(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の樹脂組成物、シート状基材、接着フィルム、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0012】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物を含む樹脂組成物であって、(C)成分の含有量が、樹脂成分を100質量%とした場合、1質量%〜50質量%である。これにより、誘電正接が低く、めっき密着性及び下地密着性が良好で、スミア除去性に優れた絶縁層をもたらす、相溶性の良好な樹脂組成物を提供可能となる。
【0013】
「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する不揮発成分のうち、後述する(D)無機充填材を除いた成分をいう。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含有する。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びパーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)、及び/又は1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)であることが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用してもよい。
【0016】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、新日鉄住金化学社製「YD−8125G」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鐵化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン)、三菱化学社製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、ダイキン工業社製の「E−7432」、「E−7632」(パーフルオロアルキル型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」、「HP−7200HH」、「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「jER1010」、(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0018】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:15の範囲が好ましく、1:0.1〜1:10の範囲がより好ましく、1:0.3〜1:3の範囲がさらに好ましい。
【0019】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な引張破壊強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0020】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0021】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0022】
<(B)硬化剤>
樹脂組成物は(B)硬化剤を含有する。硬化剤としては、(A)エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。(B)成分は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましく、誘電正接を低くする観点から、活性エステル系硬化剤であることが好ましい。
【0023】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0024】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN−495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」等が挙げられる。
【0025】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0026】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0027】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L−65TM」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱化学社製)、「YLH1030」(三菱化学社製)、「YLH1048」(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0028】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
【0029】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL−950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0030】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01〜1:3の範囲が好ましく、1:0.015〜1:2がより好ましく、1:0.02〜1:1.5がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物層の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0032】
硬化剤の含有量は特に限定されないが、樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。また、下限は特に制限はないが好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。硬化剤の含有量を5質量%以上とすることで、めっき密着性及び下地密着性を向上させることができる。また、60質量%以下とすることで活性エステル系硬化剤においてはスミア除去性が向上し、フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤においては誘電正接を低くすることができる。
【0033】
<(C)5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物>
樹脂組成物は、樹脂成分を100質量%とした場合、1質量%〜50質量%の(C)5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物を含有する。
【0034】
先述したように、従来、誘電正接とスミア除去性とはトレードオフの関係にあったが、(C)5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物を所定量含有させることにより、誘電正接を低くできるとともにスミア除去性を向上させることが可能となる。5員環以上の環状エーテルは、分子の動きが制限されていることから誘電正接が低いという性質がある。また、5員環以上の環状エーテルは極性があることから、ある程度の親水性がある。親水性があることによりスミアの除去がしやすくなりスミア除去性が向上する。さらに、極性及び親水性があることにより、相溶性、めっき密着性及び下地密着性が向上すると考えられる。但し、本発明の技術的範囲は、ここで述べた効果が得られる仕組みの説明によって制限されるものではない。
【0035】
環状エーテル構造に含まれる酸素原子数は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。下限は特に限定されないが、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
【0036】
5員環以上の環状エーテル構造としては、5員環以上であれば特に限定されず、単環、多環又は縮合環であってもよい。また、(C)成分は、複数個の環状エーテル構造を有していてもよい。環状エーテル構造は、5〜10員環が好ましく、5〜8員環がより好ましく、5〜6員環がさらに好ましい。具体的な5員環以上の環状エーテル構造としては、フラン構造、テトラヒドロフラン構造、ジオキソラン構造、ピラン構造、ジヒドロピラン構造、テトラヒドロピラン構造、ジオキサン構造等が挙げられ、中でも、相溶性を向上させる観点から、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物は、ジオキサン構造を含むことが好ましい。ジオキサン構造とは、1,2−ジオキサン構造、1,3−ジオキサン構造及び1,4−ジオキサン構造を含む概念であり、1,3−ジオキサン構造が好ましい。
【0037】
また、5員環以上の環状エーテル構造には、アルキル基及びアルコキシ基等の置換基が結合していてもよい。これら置換基の炭素原子数は、通常1〜6である(好ましくは1〜3)。
【0038】
(C)成分は、誘電正接を低くする観点から、炭素−炭素不飽和結合を有することが好ましく、炭素−炭素二重結合を有することがより好ましい。炭素−炭素不飽和結合は、環状エーテル構造内に有していてもよく、環状エーテル構造外に有していてもよいが、中でも、後述する官能基として有することが好ましい。炭素−炭素不飽和結合は(C)成分中に複数有していてもよい。
【0039】
(C)成分は、誘電正接を低くし、(A)成分と反応しやすくする観点から、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、アリル基、スチリル基、及びプロペニル基からなる群から選択される1種以上の官能基を有することが好ましく、ビニル基を有することがより好ましい。官能基は、(C)成分の何れかに有していればよく、環状エーテル構造内に有していてもよく、環状エーテル構造外に有していてもよい。官能基は複数有していてもよい。
【0040】
5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物は、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【化2】
(式(1)中、環Aは5員環以上の環状エーテル構造を有する2価の基を表し、B
1及びB
2はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、C
1及びC
2はそれぞれ独立に官能基を表す。)
【0041】
環Aは5員環以上の環状エーテル構造を有する2価の基を表す。5員環以上の環状エーテル構造は上記した5員環以上の環状エーテル構造と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0042】
5員環以上の環状エーテル構造を有する2価の基としては、具体的に、フラン−2,5−ジイル基、テトラヒドロフラン−2,5−ジイル基、ジオキソラン−2,5−ジイル基、ピラン−2,5−ジイル基、ジヒドロピラン−2,5−ジイル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,2−ジオキサン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ジオキサン−2,5−ジイル基、5−エチル−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基等が挙げられ、5−エチル−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0043】
B
1及びB
2はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基が好ましい。2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、−C(=O)−、−S−、−SO−、−NH−で表される基などが挙げられ、これらの基を複数組み合わせた基であってもよい。
【0044】
置換基を有していてもよいアルキレン基としては、炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキレン基、又は炭素原子数1〜3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1−ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1−ジメチルエチレン基が好ましい。
【0045】
アルキレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、−OH、−O−C
1−6アルキル基、−N(C
1−6アルキル基)
2、C
1−6アルキル基、C
6−10アリール基、−NH
2、−CN、−C(O)O−C
1−6アルキル基、−COOH、−C(O)H、−NO
2等が挙げられる。
【0046】
ここで、「C
p−q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp〜qであることを表す。例えば、「C
1−6アルキル基」という表現は、炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。
【0047】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0048】
置換基を有していてもよいアルキニレン基としては、炭素原子数2〜10のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2〜6のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2〜5のアルキニレン基がさらに好ましい。アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基が挙げられる。アルキニレン基が有していてもよい置換基としては、アルキレン基が有していてもよい置換基と同様である。
【0049】
置換基を有していてもよいアリーレン基としては、炭素原子数6〜14のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6〜10のアリーレン基がより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。アリーレン基が有していてもよい置換基としては、アルキレン基が有していてもよい置換基と同様である。
【0050】
置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基としては、炭素原子数3〜15のヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数3〜9のヘテロアリーレン基がより好ましく、炭素原子数3〜6のヘテロアリーレン基がさらに好ましい。ヘテロアリーレン基としては、例えば、フランジイル基、ピリジンジイル基、チオフェンジイル基等が挙げられる。ヘテロアリーレン基が有していてもよい置換基としては、アルキレン基が有していてもよい置換基と同様である。
【0051】
これらの中でも、B
1及びB
2は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、エステル結合、エーテル結合から1以上を選択して組み合わせた基が好ましく、置換基を有していてもよいアルキレン基、エステル結合から1以上を選択して組み合わせた基がより好ましい。
【0052】
C
1及びC
2はそれぞれ独立に官能基を表す。官能基としては、例えば、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、アリル基、スチリル基、プロペニル基、エポキシ基が挙げられ、ビニル基がより好ましい。
【0053】
以下、(C)成分の具体例(例示化合物)を示すが、(C)成分はこれらに限定されるものではない。
【化3】
【0054】
(C)成分としては、市販品を用いてもよく、例えば、新中村化学工業社製の「A−DOG」(上記具体例の化合物)、日本化薬社製「KAYARAD R−604」(上記具体例の化合物)等が挙げられる。
【0055】
(C)成分の含有量は、樹脂成分を100質量%とした場合、1質量%以上であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。上限は50質量%以下、好ましくは48質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。含有量を1質量%以上とすることにより、誘電正接を低くし、さらにスミア除去性を向上させることができ、50質量%以下とすることにより、めっき密着性及び下地密着性を向上させることができる。
【0056】
エポキシ樹脂と(C)成分との質量比は(エポキシ樹脂:(C)成分の質量)、1:0.01〜1:100の範囲が好ましく、1:0.1〜1:90の範囲がより好ましく、1:0.1〜1:80の範囲がより好ましい。このような範囲内とすることで、相溶性を向上させることができる。
【0057】
<(D)無機充填材>
樹脂組成物は、誘電正接を低くし、スミア除去性を向上させる観点から、(A)〜(C)成分の他に(D)無機充填材を含有していてもよい。
【0058】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
無機充填材の平均粒径は、表面粗さの小さい絶縁層を得る、及び微細配線形成性向上の観点から、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、アドマテックス社製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C−MJE」、「YA010C」、電気化学工業社製「UFP−30」、トクヤマ社製「シルフィルNSS−3N」、「シルフィルNSS−4N」、「シルフィルNSS−5N」、アドマテックス社製「SO−C2」、「SO−C1」等が挙げられる。
【0060】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−500」、島津製作所社製「SALD−2200」等を使用することができる。
【0061】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、上記フッ素化合物であるフッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましく、フッ素含有シランカップリング剤で処理されていることがより好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM−7103」(3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0062】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、無機充填材100質量部に対して、0.2質量部〜5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部〜3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部〜2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0063】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m
2以上が好ましく、0.1mg/m
2以上がより好ましく、0.2mg/m
2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m
2以下が好ましく、0.8mg/m
2以下がより好ましく、0.5mg/m
2以下が更に好ましい。
【0064】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0065】
樹脂組成物が無機充填材を含有する場合、無機充填材の含有量は、誘電正接を低くし、スミア除去性を向上させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上である。樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、絶縁層の機械強度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、又は75質量%以下である。
【0066】
<(E)硬化促進剤>
一実施形態において、樹脂組成物は、(E)硬化促進剤を含有し得る。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、有機過酸化物系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤、有機過酸化物系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0068】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
【0069】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0070】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱化学社製の「P200−H50」等が挙げられる。
【0071】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
【0072】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0073】
有機過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。有機過酸化物系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、日油社製の「パークミルD」等が挙げられる。
【0074】
樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%〜1質量%が好ましく、0.01質量%〜0.5質量%がより好ましく、0.01質量%〜0.1質量%がさらに好ましい。
【0075】
<(F)インデンクマロン樹脂>
一実施形態において、樹脂組成物は、(F)インデンクマロン樹脂を含有し得る。インデンクマロン樹脂としては、例えば、インデン及びクマロンの共重合体、インデン、クマロン及びスチレンの共重合体等を挙げることができる。
【0076】
インデンクマロン樹脂中のクマロン成分の含有比率は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上である。上限は好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
【0077】
インデンクマロン樹脂中のインデン成分の含有比率は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上である。上限は好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
【0078】
インデンクマロン樹脂がインデン、クマロン及びスチレンの共重合体である場合、スチレン成分の含有比率は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。上限は好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下である。
【0079】
インデンクマロン樹脂の具体例としては、日塗化学社製の「H−100」、「V−120S」、「V−120」等が挙げられる。
【0080】
樹脂組成物がインデンクマロン樹脂を含有する場合、相溶性を向上させる観点から、インデンクマロン樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1〜3質量%が好ましく、0.3〜2質量%がより好ましく、0.5〜1.5質量%がさらに好ましい。
【0081】
<(G)熱可塑性樹脂>
一実施形態において、樹脂組成物は、(G)熱可塑性樹脂を含有し得る。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、特に好ましくは40,000以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下である。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0083】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0084】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX−5Z)、KSシリーズ(例えばKS−1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0085】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0086】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0087】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のビニル基を有するオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE−2St 1200」等が挙げられる。
【0088】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0089】
中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。したがって好適な一実施形態において、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が好ましく、重量平均分子量が40,000以上のフェノキシ樹脂が特に好ましい。重量平均分子量が40,000以上のフェノキシ樹脂を用いることで配線回路の微細化が可能となる。
【0090】
樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1〜10質量%が好ましく、1.5〜5質量%がより好ましく、2質量%〜5質量%がさらに好ましい。
【0091】
<(H)難燃剤>
一実施形態において、樹脂組成物は、(H)難燃剤を含有し得る。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0092】
難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA−HQ」、大八化学工業社製の「PX−200」等が挙げられる。難燃剤としては加水分解しにくいものが好ましく、例えば、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等が好ましい。
【0093】
樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましい。
【0094】
<(I)有機充填材>
一実施形態において、樹脂組成物は、(I)有機充填材を含有し得る。(I)成分を含有させることで、接着フィルムの樹脂組成物層の硬化物の引張破壊強度を向上させることができる。有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0095】
ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
【0096】
樹脂組成物が有機充填材を含有する場合、有機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましく、0.3〜5質量%、又は0.5〜3質量%がさらに好ましい。
【0097】
<(J)任意の添加剤>
一実施形態において、樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0098】
<樹脂組成物の物性、用途>
本発明の樹脂組成物は、誘電正接が低く、めっき密着性及び下地密着性が良好で、スミア除去性に優れる絶縁層をもたらすことができ、また、相溶性も良好である。したがって本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
【0099】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、誘電正接が低いという特性を示す。即ち、誘電正接が低い絶縁層をもたらす。誘電正接としては、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.0045以下、さらに好ましくは0.004以下である。下限は特に限定されないが、0.0001以上等とし得る。誘電正接の測定は、後述する<誘電正接の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0100】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、めっき等からなる導体層との密着性(めっき密着性)に優れるという特性を示す。即ち、良好なめっき密着性を示す絶縁層をもたらす。めっき密着性としては、好ましくは0.3kgf/cmを超え、より好ましくは0.31kgf/cm以上、さらに好ましくは0.32kgf/cm以上である。上限は特に限定されないが、10kgf/cm以下、又は1kgf/cm以下等とし得る。めっき密着性の測定は、後述する<めっき密着性の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0101】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、銅箔等との密着性(下地密着性)に優れるという特性を示す。即ち、良好な下地密着性を示す絶縁層をもたらす。下地密着性としては、好ましくは0.3kgf/cmを超え、より好ましくは0.31kgf/cm以上、さらに好ましくは0.32kgf/cm以上である。上限は特に限定されないが、10kgf/cm以下、又は1kgf/cm以下等とし得る。下地密着性の測定は、後述する<下地密着性の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0102】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、ビアホール形成時に発生するスミアが除去しやすい(スミア除去性に優れる)という特性を示す。即ち、良好なスミア除去性を示す絶縁層をもたらす。スミア除去性に優れることから、ビアホール底部の壁面側から測定した最大スミア長は、好ましくは3μm未満、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。下限は特に限定されないが、0.01μm以上等とし得る。スミア除去性の測定は、後述する<ビアホール底部のスミア除去性の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
【0103】
樹脂組成物は、(C)成分を所定量含有することから、相溶性に優れるという特性を示す。相溶性に優れることから、樹脂組成物は、好ましくは30μm以上(より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは50μm以上)の粗粒の析出、油滴が観察されない。
【0104】
[シート状基材]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含むシート状基材の形態で用いることが好適である。シート状基材としては、以下に示す接着フィルム、プリプレグが好ましい。
【0105】
<接着フィルム>
一実施形態において、接着フィルムは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、樹脂組成物層は本発明の樹脂組成物から形成される。
【0106】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは50μm以下又は40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0107】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0108】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0109】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0110】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0111】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」、東レ社製「ルミラーT60」帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0112】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0113】
接着フィルムは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0114】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0115】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0116】
接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0117】
<プリプレグ>
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0118】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されないが、通常、10μm以上である。
【0119】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0120】
プリプレグの厚さは、上述の接着フィルムにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0121】
[プリント配線板、プリント配線板の製造方法]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層、第1の導体層、及び第2の導体層を含む。絶縁層は、第1の導体層と第2の導体層との間に設けられていて、第1の導体層と第2の導体層とを絶縁している(導体層は配線層ということがある)。
【0122】
第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みは、好ましくは6μm以下、より好ましくは5.5μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。下限については特に限定されないが0.1μm以上とし得る。第1導体層と第2の導体層との間隔(第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚み)とは、
図1に一例を示したように、第1の導体層1の主面11と第2の導体層2の主面21間の絶縁層3の厚みt1のことをいう。第1及び第2の導体層は絶縁層を介して隣り合う導体層であり、主面11及び主面21は互いに向き合っている。第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みは、後述する<導体層間の間隔(導体層間の絶縁層の厚み)の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0123】
なお、絶縁層全体の厚みt2は、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、又は10μm以下である。下限については特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上等とし得る。
【0124】
プリント配線板は、上述の接着フィルムを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0125】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0126】
内層基板と接着フィルムの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。接着フィルムを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に接着フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0127】
内層基板と接着フィルムの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0128】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0129】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された接着フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0130】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0131】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0132】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0133】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)、硬化時間は5分間〜120分間の範囲(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)とすることができる。
【0134】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。
【0135】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)〜(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。この場合、それぞれの導体層間の絶縁層の厚み(
図1のt1)は上記範囲内であることが好ましい。
【0136】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0137】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃〜80℃の膨潤液に絶縁層を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
【0138】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上である。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さRqは、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である.下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0139】
工程(V)は、導体層を形成する工程である。内層基板に導体層が形成されていない場合、工程(V)は第1の導体層を形成する工程であり、内層基板に導体層が形成されている場合、該導体層が第1の導体層であり、工程(V)は第2の導体層を形成する工程である。
【0140】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0141】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0142】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
【0143】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0144】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0145】
本発明の接着フィルムは、部品埋め込み性にも良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。部品内蔵回路板は公知の製造方法により作製することができる。
【0146】
本発明の接着フィルムを用いて製造されるプリント配線板は、接着フィルムの樹脂組成物層の硬化物である絶縁層と、絶縁層に埋め込まれた埋め込み型配線層と、を備える態様であってもよい。
【0147】
他の実施形態において、プリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に接着フィルムを用いる場合と同様である。
【0148】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0149】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0150】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0151】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0152】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0153】
<実施例1>
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)40部、をソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解し、その後室温にまで冷却した。無機充填材(アドマテックス社製「SO−C2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m
2)330部を混合し、3本ロールで混練し分散させた。そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65%のトルエン溶液)92.3部、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)15部、インデンクマロン樹脂(日塗化学社製「H−100」)5部、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の5%のMEK溶液2部及びジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)0.13部を混合し、回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を作製した。
【0154】
樹脂ワニス1を、アルキド系離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、リンテック社製「AL−5」、厚さ38μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80〜110℃(平均95℃)で5分間乾燥し、接着フィルム1を作製した。
【0155】
<実施例2>
実施例1において、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)を40部から25部に変更し、無機充填材(アドマテックス社製「SO−C2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m
2)を330部から320部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65%のトルエン溶液)を92.3部から61.5部に変更し、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)を15部から40部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス2及び接着フィルム2を作製した。
【0156】
<実施例3>
実施例1において、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)を15部から1.5部に変更し、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)を40部から45部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65%のトルエン溶液)を92.3部から84.6部に変更し、さらに熱可塑性樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200」、不揮発分60%のトルエン溶液)22.5部を混合した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス3及び接着フィルム3を作製した。
【0157】
<実施例4>
実施例1において、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)を40部から20部に変更し、無機充填材(アドマテックス社製「SO−C2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m
2)を330部から310部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65%のトルエン溶液)を92.3部から46.2部に変更し、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)を15部から50部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス4及び接着フィルム4を作製した。
【0158】
<比較例1>
実施例1において、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)を40部から20部に変更し、無機充填材(アドマテックス社製「SO−C2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m
2)を330部から310部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65%のトルエン溶液)を92.3部から46.2部に変更し、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)を15部から60部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス5及び接着フィルム5を作製した。
【0159】
<比較例2>
実施例3において、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)を1.5部から0.5部に変更し、熱可塑性樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200」、不揮発分60%のトルエン溶液)を22.5部から24.2部に変更した。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂ワニス6及び接着フィルム6を作製した。
【0160】
<比較例3>
実施例1において、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)15部を、ビニル基を有する樹脂(新中村化学工業社製「23G」)15部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス7及び接着フィルム7を作製した。
【0161】
<比較例4>
実施例1において、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)15部を、ビニル基を有する樹脂(新中村化学工業社製「A−DCP」)15部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス8及び接着フィルム8を作製した。
【0162】
<比較例5>
実施例1において、5員環以上の環状エーテル構造を有する化合物(新中村化学工業社製「A−DOG」)15部を、熱可塑性樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200」、不揮発分60%のトルエン溶液)25部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス9及び接着フィルム9を作製した。
【0163】
[評価方法]
<硬化物性評価用サンプルの作製>
実施例及び比較例で得た接着フィルムを、190℃で90分間熱硬化させ、支持体のPETフィルムを剥離することによりシート状の硬化物評価用サンプルを作製した。
【0164】
<誘電正接の測定>
硬化物評価用サンプルから、幅2mm、長さ80mmの試験片を切りだした。切り出した試験片について、アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製の測定装置「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定し、以下の基準で評価した。
【0165】
<相溶性の評価>
実施例及び比較例で作製した接着フィルムの樹脂組成物層側を、面積1cm
2の範囲で顕微鏡(ハイロックス社製「DIGITAL MICROSCOPE KH−8700」)を用いて観察し、粗粒の有無を確認し、以下の基準で評価した。
良:樹脂組成物層に50μm以上の粗粒の析出、油滴が観察されない。
不良:樹脂組成物層に50μm以上の粗粒の析出、油滴が観察される。
【0166】
<評価基板の調製>
(1)基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この積層板は、表面に第1の導体層としての銅箔を有する。この積層体の両面を、メック社製「CZ8101」に浸漬させて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行い、内層回路基板を作製した。
【0167】
(2)接着フィルムのラミネート処理
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP−500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaで30秒間圧着することにより行った。その後、オーブンで190℃、90分間加熱して樹脂組成物層を硬化させ絶縁層を得た。
【0168】
(3)ビアホール形成
日立ビアメカニクス社製CO
2レーザー加工機(LC−2E21B/1C)を使用し、マスク径1.60mm、フォーカスオフセット値0.050、パルス幅25μs、パワー0.66W、アパーチャー13、ショット数2、バーストモードの条件で絶縁層の一部にレーザーを照射し、当該絶縁層の一部に穴あけ加工を施した。穴あけ加工により形成した穴(ビアホール)のトップ径(直径)は、50μmであった。その後、支持体であるPETフィルムを剥離した。
【0169】
(4)粗化処理
絶縁層を形成した内装回路基板を、膨潤液、酸化剤、中和液の表面処理剤のキットを用いて湿式粗化処理した。具体的には、絶縁層を形成した内装回路基板を、膨潤液である、アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬し、次に酸化剤として、アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液)に40℃で5分間浸漬し、その後80℃で30分間乾燥した。得られた基板を評価基板Aとした。
【0170】
(5)セミアディティブ工法によるめっき
評価基板Aを、PdCl
2を含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。浸漬した評価基板Aを、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後、硫酸銅電解めっきを施し、30μmの厚さで第2の導体層を形成した。得られた第2の導体層を有する評価基板Aを、190℃にて60分間アニール処理し、得られた基板を評価基板Bとした。
【0171】
<めっき密着性の測定>
評価基板Bの第2の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機AC−50C−SL)で掴み、室温(25℃)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、以下の基準で評価した。
【0172】
<ビアホール底部のスミア除去性の評価>
評価基板Aのビアホール底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られた画像からビアホール底部の壁面側からの最大スミア長を測定した。ここで、「最大スミア長」とは、ビア底面の円周から円中心へのスミアの最大長さを意味する。評価は以下の通りである。
良:最大スミア長が3μm未満
不良:最大スミア長が3μm以上
【0173】
<下地密着性の測定>
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱山社製「3EC−III」(電界銅箔、35μm)の光沢面をメック社製メックエッチボンド「CZ−8101」に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、防錆処理(CL8300)を施した。この銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
【0174】
(2)銅箔のラミネートと絶縁層形成
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP−500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaで30秒間圧着することにより行った。ラミネート処理された接着フィルムから支持体であるPETフィルムを剥離した。支持体を剥離した樹脂組成物層上に、「3EC−III」のCZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で、ラミネートした。そして、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、サンプルを作製した。
【0175】
(3)銅箔引き剥がし強さ(密着性)の測定
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機、「AC−50C−SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定し、以下の基準で評価した。
【0176】
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、下記のとおりである。
YX4000HK:ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」)
HPC−8000−65T:活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」)
A−DOG:ジオキサンアクリルモノマー(新中村化学工業社製「A−DOG」)
A−DCP:ジシクロペンタンアクリルモノマー(新中村化学工業社製「A−DCP」)
23G:エチレンオキシドアクリルモノマー(新中村化学工業社製「23G」)
OPE−2St 1200:熱可塑性樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE−2St 1200」)
H−100:インデンクマロン樹脂(日塗化学社製「H−100」)
SO−C2:球状シリカ(アドマテックス社製「SO−C2」)
パークミルD:ジクミルパーオキサイド(日油社製)
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
なお、表中、配合量は固形分換算値であり、「(A)成分の含有量(質量%)」、「(B)成分の含有量(質量%)」、及び「(C)成分の含有量(質量%)」は、樹脂成分を100質量%とした場合の含有量を表す。
【0177】
【表1】
【0178】
表1の結果から、(A)〜(C)成分を含有し、(C)成分が所定量含有する実施例1〜4は、誘電正接、相溶性、めっき密着性、下地密着性、及びスミア除去性の全てが優れていることがわかる。
【0179】
一方、(A)〜(C)成分を含有するが(C)成分の含有量が樹脂成分を100質量%とした場合50質量%を超える比較例1は、めっき密着性及び下地密着性が実施例1〜4と比べて劣ることがわかる。
(A)〜(C)成分を含有するが(C)成分の含有量が樹脂成分を100質量%とした場合1質量%未満である比較例2は、スミア除去性が実施例1〜4と比べて劣ることがわかる。
(C)成分を含有しない比較例3は、誘電正接が実施例1〜4と比べて劣ることがわかる。
また、(C)成分を含有しない比較例4〜5は、相溶性が悪いことから誘電正接、めっき密着性、下地密着性、及びスミア除去性を測定することができなかった。
【0180】
なお、実施例1〜4において、(D)成分〜(G)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。