特許第6878898号(P6878898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878898
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】屋根架構の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20210524BHJP
   E04B 1/35 20060101ALI20210524BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   E04G21/14
   E04B1/35 G
   E04H9/02 351
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-5214(P2017-5214)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-115427(P2018-115427A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】原田 恒則
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特公平02−022823(JP,B2)
【文献】 特開平07−113332(JP,A)
【文献】 特開平04−277239(JP,A)
【文献】 特許第2979039(JP,B2)
【文献】 特開2016−033313(JP,A)
【文献】 特開平05−230892(JP,A)
【文献】 実公昭50−027789(JP,Y1)
【文献】 特開昭58−195652(JP,A)
【文献】 特開平04−111829(JP,A)
【文献】 特開平07−018743(JP,A)
【文献】 特開平11−062017(JP,A)
【文献】 特開2014−169604(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/167488(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104389432(CN,A)
【文献】 米国特許第05363610(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14−21/16
E04B 1/00− 1/36
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設した支柱から外側に屋根架構を張り出すように前記屋根架構を地組し、
前記支柱の両側の上方に設置されたジャッキの出力を互いに等しくすることによって前記屋根架構の荷重を前記ジャッキに等しく負担させながら、前記支柱の両側において前記ジャッキによって前記屋根架構を引き揚げ、
前記屋根架構の引き揚げ後に、前記支柱の両側部に設置した支持架台によって前記屋根架構を支持した状態で前記ジャッキの出力を除荷するとともに荷重受け替え後の前記屋根架構の曲率を引き揚げ時の前記屋根架構の曲率に等しくすることによって、前記屋根架構の荷重を前記ジャッキから前記支持架台に受け替えて前記屋根架構の荷重を前記支持架台に等しく負担させることを特徴とする屋根架構の施工方法。
【請求項2】
前記支持架台の設置位置が前記屋根架構の下側であり、前記屋根架構を前記支持架台によって下から支持することを特徴とする請求項1に記載の屋根架構の施工方法。
【請求項3】
前記屋根架構の引き揚げ後であって前記ジャッキの出力の除荷の前に、前記屋根架構と前記支持架台との間に隙間埋め材を設けることを特徴とする請求項2に記載の屋根架構の施工方法。
【請求項4】
前記屋根架構の引き揚げ後であって前記ジャッキの出力の除荷の前に、前記支持架台と前記屋根架構との間に免震支承を設置することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の屋根架構の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根架構を施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根を施工する方法として、リフトアップ工法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のリフトアップ工法では、まず、ドーム形状の屋根架構を地組するとともに、本設の下部構造体の外周部分と内周柱を屋根架構の外周部近傍の地面に立設する。その下部構造体の外周部分及び内周柱の上端に仮設構台を設置するとともに、仮設構台の中央部上にセンターホールジャッキを設置する。その後、センターホールジャッキから吊上げロッドを下部構造体の外周部分と内周柱の間に垂下させて、吊上げロッドの下端を屋根架構の外周部に連結する。そして、センターホールジャッキによって屋根架構を下部構造体の外周部分及び内周柱の上端にまでリフトアップした後、完成させた下部構造体の上端に屋根架構の外周部を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−280543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋根架構が張出屋根の架構である場合、屋根架構の外周部がそれを支持する支柱の外側に張り出すので、屋根架構のうち支柱よりも外側の部分と内側の部分では応力状態が不均衡になる。つまり、屋根架構から支柱に作用する荷重は支柱の内側の部分と外側の部分で相違するので、支柱には偏心曲げ荷重が作用する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、張出屋根架構を支持する支柱に発生する偏心曲げ荷重を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための発明は、立設した支柱から外側に屋根架構を張り出すように前記屋根架構を地組し、前記支柱の両側の上方に設置されたジャッキの出力を互いに等しくすることによって前記屋根架構の荷重を前記ジャッキに等しく負担させながら、前記支柱の両側において前記ジャッキによって前記屋根架構を引き揚げ、前記屋根架構の引き揚げ後に、前記支柱の両側部に設置した支持架台によって前記屋根架構を支持した状態で前記ジャッキの出力を除荷するとともに荷重受け替え後の前記屋根架構の曲率を引き揚げ時の前記屋根架構の曲率に等しくすることによって、前記屋根架構の荷重を前記ジャッキから前記支持架台に受け替えて前記屋根架構の荷重を前記支持架台に等しく負担させることを特徴とする屋根架構の施工方法である。
【0007】
好ましくは、前記支持架台の設置位置が前記屋根架構の下側であり、前記屋根架構を前記支持架台によって下から支持する。
【0008】
以上によれば、屋根架構の引き揚げ中に対のジャッキの出力が互いに等しいので、対のジャッキが屋根架構の荷重を等しく負担する。そして、屋根架構の引き揚げ後に、支柱の両側部に設置した対の支持架台によって屋根架構をその下側から支持した状態で対のジャッキの出力を除荷して、屋根架構の荷重を対のジャッキから対の支持架台に受け替えると、対の支持架台が屋根架構の荷重を等しく負担することになる。それゆえ、屋根架構の荷重が支柱の両側に等しく作用するので、支柱には偏心曲げ荷重が発生しない。よって、支柱が安定して起立する。
【0009】
好ましくは、前記屋根架構の引き揚げ後であって前記ジャッキの出力の除荷の前に、前記屋根架構と前記支持架台との間に隙間埋め材を設ける。
【0010】
以上によれば、屋根架構の下に隙間が形成されたり、屋根架構の下面が支持架台の上面に対して斜めになった状態でも、屋根架構の荷重を隙間受け材を介して支持架台に受け替えることができる。
【0011】
好ましくは、前記屋根架構の引き揚げ後であって前記ジャッキの出力の除荷の前に、前記支持架台と前記屋根架構との間に免震支承を設置する。
以上によれば、支持架台と屋根架構との間に免震支承を設置することによって、地震時には地盤の揺れが屋根架構に伝達し難い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屋根架構の荷重が支柱の両側に等しく作用するので、支柱の偏心曲げ荷重を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、大スパン構造物の正面図である。
図2図2は、大スパン構造物の平面図である。
図3図3は、図2に示すIII−IIIに沿った断面の拡大図である。
図4図4は、屋根架構の施工における一工程を説明するための正面図である。
図5図5は、図4に示す工程の後の工程を説明するための拡大断面図である。
図6図6は、図5に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図7図7は、図6に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図8図8は、図7に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図9図9は、図8に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図10図10は、図9に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図11図11は、図10に示す工程の後の工程を説明するための拡大断面図である。
図12図12は、変形例における拡大断面図である。
図13図13は、変形例における屋根架構の地組工程を説明するための正面図である。
図14図14は、変形例における屋根架構の引き揚げ工程を説明するための正面図である。
図15図15は、変形例における拡大断面図である。
図16図16は、変形例における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0015】
1. 大スパン構造物
図1は大スパン構造物の正面図であり、図2は大スパン構造物の平面図であり、図3図2に示すIII−IIIに沿った面を矢印方向に見て示した概略拡大断面図である。図1及び図2に示すように、大スパン構造物は、基礎上に立設された支柱2,2,3,3と、支柱2,2,3,3によって支持された屋根架構4等を備える。
【0016】
支柱2,2,3,3は、鉄骨材を組み立ててなるトラス構造により構成されている。なお、支柱2,2,3,3が鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造であってもよい。
【0017】
支柱2,2が並列され、支柱3,3が支柱2,2の列と平行となるように並列され、これら支柱2,2,3,3が上から見て正方形又は長方形の角の位置に配置されている。以下では、支柱2,2の列方向及び支柱3,3の列方向を桁行方向といい、桁行方向に対して直交する水平方向を梁行方向という。
【0018】
屋根架構4は、鉄骨材を組み立ててなるトラス構造により構成されている。屋根架構4は、支柱2,2,3,3によって規定される直方体型又は立方体型の内部空間よりも外側に張り出した張出屋根である。図1に示す例では、屋根架構4が平屋根の架構である。なお、屋根架構4は、中央部が上方に膨出したドーム状であるか、又は梁行方向中央部が上方に膨出したアーチ状に設けられてもよい。
【0019】
図2に示すように、屋根架構4の4つの角部の内側の部位には、鉄骨材の無い中空部4a,4a,4b,4bが設けられている。支柱2,2,3,3が中空部4a,4a,4b,4b内に配置され、支柱2,2,3,3が屋根架構4の鉄骨材によって囲繞されている。図3に示すように、中空部4aの内面にはゴム弾性材等からなる複数の緩衝材5,5が設けられ、中空部4bの内面にも複数の緩衝材6,6が設けられている。
【0020】
図3に示すように、支柱2の上部の梁行方向両側には支持架台21,22が設置されている。支持架台21,22は支柱2から屋根架構4の鉄骨材の下に張り出しており、屋根架構4が支持架台21,22によって支持されている。具体的には、支持架台21,22上に免震支承23,24が設置され、免震支承23,24上に屋根架構4が設置されている。ここで、屋根架構4の鉄骨材と免震支承23,24の上側のフランジとの間の隙間にグラウト(隙間埋め材)25,26が充填されている。同様にして、支持架台31,32が支柱3の上部の梁行方向両側に設置され、屋根架構4がグラウト(隙間埋め材)35,36及び免震支承33,34を介して支持架台31,32によって支持されている。
【0021】
免震支承23,24,33,34は、上下一対の対向フランジの間にゴム層と鋼板が交互に積層されたものである。免震支承23,24,33,34が水平方向の振動について屋根架構4と支柱2,2,3,3を絶縁し、免震支承23,24,33,34によって屋根架構4が水平方向に移動可能に支持されている。
【0022】
屋根架構4が支柱2から梁行方向に張り出す長さは支柱2と支柱3との間の間隔の2分の1よりも短いにも関わらず、支持架台21,22は屋根架構4の荷重をほぼ等しく負担する。支持架台31,32も屋根架構4の荷重をほぼ等しく負担する。そのため、支柱2,3を安定して起立させることができる。
【0023】
なお、支柱2,2,3,3は桁行方向に2列、梁行方向に2列で配列されているが、更に多くの支柱が桁行方向に3列以上、梁行方向に2列で配列されていて、屋根架構4がそれら支柱に支持されていてもよい。
【0024】
2. 屋根架構の施工方法及び大スパン構造物の構築方法
図4に示すように、まず、本設の支柱2,2,3,3を構築する。この際、支柱2と支柱2を桁行方向に並列させ、支柱3と支柱3も桁行方向に並列させ、支柱2と支柱3を梁行方向に並列させるので、これら支柱2,2,3,3を上から見て正方形又は長方形の角の位置に構築する。
【0025】
また、これら支柱2,2,3,3によって囲まれた領域の内側やその外側に、複数の架台50を間隔を隔てて立設する。ここで、これら架台50の頭部が支柱2,2と支柱3,3との間の中央部において盛り上がったアーチ形状にほぼ揃うような高さに架台50を構築する。このアーチ形状は、支柱2,2,3,3上に設置後の屋根架構4の自重により屋根架構4の撓みを考慮したものである。
【0026】
次に、屋根架構4を架台50上に支持させるように、アーチ状の屋根架構4を地組する。この際、屋根架構4のうち支柱2,2,3,3に対応する部位には、鉄骨材の無い中空部4a,4a,4b,4bを設け、中空部4a,4a,4b,4b内の支柱2,2,3,3を屋根架構4の鉄骨材によって囲繞する。
【0027】
次に、図5に示すように、屋根架構4の下側且つ支柱2の梁行方向両側に支持架台21,22及び免震支承23,24を準備して、支持架台21,22及び免震支承23,24を屋根架構4に仮組みする。例えば支持架台21,22及び免震支承23,24を吊り材によって屋根架構4から吊り下げるように仮組みする。ここで、中空部4aの下に支持架台21,22及び免震支承23,24をはみ出さないように、支持架台21,22及び免震支承23,24を屋根架構4の下に仮組みする。同様に、屋根架構4の下側且つ支柱3の梁行方向両側の位置に支持架台31,32及び免震支承33,34を屋根架構4の下に仮組みする。
【0028】
また、中空部4aの内面に複数の緩衝材5,5…を取り付け、中空部4bの内面にも複数の緩衝材6,6…を取り付ける。
【0029】
次に、図6に示すように、支柱2の上端に仮設構台60を設置し、センターホールジャッキ等のジャッキ61,62を仮設構台60に設置する。ジャッキ61,62の設置位置は、支柱2の梁行方向両側の上方である。より具体的には、ジャッキ61,62の設置位置は、完成後の支持架台21,22の位置(図1参照)の直上である。同様に、支柱3の上に仮設構台70及びジャッキ71,72を設置する。
【0030】
次に、ロッド(吊り材)63,64をジャッキ61,62にセッティングするとともに、ロッド63,64をジャッキ61,62から支柱2の梁行方向両側に垂下させる。そして、ロッド63,64を支柱2の梁行方向両側において屋根架構4に連結する。具体的には、ロッド63,64の下端を屋根架構4の上端に連結する。同様に、ロッド(吊り材)73,74によってジャッキ71,72と屋根架構4を連結する。
なお、ロッド63,64,73,74を屋根架構4の鉄骨材の間に通して、ロッド63,64,73,74の下端を屋根架構4の下端に連結してもよいし、ロッド63,64,73,74の下端を屋根架構4の上端と下端の間の位置の鉄骨材に連結してもよい。また、ロッド63,64,73,74を屋根架構4の鉄骨材の間に通して、ロッド63,64,73,74の下端に台座を設け、屋根架構4の下から台座によって屋根架構4を支持してもよい。
【0031】
次に、油圧装置によってジャッキ61,62,71,72に油圧を供給して、ジャッキ61,62,71,72の出力(ロッド63,64,73,74を引き揚げる力)を漸増させると、ロッド63,64,73,74の張力が漸増する。この際、ジャッキ61,62,71,72の出力を何れのジャッキ61,62,71,72でも互いに等しく制御する。
【0032】
ジャッキ61,62,71,72の出力が或る値にまで上昇すると、図7に示すように屋根架構4が梁行方向両側部から浮き始める。つまり、屋根架構4の上への変形量は、梁行方向中央部から両側部に向かって漸増することになる。これは、ジャッキ61,62,71,72は出力が何れも等しく、ジャッキ61,62,71,72が屋根架構4の荷重を等しく負担するためである。
【0033】
その後のジャッキ61,62,71,72の出力の上昇に伴って、屋根架構4のアーチ形状の曲率が漸減する。そして、ジャッキ61,62,71,72の出力が或る値にまで上昇すると、図8に示すように屋根架構4の梁行方向中央部も浮き上がる。
【0034】
その後、何れのジャッキ61,62,71,72にも等しい油圧を供給し続けることによって、何れのジャッキ61,62,71,72も出力が等しい状態が維持される。そのため、屋根架構4の曲率をほぼ一定に保った状態で屋根架構4をジャッキ61,62,71,72によってリフトアップすることができる。なお、リフトアップ中の屋根架構4の曲率は完成後の屋根架構4の曲率にほぼ等しい。
支持架台21,22,31,32及び免震支承23,24,33,34も屋根架構4に追従して上昇される。
【0035】
そして、図9に示すように、屋根架構4を支柱2,2,3,3の上部にまで引き揚げたら、屋根架構4の上昇を停止させる。この際も、何れのジャッキ61,62,71,72も出力を等しく制御して、屋根架構4の荷重をジャッキ61,62,71,72に等しく負担させる。
【0036】
次に、支持架台21,22と屋根架構4の仮止めを解除して、図10に示すように支持架台21,22を支柱2の上部の梁行方向両側部に固定する。この際、屋根架構4の下面の形状に合わせて支持架台21,22の設置高さを調整することによって、免震支承23,24の高さ程度の間隔を支持架台21,22と屋根架構4の間に形成する。また、支持架台21の上面と支持架台22の上面は高さが揃っていてもよいし、上下にずれていてもよい。また、支持架台21の上下長と支持架台22の上下長が互いに等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。
同様に、支持架台31,32を支柱3の上部の梁行方向両側部に固定する。
【0037】
次に、免震支承23,24と屋根架構4の仮止めを解除して、図11に示すように免震支承23,24を支持架台21,22上に設置して、免震支承23,24を支持架台21,22に固定する。同様に、支持架台31,32上に免震支承33,34を設置する。
【0038】
次に、免震支承23,24,33,34と屋根架構4との間の隙間にグラウト25,26,35,36を充填して、硬化させる。なお、免震支承23,24,33,34と屋根架構4との間に隙間がなく、免震支承23,24,33,34の上側のフランジが屋根架構4に当接しているのであれば、グラウトの充填を行わなくてもよい。また、免震支承23,24,33,34の上側のフランジをボルト等によって屋根架構4に締結してもよいし、締結しなくてもよい。
【0039】
以上のように屋根架構4の上昇停止後に支持架台21,22,31,32、免震支承23,24,33,34及びグラウト25,26,35,36を設置している間中も、何れのジャッキ61,62,71,72も出力を等しく制御して、屋根架構4の荷重をジャッキ61,62,71,72に等しく負担させる。そして、支持架台21,22,31,32、免震支承23,24,33,34及びグラウト25,26,35,36の設置後、ジャッキ61,62,71,72への油圧供給を停止して、ジャッキ61,62,71,72の出力を除荷する。これにより、屋根架構4の荷重をジャッキ61,62,71,72から支持架台21,22,31,32に受け替える。そのため、屋根架構4の荷重を支持架台21,22,31,32にほぼ等しく負担させることができる。
次に、ジャッキ61,62,71,72及び仮設構台60,70を撤去する。
【0040】
3. 効果
(1) 屋根架構4の引き揚げ中にジャッキ61,62,71,72は出力が互いに等しく制御されているので、屋根架構4の荷重がジャッキ61,62,71,72に等しく作用する。そして、支持架台21,22,31,32及び免震支承23,24,33,34の設置後に、屋根架構4の荷重がジャッキ61,62,71,72から支持架台21,22,31,32に受け替えられるので、屋根架構4の荷重が支持架台21,22,31,32に等しく負担される。それゆえ、支柱2,3が安定して起立した状態を保持できる。つまり、屋根架構4の荷重が支柱2の梁行方向両側に等しく作用するので、支柱2が梁行方向中央側に倒れるような偏心曲げ荷重を抑制することができる。そのため、大スパン構造物の設計にあたっては支柱2の鉛直軸力を考慮するだけで済む上、偏心曲げ荷重に対する補強を支柱2に施さなくても済む。支柱3についても同様である。
【0041】
(2) 誤差等によって免震支承23,24,33,34と屋根架構4との間に隙間が生じた場合でも、隙間にグラウト25,26,35,36を充填することによって、ジャッキ61,62,71,72の出力の除荷時に屋根架構4の荷重が支持架台21,22,31,32に等しく負担される。
【0042】
(3) 屋根架構4の引き揚げ後に屋根架構4の下面が免震支承23,24,33,34の上側のフランジに対して斜めとなることがある。そのような場合でも、免震支承23,24,33,34と屋根架構4との間に隙間にグラウト25,26,35,36を充填することによって、屋根架構4の荷重をジャッキ61,62,71,72から免震支承23,24,33,34に受け替えることができる。
【0043】
(4) 支持架台21,22,31,32と屋根架構4との間に免震支承23,24,33,34が設けられているので、地震時には地盤の揺れが屋根架構4に伝達し難い。よって、地震が発生しても、屋根架構4が損傷しない。
【0044】
(5) 屋根架構4の引き揚げ中に風等によって屋根架構4が揺動した場合、支柱2,3への屋根架構4の衝撃力が緩衝材5,6によって緩衝される。よって、支柱2,3や屋根架構4の損傷を防止できる。
【0045】
(6) 仮設構台60,70を本設の支柱2,3の上端に設置したので、ジャッキ61,62,71,72を設置するための仮設用タワーを別途構築しなくても済む。よって、工期の短縮及び施工コストの抑制を図れる。
【0046】
4. 変形例
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。以下に、以上の実施形態からの変更点について説明する。以下に説明する変更点は、可能な限り組み合わせて適用してもよい。
【0047】
(1) グラウト25,26,35,36の代わりに、隙間埋め材としてのシムプレート(薄鋼板)を屋根架構4と免震支承23,24,33,34の上側のフランジとの間の隙間に挿入してもよい。この場合に、免震支承23,24,33,34の上側のフランジと屋根架構4を締結しなければ、シムプレートが免震支承23,24,33,34や屋根架構4に対して摺動可能となる。そうすると、屋根架構4が温度変化によって伸長・収縮し得るので、温度変化による屋根架構4の応力の発生を抑えることができる。
【0048】
(2) 二枚のシムプレートを屋根架構4と免震支承23,24,33,34の上側のフランジとの間の隙間に挿入した上で、二枚のシムプレートの間にグラウト25,26,35,36を充填してもよい。この場合に、免震支承23,24,33,34の上側のフランジと屋根架構4を締結しなければ、下側のシムプレートが免震支承23,24,33,34に対して摺動可能となる。そうすると、屋根架構4が温度変化によって梁行方向に伸長・収縮し得るので、温度変化による屋根架構4の応力の発生を抑えることができる。
【0049】
(3) 図12に示すように、支持架台21,22,31,32上に免震支承を設置することなく、支持架台21,22,31,32と屋根架構4との隙間にグラウト25,26,35,36を充填してもよい。グラウト25,26,35.36の代わりにシムプレートを支持架台21,22,31,32と屋根架構4との隙間に挿入してもよい。また、二枚のシムプレートを屋根架構4と支持架台21,22,31,32との間の隙間に挿入した上で、二枚のシムプレートの間にグラウト25,26,35,36を充填してもよい。
【0050】
(4) 上記実施形態では、アーチ状の屋根架構4を地組し、屋根架構4のリフトアップの際に屋根架構4を曲率が小さくなるように変形させた。それに対して、図13に示すように平らな屋根架構4を地組し、図14に示すように屋根架構4のリフトアップの際に屋根架構4を逆アーチ状に変形させてもよい。この場合、図15又は図16に示すように、屋根架構4の下面の形状に合わせて支持架台21,22,31,32の設置高さを調整することによって、梁行方向外側の支持架台21,31の設置高さを内側の支持架台22,32の設置高さよりも高くする。また、屋根架構4の引き揚げ後に屋根架構4の下面が免震支承23,24,33,34の上側のフランジ及び支持架台21,22,31,32の上面に対して斜めとなるので、図15に示すように、グラウト25,26,35,36を免震支承23,24,33,34と屋根架構4との間に隙間に充填するか、楔形の隙間埋め材を免震支承23,24,33,34と屋根架構4との間に隙間に挿入する。図16に示すように、免震支承を設置しない場合には、グラウト25,26,35,36を支持架台21,22,31,32と屋根架構4との間に隙間に充填するか、楔形の隙間埋め材を支持架台21,22,31,32と屋根架構4との間に隙間に挿入する。
【0051】
(5) 上記実施形態では、支持架台21,22,31,32を屋根架構4の下面よりも下の位置に設置した。それに対して、支持架台21,22,31,32を屋根架構4の上端と下端の間の位置に設置してもよい。この場合、支持架台21,22を支柱2から屋根架構4の鉄骨材の間に横方向に通して、支持架台21,22によって屋根架構4の下面以外の鉄骨材の下から屋根架構4を支持する。支持架台31,32についても同様である。
【符号の説明】
【0052】
2,3…支柱, 4…屋根架構, 21,22,31,32…支持架台,
23,24,33,34…免震支承,
25,26,35,36…グラウト(隙間埋め材), 60,70…仮設構台,
61,62,71,72…ジャッキ, 63,64,73,74…ロッド
図1
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