特許第6878880号(P6878880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878880
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20210524BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20210524BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20210524BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20210524BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20210524BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20210524BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B60W10/08 900
   B60K6/485ZHV
   B60K6/54
   B60W10/06 900
   B60W20/10
   B60L50/16
   B60L15/20 J
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-251349(P2016-251349)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-103739(P2018-103739A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千速 健太
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−333305(JP,A)
【文献】 特開2005−160270(JP,A)
【文献】 特開2011−025778(JP,A)
【文献】 特開2016−94161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−20/50
B60K 6/20− 6/547
B60L 1/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関の出力軸に連結され、前記出力軸に伝達する動力を発生する電動機能と、前記出力軸から伝達された動力により発電する発電機能と、前記内燃機関を始動させる始動装置としての機能と、を有するモータジェネレータと、
前記内燃機関および前記モータジェネレータを制御する制御部と、を備えるハイブリッド車両であって、
車両の走行状況としての車速を検出する走行状況検出部を備え、
前記制御部は、
過去の前記走行状況としての、過去に推移した前記車速である経験車速が、所定の閾値未満の場合、前記内燃機関の運転を停止した状態で前記モータジェネレータの動力により走行するEV走行を制限することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御部は、
過去の前記走行状況としての、過去に前記EV走行を実施した回数であるEV経験回数が、所定の回数を超える場合、前記EV走行を制限することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記制御部は、
前記内燃機関の運転がアイドリングストップにより停止している状態から発進する場合、過去の前記走行状況に関わらず、前記EV走行を許可することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド車両にあっては特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のハイブリッド車両は、車両がコースト走行するときに電動機から内燃機関の出力軸または車軸に回転駆動力を付与することとしている。また、特許文献1に記載のハイブリッド車両は、コースト走行時における、電動機の出力の大きさまたは電動機から回転駆動力を付与するか否かを、車両の速度、車両の減速度若しくは路面の勾配、内燃機関の出力軸と車軸との間に介在する変速機の変速比のうちの少なくとも一つに応じて変更するようにしている。
【0003】
特許文献1に記載のハイブリッド車両によれば、コースト走行時のエネルギ効率をより一層向上でき、ドライバビリティの良化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−094161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、電動機から回転駆動力を付与するか否かを燃費を考慮して決定しておらず、電動機によるアシストまたはEV走行を過度に行うことで燃費が悪化するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、過度のEV走行を回避でき、燃費を向上させることができるハイブリッド車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内燃機関と、前記内燃機関の出力軸に連結され、前記出力軸に伝達する動力を発生する電動機能と、前記出力軸から伝達された動力により発電する発電機能と、前記内燃機関を始動させる始動装置としての機能と、を有するモータジェネレータと、前記内燃機関および前記モータジェネレータを制御する制御部と、を備えるハイブリッド車両であって、車両の走行状況としての車速を検出する走行状況検出部を備え、前記制御部は、過去の前記走行状況としての、過去に推移した前記車速である経験車速が、所定の閾値未満の場合、前記内燃機関の運転を停止した状態で前記モータジェネレータの動力により走行するEV走行を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、過度のEV走行を回避でき、燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のECUにより、経験車速を演算する動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のECUにより、EV経験回数を演算する動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のECUにより、経験車速とEV経験回数を含む条件に基づいてEV走行を制限する動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両は、内燃機関と、内燃機関の出力軸に連結され、出力軸に伝達する動力を発生する電動機能および出力軸から伝達された動力により発電する発電機能を有するモータジェネレータと、内燃機関およびモータジェネレータを制御する制御部と、を備えるハイブリッド車両であって、車両の走行状況を検出する走行状況検出部を備え、制御部は、過去の走行状況を記憶し、内燃機関の運転を停止した状態でモータジェネレータの動力により走行するEV走行を、過去の走行状況に基づいて制限することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両は、過度のEV走行を回避でき、燃費を向上させることができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両について図面を用いて説明する。図1から図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両を説明する図である。
【0012】
図1に示すように、ハイブリッド車両10は、エンジン20と、トランスミッション30と、車輪12と、ハイブリッド車両10を総合的に制御するECU(Electronic Control Unit)50と、とを含んで構成される。本実施例におけるエンジン20は本発明における内燃機関を構成する。本実施例におけるECU50は、本発明における制御部を構成する。
【0013】
エンジン20には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン20は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。エンジン20には、図示しない燃焼室に空気を導入する吸気管22が設けられている。
【0014】
吸気管22にはスロットルバルブ23が設けられており、スロットルバルブ23は、吸気管22を通過する空気の量(吸気量)を調整する。スロットルバルブ23は、図示しないモータにより開閉される電子制御スロットルバルブからなる。スロットルバルブ23は、ECU50に電気的に接続されており、ECU50によりそのスロットルバルブ開度が制御される。
【0015】
エンジン20には、図示しない吸気ポートを介して燃焼室に燃料を噴射するインジェクタ24と、燃焼室の混合気を点火する点火プラグ25と、が気筒ごとに設けられている。インジェクタ24および点火プラグ25は、ECU50に電気的に接続されている。インジェクタ24の燃料噴射量および燃料噴射タイミング、点火プラグ25の点火時期および放電量は、ECU50により制御される。
【0016】
エンジン20にはクランク角センサ27が設けられており、このクランク角センサ27は、クランク軸20Aの回転位置に基づいてエンジン回転数を検出し、検出信号をECU50に送信する。
【0017】
トランスミッション30は、エンジン20から伝達された回転を変速して、ドライブシャフト11を介して車輪12を駆動するようになっている。トランスミッション30は、図示しないトルクコンバータ、変速機構およびディファレンシャル機構を備えている。
【0018】
トルクコンバータは、エンジン20から伝達された回転を作動流体の作用によりトルクに変換することでトルクの増幅を行う。トルクコンバータには図示しないロックアップクラッチが設けられている。ロックアップクラッチの解放時は、エンジン20と変速機構との間で作動流体を介して動力が相互に伝達される。ロックアップクラッチの係合時は、エンジン20と変速機構との間でロックアップクラッチを介して直接的に動力が伝達される。
【0019】
変速機構は、CVT(Continuously Variable Transmission)から構成されており、金属ベルトが巻掛けられた1組のプーリにより無段階に自動で変速を行う。トランスミッション30における変速比の変更、およびロックアップクラッチの係合または解放は、ECU50により制御される。
【0020】
なお、変速機構は、遊星歯車機構を用いて段階的に変速を行う自動変速機(いわゆるステップAT)であってもよい。ディファレンシャル機構は、左右のドライブシャフト11に連結されており、変速機構で変速された動力を左右のドライブシャフト11に差動回転可能に伝達する。
【0021】
また、トランスミッション30は、AMT(Automated Manual Transmission)であってもよい。AMTは、平行軸歯車機構からなる手動変速機にアクチュエータを追加して自動で変速を行うようにした自動変速機である。トランスミッション30がAMTである場合、トランスミッション30にはトルクコンバータに代えて乾式単板クラッチが設けられる。
また、トランスミッション30は、DCT(Dual Clutch Transmission )であってもよい。DCTは、有段自動変速機の一種で、2系統のギアを有し、それぞれにクラッチを有する。
【0022】
ハイブリッド車両10はアクセル開度センサ13Aを備えており、このアクセル開度センサ13Aは、アクセルペダル13の操作量(以下、単に「アクセル開度」という)を検出し、検出信号をECU50に送信する。
【0023】
ハイブリッド車両10はブレーキストロークセンサ14Aを備えており、このブレーキストロークセンサ14Aは、ブレーキペダル14の操作量(以下、単に「ブレーキストローク」という)を検出し、検出信号をECU50に送信する。
【0024】
ハイブリッド車両10は車速センサ12Aを備えており、この車速センサ12Aは、車輪12の回転速度に基づく車速を検出し、検出信号をECU50に送信する。車速センサ12Aは、本発明における走行状況検出部を構成する。なお、車速センサ12Aの検出信号は、ECU50または他のコントローラにおいて、車速に対する各車輪12のスリップ率を演算する際に用いられる。
【0025】
ハイブリッド車両10はスタータ26を備えている。スタータ26は、図示しないモータと、このモータの回転軸に固定されたピニオンギヤとを備えている。一方、エンジン20のクランク軸20Aの一端部には円盤状のドライブプレートが固定されており、このドライブプレートの外周部にはリングギヤが設けられている。スタータ26は、ECU50の指令によりモータを駆動し、ピニオンギヤをリングギヤと噛合わせてリングギヤを回転させることで、エンジン20を始動する。このように、スタータ26は、ピニオンギヤとリングギヤとからなる歯車機構を介してエンジン20を始動する。
【0026】
ハイブリッド車両10はISG(Integrated Starter Generator)40を備えている。ISG40は、エンジン20を始動する始動装置と、電力を発電する発電機とを統合した回転電機である。ISG40は、外部からの動力により発電する発電機の機能と、電力が供給されることで動力を発生する電動機の機能とを有する。
【0027】
ISG40は、プーリ41、クランクプーリ21およびベルト42とからなる巻掛け伝動機構を介してエンジン20に連結されており、エンジン20との間で相互に動力伝達を行う。より詳しくは、ISG40は回転軸40Aを備えており、この回転軸40Aにはプーリ41が固定されている。エンジン20のクランク軸20Aの他端部にはクランクプーリ21が固定されている。クランクプーリ21とプーリ41にはベルト42が掛け渡されている。なお、巻掛け伝動機構としては、スプロケットとチェーンを用いることもできる。
【0028】
ISG40は、電動機として駆動することで、クランク軸20Aを回転させてエンジン20を始動する。ここで、本実施例のハイブリッド車両10は、エンジン20の始動装置としてISG40とスタータ26とを備えている。スタータ26はドライバの始動操作に基づくエンジン20の冷機始動に主に用いられ、ISG40はアイドリングストップからのエンジン20の再始動に主に用いられる。
【0029】
ISG40はエンジン20の冷機始動も可能であるが、ハイブリッド車両10は、エンジン20の確実な冷機始動のためにスタータ26を備えている。例えば、寒冷地の冬期等において潤滑油の粘度増加によりISG40の動力ではエンジン20の冷機始動が困難である場合、またはISG40が故障する場合があり得る。このような場合を考慮し、ハイブリッド車両10はISG40とスタータ26の両方を始動装置として備えている。
【0030】
ISG40の力行により発生する動力は、エンジン20のクランク軸20A、トランスミッション30、ドライブシャフト11を介して、車輪12に伝達される。
【0031】
また、車輪12の回転は、ドライブシャフト11、トランスミッション30、エンジン20のクランク軸20Aを介して、ISG40に伝達され、ISG40における回生(発電)に用いられる。
【0032】
このように、ISG40は、エンジン20のクランク軸20Aに伝達する動力を発生する電動機能およびクランク軸20Aから伝達された動力により発電する発電機能を有する。クランク軸20Aは本発明における出力軸を構成する。ISG40は、本発明におけるモータジェネレータを構成している。
【0033】
したがって、ハイブリッド車両10は、エンジン20の動力(エンジントルク)のみによる走行(以下、エンジン走行ともいう)だけでなく、ISG40の動力(モータトルク)によりエンジン20をアシストする走行を実現できる。
【0034】
さらに、ハイブリッド車両10は、エンジン20への燃料噴射を停止した状態で、ISG40の動力のみで走行(以下、EV走行ともいう)することができる。なお、EV走行中は、ISG40によりエンジン20が連れ回される。
【0035】
このように、ハイブリッド車両10は、エンジン20の動力とISG40の動力との少なくとも一方の動力を用いて走行可能なパラレルハイブリッドシステムを構成している。
【0036】
ハイブリッド車両10は、第1電源としての鉛バッテリ71と、第2電源としてのLiバッテリ72とを備えている。鉛バッテリ71およびLiバッテリ72は、充電可能な二次電池からなる。鉛バッテリ71およびLiバッテリ72は、約12Vの出力電圧を発生するようにセルの個数等が設定されている。
【0037】
鉛バッテリ71は電極に鉛を用いた鉛蓄電池からなる。Liバッテリ72は、正極と負極の間をリチウムイオンが行き来することで放電と充電を行うリチウムイオン二次電池からなる。
【0038】
鉛バッテリ71は、Liバッテリ72と比較して、短時間であればより大きな電流を放電可能な特性を有する。
【0039】
Liバッテリ72は、鉛バッテリ71と比較して、より多くの回数充放電を繰り返し可能な特性を有する。また、Liバッテリ72は、鉛バッテリ71と比較して、短い時間で充電が可能であるという特性を有する。また、Liバッテリ72は、鉛バッテリ71と比較して、高出力かつ高エネルギー密度であるという特性を有する。
【0040】
鉛バッテリ71には充電状態検出部71Aが設けられており、この充電状態検出部71Aは、鉛バッテリ71の端子間電圧、周辺温度や入出力電流を検出し、検出信号をECU50に出力する。ECU50は、鉛バッテリ71の端子間電圧、周辺温度や入出力電流により充電状態を検出する。
【0041】
Liバッテリ72には充電状態検出部72Aが設けられており、この充電状態検出部72Aは、Liバッテリ72の端子間電圧、周辺温度や入出力電流を検出し、検出信号をECU50に出力する。ECU50は、Liバッテリ72の端子間電圧、周辺温度や入出力電流により充電状態を検出する。鉛バッテリ71およびLiバッテリ72の充電状態(SOC)はECU50によって管理される。
【0042】
ハイブリッド車両10は、鉛バッテリ負荷16とLiバッテリ負荷17とを電気負荷として備えている。
【0043】
鉛バッテリ負荷16は、主に鉛バッテリ71から電力が供給される電気負荷である。鉛バッテリ負荷16は、車両の横滑りを防止するスタビリティ制御装置、操舵輪の操作力を電気的にアシストする図示しない電動パワーステアリング制御装置、ヘッドライトおよびブロアファン等を含んでいる。また、鉛バッテリ負荷16には、例えば、図示しないワイパー、および、図示しないラジエータに冷却風を送風する電動クーリングファンが含まれる。鉛バッテリ負荷16は、Liバッテリ負荷17と比較して電力を多く消費する電気負荷、または一時的に使用される電気負荷である。
【0044】
Liバッテリ負荷17は、主にLiバッテリ72から電力が供給される電気負荷である。Liバッテリ負荷17は、図示しないインストルメントパネルのランプ類およびメータ類並びにカーナビゲーションシステムも含んでいる。Liバッテリ負荷17は、鉛バッテリ負荷16と比較して電力消費量が少ない電気負荷である。
【0045】
ハイブリッド車両10は切換え部60を備えており、切換え部60は、鉛バッテリ71、Liバッテリ72、鉛バッテリ負荷16、Liバッテリ負荷17およびISG40の間の電力供給状態を切換える。切換え部60は、メカニカルリレーまたは半導体リレー(SSR:Solid State Relayともいう)等から構成されており、ECU50により制御される。
【0046】
切換え部60には、電力ケーブル61、62、63、64が接続されている。電力ケーブル61は、切換え部60、鉛バッテリ71、鉛バッテリ負荷16およびスタータ26を並列に接続している。電力ケーブル62は、切換え部60とLiバッテリとを接続している。電力ケーブル63は、切換え部60とLiバッテリ負荷17と接続している。電力ケーブル64は、切換え部60とISG40とを接続している。
【0047】
したがって、鉛バッテリ負荷16およびスタータ26は、鉛バッテリ71から電力が常時供給される。一方、Liバッテリ負荷17に対しては、Liバッテリ72または鉛バッテリ71の少なくとも一方から電力が供給されるように、電力供給状態が切換えられるようになっている。また、ISG40に対しては、Liバッテリ72または鉛バッテリ71の一方から電力が供給されるように、電力供給状態が切換えられるようになっている。
【0048】
ECU50は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0049】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU50として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECU50として機能する。
【0050】
ECU50の入力ポートには、前述のクランク角センサ27、アクセル開度センサ13A、ブレーキストロークセンサ14A、車速センサ12A、充電状態検出部71A、72Aを含む各種センサ類が接続されている。
【0051】
ECU50の出力ポートには、スロットルバルブ23、インジェクタ24、点火プラグ25、切換え部60、ISG40およびスタータ26などの各種装置類を含む各種制御対象類が接続されている。ECU50は、各種センサ類から得られる情報に基づいて、各種制御対象類を制御する。
【0052】
ECU50は、エンジン20の停止と再始動とを自動で行うアイドリングストップ制御を実施する。アイドリングストップ制御において、ECU50は、停止条件の成立した場合にエンジン20を停止し、かつ停止中に再始動条件が成立した場合にエンジン20を再始動する。また、ECU50は、所定のEV許可条件が成立した場合にEV走行を実施する。
【0053】
本実施例では、このEV許可条件以外にも、過去の走行状況に関する追加のEV許可条件を設定することでEV走行を制限し、過度のEV走行による燃費の悪化を回避するようになっている。以下、追加のEV許可条件に関するECU50の動作について説明する。
【0054】
本実施例では、ECU50は、過去の走行状況を記憶し、EV走行を過去の走行状況に基づいて制限するようになっている。
【0055】
詳しくは、ECU50は、過去に推移した車速である経験車速に基づいて、EV走行を制限する。また、ECU50は、過去にEV走行を実施した回数であるEV経験回数に基づいて、EV走行を制限する。
【0056】
ECU50は、エンジン20の運転がアイドリングストップにより停止している状態から発進する場合、過去の走行状況に関わらず、EV走行を許可する。
【0057】
ECU50による経験車速の演算動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0058】
図2において、ステップS1で、ECU50は、アイドリングストップによるエンジン停止中、または車速が0km/hであるか否かを判定する。
【0059】
ステップS1でエンジン停止中である場合、または車速が0km/hである場合、ECU50は、ステップS5で経験車速を0km/hに設定し、今回の動作を終了する。
【0060】
ステップS1でエンジン停止中ではない場合、かつ車速が0km/hではない場合、ECU50は、ステップS2で現在の車速(図中、現在車速と記す)が現在の経験車速以上であるか否かを判定する。
【0061】
ステップS2で現在の車速が現在の経験車速未満である場合、ECU50は、ステップS3で経験車速を現在の経験車速(すなわち前回値)のままに保持し、今回の動作を終了する。
【0062】
ステップS2で現在の車速が現在の経験車速以上である場合、ECU50は、ステップS4で経験車速を現在の車速に更新し、今回の動作を終了する。
【0063】
このように、ECU50は、現在の車速が現在の経験車速(経験車速の前回値)以上になった場合に、経験車速を現在の車速に更新し、それ以外の場合に、経験車速を前回値のままに保持している。
【0064】
ECU50によるEV経験回数の演算動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0065】
図3において、ステップS11で、ECU50は、アイドリングストップによるエンジン停止中、または車速が所定の閾値(一例として40km/h)以上であるか否かを判定する。
【0066】
ステップS11でエンジン停止中ではなく、かつ、車速が閾値未満である場合、ECU50は、ステップS12でEV走行(図中、単にEVと記す)が終了したか否かを判別する。
【0067】
ステップS12でEV走行が終了した場合、ECU50は、EV経験回数をカウントアップする。
【0068】
ステップS12でEV走行が終了していない場合、ECU50は、ステップS13でEV経験回数を前回値に保持する。
【0069】
ステップS11でエンジン停止中である場合、または車速が閾値以上である場合、ECU50は、ステップS15でEV経験回数を0にリセットし、今回の動作を終了する。
【0070】
このように、ECU50は、EV走行の終了時にEV経験回数をカウントアップしている。ただし、ECU50は、アイドリングストップによりエンジン20を停止した場合、または車速が所定の閾値(図3では40km/h)以上になった場合は、EV経験回数を0にリセットしている。
【0071】
ECU50によるEV走行の制限動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0072】
図4において、ステップS31で、ECU50は、図2で演算した経験車速が所定の閾値(一例として40km/h)以上、またはアイドリングストップによるエンジン停止中であるか否かを判別する。ECU50は、これらの条件の何れかを満たす場合にステップS31でYESと判別する。ECU50は、ステップS31をYESと判別するまで繰り返す。
【0073】
ステップS31の判別がYESの場合、ECU50は、図3で演算したEV経験回数が所定の閾値(一例として1回)以下であるか否かを判別する。ECU50は、EV経験回数の条件を満たす場合にステップS32でYESと判別する。ECU50は、ステップS32をYESと判別するまで繰り返す。
【0074】
ステップS32の判別がYESの場合、ECU50は、ステップS33でその他のEV許可条件が成立しているか否かの判別を繰り返し、EV許可条件が成立している場合、ステップS34でEV走行(図中、単にEVと記す)を実施する。
【0075】
ここで、ステップS31とステップS32でそれぞれYESと判定される車両状態は、走行により電力が発電され、かつ、この電力がEV走行により消費されていない状態に相当する。言い換えると、ECU50は、回生で電力を蓄えた直後であり、かつ、ステップS33でその他のEV許可条件が成立している場合に、EV走行を許可している。
【0076】
また、前述したように、ECU50は、エンジン20の運転がアイドリングストップにより停止している状態から発進する場合、過去の走行状況に関わらず、EV走行を許可する。
【0077】
したがって、ECU50は、回生で電力を蓄えた直後、または発進時のみにEV走行を許可するように、EV走行を制限している。このようにEV走行を制限することにより、過度のEV走行の実施による電力不足と発電の増加を抑制でき、燃費を向上させることができる。
【0078】
以上のように、本実施例に係るハイブリッド車両10は、車両の走行状況を検出する走行状況検出部として車速センサ12Aを備える。
【0079】
そして、ECU50は、検出した過去の走行状況を記憶し、エンジン20の運転を停止した状態でISG40の動力により走行するEV走行を、過去の走行状況に基づいて制限する。
【0080】
これにより、EV走行の実施に要する電力が鉛バッテリ71またはLiバッテリ72に蓄積されていないことを過去の走行状況に基づいて判定し、EV走行を制限できる。
【0081】
この結果、過度のEV走行を回避でき、燃費を向上させることができる。
【0082】
また、本実施例に係るハイブリッド車両10において、車速センサ12Aは、走行状況としての車速を検出する。
【0083】
そして、ECU50は、過去に推移した車速である経験車速に基づいて、EV走行を制限する。
【0084】
これにより、EV走行の実施に要する電力が鉛バッテリ71またはLiバッテリ72に蓄積されているか否かを経験車速に基づいて判定し、EV走行を制限できる。
【0085】
この結果、過度のEV走行を回避でき、燃費を向上させることができる。
【0086】
また、本実施例に係るハイブリッド車両10において、ECU50は、過去にEV走行を実施した回数であるEV経験回数に基づいて、EV走行を制限する。
【0087】
これにより、EV走行の実施に要する電力が鉛バッテリ71またはLiバッテリ72に蓄積されているか否かをEV経験回数に基づいて判定し、EV走行を制限できる。
【0088】
この結果、過度のEV走行を回避でき、燃費を向上させることができる。
【0089】
また、本実施例に係るハイブリッド車両10において、ECU50は、エンジン20の運転がアイドリングストップにより停止している状態から発進する場合、過去の走行状況に関わらず、EV走行を許可する。
【0090】
これにより、アイドリングストップからの発進時にドライバにEV走行を実感させることができ、ドライブフィーリングを向上させることができる。
【0091】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0092】
10 ハイブリッド車両
12A 車速センサ(走行状況検出部)
20 エンジン(内燃機関)
40 ISG(モータジェネレータ)
50 ECU(制御部)
図1
図2
図3
図4