特許第6878870号(P6878870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6878870積層体、積層体の製造方法およびフレキシブルデバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878870
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法およびフレキシブルデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20210524BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20210524BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20210524BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B32B27/34
   B32B7/02
   C08G73/10
   H05K3/00 L
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-246263(P2016-246263)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-99802(P2018-99802A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】山下 全広
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/098888(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/050933(WO,A1)
【文献】 特開2011−020393(JP,A)
【文献】 特開2016−120629(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106252269(CN,A)
【文献】 特表2015−536555(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0303408(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0076485(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08G 73/10
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機基板、無機基板と近接する第1のポリイミド層、第1のポリイミド層の無機基板とは反対側に位置する第2のポリイミド層を含む積層体において、
第1のポリイミド層がピロメリット酸二無水物と、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールとの縮合物であり、
第2のポリイミド層の膜厚斑が5%以下であり、かつ、引っ張り破断強度が90MPa以上であり、
無機基板と第1のポリイミド層との接着強度をF1、
第1のポリイミド層と第2のポリイミド層との450℃30分の熱処理を行った後の接着強度をF2、
とした場合に F1≧2×F2 であり、
第1のポリイミド層の熱分解温度をTemp1、
第2のポリイミド層の熱分解温度をTemp2、
とした場合に
Temp1≧Temp2
であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
第1のポリイミド層の平均膜厚をT、第1のポリイミド層のエッジ部のアンダーカットをU、とした場合に、
U>T
である事を特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
無機基板と、第1のポリイミド層との間にシランカップリング剤層を有する事を特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
第2のポリイミド層の、第1のポリイミド層とは反対側にデバイスが形成されている事を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層体
【請求項5】
前記デバイスが電気配線層を含む事を特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記デバイスが半導体素子を含む事を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記デバイスがガスバリア層を含む事を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
少なくとも、無機基板に、第1のポリイミド層となるポリイミド樹脂の溶液、または前駆体溶液を塗布し、加熱を伴うプロセスにより第1のポリイミド層を形成する工程、次いで、第1のポリイミド層の無機基板と反対側の面に、膜厚斑が5%以下で有り引っ張り破断強度が90MPa以上であるポリイミドフィルムをラミネートすることにより第2のポリイミド層を形成する工程、を含む事を特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項4から7のいずれかに記載の積層体の、第1のポリイミド層と第2ポリイミド層の間を剥離することにより第2のポリイミド層上に形成されたデバイスを得ることを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物からなる支持体層とポリイミド層とから構成されてなる積層体であり、さらにデバイス層を有する積層体であり、それら積層体の製造方法であり、フレキシブルデバイスの製造方法に関するものである。
更に詳しくは、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子など薄膜からなり、微細な加工が必要となるデバイスを、ポリイミドフィルム表面に形成するにあたり、一時的に、ポリイミドフィルムを支持体となる無機物からなる基板に貼り合わせた積層体とし、デバイス形成後に剥離するフレキシブルデバイスの製造に用いられる積層体に関する発明であり、さらにその積層体を用いたフレキシブルデバイスの製造方法に関する発明である。
特に詳しくは、耐熱性の無機物からなる支持体と、無機物と比肩しうる耐熱性と絶縁性を有し、さらに無機物と同程度の線膨張係数を有する薄いポリイミド層とを構成成分とすることにより、精緻な構造を有する電子デバイスを得るために有用に用いられる積層体に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示デバイスは、テレビジョンのような大型ディスプレイや、携帯電話、パソコン、スマートフォンなどの小型ディスプレイ等、各種機器、設備における情報表示用途に使用されている。一例として有機EL表示装置は、一般には支持基材であるガラス基板上に薄膜トランジスタ(以下、TFT)を形成し、電極、発光層、電極を順次形成し、最後に別途ガラス基板や多層薄膜等で気密封止して作られる。
【0003】
ここで、支持基材であるガラス基板を従来のガラス基板からフレキシブルな樹脂基材へと置き換えることができれば、表示デバイスの薄型・軽量・フレキシブル化が実現でき、表示デバイスの用途を更に広げ、より大きな市場の獲得が期待できる。しかしながら、従来の表示デバイスを製造するための設備は、リジッドな板材であるガラス基板を支持体に用いる前提で設計されており、フレキシブルなフィルム基板を取り扱うことは出来ない。かかる課題に対処するため、様々な手法による技術開発が行われてきた。
【0004】
非特許文献1には、ガラス基板やSiウェハ基板などのリジッド基板上にデバイスを作製し、その後にデバイス層をリジッド基板から剥離してフィルム基板へ転写する方法が開示されている。かかる技術は比較的古くから検討されているが、転写時にデバイスを破損するケースが少なくない。これは転写時にリジッド基板からデバイス層を剥離する高低に困難性があるためである。
【0005】
非特許文献2には、Roll to Roll 工程によりフィルム上に直接デバイスを作製する方法が開示されている。Roll to Roll プロセスは、フレキシブルで巻き取りが可能なフィルム材料を基板に用いた製品においては理想的な手法で有り、事実フレキシブルプリント配線板やTAB、ないしCOFなどのフィルム半導体パッケージの量産においては実用化されている。しかしながら、ディスプレイ装置のような高精細な微細加工を必要とされる用途においては、極めて高いアライメント精度を大面積で確保する必要があるため装置が極めて大がかりで高価となる問題がある。
【0006】
非特許文献3には、ガラス基板やSiウェハ基板といったリジッド基板を支持体に用い、支持体上に高分子フィルム層を形成し、高分子フィルム上にてデバイスを形成した後にリジッド基板から高分子フィルム事デバイスを剥離することによりフレキシブルデバイスを得る方法が開示されている。かかるプロセスは、従来の表示デバイスや半導体デバイスの製造に用いる装置を適用できるという点で優れた手法であるが、転写法と同様に、デバイス層を支持体から剥離する工程に困難性がある。まずリジッドな支持体上に直接的に高分子フィルム層を形成するには、高分子の溶液ないしは高分子前駆体の溶液を、支持体に塗布・乾燥・硬化する必要があるが、経験的にこのような手法で形成されたフィルム層は比較的脆くなりやすく、剥離時に破損するリスクが大きい。さらに、支持体と高分子フィルム層との接着性を制御することが困難であり、接着力が強すぎると、剥離の際にフィルムが破損するリスクが高くなる。
【0007】
かかる問題に対処するために、支持体表面に所謂剥離層を形成することによって、高分子フィルム層の接着力を低く制御し、剥離時のフィルム破損を避けようとする技術が提案されている。
特許文献1には、フレキシブル電子デバイスに適用される基板構造であって、支持基板、支持基板を第1の面積で覆う剥離層、ならびに、 前記剥離層および前記キャリアを第2の面積で覆うフレキシブル基板を含み、前記第2の面積が前記第1の面積より大きく、かつ、前記フレキシブル基板が、前記剥離層の前記キャリアに対する密着度よりも高い密着度を有する、基板構造なる技術が開示されており、具体例としてガラス基板にパリレンないし環状オレフィンからなる第1の層を形成した後にポリイミド前駆体ないしポリイミド樹脂溶液を塗布・乾燥・硬化して支持体上で直接ポリイミドフィルムを第2の層として形成し、さらにデバイスを形成して第1の層と第2の層の間で剥離する技術が例示されている。すなわち第1の層であるパリレンないし環状オレフィン樹脂層を剥離層として用いた事例である。本技術においてはパリレンないし環状オレフィン樹脂の耐熱性が不十分であるために、用いる事ができるポリイミド樹脂は低温形成が可能なタイプに限定され、デバイス形成プロセスにおいても高温を用いる事はできない。
【0008】
特許文献2には、支持基板の上層に樹脂フィルム(a)を形成する工程と、樹脂フィルム(a)の上層に半導体素子を形成する工程と、半導体素子を形成した樹脂フィルム(a)から支持基板を剥離する工程とを含む半導体装置の製造方法であって、樹脂フィルム(a)は、膜厚が1μm以上30μm以下であり、波長400nm以上800nm以下の可視光の透過率が80%以上であり、3%重量減少温度が300℃以上であり、融点が280℃以上であり、ガラス転移温度が250℃以上であり、 前記樹脂フィルム(a)は、下記式(I)にて示されるポリベンゾオキサゾール、及び下記式(v)にて示される脂環式構造を有するポリイミドからなる群から選択される少なくとも1つの高分子材料を含む、前記半導体装置の製造方法が開示されており、さらに好ましくは、支持基板と樹脂フィルム(a)との間に樹脂層(b)を形成する工程をさらに含む半導体装置の製造方法が記載されている。すなわちここに樹脂層(b)が剥離層として機能する。本技術で用いられている高分子フィルム層は所謂透明耐熱フィルムと呼ばれるところの、無色性と耐熱性の両方を満足する高分子フィルムである。かかるタイプの高分子材料は300℃を越えるプロセスに暴露されると着色が顕著になる。また線膨張係数が比較的大きいため、デバイス形成後の平面性に問題が出ることが多い。またポリベンゾオキサゾールをフィルム材料として用いる場合は、フィルム形成温度が極めて高いため、剥離層に用いる事が出来る高分子材料は極めて限定されてしまう、さらにポリベンゾオキサゾール樹脂によるフィルムは脆いためにフレキシブルデバイスの基板として適しているとは云えない。
【0009】
特許文献3には、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層とが直接積層された積層フィルムと支持体とを、前記積層フィルムの第一ポリイミド層面と前記支持体の一面とを接着層を介して貼り合わせた後に、積層フィルム上に所定の表示部を形成し、その後、第一ポリイミド層と第二ポリイミド層との境界面で分離して、第二ポリイミド層からなるポリイミド基材上に表示部を備えた表示装置を得ることを特徴とする表示装置の製造方法が開示されている。すなわち、あらかじめ、剥離層として機能する第1のポリイミド層とフレキシブル基板となる第2のポリイミド層からなる二層構造のフィルムを製作し、その後に剥離層と支持基板とを接着することにより、剥離層を挟んだ構造を実現する技術である。
本技術においては、剥離層として機能するフィルム、すなわち接着性に乏しいフィルムと支持基板とを接着する必要がある点が第1の困難性である。支持体と比較的容易に接着できる剥離層の場合、フレキシブル基板との間の接着性も高くなるために肝心の剥離工程に困難性を生じてしまう。またさらに、支持体との接着性が乏しい剥離層の場合には、剥離層とフレキシブル基板との接着性も低いため、支持体と貼り合わせる以前に、剥離層とフレキシブル基板とが剥離してしまうリスクが非常に高いと云わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許4834758号公報
【特許文献2】特許5408848号公報
【特許文献3】特許5898328号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】T.Shimoda el al., in IEDM Tech. Dig.,pp289-292, (1999)
【非特許文献2】Mitani et al., Jpn. J. Appl. Phys. 47, pp8708, (2008)
【非特許文献3】Ian French el al., SID 05 Digest, pp1634-1637, (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
リジッドな基板を支持体として用い、支持体上に設けたフィルム層にデバイス層を作った後に剥離してフレキシブルデバイスを得る方法は、従来のリジッドなデバイスを製造する為の手法、製造装置を流用できることから、工業生産に有利な手法として、注目されてきた。
複雑な多層構造を有し、精密なアライメントが必要な高精細なデバイスの製造には、柔軟で形状維持性に乏しく、寸法安定性に劣るフィルム基板をそのまま用いるには高い困難性が伴うため、かかるリジッドな支持体を併用する手法は、現実性が高い手法であると云える。
しかし、かかる技術を実現するためには、寸法安定性に優れたリジッドで堅牢な基板にフレキシブル基板材料を仮固定し、デバイス作成後にこの剥離する方法において、フレキシブル基板と支持基板との剥離がスムースに実施できかつ、かつデバイス製造プロセス中には剥離することのない工程通過性を両立するフレキシブル基板/支持基板との積層体を実現する必要がある。
【0013】
しかしながら一般に半導体デバイスを作製する場合、半導体層形成に用いられるCVD法においては、一般に高温条件でCVDを行った方が、半導体層の結晶性が高くなり、また基板への密着力も高くなることが知られている。しかしながら、従来考案されてきたフレキシブル基板と無機支持体との積層体では、高温において、支持体とフレキシブル基板との間の接着を保持することが困難である。フレキシブル基板材料自体に耐熱性の低い材料を用いた場合、接着材や耐熱性の低い剥離層を用いた場合には、接着材ないし剥離層の熱劣化が生じ、炭化により微粉塵が生じる場合、あるいは分解ガスが発生して支持体とフレキシブル基板間にブリスターが生じる場合、あるいは接着力が維持できずデバイス加工工程中で剥がれてしまう場合、また逆にフレキシブル基板と支持体ないし剥離層との間の接着力が熱化学反応により強固になってしまい、フレキシブル基板を剥離することが困難になる場合、などの種々の問題が生じていた。
【0014】
耐熱性のあるフレキシブル基板としてポリイミドフィルムを使用することができ、ポリイミドの樹脂組成とポリイミド作製プロセスを選ぶことで、450℃程度の耐熱性を持つポリイミドフィルムを実現可能である。かかるポリイミドフィルムをフレキシブル基板に用いれば、フレキシブル基板の炭化やガス発生を抑制可能である。が、プロセス温度が470℃を越えた場合、好ましくは490℃を越えた場合、更に好ましくは500℃を越えた場合にはフレキシブル基板と支持基板との剥離が困難となる問題が発生する場合がある。470℃以上、好ましくは490℃以上、更に好ましくは500℃を越えた場合、かかる温度領域では、ポリイミドの熱分解と、再イミド化の両方のプロセスが同時進行し、反応中途に生じる活性基が支持基板である、ガラス、シリコンウェハなどの表面に存在する活性基と化学反応を生じるものと推察される。かかる高温での化学反応を制御することは非常に困難である。
このような場合の解決手段の一つとして、支持基板側から紫外線レーザーなどの高エネルギー線を照射し、不易シブル基板と支持基板との間の結合を切断する手法が知られているが、装置が高価な上に、大面積に適用しようとする場合には前面をスキャニングしなければならないため、プロセス時間が長大となりコスト面で大きな問題となる。
【0015】
ガラス基板などの無機基板にポリイミドの前駆体を塗布乾燥、加熱してイミド化し、得られたポリイミド層をフレキシブル基板として利用しようという手法は古くから試みられているが、このようなプロセスで得られたポリイミドフィルムは、製造過程において、片側がガラス基板で密封されており、溶剤成分や、反応副生成物、特に前駆体に存在するアミド酸のイミド化反応に伴い生成した水の発散がフィルム面の片側だけに限定されるため、結果としてフィルムの膜厚方向に不均質さが生じ、物性が傾斜し、内部応力による反りの発生や、フィルム自体が脆く低強度とななどの問題があった。これらの問題により、このようにして得られるポリイミド層は、フレキシブル基板として満足できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、いずれもポリイミド樹脂層からなる第一樹脂層と第二樹脂層とが支持体上に積層された状態で、第二樹脂層上に所定のデバイスを形成し、その後、第一樹脂層と第二樹脂層との境界面で分離することで、第二樹脂層からなるフレキシブルな樹脂基材上にデバイスを備えたフレキシブルデバイスが極めて効率的に得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成である。
【0017】
[1] 無機基板、無機基板と近接する第1のポリイミド層、第1のポリイミド層の無機基板とは反対側に位置する第2のポリイミド層を含む積層体において、
第1のポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物であり、
第2のポリイミド層の膜厚斑が5%以下であり、かつ、引っ張り破断強度が200MP以上であり、
無機基板と第1のポリイミド層との接着強度をF1、
第1のポリイミド層と第2のポリイミド層との接着強度をF2、
とした場合に F1≧2×F2 であり、
第1のポリイミド層の熱分解温度をTemp1、
第2のポリイミド層の熱分解温度をTemp2、
とした場合に
Temp1≧Temp2
であることを特徴とする積層体。
[2] 第1のポリイミド層の平均膜厚をT、第1のポリイミド層のエッジ部のアンダーカットをU、とした場合に、
U>T
である事を特徴とする[1]に記載の積層体。
[3] 無機基板と、第1のポリイミド層との間にシランカップリング剤層を有する事を特徴とする[1]または[2]に記載の積層体。
[4] 第2のポリイミド層の、第1のポリイミド層とは反対側にデバイスが形成されている事を特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の積層体
[5] 前記デバイスが電気配線層を含む事を特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記デバイスが半導体素子を含む事を特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] 前記デバイスがガスバリア層を含む事を特徴とする[1]から[6]のいずれかに記載の積層体。
[8] 少なくとも、無機基板に、第1のポリイミド層となるポリイミド樹脂の溶液、または前駆体溶液を塗布し、加熱を伴うプロセスにより第1のポリイミド層を形成する工程、次いで、第1のポリイミド層の無機基板と反対側の面に、膜厚斑が5%以下で有り引っ張り破断強度が90MPa以上であるポリイミドフィルムをラミネートすることにより第2のポリイミド層を形成する工程、を含む事を特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[9] [4]から[7]のいずれかに記載の積層体の、第1のポリイミド層と第2ポリイミド層の間を剥離することにより第2のポリイミド層上に形成されたデバイスを得ることを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
【0018】
さらに本発明は以下の構成を有する事が好ましい
[10]前記第2のポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムであることを特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[11]前記第2のポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも分子内にエーテル結合を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムであることを特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[12]前記第2のポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともフェニレンジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムであることを特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[13]前記第2のポリイミド層がビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの縮合物のフィルムであることを特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[14]前記第1のポリイミド層に含まれる酸化珪素成分が1000ppm以下である事を特徴とする[1]から[7]、[10]から[13]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[15]前記第2のポリイミド層に含まれる酸化珪素成分が1000ppm以下である事を特徴とする[1]から[7]、[10]から[13]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[16]前記第1のポリイミド層が無機基板を覆う面積が、第2のポリイミド層の面積より大きい事を特徴とする[1]から[7]、[10]から[13]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[17]前記第1のポリイミド層が無機基板を覆う面積が、第2のポリイミド層の面積より大きく、かつ、第2のポリイミド層が無機板と直接接触するエリアを有する事を特徴とする[1]から[7]、[10]から[13]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[18] 第1のポリイミド層の無機基板と反対側の面に、膜厚斑が5%以下で有り引っ張り破断強度が90MPa以上であるポリイミドフィルムをラミネートする工程が、以下の工程を含む事を特徴とする[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
・第1のポリイミド層が形成された無機基板の、第1のポリイミド層側にシランカップリング処理を行う工程、
・第2のポリイミド層となるポリイミドフィルムをシランカップリング剤処理面に重ねる工程、
・前記ポリイミドフィルムを無機基板側に圧接する工程、
[19] 前記ポリイミドフィルムの第1のポリイミド層と接着する側に、活性化処理を行う事を特徴とする[8]、[18]に記載の積層体の製造方法、[9]、[18]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の積層体を使用すれば、CVD法などによる半導体薄膜を第2のポリイミド層であるフレキシブル基板上に形成する際にも、フレキシブル基板が支持体側から剥離することなく良好な薄膜形成が可能となるため、電気配線、半導体素子、ガスバリア層などを含むデバイスを第2のポリイミド層からなるフレキシブル基板上に形成することが可能となる。
【0020】
本発明においては、第1のポリイミド層として使用されるところの、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物は非常に高い化学的耐久性を有している。言い換えると、他の化合物との反応性に乏しい。そのため、第1のポリイミド層に直接的に接する第2のポリイミド層との間に化学反応が生じにくく、両者の接着力は低い。
一方で第1のポリイミド層と第2のポリイミド層は、隙間無く密着しているため、所謂真空密着効果に加え、極々至近距離にあるために生じるファンデアワールス力で接着する。これらの接着力はデバイス加工工程中の剥離を防ぎ、なおかつ、デバイス形成後にはフレキシブル基板ごとデバイスを剥離することが出来る程度である。
【0021】
本発明においては、第1のポリイミド層として使用されるところの、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物は非常に高い耐熱性と無機基板と同程度の低い線膨張係数を有するため、第2のポリイミド層上にデバイスを作製する際の熱履歴に対しても、なんら問題無く耐えることができ、第2のポリイミド層を剥離した後に、複数回再利用することも可能となる。
【0022】
本発明において特に無機基板と第1のポリイミド層との間にシランカップリング剤層を介する構造を取った場合、無機基板と第1のポリイミド層とがさらに強く接着するために、第2のポリイミド層を剥離する際に、第1のポリイミド層から剥離してしまう剥離ミスをさらに低減することができる。一方で、第1のポリイミド層は、無機基板に比較すれば表面の硬度が低く、複数回のリサイクルによって表面にキズなどが増え、やがては第2のポリイミド層の品位に悪影響を与えるようになる。その場合、第1のポリイミド層を剥離し、再度第1のポリイミド層を形成する必要が生じる。本発明では、第1のポリイミド層に耐熱性の高いポリイミド樹脂を使用するため、無機基板と第1のポリイミド層からなる積層状態、すなわち第2のポリイミド層を剥離した状態にて、520℃以上、好ましくは700℃以下、さらに好ましくは620℃以下の温度範囲にて、加熱することにより、接着に大きく寄与しているシランカップリング剤層を熱分解させ、一方で第1のポリイミド層は、層として残存する状態にすることができる。このような場合、第1のポリイミド層を無機基板から、残渣無く剥離することが可能となり、無機基板のリサイクルが容易となる。第1のポリイミド層を構成するポリイミド樹脂の耐熱性が低い場合には、ポリイミド層の炭化や、無機基板表面への焦げ付きなどが生じ、無機板を再利用することが困難となる場合が多い。
【0023】
本発明では、第1のポリイミド層のエッジ部のアンダーカットを大きくすることにより、デバイス加工プロセス中での第1のポリイミド層の剥離事故を大幅に低減させることが可能である。かかる効果は単純にエッジでの引っかかりが小さくなることのほか、ポリイミド層のエッジ部での内部応力が、ポリイミド層エッジ部において無機基板に対して食い入る方向になるためであると理解される。すなわち、無機基板にポリイミド前駆体を塗布・乾燥・硬化した際には、塗膜表面層の分子配向が塗膜内部より進みやすいため、塗膜表面層に比較して塗膜内部のCTEが大きめになる。ポリイミドの硬化反応は一般に比較的高温で行われるため、硬化後に冷却した場合、CTEが大きい塗膜内部の収縮が大きくなるため、層内の応力は、内部側ががCTEの小さい表面層を引き込む方向に作用するのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の積層体の断面構成を示す概略図である。
図2図2は、本発明のアンダーカットの求め方を説明する概略図である。
図3図3は、本発明において、第1のポリイミド層が無機基板を覆う部分が、第2のポリイミド層の覆う部分より大きく、かつ第2のポリイミドが無機板と直接的に接しない場合の配置を示す上面図である。
図4図4は、本発明において、第1のポリイミド層が無機基板を覆う面積が、第2のポリイミド層の面積より大きく、かつ、第2のポリイミド層が無機板と直接的に接触する場合の配置の一例を示す上面図である。
図5図5.は第2のポリイミド層にデバイスを形成した場合の概略模式図である。
【符号の説明】
【0025】
1:第1のポリイミド層
3:第2のポリイミド層
5:デバイス
10:支持体(無機基板)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の積層体においては支持基板として無機基板を用いる。無機基板とは無機物からなる板状物であって、例えば、ガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属板等を例示できる。またガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属板から選択される2種以上が積層された複合基板も使用できる。さらにガラス、セラミック、金属から選択される一種以上の材料が、他の無機材料中ないし有機材料中に粉体的に分散している複合体を例示できる。さらにガラス、セラミック、金属から選択される一種以上の繊維状物が他の無機材料中、ないし有機材料中に複合化された繊維強化コンポジット構造を有する基板材料などを例示することができる。
【0027】
本発明における無機基板であるガラス板およびガラスを含み基板材料に用いられるガラスとしては、石英ガラス、高ケイ酸ガラス(96%シリカ)、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標))、ホウケイ酸ガラス(無アルカリ)、ホウケイ酸ガラス(マイクロシート)、アルミノケイ酸塩ガラス等を例示できる。本発明では、これらの中でも、特に線膨張係数が5ppm/K以下のものが望ましく、市販品であれば、液晶表示素子用ガラスであるコーニング社製の「コーニング(登録商標)7059」や「コーニング(登録商標)1737」、「EAGLE XG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA10G」、SCHOTT社製の「AF32」などを用いる事が望ましい。
【0028】
本発明における無機基板であるセラミック板としては、アルミナ、ムライト、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、結晶化ガラス、コーデュライト、リシア輝石、Pb−BSG+CaZrO3+Al23、結晶化ガラス+Al23、結晶化Ca−ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス+石英、ホウケイ酸ガラス+Al23、Pb+ホウケイ酸ガラス+Al23、ガラスセラミック、ゼロデュア材などの基板用セラミックス、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、ステアタイト、BaTi49、BaTi49+CaZrO3、BaSrCaZrTiO3、Ba(TiZr)O3、PMN−PTやPFN−PFWなどのキャパシタ材料、PbNb26、Pb0.5Be0.5Nb26、PbTiO3、BaTiO3、PZT、0.855PZT−95PT−0.5BT、0.873PZT−0.97PT−0.3BT、PLZTなどの圧電材料等から選択される一種以上の材料からなるセラミック板を例示できる。
【0029】
本発明における金属板を構成する金属材料としては、W、Mo、Pt、Fe、Ni、Auといった単一元素金属、インコネル、モネル、ニモニック、炭素銅、Fe−Ni系インバー合金、スーパーインバー合金、といった合金等が含まれる。また、これら金属に、他の金属層、セラミック層を付加してなる多層金属板も含まれる。この場合、付加層との全体のCTEが低ければ、主金属層にCu、Alなども用いられる。付加金属層として使用される金属としては、ポリイミドフィルムとの密着性を強固にするもの、拡散がないこと、耐薬品性や耐熱性が良いこと等の特性を有するものであれば限定されるものではないが、クロム、ニッケル、TiN、Mo含有Cuが好適な例として挙げられる。
【0030】
本発明に於ける半導体ウェハとしては、シリコンウエハ、炭化珪素ウェハ、化合物半導体ウエハ等を用いることができ、シリコンウエハとしては単結晶ないし多結晶のシリコンを薄板上に加工した物であり、n型或はp型にドーピングされたシリコンウエハ、イントリンシックシリコンウエハ等の全てが含まれ、また、シリコンウエハの表面に酸化シリコン層や各種薄膜が堆積されたシリコンウエハも含まれ、シリコンウエハ以外にも、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、アルミニウム−ガリウム−インジウム、窒素−リン−ヒ素−アンチモン、SiC、InP(インジウム燐)、InGaAs、GaInNAs、LT、LN、ZnO(酸化亜鉛)やCdTe(カドミウムテルル)、ZnSe(セレン化亜鉛) などの半導体ウエハ、化合物半導体ウエハなどを用いることが出来る。
【0031】
これら支持体となる無機基板には、UVオゾン処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、イトロ処理、UVオゾン処理、活性ガスへの暴露処理などの活性化処理を行うことができる。これらの処理は主には無機基板表面の有機物等の付着汚染物を除去するクリーニング効果とともに、無機基板表面を活性化して第1のポリイミド層との接着性を改善する効果を有する。
【0032】
本発明におけるポリイミドとはイミド結合による多量体である。一般にポリイミドはテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合物として得られる。一般的なポリイミドの製法としては、溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、支持体に塗布、乾燥して前駆体フィルムとし、さらに加熱ないし触媒の作用によりイミド化反応を生じせしめてポリイミドに転化させる方法が知られている。ポリイミドをフィルム化する際には前駆体フィルムを支持体から剥離してイミド化する方法が一般的である。また、支持体を被覆する用途においては剥離せずにイミド化する手法も知られている。支持体上に前駆体溶液を塗布乾燥し、支持体上でイミド化する方法は、ポリイミドフィルムをフレキシブルデバイスの基板として用いる用途にて実用化が検討されているところである。
【0033】
本発明におけるテトラカルボン酸二無水物としては好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環族テトラカルボン酸二無水物を用いる事ができる。耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、光透過性の観点からは脂環族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。テトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明における芳香族テトラカルボン酸としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸無水物等が挙げられる。本発明ではピロメリット酸二無水物の使用が好ましい。
【0035】
本発明における脂環族テトラカルボン酸類としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の無水物構造を有する二無水物(例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等)が好適である。なお、脂環族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0036】
本発明におけるジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、芳香族ジアミン類の中では、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いる事ができる。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明におけるジアミン類の内、芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスアニリン)、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、および上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0038】
本発明における脂肪族ジアミン類としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン等が挙げられる。
本発明における脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
【0039】
本発明におけるベンゾオキサゾール構造を有するジアミン類としては、例えば、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。
【0040】
本発明は無機基板、無機基板と近接する第1のポリイミド層、第1のポリイミド層の無機基板とは反対側に位置する第2のポリイミド層を含む積層体である。
無機板は全体の支持体として作用する。
本発明において、第1のポリイミド層は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物であることが必須である。
【0041】
本発明では、第1のポリイミド層は無機基板と近接して設けられており、所謂離型層としての作用を有する。すなわち第1のポリイミド層は無機基板と強く接着し、第2のポリイミド層とは弱く接着する位置づけとなる。無機基板と第1のポリイミド層との接着強度をF1、第1のポリイミド層と第2のポリイミド層との接着強度をF2、とした場合に、本発明では F1≧2×F2 であることが必須で有る。すなわち、無機基板と第1のポリイミド層との接着強度は、第1のポリイミド層と第2のポリイミド層との接着強度の2倍以上でなければならない。ここに接着強度は所謂90度剥離強度である。本発明ではさらに F1≧3×F2 であることが好ましく、F1≧4×F2であることがなお好ましい。両者の接着強度さが大きい方が好ましいことは第1のポリイミド層の離型層としての作用から容易に理解される。
さらに本発明では、第1のポリイミド層の熱分解温度をTemp1、第2のポリイミド層の熱分解温度をTemp2、とした場合に Temp1≧Temp2 なる関係が成立していることが必須である。すなわち第1のポリイミド層の熱分解温度が第2のポリイミド層の熱分解温度と同じか、より高い事が必須であり、さらに4℃以上の差があることが好ましく、8℃以上の差があることが好ましく、12℃以上の差があることがなお好ましい。なお、ここに熱分解温度はTGAにて空気雰囲気下、一気圧にて、昇温速度10℃/分の条件下においてで得られる5%重量減温度である。
【0042】
本発明における第1のポリイミド層の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.5μm〜200μmが好ましく、更に好ましくは、3μm〜10μmである。0.5μm以下では、膜厚の制御が困難であり、一部ポリイミド層が欠損する部分ができる可能性がある。このため第2のポリイミド層を剥離することが困難となる場合が生じる。一歩で200μm以上では、作製に時間がかかり、フィルムの膜厚斑を制御することが困難になる場合がある。第1のポリイミド層の膜厚斑は20%以下であることが好ましく、10%以下である事がさらに好ましく、5%以下である事がなお好ましい。なお支持基板として表面粗度を高めて支持基板と第1のポリイミド層との接着性を高める工夫を組み込んだ場合にはこの限りではない。
【0043】
本発明の第2のポリイミド層としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムを用いる事ができる。
さらに本発明では、第2のポリイミド層として、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも分子内にエーテル結合を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムを用いる事ができる。
なおさらに本発明では第2のポリイミド層として、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともフェニレンジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムを用いる事ができる。
また本発明では第2のポリイミド層としてビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの縮合物のフィルムを用いる事ができる。
【0044】
本発明のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合物のフィルム、すなわちポリイミドフィルムは溶液成膜法で得ることができる。ポリイミドの溶液成膜法は、ステンレス鋼のロールないしはエンドレスベルト、あるいは、PETなどの高分子フィルムを、長尺ないしエンドレスの支持体として用い、支持体上にポリイミド樹脂の前駆体溶液を塗布し、乾燥後に支持体から剥離してポリイミド前駆体フィルムとし、好ましくはフィルムの両端をクリップないしピンにて把持して、搬送しつつ、さらに熱処理を加えてポリイミド前駆体をポリイミドへと化学反応させてポリイミドフィルムを得る方法である。かかる手法を用いて得られるポリイミドフィルムは、膜厚斑が5%以下、好ましくは3.6%以下、さらに好ましくは2.4%以下であり、引張破断強度が90MPa以上、好ましくは180MPa以上、さらに好ましくは350MPa以上、なお好ましくは450MPa以上のポリイミドフィルムとなる。
【0045】
本発明では、ポリイミド層の性状調整のために、ポリイミドに無機物を含有せしめることが可能であるが、必要最低限に留めるべきである。本発明において、第1のポリイミド層に含まれる酸化珪素成分は1000ppm以下となるように制御することが好ましい。
【0046】
本発明では、第2のポリイミド層に含まれる酸化珪素成分は1000ppm以下となるように制御することが好ましい。特に第2のポリイミド層においては無機成分を極力低減することが望ましく、好ましくは800ppm以下、さらに好ましくは600ppm以下、なお好ましくは400ppm以下とする事が好ましい。不必要な無機成分の添加は、第2のポリイミド層の表面に突起を生じせしめるために、特に微細な電子デバイスを第2のポリイミド層上に形成するに当たっての障害となる場合がある。
【0047】
本発明における第2のポリイミド層の膜厚は、特に限定されるものではないが、1μm〜200μmが好ましく、更に好ましくは、2〜90μmであり、なお好ましくは3μm〜55μmであり、なおさらに好ましくは3〜15μmである。
【0048】
本発明では、第1のポリイミド層の平均膜厚をT、第1のポリイミド層のエッジ部のアンダーカットをU、とした場合に、
U>T
である事が好ましい。ここにUはアンダーカット[μm]、Tは第1のポリイミド層の平均膜厚[μm]である。また平均膜厚は第1のポリイミド層中の無作為に選んだ10点の平均値である。膜厚は、第2ポリイミド層の除去が可能な場合には触針計でないしマイクロメータで測定可能である。第2のポリイミド層の除去が難しい場合、積層体断面のSEM像にて実測する。
本発明では、第1のポリイミド層のエッジ部のアンダーカットを大きくすることにより、デバイス加工プロセス中での第1のポリイミド層の剥離事故を大幅に低減させることが可能となる。これは、単純にエッジでの引っかかりが小さくなることに加えて、ポリイミド層のエッジ部での内部応力が、ポリイミド層エッジ部において無機基板に対して食い入る方向になることによる。無機基板にポリイミド前駆体を塗布・乾燥・硬化した際には、塗膜表面層の分子配向が塗膜内部より進みやすいため、塗膜表面層に比較して塗膜内部のCTEが大きめになる。ポリイミドの硬化反応は一般に比較的高温で行われるため、硬化後に冷却した場合、CTEが大きい塗膜内部の収縮が大きくなるため、層内の応力は、内部側ががCTEの小さい表面層を引き込む方向に作用するのである。
本発明におけるアンダーカットは、U>1.5×Tであることが好ましく、U>2.4×Tであることが好ましく、さらに U>3.2×Tであることが好ましい。
【0049】
本発明において支持体である無機基板と第1のポリイミド層との接着手段としては、粘着剤としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの公知の接着剤、粘着剤を用いることができる。しかしながら、本発明で好ましい接着手段は、膜厚が5μm以下の、極薄い、接着・粘着層による接着手段、ないしは、好ましくは実質的に接着剤・粘着剤を用いない、接着手段が好ましい。
本発明ではこのような接着手段としてシランカップリング剤を用いる方法を使用できる。すなわち、本発明では、無機基板と、第1のポリイミド層との間にシランカップリング剤層を有する事が好ましい。
本発明におけるシランカップリング剤は、無機板と第1のポリイミド層との間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
【0050】
本発明で用いることのできるシランカップリング剤としては、上記のほかにn−プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルリクロロシラン、ドデシルトリメトキシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリクロロテトラデシルシラン、トリメトキシプロピルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリクロロ−2−シアノエチルシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、などを使用することもできる。
【0051】
また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを適宜加えても良い。また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを適宜加えた場合、あるいは、加えない場合も含めて、混合、加熱操作を加えて、反応を若干進めてから、使用しても良い。
【0052】
かかるシランカップリング剤の中で、本発明にて好ましく用いられるシランカップリング剤はカップリング剤の、一分子あたりに一個の珪素原子を有する化学構造のシランカップリング剤が好ましい。
本発明では、特に好ましいシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を併用しても良い。
【0053】
本発明におけるシランカップリング剤の塗布方法は特に限定されず、一般的な湿式塗工法または気相での塗工法を用いる事が出来る。湿式塗工法としては、シランカップリング剤の原液ないし溶剤溶液、好ましくはアルコール溶液などを用いて、スピンコート、キャピラリーコート、バーコート、アプリケータ、ダイコート、コンマコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、スプレーコート、噴霧コート等の手法を用いることができる。
本発明ではこのシランカップリング剤塗布方法として、好ましくは気相を介する気相塗布法を用いる事ができる。気相塗布法とは、気化させたシランカップリング剤に無機基板を暴露することにより塗布を行う。シランカップリング剤塗布をシランカップリング剤処理と言い換えても良い。気化とはシランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤あるいは、微粒子状態のシランカップリング剤が存在する状態を指す。暴露とは、前記の気化したはシランカップリング剤を含んだ気体あるいは真空状態に有機系高分子フィルムが接触していることを言う。
【0054】
シランカップリング剤の蒸気は、液体状態のシランカップリング剤を40℃〜シランカップリング剤の沸点までの温度に加温することによって容易に得ることが出来る。シランカップリング剤の上記は沸点以下であっても生成する。シランカップリング剤の微粒子が共存する状態も利用できる。また、温度圧力の操作によって、蒸気密度を高める操作を行っても良い。シランカップリング剤の沸点は、化学構造によって異なるが、概ね100〜250℃の範囲である。ただし200℃以上の加熱は、シランカップリング剤の有機基側の副反応を招く恐れがあるため好ましくない。
【0055】
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には概ね常圧下ないし減圧下が好ましい。シランカップリング剤は可燃性液体に分類されることが多いため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
一方、生産効率向上および生産設備価格低減の観点からは、真空を使わない環境でのシランカップリング剤塗布が望ましい。例えば、チャンバー内に常圧下にて有機系高分子フィルムをセットし、チャンバー内を気化したシランカップリング剤を含む概ね常圧のキャリアガスを満たしてシランカップリング剤を堆積してから、再び気化したシランカップリング剤の無い状態に戻すまで、概略大気圧のままで行うことができる。
【0056】
本発明では、第2のポリイミド層の、第1のポリイミド層とは反対側にデバイスが形成されている事が好ましい。
ここに本発明におけるデバイスとは、電気配線を担う配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、電気二重層キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路、他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、一次電池、二次電池、薄膜トランジスタ、量子ドット、量子細線、量子細線トランジスタ、単電子トランジスタ、あるいは単電子メモリなどを云う。
本発明におけるデバイスは電気配線層を含む事が好ましい。また本発明におけるデバイスは半導体素子を含む事が好ましい。さらに本発明のデバイスは、水蒸気バリア、酸素バリア、硫化水素バリア等のガスバリア層を含む事が好ましい。
【0057】
本発明の積層体は、少なくとも、無機基板に、第1のポリイミド層となるポリイミド樹脂の溶液、または前駆体溶液を塗布し、加熱を伴うプロセスにより第1のポリイミド層を形成する工程、次いで、第1のポリイミド層の無機基板と反対側の面に、第2のポリイミド層となるポリイミドフィルムをラミネートすることにより得ることができる。
【0058】
さらに本発明では、第二のポリイミド層の、第一のポリイミド層とは反対側の面にデバイスを形成し、その後に、第1のポリイミド層と第2ポリイミド層の間を剥離することにより第2のポリイミド層上に形成されたデバイスを得ることができる。ここに第2のポリイミド層はフレキシブル基板として機能し、得られたデバイスはフレキシブルデバイスとなる。
【0059】
本発明では、第1のポリイミド層が無機基板を覆う面積が、第2のポリイミド層の面積より大きくなるように操作することが好ましい。これは積層体の総合物性において第1のポリイミド層が支配的となるように設定するために好ましく必要な要件となる。
一方で、本発明では、前記第1のポリイミド層が無機基板を覆う面積が、第2のポリイミド層の面積より大きく、かつ、第2のポリイミド層が無機板と直接接触するエリアを有する事が好ましい。この第2のポリイミド層が無機基板と直接接する領域は、第2のポリイミド層との接着性が高くなるために、プロセス中での第2のポリイミド層の剥離トラブルを防止する効果を期待できる。さらに、第2のポリイミド層を剥離する際に、この無機基板と直接接する部分をきっかけとして用いる事により、第1のポリイミド層にキズなどを付けること無く第2のポリイミド層を剥離することが可能となる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0061】
<ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)>
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
【0062】
<ポリイミド層の膜厚>
第1のポリイミド層については、積層体断面のSEM断面観察により求めた。なお、特に断りの無い限り、各ポリイミド層の端部から1mm以上内側の領域において、無作為に選択した5点の膜厚の平均値をポリイミド層の膜厚とした。
第2のポリイミド層においては、ラミネート前のポリイミドフィルムないしは第2のポリイミド層を積層体から90度剥離した後のフィルムの無作為に選択した10点の算術平均値を求め、膜厚とした。また、任意の10点の膜厚の最大値、最小値、算術平均値から、以下の式により膜厚斑[%]を算出した。
膜厚斑=100×(最大値−最小値)/算術平均値 [%]
なお第2のポリイミド層であるポリイミドフィルムの厚さは触針式膜厚計で測定される。
また、良好に剥離できた場合には、剥離後のポリイミドフィルム、膜厚斑と、ラミネート前のポリイミドフィルムの膜厚および膜厚斑はほぼ一致した。
【0063】
<熱分解温度>
積層板から剥離したポリイミド層(ポリイミドフィルム)を試料とし、150℃にて30分間乾燥した後に、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の質量が5%減る温度を熱分解温度とした。
装置名 : MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン : アルミパン(非気密型)
試料質量 : 10mg
昇温開始温度 : 30℃
昇温速度 : 20℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0064】
<90度剥離強度>
JIS K6854−1:1999に規定される90度剥離法に従って測定した。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフAG−IS
測定温度 : 室温
剥離速度 : 100mm/min
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 10mm
【0065】
<アンダーカット>
図2に示す方法にてアンダーカットを求めた。まず、第1のポリイミド層のエッジ近傍の断面観察を行う。エッジ近傍とはエッジ端からポリイミド層の端部から3mm程度内側までの領域を云う。まずポリイミド層の平均膜厚を、エッジ端から1mm以上内側の領域において無作為に5点測定し、算術平均を求め、これを膜厚Tとする。次にポリイミド層エッジ端の膜厚が0.1Tとなる個所から、膜厚が0.9Tとなる個所までの距離:アンダーカットUを求める。なお、Uに付いても、各試料のエッジ部について無作為に抽出した5個所の断面図から得られたUの算術平均とする。
<線膨張係数>
ポリイミド層を剥離して得られたフィルムにおいて、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 : MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ : 20mm
試料幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0066】
<製造例>
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV1の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物217質量部、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液[PV1」を得た。
【0067】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV2の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、テトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物398質量部、パラフェニレンジアミン132質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル30質量部を4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液[PV2]を得た。
【0068】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV3の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸無水物545質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル500質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液[PV3]を得た。
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV4の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸二無水物545質量部、パラフェニレンジアミン153質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル200質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液[PV4]を得た。
【0069】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV5の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル155.9質量部とN,N-ジメチルアセトアミド1200質量部を仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながらシクロブタンテトラカルボン酸二無水物142.9質量部を固体のまま分割添加し、室温で5時間攪拌した。その後N,N-ジメチルアセトアミド1000質量部で希釈し、還元粘度4.20dl/gのポリアミド酸溶液[PV5]を得た。
【0070】
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV6の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル176.5質量部とN,N-ジメチルアセトアミド1200質量部を仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながら1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物122.9質量部を固体のまま分割添加し、室温で18時間攪拌した。その後N,N-ジメチルアセトアミド500質量部で希釈し、還元粘度3.26dl/gのポリアミド酸溶液[PV6]を得た。
【0071】
<無機基板(支持体)>
ガラス基板[G1]として235mm×185mm、厚さ 0.7mmの日本電気硝子製OA10Gを用いた。
ガラス基板[G2]として235mmX185mm、厚さ 0.7mmの青板ガラスを用いた。
シリコンウエハ[SW]として、直径200mm、厚さ 0.7mmの片面鏡面仕上げウエハを用いた。
【0072】
<第1のポリイミド層のポリイミド樹脂の特性>
得られたポリアミド酸溶液[PV1]をガラス基板1に塗布し、最終膜厚が20〜25μmとなるように適宜塗布膜厚を調整して所定の温度にて乾燥・熱処理によるポリイミド化を行い、ガラス基板から剥離したポリイミド樹脂を評価した結果を表1に示す。表中の「ワニス成膜」はこの方法によって得られたポリイミドを用いた事を示す。
【0073】
<第2のポリイミド層となるポリイミドフィルムの製造>
製造例にて得られたポリアミド酸溶液[PV1]を脱泡後にコンマコーターを用いて、東洋紡株式会社製ポリエステルフィルムA4100の平滑面に塗布し、連続式乾燥機にて乾燥温度を95℃にて5分、115℃にて5分間乾燥しポリアミド酸フィルムとした。次いで得られたポリアミド酸フィルムをポリエステルフィルムから剥離し、フィルムの両端をピンにて把持し、連続式の熱処理炉にて250℃にて3分、490℃にて3分間熱処理を行ない、室温まで冷却してポリイミドフィルム[PF1a]を得た。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。表中の「フィルム成膜」はこの方法によって得られたポリイミドフィルムを用いた事を示す。
以下同様にポリアミド酸溶液、成膜方法、塗布膜厚、乾燥、熱処理条件,を代えて溶液成膜を行い表1に示すポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
なお、表1〜表3中の略語は以下の通りである。
PMDA:ピロメリット酸二無水物、
BPDA:3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
CBA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、
CHA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、
ODA:4,4'ジアミノジフェニルエーテル、
PDA:フェニレンジアミン、
DAMBO:5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、
BPA:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、
FA:2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、
CTE :線膨張係数、
UV/O3:UVオゾン処理
【0076】
<実施例1>
ホットプレートと無機基板の支持台とを備えたチャンバーをクリーンな乾燥窒素で置換した後、無機基板を支持台に設置し、無機基板の200mm下方に液面が位置するようにシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を満たしたシャーレを置き、シャーレをホットプレートにて100℃に加熱し、無機基板の下面をシランカップリング剤蒸気に3分間暴露した後にチャンバーから取り出し、クリーンベンチ内に設置し、120℃に調温されたホットプレートに無機基板の暴露面とは逆側を熱板に接するように乗せ、1分間の熱処理を行った。
次いで無機基板のシランカップリング剤処理面に、第1のポリイミド層となるポリアミド酸溶液[PV1]をバーコーターにて塗布し、クリーンオーブンにて乾燥・熱処理を行った。乾燥条件、熱処理条件は表1に合わせた。
第1のポリイミド層を形成した無機板を再び、ホットプレートと無機基板の支持台とを備えたチャンバーにて、第1のポリイミド層が形成された無機基板を支持台に第1のポリイミド層が下向きになるように設置し、同様にシランカップリング剤蒸気に暴露し、チャンバーから取り出した後、クリーンベンチ内に設置し、120℃に調温されたホットプレートに無機基板側が熱板に接するように乗せ、1分間の熱処理を行った。
【0077】
第2のポリイミド層となるポリイミドフィルム[PF1a]に、連続式のプラズマ処理装置にて窒素プラズマ処理を行い、ついで所定の大きさに裁断した。先に得られたシランカップリング剤処理を行った無機基板の第1のポリイミド層に重なるようにポリイミドフィルムを重ね、ロールラミネータにて仮圧着した後、クリーンベンチ内に設置し、150℃に調温されたホットプレートに無機基板側を熱板に接するように乗せ、3分間熱処理を行い、積層体を得た。
得られた積層体における、第1のポリイミド層と無機基板の接着強度[N/cm]、第2のポリイミド層と第1のポリイミド層の接着強度[N/cm]、実際に第1のポリイミド層から第2のポリイミド層を剥離した際の状況を「剥離性」として評価した。なお剥離性良好は、第2のポリイミド層をフィルムとして問題無く剥離することが出来たことを示す。 さらに同条件で作製した積層体を真空中にて450℃30分の熱処理を行い、室温に冷却し、24時間放置した後に、第2のポリイミド層と第1のポリイミド層の接着強度[N/cm]を測定し、同様に「剥離性」を評価した。結果を表2ないし表3に示す。
【0078】
<実施例2〜13、比較例1〜3>
以下、無機基板、第1のポリイミド層、第2のポリイミド層を適宜替えて実験を行い表2および表3に示す実施例2〜実施例13、比較例1〜比較例3の積層体を得た。各々の積層体の評価結果を表2ないし表3に示す。なお剥離性において「割け」はフィルム剥離中に第2のポリイミド層が割けてしまい、良質なフィルムを得られなかった事を示す。また「共剥離」は、第2のポリイミド層が剥がれずに、第1のポリイミド層ごと無機基板から剥離してしまったことを示す。また「フィルム欠け」は剥離した第2のポリイミド層のエッジないし角に欠けが生じたことを示す。これはフィルムの劣化ないしフィルムの引張破断強度が接着力に対して十分でない事を示す。
表中の配置Aは図3の配置、配置Bは図4の配置を示す。シリコンウェハを用いた例については、第1のポリイミド層、第2のポリイミド層共に、シリコンウェハと同サイズとした。
無機基板の表面処理には、ランテクニカルサービス社製UV/オゾン洗浄改質装置SKR1102N-03を用い、ランプと無機基板との距離を30mmとして一分間の照射を行った。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上、示してきたように、本発明の積層体は、第1のポリイミド層と第2のポリイミド層の間で良好に剥離が行える。そのため、第2のポリイミド層をフレキシブル基板としたフレキシブルデバイスを製造する際に、剥離工程におけるフレキシブルデバイスへのストレスを最低限に抑えることができる。したがって、本発明の積層体を仮支持基板を用いたフレキシブルデバイスの製造に適用すれば、高収率にて高性能なフレキシブルデバイスを製造することができ、産業上の有用性は極めて高いと云える。
図1
図2
図3
図4
図5