(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機溶剤(C)が、25℃の時の粘度が30mPa・s以上、75000mPa・s以下である有機溶剤(C1)を含み、有機溶剤(C1)の含有量が、有機溶剤(C)の含有量100質量%中、10質量%以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の導電性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の導電性組成物(以下、「組成物」と称す場合がある)は、バインダー樹脂(A)と導電性付与剤(B)と有機溶剤(C)とを含むことを特徴とする。
【0016】
<バインダー樹脂(A)>
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、体積抵抗値と基材への密着性および耐久性の観点からビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)およびフェノキシ樹脂(A−2)からなる群より選ばれる。体積抵抗値は、熱プレス中の樹脂分が流動しやすいため良好な結果となる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)は、比較的低分子量(数平均分子量800以上7,000未満)であって、官能基としてエポキシ基の反応が期待される。一方、フェノキシ樹脂(A−2)は、比較的高分子量(数平均分子量7,000以上60,000未満)であって、後述するようにエポキシ基の有無は問わず、その分子量故に官能基濃度が小さく、時に熱可塑性樹脂として認識されることもある。
【0017】
[ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)]
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)は、ビスフェノール化合物に由来する分子骨格および1分子中に1つ以上のエポキシ基を含むエポキシ樹脂である。
このようなビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)は、例えば少なくともビスフェノール化合物を含む一分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物と、エピクロロヒドリンとを、水酸化ナトリウムなどの塩基存在下で重合する公知公用の方法により得ることができるが、同様の構造を有する樹脂が得られる限りにおいて合成方法は限定されない。
また、ビスフェノール化合物を必須成分として用いる限りにおいて、脂肪族ジオール化合物やポリエーテルポリオール化合物、カルポキシル基末端ブタジエンニトリルゴム(以下CTENという)などの液状ゴム化合物などのビスフェノール化合物以外の成分と共重合されていてもよい。また、さらに上記エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させたアミン変性体や、側鎖水酸基にエチレンオキシドやプロピレンオキシド、ε‐カプロラクトン等を付加させた側鎖変性体、および一部のビスフェノール同士をアセタール結合により連結したアセタール変性体なども用いることができる。
【0018】
上記ビスフェノール化合物としては、フェノール化合物2分子とケトンまたはアルデヒド化合物1分子との縮合物として得られる2官能フェノール化合物であればよく、例えば、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビスフェノールG、ビスフェノールTMC、ビスフェノールMおよび、BisP−AP、TM−BPF、BisOC−F、BisP−MIBK、BisP−B、BisOPP−A、BisOCHP−A、Bis26X−A、BisOTBH−A、メチレンビスP−CR(以上本州化学工業社の製品名)、ビスフェノールP、ビスキシレノールP(以上三菱化学ファイン社の製品名)、ビスフェノールフルオレンや、これらの水素添加物等が挙げられる。これらは合成原料として単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0019】
このようなビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)の市販品の例としては、例えばjER828、jER1007、jER1010、YL6810(三菱化学社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER806、jER4004P、jER4010P(三菱化学社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、EPOK−MK R−710、EPOK−MK R−1710(プリンテック社製)などのビスフェノールE型エポキシ樹脂、YX8000、YX8034(三菱化学社製)、ST−3000、ST−4000D(新日鐵住金化学社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER−872(三菱化学社製)などのダイマー酸変性型エポキシ樹脂、EXA−4850−150、EXA−4850−1000(DIC社製)などのアセタール変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EXA−4816(DIC社製)などの長鎖炭化水素鎖変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EPR−1415−1、EPR−2000(ADEKA社製)などのNBR変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
<フェノキシ樹脂(A−2)>
本発明に用いられるフェノキシ樹脂(A−2)としては、上記ビスフェノール化合物とエピクロロヒドリン、或いは上記ビスフェノール化合物と少なくとも1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを重合して得られるものであっって、比較的高分子量(数平均分子量7,000以上60,000未満程度)のものをいう。
フェノキシ樹脂(A−2)がエポキシ基を有す場合、前述のビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)との違いは数平均分子量である。
また、ビスフェノール化合物とエピクロロヒドリンもしくは2官能以上のエポキシ化合物との反応に由来する構造を有するものであって、前述のように比較的高分子量であれば、樹脂中のエポキシ基に、エポキシ基に対する反応性を有す化合物を反応させ、エポキシ基を消滅させたものも、フェノキシ樹脂(A−2)として用いることができる。
さらにビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)の場合と同様、ビスフェノール化合物とエピクロロヒドリン等との反応の結果生じる側鎖水酸基に対して、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド類、ε‐カプロラクトンやδ‐バレロラクトンなどのラクトン類、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物、オクタデシルイソシアネートなどの単官能イソシアネート等を付加させた側鎖変性体であってもよい。
【0021】
上記1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、上記のビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)を用いてもよく、それ以外では、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルやノナンジオールジグリシジルエーテルなどの脂肪族ジグリシジルエーテル、jER871(三菱化学社製)などのダイマー酸ジグリシジルエステル、エポライト200Eやエポライト400E(共栄社化学社製)などのポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポライト70Pやエポライト400P(共栄社化学社製)などのポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、YX4000、YL8121などのビフェニル型ジグリシジルエーテル、YX8800(三菱化学社製)などのアントラセンジグリシジルエーテル、GAN、GOT(日本化薬社製)などのジグリシジルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物は1種のみを用いて重合を行ってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
また、本発明に必要な特性を満たす限りにおいて、ビスフェノール化合物と1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを反応させてフェノキシ樹脂(A−2)を得る際、さらに1分子中に1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物や1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を併用してもよい。
1分子中に1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、ブチルグリシジルエーテル、(阪本薬品工業社製)、エポライトM−1230(共栄社化学社製)などの脂肪族単官能エポキシ化合物や、SY−OCG、SY−OPG阪本薬品工業社製)などの芳香族単官能エポキシ化合物などが挙げられる。
1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えばTEPICシリーズ(日油社製)やjER630(三菱化学社製)などが挙げられる。
【0023】
このようなフェノキシ樹脂(A−2)の市販品の例としては、例えばjER−1256(三菱化学社製)やYP−50(新日鐵住金化学社製)、PKFE、PKHH(ガブリエルパフォーマンスプロダクツ社製)などのビスフェノールA型フェノキシ樹脂、jER−4275(三菱化学社製)、YP−70(新日鐵住金化学社製)などのビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂、YPS−007A30(新日鐵住金化学社)などのビスフェノールA/ビスフェノールS共重合型フェノキシ樹脂、PKCP−67、PKCP−80(ガブリエルパフォーマンスプロダクツ社製)等の側鎖カプロラクトン変性ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、KAYARAD ZFR−1901、KAYARAD ZAR−2000(日本化薬社製)等の側鎖無水物変性体等が挙げられる。
【0024】
本発明では、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A−1)、もしくはフェノキシ樹脂(A−2)と他バインダー樹脂をさらに併用しても良い。併用する事が出来るバインダー樹脂としては、ポリウレタン系、アクリロニトリル系、アクリル系、ブタジエン系、ポリアミド系、ポリビニルブチラール系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、EVA系、ポリフッ化ビニリデン系及びシリコン系樹脂等からなる群から選ばれる1 種以上を含むことができる。これらの樹脂に限定されるわけではない。
バインダー樹脂は、導電性組成物を基材に塗工した後に、硬化剤と硬化(架橋)反応させることもできる。
【0025】
<導電性付与剤(B)>
本発明の導電性組成物は、導電性付与剤として膨張化黒鉛(B1)を含むことを特徴とする。
(膨張化黒鉛(B1))
本発明で用いられる膨張化黒鉛とは、鱗片状黒鉛を化学処理した膨張黒鉛(膨張性黒鉛ともいう;ExpandableGraphite)を、熱処理して膨張化させた後、微細化したものである。なお、微細化前に圧延しグラファイトシート化したものを粉砕して得られた膨張化黒鉛粉末も含む。
膨張化黒鉛としては、従来公知の膨張化黒鉛から適宜選択され得る。市販の膨張化黒鉛を用いてもよい。市販の膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50が挙げられる(いずれも商品名)。
膨張化黒鉛の形状に関しては、特に限定されるものではない。例えばさらに薄片状に処理された薄片状の膨張化黒鉛などが挙げられる。
膨張化黒鉛は、他の黒鉛と比べて少量の含有量で高い導電性を発現することが可能となっている。例えば、一般的な鱗状黒鉛よりも少量で高い導電性を発現する傾向にある。
膨張化黒鉛の平均粒径は、10μm〜200μであり、25〜150μmがより好ましい。形成される導電膜の導電性向上の点から10μm以上であることが好ましく、導電性組成物の塗工性および形成される導電膜の基材への密着性の点から200μm以下であることが好ましい。
また、D10(μm)とD90(μm)の粒径の差分が、60μm以上であることが好ましい。
なお本発明における「平均粒径」とはレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。D10(μm)とD90(μm)は、積算値10%、90%の粒径を意味する。
測定は、以下の条件で行うものとする。
測定機器:マイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラック・ベル株式会社)
測定サンプル調整方法:黒鉛0.63g、トルエン11.87gを蓋付きガラス瓶(M-70)に添加した後、遊星攪拌(株式会社シンキー製:あわとり錬太郎、攪拌時間:3分)を行い分散液を作製し、測定を実施する。
導電性組成物の固形分量を100質量%とした時の導電性付与剤(B1)の含有量は、40質量%〜90質量%であり、より好ましくは、50質量%〜85質量%である。形成される導電膜の導電性向上の点から40質量%以上が好ましく、導電性組成物の塗工性および形成される導電膜の基材への密着性の点から90質量%以下が好ましい。
【0026】
(カーボンブラック(B2))
本発明では導電性付与剤としては、さらにカーボンブラックを併用することができる。膨張化黒鉛とカーボンブラックを併用することで、カーボンブラックが膨張化黒鉛の導電パスをつなぐ役割を果たし、熱プレス工程を経なくても高い導電性を発現する傾向にある。
カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネストブラック等従来公知の導電性カーボンの使用が可能である。
膨張化黒鉛(B1)とカーボンブラック(B2)の質量組成比は、膨張化黒鉛、カーボンブラックの総質量を100質量%とした時、膨張化黒鉛は、60〜90質量%、カーボンブラックは10〜40質量%が好ましい。膨張化黒鉛由来の高い導電性を活かすという点からカーボンブラック(B2)は40質量%以下が好ましく、膨張化黒鉛間の導電パスをつなぐという点からカーボンブラック(B2)は10質量%以上であることが
好ましい。
【0027】
(その他の導電性付与剤)
その他の導電性付与剤としては、膨張化黒鉛以外の黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、コークスが挙げられる。ただし、物性を損なわない範囲であればこの限りではない。また、1種または2種以上を併用することもできる。
【0028】
<有機溶剤(C)>
有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの内から導電性組成物の組成に応じ適当なものが使用できる。また、溶剤は2種以上用いてもよい。質量
尚、スクリーン印刷などのインキ組成物に一定以上の粘性が要求される印刷塗工方式を採用する場合、25℃の時の粘度は、30mPa・s〜75000mPa・sの有機溶剤(C1)を有機溶剤(C)100質量%中、10質量%以上含むことが好ましい。形成される導電膜の導電性向上の点からはバインダー(A)量の少なくすることが望まれるが、バインダー(A)量が少ないと、導電性付与剤(B)の分散性が低下し、導電性組成物の塗工性も低下する。導電性付与剤(B)の分散性向上、および導電性組成物を塗工に適した粘性にする「疑似バインダー」としての機能の点から、25℃において30mPa・s以上の有機溶剤を用いることが好ましい。一方、導電性付与剤(B)の分散性向上の点からは、粘度が高すぎないことが好ましく、具体的には、25℃において75000mPa・s以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
このような有機溶剤(C1)としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1、3−ブチレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノールが挙げられる。ここで示すところの高粘度溶剤は、二種以上用いて良い。
さらに、有機溶剤(C1)は、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールのような25℃の時の粘度が30mPa・s未満の低粘度溶剤と併用して使用することも可能である。
【0029】
ここで示す粘度とは、以下の測定方法で得られた数値のことを示す。
アントンパール・ジャパン社製のレオメーター(MCR302)を用いて測定した。測定方法としては、測定サンプルを設置後以下の条件で測定し、せん断開始から60秒後の数値を読み取ることとする。
測定治具:コーンプレートCP25−2(この治具で測定できない場合は、コーンプレートCP50−1を使用する)。
回転数:1000(1/sec)
プレート温度:25℃
【0030】
<その他の成分>
本発明の導電性組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル補足剤、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
<硬化剤D>
硬化剤としては、バインダー樹脂の有する官能基と反応するものであれば、特に限定されないが、アミノ基を複数有する化合物や酸無水物基を複数有する化合物の他、多官能アジリジン化合物、多官能イソシネート化合物等が挙げられる。
【0031】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、上記、バインダー樹脂、膨張化黒鉛、有機溶剤を必須成分とし、更に、必要に応じて、その他の成分を配合後、均一に分散することで製造することができる。
分散方法は、バインダー樹脂を溶剤に溶解し、導電性フィラーを添加した後、遊星攪拌や三本ロール、二本ロール、スキャンデックス、ビーズミルによって行う。使用する溶剤はバインダー樹脂を溶かすものであれば特に制限されない。物性を低下させない範囲であれば上記以外の分散方法を用いても良い。
ただし、硬化剤を使用する場合は、硬化剤の添加は、導電性組成物の分散後に行うものとする。硬化剤添加後は、遊星攪拌、ミックスローター、ディスパー等によって適宜混合する。混合方法は特に限定されない。
【0032】
<基材>
基材は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下、PENという)、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、二軸延伸ポリプロピレン(以下、OPPという)、無延伸ポリプロピレン(以下、CPPという)などのフィルムが挙げられるが特に限定されることはない。
【0033】
<導体膜>
本発明の導体膜は、導電性組成物を塗工し、乾燥することで形成される。
導電性組成物の基材への塗工方法を以下に示す。塗工方法は、公知の方法を用いればよく、インクジェット法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、反転印刷法等を挙げることができるが、特に限定されない。
乾燥条件は、特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。熱風乾燥の場合、膜厚や選択した有機溶剤にもよるが、通常60〜200℃程度で乾燥させる。また、基材としてPETやPEN等のプラスチックフィルムを用いる場合は、基材が熱で変形する場合があるため、60〜150℃がより好ましい。
導電膜を導体配線として使用する場合、導電性と取扱い性の観点から、塗工後の膜厚は、50〜1000μmが好ましい。
【0034】
塗工後の導電膜をさらに低抵抗化するためには、熱プレス処理をすることが好ましい。熱プレス処理後の体積抵抗値は、10−4Ωcm以上、10−2Ωcm未満が好ましい。
【0035】
<熱プレス方法>
熱プレス方法は、導電膜と基材にダメージを与えない範囲であればどのような方法でも良い。例えば、ロール加圧法、プレス加圧法等が挙げられる。圧力、温度、プレス時間、ロール速度は本発明の物性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。温度に関しては、フィルム基材を使用する場合、熱で変形する可能性があるため、50℃〜200℃が好ましい。
組成物を導体配線と使用する場合、熱プレス後の膜厚は、30〜200μmが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」をそれぞれ表し、Mwは質量平均分子量、Tgはガラス転移温度を意味する。
【0037】
[バインダー樹脂(A)]
<実施例用>
(A−1−a)jER−1007:三菱化学社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分100%、数平均分子量2,900
(A−1−b)jER−4010P:三菱化学社製ビスフェノールF型エポキシ樹脂、固形分100%、数平均分子量5,500
(A−1−c)EXA−4850−150:DIC社製アセタール変性型ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分100%、数平均分子量1,000
(A−2−a)jER−1256:三菱化学社製ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、固形分100%、数平均分子量10,000
(A−2−b)PKFE:ガブリエルパフォーマンスプロダクツ社製ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、数平均分子量16,000
(A−2−c)jER−4275:三菱化学社製ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂、固形分100%、数平均分子量8,000
(A−2−d)PKCP−67:ガブリエルパフォーマンスプロダクツ社製側鎖ε−カプロラクトン変性型ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、固形分100%、数平均分子量22,500
(A−2−e)KAYARAD ZFR−1491:日本化薬社製側鎖テトラヒドロフタル酸無水物・グリシジルアクリレート変性型ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、固形分50%(メトキシプロピルアセテート溶液)、数平均分子量12,000
【0038】
<比較例用>
(A−3−a)N−730A:DIC製、フェノ−ルノボラック型エポキシ樹脂、固形分100%
(A−3−b)Nipol AR42W:日本ゼオン製、アクリルゴムポリマー、固形分100%
(A−3−c)エスレックBM−2:積水化学工業製、ポリビニルブチラール、固形分100%
(A−3−d)ショウノールBRG−556:アイカSDKフェノール製、ノボラック型フェノール樹脂、固形分100%
(A−3−e)JP03:日本酢ビ・ポバール製、ポリビニルアルコール、固形分100%
(A−3−f)K−30:日本触媒製、ポリビニルピロリドン、固形分100%
【0039】
<数平均分子量(Mn)の測定方法>
Mnの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、質量平均分子量(Mn)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0040】
<バインダー樹脂溶液の調整>
実施例、比較例で使用するバインダー樹脂を表1に示すように、以下に示す溶剤1〜
5を使用して固形分率20%の溶液に調整した。混合溶媒の組成比は質量比で記載。
1:トルエン/MEK/IPA(1/1/1)
2:ターピネオール
3:ターピネオール/イソボルニルシクロヘキサノール(7/3)
4:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、EDGAC)
5:水/EtOH(1/1)
【0041】
【表1】
【0042】
<実施例1>
バインダー樹脂A−1−a−1の溶液に導電性付与剤と有機溶剤を表2に示す種類と配合量で添加し、最後に、その溶液と同質量のガラスビーズ(3mm)を加えて、スキャンデックスによる分散を行い、ビーズを除いた後、導電性組成物を得た。その組成物をPETフィルムにアプリケーター12milで塗工後、80℃で5分間乾燥させることで塗膜を得て、後述する方法に従い体積抵抗値を求めた。
別途、前記の塗膜を油圧ラミネータで熱プレス(120℃)して、後述する方法に従い各種評価を実施した。熱プレスする場合、必要に応じて剥離フィルム、剥離紙を塗工物の上に設置してもよい。その場合、物性評価前に剥離フィルムを剥がす。
【0043】
1.熱プレス方法
以下に示す条件で塗膜の熱プレスを実施した。
使用油圧ラミネーター機:大成ラミネーター(株)製油圧ラミネーターNP500S型
ポンプ圧:2MPa
ロール速度:0.2m/min
上下ロール温度:120℃
【0044】
2.体積固有抵抗値の測定
得られた組成物とPETフィルムの積層物を1.5cm×3cmに裁断し、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製:ロレスターGXMCP−T700)を用いて組成物の体積抵抗値の測定を行った。「△」、「○」、「◎」評価の場合、実用上問題ない。
・プレス前塗膜の導電性判定基準
◎:体積抵抗値が10
−2Ωcm未満
○:体積抵抗値が10
−2Ωcm以上、10
−1Ωcm未満
△:体積抵抗値が10
−1Ωcm以上、10
0Ωcm未満
×:体積抵抗値が10
0Ωcm以上
・熱プレス後塗膜の導電性判定基準
○:体積抵抗値が10
−2Ωcm未満
△:体積抵抗値が10
−2Ωcm以上、10
−1Ωcm未満
×:体積抵抗値が10
−1Ωcm以上
【0045】
3.印刷塗工性評価
印刷塗工性の優劣を塗膜の空隙の有無で評価した。評価方法としては、熱プレス後の塗膜を蛍光灯の光で透かして見たときの空隙の多さの度合いで以下に示す三段階で評価を行った。
○:空隙なし
△:わずかに空隙があるが導電性の評価を行う分には問題ない程度
×:空隙が多数あり導電性の評価ができない
【0046】
4.塗膜の密着性の評価
熱プレス後の基材からの剥離度合を以下の三段階で評価した。実用上、「△」以上なら問題ない。
○:剥がれなし
△:一部剥離
×:完全剥離
【0047】
5.耐久性試験
耐久性の優劣を以下に示す方法で評価した。作製した熱プレス処理済みの塗膜を基材と共に濃度3%の塩水に浸漬し、80℃下で5000時間放置した後、乾燥させてから、体積固有抵抗値を測定し、浸漬前の体積固有抵抗値を基準として以下の評価を行った。実用上「△」以上なら問題ない。(体積固有抵抗値の測定方法は前述と同様)
○:体積抵抗値上昇せず
△:体積抵抗値が上昇するが、10
−2Ωcm未満の値を維持
×:体積抵抗値が10
−2Ωcm以上まで上昇
【0048】
<実施例2>
バインダー樹脂A−1−a−1に導電性付与剤と有機溶剤を表2に示す種類と配合量で添加し、その溶液と同質量のガラスビーズ(3mm)を加えて、スキャンデックスによる分散を行い、ビーズを除いた。次に、スミジュールBL3175:住化コベストロウレタン社製 ブロックイソシアネート硬化剤(固形分75%)をトルエンで希釈し、固形分50%とした硬化剤溶液D−1−1を表1に示す配合量で添加後、十分に攪拌して、導電性組成物を得た。その組成物をPETフィルムにアプリケーター12milで塗工後、80℃で5分間乾燥させることで塗膜を得た。
そして、表1に該当する各種評価を実施した。さらに、得られた塗膜を油圧ラミネータで熱プレスし(120℃)、150℃30分間の加熱条件で硬化した後、表2に該当する各種評価を実施した。熱プレスする場合、必要に応じて剥離フィルム、剥離紙を塗工物の上に設置してもよい。その場合、物性評価前に剥離フィルムを剥がす。
【0049】
<実施例3>
バインダー樹脂A−1−a−2に導電性付与剤と有機溶剤を表2に示す種類と配合量で添加し、三本ロールによる分散を行った。その導電性組成物をPETフィルムに対してシルクスクリーン(40メッシュ)で印刷後、100℃で10分間、150℃で60分間乾燥させることで、塗膜を得て、表1に該当する各種物性評価を実施した。さらに得られた塗膜を油圧ラミネーターで熱プレスして(120℃)、表2に該当する各種物性評価を実施した。なお、プレス前膜厚は250μm、プレス後膜厚は80μmとした。
【0050】
<実施例5、9、13、17、21、27、比較例1〜8>
表2〜7に記載されている配合物の種類と配合量以外は、実施例1と同様にスキャンデックスによって分散し導電性組成物を得、アプリケーターで塗工して塗膜を形成し、評価した。
【0051】
<実施例4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、28、30、34、36>
表2〜5に記載されている配合物の種類と配合量以外は、実施例1または3と同様にしてスキャンデックスまたは3本ロールによって分散した後、実施例2と同様に硬化剤を加えて導電性組成物を得、アプリケーターで塗工して、またはシルクスクリーン印刷で印刷して塗膜を形成し、評価した。
【0052】
<実施例7、11、15、19、23、25、26、29、31、32、35>
表2〜6に記載されている配合物の種類と配合量以外は、実施例3と同様に3本ロールによって分散し導電性組成物を得、シルクスクリーン印刷で印刷して塗膜を形成し、評価した。
【0053】
<比較例9>
市販されている膜厚20μm程度の銅箔で耐久性試験を実施した。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
<導電性付与剤(B)>
(膨張化黒鉛(B1))
・LEP(日本黒鉛工業):平均粒径137μm
・CMX−40(日本黒鉛工業):平均粒径60μm
・GR−25(日本黒鉛工業):平均粒径31μm
・EC10(伊藤黒鉛工業):平均粒径190μm
・EC100(伊藤黒鉛工業):平均粒径190μm
・EC300(伊藤黒鉛工業):平均粒径50μm
・EC1500(伊藤黒鉛工業):平均粒径8μm
(カーボンブラック(B2))
・ECP600JD(ライオンスペシャリティケミカル)
・EC300JD(ライオンスペシャリティケミカル)
(鱗状黒鉛)
・CPB(日本黒鉛工業):平均粒径38μm
(薄片状黒鉛)
・UP−50N(日本黒鉛工業):平均粒径95μm
【0061】
<有機溶剤(C)>
・トルエン:粘度0.66mPa・s
・MEK:0.49mPa・s
・IPA:2.00mPa・s
・ターピネオール:53mPa・s
・イソボルニルシクロヘキサノール:70000mPa・s
・EDGAC:2.6mPa・s
【0062】
<硬化剤D>
・スミジュールBL3175:住化コベストロウレタン社製 ブロックイソシアネート硬化剤(固形分75%)
D−1−1:スミジュールBL3175をトルエンで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−1−1を得た。
D−1−2:スミジュールBL3175をターピネオールで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−1−2を得た。
・リカシッドTH:新日本理化社製 テトラヒドロ無水フタル酸(固形分100%)
D−2−1:リカシッドTHをトルエンで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−2−1を得た。
D−2−2:リカシッドTHをターピネオールで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−2−2を得た。
・キュアゾール2E4MZ:四国化成社製 イミダゾール硬化剤(固形分100%)を
D−3−1:キュアゾール2E4MZをトルエンで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−3−1を得た。
D−3−2:キュアゾール2E4MZをターピネオールで希釈し、固形分50%の硬化剤溶液D−3−2を得た。
【0063】
なお、表中、スキャンデックスによる分散を「S」、3本ロールによる分散を「3本」、アプリケーターによる塗工を「A」、シルクスクリーン印刷による印刷を「SS」と略記した。
【0064】
比較例1〜3は最適なバインダー樹脂を使用していないため、導電性、印刷性が悪い結果であった。比較例4、5は、最適なバインダー樹脂を使用していないため、密着性、耐久性が悪い結果であった。比較例6は、膨張化黒鉛の平均粒径が小さいため、低い導電性となっていた。比較例7、8は、膨張化黒鉛を使用していないために、低い導電性となっていた。比較例9は、耐久性試験の結果、銅箔表面に不導体が形成され、耐久性評価は、「×」となっていた。
実施例1〜47は、平均粒径が大きい膨張化黒鉛と基材への良好な密着性と熱プレス後の十分な塗膜強度を兼ね備えたバインダー樹脂を使用しており、高い導電性と基材への良好な密着性を示した。