特許第6878875号(P6878875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6878875-流動層システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878875
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】流動層システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/26 20060101AFI20210524BHJP
   F26B 17/10 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B01J8/26
   F26B17/10 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-249061(P2016-249061)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-103066(P2018-103066A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 志宏
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭35−008705(JP,B1)
【文献】 特開2012−237547(JP,A)
【文献】 特開2013−174415(JP,A)
【文献】 特開平10−332273(JP,A)
【文献】 特開2003−113392(JP,A)
【文献】 特開2005−047897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00、8/00−8/46
F26B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体の流動層が形成される第1流動層室と、
前記第1流動層室に設けられた第1排出口に一端が接続された第1連通管と、
前記第1連通管の他端が接続されたポンプ投入口と、ポンプ排出口とを有するポンプ室と、
前記ポンプ投入口が設けられた上流室と、前記ポンプ排出口が設けられた下流室とに前記ポンプ室内を区画し、該ポンプ排出口より下方で該上流室と該下流室とを連通させる仕切板と、
1流量で該上流室に流動化ガスを供給し、前記下流室の空塔速度が、該上流室の空塔速度より大きい所定の空塔速度となる流量である第2流量で該下流室に該流動化ガスを供給するガス供給部と、
前記ポンプ室の前記ポンプ排出口に一端が接続された第2連通管と、
前記第2連通管の他端が接続された第2投入口を有する第2流動層室と、
を備え
前記仕切板は、前記下流室の水平断面積が下部から前記ポンプ排出口に向かうに従って漸減するように前記ポンプ室内に設けられる流動層システム。
【請求項2】
前記上流室における流動層の層高は、前記仕切板の下端より高い請求項1に記載の流動層システム。
【請求項3】
前記ポンプ排出口は、前記下流室の天井に設けられる請求項1または2に記載の流動層システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流動媒体の流動層が形成される第1流動層室から第2流動層室へ流動媒体を移動させる流動層システムに関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状の固形物が収容された流動層室の下方から上方に向けてガスを噴出させることで形成される流動層を用いた流動層システムは、固形物の乾燥、燃焼、ガス化、造粒等様々な分野で利用されている。このような流動層システムでは、流動層の条件(温度、雰囲気等)の変更、設置面積(設置体積)の制限、制御の容易性の確保等のために、複数の流動層室を備えているものもある。
【0003】
複数の流動層室を備えた流動層システムにおいて、第1流動層室から第2流動層室へ固形物(流動媒体)を移動させる技術として、第1流動層室から流動媒体を取り出した後コンベアで第2流動層室に移動させる技術(例えば、特許文献1)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−095952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されたようなコンベアを用いた技術では、移動過程において流動媒体が空気に曝される。このため、流動媒体が、酸素や水等の空気中の物質と反応したり、空気中の物質を吸着したりする場合、移動過程で流動媒体の性状が変化してしまうという問題がある。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑み、流動媒体の性状変化を防止しつつ、流動媒体を移動させることが可能な流動層システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る流動層システムは、流動媒体の流動層が形成される第1流動層室と、前記第1流動層室に設けられた第1排出口に一端が接続された第1連通管と、前記第1連通管の他端が接続されたポンプ投入口と、ポンプ排出口とを有するポンプ室と、前記ポンプ投入口が設けられた上流室と、前記ポンプ排出口が設けられた下流室とに前記ポンプ室内を区画し、該ポンプ排出口より下方で該上流室と該下流室とを連通させる仕切板と、1流量で該上流室に流動化ガスを供給し、前記下流室の空塔速度が、該上流室の空塔速度より大きい所定の空塔速度となる流量である第2流量で該下流室に該流動化ガスを供給するガス供給部と、前記ポンプ室の前記ポンプ排出口に一端が接続された第2連通管と、前記第2連通管の他端が接続された第2投入口を有する第2流動層室と、を備え、前記仕切板は、前記下流室の水平断面積が下部から前記ポンプ排出口に向かうに従って漸減するように前記ポンプ室内に設けられる
【0008】
また、前記上流室における流動層の層高は、前記仕切板の下端より高いとしてもよい。
【0010】
また、前記ポンプ排出口は、前記下流室の天井に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
流動媒体の性状変化を防止しつつ、流動媒体を移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】流動層システムを説明する図である。
図2】ポンプユニットを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(流動層システム100)
図1は、流動層システム100を説明する図である。本実施形態では、流動層システム100が、流動媒体として褐炭を乾燥させる構成を例に挙げて説明する。図1中、ガスの流れを実線の矢印で示し、流動媒体の流れを一点鎖線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。図1に示すように、流動層システム100は、導入部110と、水分センサ120と、第1流動層部210と、第2流動層部220と、第1連通管230と、ポンプユニット240と、第2連通管250と、中央制御部260とを含んで構成される。
【0015】
(導入部110、水分センサ120)
導入部110は、コンベア112と、ホッパ114と、導入管116と、導入バルブ118とを含んで構成される。コンベア112は、褐炭の供給源からホッパ114に褐炭を搬送する。ホッパ114は、コンベア112によって搬送された褐炭を一時的に貯留する。導入管116は、ホッパ114と第1流動層部210(第1流動層室212の第1投入口212a)とを連通する配管である。導入バルブ118は、導入管116に設けられ、導入管116の開度を調整する。
【0016】
水分センサ120は、導入部110によって第1流動層部210に導入される褐炭の水分量を測定する。なお、水分センサ120として、例えば、近赤外吸収方式、マイクロ波吸収方式等の水分センサを採用することができる。
【0017】
(第1流動層部210)
第1流動層部210は、第1流動層室212と、第1流動化ガス供給部214と、第1伝熱部216とを含んで構成される。
【0018】
第1流動層室212は、第1流動層室212を構成する側壁に第1投入口212a、および、第1排出口212bが設けられた容器である。第1投入口212aには、導入管116が接続されており、第1投入口212aを通じて第1流動層室212に褐炭が導入される。そして、第1流動層室212は、導入された褐炭を収容する。また、第1流動層室212の天井には、第1流動層室212内のガスを外部に排出するガス排出管212cが接続される。
【0019】
第1流動化ガス供給部214は、第1流動層室212の底面から第1流動化ガス(例えば、水蒸気)を供給する。具体的に説明すると、第1流動化ガス供給部214は、風箱214aと、第1流動管214bと、第1ブロワ214cとを含んで構成される。風箱214aは、第1流動層室212の下方に設けられ、風箱214aの上部は、第1流動層室212の底面としても機能し、通気可能である分散板214dで形成されている。分散板214dは、例えば、褐炭の粒径よりも小さい径の開孔が複数設けられた板や、ノズルを設置した板で構成される。
【0020】
第1流動管214bは、風箱214aに接続される。また、第1流動管214bには、第1流動化ガスを送り込む第1ブロワ214cが設けられている。したがって、流動層システム100を運転する際には、風箱214aを通じて第1流動層室212の底面から当該第1流動層室212内に第1流動化ガスが供給されることとなる。
【0021】
こうして、第1流動化ガス供給部214によって第1流動層室212内に第1流動化ガスが供給される。第1流動化ガスは、第1流動層室212内で褐炭を流動させて、褐炭の流動層を形成する。また、第1流動化ガス供給部214は、第1流動化ガスを褐炭と接触させることで、流動化による褐炭と第1伝熱部216との伝熱の促進によって、褐炭に含まれる水の一部を蒸発させる。
【0022】
第1伝熱部216は、例えば、熱媒体が流通する配管で構成され、第1流動層室212内に配される。第1伝熱部216は、熱媒体の流通過程において、熱媒体が有する熱で褐炭を加熱する。第1伝熱部216を備える構成により、第1流動層室212内において、熱媒体と、第1流動化ガスとの間で熱交換が行われ、上方に移動する第1流動化ガスをさらに加熱することができる。したがって、第1流動化ガスによる褐炭の乾燥がより促進されることとなる。
【0023】
このように、第1流動層部210では、第1流動層室212内に未乾燥の褐炭が導入され、第1流動化ガス供給部214および第1伝熱部216によって褐炭が加熱され、褐炭から水の一部が蒸発されて除去される。一方、褐炭の流れについて説明すると、後述する中央制御部260による制御に応じて、第1排出口212b、第1連通管230、ポンプユニット240、第2連通管250を通じ、第1流動層室212内から第2流動層室222内へ褐炭が移動することとなる。第1連通管230、ポンプユニット240、第2連通管250を通じた褐炭の移動については後に詳述する。
【0024】
(第2流動層部220)
第2流動層部220は、第2流動層室222と、第2流動化ガス供給部224と、第2伝熱部226とを含んで構成される。
【0025】
第2流動層室222は、第2流動層室222を構成する側壁に第2投入口222a、および、第2排出口222bが設けられた容器である。第2投入口222aには、第2連通管250が接続されており、第1排出口212b、第1連通管230、ポンプユニット240、第2連通管250、第2投入口222aを通じて、第1流動層室212から第2流動層室222に褐炭が導入される。そして、第2流動層室222は、導入された褐炭を収容する。また、第2流動層室222の天井には、第2流動層室222内のガスを外部に排出するガス排出管222cが接続される。
【0026】
第2流動化ガス供給部224は、第2流動層室222の底面から第2流動化ガス(例えば、水蒸気)を供給する。具体的に説明すると、第2流動化ガス供給部224は、第1流動化ガス供給部214と同様に、風箱224aと、第2流動管224bと、第2ブロワ224cとを含んで構成される。風箱224aは、第2流動層室222の下方に設けられ、風箱224aの上部は、第2流動層室222の底面としても機能し、通気可能である分散板224dで形成されている。分散板224dは、例えば、褐炭の粒径よりも小さい径の開孔が複数設けられた板や、ノズルを設置した板で構成される。
【0027】
第2流動管224bは、風箱224aに接続される。また、第2流動管224bには、第2流動化ガスを送り込む第2ブロワ224cが設けられている。したがって、流動層システム100を運転する際には、風箱224aを通じて第2流動層室222の底面から当該第2流動層室222内に第2流動化ガスが供給されることとなる。
【0028】
こうして、第2流動化ガス供給部224によって第2流動層室222内に第2流動化ガスが供給される。第2流動化ガスは、第2流動層室222内で褐炭を流動させて、褐炭の流動層を形成する。また、第2流動化ガス供給部224は、第2流動化ガスを褐炭と接触させることで褐炭に含まれる水の一部を蒸発させる。
【0029】
第2伝熱部226は、例えば、熱媒体が流通する配管で構成され、第2流動層室222内に配される。第2伝熱部226は、熱媒体の流通過程において、熱媒体が有する熱で褐炭を加熱する。第2伝熱部226を備える構成により、第2流動層室222内において、熱媒体と、第2流動化ガスとの間で熱交換が行われ、上方に移動する第2流動化ガスをさらに加熱することができる。したがって、第2流動化ガスによる褐炭の乾燥がより促進されることとなる。
【0030】
オーバーフロー部228は、第2排出口222bに接続されたオーバーフロー管228aと、オーバーフロー管228aに設けられたオーバーフローバルブ228bとを含んで構成される。オーバーフロー部228は、第2流動層室222の第2排出口222bからオーバーフローした褐炭を外部に送出する。具体的に説明すると、第1連通管230、ポンプユニット240、第2連通管250を通じて、第1流動層部210(第1流動層室212内)から第2流動層室222内に褐炭が導入されると、導入された褐炭の体積分、流動層の体積が増加する。そうすると、褐炭(流動層)が第2排出口222bからオーバーフローして、オーバーフロー管228aを通じて外部に送出されることとなる。
【0031】
(第1連通管230、ポンプユニット240、第2連通管250)
第1連通管230は、一端が第1排出口212bに接続され、他端がポンプユニット240を構成する後述するポンプ室242のポンプ投入口242aに接続される配管である。なお、本実施形態において、ポンプ投入口242aは、第1排出口212bより下方に設けられている。したがって、第1連通管230は一端(第1排出口212b側)から他端(ポンプ投入口242a側)に向かって鉛直下方に傾斜して配される。このため、第1流動層室212から第1連通管230に導入された褐炭は自重でポンプ投入口242aに移動する。
【0032】
図2は、ポンプユニット240を説明する図である。図2中、ガスの流れを実線の矢印で示し、流動媒体の流れを一点鎖線の矢印で示す。図2に示すように、ポンプユニット240は、ポンプ室242と、仕切板246と、ガス供給部248とを含んで構成される。
【0033】
ポンプ室242は、ポンプ室242を構成する側壁242cにポンプ投入口242aが設けられ、ポンプ室242を構成する天井242dにポンプ排出口242bが設けられた容器である。上記したように、ポンプ投入口242aには、第1連通管230が接続されており、第1連通管230を通じて、第1流動層室212からポンプ室242に褐炭が導入される。そして、ポンプ室242は、褐炭を収容する。
【0034】
仕切板246は、ポンプ投入口242aが設けられた上流室244aと、ポンプ排出口242bが設けられた下流室244bとにポンプ室242内を区画し、ポンプ排出口242bより下方で上流室244aと下流室244bとを連通させる。本実施形態において、仕切板246は、ポンプ室242の天井242dからポンプ室242内に延在する。つまり、仕切板246の先端(下端)は、ポンプ室242の底面から離隔している。なお、本実施形態においてポンプ排出口242bは、下流室244bの天井に形成されている。
【0035】
ガス供給部248は、上流室244aの底面から流動化ガス(例えば、水蒸気)を供給し、下流室244bの底面から流動化ガス(例えば、水蒸気)を供給する。
【0036】
具体的に説明すると、ガス供給部248は、風箱248a、248bと、流動ガス管248c、248dと、ブロワ248e、248fとを含んで構成される。風箱248aは、上流室244aの下方に設けられ、風箱248aの上部は、上流室244aの底面としても機能し、通気可能である分散板248gで形成されている。風箱248bは、下流室244bの下方に設けられ、風箱248bの上部は、下流室244bの底面としても機能し、通気可能である分散板248hで形成されている。分散板248g、248hは、例えば、褐炭の粒径よりも小さい径の開孔が複数設けられた板や、ノズルを設置した板で構成される。本実施形態において、風箱248aと、風箱248bとは隣接しており、風箱248aと、風箱248bとの境界が、仕切板246の下端の鉛直下方(例えば、真下)に位置するように、風箱248a、248bが配される。
【0037】
流動ガス管248cは、風箱248aに接続される。流動ガス管248cには、流動化ガスを送り込むブロワ248eが設けられている。また、流動ガス管248dは、風箱248bに接続される。流動ガス管248dには、流動化ガスを送り込むブロワ248fが設けられている。
【0038】
ブロワ248e、248fは、後述する中央制御部260によって制御される。ブロワ248eは、上流室244aの空塔速度が1.0Umf以上1.2Umf以下となる流量である第1流量で上流室244a(風箱248a)に流動化ガスを供給する。ここで、Umfは、流動化開始速度(最小流動化速度)である。1.0Umf未満であると、流動媒体が流動せず、固定層となり、1.0Umf以上であると、流動媒体が流動を開始し、流動層となる。また、上流室244aの空塔速度が1.2Umfを上回ると、第1連通管230に逆流する流動化ガスの量が増加してしまう。したがって、ブロワ248eが第1流量で流動化ガスを供給することにより、第1連通管230への流動化ガスの逆流を抑制しつつ、上流室244aに褐炭の流動層を形成することができる。なお、上流室244aに形成される流動層の層高は、仕切板246の下端より高い。
【0039】
ブロワ248fは、下流室244bの空塔速度が、上流室244aの空塔速度より大きい所定の空塔速度となる流量である第2流量で下流室244b(風箱248b)に流動化ガスを供給する。下流室244bの空塔速度は、下流室244bに形成される流動層の最大層高が、後述する屈曲部252の位置(高さ)に到達する流量より大きい空塔速度である。なお、脈動する流動層の高さ(層高)のうち、最小となる層高を最小層高と言い、最大となる層高を最大層高と言う。また、平均層高は、脈動する層高の時間的な平均値である。また、上記上流室244aの空塔速度、下流室244bの空塔速度は、仕切板246の下端の位置の空塔速度である。
【0040】
上記したように、仕切板246は、ポンプ室242内の下部を連通させた状態で、ポンプ室242の天井242dからポンプ室242内に延在している。つまり、上流室244aと下流室244bとは、下部で連通されている。したがって、上流室244a内に形成された流動層(褐炭)は、下流室244bに移動する。
【0041】
また、下流室244bに流動化ガスを供給するブロワ248fは、下流室244bに第2流量で流動化ガスを供給する。そうすると、下流室244bにおいて、上流室244aから移動された褐炭は、ポンプ排出口242bに到達し、ポンプ排出口242bを通じて第2連通管250に移動する。
【0042】
なお、本実施形態において、仕切板246は、下流室244bの水平断面積が下部からポンプ排出口242b(天井242d)に向かうに従って漸減するようにポンプ室242内に設けられる。したがって、下流室244bの下部からポンプ排出口242b(上部)に向かうに従って、流動層中の気泡の量を多くすることができる。これにより、褐炭を、より高い位置に到達させることが可能となる。したがって、下流室244bの下部から上部に向かって褐炭の移動をスムーズに行うことが可能となる。
【0043】
図1に戻って説明すると、第2連通管250は、一端がポンプ室242のポンプ排出口242bに接続され、他端が第2投入口222aに接続される配管である。なお、本実施形態において、ポンプ排出口242bは、第2投入口222aより下方に設けられている。また、第2連通管250は、一端と他端との間に屈曲部252を有している。第2連通管250は、屈曲部252が一端および他端よりも上方に位置するように配される。
【0044】
(中央制御部260)
中央制御部260は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、流動層システム100全体を管理および制御する。本実施形態において中央制御部260は、導入制御部262として機能する。
【0045】
具体的に説明すると、導入制御部262は、水分センサ120の測定値に基づいて、第2流動層室222のオーバーフロー部228から送出される褐炭が目標値まで乾燥されるように、第1流動層室212内および第2流動層室222内における褐炭の滞留時間を導出する。例えば、水分センサ120の測定値が相対的に大きい場合、すなわち、未乾燥の褐炭の含水率が高い場合には滞留時間は長くなり、水分センサ120の測定値が相対的に小さい場合、すなわち、未乾燥の褐炭の含水率が低い場合、滞留時間は短くなる。
【0046】
そして、導入制御部262は、導出した滞留時間と、第1流動層室212内において形成される流動層の平均層高と、第2流動層室222内において形成される流動層の平均層高とに基づいて、コンベア112の搬送速度、導入バルブ118、オーバーフローバルブ228bの開度を制御する。本実施形態において、導入制御部262は、第1流動層室212内において形成される流動層の平均層高が第1排出口212bの高さ(位置)と実質的に等しくなるように、また、第2流動層室222内において形成される流動層の平均層高が第2排出口222bの高さ(位置)と実質的に等しくなるように、コンベア112の搬送速度、導入バルブ118、オーバーフローバルブ228bの開度を制御する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態にかかる流動層システム100によれば、第1流動層室212と第2流動層室222との間を、第1連通管230、ポンプユニット240、第2連通管250で接続し、ガス供給部248が、第1流量で上流室244aに流動化ガスを供給し、第2流量で下流室244bに流動化ガスを供給する。これにより、褐炭を第1流動層室212から第2流動層室222に移動させることができる。このため、コンベアを用いて流動層室間を移動させる従来技術と異なり、移動過程において褐炭が空気に曝されてしまう事態を回避することが可能となる。したがって、褐炭が、空気中の物質と反応したり、空気中の物質を吸着したりすることを防止することができる。つまり、流動層室間の移動過程での褐炭の性状の変化を回避することが可能となる。
【0048】
また、乾燥された高温状態の褐炭は、空気中の酸素と反応して燃焼する懸念がある。このため、コンベアを用いて流動層室間を移動させる従来技術では、コンベアといった駆動部を備えた装置を密封構造にしたり、消火設備を備えたり等する必要があり、コストが高くなってしまうという問題があった。しかし、本実施形態の流動層システム100では、外部から区画された第1連通管230、ポンプユニット240、第2連通管250を褐炭が移動するという簡易な機構であるため、駆動部を備えた装置の密封構造や消火設備が不要となる。したがって、コストを低減することが可能となる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、上記実施形態において、流動媒体として褐炭を例に挙げて説明した。しかし、粒子状の固形物であれば、流動媒体の種類に限定はない。
【0051】
また、上記実施形態において、ポンプ排出口242bが、ポンプ室242の天井242dに設けられる構成を例に挙げて説明した。したがって、下流室244b内にフリーボード部が形成されないため、下流室244b(ポンプ室242)を小型化することができる。しかし、ポンプ排出口242bは、ポンプ室242の下部より上方に配されれば、位置に限定はない。
【0052】
また、上記実施形態において、仕切板246が、下流室244bの水平断面積が下部からポンプ排出口242bに向かうに従って漸減するようにポンプ室242内に設けられる場合を例に挙げて説明した。しかし、仕切板246は、下流室244bの水平断面積が実質的に等しくなるように設けられてもよい。また、仕切板246は、下流室244bの水平断面積が下部からポンプ排出口242bに向かうに従って漸増するようにポンプ室242内に設けられてもよい。
【0053】
また、第1流動層部210と、第2流動層部220とを同一の構成(モジュール化)としてもよい。これにより、第1流動層部210、第2流動層部220の製造コストを低減することができる。また、第1流動層室212、第2流動層室222には、内部のガスを排出する排出口が設けられていてもよい。
【0054】
また、第1伝熱部216、第2伝熱部226は、必須の構成ではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示は、流動媒体の流動層が形成される第1流動層室から第2流動層室へ流動媒体を移動させる流動層システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
100 流動層システム
212 第1流動層室
212b 第1排出口
222 第2流動層室
222a 第2投入口
230 第1連通管
242 ポンプ室
242a ポンプ投入口
242b ポンプ排出口
242d 天井
244a 上流室
244b 下流室
246 仕切板
248 ガス供給部
250 第2連通管
図1
図2