特許第6878906号(P6878906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878906
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】タイヤ金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20210524BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20210524BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-8687(P2017-8687)
(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公開番号】特開2018-114731(P2018-114731A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹森 諒平
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−141005(JP,A)
【文献】 特開2008−265502(JP,A)
【文献】 特開2014−073647(JP,A)
【文献】 特開2008−006805(JP,A)
【文献】 特開2004−136616(JP,A)
【文献】 特開2002−127147(JP,A)
【文献】 特開2016−097505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29D 30/00−30/72
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのサイド部を成形するサイドプレートと、
前記サイドプレートに設けられ、前記タイヤの第1色彩ゴム層と接触する底面及び壁面を有し、前記サイド部から突出し前記第1色彩ゴム層で覆われた前記タイヤの第2色彩ゴム層を成形する凹部と、
前記壁面との境界の前記底面のエッジに設けられるベントグルーブと、を備え、
前記底面は、前記底面と平行な面内において屈曲する屈曲部と、屈曲しない非屈曲部と、を有し、
前記屈曲部における前記ベントグルーブの深さは、前記非屈曲部における前記ベントグルーブの深さよりも深い、
タイヤ金型。
【請求項2】
前記ベントグルーブは、前記屈曲部に向かって徐々に深くなる、
請求項1に記載のタイヤ金型。
【請求項3】
前記屈曲部は、前記非屈曲部の一端部に設けられる第1屈曲部と、前記非屈曲部の他端部に設けられる第2屈曲部と、を含み、
前記非屈曲部の中心における前記ベントグルーブの深さが最も浅く、
前記第1屈曲部における前記ベントグルーブの深さと前記第2屈曲部における前記ベントグルーブの深さとは、等しい、
請求項2に記載のタイヤ金型。
【請求項4】
前記ベントグルーブは、前記屈曲部に向かってステップ状に深くなる、
請求項1に記載のタイヤ金型。
【請求項5】
前記屈曲部は、第1屈曲部と、前記第1屈曲部よりも金型径方向内側に設けられる第2屈曲部と、を含み、
前記第2屈曲部における前記ベントグルーブの深さは、前記第1屈曲部における前記ベントグルーブの深さよりも深い、
請求項に記載のタイヤ金型。
【請求項6】
前記壁面は、第1壁面と、前記第1壁面と間隙を介して対向する第2壁面と、を含み、
前記ベントグルーブは、前記第1壁面との境界の前記底面のエッジに設けられる、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のタイヤ金型。
【請求項7】
前記ベントグルーブは、金型径方向において、前記底面の中央部よりも内側に設けられる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のタイヤ金型。
【請求項8】
前記ベントグルーブは、金型径方向において、前記底面の中央部よりも外側には設けられない、
請求項7に記載のタイヤ金型。
【請求項9】
前記ベントグルーブの深さは、0.5[mm]以上3.0[mm]以下である、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のタイヤ金型。
【請求項10】
前記屈曲部における前記ベントグルーブと接続されるベントホールを備える、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のタイヤ金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に開示されているように、サイド部に白色文字を有する空気入りタイヤが知られている。白色文字は、空気入りタイヤのサイド部から突出する白色ゴム層によって形成される。白色文字を有する空気入りタイヤは、タイヤ金型に白色ゴム層及びその白色ゴム層を覆う黒色のカバーゴム層を含むグリーンタイヤを投入して加硫する工程と、カバーゴム層を研磨して除去することによりタイヤ金型の凹部で成形された白色ゴム層を露出させる工程とを経て製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−097505号公報
【特許文献2】特開2016−141005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばカバーゴム層の厚みが厚い場合、カバーゴム層が研磨されても十分に除去されずに残ってしまう現象が発生する可能性がある。カバーゴム層が残ってしまう現象は、黒残り不良と呼ばれ、空気入りタイヤの外観の悪化をもたらす。
【0005】
本発明の態様は、黒残り不良の発生を抑制し、良好な外観の空気入りタイヤを製造できるタイヤ金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、タイヤのサイド部を成形するサイドプレートと、前記サイドプレートに設けられ、前記タイヤの第1色彩ゴム層と接触する底面及び壁面を有し、前記サイド部から突出し前記第1色彩ゴム層で覆われた前記タイヤの第2色彩ゴム層を成形する凹部と、前記壁面との境界の前記底面のエッジに設けられるベントグルーブと、を備え、前記底面は、前記底面と平行な面内において屈曲する屈曲部と、屈曲しない非屈曲部と、を有し、前記屈曲部における前記ベントグルーブの深さは、前記非屈曲部における前記ベントグルーブの深さよりも深い、タイヤ金型が提供される。
【0007】
本発明の態様によれば、第2色彩ゴム層を成形するサイドプレートの凹部の底面にベントグルーブが設けられるので、加硫時において、タイヤとタイヤ金型との間の残留気体は、タイヤとタイヤ金型との間から円滑に排出される。また、屈曲部におけるベントグルーブの深さは、非屈曲部におけるベントグルーブの深さよりも深いので、タイヤとタイヤ金型との間の残留気体は、ベントグルーブにより円滑に排出される。残留気体が排出されることにより、加硫時において、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層は円滑に流動することができる。加硫時において、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層が円滑に流動することにより、第1色彩ゴム層の厚みが厚くなることが抑制される。そのため、第1色彩ゴム層を研磨したとき、第1色彩ゴム層は十分に除去される。したがって、黒残り不良の発生が抑制され、良好な外観の空気入りタイヤが製造される。
【0008】
本発明の態様において、前記ベントグルーブは、前記屈曲部に向かって徐々に深くなってもよい。
【0009】
これにより、加硫時において、残留気体は、屈曲部におけるベントグルーブに円滑に流れ、タイヤとタイヤ金型との間から十分に排出される。そのため、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層は、円滑に流動することができる。したがって、第1色彩ゴム層の厚みが厚くなることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0010】
本発明の態様において、前記屈曲部は、前記非屈曲部の一端部に設けられる第1屈曲部と、前記非屈曲部の他端部に設けられる第2屈曲部と、を含み、前記非屈曲部の中心における前記ベントグルーブの深さが最も浅く、前記第1屈曲部における前記ベントグルーブの深さと前記第2屈曲部における前記ベントグルーブの深さとは、等しくてもよい。
【0011】
これにより、残留気体は、非屈曲部の中心におけるベントグルーブから第1屈曲部及び第2屈曲部のそれぞれにおけるベントグルーブに円滑に流れ、タイヤとタイヤ金型との間から十分に排出される。
【0012】
本発明の態様において、前記ベントグルーブは、前記屈曲部に向かってステップ状に深くなってもよい。
【0013】
これにより、加硫時において、残留気体は、屈曲部におけるベントグルーブに円滑に流れ、タイヤとタイヤ金型との間から十分に排出される。そのため、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層は、円滑に流動することができる。したがって、第1色彩ゴム層の厚みが厚くなることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0014】
本発明の態様において、前記屈曲部は、第1屈曲部と、前記第1屈曲部よりも金型径方向内側に設けられる第2屈曲部と、を含み、前記第2屈曲部における前記ベントグルーブの深さは、前記第1屈曲部における前記ベントグルーブの深さよりも深くてもよい。
【0015】
本発明者の知見によれば、白色文字における黒残り不良は、金型径方向外側よりも、金型径方向内側において発生する可能性が高い。これは、タイヤのビードフィラーの影響により、金型径方向内側における第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の円滑な流動が阻害されることが一因であると考えられる。金型径方向内側に設けられる第2屈曲部におけるベントグルーブの深さを深くすることにより、金型径方向内側における第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の円滑な流動が促進される。そのため、金型径方向内側における黒残り不良の発生が抑制される。また、金型径方向外側に設けられる第1屈曲部におけるベントグルーブの深さを浅くすることにより、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層がベントグルーブに入り込む量が抑制される。したがって、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の使用量が抑制される。
【0016】
本発明の態様において、前記壁面は、第1壁面と、前記第1壁面と間隙を介して対向する第2壁面と、を含み、前記ベントグルーブは、前記第1壁面との境界の前記底面のエッジに設けられてもよい。
【0017】
第1壁面との境界の底面のエッジにベントグルーブが設けられ、第2壁面との境界の底面のエッジにベントグルーブが設けられないことにより、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の使用量を抑制しつつ、黒残り不良の発生を抑制することができる。
【0018】
本発明の態様において、前記ベントグルーブは、金型径方向において、前記底面の中央部よりも内側に設けられてもよい。
【0019】
上述のように、本発明者の知見によれば、白色文字における黒残り不良は、金型径方向外側よりも、金型径方向内側において発生する可能性が高い。金型径方向において、少なくとも、底面の中央部よりも内側にベントグルーブが設けられることにより、金型径方向内側における第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の円滑な流動が促進される。そのため、金型径方向内側における黒残り不良の発生が抑制される。
【0020】
本発明の態様において、前記ベントグルーブは、金型径方向において、前記底面の中央部よりも外側には設けられなくてもよい。
【0021】
これにより、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層がベントグルーブに入り込む量が抑制される。したがって、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の使用量が抑制される。
【0022】
本発明の態様において、前記ベントグルーブの深さは、0.5[mm]以上3.0[mm]以下でもよい。
【0023】
ベントグルーブの深さが0.5[mm]未満である場合、残留気体の排出効果及び黒残り不良の発生抑制効果を十分に得ることができない。ベントグルーブの深さが3.0[mm]よりも深い場合、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層がベントグルーブに入り込む量が多くなり、第1色彩ゴム層及び第2色彩ゴム層の使用量が多くなる。また、ベントグルーブの深さが3.0[mm]よりも深い場合、多量の第1色彩ゴム層がベントグルーブに入り込んでしまい、第2色彩ゴム層が第1色彩ゴム層で十分に覆われない可能性が高くなる。その結果、タイヤの外観が悪化する。ベントグルーブの深さが0.5[mm]以上3.0[mm]以下であることにより、黒残り不良の発生が抑制され、タイヤの外観の悪化が抑制される。
【0024】
本発明の態様において、前記屈曲部における前記ベントグルーブと接続されるベントホールを備えてもよい。
【0025】
これにより、残留気体は、ベントホールを介してタイヤ金型の外部空間に円滑に排出される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の態様によれば、黒残り不良の発生を抑制し、良好な外観の空気入りタイヤを製造できるタイヤ金型が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、第1実施形態に係るタイヤ金型の一例を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るタイヤ金型のサイドプレートの内面の一例を示す平面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るサイドプレートの凹部の一例を示す平面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るサイドプレートの凹部の一例を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係るサイドプレートの凹部の一例を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係るベントグルーブの深さを説明するための模式図である。
図7図7は、第1実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第1実施形態に係るサイドプレートの凹部により成形された空気入りタイヤの凸部の一例を示す斜視図である。
図9図9は、第1実施形態に係るサイドプレートの凹部により成形された空気入りタイヤの凸部の一例を示す断面図である。
図10図10は、第1実施形態に係るサイドプレートの凹部により成形された空気入りタイヤの研磨後の凸部の一例を示す斜視図である。
図11図11は、第1実施形態に係るサイドプレートの凹部により成形された空気入りタイヤの研磨後の凸部の一例を示す断面図である。
図12図12は、第1実施形態に係る空気入りタイヤの一例を示す子午断面図である。
図13図13は、第2実施形態に係るサイドプレートの凹部の一例を示す平面図である。
図14図14は、第3実施形態に係るベントグルーブの深さを説明するための模式図である。
図15図15は、第4実施形態に係るベントグルーブの深さを説明するための模式図である。
図16図16は、第5実施形態に係るサイドプレートの凹部の一例を示す断面図である。
図17図17は、黒残り不良の評価試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0029】
第1実施形態.
[タイヤ金型]
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るタイヤ金型10の一例を示す断面図である。タイヤ金型10は、グリーンタイヤTの加硫成形用金型である。グリーンタイヤTが加硫成形されることによって、空気入りタイヤ100が製造される。以下の説明においては、加硫前のグリーンタイヤTを適宜、タイヤT、と称し、加硫後の空気入りタイヤ100を適宜、タイヤ100、と称する。
【0030】
また、以下の説明においては、金型幅方向、金型周方向、及び金型径方向という用語を用いて各部の位置関係について説明する。金型幅方向とは、タイヤ金型10によって製造されるタイヤT(タイヤ100)の回転軸と平行な方向である。金型周方向とは、タイヤTの回転軸を中心とする回転方向である。金型径方向とは、金型幅方向及び金型周方向と直交する方向であり、タイヤTの回転軸に対する放射方向である。金型径方向外側とは、タイヤTの回転軸に対する放射方向において回転軸から離れる方向又は遠い部位をいう。金型径方向内側とは、タイヤTの回転軸に対する放射方向において回転軸に近付く方向又は近い部位をいう。タイヤ金型10の金型幅方向とタイヤ金型10によって加硫されるタイヤT(タイヤ100)のタイヤ幅方向とは同義である。タイヤ金型10の金型周方向とタイヤ金型10によって加硫されるタイヤTのタイヤ周方向とは同義である。タイヤ金型10の金型径方向とタイヤ金型10によって加硫されるタイヤTのタイヤ径方向とは同義である。
【0031】
図1に示すように、タイヤ金型10は、タイヤTの一方のサイド部を成形する下側サイドプレート1と、タイヤTの他方のサイド部を成形する上側サイドプレート2と、タイヤTの一方のビード部を成形する下側ビードリング3と、タイヤTの他方のビード部を成形する上側ビードリング4と、タイヤTのトレッド部を成形する複数のセクターモールド5とを備える。
【0032】
下側ビードリング3との間でブラダー6の下端部を挟む下側クランプリング7と、ブラダー6の上端部を挟む上側クランプリング8及び補助リング9とがタイヤ金型10に設けられる。ブラダー6は、ゴム製の円筒状部材である。ブラダー6は、タイヤTの内面を成形する。上側クランプリング8は、上下方向に移動可能である。上側クランプリング8が下方に移動することにより、ブラダー6は、タイヤTの内側に保持される。上側クランプリング8が上方に移動することにより、ブラダー6は、タイヤTの内側から外側に移動可能である。
【0033】
タイヤ金型10は、加熱装置によって加熱される。タイヤTの加硫時において、タイヤTは、タイヤ金型10に投入され、タイヤ金型10とブラダー6との間に配置される。上側クランプリング8が下方に移動した状態で、ブラダー6の内部に加圧用ガスが導入されると、タイヤTは、ブラダー6によって、タイヤ金型10に押し付けられる。ブラダー6によってタイヤTがタイヤ金型10に押し付けられている状態で、タイヤ金型10が加熱装置により加熱されることにより、タイヤTは加硫成形される。
【0034】
図2は、本実施形態に係るタイヤ金型10の下側サイドプレート1の内面の一例を示す平面図である。図1及び図2に示すように、下側サイドプレート1は、タイヤTのサイド部の表面を成形する内面11と、内面11に設けられ、白色文字となるタイヤTの白色ゴム層を成形する凹部20とを有する。また、本実施形態において、下側サイドプレート1は、凹部20の一部に設けられるベントグルーブ30と、ベントホール40とを有する。
【0035】
図3は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す平面図である。図4は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す断面図であって、図3のI−I線矢視断面図に相当する。図5は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す断面図であって、図3のII−II線矢視断面図に相当する。
【0036】
図2図3図4、及び図5に示すように、凹部20は、底面21及び壁面22を有する。ベントグルーブ30は、壁面22との境界の凹部20の底面21のエッジに設けられる。ベントホール40は、ベントグルーブ30と接続される。
【0037】
下側サイドプレート1の内面11は、タイヤTのサイド部の表面を成形する。凹部20は、タイヤTのサイド部の表面から突出する白色ゴム層(第2色彩ゴム層)を成形する。タイヤTにおいて、白色ゴム層は、黒色のカバーゴム層(第1色彩ゴム層)で覆われる。タイヤTにおいて、白色ゴム層は、露出しない。凹部20の内面は、タイヤTのカバーゴム層と接触する。
【0038】
凹部20は、タイヤTのサイド部の表面から突出しカバーゴム層で覆われたタイヤTの白色ゴム層を成形する。底面21及び壁面22を含む凹部20の内面は、タイヤTのカバーゴム層と接触する。凹部20は、カバーゴム層を介して白色ゴム層を成形する。
【0039】
壁面22は、底面21の両側に設けられる。壁面22は、第1壁面22Aと、第1壁面22Aと間隙を介して対向する第2壁面22Bとを含む。第1壁面22Aは、白色文字の輪郭を形成する。
【0040】
本実施形態において、ベントグルーブ30は、第1壁面22Aとの境界の底面21のエッジに設けられる。ベントグルーブ30は、第2壁面22Bとの境界の底面21のエッジに設けられない。底面21と平行な面内において、ベントグルーブ30は、第1壁面22Aと底面21との境界に沿うように形成される。
【0041】
図3に示すように、底面21は、底面21と平行な面内において屈曲する屈曲部23と、屈曲しない非屈曲部24とを有する。屈曲部23は、白色文字のコーナー部を成形する。屈曲部23は、複数設けられる。非屈曲部24は、ストレート部を含む。非屈曲部24は、白色文字のストレート部を成形する。非屈曲部24は、複数設けられる。非屈曲部24は、屈曲部23と屈曲部23との間に配置される。屈曲部23は、非屈曲部24の一端部と他端部とのそれぞれに配置される。
【0042】
ベントグルーブ30は、底面21と平行な面内において、壁面22との境界の底面21のエッジに沿うように形成される。ベントグルーブ30は、底面21と平行な面内において屈曲する屈曲部と、屈曲しない非屈曲部とを有する。ベントグルーブ30の屈曲部は、底面21の屈曲部23に隣接する。ベントグルーブ30の非屈曲部は、底面21の非屈曲部24に隣接する。
【0043】
図4は、非屈曲部24における凹部20及びベントグルーブ30の断面を示す。図5は、屈曲部23における凹部20及びベントグルーブ30の断面を示す。図4及び図5に示すように、本実施形態において、屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDは、非屈曲部24におけるベントグルーブ30の深さDよりも深い。ベントグルーブ30の深さDとは、凹部20の底面21とベントグルーブ30の底面との金型幅方向の距離をいう。
【0044】
本実施形態において、ベントグルーブ30の深さDは、0.5[mm]以上3.0[mm]以下である。
【0045】
本実施形態において、ベントグルーブ30の幅Wは、一定である。ベントグルーブ30の幅Wとは、底面21と接続されるベントグルーブ30の開口端における幅をいう。なお、ベントグルーブ30の幅Wは、第1壁面22Aと第2壁面22Bとの距離の25[%]以上50[%]以下が好ましい。
【0046】
本実施形態において、凹部20の深さHは、一定である。凹部20の深さHとは、下側サイドプレート1の内面11と凹部20の底面21との金型幅方向の距離をいう。
【0047】
図6は、本実施形態に係るベントグルーブ30の深さDを説明するための模式図であって、図3のIII−III線矢視断面図に相当する。図6に示すように、ベントグルーブ30は、屈曲部23に向かって徐々に深くなる。図6に示す例では、屈曲部23は、非屈曲部24の一端部に設けられる第1の屈曲部23と、非屈曲部24の他端部に設けられる第2の屈曲部23とを含む。非屈曲部24の中心におけるベントグルーブ30の深さDが最も浅い。第1の屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDと第2の屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDとは等しい。非屈曲部24の中心と屈曲部23との間において、ベントグルーブ30の深さDは、非屈曲部24から屈曲部23までの距離と比例の関係で変化する。
【0048】
ベントホール40は、タイヤTをタイヤ金型10で加硫するとき、タイヤTとタイヤ金型10との間の残留気体及び加硫により発生するガスをタイヤ金型10の外部空間に排出する通気口である。ベントホール40は、タイヤ金型10の内部空間と外部空間とを接続する。ベントホール40は、下側サイドプレート1のベントグルーブ30の内面と下側サイドプレート1の外面とを貫通する。
【0049】
図3及び図5に示すように、本実施形態において、ベントホール40は、屈曲部23におけるベントグルーブ30と接続される。
【0050】
[タイヤの製造方法]
次に、本実施形態に係るタイヤ100の製造方法の一例について説明する。図7は、本実施形態に係るタイヤ100の製造方法の一例を示すフローチャートである。図7に示すように、タイヤ100の製造方法は、白色文字及びタイヤTのサイド部となるゴムシートを押し出し成形によって製造する工程(ステップS101)と、ベルト層及びビード部のようなタイヤTを構成する部材を供給する工程(ステップS102)と、ゴムシート、ベルト層、及びビード部などを組み立ててタイヤTを成形する成形工程(ステップS103)と、タイヤ金型10を使ってタイヤTを加硫してタイヤ100を製造する加硫工程(ステップS104)と、タイヤ100の白色ゴム層を覆うカバーゴム層を研磨して白色ゴム層を露出させる研磨工程(ステップS105)と、タイヤ100の外観検査を行う工程(ステップS106)と、を含む。
【0051】
本実施形態においては、白色文字及びタイヤTのサイド部となるゴムシートが押し出し成形によって成形される(ステップS101)。ゴムシートは、白色ゴム層と、その白色ゴム層を覆う黒色のカバーゴム層とを含む。また、ゴムシートは、タイヤTのサイド部となる黒色ゴム層を含む。また、ベルト層、ビード部、及びトレッドゴムのようなタイヤTを構成する部材が供給される(ステップS102)。
【0052】
ステップS101で成形されたゴムシートと、ステップS102で供給された部材とが組み立てられ、加硫前のタイヤTが成形される(ステップS103)。タイヤTのサイド部には、白色文字となる白色ゴム層が埋設されている。また、タイヤTにおいて、白色文字となる白色ゴム層は、黒色のカバーゴム層で覆われており、露出していない。
【0053】
ステップS103で成形されたタイヤTがタイヤ金型10に投入され、タイヤTの加硫が実施される(ステップS104)。タイヤTのサイド部の表面は、下側サイドプレート1の内面11で成形される。カバーゴム層で覆われている白色ゴム層は、下側サイドプレート1に設けられている凹部20で成形される。
【0054】
図8は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20により成形されたタイヤ100の凸部70の一例を示す斜視図である。図9は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20により成形されたタイヤ100の凸部70の一例を示す断面図である。
【0055】
タイヤ金型10を使ってタイヤTが加硫されることにより、図8及び図9に示すように、タイヤ100のサイド部には、凹部20によって成形された凸部70と、ベントグルーブ30によって成形された突条74と、ベントホール40によって成形されたスピュー75とが形成される。凸部70は、白色ゴム層72と、その白色ゴム層72を覆う黒色のカバーゴム層71とを含む。
【0056】
次に、研磨工程が実施される(ステップS105)。研磨工程においては、凸部70の表面が研磨装置によって研磨される。
【0057】
図10は、本実施形態に係るタイヤ100の研磨後の凸部70の一例を示す斜視図である。図11は、本実施形態に係るタイヤ100の研磨後の凸部70の一例を示す断面図である。図10及び図11に示すように、凸部70の表面が研磨されることにより、突条74及びスピュー75が除去される。また、白色ゴム層72を覆うカバーゴム層71が除去される。カバーゴム層71が除去されることにより、凸部70の表面において、白色ゴム層72が露出する。これにより、タイヤ100のサイド部に白色文字が形成される。白色文字が形成された後、タイヤ100の外観検査が実施される(ステップS106)。
【0058】
[空気入りタイヤ]
図12は、上述の製造方法により製造された本実施形態に係るタイヤ100の一例を示す子午断面図である。図12に示すように、タイヤ100は、カーカス102と、ベルト層103と、ベルトカバー104と、ビード部105と、トレッド部106と、サイド部107と、サイド部107に設けられた凸部70とを備える。トレッド部106は、トレッドゴム108を含む。サイド部107は、サイドゴム109を含む。
【0059】
カーカス102は、タイヤ100の骨格を形成する強度部材である。カーカス102は、カーカスコードを含み、タイヤ100に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。
【0060】
ビード部105は、カーカス102を支持する強度部材である。ビード部105は、ビードコア151と、ビードフィラー152とを有する。ビード部105は、タイヤ幅方向においてカーカス102の両側に配置され、カーカス102の両端部を支持する。カーカス102は、ビード部105のビードコア151において折り返される。ビード部105は、タイヤ100をリムに固定させる。
【0061】
カーカス102は、カーカス本体部と、ビードコア151で折り返されることにより形成されるカーカス折り返し部とを有する。カーカス折り返し部は、ビードコア151でカーカス102が折り返されることによりカーカス本体部よりもタイヤ幅方向外側に配置された部分である。ビードコア151は、ビードワイヤがリング状に巻かれた部材である。ビードワイヤは、スチールワイヤである。ビードフィラー152は、カーカス102がビードコア151で折り返されることにより形成されたカーカス本体部とカーカス折り返し部との間の空間に配置されるゴム材である。
【0062】
ベルト層103は、タイヤ100の形状を保持する強度部材である。ベルト層103は、カーカス102とトレッドゴム108との間に配置される。ベルト層103は、ベルトコードと、そのベルトコードを覆うゴムとを含む。ベルト層103は、第1ベルトプライ131と、第2ベルトプライ132とを含む。第1ベルトプライ131と第2ベルトプライ132とは、第1ベルトプライ131のベルトコードと第2ベルトプライ132のベルトコードとが交差するように積層される。
【0063】
ベルトカバー104は、ベルト層103を保護し、補強する強度部材である。ベルトカバー104は、タイヤ100の回転軸に対してベルト層103の外側に配置される。ベルトカバー104は、カバーコードと、そのカバーコードを覆うゴムとを含む。
【0064】
トレッドゴム108は、カーカス102を保護する。トレッド部106は、複数の溝が設けられたトレッドゴム108を含む。トレッド部106は、溝の間に配置される陸部を含み、陸部は、路面と接触する接地面(踏面)を有する。溝は、タイヤ周方向に配置される複数の主溝と、少なくとも一部がタイヤ幅方向に配置されるラグ溝とを含む。
【0065】
トレッド部106は、タイヤ幅方向の中心CLを含むセンター部と、タイヤ幅方向においてセンター部の両側に設けられるショルダー部とを含む。主溝は、センター部及びショルダー部のそれぞれに設けられる。ラグ溝も、センター部及びショルダー部のそれぞれに設けられる。
【0066】
サイドゴム109は、カーカス102を保護する。サイド部107は、サイドゴム109を含み、タイヤ幅方向においてトレッド部106の両側に配置される。
【0067】
サイド部107の表面は、サイドゴム109の表面を含む。凸部70は、サイド部107の表面からタイヤ幅方向外側に突出する。
【0068】
凸部70は、タイヤ幅方向の中心CLよりも一方側のサイド部107に設けられ、他方側のサイド部107には設けられない。凸部70は、白色文字を含む。なお、凸部70は、文字でなくてもよい。凸部70は、記号又は図形を表わしてもよい。
【0069】
サイドゴム109は、黒色ゴムである。サイドゴム109は、例えば、カーボンで補強されたジエン系ゴム材料を含む。白色ゴム層72は、例えば二酸化チタン又はクレーのような白色充填材で補強されたジエン系ゴム材料を含む。本実施形態において、白色ゴム層72の剛性は、サイドゴム109の剛性よりも小さい。
【0070】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、白色ゴム層72を成形する下側サイドプレート1の凹部20の底面21にベントグルーブ30が設けられるので、加硫時において、タイヤTとタイヤ金型10との間の残留気体は、タイヤTとタイヤ金型10との間から円滑に排出される。また、屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDは、非屈曲部24におけるベントグルーブ30の深さDよりも深いので、タイヤTとタイヤ金型10との間の残留気体は、ベントグルーブ30により円滑に排出される。残留気体が排出されることにより、加硫時において、黒色のカバーゴム層71及び白色ゴム層72は円滑に流動することができる。加硫時において、カバーゴム層71及び白色ゴム層72が円滑に流動することにより、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制される。そのため、カバーゴム層71を研磨したとき、カバーゴム層71は十分に除去される。したがって、黒残り不良の発生が抑制され、良好な外観のタイヤ100が製造される。
【0071】
また、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制されるため、白色ゴム層72の使用量(ゴムボリューム)を抑制しても、カバーゴム層71を研磨したとき、カバーゴム層71は十分に除去される。白色ゴム層72の使用量が抑制されることにより、タイヤ100の製造コストが抑制される。
【0072】
また、本実施形態においては、ベントグルーブ30は、屈曲部23に向かって徐々に深くなる。これにより、加硫時において、残留気体は、屈曲部23におけるベントグルーブ30に円滑に流れ、タイヤTとタイヤ金型10との間から十分に排出される。そのため、カバーゴム層71及び白色ゴム層72は、円滑に流動することができる。したがって、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0073】
また、本実施形態においては、屈曲部23が非屈曲部24の両端部に設けられ、非屈曲部24の中心におけるベントグルーブ30の深さDが最も浅く、非屈曲部24の一端部の屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDと非屈曲部24の他端部の屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDとは等しい。これにより、残留気体は、非屈曲部24の中心におけるベントグルーブ30から、非屈曲部24の一端部の屈曲部23及び他端部の屈曲部23のそれぞれにおけるベントグルーブ30に円滑に流れ、タイヤTとタイヤ金型10との間から十分に排出される。
【0074】
また、本実施形態においては、凹部20の壁面22は、第1壁面22Aと、第1壁面22Aと間隙を介して対向する第2壁面22Bとを含み、ベントグルーブ30は、第1壁面22Aとの境界の底面21のエッジに設けられる。第1壁面22Aとの境界の底面21のエッジにベントグルーブ30が設けられ、第2壁面22Bとの境界の底面21のエッジにベントグルーブ30が設けられないことにより、カバーゴム層71及び白色ゴム層72の使用量を抑制しつつ、黒残り不良の発生を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態においては、ベントグルーブ30の深さDは、0.5[mm]以上3.0[mm]以下である。ベントグルーブ30の深さDが0.5[mm]未満である場合、残留気体の排出効果及び黒残り不良の発生抑制効果を十分に得ることができない。ベントグルーブ30の深さDが3.0[mm]よりも深い場合、カバーゴム層71及び白色ゴム層72がベントグルーブ30に入り込む量が多くなり、カバーゴム層71及び白色ゴム層72の使用量が多くなる。また、ベントグルーブ30の深さDが3.0[mm]よりも深い場合、多量のカバーゴム層71がベントグルーブ30に入り込んでしまい、白色ゴム層72がカバーゴム層71で十分に覆われない可能性が高くなる。その結果、タイヤ100の外観が悪化する。ベントグルーブ30の深さDが0.5[mm]以上3.0[mm]以下であることにより、黒残り不良の発生が抑制され、タイヤ100の外観の悪化が抑制される。
【0076】
また、本実施形態においては、ベントホール40は、屈曲部23におけるベントグルーブ30と接続される。これにより、残留気体は、深さDが深い屈曲部23におけるベントグルーブ30に流れた後、ベントホール40を介してタイヤ金型10の外部空間に円滑に排出される。
【0077】
第2実施形態.
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0078】
図13は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す平面図である。図13に示すように、ベントグルーブ30は、金型径方向において、底面21の中央部よりも内側に設けられる。一方、ベントグルーブ30は、金型径方向において、底面21の中央部よりも外側には設けられない。
【0079】
本発明者の知見によれば、白色文字における黒残り不良は、金型径方向外側よりも、金型径方向内側において発生する可能性が高い。これは、タイヤTのビードフィラー152の影響により、金型径方向内側におけるカバーゴム層71及び白色ゴム層72の円滑な流動が阻害されることが一因であると考えられる。金型径方向において、少なくとも、底面21の中央部よりも内側にベントグルーブ30が設けられることにより、金型径方向内側におけるカバーゴム層71及び白色ゴム層72の円滑な流動が促進される。そのため、金型径方向内側における黒残り不良の発生が抑制される。
【0080】
また、ベントグルーブ30が、金型径方向において、底面21の中央部よりも外側には設けられないことにより、カバーゴム層71及び白色ゴム層72がベントグルーブ30に入り込む量が抑制される。したがって、カバーゴム層71及び白色ゴム層72の使用量が抑制される。
【0081】
第3実施形態.
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0082】
図14は、本実施形態に係るベントグルーブ30の深さDを説明するための模式図である。図14に示すように、屈曲部23が、第1の屈曲部23と、第1の屈曲部23よりも金型径方向内側に設けられる第2の屈曲部23とを含む場合、本実施形態においては、第2の屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDは、第1の屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDよりも深い。
【0083】
以上説明したように、非屈曲部24が金型径方向に延在し、非屈曲部24の一端部の屈曲部23と他端部の屈曲部23とが金型径方向に配置されている場合、金型径方向内側の屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDが、金型径方向外側の屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDよりも深くてもよい。
【0084】
上述のように、本発明者の知見によれば、白色文字における黒残り不良は、金型径方向外側よりも、金型径方向内側において発生する可能性が高い。金型径方向内側に設けられる屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDを深くすることにより、金型径方向内側におけるカバーゴム層71及び白色ゴム層72の円滑な流動が促進される。そのため、金型径方向内側における黒残り不良の発生が抑制される。また、金型径方向外側に設けられる屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDを浅くすることにより、カバーゴム層71及び白色ゴム層72がベントグルーブ30に入り込む量が抑制される。したがって、カバーゴム層71及び白色ゴム層72の使用量が抑制される。
【0085】
第4実施形態.
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0086】
図15は、本実施形態に係るベントグルーブ30の深さDを説明するための模式図である。図15に示すように、ベントグルーブ30は、非屈曲部24の中心から屈曲部23に向かってステップ状に深くなってもよい。
【0087】
本実施形態においても、加硫時において、残留気体は、屈曲部23におけるベントグルーブ30に円滑に流れ、タイヤTとタイヤ金型10との間から十分に排出される。そのため、カバーゴム層71及び白色ゴム層72は、円滑に流動することができる。したがって、カバーゴム層71の厚みが厚くなったり不均一になったりすることが抑制され、黒残り不良の発生が抑制される。
【0088】
第5実施形態.
第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0089】
図16は、本実施形態に係る下側サイドプレート1の凹部20の一例を示す断面図である。上述の実施形態においては、ベントグルーブ30は、第1壁面22Aとの境界の底面21のエッジに設けられ、第2壁面22Bとの境界の底面21のエッジには設けられないこととした。図16に示すように、ベントグルーブ30は、第1壁面22Aとの境界の底面21のエッジに設けられ、第2壁面22Bとの境界の底面21のエッジにも設けられてもよい。
【0090】
なお、上述の各実施形態においては、第1色彩ゴム層が黒色のカバーゴム層71であり、第2色彩ゴム層が白色ゴム層72であることとした。第1色彩ゴム層の色彩は黒色でなくてもよい。第2色彩ゴム層の色彩は白色でなくてもよい。
【0091】
実施例.
タイヤ金型を用いてタイヤTを加硫し、加硫後のタイヤ100のカバーゴム層71を研磨し、研磨後のタイヤ100の外観検査を実施し、黒残り不良のレベルについて評価を行った。
【0092】
製造したタイヤ100のタイヤサイズは、275/70R16 114Sである。自動バフ装置によって、タイヤ100のサイド部107に設けられた凸部70の表面を一定時間研磨した。研磨後のタイヤ100に黒残り不良が発生していないか否かを外観検査し、その良品率を測定した。
【0093】
凹部20の構造が異なる複数のタイヤ金型を用いて複数のタイヤ100を製造し、それら複数のタイヤ100のそれぞれについて評価を行った。図17は、黒残り不良の評価試験の結果を示す図表である。図17に示す表において、従来例1及び従来例2に係るタイヤ金型は、白色ゴム層72を成形するための凹部20を有するものの、ベントグルーブ30を有しない。実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、及び実施例8に係るタイヤ金型は、本出願に係る発明の技術的範囲に属するタイヤ金型であり、凹部20と、ベントグルーブ30とを有する。屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDは、非屈曲部24におけるベントグルーブ30の深さDよりも深い。
【0094】
実施例1、実施例2、及び実施例3に係るタイヤ金型は、図3を参照して説明したような、ベントグルーブ30が、金型径方向において、底面21の中央部よりも内側及び外側のそれぞれに設けられているタイヤ金型である。実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、及び実施例8に係るタイヤ金型は、図13を参照して説明したような、ベントグルーブ30が、金型径方向において、底面21の中央部よりも内側に設けられ、外側には設けられていないタイヤ金型である。
【0095】
また、図17の表において、「文字幅に対する溝幅比」とは、第1壁面22Aと第2壁面22Bとの距離に対するベントグルーブ30の幅Wの比[%]である。「屈曲部におけるベントグルーブの深さ」とは、屈曲部23におけるベントグルーブ30の深さDの値[mm]である。「屈曲部におけるベントホール配置」において、「無」とは、ベントホール40が屈曲部23におけるベントグルーブ30には設けられてなく、非屈曲部24におけるベントホール30に設けられていることを意味し、「有」とは、ベントホール40が屈曲部23におけるベントグルーブ30に設けられていることを意味する。なお、従来例1及び従来例2においては、ベントグルーブ30が無いものの、ベントホール40は、凹部20の底面21の屈曲部に設けられている。「ベントホール個数」とは、従来例1に係るタイヤ金型に設けられているベントホールの数を100[%]としたときのベントホールの数を比で表わした値[%]である。
【0096】
従来例1の良品率を80[%]とし、従来例1を100とする指数で結果を示す。数値が大きいほど、良品率が高いことを示す。
【0097】
実施例1から実施例8に示すように、ベントグルーブ30が設けられることにより、良品率が高いことが確認できた。また、実施例1から実施例8に示すように、ベントグルーブ30が設けられることにより、ベントホール40の数を少なくしても、高い良品率が得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0098】
1…下側サイドプレート、2…上側サイドプレート、3…下側ビードリング、4…上側ビードリング、5…セクターモールド、6…ブラダー、7…下側クランプリング、8…上側クランプリング、9…補助リング、10…タイヤ金型、11…内面、20…凹部、21…底面、22…壁面、22A…第1壁面、22B…第2壁面、23…屈曲部、24…非屈曲部、30…ベントグルーブ、40…ベントホール、70…凸部、71…カバーゴム層、72…白色ゴム層、74…突条、75…スピュー、100…タイヤ(空気入りタイヤ)、102…カーカス、103…ベルト層、104…ベルトカバー、105…ビード部、106…トレッド部、107…サイド部、108…トレッドゴム、109…サイドゴム、131…第1ベルトプライ、132…第2ベルトプライ、151…ビードコア、152…ビードフィラー、T…タイヤ(グリーンタイヤ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17