errを低減できる。
【0067】
ライフタイムキラー48は、半導体基板10の裏面側に形成され、キャリアのライフタイムを短くする。ライフタイムキラー48は、例えば半導体基板10の裏面側から照射される。一例において、ライフタイムキラー48は、ヘリウムの照射により形成される。例えば、ライフタイムキラー48は、半導体装置100の定格逆電圧が印加された場合に、アノード領域と半導体基板10のn型領域との境界から広がる空乏層と接しない位置に形成される。
【0068】
本例の半導体基板10は、半導体基板10のおもて面側であって、ゲートランナ46の下方の少なくとも一部の領域にもライフタイムキラー47を有する。本明細書において、ゲートランナ46の下方とは、平面視で、ゲートランナ46の形成される領域であって、ゲートランナ46よりも半導体基板10の裏面側を指す。なお、本明細書において、平面視とは、半導体基板10のおもて面側から裏面側を見た場合の視点を指す。
【0069】
また、半導体基板10は、半導体基板10のおもて面側であって、ウェル領域17の下方の少なくとも一部の領域にもライフタイムキラー47を有してよい。これにより、不純物濃度が高いウェル領域17から、少数キャリアがドリフト領域18に過剰注入されることを抑制できる。本明細書において、ウェル領域17の下方とは、平面視で、ウェル領域17の形成される領域であって、ウェル領域17よりも半導体基板10の裏面側を指す。また、ウェル領域17の形成される領域とは、半導体基板10のおもて面において、ウェル領域17を形成するためのドーパントが注入される領域を指してよい。
【0070】
コレクタ領域22は、ゲートランナ46の下方の少なくとも一部の領域に設けられている。コレクタ領域22は、ウェル領域17の下方の少なくとも一部の領域に設けられていてもよい。本例のコレクタ領域22は、ゲートランナ46の下方の少なくとも一部の領域に設けられているので、トランジスタ部70とカソード領域28とを離間できる。よって、半導体装置100は、カソード領域28からの影響によるトランジスタ部70の誤動作を抑制できる。
【0071】
[比較例1]
図4は、比較例1に係る半導体装置500の構成を示す平面図である。本例の半導体装置500は、交互に配列されたトランジスタ部570およびダイオード部580を備える。半導体装置100と共通する符号で示される構成については、半導体装置100の場合と同様の機能を有する。半導体装置500は、ゲート端子103とトランジスタ部570とを接続するためのゲートランナ546を備える。
【0072】
ゲートランナ546は、交互に配列されたトランジスタ部570およびダイオード部580の周囲を囲むように配線される。本例のゲートランナ546は、トランジスタ部570同士の間と、ダイオード部580同士の間に設けられる。また、ゲートランナ546は、トランジスタ部570およびダイオード部580をまとめて囲むように形成されている。即ち、本例のゲートランナ546は、トランジスタ部570とダイオード部580との間の境界領域には設けられていない。
【0073】
図5は、比較例1に係る半導体装置500のヘリウム照射領域を示す。破線で示された領域は、半導体基板のおもて面側において、ヘリウムイオンが照射される領域である。ヘリウムは、ダイオード部580を中心に、ダイオード部580とその周辺の領域に照射されている。また、トランジスタ部570は、おもて面側にヘリウムを照射する必要がないものの、トランジスタ部570とダイオード部580との境界領域においては、半導体装置500の誤動作を防止するために、ヘリウムが照射される場合がある。そのため、本例の半導体装置500は、トランジスタ部570に対してもヘリウムを照射されている。
【0074】
図6は、比較例1に係る半導体装置500のより詳細な平面図である。本例の半導体装置500は、チップのおもて面側において、ゲートランナ546、エミッタ電極552、ゲートトレンチ部540、ダミートレンチ部530、エミッタトレンチ部560、ウェル領域517、エミッタ領域512、ベース領域514、コンタクト領域515およびコンタクトホール554,555、556,557を備える。
【0075】
半導体装置500は、トランジスタ部570とダイオード部580が配列方向に並んで配置されている。そのため、ダイオード部580とトランジスタ部570との境界にはゲートランナ546が設けられていない。ゲートランナ546は、トランジスタ部570とダイオード部580との間に設けられていないので、トランジスタ部570とダイオード部580は隣接して形成されている。
【0076】
図7は、比較例1に係る半導体装置500のb−b'断面の一例を示す。半導体装置500は、半導体基板510に形成されたダミートレンチ部530、ゲートトレンチ部540、エミッタトレンチ部560、コレクタ領域522、カソード領域582を備える。また、半導体装置500は、半導体基板510の下方にコレクタ電極524が形成されて、半導体基板510の上方に層間絶縁膜526およびエミッタ電極552が形成されている。なお、ゲートトレンチ部540はゲート端子551に接続され、ダミートレンチ部530およびエミッタトレンチ部560はエミッタ端子553に接続されている。
【0077】
半導体装置500は、半導体基板510のドリフト領域518に形成されたライフタイムキラー547およびライフタイムキラー548を有する。ライフタイムキラー547は、ダイオード部580に対応して半導体基板510のおもて面側に設けられる。ライフタイムキラー548は、トランジスタ部570およびダイオード部580に対応して半導体基板510の裏面側に設けられる。
【0078】
本例の半導体装置500は、トランジスタ部570とダイオード部580との間にゲートランナ546を有さない。半導体装置500は、誤動作を防止するために、半導体基板510のおもて面側であって、トランジスタ部570側にも、ライフタイムキラー547が設けられている。半導体装置500は、トランジスタ部570側にライフタイムキラー547が設けられることにより特性が悪化する場合がある。
【0079】
[実施例2]
図8は、実施例2に係る半導体装置100の構成の一例を示す。本例の半導体装置100は、活性領域102の端部に設けられた2つのダイオード部80a,80bを備える。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70、ダイオード部80および温度センサ90の配置の一例を示しており、要求される特性等に応じて各領域の面積等は適宜変更されてよい。例えば、トランジスタ部70およびダイオード部80は、所定の面積比を有するように大きさが決定される。
【0080】
ダイオード部80aは、活性領域102の一端に設けられる。ダイオード部80bは、ダイオード部80aが設けられた活性領域102の一端と異なる他端に設けられている。本例のダイオード部80bは、ダイオード部80aが設けられた一端と対向する活性領域102の端部に設けられている。このように、ダイオード部80は、活性領域102の
端部に配置されることにより、活性領域102の一端側においてトランジスタ部70と接することがない。よって、ダイオード部80に照射するヘリウムにより、トランジスタ部70に与える影響が小さくなる。
【0081】
トランジスタ部70は、活性領域102において、ダイオード部80a,80bが形成されていない領域に形成される。一例において、トランジスタ部70は、5つの領域に分割して配置されている。トランジスタ部70は、それぞれゲートランナ46により周囲が囲まれて設けられている。そのため、トランジスタ部70とダイオード部80との境界においては、必ずゲートランナ46が形成されている。これにより、トランジスタ部70の特性の悪化を抑制できる。
【0082】
温度センサ90は、トランジスタ部70に囲まれて形成される。より具体的には、温度センサ90は、活性領域102の中心付近のトランジスタ部70の内側に設けられる。これにより、温度センサ90は、トランジスタ部70の最も高温になりやすい領域の温度を測定できる。但し、温度センサ90は、活性領域102の中心以外のトランジスタ部70の付近の領域に設けられてもよい。また、温度センサ90は、ダイオード部80の近傍に設けられてもよい。本例の温度センサ90は、ダイオード部80aとダイオード部80bとの間に配置されている。
【0083】
[実施例3]
図9は、実施例3に係る半導体装置100の構成の一例を示す。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70、ダイオード部80および温度センサ90の配置の一例を示しており、要求される特性等に応じて各領域の面積等は適宜変更されてよい。
【0084】
ダイオード部80は、活性領域102の端部に形成される。特に本例のダイオード部80は、活性領域102の角部に形成されている。即ち、ダイオード部80は、活性領域102の端部に接する領域を多くすることにより、ダイオード部80とトランジスタ部70との境界領域が少なくなるように配置されている。よって、ダイオード部80に照射するヘリウムにより、トランジスタ部70に与える影響が小さくなる。
【0085】
トランジスタ部70は、活性領域102において、ダイオード部80が形成されていない領域に形成される。トランジスタ部70は、それぞれゲートランナ46が周囲を囲んで設けられている。そのため、トランジスタ部70とダイオード部80との境界においては、必ずゲートランナ46が形成されている。これにより、トランジスタ部70の特性の悪化を抑制できる。特に、本例のダイオード部80は、活性領域102の角部に設けられているので、トランジスタ部70と接する境界領域が2辺だけである。そのため、トランジスタ部70へのヘリウムの照射による影響が少ない。
【0086】
温度センサ90は、ダイオード部80の位置に応じて配置される。一例において温度センサ90は、配線がトランジスタ部70とダイオード部80との間に位置するように設けられる。これによりトランジスタ部70の面積を大きくすることができる。また、本例の温度センサ90は、温度センサ90と温度検出部108とを接続する配線が、ダイオード部80の1辺と隣接して設けられている。このように、ダイオード部80の周囲にもともとトランジスタ部70として動作しない無効領域を配置することにより、ダイオード部80に照射するヘリウムにより、トランジスタ部70に与える影響が更に小さくなる。
【0087】
[実施例4]
図10は、実施例4に係る半導体装置100の構成の一例を示す。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70、ダイオード部80および温度センサ90の配置の一例を示しており、要求される特性等に応じて各領域の面積等は適宜変更されてよい。
【0088】
トランジスタ部70は、活性領域102の中心に形成される。活性領域102の中心とは、完全に活性領域102の中心である必要はなく、トランジスタ部70の周囲にダイオード部80等の他の領域が形成されていることを含んでよい。また、トランジスタ部70は、中心に温度センサ90が配置され、温度センサ90と温度検出部108とを接続するための配線が通るための凹部を有する。本例のトランジスタ部70は、温度センサ90および配線との境界にゲートランナ46を有する。即ち、ゲートランナ46は、トランジスタ部70の凹部に沿って配置されている。
【0089】
ダイオード部80は、トランジスタ部70の周囲を囲むように形成される。本例のダイオード部80は、一様な幅を有するように形成されているが、各辺において異なる幅を有してもよい。例えば、ダイオード部80の幅は、トランジスタ部70とダイオード部80とが特定の面積比率を有するように調整される。また、ダイオード部80は、温度センサ90の配線を設けるための離間領域Sを有する。
【0090】
図11は、半導体装置100の断面の一例を示す。同図は、特に温度センサ90が形成された領域の断面について示している。
【0091】
温度センサ90は、PNダイオードを有する。温度センサ90は、PNダイオードの電流−電圧特性が温度に応じて変化することを利用して、半導体装置100の温度を検出する。温度センサ90は、例えばゲート絶縁膜49を介して半導体基板10の上方に配置されている。より具体的には、温度センサ90は、ウェル領域17の上方に形成されている。このように、温度センサ90は、トランジスタ部70として動作しない無効領域であるウェル領域17の上方に形成されているので、トランジスタ部70の領域を狭めることなく配置できる。本例の温度センサ90は、第1導電型領域91、第2導電型領域92、第1接続部93、第2接続部94および絶縁膜95を備える。
【0092】
第1導電型領域91および第2導電型領域92は、PNダイオードを構成する。例えば、第1導電型領域91はN型半導体で形成され、第2導電型領域92はP型半導体で形成される。
【0093】
第1接続部93および第2接続部94は、第1導電型領域91および第2導電型領域92にそれぞれ電気的に接続される。また、第1接続部93および第2接続部94は、配線を通じて温度検出部108に電気的に接続される。
【0094】
絶縁膜95は、第1接続部93および第2接続部94が第1導電型領域91および第2導電型領域92以外の接続不要な領域との電気的に接続されないように絶縁する。
【0095】
[実施例5]
図12は、実施例5に係る半導体装置100のa−a'断面の一例を示す。本例の半導体装置100は、ライフタイムキラー47およびコレクタ領域22の配置例を示している。また、本例の半導体装置100は、
図2のa−a'断面について図示されている。
【0096】
ライフタイムキラー47は、一例において、半導体基板10のおもて面側であって、ゲートランナ46の下方の全域に設けられる。本例の半導体装置100は、ライフタイムキラー47がゲートランナ46の下方の全域に形成されているが、トランジスタ部70側の領域には形成されていないので、トランジスタ部70の特性の悪化を抑制している。また、ライフタイムキラー47は、ウェル領域17の下方の全域に形成されてもよい。この場合も、ライフタイムキラー47は、トランジスタ部70側の領域に形成されていなくてよい。
【0097】
コレクタ領域22は、ゲートランナ46の下方の全域に設けられている。本例のコレクタ領域22は、ゲートランナ46の下方の全域に形成されているが、ダイオード部80側の領域に設けられていない。即ち、ダイオード部80の領域に影響を与えることなく、トランジスタ部70とカソード領域28とを離間できる。また、半導体装置100は、カソード領域28からの影響によるトランジスタ部70の誤動作を抑制できる。
【0098】
コレクタ領域22は、ウェル領域17の下方の全域に設けられてもよい。この場合も、コレクタ領域22は、ダイオード部80側の領域に設けられなくてよい。
【0099】
コレクタ領域22は、ダイオード部80に形成されたエミッタ電極52の端に対応する裏面側の位置を越えて形成されてよい。これにより、ダイオード部80のキャリアがトランジスタ部70側に廻りこむ影響を抑制できる。
【0100】
[実施例6]
図13は、実施例6に係る半導体装置100のa−a'断面の一例を示す。本例の半導体装置100は、ライフタイムキラー47およびコレクタ領域22の配置例を示している。また、本例の半導体装置100は、
図2のa−a'断面について図示されている。
【0101】
ライフタイムキラー47は、一例において、トランジスタ部70側の少なくとも一部に設けられる。本例のライフタイムキラー47は、半導体基板10のおもて面側であって、ゲートランナ46の下方の全域にも設けられている。即ち、本例のライフタイムキラー47は、ダイオード部80側からトランジスタ部70にまで延伸して形成されている。本例の半導体装置100は、ライフタイムキラー47をトランジスタ部70側にまで設けているので、カソード領域28からの影響によるトランジスタ部70の誤動作を抑制できる。
【0102】
コレクタ領域22は、ダイオード部80側の少なくとも一部に設けられている。また、コレクタ領域22は、ゲートランナ46の下方の全域にも設けられている。カソード領域28は、ゲートランナ46の下方に形成されていない。即ち、本例のカソード領域28は、実施例5に係る半導体装置100よりも、トランジスタ部70側から更に離れて形成されている。これにより、本例の半導体装置100は、カソード領域28からの影響によるトランジスタ部70の誤動作を更に抑制しやすくなる。また、コレクタ領域22は、ダイオード部80側の少なくとも一部、およびウェル領域17の下方の全域にも設けられていてよい。
【0103】
なお、ライフタイムキラー47のトランジスタ部70側の端の位置と、コレクタ領域22のダイオード部80側の端の位置は、前述の構成について適宜組合せ可能である。例えばライフタイムキラー47のトランジスタ部70側の端の位置は、
図3のように、ゲートランナ46あるいはウェル領域17の下方の一部に形成されてよく、コレクタ領域22のダイオード部80側の端の位置は、
図13のように、ダイオード部80側の少なくとも一部に設けるように延伸してもよい。これにより、ライフタイムキラー47がトランジスタ部70の特性に与える影響を十分小さくできる。
【0104】
他に、例えばライフタイムキラー47のトランジスタ部70側の端の位置は、
図13のように、ゲートランナ46あるいはウェル領域17の下方を越えてトランジスタ部70の一部に延伸するように形成されてよく、コレクタ領域22のダイオード部80側の端の位置は、
図3のように、ゲートランナ46あるいはウェル領域17の下方の一部に形成されてよい。これにより、ダイオード部80からゲートランナ46下部あるいはウェル領域17下部に蓄積される少数キャリアが、トランジスタ部70側に与える影響を抑制できる。
【0105】
[実施例7]
図14は、実施例7に係る半導体装置100の一例を示す平面図である。本例の半導体装置100は、ゲートトレンチ部40の内部にゲート絶縁膜を介して埋め込まれたポリシリコン層とゲートランナ46とが直接接続された構造を有する。
【0106】
トランジスタ部70は、ループ型形状を有するダミートレンチ部30と、直線形状を有するゲートトレンチ部40とを備える。但し、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40をループ型形状とするか直線形状とするかは適宜変更されてよい。
【0107】
ダイオード部80は、実施例1の場合と同様に、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40のトレンチ幅と対応するように、ループ型形状および直線形状からなるエミッタトレンチ部60を備える。但し、エミッタトレンチ部60の形状は、トランジスタ部70およびダイオード部80のレイアウトに応じて適宜変更されてよい。
【0108】
ゲートランナ46は、トランジスタ部70とダイオード部80との間に設けられる。本例のゲートランナ46は、直線状に形成されている。
【0109】
ゲートトレンチ部40は、ゲートランナ46の延伸方向と平行に形成された領域と、ダミートレンチ部30の延伸方向と平行に形成された領域とを有する。ゲートトレンチ部40の少なくとも一部は、コンタクトホール55を介してゲートランナ46と接続されるように形成されている。ゲートトレンチ部40の少なくとも一部は、ゲートランナ46の下方に形成されてよい。
【0110】
図15は、実施例7に係る半導体装置100のc−c'断面の一例を示す。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70とダイオード部80との間にゲートランナ46を有するので、カソード領域28からの影響によるトランジスタ部70の誤動作を抑制できる。
【0111】
ライフタイムキラー47は、一例において、トランジスタ部70側の少なくとも一部に設けられる。本例のライフタイムキラー47は、半導体基板10のおもて面側であって、ゲートランナ46の下方の全域にも設けられている。即ち、本例のライフタイムキラー47は、ダイオード部80側からトランジスタ部70にまで延伸して形成されている。本例の半導体装置100は、ライフタイムキラー47をトランジスタ部70側にまで設けているので、カソード領域28からの影響によるトランジスタ部70の誤動作を抑制できる。
【0112】
なお、本例のように、ゲートトレンチ部40がゲートランナ46と直接接続された場合であっても、他の実施例で示したようにライフタイムキラー47とゲートランナ46との関係を適宜設定してよい。
【0113】
コレクタ領域22は、ダイオード部80に形成されたエミッタ電極52の端に対応する裏面側の位置を越えて形成されてよい。これにより、ダイオード部80のキャリアがトランジスタ部70側に廻りこむ影響を抑制できる。
【0114】
[実施例8]
図16は、実施例8に係る半導体装置100の一例を示す平面図である。
図17は、実施例8に係る半導体装置100のd−d'断面の一例を示す。本例の半導体装置100は、実施例1に係る半導体装置100の構成に加えて蓄積層16を更に備える。
【0115】
蓄積層16は、ベース領域14の裏面側に形成される。蓄積層16は、半導体基板10の不純物濃度よりも高濃度に形成される。より具体的には、蓄積層16の不純物濃度は、ドリフト領域18の不純物濃度よりも高い。蓄積層16は、隣接するトレンチ間に形成される。一例において、蓄積層16の不純物濃度は、1E16cm
−3以上、1E18cm
−3以下である。なお、Eは10のべき乗を意味し、例えば1E16cm
−3は1×10
16cm
−3を意味する。例えば、蓄積層16は、半導体基板10のおもて面側からリン等のN型不純物を注入することにより形成される。蓄積層16を設けることにより、オン状態においてコレクタ領域22からドリフト領域18に注入された正孔のベース領域14への流れ込みが抑制されるので、エミッタ領域12からベース領域14への電子の注入促進効果が高まる。これにより、半導体装置100のオン電圧が低減される。
【0116】
本例の蓄積層16は、トランジスタ部70に形成されるがダイオード部80には形成されていない。また、蓄積層16は、平面視で、コンタクトホール54が形成された領域に対応して形成される。本例の蓄積層16は、トランジスタ部70が有するトレンチ部の延伸方向において、コンタクトホール54が形成された領域の内側に形成されている。これにより、本例の半導体装置100は、蓄積層16によるキャリア引抜き効果を高めて耐量の低下を抑制する。また、トランジスタ部70のトレンチ部の端部の少なくとも一部は、ウェル領域17内に形成されていることが好ましい。これにより、半導体装置100の耐圧が向上する。
【0117】
[実施例9]
図18は、実施例9に係る半導体装置100の一例を示す平面図である。
図19は、実施例9に係る半導体装置100のd−d'断面の一例を示す。本例の半導体装置100は、実施例1に係る半導体装置100の構成に加えて蓄積層16を更に備える。
【0118】
本例の蓄積層16は、トランジスタ部70およびダイオード部80の両方に形成される。但し、蓄積層16は、ウェル領域17には、形成されていない。つまり、ゲートランナ46が形成された領域には、蓄積層16が形成されていない。また、蓄積層16は、平面視で、コンタクトホール54が形成された領域に対応して形成される。トランジスタ部70側のコンタクトホール54は、平面視で、ウェル領域17と離間して形成されている。また、ダイオード部80側のコンタクトホール54も、平面視で、ウェル領域17と離間して形成されている。
【0119】
本例の蓄積層16は、トランジスタ部70が有するトレンチ部の延伸方向において、コンタクトホール54が形成された領域の内側に形成されている。また、ダイオード部80においても同様に、蓄積層16は、ダイオード部80が有するトレンチ部の延伸方向において、コンタクトホール54が形成された領域の内側に形成されている。これにより、本例の半導体装置100は、蓄積層16によるキャリア引抜き効果を高めて耐量の低下を抑制する。なお、ダイオード部80に蓄積層16を形成する場合、おもて面側のライフタイムキラー47が省略されてもよい。
【0120】
[実施例10]
図20は、実施例10に係る半導体装置100の一例を示す平面図である。
図21は、実施例10に係る半導体装置100のd−d'断面の一例を示す。本例の半導体装置100は、実施例1に係る半導体装置100の構成に加えて蓄積層16を更に備える。
【0121】
本例の蓄積層16は、トランジスタ部70およびダイオード部80の両方に形成される。更に本例の蓄積層16の少なくとも一部は、ウェル領域17内に形成されている。つまり、蓄積層16は、ゲートランナ46が形成された領域にも、蓄積層16が形成されている。よって、本例の蓄積層16は、トランジスタ部70、ダイオード部80およびゲートランナ46が形成された領域に形成されている。ここで、断面図において、ウェル領域17に形成された蓄積層を蓄積層16aとし、ウェル領域17以外に形成された蓄積層を蓄積層16bとして示している。蓄積層16bは、ベース領域14に形成されている。蓄積層16bは、実施例8および9の蓄積層16と同様にN型の高濃度層である。蓄積層16aは、蓄積層16bのようにN型となる必要はない。即ち、蓄積層16aは、蓄積層16bと同一のプロセスで形成されてよいが、ウェル領域17に形成されるのでP型のままであってよい。また、ウェル領域17の蓄積層16
aには、N型の不純物が含まれていてよい。ウェル領域17におけるN型の不純物の化学的な濃度は、ウェル領域17のP型の不純物の化学的な濃度より低い。これにより、半導体装置100は、耐圧および耐量の低下を抑制できる。なお、ダイオード部80に蓄積層16を形成する場合、おもて面側のライフタイムキラー47が省略されてもよい。
【0122】
図22は、オン電圧Von(V)とターンオフ損失Eoff(mJ)との関係を示す。実施例1に係る半導体装置100は、比較例1に係る半導体装置500よりもターンオフ損失Eoff(mJ)が低減されている。これは、ダイオード部80が中央に設けられることにより、トランジスタ部70おもて面のライフタイムキラー導入領域が小さくなり、オン電圧Von(V)とターンオフ損失Eoff(mJ)のトレードオフが改善したことによる。
【0123】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0124】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。