(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の空気入りタイヤは、負荷される荷重により耐偏摩耗性能に差が生じ、例えば、前輪駆動車のように前後バランスが不均衡な車両に用いた場合、前輪又は後輪の一方において、偏摩耗が早期に進行するおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、タイヤ子午線断面におけるトレッド部の外表面の輪郭を特定することを基本として、トレッド部の偏摩耗を抑制し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する空気入りタイヤであって、正規リムにリム組みしかつ正規内圧に調整された正規状態で、正規荷重の40%〜70%の荷重がキャンバー角0°で負荷されたときの前記トレッド部の接地面形状において、前記各荷重が負荷されたときの前記接地面形状は、それぞれの前記荷重毎に、タイヤ軸方向の中央におけるクラウン接地長Lcと、当該荷重時の前記接地面形状の最大接地幅の80%位置におけるショルダー接地長Lsと、これらの比Lc/Lsとを有し、前記正規荷重の40%の荷重が負荷されたときの前記比Lc/Lsは、前記正規荷重の70%の荷重が負荷されたときの前記比Lc/Lsの125%以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記正規荷重の40%〜70%の範囲内の前記荷重が負荷されたときの前記比Lc/Lsは、120%〜150%の範囲内であるのが望ましい。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝により区分される複数の陸部とを有し、前記主溝は、タイヤ赤道上に配されるクラウン主溝と、前記クラウン主溝とトレッド端との間に配されるショルダー主溝とを含み、前記陸部は、前記クラウン主溝と前記ショルダー主溝との間に区分されるミドル陸部と、前記ショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分されるショルダー陸部とを含み、前記正規荷重の40%の荷重が負荷されたときの前記接地面形状において、前記ショルダー陸部の接地幅は、前記ミドル陸部の接地幅の130%〜140%であるのが望ましい。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、タイヤ子午線断面における前記トレッド部の外表面は、曲率半径が異なる複数の円弧からなる輪郭を有し、前記輪郭は、タイヤ赤道を跨り、かつ、第1曲率半径TR1でタイヤ半径方向外側に凸となるクラウン円弧と、前記クラウン円弧に連なり、かつ、第2曲率半径TR2でタイヤ半径方向外側に凸となるミドル円弧と、前記ミドル円弧に連なり、かつ、第3曲率半径TR3でタイヤ半径方向外側に凸となるショルダー円弧とを含み、前記クラウン円弧と前記ミドル円弧とを接続する第1接続部は、前記ミドル陸部に位置し、前記ミドル円弧と前記ショルダー円弧とを接続する第2接続部は、前記ショルダー陸部に位置する
のが望ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記第1曲率半径TR1、前記第2曲率半径TR2、及び、前記第3曲率半径TR3は、以下の関係を満たすのが望ましい。
TR1>TR2>TR3
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記第2曲率半径TR2は、前記第1曲率半径TR1の45%〜60%であり、前記第3曲率半径TR3は、前記第1曲率半径TR1の15%〜30%であるのが望ましい。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記第1接続部は、前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の中央からタイヤ軸方向に2mm以下の第1範囲内に位置し、前記第2接続部は、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の内端からタイヤ軸方向外側に5〜10mmの第2範囲内に位置するのが望ましい。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部には、ベルト層が配され、前記ベルト層は、タイヤ半径方向において、内側ベルトプライと外側ベルトプライとを含み、前記外側ベルトプライのタイヤ軸方向の長さは、トレッド幅の60%以上であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいて、正規荷重の40%の荷重が負荷されたときの比Lc/Lsは、前記正規荷重の70%の荷重が負荷されたときの比Lc/Lsの125%以下である。このような接地面形状を有するトレッド部は、負荷される荷重によらず、空気入りタイヤの偏摩耗を適切に抑制し得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の正規状態の空気入りタイヤ1を示すタイヤ子午線断面図である。ここで、「正規状態」とは、タイヤ1を正規リム(図示省略)にリム組みし、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で特定される値である。また、各溝の溝幅は、特に断りがない場合、その長手方向に直交する向きで測定される。
【0017】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0018】
また、「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。なお、正規内圧は、タイヤ1が乗用車用である場合、180kPaとする。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用のラジアルタイヤとして好適に使用される。タイヤ1は、路面に接地させたときに接地面を構成するトレッド部2を有している。トレッド部2は、例えば、タイヤ赤道Cを含むクラウン領域Crと、クラウン領域Crのタイヤ軸方向外側でトレッド端2tに至るショルダー領域Shと、クラウン領域Crとショルダー領域Shとの間に位置するミドル領域Miとに区分される。
【0020】
ここで、「トレッド端」2tとは、正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの接地面のタイヤ軸方向最外端である。このトレッド端2t間のタイヤ軸方向の中央位置が「タイヤ赤道」Cであり、トレッド端2t間のタイヤ軸方向の距離が「トレッド幅」TWとして定められる。
【0021】
「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0022】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2に配されたベルト層7とを備えている。
【0023】
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のカーカスプライ6A,6Bによって構成されている。各カーカスプライ6A,6Bは、タイヤ周方向に対して、例えば75〜90度の角度でカーカスコード(図示省略)が配列されている。カーカスコードとしては、例えば、芳香族ポリアミド又はレーヨン等の有機繊維コードが採用され得る。
【0024】
本実施形態の各カーカスプライ6A,6Bは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aに連なりかつビードコア5の廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含んでいる。各カーカスプライ6A,6Bの本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックスゴム8が配されている。
【0025】
ベルト層7は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のベルトプライ7A,7Bを含んでいる。ベルトプライ7A,7Bは、例えば、カーカス6側に配される内側ベルトプライ7Aと、内側ベルトプライ7Aのタイヤ半径方向外側に配される外側ベルトプライ7Bとから形成されている。
【0026】
外側ベルトプライ7Bのタイヤ軸方向の幅W5は、好ましくは、トレッド幅TWの60%以上である。また、タイヤ1の偏平比が55%以下の場合、外側ベルトプライ7Bのタイヤ軸方向の幅W5は、トレッド幅TWの70%以上であるのが好ましい。
【0027】
このような外側ベルトプライ7Bは、トレッド部2のショルダー領域Shの剛性を向上させることができ、ショルダー領域Shの接地圧を低減させることができる。このため、トレッド部2は、クラウン領域Crの接地圧とショルダー領域Shの接地圧との差を小さくすることができ、タイヤ1の偏摩耗を抑制することができる。
【0028】
各ベルトプライ7A,7Bは、ベルトコード(図示省略)が、タイヤ周方向に対して、好ましくは、10〜35度の角度で傾けて配列されている。本実施形態の内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bは、ベルトコードが互いに交差する向きに重ね合わされている。
【0029】
ベルトコードとしては、例えば、スチール、芳香族ポリアミド又はレーヨン等が好適に採用され得る。なお、本実施形態のベルト層7は、2枚のベルトプライ7A,7Bにより構成されているが、3枚以上のベルトプライで構成されてもよい。この場合、外側ベルトプライ7Bは、複数のベルトプライのうち、最もタイヤ半径方向外側に配されているものである。
【0030】
図2は、
図1のトレッド部2の展開図である。
図2に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝10と、主溝10により区分される複数の陸部11とが設けられている。
【0031】
本実施形態の主溝10は、タイヤ赤道C上に配される1本のクラウン主溝10Aと、クラウン主溝10Aとトレッド端2tとの間に配されるショルダー主溝10Bとを含んでいる。
【0032】
クラウン主溝10Aは、略一定の溝幅W1を有し、直線状にのびるのが望ましい。クラウン主溝10Aの溝幅W1は、好ましくは、トレッド幅TWの5%〜7%である。本実施形態のクラウン主溝10Aは、クラウン領域Crに設けられている。
【0033】
ショルダー主溝10Bは、略一定の溝幅W2を有し、直線状にのびるのが望ましい。ショルダー主溝10Bの溝幅W2は、好ましくは、トレッド幅TWの4%〜6%である。ショルダー主溝10Bの溝幅W2は、クラウン主溝10Aの溝幅W1よりも小さいのが望ましい。本実施形態のショルダー主溝10Bは、ミドル領域Miに設けられている。
【0034】
本実施形態の陸部11は、クラウン主溝10Aとショルダー主溝10Bとの間に区分されるミドル陸部11Aと、ショルダー主溝10Bとトレッド端2tとの間に区分されるショルダー陸部11Bとを含んでいる。
【0035】
ミドル陸部11Aのタイヤ軸方向の幅W3は、好ましくは、トレッド幅TWの10%〜20%である。ショルダー陸部11Bのタイヤ軸方向の幅W4は、好ましくは、トレッド幅TWの25%〜35%である。ショルダー陸部11Bの幅W4は、ミドル陸部11Aの幅W3よりも大きいのが望ましい。ショルダー陸部11Bの幅W4は、好ましくは、ミドル陸部11Aの幅W3の150%〜250%である。
【0036】
図3は、
図1のトレッド部2の輪郭12を示す拡大断面図である。
図3に示されるように、タイヤ子午線断面におけるトレッド部2の外表面2Aは、曲率半径が異なる複数の円弧からなる輪郭12を有している。本実施形態の輪郭12は、クラウン円弧12Aと、一対のミドル円弧12Bと、一対のショルダー円弧12Cとを含んで構成されている。このような輪郭12を有するトレッド部2は、ショルダー陸部11Bの接地圧を低減することができ、タイヤ1の偏摩耗を抑制することができる。
【0037】
本実施形態では、トレッド部2のクラウン領域Crの外表面2Aがクラウン円弧12Aにより形成され、ミドル領域Miの外表面2Aがミドル円弧12Bにより形成され、ショルダー領域Shの外表面2Aがショルダー円弧12Cにより形成されている。このため、トレッド部2のクラウン領域Cr、ミドル領域Mi、及び、ショルダー領域Shは、それぞれ、互いに異なる曲率半径を有する単一の円弧により、その輪郭12が形成されている。
【0038】
クラウン円弧12Aは、タイヤ赤道Cを跨って配されている。また、クラウン円弧12Aは、第1曲率半径TR1でタイヤ半径方向外側に凸となるように形成されている。
【0039】
各ミドル円弧12Bは、クラウン円弧12Aのタイヤ軸方向両側で、クラウン円弧12Aにそれぞれ連なっている。ミドル円弧12Bは、第2曲率半径TR2でタイヤ半径方向外側に凸となるように形成されている。本実施形態において、クラウン円弧12Aとミドル円弧12Bとが接続する第1接続部13aは、ミドル陸部11Aの外面上に設定される。
【0040】
各ショルダー円弧12Cは、ミドル円弧12Bのタイヤ軸方向の外側で、ミドル円弧12Bに連なっている。ショルダー円弧12Cは、第3曲率半径TR3でタイヤ半径方向外側に凸となるように形成されている。本実施形態において、ミドル円弧12Bとショルダー円弧12Cとが接続する第2接続部13bは、ショルダー陸部11Bの外面上に設定されている。
【0041】
本実施形態のトレッド部2の輪郭12は、第1曲率半径TR1、第2曲率半径TR2、及び、第3曲率半径TR3が、それぞれ異なるように設定されている。これにより、トレッド部2は、マルチラジアスの輪郭形状を有している。
【0042】
第1曲率半径TR1、第2曲率半径TR2、及び、第3曲率半径TR3は、以下の関係を満たすのが望ましい。
TR1>TR2>TR3
このようなクラウン円弧12A、ミドル円弧12B、及び、ショルダー円弧12Cは、それぞれを円滑に連結し、タイヤ1の偏摩耗を抑制することに役立つ。
【0043】
第2曲率半径TR2は、好ましくは、第1曲率半径TR1の45%〜60%である。第2曲率半径TR2が、第1曲率半径TR1の60%を超えると、ショルダー陸部11Bの接地圧が高くなり、ショルダー陸部11Bがミドル陸部11Aよりも早期に摩耗するおそれがある。第2曲率半径TR2が、第1曲率半径TR1の45%未満であると、ショルダー陸部11Bにおいて滑りが起こり、ショルダー陸部11Bのタイヤ周方向のヒールアンドトゥ摩耗が発生するおそれがある。このような観点より、第2曲率半径TR2は、より好ましくは、第1曲率半径TR1の50%〜55%である。
【0044】
第3曲率半径TR3は、好ましくは、第1曲率半径TR1の15%〜30%である。第3曲率半径TR3が、第1曲率半径TR1の30%を超えると、ショルダー陸部11Bの接地圧が高くなり、ショルダー陸部11Bがミドル陸部11Aよりも早期に摩耗するおそれがある。第3曲率半径TR3が、第1曲率半径TR1の15%未満であると、ショルダー陸部11Bにおいて滑りが起こり、ショルダー陸部11Bのタイヤ周方向のヒールアンドトゥ摩耗が発生するおそれがある。このような観点より、第3曲率半径TR3は、より好ましくは、20%〜25%以下である。
【0045】
本実施形態のクラウン円弧12Aとミドル円弧12Bとを接続する第1接続部13aは、ミドル陸部11Aに位置している。このような輪郭12を有するトレッド部2は、ミドル陸部11Aの接地圧とショルダー陸部11Bの接地圧とを適切な範囲に設定することができ、タイヤ1の偏摩耗を抑制し得る。
【0046】
第1接続部13aは、ミドル陸部11Aのタイヤ軸方向の中央からタイヤ軸方向に2mm以下の第1範囲14A内に位置するのが望ましい。すなわち、第1接続部13aとミドル陸部11Aのタイヤ軸方向の内端との距離L1は、ミドル陸部11Aの幅W3に対し、(0.5W3−2)〜(0.5W3+2)mmであるのが好ましい。このような第1接続部13aは、輪郭12を適切な形状にすることに役立ち、タイヤ1の偏摩耗を抑制し得る。
【0047】
本実施形態のミドル円弧12Bとショルダー円弧12Cとを接続する第2接続部13bは、ショルダー陸部11Bに位置している。このような輪郭12を有するトレッド部2は、ミドル陸部11Aの接地圧とショルダー陸部11Bの接地圧とを適切な範囲に設定することができ、タイヤ1の偏摩耗を抑制し得る。
【0048】
第2接続部13bは、ショルダー陸部11Bのタイヤ軸方向の内端からタイヤ軸方向外側に5〜10mmの第2範囲14B内に位置するのが望ましい。すなわち、第2接続部13bとショルダー陸部11Bのタイヤ軸方向の内端との距離L2は、5〜10mmであるのが好ましい。このような第2接続部13bは、輪郭12を適切な形状にすることに役立ち、タイヤ1の偏摩耗を抑制し得る。
【0049】
次に、
図1〜
図3を参照しつつ、正規リム(図示省略)にリム組みしかつ正規内圧に調整された正規状態のタイヤ1において、正規荷重の40%〜70%の荷重がキャンバー角0°で負荷されたときのトレッド部2の接地面形状15について説明される。この接地面形状15は、例えば、トレッド部2の輪郭12の形状及びゴムの材質等を変更することで、調整することができる。
【0050】
本実施形態の各荷重が負荷されたときの接地面形状15は、それぞれの荷重毎に、タイヤ軸方向の最大幅である最大接地幅Wmと、タイヤ軸方向の中央におけるタイヤ周方向長さであるクラウン接地長Lcと、タイヤ軸方向の最大接地幅Wmの80%位置におけるタイヤ周方向長さであるショルダー接地長Lsとを有している。また、各接地面形状15は、それぞれの荷重毎に、これらの比Lc/Wm及び比Lc/Lsを有している。以下の接地面形状15の各部の寸法は、正規状態のタイヤ1に正規荷重の40%〜70%の各荷重が負荷されたときの値である。
【0051】
なお、正規荷重の40%の荷重は、例えば、前輪駆動車の後輪に作用する荷重に近似するものである。また、正規荷重の70%の荷重は、例えば、前輪駆動車の前輪に作用する荷重に近似するものである。
【0052】
図4は、正規荷重の40%の荷重が負荷されたときのトレッド部2の接地面形状15Aである。
図4に示されるように、正規荷重の40%の荷重が負荷されたときのトレッド部2の接地面形状(以下、「40%接地面」という。)15Aは、例えば、全体として、略円形状である。
【0053】
40%接地面15Aのタイヤ軸方向の中央におけるクラウン接地長Lcと、タイヤ軸方向の最大接地幅Wmとの比Lc/Wmは、95%〜105%の範囲内であるのが望ましい。また、40%接地面15Aの最大接地幅Wmは、トレッド幅TWの70%〜85%であるのが望ましい。このような40%接地面15Aを有するトレッド部2は、前輪駆動車の後輪のように低負荷荷重時のタイヤ1の偏摩耗を抑制することができる。
【0054】
40%接地面15Aのクラウン接地長Lcと、最大接地幅Wmの80%位置(0.8Wm)におけるショルダー接地長Lsとの比Lc/Lsは、120%〜150%の範囲内であるのが望ましい。このような接地面形状15Aを有するタイヤ1は、低負荷荷重時のタイヤ軸方向及びタイヤ周方向の偏摩耗を、バランスよく抑制することができる。
【0055】
40%接地面15Aの比Lc/Lsが120%よりも小さいと、ショルダー陸部11Bの接地圧が高くなり、ショルダー陸部11Bがミドル陸部11Aよりも早期に摩耗するおそれがある。40%接地面15Aの比Lc/Lsが150%よりも大きいと、ショルダー陸部11Bにおいて滑りが起こり、ショルダー陸部11Bのタイヤ周方向のヒールアンドトゥ摩耗が発生するおそれがある。
【0056】
40%接地面15Aのショルダー陸部11Bの接地幅W7は、好ましくは、ミドル陸部11Aの接地幅W6の130%〜140%である。このような40%接地面15Aは、低負荷荷重時のミドル陸部11Aの接地圧とショルダー陸部11Bの接地圧とを適切な範囲に設定することができ、タイヤ1の偏摩耗を抑制するとともに、操縦安定性能の低下を抑制し得る。
【0057】
図5は、正規荷重の70%の荷重が負荷されたときのトレッド部2の接地面形状15Bである。
図5に示されるように、正規荷重の70%の荷重が負荷されたときのトレッド部2の接地面形状(以下、「70%接地面」という。)15Bは、例えば、全体として、タイヤ周方向に長い略長円形状である。
【0058】
70%接地面15Bのタイヤ軸方向の中央におけるクラウン接地長Lcと、タイヤ軸方向の最大接地幅Wmとの比Lc/Wmは、105%〜115%の範囲内であるのが望ましい。また、70%接地面15Bの最大接地幅Wmは、トレッド幅TWの80%〜95%であるのが望ましい。このような70%接地面15Bを有するトレッド部2は、前輪駆動車の前輪のように高負荷荷重時のタイヤ1の偏摩耗を抑制することができる。
【0059】
70%接地面15Bのクラウン接地長Lcと、最大接地幅Wmの80%位置(0.8Wm)におけるショルダー接地長Lsとの比Lc/Lsは、40%接地面15Aと同じく、120%〜150%の範囲内であるのが望ましい。このような接地面形状15Bを有するタイヤ1は、高負荷荷重時のタイヤ軸方向及びタイヤ周方向の偏摩耗を、バランスよく抑制することができる。
【0060】
70%接地面15Bの比Lc/Lsが120%よりも小さいと、ショルダー陸部11Bの接地圧が高くなり、ショルダー陸部11Bがミドル陸部11Aよりも早期に摩耗するおそれがある。70%接地面15Bの比Lc/Lsが150%よりも大きいと、ショルダー陸部11Bにおいて滑りが起こり、ショルダー陸部11Bのタイヤ周方向のヒールアンドトゥ摩耗が発生するおそれがある。
【0061】
70%接地面15Bのショルダー陸部11Bの接地幅W9は、好ましくは、ミドル陸部11Aの接地幅W8の150%〜160%である。このような70%接地面15Bは、高負荷荷重時のミドル陸部11Aの接地圧とショルダー陸部11Bの接地圧とを適切な範囲に設定することができ、タイヤ1の偏摩耗を抑制するとともに、操縦安定性能の低下を抑制し得る。
【0062】
図4及び
図5に示されるように、上述の接地面形状15では、40%接地面15A及び70%接地面15Bの比Lc/Lsが例示された。荷重は、上述の例に限定されることなく、正規荷重の40%〜70%の範囲内の荷重が採用され得る。そして、その荷重が負荷されたときのクラウン接地長Lcとショルダー接地長Lsとの比Lc/Lsは、120%〜150%の範囲内であるのが望ましい。
【0063】
40%接地面15Aの比Lc/Lsは、好ましくは、70%接地面15Bの比Lc/Lsの125%以下である。このような接地面形状15を有するトレッド部2は、低負荷荷重時と高負荷荷重時との比Lc/Lsの変化が小さく、負荷される荷重によらずタイヤ1の偏摩耗を適切に抑制し得る。
【0064】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0065】
図2のトレッドパターンを有するタイヤが、表1の仕様に基づいて試作された。これら試作タイヤがテスト車両の全輪に装着され、耐偏摩耗性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0066】
使用車両:国産中型乗用車(前輪駆動車)
タイヤサイズ:195/65R15
リムサイズ:15×6.0J
内圧:230kPa
【0067】
<耐偏摩耗性能>
供試タイヤを全輪に装着したテスト車両で、15000kmを走行し、その後のミドル陸部のタイヤ軸方向の内端の摩耗量(以下、「Cr摩耗量」という。)とショルダー陸部のトレッド幅の80%の位置での摩耗量(以下、「Sh摩耗量」という。)とが測定された。結果は、Sh摩耗量/Cr摩耗量の比で表示され、数値が100%に近いほど耐偏摩耗性能に優れていることを示す。
【0068】
テストの結果が表1に示される。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に対して、耐偏摩耗性能に優れており、偏摩耗を抑制していることが確認できた。