(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878852
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20210524BHJP
B65D 1/42 20060101ALI20210524BHJP
B65D 23/10 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/42
B65D23/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-228893(P2016-228893)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-83654(P2018-83654A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 武
【審査官】
▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−145056(JP,A)
【文献】
特開2012−171661(JP,A)
【文献】
米国特許第04804097(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00−1/48
B65D 23/00−25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内方に陥没する一対の把持用凹部が、容器胴部の側面に対向して設けられた合成樹脂製容器であって、
前記把持用凹部が、縦長の輪郭に画成されたパネル部を含み、
前記パネル部が、高さ方向に沿って延在する凹溝と、前記凹溝と交差する方向に沿って延在して高さ方向に沿って列設された複数の凸リブとを備え、
前記凸リブが、前記凹溝上に不連続部を有して左右に分断されて配置され、左側に配置された前記凸リブと、右側に配置された前記凸リブとが同一線上に位置して対をなすように設けられていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記凸リブが、前記凹溝内に前記凸リブの一端が突出して配置されている請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記パネル部の横方向中央部に前記凹溝が配置され、前記凹溝の両側縁側に位置するパネル面が傾斜して、前記凹溝が前記把持用凹部の最深部となるように、前記パネル部が形成されている請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を把持し易くするための一対の把持用凹部が、容器胴部の側面に対向して設けられた合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて、射出成形や圧縮成形などによって有底筒状のプリフォームを作製し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形によってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。
【0003】
また、この種の容器のなかでも比較的容量が大きい容器にあっては、内容物が充填されると重くなってしまうため、これを持ち上げたり、持ち運んだりする際に、使用者が手指を入れて、その重さに耐えて容器を把持し易くなるように、容器内方に陥没する一対の把持用凹部が、容器胴部の側面に対向して設けられたものが知られている。
【0004】
そして、このような把持用凹部を容器胴部に設けるにあたり、例えば、特許文献1には、凹部が反転して容器外方に突出する、いわゆる、バックリングが発生し難くなるように、凹部を補強するとともに、指先によるグリップをし易くする補強リブ(凸リブ)を、凹部内に横断状に設け、凹部の縦方向中央部付近に位置する補強リブについては、凹部の底面からだけでなく、凹部の両側面からも立ち上るように設けることで、凹部の耐内圧強度を高めることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−119038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の容器にあっては、従前より、その軽量化や、使用樹脂量の削減による低コスト化のために、可能な限り容器を薄肉に成形する試みがなされている。近年にあっては、このような薄肉化の要求が益々厳しくなってきており、容器の薄肉化が進むほど、強度を確保するための工夫が必要となる。
【0007】
このため、特許文献1では、凹部の底面からだけでなく、凹部の両側面からも立ち上るように凸リブを設けることで、凹部の耐内圧強度を高めようとしている。しかしながら、把持用凹部内に横断状に凸リブが設けられていると、薄肉化に伴って内圧に対する強度が不足してくるにつれて、この凸リブが起点となって、例えば、凹部底面の縦方向中央部が屈曲するように変形して、バックリングが発生するようになってしまい、耐内圧強度を高めるには限界があった。
【0008】
本発明は、上記したような事情に鑑みてなされたものであり、容器を把持し易くするために容器胴部に設けられた把持用凹部の耐内圧強度が、従来にも増して高められた合成樹脂製容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る合成樹脂製容器は、容器内方に陥没する一対の把持用凹部が、容器胴部の側面に対向して設けられた合成樹脂製容器であって、前記把持用凹部が、縦長の輪郭に画成されたパネル部を含み、前記パネル部が、高さ方向に沿って延在する凹溝と、前記凹溝と交差する方向に沿って延在
して高さ方向に沿って列設された複数の凸リブとを備え、前記凸リブが、前記凹溝上に不連続部を有して左右に分断されて配置され
、左側に配置された前記凸リブと、右側に配置された前記凸リブとが同一線上に位置して対をなすように設けられている構成としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、把持用凹部が含むパネル部に、高さ方向に沿って延在するように設けられた凹溝と、凹溝上に不連続部を有して左右に分断されて配置されるように設けられた凸リブとの組み合わせにより、把持用凹部の耐内圧強度を、従来にも増して高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す説明図であり、(a)は、平面図、(b)は、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
本実施形態に係る合成樹脂製容器の一例として、
図1に、容量2.7Lの容器1を示す。
図1(a)は、容器1の平面図であり、
図1(b)は、容器1の側面図である。また、
図2は、容器1の肉厚を省略して示す
図1(b)のA−A断面図である。
【0014】
図1に示す容器1は、熱可塑性樹脂を用いて射出成形や圧縮成形などにより有底筒状のプリフォームを作製し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などによって、口部2、肩部3、胴部4、及び底部5を備えた所定の容器形状に成形される。
【0015】
このようにして容器1を成形するにあたり、熱可塑性樹脂としては、二軸延伸ブロー成形が可能な任意の樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,非晶ポリアリレート,ポリ乳酸,ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステル,これらの樹脂あるいは他の樹脂とブレンドされたものなどを用いることができる。特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが、好適に用いられる。また、ポリカーボネート,アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン−エチレン共重合体,ポリエチレンなども用いることができる。
【0016】
口部2は、内容物の取り出し口となる円筒状の部位である。かかる口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのねじ山20が設けられており、内容物を充填した後に、口部2に蓋体を取り付けることによって、容器1内を密封できるようになっている。
【0017】
また、口部2の下端は、胴部4に向かって拡径して口部2と胴部4との間をつなぐ肩部3に連接しており、図示する例において、肩部3は円錐台状に形成されている。胴部4は、容器1の高さ方向の大半を占める部分であり、上端が肩部3に連接し、下端が底部5に連接している。
【0018】
ここで、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、この状態で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0019】
また、胴部4は、概ね円筒状に形成されるとともに、容器内方に陥没する一対の把持用凹部6が、胴部4の側面に対向して設けられている。把持用凹部6は、縦長の輪郭に画成されたパネル部60を含み、容器1を持ち上げたり、持ち運んだりする際に、一方の把持用凹部6に親指を入れるとともに、他方の把持用凹部6に親指以外の指を入れて、これらの指先を、それぞれの把持用凹部6の底面を形成するパネル部60に添わせるようにして、容器1を把持できるようになっている。
【0020】
胴部4の側面に、このような把持用凹部6を対向して設けることで、内容物が充填された容器1を、その重さに耐えて把持し易くなるようにすることができる。把持用凹部6の具体的な形態は、一般的な人の手の大きさを考慮して、把持用凹部6内に手指を収まりよく入れることができるとともに、パネル部60に添わせた指先に力が入り易いように適宜設計することができる。
【0021】
把持用凹部6の底面を形成するパネル部60は、把持用凹部6に入れた手指、特に、親指以外の指を縦に並べて、パネル部60に添わせることができるように、縦長の輪郭で画成されるように形成される。図示する例において、パネル部60は、縦長矩形状の輪郭に画成されているが、例えば、パネル部60を画成する輪郭は、縦長のトラック形状又は楕円状などとしてもよい。
【0022】
さらに、パネル部60は、高さ方向に沿って延在する凹溝61と、凹溝61と交差する方向に沿って延在する複数の凸リブ62とを備えている。
図示する例では、凹溝61上に不連続部を有して左右に分断されて配置された凸リブ62が同一直線上に位置し、左側に配置された凸リブ62と、右側に配置された凸リブ62とが対をなすようにして設けられている。そして、これらの凸リブ62は、パネル部60の高さ方向に沿って等間隔に三列に並んでおり、そのうち一つの列が高さ方向中央部に位置して設けられている。
【0023】
パネル部60に、高さ方向に沿って延在する凹溝61を設けることで、パネル部60の剛性が向上する。凹溝61の形状は特に限定されないが、パネル部60の剛性を向上させるためには、例えば、長手方向に直交する断面が、容器内方に凸の円弧状や台形状に形成されるようにするのが好ましい(
図2参照)。
【0024】
また、パネル部60は、その横幅方向中央部に凹溝61が配置され、凹溝61の両側縁側に位置するパネル面が傾斜して、凹溝61が把持用凹部6の最深部となるように形成するのが好ましい(
図2参照)。このようにすることで、パネル部60の剛性がより向上するとともに、パネル部60に添わせた指先に力が入り易くなるようにすることができる。
【0025】
凹溝61と交差する方向に沿って延在する凸リブ62は、パネル部60に添わせた指先が引っ掛り易くなるように、例えば、長手方向に直交する断面が、容器外方に突出する円弧状や台形状となるように形成することができる。かかる凸リブ62を、凹溝61上に不連続部を有して左右に分断されて配置されるようにすることで、凸リブ62を起点とするパネル部60の変形が生じ難くなる。
【0026】
凸リブ62を設けるにあたり、凹溝61に対して左側に配置された凸リブ62と、凹溝61に対して右側に配置された凸リブ62との離間距離Dは、凹溝61の横幅Wの範囲内(D≦W)で適宜調整することができる(
図2参照)。この際、図示する例のように、凹溝61内に凸リブ62の一端が突出して配置されるように凸リブ62を設けるのが好ましく、このようにすることで、パネル部60の変形がより生じ難くすることができる。
なお、図示する例では、高さ方向に直交する方向に延在するように凸リブ62が設けられているが、凸リブ62の延在方向は、指先の引っ掛り易さなどを考慮して、高さ方向に直交する方向に対して傾かせてもよい。
【0027】
本実施形態によれば、このようなパネル部60によって、把持用凹部6の底面が形成されるようにすることで、パネル部60に、高さ方向に沿って延在するように設けられた凹溝61と、凹溝61上に不連続部を有して左右に分断されて配置されるように設けられた凸リブ62との組み合わせにより、把持用凹部6の耐内圧強度を、従来にも増して高めることができる。その結果、容器内の圧力上昇によって、把持用凹部6にバックリングが発生してしまうのを有効に抑制することができる。
【0028】
また、容器1に内容物を充填する際には、充填に伴う圧力(充填圧)や内容物の重さによって、容器外方に膨らむように変形させようとする負荷が把持用凹部6に作用する。内容物の充填量は、液面の高さで制御されることがあるため、充填時に把持用凹部6が容器外方に膨らんでしまうと、正確な充填量の制御ができなくなってしまうが、本実施形態によれば、このような不具合も有効に回避することができる。
【0029】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0030】
本発明において、パネル部60は、高さ方向に沿って延在する凹溝61と、凹溝61と交差する方向に沿って延在する複数の凸リブ62とを備え、凸リブ62が、凹溝61上に不連続部を有して左右に分断されて配置されるように形成されていればよい。それ以外のパネル部60の細部の構成は、前述した実施形態に限定されず、把持用凹部6に求められる耐内圧強度や把持し易さ、二軸延伸ブロー成形に際しての賦形性や離形性などを総合的に勘案して、適宜設計することができる。
【0031】
また、本発明に係る合成樹脂製容器の容量は、特に限定されるものではないが、実用上、容量1.8L、2.7L、4Lなどの比較的容量が大きい用途に特に好適であり、その内容物としては、例えば、焼酎、ウイスキーなどの酒類、食用油、醤油その他の調味料などを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、容器を把持し易くするための一対の把持用凹部が、容器胴部の側面に対向して設けられた合成樹脂製容器として、種々の用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 容器
2 口部
3 肩部
4 胴部
5 底部
6 把持用凹部
60 パネル部
61 凹溝
62 凸リブ