特許第6878964号(P6878964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6878964焼結鉱の冷却機及び粉粒焼結鉱の回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878964
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】焼結鉱の冷却機及び粉粒焼結鉱の回収方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 21/00 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   F27B21/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-42944(P2017-42944)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-146189(P2018-146189A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100172269
【弁理士】
【氏名又は名称】▲徳▼永 英男
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】安達 陽平
【審査官】 瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−146997(JP,U)
【文献】 実開昭53−153006(JP,U)
【文献】 実開昭62−102996(JP,U)
【文献】 特開平11−270972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を、焼結鉱投入口から排鉱部に向かい連結状態で移動する複数台のトラフ台車、移動するトラフ台車の下部に配置され、移動するトラフ台車上の焼結鉱に冷却風を吹き込む、送風管で連結されたチャンバー、及び、トラフ台車とチャンバーの摺動部を封止する封止手段を備える焼結鉱の冷却機において、
封止手段の外側のレール床に、上記摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉粒焼結鉱の飛散を抑止する飛散抑止板が、トラフ台車に近接して立設され、飛散抑止板と摺動部の間のレール床の下部に、粉粒焼結鉱を回収する回収手段を備えている
ことを特徴とする焼結鉱の冷却機。
【請求項2】
前記飛散抑止板が、粉粒焼結鉱が吹き出る摺動部毎に分割して立設されていることを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の冷却機。
【請求項3】
前記飛散抑止板の先端部の形状が、トラフ台車に向かって湾曲又は折曲する形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱の冷却機。
【請求項4】
前記回収手段が、ホッパー、又は、ベルトコンベアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結鉱の冷却機。
【請求項5】
前記トラフ台車の上部が、焼結鉱を通過した冷却排風を排気する排気筒を備えるフードカバーで覆われていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の焼結鉱の冷却機。
【請求項6】
レール上を、焼結鉱投入口から排鉱部に向かい連結状態で移動する複数台のトラフ台車に、順次、焼結鉱投入口から焼結鉱を投入し、移動するトラフ台車の下部に、送風管で連結して配置したチャンバーから、移動するトラフ台車上の焼結鉱に冷却風を吹き込んで、焼結鉱を冷却する際、封止手段で封止されているトラフ台車とチャンバーの摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉状焼結鉱を回収する回収方法であって、
(i)封止手段の外側のレール床に、上記摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉状焼結鉱の飛散を抑止する飛散抑止板を、トラフ台車に近接して立設し、
(ii)上記飛散抑止板に衝突してレール床に集積する粉状焼結鉱と、レールに衝突してレール床に集積する粉粒焼結鉱を、レール床の下部に配置した回収手段で回収する
ことを特徴とする粉粒焼結鉱の回収方法。
【請求項7】
前記回収手段が、ホッパー、又は、ベルトコンベアであることを特徴とする請求項に記載の粉粒焼結鉱の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱を冷却する冷却機と、該冷却機から吹き出る粉粒焼結鉱を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高炉操業においては、鉄鉱石粉、石灰石、粉コークス等の焼結原料を焼結機(例えば、DL式焼結機)で焼結した焼結鉱を、主な高炉原料として用いているが、焼結機から排鉱される焼結鉱は500〜600℃の高温状態にあるので、焼結機に隣接した冷却機で、ベルトコンベア等で輸送可能な温度、例えば、約100℃まで冷却する。
【0003】
冷却方法としては、上部よりブロワ―で冷却風を、焼結鉱を通して吸い込んで冷却する上部吸込み方式と、下部よりブロワ―で冷却風を焼結鉱に吹き込んで冷却する下部吹込み方式があり、冷却機の型式では、大きく分けて、円環型と直線型がある。
【0004】
図1に、円環型で、下部吹込み方式の冷却機の一態様を示す。
【0005】
図1に示す冷却機においては、格子状の底板の上に焼結鉱を載置するトラフ台車1が複数台連結されて、チャンバー3の垂直壁3aに取り付けたレール床14に配置した円環状のレール2上に、車輪1aで移動可能(図中「時計回りの点線」参照)に配置され、円環状のレール2の下部には、トラフ台車1の下から焼結鉱に冷却風を吹き込むチャンバー3が、送風管4で連結されて配置されている。
【0006】
トラフ台車1の上部には、焼結鉱を通過した冷却排風を排気(図中「二点鎖線」参照)する排気筒5を備え、トラフ台車1を覆うフードカバー6が配置され、チャンバー3の下部には、チャンバー3内に落下した粉粒焼結鉱を搬送するダストコンベア(図示なし)が、ダストコンベアケーシング7に囲われて配置されている。
【0007】
焼結機10から排鉱された焼結鉱は、冷却機の焼結鉱投入口8から、トラフ台車1に順次投入され、トラフ台車1が、排鉱部9まで一周(図中「時計回りの点線」参照)する間に、チャンバー3からトラフ台車1の底板を通して吹き込む冷却風で100℃程度まで冷却され、排鉱部9で、焼結鉱を次工程へ搬送するベルトコンベア(図示なし)上に排鉱される。
【0008】
図1に示すような、トラフ台車上の焼結鉱に冷却風を下部から吹き込んで冷却する冷却機において、焼結鉱の冷却を効率的に行うためには、移動するトラフ台車と固定配置のチャンバーの摺動部から冷却風が漏洩しないよう、シール手段を用いて、該摺動部の気密性を十分に確保する必要がある。
【0009】
図2に、図1に示す冷却機のA−B断面構造を示す。トラフ台車1は、支持部材11に取り付けた車輪1aが、チャンバー3の垂直壁3aに取り付けたレール床14に配置したレール2上を転動して、排鉱部(図1中「9」参照)に向かって移動する。
【0010】
トラフ台車1の移動の間、送風管4からチャンバー内に吹き込む冷却風が、トラフ台車1の格子状の底板に載置されている焼結鉱1aを通過して(図中「上方に向かう2点鎖線」参照)、焼結鉱10aが冷却される。
【0011】
この冷却の際、移動する支持部材11と固定配置のチャンバー3の摺動部Aは取替可能なシール材12で封止されているが、冷却風の一部は、摺動部Aから漏洩し(図中「両側の摺動部Aに向かう2点鎖線」参照)、また、シール材12が摩耗すると、漏洩する冷却風の風量は増大する。
【0012】
トラフ台車1の移動中、トラフ台車1の格子状の底部から粉粒焼結鉱(以下「落鉱」ということがある。)10bが落下するが、比較的重量のある落鉱10dは、チャンバー3内を降下し、チャンバー3の傾斜壁3bに沿って落鉱落下管13に達し、ダストコンベアケーシング7内のダストコンベア(図示なし)で回収される。
【0013】
一方、軽量の落鉱10cは、支持部材11と固定配置のチャンバー3の摺動部Aから漏洩する冷却風に乗って、該摺動部Aの外側に吹き出し、チャンバー3の垂直壁3aとレール2の間に堆積し、また、車輪1aの間からレール2の外側に吹き出して飛散する。そして、堆積した落鉱の回収、及び、飛散した落鉱の回収には、多大な費用と労力が必要である。
【0014】
そして、このことは、冷却機の断面構造が、図2に示すA−B断面構造と同様の、直線型で、下部吹込み方式の冷却機においても同じである。
【0015】
それ故、トラフ台車とチャンバーの摺動部において気密性を確保することは重要であり、これまで、上記摺動部の気密性を確保する技術が、数多く提案されている(例えば、特許文献1〜6、参照)。
【0016】
例えば、特許文献6には、移動する冷却トラフ内の焼結鉱を、冷却トラフ下部に設置したエアチャンバより冷却トラフ内に冷却ガスを吹き込むことで冷却する焼結鉱冷却機のシール装置であって、冷却トラフの下端縁に設置されたシールプレート下面と、エアチャンバの上端縁との間隙に、該間隙より丈高で冷却トラフの移動方向に長い可撓性弾性板状体を介装し、可撓性弾性板状体の下端をエアチャンバ側に固着し、かつ、可撓性弾性板状体の横断面を湾曲させて、可撓性弾性板状体の板面をシールプレート下面に当接させる際に、可撓性弾性板状体として磁石粉を含有する板状ゴム材料を用いることを特徴とする焼結鉱冷却機のシール装置が提案されている。
【0017】
しかし、トラフ台車とチャンバーの摺動部をシール材で封止しても、シール材は徐々に摩耗していくので、上記摺動部からの冷却風の漏洩を阻止することはできず、漏洩する冷却風に乗る落鉱の吹出しを長期間にわたり抑止することは困難である。
【0018】
結局、下部吹込み方式の冷却機においては、型式を問わず、トラフ台車とチャンバーの摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る落鉱の吹出し量を低減しようとすれば、該摺動部をシールするシール材を頻繁に交換せざるを得ず、また、上記摺動部の外側に、冷却風に乗って吹き出て堆積・飛散した落鉱を回収するのに、多大な費用と労力を要しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開昭58−077537号公報
【特許文献2】実開昭61−044199号公報
【特許文献3】特開昭62−242785号公報
【特許文献4】実開平02−048796号公報
【特許文献5】特開平08−247660号公報
【特許文献6】特開2009−068721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで、本発明は、下部吹込み方式の焼結鉱の冷却機に係る上記現状に鑑み、トラフ台車とチャンバーの摺動部から漏洩する冷却風に乗って、該摺動部の外側に吹き出る粉粒焼結鉱(落鉱)を、飛散させずに集積し、多大な費用と労力をかけずに回収し、かつ、回収した落鉱を成品焼結鉱として利用することを課題とし、該課題を解決する焼結鉱の冷却機と粉粒焼結鉱の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、シール材は徐々に摩耗するから、トラフ台車とチャンバーの摺動部から落鉱が吹き出るのを長期間にわたり抑止することは困難であるとの前提に立ち、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。
【0022】
その結果、トラフ台車が移動するレールの外側のレール床に、トラフ台車とチャンバーの摺動部から漏洩する冷却風を遮断する板状部材を立設すれば、該摺動部から冷却風に乗って吹き出る落鉱の飛散を抑止できるとともに、上記板状部材の内側に集積した落鉱を、多大な費用と労力をかけずに回収できることを見いだした。
【0023】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0024】
(1)レール上を、焼結鉱投入口から排鉱部に向かい連結状態で移動する複数台のトラフ台車、移動するトラフ台車の下部に配置され、移動するトラフ台車上の焼結鉱に冷却風を吹き込む、送風管で連結されたチャンバー、及び、トラフ台車とチャンバーの摺動部を封止する封止手段を備える焼結鉱の冷却機において、
レールの外側のレール床に、上記摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉粒焼結鉱の飛散を抑止する飛散抑止板が、トラフ台車に近接して立設されている
ことを特徴とする焼結鉱の冷却機。
【0025】
(2)前記飛散抑止板が、粉粒焼結鉱が吹き出る摺動部毎に分割して立設されていることを特徴とする前記(1)に記載の焼結鉱の冷却機。
【0026】
(3)前記飛散抑止板の先端部の形状が、トラフ台車に向かって湾曲又は折曲する形状であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の焼結鉱の冷却機。
【0027】
(4)前記飛散抑止板と前記摺動部の間のレール床の下部に、粉粒焼結鉱を回収する回収手段を備えることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の焼結鉱の冷却機。
【0028】
(5)前記回収手段が、ホッパー、又は、ベルトコンベアであることを特徴とする前記(4)に記載の焼結鉱の冷却機。
【0029】
(6)前記トラフ台車の上部が、焼結鉱を通過した冷却排風を排気する排気筒を備えるフードカバーで覆われていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の焼結鉱の冷却機。
【0030】
(7)レール上を、焼結鉱投入口から排鉱部に向かい連結状態で移動する複数台のトラフ台車に、順次、焼結鉱投入口から焼結鉱を投入し、移動するトラフ台車の下部に、送風管で連結して配置したチャンバーから、移動するトラフ台車上の焼結鉱に冷却風を吹き込んで、焼結鉱を冷却する際、封止手段で封止されているトラフ台車とチャンバーの摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉状焼結鉱を回収する回収方法であって、
(i)レールの外側のレール床に、上記摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉状焼結鉱の飛散を抑止する飛散抑止板を、トラフ台車に近接して立設し、
(ii)上記飛散抑止板に衝突してレール床に集積する粉状焼結鉱と、レールに衝突してレール床に集積する粉粒焼結鉱を、レール床の下部に配置した回収手段で回収する
ことを特徴とする粉粒焼結鉱の回収方法。
【0031】
(8)前記回収手段が、ホッパー、又は、ベルトコンベアであることを特徴とする前記(7)に記載の粉粒焼結鉱の回収方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、トラフ台車とチャンバーの摺動部から漏洩する冷却風に乗って、該摺動部の外側に吹き出る粉粒焼結鉱(落鉱)を、飛散させずに集積し、多大な費用と労力をかけずに、容易に回収することができるので、粉粒焼結鉱(落鉱)の利用率を高めるとともに、冷却機周辺の作業環境を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】円環型で、下部吹込み方式の冷却機の一態様を示す図である。
図2図1に示す冷却機のA−B断面構造を示す図である。
図3】本発明の焼結鉱の冷却機の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の焼結鉱の冷却機(以下「本発明冷却機」ということがある。)は、
レール上を、焼結鉱投入口から排鉱部に向かい連結状態で移動する複数台のトラフ台車、移動するトラフ台車の下部に配置され、移動するトラフ台車上の焼結鉱に冷却風を吹き込む、送風管で連結されたチャンバー、及び、トラフ台車とチャンバーの摺動部を封止する封止手段を備える焼結鉱の冷却機において、
レールの外側のレール床に、上記摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉粒焼結鉱の飛散を抑止する飛散抑止板が、トラフ台車に近接して立設されている
ことを特徴とする。
【0035】
本発明の粉粒焼結鉱の回収方法(以下「本発明回収方法」ということがある。)は、
レール上を、焼結鉱投入口から排鉱部に向かい連結状態で移動する複数台のトラフ台車に、順次、焼結鉱投入口から焼結鉱を投入し、移動するトラフ台車の下部に、送風管で連結して配置したチャンバーから、移動するトラフ台車上の焼結鉱に冷却風を吹き込んで、焼結鉱を冷却する際、封止手段で封止されているトラフ台車とチャンバーの摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉状焼結鉱を回収する回収方法であって、
(i)レールの外側のレール床に、上記摺動部から漏洩する冷却風に乗って吹き出る粉状焼結鉱の飛散を抑止する飛散抑止板を、トラフ台車に近接して立設し、
(ii)上記飛散抑止板に衝突してレール床に集積する粉状焼結鉱と、レールに衝突してレール床に集積する粉粒焼結鉱を、レール床の下部に配置した回収手段で回収する
ことを特徴とする。
【0036】
以下、本発明冷却機と本発明回収方法について、図面に基づいて説明する。
【0037】
図3に、本発明の焼結鉱の冷却機の断面構造を示す。本発明冷却機と本発明回収方法は、主として、DL式焼結機で焼結した焼結鉱の冷却に好適であるが、焼結鉱は、DL式焼結機で焼結した焼結鉱に限定されず、他の焼結機で焼結した焼結鉱の冷却にも適用可能である。
【0038】
図3に示す断面構造は、基本的には、図2に示す断面構造(図1に示す冷却機のA−B断面構造)と同じであり、図2に示す構成部材・部位と同じ構成部材・部位には、図2の符号又は番号と同じ符号又は番号が付されているが、図3に示す断面構造は、下部吹込み方式の冷却機に共通する断面構造でもあるので、以下の説明は、型式を問わず、下部吹込み方式の冷却機の断面構造に係る説明である。
【0039】
図3に示す断面構造においては、トラフ台車1が移動するレール2の外側のレール床14に、トラフ台車1とチャンバー3の摺動部Aから漏洩する冷却風(図中「両側の摺動部Aに向かう2点鎖線」参照)を遮断し、該摺動部から冷却風に乗って吹き出る落鉱の飛散を抑止する飛散抑止板15が、トラフ台車1に近接して立設されている。
【0040】
飛散抑止板15を、トラフ台車1に近接して立設した点が、従来の冷却機(図2、参照)と実質的に異なる点であり、本発明冷却機の特徴である。
【0041】
飛散抑止板15は、トラフ台車1とチャンバー3の摺動部Aの全周にわたって立設してもよいし、落鉱が吹き出る摺動部毎に分割して立設してもよい。
【0042】
トラフ台車1の支持部材11とチャンバー3の摺動部Aから漏洩する冷却風に乗って、該摺動部Aの外側に吹き出る落鉱10cの一部は、レール2に衝突して、チャンバー3の垂直壁3aとレール2の間に集積し、また、車輪1aの間からレール2の外側に吹き出る落鉱10cは、飛散抑止板15に衝突して、レール2と飛散抑止板14の間に集積する。
【0043】
レール床14には、堆積する落鉱10cを回収する回収孔14aを設けているので、レール床14上に集積した落鉱10cは、回収孔14aから、レール床の下部に配置する、例えば、ホッパー、ベルトコンベア等の回収手段(図示なし)の上に落下して堆積し、適宜回収される。
【0044】
このように、レール2の外側のレール床14に飛散抑止板15を設けることにより、トラフ台車1とチャンバー3の摺動部Aから漏洩する冷却風に乗って、該摺動部Aの外側に吹き出る落鉱10cが大気中に飛散するのを抑止するとともに、落鉱10cを、チャンバー3の垂直壁3aとレール2の間隙、及び、レール2と飛散抑止板15の間隙に集積させて回収するので、落鉱10cの回収を、多大な費用と労力を必要とせずに、容易に行うことができる。
【0045】
図3には、飛散抑止板15を、レール床14に垂直に立設する態様を示したが、飛散抑止板15は、トラフ台車1とチャンバー3の摺動部Aから漏洩する冷却風を遮断する機能を果たすものであればよく、その限りで、特定の立設態様及び形状に限定されない。例えば、飛散抑止板15は、トラフ台車1に対して斜めに立設してもよいし、また、先端部がトラフ台車1に対して湾曲又は折曲する形状のものでもよい。
【0046】
さらに、飛散抑止板15は、一人の作業者が容易に取り外せる程度の軽量のものが好ましく、冷却機の保守・点検時に干渉しないように、立設態様及び形状を設計する。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0048】
(実施例1)
従来、120t/月程度の落鉱が発生し、その処理に、多大な費用と労力を必要としていたが、図3に示す断面構造の円環型の冷却機で、焼結鉱を冷却したので、120t/月発生する落鉱を、多大な費用と労力を必要とせずに容易に回収することができた。また、120t/月の内、約60t/月を、篩上5mm以上の成品焼結鉱として回収できたので、落鉱の利用率が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
前述したように、本発明によれば、トラフ台車とチャンバーの摺動部から漏洩する冷却風に乗って、該摺動部の外側に吹き出る粉粒焼結鉱(落鉱)を、飛散させずに集積し、多大な費用と労力をかけずに、容易に回収することができるので、粉粒焼結鉱(落鉱)の利用率を高めるとともに、冷却機周辺の作業環境を改善することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0050】
1 トラフ台車
1a 車輪
2 レール
3 チャンバー
3a 垂直壁
3b 傾斜壁
4 送風管
5 排気筒
6 フードカバー
7 ダストコンベアケーシング
8 焼結鉱投入口
9 排鉱部
10 焼結機
10a 焼結鉱
10b、10c、10d 落鉱(粉粒焼結鉱)
11 支持部材
12 シール材
13 落鉱落下管
14 レール床
14a 回収孔
15 飛散抑止板
A 摺動部
図1
図2
図3