(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
留出流体排出口と、缶出液排出口と、前記留出流体排出口と前記缶出液排出口との間に設けられた原料液供給口とを有する本体と、前記本体における前記原料液供給口と前記缶出液排出口との間を加熱する回収部と、前記本体における前記原料液供給口と前記留出流体排出口との間を冷却する濃縮部と、を有する1または複数の蒸留部と、
前記缶出液排出口に接続され、ベント口を有する缶出液貯留容器と、
前記留出流体排出口に接続され、ベント口を有する留出流体貯留容器と、
少なくとも前記蒸留部、前記缶出液貯留容器、前記留出流体貯留容器を収容する減圧容器と、
を備える蒸留装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(蒸留装置100)
図1は、蒸留装置100の概略的な構成を説明する図である。なお、
図1中、液体の流れを実線の矢印で示し、気体の流れを破線の矢印で示し、気液混合物の流れを一点鎖線の矢印で示す。蒸留装置100は、低沸点成分(例えば、沸点が100℃以上)と、低沸点成分より沸点が高い高沸点成分とを含んで構成される原料液を、原料液より低沸点成分が高濃度の留出液と、原料液より高沸点成分が高濃度の缶出液とに分離する装置である。原料液は、例えば、食用油、生理活性物質等である。
【0015】
図1に示すように、蒸留装置100は、原料液貯留タンク110と、第1原料液供給ポンプ112(原料液供給ポンプ)と、原料液貯留容器114と、第2原料液供給ポンプ116(原料液供給ポンプ)と、蒸留部120と、缶出液排出ポンプ130と、缶出液貯留容器132と、第1冷却部134と、缶出液送出ポンプ136と、留出流体貯留容器140と、第2冷却部142と、留出液送出ポンプ144と、減圧容器150と、減圧ポンプ152と、ミストフィルタ154とを含んで構成される。
【0016】
原料液貯留タンク110は、原料液を貯留する容器である。原料液貯留タンク110は、内部空間が窒素(N
2)で置換(パージ)される。これにより、原料液の酸化を防止することができる。第1原料液供給ポンプ112は、吸入側が、原料液貯留タンク110に接続され、吐出側が、原料液貯留容器114に接続される。第1原料液供給ポンプ112は、原料液貯留タンク110内に貯留された原料液を原料液貯留容器114に送出する。
【0017】
原料液貯留容器114は、第1原料液供給ポンプ112によって原料液貯留タンク110から送出された原料液を貯留する。原料液貯留容器114は、上面にベント口(開口)が形成された容器(以下、「ベント付容器」と称する)で構成される。第2原料液供給ポンプ116は、吸入側が、配管を介して、原料液貯留容器114に接続される。第2原料液供給ポンプ116は、吐出側が、配管を介して、蒸留部120(原料液供給口212c)に接続される。第2原料液供給ポンプ116は、原料液貯留容器114に貯留された原料液を蒸留部120に供給する。
【0018】
蒸留部120は、原料液を蒸留する。蒸留部120は、分離ユニット122と、回収部124と、濃縮部126とを含んで構成される。分離ユニット122は、ステンレス鋼等の金属材料で構成され、内部に原料液を収容する。
【0019】
図2は、分離ユニット122の分解斜視図である。本実施形態の
図2では、垂直に交わるX軸(水平方向)、Y軸(水平方向)、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。
図2に示すように、分離ユニット122は、本体210と、リブ220A、220Bとを含んで構成される。
【0020】
本体210は、金属材料で形成された角柱形状の中空部材である。本体210は、底面212と、上面214と、側面216とを含んで構成される。底面212の一端側には、留出流体排出口212aが形成されている。底面212の他端側には、缶出液排出口212bが形成されている。また、底面212における留出流体排出口212aと缶出液排出口212bとの間には、原料液供給口212cが形成されている。
【0021】
リブ220A(第1のリブ)は、底面212から立設し、原料液供給口212c側から缶出液排出口212b側に延在した部材である。リブ220B(第2のリブ)は、底面212から立設し、留出流体排出口212a側から原料液供給口212c側に延在した部材である。リブ220A、220Bは、それぞれ複数(ここでは、6)設けられる。本実施形態において、リブ220A、220Bは、基端222の幅(
図2中X軸方向の幅)が、先端224の幅より大きい。また、リブ220A、220Bの先端224は、上面214と離隔している。
【0022】
分離ユニット122の寸法関係について説明する。隣り合うリブ220Aの基端222間の距離は、例えば、1mm程度である。隣り合うリブ220Aの先端224間の距離は、例えば、2mm程度である。なお、隣り合うリブ220B間の距離は、隣り合うリブ220A間の距離と実質的に等しい。リブ220A、220Bの高さ(基端222から先端224までの高さ、
図2中Z軸方向の高さ)は、例えば、3mm程度である。また、リブ220A、220Bの先端224と上面214との距離は、例えば、100μm〜10mm程度(ここでは、1mm)である。さらに、留出流体排出口212aの中心から缶出液排出口212bの中心までの長さLは、例えば、300mmである。
【0023】
また、本実施形態において、分離ユニット122(底面212、上面214)は、留出流体排出口212aから缶出液排出口212bに向かって鉛直下方(
図2中Z軸方向)に傾斜している。なお、分離ユニット122の傾斜角は、例えば、2.5度程度である。
【0024】
図1に戻って説明すると、回収部124は、例えば、電気ヒータ、オイルヒータ等で構成される。回収部124は、分離ユニット122の本体210における原料液供給口212cと缶出液排出口212bとの間を加熱する。回収部124は、本体210内における原料液供給口212cと缶出液排出口212bとの間を低沸点成分の沸点以上に加熱する。
【0025】
濃縮部126は、例えば、水冷装置、油冷装置等で構成される。濃縮部126は、分離ユニット122の本体210における原料液供給口212cと留出流体排出口212aとの間を冷却する。濃縮部126は、本体210内における原料液供給口212cと留出流体排出口212aとの間を低沸点成分の沸点未満に冷却する。
【0026】
缶出液排出ポンプ130は、吸入側が、配管を介して、缶出液排出口212bに接続される。缶出液排出ポンプ130は、吐出側が、配管を介して、缶出液貯留容器132に接続される。缶出液排出ポンプ130は、缶出液排出口212bを通じて、分離ユニット122から缶出液を抜き出す。缶出液貯留容器132は、ベント付容器で構成される。缶出液貯留容器132は、缶出液排出ポンプ130によって抜き出された缶出液を貯留する。第1冷却部134は、低沸点成分の沸点未満に缶出液貯留容器132を冷却する。缶出液送出ポンプ136は、吸入側が、配管を介して、缶出液貯留容器132に接続される。缶出液送出ポンプ136は、缶出液貯留容器132に貯留された缶出液を外部に送出する。なお、缶出液貯留容器132と缶出液送出ポンプ136とを接続する配管には、逆止弁136aが設けられている。
【0027】
留出流体貯留容器140は、ベント付容器で構成される。留出流体貯留容器140は、留出流体排出口212aを通じて、分離ユニット122から排出された留出流体(気液混合物)を貯留する。第2冷却部142は、低沸点成分の沸点未満に留出流体貯留容器140を冷却する。したがって、留出流体貯留容器140に導入された留出流体は凝縮して液体(留出液)となる。留出液送出ポンプ144は、吸入側が、配管を介して、留出流体貯留容器140に接続される。留出液送出ポンプ144は、留出流体貯留容器140に貯留された留出液を外部に送出する。なお、留出流体貯留容器140と留出液送出ポンプ144とを接続する配管には、逆止弁144aが設けられている。
【0028】
減圧容器150は、密閉された容器である。減圧容器150は、原料液貯留容器114、第2原料液供給ポンプ116、蒸留部120、缶出液排出ポンプ130、缶出液貯留容器132、留出流体貯留容器140を内部に収容する。
【0029】
減圧ポンプ152は、吸入側が、配管を介して、減圧容器150に接続される。減圧ポンプ152は、減圧容器150を減圧する。減圧ポンプ152は、減圧容器150内を、例えば、1Pa以上100Pa未満に減圧する。なお、減圧ポンプ152と減圧容器150とを接続する配管には、ミストフィルタ154が設けられている。
【0030】
続いて、蒸留装置100による原料液の蒸留について説明する。まず、第1原料液供給ポンプ112によって、原料液貯留タンク110から原料液貯留容器114に原料液が送出される。原料液貯留容器114は、ベント付容器で構成され、また、減圧容器150内に収容される。このため、原料液貯留容器114のベント口を通じて、原料液から窒素を脱気することができる。なお、減圧容器150内は、原料液貯留容器114から脱気された窒素で満たされることになる。
【0031】
第2原料液供給ポンプ116は、原料液貯留容器114から分離ユニット122の原料液供給口212cに原料液を供給する。上記したように分離ユニット122は、留出流体排出口212aから缶出液排出口212bに向かって鉛直下方に傾斜している。このため、原料液は、分離ユニット122内(リブ220A間、リブ220B間)を缶出液排出口212bに向かって流れる。
【0032】
分離ユニット122内における原料液供給口212cと缶出液排出口212bとの間は、回収部124によって、低沸点成分の沸点以上に加熱されている。このため、原料液は、分離ユニット122内を原料液供給口212cから缶出液排出口212bに向かって流れる過程で加熱される。これにより、分離ユニット122において、原料液から、低沸点成分を多く含む蒸気(気体)が生成される。
【0033】
なお、原料液供給口212cから缶出液排出口212bに向かうに従って、低沸点成分を多く含む蒸気(以下、単に「蒸気」と称する)の生成量が増加する。このため、分離ユニット122内における原料液供給口212c側と、缶出液排出口212b側とで圧力差が生じる。つまり、缶出液排出口212b側の方が、原料液供給口212c側よりも圧力が高くなる。したがって、分離ユニット122内において生成された蒸気は、液体の流れと逆方向、すなわち、原料液供給口212c(留出流体排出口212a)に向かって流れる。
【0034】
分離ユニット122内における原料液供給口212cと留出流体排出口212aとの間は、濃縮部126によって、低沸点成分の沸点未満に冷却されている。このため、蒸気は、分離ユニット122内を原料液供給口212cから留出流体排出口212aに向かって流れる過程で冷却される。これにより、分離ユニット122において、蒸気に含まれる低沸点成分および高沸点成分が凝縮して液体(凝縮液)となる。そして、凝縮液は、缶出液排出口212bに向かって自重で流れる。これにより、還流が為され、低沸点成分と高沸点成分の蒸留効率を向上することが可能となる。
【0035】
そして、分離ユニット122内における留出流体排出口212aの上方の領域において凝縮された液体および気体が留出流体として留出流体排出口212aを通じて留出流体貯留容器140に貯留される。なお、留出流体貯留容器140は、ベント付容器で構成されるが、第2冷却部142によって低沸点成分未満に冷却されている。したがって、留出流体貯留容器140のベント口から放出される気体はほとんどない。そして、留出液送出ポンプ144は、留出流体貯留容器140から外部に留出液を送出する。なお、上記したように、留出流体貯留容器140と留出液送出ポンプ144とを接続する配管には、逆止弁144aが設けられている。これにより、留出液送出ポンプ144から留出流体貯留容器140へ留出液や空気が逆流してしまう事態を防止することができる。
【0036】
一方、分離ユニット122において蒸気が取り除かれた液体(蒸発しなかった液体)は、缶出液として缶出液排出口212bを通じて、缶出液排出ポンプ130によって分離ユニット122外に抜き出される。缶出液排出ポンプ130によって抜き出された缶出液は、缶出液貯留容器132に貯留される。缶出液貯留容器132は、ベント付容器で構成されるが、第1冷却部134によって低沸点成分未満に冷却されている。したがって、缶出液貯留容器132のベント口から放出される気体はほとんどない。そして、缶出液送出ポンプ136は、缶出液貯留容器132から外部に缶出液を送出する。なお、上記したように、缶出液貯留容器132と缶出液送出ポンプ136とを接続する配管には、逆止弁136aが設けられている。これにより、缶出液送出ポンプ136から缶出液貯留容器132へ缶出液や空気が逆流してしまう事態を防止することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の蒸留装置100では、原料液貯留容器114、第2原料液供給ポンプ116、蒸留部120、缶出液排出ポンプ130、缶出液貯留容器132、留出流体貯留容器140を減圧容器150内に収容する。これにより、蒸留部120を構成する分離ユニット122内を大気圧未満に減圧することができる。したがって、原料液に含まれる低沸点成分の沸点を低下させることが可能となる。このため、分離ユニット122内が大気圧以上である場合と比較して、回収部124による加熱温度を低下させることができる。したがって、低沸点成分の変性を抑制することが可能となる。また、分離ユニット122内が大気圧以上である場合と比較して、回収部124の消費エネルギーを削減することができる。
【0038】
なお、分離ユニット122内を減圧ポンプで減圧する構成も考えられる。しかし、この構成では、減圧ポンプで吸引した分、分離ユニット122内の蒸気が減少してしまうため、留出液が低減するという問題がある。
【0039】
これに対し、本実施形態の蒸留装置100は、原料液貯留容器114、缶出液貯留容器132、留出流体貯留容器140のベント口のみから低沸点成分が放出されるだけである。なお、原料液貯留容器114は常温(例えば、25℃)であるため、低沸点成分はほとんど放出されない。また、缶出液貯留容器132、留出流体貯留容器140には、常温より高温の液が供給されるが、第1冷却部134、第2冷却部142によって冷却されている。このため、缶出液貯留容器132、留出流体貯留容器140からも低沸点成分は殆ど放出されない。したがって、分離ユニット122内を減圧ポンプで減圧する構成と比較して、留出液を増加させることができる。
【0040】
なお、原料液貯留容器114、缶出液貯留容器132、留出流体貯留容器140のベント口から放出された極少量の低沸点成分は、ミストフィルタ154によって捕集される。このため、減圧ポンプ152に低沸点成分が混入する事態を回避することができる。
【0041】
また、本実施形態の蒸留装置100では、原料液や凝縮液がリブ220A間、または、リブ220B間を流れるように分離ユニット122が構成されている。液体が流れる流路幅が大きいと、液体の表面張力によって、流路の端部側を流れる液体の流速と、流路の中央側を流れる液体の流速との差が大きくなってしまう。そこで、リブ220A間およびリブ220B間の幅を2mm以下とすることで、流路の端部側を流れる液体の流速と、流路の中央側を流れる液体の流速との差を小さくすることができ、流路内における流速の均一化を図ることが可能となる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0043】
例えば、上記実施形態において、減圧容器150内に1の蒸留部120が収容される構成を例に挙げて説明した。しかし、減圧容器150内に複数の蒸留部120が収容されてもよい。
【0044】
また、上記実施形態において、ベント付容器が、上面にベント口が形成された容器である場合を例に挙げて説明した。しかし、ベント付容器は、側面にベント口が形成されていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態において、蒸留装置100が、減圧容器150内に収容された原料液貯留容器114および第2原料液供給ポンプ116を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、原料液貯留容器114、第2原料液供給ポンプ116は、必須の構成ではない。例えば、減圧容器150外に配される第1原料液供給ポンプ112が、原料液供給口212cに原料液を直接供給してもよい。また、この場合、第1原料液供給ポンプ112に代えて原料液貯留タンク110と原料液供給口212cとを接続する配管に流量調整弁を備えてもよい。流量調整弁の開度を制御することで、原料液の供給量を制御することができる。
【0046】
また、上記実施形態において、分離ユニット122の底面212が留出流体排出口212aから缶出液排出口212bに向かって鉛直下方に傾斜している構成について説明した。しかし、底面212は、水平方向に延在していてもよい。
【0047】
また、上記実施形態において、分離ユニット122の寸法関係や傾斜角について説明した。しかし、分離ユニット122は、原料液における低沸点成分と高沸点成分との割合、目的とする蒸留効率、第2原料液供給ポンプ116による原料液の供給流速(処理速度)に基づいて、適宜設定されればよい。
【0048】
また、上記実施形態において、分離ユニット122がリブ220A、220Bを備える構成を例に挙げて説明した。しかし、リブ220A、220Bに代えて多孔質体を本体210上に載置してもよい。多孔質体を載置することで、リブ220A、220Bを設ける構成と同様に、流路の端部側を流れる液体の流速と、流路の中央側を流れる液体の流速との差を小さくすることができる。
【0049】
また、上記実施形態において、留出流体排出口212a、缶出液排出口212b、および、原料液供給口212cが底面212に形成される構成を例に挙げて説明した。しかし、留出流体排出口212a、缶出液排出口212b、および、原料液供給口212cの群から選択される1または複数は、側面216に形成されてもよい。