(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばカバーゴム層の厚みが厚い場合、カバーゴム層が研磨されても十分に除去されずに残ってしまう現象が発生する可能性がある。カバーゴム層が残ってしまう現象は、黒残り不良と呼ばれ、空気入りタイヤの外観の悪化をもたらす。
【0005】
本発明の態様は、黒残り不良の発生を抑制し、良好な外観の空気入りタイヤを製造できるタイヤ金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、タイヤのサイド部を成形するサイドプレートと、前記サイドプレートに設けられ、前記タイヤの第1色彩ゴム層と接触する底面及び壁面を有し、前記サイド部から突出し前記第1色彩ゴム層で覆われた前記タイヤの第2色彩ゴム層を成形する凹部と、を備え、前記底面の第1部分の深さは、前記第1部分よりも金型径方向外側に設けられる前記底面の第2部分の深さよりも深い、タイヤ金型が提供される。
【0007】
本発明の態様によれば、第2色彩ゴム層を成形するサイドプレートの凹部の底面のうち、金型径方向内側に設けられる第1部分の深さは、金型径方向外側に設けられる第2部分の深さよりも深い。そのため、加硫時において、タイヤとタイヤ金型との間の残留気体は、第1部分に流れ、タイヤとタイヤ金型との間から円滑に排出される。また、金型径方向内側に設けられる底面の第1部分の深さが、金型径方向外側に設けられる底面の第2部分の深さよりも深いので、加硫時において、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層は、第1部分に円滑に流動することができる。加硫時において、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層が円滑に流動することにより、第1色彩ゴム層の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制される。そのため、第1色彩ゴム層を研磨したとき、第1色彩ゴム層は十分に除去される。したがって、黒残り不良の発生が抑制され、良好な外観の空気入りタイヤが製造される。
【0008】
本発明者の知見によれば、白色文字における黒残り不良は、金型径方向外側よりも、金型径方向内側において発生する可能性が高い。これは、タイヤのビードフィラーの影響により、金型径方向内側における第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の円滑な流動が阻害されることが一因であると考えられる。金型径方向内側に設けられる底面の第1部分の深さを深くすることにより、金型径方向内側における第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の円滑な流動が促進される。そのため、金型径方向内側における黒残り不良の発生が抑制される。
【0009】
本発明の態様において、前記壁面は、第1壁面と、前記第1壁面よりも金型径方向外側に配置され前記第1壁面と間隙を介して対向する第2壁面と、を含み、前記第1部分は、前記第1壁面との境界の前記底面のエッジを含み、前記第2部分は、前記第2壁面との境界の前記底面のエッジを含んでもよい。
【0010】
第1壁面との境界の底面のエッジを含む第1部分が、第2壁面との境界の底面のエッジを含む第2部分よりも深いので、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層は、第1部分に円滑に流動することができる。そのため、第1部分において第1色彩ゴム層の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0011】
本発明の態様において、前記底面は、前記第2部分から前記第1部分に向かって徐々に深くなってもよい。
【0012】
これにより、加硫時において、残留気体は、第1部分に円滑に流れ、タイヤとタイヤ金型との間から十分に排出される。また、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層は、第1部分に円滑に流動することができる。したがって、第1色彩ゴム層の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0013】
本発明の態様において、前記底面は、前記第2部分から前記第1部分に向かってステップ状に深くなってもよい。
【0014】
これにより、加硫時において、残留気体は、第1部分に流れ、タイヤとタイヤ金型との間から十分に排出される。また、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層は、第1部分に円滑に流動することができる。したがって、第1色彩ゴム層の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0015】
本発明の態様において、前記第1部分の深さと前記第2部分の深さとの差は、0.1[mm]以上2.0[mm]以下でもよい。
【0016】
底面の第1部分の深さと第2部分の深さとの差が0.1[mm]未満である場合、残留気体の排出効果及び黒残り不良の発生抑制効果を十分に得ることができない。底面の第1部分の深さと第2部分の深さとの差が2.0[mm]よりも大きい場合、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層が第1部分に入り込む量が多くなり、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の使用量が多くなる。底面の第1部分の深さと第2部分の深さとの差が0.1[mm]以上2.0[mm]以下であることにより、黒残り不良の発生が抑制され、タイヤの外観の悪化が抑制される。
【0017】
本発明の態様において、前記底面は、前記底面と平行な面内において屈曲する屈曲部と、屈曲しない非屈曲部と、を有し、前記屈曲部における前記底面の前記第1部分と接続されるベントホールを備えてもよい。
【0018】
これにより、残留気体は、深さが深い屈曲部の第1部分に流れた後、ベントホールを介してタイヤ金型の外部空間に円滑に排出される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、黒残り不良の発生を抑制し、良好な外観の空気入りタイヤを製造できるタイヤ金型が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0022】
第1実施形態.
[タイヤ金型]
第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ金型10の一例を示す断面図である。タイヤ金型10は、グリーンタイヤTの加硫成形用金型である。グリーンタイヤTが加硫成形されることによって、空気入りタイヤ100が製造される。以下の説明においては、加硫前のグリーンタイヤTを適宜、タイヤT、と称し、加硫後の空気入りタイヤ100を適宜、タイヤ100、と称する。
【0023】
また、以下の説明においては、金型幅方向、金型周方向、及び金型径方向という用語を用いて各部の位置関係について説明する。金型幅方向とは、タイヤ金型10によって製造されるタイヤT(タイヤ100)の回転軸と平行な方向である。金型周方向とは、タイヤTの回転軸を中心とする回転方向である。金型径方向とは、金型幅方向及び金型周方向と直交する方向であり、タイヤTの回転軸に対する放射方向である。金型径方向外側とは、タイヤTの回転軸に対する放射方向において回転軸から離れる方向又は遠い部位をいう。金型径方向内側とは、タイヤTの回転軸に対する放射方向において回転軸に近付く方向又は近い部位をいう。タイヤ金型10の金型幅方向とタイヤ金型10によって加硫されるタイヤT(タイヤ100)のタイヤ幅方向とは同義である。タイヤ金型10の金型周方向とタイヤ金型10によって加硫されるタイヤTのタイヤ周方向とは同義である。タイヤ金型10の金型径方向とタイヤ金型10によって加硫されるタイヤTのタイヤ径方向とは同義である。
【0024】
図1に示すように、タイヤ金型10は、タイヤTの一方のサイド部を成形する下側サイドプレート1と、タイヤTの他方のサイド部を成形する上側サイドプレート2と、タイヤTの一方のビード部を成形する下側ビードリング3と、タイヤTの他方のビード部を成形する上側ビードリング4と、タイヤTのトレッド部を成形する複数のセクターモールド5とを備える。
【0025】
下側ビードリング3との間でブラダー6の下端部を挟む下側クランプリング7と、ブラダー6の上端部を挟む上側クランプリング8及び補助リング9とがタイヤ金型10に設けられる。ブラダー6は、ゴム製の円筒状部材である。ブラダー6は、タイヤTの内面を成形する。上側クランプリング8は、上下方向に移動可能である。上側クランプリング8が下方に移動することにより、ブラダー6は、タイヤTの内側に保持される。上側クランプリング8が上方に移動することにより、ブラダー6は、タイヤTの内側から外側に移動可能である。
【0026】
タイヤ金型10は、加熱装置によって加熱される。タイヤTの加硫時において、タイヤTは、タイヤ金型10に投入され、タイヤ金型10とブラダー6との間に配置される。上側クランプリング8が下方に移動した状態で、ブラダー6の内部に加圧用ガスが導入されると、タイヤTは、ブラダー6によって、タイヤ金型10に押し付けられる。ブラダー6によってタイヤTがタイヤ金型10に押し付けられている状態で、タイヤ金型10が加熱装置により加熱されることにより、タイヤTは加硫成形される。
【0027】
図2は、本実施形態に係るタイヤ金型10の下側サイドプレート1の内面の一例を示す平面図である。
図1及び
図2に示すように、下側サイドプレート1は、タイヤTのサイド部の表面を成形する内面11と、内面11に設けられ、白色文字となるタイヤTの白色ゴム層を成形する凹部20とを有する。また、本実施形態において、下側サイドプレート1は、凹部20の一部に接続されるベントホール40を有する。
【0028】
図3は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す平面図である。
図4は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す断面図であって、
図3のI−I線矢視断面図に相当する。
図5は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す断面図であって、
図3のII−II線矢視断面図に相当する。
【0029】
図2、
図3、
図4、及び
図5に示すように、凹部20は、底面21及び壁面22を有する。
【0030】
下側サイドプレート1の内面11は、タイヤTのサイド部の表面を成形する。凹部20は、タイヤTのサイド部の表面から突出する白色ゴム層(第2色彩ゴム層)を成形する。タイヤTにおいて、白色ゴム層は、黒色のカバーゴム層(第1色彩ゴム層)で覆われる。タイヤTにおいて、白色ゴム層は、露出しない。凹部20の内面は、タイヤTのカバーゴム層と接触する。
【0031】
凹部20は、タイヤTのサイド部の表面から突出しカバーゴム層で覆われたタイヤTの白色ゴム層を成形する。底面21及び壁面22を含む凹部20の内面は、タイヤTのカバーゴム層と接触する。凹部20は、カバーゴム層を介して白色ゴム層を成形する。
【0032】
壁面22は、底面21の両側に設けられる。壁面22は、第1壁面22Aと、第1壁面22Aと間隙を介して対向する第2壁面22Bとを含む。
【0033】
図3に示すように、底面21は、底面21と平行な面内において屈曲する屈曲部23と、屈曲しない非屈曲部24とを有する。屈曲部23は、白色文字のコーナー部を成形する。屈曲部23は、複数設けられる。非屈曲部24は、ストレート部を含む。非屈曲部24は、白色文字のストレート部を成形する。非屈曲部24は、複数設けられる。非屈曲部24は、屈曲部23と屈曲部23との間に配置される。屈曲部23は、非屈曲部24の一端部と他端部とのそれぞれに配置される。
【0034】
図4は、屈曲部23における凹部20の断面を示す。
図4に示すように、底面21は、第1壁面22Aと第2壁面22Bとの間において、第1部分211と、第1部分211よりも金型径方向外側に設けられる第2部分212とを有する。本実施形態において、底面21の第1部分211の深さHは、底面21の第2部分212の深さHよりも深い。凹部20の底面21の深さHとは、下側サイドプレート1の内面11と凹部20の底面21との金型幅方向の距離をいう。
【0035】
図4に示す例おいては、底面21の金型径方向両側に配置される第1壁面22A及び第2壁面22Bにおいて、第2壁面22Bは、第1壁面22Aよりも金型径方向外側に配置されている。
図4に示す例において、底面21の第1部分211は、第1壁面22Aとの境界の底面21のエッジを含む。底面21の第2部分212は、第2壁面22Bとの境界の底面21のエッジを含む。
【0036】
図4に示すように、底面21は、第2部分212から第1部分211に向かって徐々に深くなる。本実施形態においては、第1壁面22Aと第2壁面22Bとの間において、底面21の深さHは、第2部分212から第1部分211までの距離と比例の関係で変化する。
【0037】
本実施形態において、底面21の第1部分211の深さHと底面21の第2部分212の深さHとの差ΔHは、0.1[mm]以上2.0[mm]以下である。
【0038】
ベントホール40は、タイヤTをタイヤ金型10で加硫するとき、タイヤTとタイヤ金型10との間の残留気体及び加硫により発生するガスをタイヤ金型10の外部空間に排出する通気口である。ベントホール40は、タイヤ金型10の内部空間と外部空間とを接続する。ベントホール40は、下側サイドプレート1のベントグルーブ30の内面と下側サイドプレート1の外面とを貫通する。
【0039】
図3及び
図4に示すように、本実施形態において、ベントホール40は、屈曲部23における底面21の第1部分211と接続される。
【0040】
図5は、非屈曲部24における凹部20の断面を示す。
図5に示すように、底面21は、第1壁面22Aと第2壁面22Bとの間において、第1部分211と、第1部分211よりも金型径方向外側に設けられる第2部分212とを有する。
図5に示す例においても、底面21の第1部分211の深さHは、底面21の第2部分212の深さHよりも深い。
【0041】
底面21の第1部分211は、底面21の金型径方向両側に配置される2つの壁面22のうち金型径方向内側の壁面22との境界の底面21のエッジを含む。底面21の第2部分212は、底面21の金型径方向両側に配置される2つの壁面22のうち金型径方向外側の壁面22との境界の底面21のエッジを含む。
【0042】
図5に示すように、底面21は、第2部分212から第1部分211に向かって徐々に深くなる。第1壁面22Aと第2壁面22Bとの間において、底面21の深さHは、第2部分212から第1部分211までの距離と比例の関係で変化する。
【0043】
底面21の第1部分211の深さHと底面21の第2部分212の深さHとの差ΔHは、0.1[mm]以上2.0[mm]以下である。
【0044】
[タイヤの製造方法]
次に、本実施形態に係るタイヤ100の製造方法の一例について説明する。
図6は、本実施形態に係るタイヤ100の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、タイヤ100の製造方法は、白色文字及びタイヤTのサイド部となるゴムシートを押し出し成形によって製造する工程(ステップS101)と、ベルト層及びビード部のようなタイヤTを構成する部材を供給する工程(ステップS102)と、ゴムシート、ベルト層、及びビード部などを組み立ててタイヤTを成形する成形工程(ステップS103)と、タイヤ金型10を使ってタイヤTを加硫してタイヤ100を製造する加硫工程(ステップS104)と、タイヤ100の白色ゴム層を覆うカバーゴム層を研磨して白色ゴム層を露出させる研磨工程(ステップS105)と、タイヤ100の外観検査を行う工程(ステップS106)と、を含む。
【0045】
本実施形態においては、白色文字及びタイヤTのサイド部となるゴムシートが押し出し成形によって成形される(ステップS101)。ゴムシートは、白色ゴム層と、その白色ゴム層を覆う黒色のカバーゴム層とを含む。また、ゴムシートは、タイヤTのサイド部となる黒色ゴム層を含む。また、ベルト層、ビード部、及びトレッドゴムのようなタイヤTを構成する部材が供給される(ステップS102)。
【0046】
ステップS101で成形されたゴムシートと、ステップS102で供給された部材とが組み立てられ、加硫前のタイヤTが成形される(ステップS103)。タイヤTのサイド部には、白色文字となる白色ゴム層が埋設されている。また、タイヤTにおいて、白色文字となる白色ゴム層は、黒色のカバーゴム層で覆われており、露出していない。
【0047】
ステップS103で成形されたタイヤTがタイヤ金型10に投入され、タイヤTの加硫が実施される(ステップS104)。タイヤTのサイド部の表面は、下側サイドプレート1の内面11で成形される。カバーゴム層で覆われている白色ゴム層は、下側サイドプレート11に設けられている凹部20で成形される。
【0048】
図7は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20により成形されたタイヤ100の凸部70の一例を示す斜視図である。
図8は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20により成形されたタイヤ100の凸部70の一例を示す断面図である。
【0049】
タイヤ金型10を使ってタイヤTが加硫されることにより、
図7及び
図8に示すように、タイヤ100のサイド部には、凹部20によって成形された凸部70と、ベントホール40によって成形されたスピュー75とが形成される。凸部70は、白色ゴム層72と、その白色ゴム層72を覆う黒色のカバーゴム層71とを含む。
【0050】
次に、研磨工程が実施される(ステップS105)。研磨工程においては、凸部70の表面が研磨装置によって研磨される。
【0051】
図9は、本実施形態に係るタイヤ100の研磨後の凸部70の一例を示す斜視図である。
図10は、本実施形態に係るタイヤ100の研磨後の凸部70の一例を示す断面図である。
図9及び
図10に示すように、凸部70の表面が研磨されることにより、スピュー75が除去される。また、白色ゴム層72を覆うカバーゴム層71が除去される。カバーゴム層71が除去されることにより、凸部70の表面において、白色ゴム層72が露出する。これにより、タイヤ100のサイド部に白色文字が形成される。白色文字が形成された後、タイヤ100の外観検査が実施される(ステップS106)。
【0052】
[空気入りタイヤ]
図11は、上述の製造方法により製造された本実施形態に係るタイヤ100の一例を示す子午断面図である。
図11に示すように、タイヤ100は、カーカス102と、ベルト層103と、ベルトカバー104と、ビード部105と、トレッド部106と、サイド部107と、サイド部107に設けられた凸部70とを備える。トレッド部106は、トレッドゴム108を含む。サイド部107は、サイドゴム109を含む。
【0053】
カーカス102は、タイヤ100の骨格を形成する強度部材である。カーカス102は、カーカスコードを含み、タイヤ100に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。
【0054】
ビード部105は、カーカス102を支持する強度部材である。ビード部105は、ビードコア151と、ビードフィラー152とを有する。ビード部105は、タイヤ幅方向においてカーカス102の両側に配置され、カーカス102の両端部を支持する。カーカス102は、ビード部105のビードコア151において折り返される。ビード部105は、タイヤ100をリムに固定させる。
【0055】
カーカス102は、カーカス本体部と、ビードコア151で折り返されることにより形成されるカーカス折り返し部とを有する。カーカス折り返し部は、ビードコア151でカーカス102が折り返されることによりカーカス本体部よりもタイヤ幅方向外側に配置された部分である。ビードコア151は、ビードワイヤがリング状に巻かれた部材である。ビードワイヤは、スチールワイヤである。ビードフィラー152は、カーカス102がビードコア151で折り返されることにより形成されたカーカス本体部とカーカス折り返し部との間の空間に配置されるゴム材である。
【0056】
ベルト層103は、タイヤ100の形状を保持する強度部材である。ベルト層103は、カーカス102とトレッドゴム108との間に配置される。ベルト層103は、ベルトコードと、そのベルトコードを覆うゴムとを含む。ベルト層103は、第1ベルトプライ131と、第2ベルトプライ132とを含む。第1ベルトプライ131と第2ベルトプライ132とは、第1ベルトプライ131のベルトコードと第2ベルトプライ132のベルトコードとが交差するように積層される。
【0057】
ベルトカバー104は、ベルト層103を保護し、補強する強度部材である。ベルトカバー104は、タイヤ100の回転軸に対してベルト層103の外側に配置される。ベルトカバー104は、カバーコードと、そのカバーコードを覆うゴムとを含む。
【0058】
トレッドゴム108は、カーカス102を保護する。トレッド部106は、複数の溝が設けられたトレッドゴム108を含む。トレッド部106は、溝の間に配置される陸部を含み、陸部は、路面と接触する接地面(踏面)を有する。溝は、タイヤ周方向に配置される複数の主溝と、少なくとも一部がタイヤ幅方向に配置されるラグ溝とを含む。
【0059】
トレッド部106は、タイヤ幅方向の中心CLを含むセンター部と、タイヤ幅方向においてセンター部の両側に設けられるショルダー部とを含む。主溝は、センター部及びショルダー部のそれぞれに設けられる。ラグ溝も、センター部及びショルダー部のそれぞれに設けられる。
【0060】
サイドゴム109は、カーカス102を保護する。サイド部107は、サイドゴム109を含み、タイヤ幅方向においてトレッド部106の両側に配置される。
【0061】
サイド部107の表面は、サイドゴム109の表面を含む。凸部70は、サイド部107の表面からタイヤ幅方向外側に突出する。
【0062】
凸部70は、タイヤ幅方向の中心CLよりも一方側のサイド部107に設けられ、他方側のサイド部107には設けられない。凸部70は、白色文字を含む。なお、凸部70は、文字でなくてもよい。凸部70は、記号又は図形を表わしてもよい。
【0063】
サイドゴム109は、黒色ゴムである。サイドゴム109は、例えば、カーボンで補強されたジエン系ゴム材料を含む。白色ゴム層72は、例えば二酸化チタン又はクレーのような白色充填材で補強されたジエン系ゴム材料を含む。本実施形態において、白色ゴム層72の剛性は、サイドゴム109の剛性よりも小さい。
【0064】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、白色ゴム層72を成形する下側サイドプレート11の凹部20の底面21のうち、金型径方向内側に設けられる第1部分211の深さHは、金型径方向外側に設けられる第2部分212の深さHよりも深い。そのため、加硫時において、タイヤTとタイヤ金型10との間の残留気体は、第1部分211に流れ、タイヤTとタイヤ金型10との間から円滑に排出される。また、金型径方向内側に設けられる底面21の第1部分211の深さHが、金型径方向外側に設けられる底面21の第2部分212の深さHよりも深いので、加硫時において、カバーゴム層71及び白色ゴム層72は、第1部分211に円滑に流動することができる。加硫時において、カバーゴム層71及び白色ゴム層72が円滑に流動することにより、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制される。そのため、カバーゴム層71を研磨したとき、カバーゴム層71は十分に除去される。したがって、黒残り不良の発生が抑制され、良好な外観のタイヤ100が製造される。
【0065】
また、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制されるため、白色ゴム層72の使用量(ゴムボリューム)を抑制しても、カバーゴム層71を研磨したとき、カバーゴム層71は十分に除去される。白色ゴム層72の使用量が抑制されることにより、タイヤ100の製造コストが抑制される。
【0066】
本発明者の知見によれば、白色文字における黒残り不良は、金型径方向外側よりも、金型径方向内側において発生する可能性が高い。これは、タイヤTのビードフィラー152の影響により、金型径方向内側におけるカバーゴム層71及び白色ゴム層72の円滑な流動が阻害されることが一因であると考えられる。金型径方向内側に設けられる底面21の第1部分211の深さHを深くすることにより、金型径方向内側におけるカバーゴム層71及び白色ゴム層72の円滑な流動が促進される。そのため、金型径方向内側における黒残り不良の発生が抑制される。
【0067】
また、本実施形態においては、底面21の金型径方向両側に一対の壁面22(第1壁面22A及び第2壁面22B)が設けられ、第1部分211は、一対の壁面22のうち金型径方向内側の壁面22との境界の底面21のエッジを含み、第2部分212は、一対の壁面22のうち金型径方向外側の壁面22との境界の底面21のエッジを含む。そのため、加硫において、カバーゴム層71及び白色ゴム層72は、第1部分211に円滑に流動することができる。したがって、第1部分211においてカバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0068】
また、本実施形態においては、底面21は、第2部分212から第1部分211に向かって徐々に深くなる。これにより、加硫時において、残留気体は、第1部分211に円滑に流れ、タイヤTとタイヤ金型10との間から十分に排出される。また、カバーゴム層71及び白色ゴム層72は、第1部分211に円滑に流動することができる。したがって、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0069】
また、本実施形態においては、第1部分211の深さHと第2部分212の深さHとの差ΔHは、0.1[mm]以上2.0[mm]以下である。底面21の第1部分211の深さHと第2部分212の深さHとの差ΔHが0.1[mm]未満である場合、残留気体の排出効果及び黒残り不良の発生抑制効果を十分に得ることができない。底面21の第1部分211の深さHと第2部分212の深さHとの差ΔHが2.0[mm]よりも大きい場合、カバーゴム層71及び白色ゴム層72が第1部分211に入り込む量が多くなり、カバーゴム層71及び白色ゴム層72の使用量が多くなる。底面21の第1部分211の深さHと第2部分212の深さHとの差ΔHが0.1[mm]以上2.0[mm]以下であることにより、黒残り不良の発生が抑制され、タイヤの外観の悪化が抑制される。
【0070】
また、本実施形態においては、底面21は、底面21と平行な面内において屈曲する屈曲部23と、屈曲しない非屈曲部24とを有する。ベントホール40は、屈曲部23における底面21の第1部分211と接続される。これにより、残留気体は、深さHが深い屈曲部23の第1部分211に流れた後、ベントホール40を介してタイヤ金型10の外部空間に円滑に排出される。
【0071】
第2実施形態.
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0072】
図12は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す断面図である。上述の実施形態においては、
図5を参照して説明したように、金型径方向に複数の底面21が設けられている場合、一方の底面21の第1部分211の深さHと他方の底面21の第1部分211の深さHとが等しく、一方の底面21の第2部分212の深さHと他方の底面21の第2部分212の深さHとが等しいこととした。
【0073】
図12に示すように、金型径方向に複数の底面21が設けられている場合、金型径方向内側に設けられている底面21の第1部分211の深さHが、金型径方向外側に設けられている底面21の第1部分211の深さHよりも深く、金型径方向内側に設けられている底面21の第2部分212の深さHが、金型径方向外側に設けられている底面21の第2部分212の深さHよりも深くてもよい。また、金型径方向内側に設けられている底面21の第2部分212の深さHが、金型径方向外側に設けられている底面21の第1部分211の深さHよりも深くてもよい。
【0074】
上述のように、本発明者の知見によれば、白色文字における黒残り不良は、金型径方向外側よりも、金型径方向内側において発生する可能性が高い。金型径方向内側に設けられている底面21の深さHを金型径方向外側に設けられている底面21の深さHよりも深くすることにより、金型径方向内側におけるカバーゴム層71及び白色ゴム層72の円滑な流動が促進される。そのため、金型径方向内側における黒残り不良の発生が抑制される。
【0075】
第3実施形態.
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0076】
図13は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す断面図である。上述の第1実施形態及び第2実施形態においては、底面21の深さHは、比例の関係で変化することとした。換言すれば、凹部20の断面において、底面21は直線状であることとした。
図13に示すように、底面21は、第2部分212から第1部分211に向かってステップ状に深くなってもよい。
【0077】
本実施形態においても、加硫時において、残留気体は、第1部分211に流れ、タイヤTとタイヤ金型10との間から十分に排出される。また、カバーゴム層71及び白色ゴム層72は、第1部分211に円滑に流動することができる。したがって、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0078】
第4実施形態.
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0079】
図14は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す断面図である。上述の第1実施形態及び第2実施形態においては、凹部20の断面において、底面21は直線状であることとした。
図14に示すように、底面21は、第2部分212から第1部分211に向かって曲線状に深くなってもよい。
【0080】
本実施形態においても、加硫時において、残留気体は、第1部分211に流れ、タイヤTとタイヤ金型10との間から十分に排出される。また、カバーゴム層71及び白色ゴム層72は、第1部分211に円滑に流動することができる。したがって、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0081】
実施例.
タイヤ金型を用いてタイヤTを加硫し、加硫後のタイヤ100のカバーゴム層71を研磨し、研磨後のタイヤ100の外観検査を実施し、黒残り不良のレベルについて評価を行った。
【0082】
製造したタイヤ100のタイヤサイズは、275/70R16 114Sである。自動バフ装置によって、タイヤ100のサイド部107に設けられた凸部70の表面を一定時間研磨した。研磨後のタイヤ100に黒残り不良が発生していないか否かを外観検査し、その良品率を測定した。
【0083】
凹部20の構造が異なる複数のタイヤ金型を用いて複数のタイヤ100を製造し、それら複数のタイヤ100のそれぞれについて評価を行った。
図15は、黒残り不良の評価試験の結果を示す図表である。
図15に示す表において、従来例1及び従来例2に係るタイヤ金型は、白色ゴム層72を成形するための凹部20を有するものの、凹部20の底面21の深さHは一定である。実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、及び実施例6に係るタイヤ金型は、本出願に係る発明の技術的範囲に属するタイヤ金型である。実施例1から実施例6に係るタイヤ金型の凹部20の第1部分211の深さHは、第2部分212の深さHよりも深い。
【0084】
実施例1、実施例2、実施例3、及び実施例4に係るタイヤ金型は、
図4及び
図5などを参照して説明したような、底面21の断面形状が直線状であるタイヤ金型である。実施例5に係るタイヤ金型は、
図13を参照して説明したような、底面21の断面形状がステップ状であるタイヤ金型である。実施例6に係るタイヤ金型は、
図14を参照して説明したような、底面21の断面形状が曲線状であるタイヤ金型である。
【0085】
また、
図15の表において、「第1部分の深さと第2部分の深さとの差ΔH」とは、底面21の第1部分211の深さHと第2部分212の深さHとの差ΔHの値[mm]である。「屈曲部におけるベントホール配置」において、「無」とは、ベントホール40が屈曲部23における第1部分211には設けられてなく、非屈曲部24における第1部分211に設けられていることを意味し、「有」とは、ベントホール40が屈曲部23における第1部分211に設けられていることを意味する。なお、従来例1及び従来例2においては、第1部分211が無いものの、ベントホールは、凹部20の底面21の屈曲部に設けられている。「ベントホール個数」とは、従来例1に係るタイヤ金型に設けられているベントホールの数を100[%]としたときのベントホールの数を比で表わした値[%]である。
【0086】
従来例1の良品率を80[%]とし、従来例1を100とする指数で結果を示す。数値が大きいほど、良品率が高いことを示す。
【0087】
実施例1から実施例6に示すように、深さHが異なる第1部分211及び第2部分212が設けられることにより、良品率が高いことが確認できた。また、従来例2及び実施例1から実施例6に示すように、深さHが異なる第1部分211及び第2部分212が設けられることにより、ベントホール40の数を少なくしても、高い良品率が得られることが確認できた。