特許第6879116号(P6879116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879116
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】電極用切断装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20210524BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20210524BHJP
   B26F 1/38 20060101ALI20210524BHJP
   B26F 1/44 20060101ALI20210524BHJP
   B26D 5/32 20060101ALI20210524BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20210524BHJP
   H01M 4/139 20100101ALN20210524BHJP
   B26D 5/34 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
   H01M4/04 Z
   H01M4/04 A
   H01G13/00 381
   B26F1/38 A
   B26F1/44 B
   B26F1/44 J
   B26F1/44 H
   B26D5/32
   B26D7/06 Z
   !H01M4/139
   !B26D5/34 B
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-156438(P2017-156438)
(22)【出願日】2017年8月14日
(65)【公開番号】特開2019-36458(P2019-36458A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真也
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】村田 卓也
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−132019(JP,A)
【文献】 特開2012−206213(JP,A)
【文献】 特開2009−066676(JP,A)
【文献】 特開2002−373649(JP,A)
【文献】 特開2002−110146(JP,A)
【文献】 特開2014−078448(JP,A)
【文献】 特開2002−075334(JP,A)
【文献】 特開2016−028840(JP,A)
【文献】 特開2017−131999(JP,A)
【文献】 特開2017−024119(JP,A)
【文献】 特開2017−123321(JP,A)
【文献】 特開2014−113660(JP,A)
【文献】 特開平05−008199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04−4/62
B26F 1/00−3/16
B26D 5/00−5/42
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺金属箔と、間欠塗工によって前記長尺金属箔の長手方向に間隔を空けて形成された活物質合剤の塗工部と、前記長手方向に隣り合う前記塗工部の間に位置し、前記長尺金属箔の露出した露出部と、を備える電極材料を搬送しながら切断して、前記長尺金属箔から形成される金属箔と、前記塗工部から形成される活物質層と、前記露出部から形成される未塗工部と、を有する電極を製造する電極用切断装置であって、
搬送される前記電極材料を厚み方向から挟持する第1ニップローラ、及び前記電極材料の搬送方向における前記第1ニップローラの下流側に配置された第2ニップローラを有し、前記第1ニップローラ及び前記第2ニップローラを回転駆動し、前記電極材料を搬送するニップ部と、
前記搬送方向における前記第1ニップローラと前記第2ニップローラの間に配置されたロータリーダイカッタであり、前記電極材料を支持し、かつ前記露出部を嵩上げする嵩上げ部材を備えるアンビルローラ、及び前記電極材料を前記電極の形状に切断する刃型を備えるダイローラを有し、前記ダイローラ及び前記アンビルローラは、前記電極材料を挟持しない隙間領域を、周方向の一部に備えるロータリーダイカッタと、
前記搬送方向に沿う前記露出部の寸法を検出する検出部と、
前記検出部によって前記露出部の寸法が規格外であると検出された場合、前記隙間領域に前記電極材料があるときに、前記ロータリーダイカッタの回転と、前記電極材料の搬送との相対速度を変更する制御部と、を備えることを特徴とする電極用切断装置。
【請求項2】
前記ダイローラの周面はクッション材によって構成され、前記クッション材は、前記アンビルローラの周面との間で圧縮されて弾性変形し、前記刃型を突出させる請求項1に記載の電極用切断装置。
【請求項3】
前記アンビルローラ及び前記ダイローラは可変速で回転し、前記制御部は、一定速で搬送される前記電極材料の搬送速度に対し、前記ダイローラ及び前記アンビルローラの回転速度を調節して前記相対速度を変更する請求項1又は請求項2に記載の電極用切断装置。
【請求項4】
前記第1ニップローラ及び前記第2ニップローラは可変速で回転し、前記制御部は、一定速で回転する前記アンビルローラ及び前記ダイローラの回転速度に対し、前記第1ニップローラ及び前記第2ニップローラの回転速度を調節し、前記電極材料の搬送速度を調節して前記相対速度を変更する請求項1又は請求項2に記載の電極用切断装置。
【請求項5】
前記電極材料の送り出し速度を調節するダンサーローラを前記搬送方向における前記第1ニップローラの上流側に備える請求項4に記載の電極用切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を製造するための電極用切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)などの車両に搭載される蓄電装置としては、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素二次電池などがある。例えばリチウムイオン二次電池では、金属箔の表面に活物質層を有するとともに、金属箔の一辺に沿って活物質層の存在しない未塗工部を有する電極(正極及び負極)が間にセパレータを介在させた状態で層状に重なる電極組立体を有している。電極組立体には、個片状の電極を多数積層して形成される積層型が知られており、このような電極組立体を備えた積層型の蓄電装置も知られている。
【0003】
積層型の蓄電装置に用いる電極の製造方法の一例は、例えば、特許文献1に開示されるように、活物質、導電助剤、バインダ、及び溶媒を混練した活物質合剤を長尺金属箔の長手方向に連続塗工して長尺帯状の塗工部を形成する塗工工程を有する。この塗工工程では、長尺金属箔の一方の長縁部には活物質合剤を塗布せず、長尺金属箔を露出させたままの露出部を形成する。
【0004】
また、電極の製造方法は、上記塗工工程に付随し、塗工部を加熱して溶媒を蒸発させるとともにバインダを硬化させる乾燥工程を有する。さらに、電極の製造方法は、ロールプレスにより塗工部における活物質の密度を高める加圧工程と、電極材料を切断して、電極材料から電極を切り出す切断工程を有する。切断工程では、塗工部が切断されて電極における金属箔及び活物質層が形成されるとともに、露出部が切断されて電極における未塗工部が形成される。
【0005】
ところで、特許文献1のように、連続塗工によって形成された塗工部をロールプレスすると、塗工部には大きな荷重が加わり、これにより、特に長手方向に延びが発生する。一方、厚みの違いにより、露出部には、ほとんどロールプレスによる荷重が作用せず、延びることもない。このように、ロールプレス後、塗工部と露出部の延びの差により、露出部に皺が生じてしまう。得られる電極においては未塗工部に皺が形成されてしまい好ましくない。
【0006】
そこで、露出部に皺が生じることを抑制するため、活物質合剤を長尺金属箔の長手方向に間欠塗工することが提案されている。例えば、特許文献2に開示されるように、間欠塗工は、長尺金属箔の長手方向に間隔を空けて塗工部を形成し、長手方向に隣り合う塗工部間に露出部が形成される。そして、間欠塗工によって形成された電極材料においては、ロールプレスの際、塗工部間の露出部にも荷重が加わるが、露出部には塗工部が無く、長尺金属箔の長手方向及び短手方向への延びの差が小さいため、塗工部間の露出部に皺が生じることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−75334号公報
【特許文献2】特許第6030311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、間欠塗工においては、長尺金属箔の搬送速度のばらつきや、塗工装置からの活物質合剤の塗工タイミングのずれを原因として、塗工部の位置が、予め決められた位置から長尺金属箔の長手方向にずれることがある。また、電極材料の切断を行う装置としては、生産性向上のために連続的に電極材料を切断できるロータリーダイカッタが採用されている。しかし、ロータリーダイカッタにおいては、搬送される電極材料に対し刃型が等間隔おきに移動してくるため、塗工部の位置が予め決められた位置からずれていると、得られる電極において活物質層や未塗工部の寸法がずれてしまい、不良品が製造されてしまう。
【0009】
本発明の目的は、電極の未塗工部に皺が発生することを抑制し、規格外の電極が製造されることを抑制できる電極用切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するための電極用切断装置は、長尺金属箔と、間欠塗工によって前記長尺金属箔の長手方向に間隔を空けて形成された活物質合剤の塗工部と、前記長手方向に隣り合う前記塗工部の間に位置し、前記長尺金属箔の露出した露出部と、を備える電極材料を搬送しながら切断して、前記長尺金属箔から形成される金属箔と、前記塗工部から形成される活物質層と、前記露出部から形成される未塗工部と、を有する電極を製造する電極用切断装置であって、搬送される前記電極材料を厚み方向から挟持する第1ニップローラ、及び前記電極材料の搬送方向における前記第1ニップローラの下流側に配置された第2ニップローラを有し、前記第1ニップローラ及び前記第2ニップローラを回転駆動し、前記電極材料を搬送するニップ部と、前記搬送方向における前記第1ニップローラと前記第2ニップローラの間に配置されたロータリーダイカッタであり、前記電極材料を支持し、かつ前記露出部を嵩上げする嵩上げ部材を備えるアンビルローラ、及び前記電極材料を前記電極の形状に切断する刃型を備えるダイローラを有し、前記ダイローラ及び前記アンビルローラは、前記電極材料を挟持しない隙間領域を、周方向の一部に備えるロータリーダイカッタと、前記搬送方向に沿う前記露出部の寸法を検出する検出部と、前記検出部によって前記露出部の寸法が規格外であると検出された場合、前記隙間領域に前記電極材料があるときに、前記ロータリーダイカッタの回転と、前記電極材料の搬送との相対速度を変更する制御部と、を備えることを要旨とする。
【0011】
これによれば、間欠塗工によって塗工部が形成された電極材料において、塗工部をロールプレスした際、塗工部間に位置する露出部にも荷重が加わり、荷重に起因して長尺金属箔の長手方向に延びが生じ、塗工部が存在する場合のような延びの差が生じず、露出部には皺が発生しにくい。このため、電極材料を切断して電極を製造した際、露出部から形成される未塗工部に皺が入ることを抑制できる。間欠塗工においては、塗工部の位置が長尺金属箔の長手方向にずれることがあり、露出部の寸法が規格から外れることがある。
【0012】
電極用切断装置によれば、検出部によって、塗工部の位置がずれ、露出部の寸法が規格外であることが検出された場合、制御部は、隙間領域に電極材料があるときに、ロータリーダイカッタの回転と電極材料の搬送との相対速度を変更して、電極材料の切断位置が所望する位置になるようにする。隙間領域に電極材料があるときは、ダイローラとアンビルローラによる電極材料の挟持が無いため、相対速度の変更を電極材料に影響を及ぼすこと無く行うことができる。したがって、塗工部の位置がずれた電極材料をロータリーダイカッタで切断する際、切断位置を微調整して規格外の電極が製造されることを抑制できる。
【0013】
また、電極用切断装置について、前記ダイローラの周面はクッション材によって構成され、前記クッション材は、前記アンビルローラの周面との間で圧縮されて弾性変形し、前記刃型を突出させる。
【0014】
これによれば、ロータリーダイカッタにおいて、刃型が電極材料に接近していくに従いクッション材は徐々に圧縮される。そして、電極材料が切断された後、アンビルローラに向けて働くクッション材の弾性力により、電極材料から個片の電極が切り離されやすくなる。
【0015】
また、電極用切断装置について、前記アンビルローラ及び前記ダイローラは可変速で回転し、前記制御部は、一定速で搬送される前記電極材料の搬送速度に対し、前記ダイローラ及び前記アンビルローラの回転速度を調節して前記相対速度を変更してもよい。
【0016】
これによれば、ダイローラとアンビルローラの駆動を制御するだけでよく、相対速度の変更が行いやすい。
また、電極用切断装置について、前記第1ニップローラ及び前記第2ニップローラは可変速で回転し、前記制御部は、一定速で回転する前記アンビルローラ及び前記ダイローラの回転速度に対し、前記第1ニップローラ及び前記第2ニップローラの回転速度を調節し、前記電極材料の搬送速度を調節して前記相対速度を変更してもよい。
【0017】
これによれば、第1ニップローラ及び第2ニップローラは電極材料を直接挟持するため、電極材料の搬送速度の調節が行いやすい。
また、電極用切断装置について、前記電極材料の送り出し速度を調節するダンサーローラを前記搬送方向における前記第1ニップローラの上流側に備えていてもよい。
【0018】
これによれば、ニップ部によって電極材料の搬送速度を減速する場合は、ダンサーローラを移動させることで電極材料に生じる弛みを吸収できる。一方、ニップ部によって電極材料の搬送速度を増速する場合、ダンサーローラを移動させることで、電極材の増速に対応することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電極の未塗工部に皺が発生することを抑制し、規格外の電極が製造されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電極を示す斜視図。
図2】第1の実施形態の電極用切断装置を模式的に示す図。
図3】電極用切断装置の電気的接続を示す図。
図4】ロータリーダイカッタを示す斜視図。
図5】ロータリーダイカッタを示す側面図。
図6】電極用切断装置を示す平面図。
図7】電極材料を示す平面図。
図8】(a)は露出部を切断する状態を示す側面図、(b)は離間領域でのロータリーダイカッタを示す側面図。
図9】第2の実施形態の電極用切断装置を模式的に示す図。
図10】電極の切断の仕方の別例を示す平面図。
図11】電極の切断の仕方の別例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、電極用切断装置を具体化した第1の実施形態を図1図8にしたがって説明する。
【0022】
まず、電極を備える蓄電装置としての二次電池について説明する。図示しないが、二次電池は外観が角型をなす角型電池である。二次電池は、リチウムイオン二次電池である。二次電池は、ケース内に電極組立体を備える。電極組立体は、複数の正極の電極と、複数の負極の電極とが、両者の間を絶縁した状態で交互に積層されて構成されている。
【0023】
図1に示すように、正極及び負極の電極10は、それぞれ矩形状である。電極10は、矩形状の金属箔(正極はアルミニウム箔、負極は銅箔)11の両面に活物質層12を備える。電極10は、金属箔11の一つの長縁部11bに沿って未塗工部11aを備える。未塗工部11aは、活物質層12が存在せず、金属箔11が露出した部分である。未塗工部11aは、金属箔11における長縁部11bの一部から突出した形状のタブ13を含む。
【0024】
次に、電極10の製造方法について説明する。
電極の製造方法は、帯状の長尺金属箔の表面に、活物質、導電助剤、バインダ、及び溶媒を混練した活物質合剤を間欠塗工して塗工部を形成し、電極材料を形成する塗工工程、及び塗工工程に付随し、塗工部を加熱して、活物質合剤に含まれる溶媒を蒸発させるとともにバインダを硬化させる乾燥工程を含む。塗工工程では、長尺金属箔の両面に塗工部が間隔を空けて形成される。さらに、電極の製造方法は、ロールプレスにより塗工部を圧縮し、活物質密度を高める加圧工程と、電極材料を個片の電極の形状に切断する切断工程と、を含む。そして、切断工程で電極材料から電極が切り出される。
【0025】
次に、電極材料17について詳細に説明する。
図2の拡大図、又は図4に示すように、電極材料17は、長尺金属箔18と、長尺金属箔18の両面に存在する複数の塗工部19を備える。長尺金属箔18は、電極10の金属箔11となる部位である。また、塗工部19は、電極10の活物質層12となる部位である。塗工部19は、長尺金属箔18の長手方向に間隔を空けて形成されている。
【0026】
電極材料17において、塗工部19の面に沿い、かつ電極材料17の長手方向に直交する方向を短手方向とする。短手方向に沿う塗工部19の寸法は、電極10における長縁部11bの寸法の2倍以上である。また、電極材料17の長手方向に沿う塗工部19の寸法は、電極10における活物質層12の短手方向への長さより若干長い。本実施形態では、一つの塗工部19からは、電極材料17の長手方向に1枚、電極材料17の短手方向に2枚の電極10の活物質層12を切り出すことができる。
【0027】
電極材料17は、長手方向に沿う両方の長縁部に沿って第1露出部18aを備える。また、電極材料17は、長手方向に隣り合う塗工部19同士の間に第2露出部18bを備える。第1露出部18a及び第2露出部18bは、長尺金属箔18において各塗工部19によって覆われていない部位であり、長尺金属箔18が露出した部分である。そして、第1露出部18aは、電極10には使用されず、端材となる部位であり、第2露出部18bは、未塗工部11a及びタブ13となる部位である。
【0028】
長尺金属箔18に対し活物質合剤を塗工するタイミングは予め決定されている。このため、電極材料17の長手方向への第2露出部18bの寸法Nは、予め設定された規格内に形成される。しかし、長尺金属箔18の搬送速度のばらつきや、塗工装置からの活物質合剤の塗工タイミングのずれを原因として第2露出部18bの寸法Nが規格外となる場合がある。
【0029】
第2露出部18bの寸法Nが規格より長くなった場合は、塗工直後の塗工部19は、一つ前に形成された塗工部19からの離間距離が長くなる。このような電極材料17を後述のロータリーダイカッタ40によって切断する場合、ロータリーダイカッタ40においては、搬送される電極材料17に対し刃型が等間隔おきに移動してくる。このため、塗工直後の塗工部19から形成される電極10においては、タブ13の突出方向に沿った未塗工部11aの寸法が規格より短くなり、活物質層12の寸法が規格より長くなって不良品となる。
【0030】
一方、第2露出部18bの寸法Nが規格より短くなった場合は、塗工直後の塗工部19は、一つ前に形成された塗工部19からの離間距離が短くなる。よって、塗工直後の塗工部19をロータリーダイカッタ40によって切断して形成される電極10においては、タブ13の突出方向に沿った未塗工部11aの寸法が規格より長くなり、活物質層12の寸法が規格より短くなって不良品となる。上記不良品の発生を抑制するため、電極用切断装置20によって後述の制御が行われる。
【0031】
また、上記構成の電極材料17において、ロールプレスによって行われる加圧工程では、プレスロールは電極材料17の短手方向全体に亘って線接触する。ところで、塗工部19と、第1露出部18a及び第2露出部18bとの厚みには差がある。リチウムイオン二次電池用の電極にて一例を挙げると、例えば、露出部(金属箔)の厚みが10〜20μm、塗工部の厚みが100μm程度など、厚みが数倍〜十倍程度異なる。電極の種類により、この厚みの差は異なるが、一般に塗工部の方が露出部より倍以上厚い。
【0032】
そして、ロールプレスにより加わる荷重により、塗工部19では密度が高まるとともに、延びが生じる。この延びは、電極材料17の長手方向に大きく生じることが知られている。第1露出部18aは、長尺金属箔18の短手方向において、塗工部19に隣接するため、その厚みの差により、第1露出部18aには荷重が加わらない。従って、第1露出部18aには、荷重に起因する延びも生じない。
【0033】
一方で、第2露出部18bには荷重が加わる。この荷重に起因する第2露出部18bの延びは、塗工部19同様に、長尺金属箔18の長手方向に大きく、短手方向における塗工部19との延びの差は小さい。このため、長尺金属箔18の短手方向における塗工部19との延びの差、すなわち、塗工部19の有無による延びの差により、第1露出部18aには皺が生じ、大きくなりやすいが、第2露出部18bにおいては、皺の発生が抑制される。
【0034】
よって、皺の発生が抑制された第2露出部18bから未塗工部11a及びタブ13が形成されるため、未塗工部11a及びタブ13には皺が形成されにくい。上記乾燥工程を含む塗工工程及び加圧工程を経た電極材料17は、巻取リールに巻き取られ、巻取リールから巻き出された電極材料17に対し、切断工程が行われ、電極10が切り出される。
【0035】
次に、切断工程を行う電極用切断装置20について説明する。電極用切断装置20は、巻取リールに巻き取られた電極材料17を巻き出し、巻き出された電極材料17を切断して電極10を切り出す装置である。
【0036】
図2に示すように、電極用切断装置20は、電極材料17を送り出す送出装置22を備える。送出装置22には、電極材料17を巻き取った巻取リール23が回転可能に支持される。なお、巻取リール23には、電極材料17がテンションを加えてロール状に巻き取られ、巻回状態にある。送出装置22は、電極材料17を巻取リール23から一定速度で送り出し、送り出された電極材料17は一定の搬送速度で搬送方向D1に搬送される。
【0037】
巻取リール23から送り出された電極材料17は、第1のガイドローラ26aによって、下に向けて搬送されるように向きが変更される。電極用切断装置20は、第1のガイドローラ26aより下方に配置されたダンサーローラ30を備える。ダンサーローラ30に向けてガイドされた電極材料17は、ダンサーローラ30に巻き掛けられ、上に向けて搬送されるように向きが変更され、さらに、第2のガイドローラ26bによって、斜め上方向に搬送されるように向きが変更される。ダンサーローラ30は、上下動し、後述する電極材料17の搬送速度の変更に対し、バッファとして作用する。
【0038】
ダンサーローラ30を下方より上方に移動させることで、ダンサーローラ30より下流側において、一時的に、巻取リール23の送り出し速度以上で電極材料17を送り出すことができる。また、ダンサーローラ30を上方より下方に移動させることで、ダンサーローラ30より下流側において、電極材料17を送り出す速度を一時的に遅くすることができる。第1のガイドローラ26aからダンサーローラ30を介して第2のガイドローラ26bに至るまでを、電極材料17の速度調節領域Cとする。
【0039】
電極用切断装置20は、搬送方向D1における第2のガイドローラ26bより下流側に一対の第1ニップローラ28を備える。第2のガイドローラ26bによって向きの変更された電極材料17は、第1ニップローラ28によって挟持された状態で搬送される。図3に示すように、第1ニップローラ28は、第1ニップ用モータM1によって駆動され、可変速で回転する。第1ニップ用モータM1の回転速度を速くすることで、第1ニップローラ28による電極材料17の搬送速度が速くなり、単位時間当たりの電極材料17の送り量が多くなる。一方、第1ニップ用モータM1の回転速度を遅くすることで、第1ニップローラ28による電極材料17の搬送速度が遅くなり、単位時間当たりの電極材料17の送り量が少なくなる。
【0040】
図2に示すように、電極用切断装置20は、搬送方向D1における第1ニップローラ28より下流側に、切断工程を行うロータリーダイカッタ40を備える。また、電極用切断装置20は、搬送方向D1における第1ニップローラ28とロータリーダイカッタ40の間にテンションローラ29を備える。テンションローラ29は、ロータリーダイカッタ40を通過する前の電極材料17に張力を与える。
【0041】
図4に示すように、ロータリーダイカッタ40は、ダイローラ41と、アンビルローラ51とを備える。ダイローラ41の軸心、及び、アンビルローラ51の軸心は、電極材料17の短手方向に沿って延び、かつ互いに平行である。ダイローラ41及びアンビルローラ51は、外周が等速で回転できるようにダイカッタ用モータ48(図3参照)と変速機等を介して連結されている。本実施形態では、ダイローラ41とアンビルローラ51とは、各々一定速で回転する。
【0042】
ダイローラ41は、円柱状のローラ本体42と、ローラ本体42の径方向外側に突出する形状の刃型43と、ローラ本体42の周面に装着されたクッション材46と、を備える。刃型43は、ローラ本体42の周方向に等間隔おきに2つ配置されている。ローラ本体42が回転することで刃型43が移動する。刃型43は、電極10の外形線に合わせた閉環状である。刃型43は、ローラ本体42の軸心の延びる方向に2つの電極10を切断できる形状である。
【0043】
図6に示すように、刃型43は、電極10の外形線のうち、未塗工部11a(タブ13を含む)の外形線に沿う形状の未塗工部用刃部44を備える。未塗工部用刃部44は、電極材料17の短手方向に直線状に延びる長辺用刃部44aと、長辺用刃部44aの両端から延びる短辺用刃部44bと、長辺用刃部44aから突出した一対のタブ用刃部44cとを有する。
【0044】
また、刃型43は、電極10の外形線のうち、活物質層12の外形線に沿う形状の活物質用刃部45を備える。活物質用刃部45は、未塗工部用刃部44の長辺用刃部44aと平行な長辺用刃部45aと、長辺用刃部45aの両端から延びる短辺用刃部45bとを有する。未塗工部用刃部44の短辺用刃部44bと、活物質用刃部45の短辺用刃部45bは一繋がりである。
【0045】
図4又は図5に示すように、クッション材46は、例えば、スポンジ製である。クッション材46は、ローラ本体42の周面のうち、刃型43を除く全ての面を覆う状態に装着されている。刃型43の刃先は、クッション材46が圧縮されていない状態では、クッション材46の内側に埋没している。また、クッション材46は、ダイローラ41とアンビルローラ51の間で圧縮されて弾性変形し、クッション材46の外周面から刃型43を突出させる。
【0046】
ダイローラ41は、ローラ本体42の周方向の一部に隙間領域42aを備える。隙間領域42aは、ダイローラ41を軸心の延びる方向に見たとき、刃型43の存在しないローラ本体42の周面によって形成されている。また、クッション材46も、隙間領域42aには配置されていない。隙間領域42aは、ダイローラ41の周方向に2箇所存在し、2つの隙間領域42aは、ダイローラ41の径方向に対向した位置にある。すなわち、隙間領域42aは、ダイローラ41の周方向に対向したクッション材46同士の間にあり、クッション材46によって区画されている。
【0047】
刃型43がアンビルローラ51に最も接近した場所に近付くに従い、クッション材46は徐々に圧縮されて弾性変形していき、刃型43がアンビルローラ51に最も接近した場所でクッション材46は最も圧縮される。このとき、刃型43はクッション材46の表面から最も突出する状態である。
【0048】
アンビルローラ51は、円柱状のローラ本体52と、ローラ本体52の周面に一体化された複数の嵩上げ部材53と、を備える。嵩上げ部材53は、ローラ本体52の周方向へ等間隔おきに複数配置されている。嵩上げ部材53は、電極材料17において、塗工部19に対し、厚みの異なる第2露出部18bの高さ位置をダイローラ41側に近付けるものである。嵩上げ部材53は、硬質ゴム製であり、ローラ本体52の軸心の延びる方向全体に亘って設けられている。各嵩上げ部材53の周面は、ローラ本体52の径方向に沿って該ローラ本体52の周面よりも突出した位置にある。ローラ本体52の周方向への嵩上げ部材53の寸法は、ダイローラ41の周方向への未塗工部用刃部44の寸法Mと同じである。また、嵩上げ部材53の厚みは、塗工部19の厚みとほぼ同じである。
【0049】
図8(a)に示すように、刃型43の未塗工部用刃部44がアンビルローラ51に最も接近した場所では、第2露出部18bは嵩上げ部材53によって嵩上げされ、未塗工部用刃部44は第2露出部18bを切断し、嵩上げ部材53に届く。すると、未塗工部用刃部44によって第2露出部18bが切断される。このとき、嵩上げ部材53は厚み方向に圧縮されるように若干弾性変形する。
【0050】
また、未塗工部用刃部44がアンビルローラ51に最も接近した場所では、未塗工部用刃部44と嵩上げ部材53が対向した状態が継続される。その後、未塗工部用刃部44がアンビルローラ51に最も接近した場所から離れると、図8(b)に示すように、未塗工部用刃部44と嵩上げ部材53が対向した状態が解除される。
【0051】
アンビルローラ51は、ローラ本体52の周方向の一部に隙間領域52aを備える。隙間領域52aは、アンビルローラ51を軸心の延びる方向に見たとき、嵩上げ部材53の存在しないローラ本体52の周面によって形成されている。隙間領域52aは、アンビルローラ51の周方向に対向した嵩上げ部材53同士の間にあり、嵩上げ部材53によって区画されている。アンビルローラ51の周方向に沿った隙間領域52aの寸法は、嵩上げ部材53に未塗工部用刃部44が支持されるように設定されている。
【0052】
また、塗工部19に対し、活物質用刃部45が押し付けられると、活物質用刃部45は電極材料17の厚み方向中央の長尺金属箔18を切断し、下側の塗工部19の厚みの半ばまで切断する。下側の塗工部19は、ある程度、活物質用刃部45が食い込むと、その部位を起点として割れ、その結果、活物質用刃部45により塗工部19が切断される。なお、塗工部19は、嵩上げ部材53によって嵩上げされない。そして、電極材料17が搬送方向D1に搬送されながらダイローラ41が回転することにより、刃型43によって電極材料17が搬送方向D1に沿って徐々に切断されていき、電極材料17から個片の電極10が切り出される。
【0053】
ロータリーダイカッタ40において、電極材料17の第2露出部18bが未塗工部用刃部44によって切断された後、ダイローラ41の隙間領域42aと、アンビルローラ51の隙間領域52aとが対向する離間領域Rが発生する。図8(b)に示すように、離間領域Rでは、電極材料17を挟んでダイローラ41の隙間領域42aとアンビルローラ51の隙間領域52aが対向するため、刃型43と、ローラ本体52の周面又は嵩上げ部材53とが対向せず、電極材料17はダイローラ41とアンビルローラ51に挟持されない。そして、離間領域Rが発生した期間を離間期間とする。なお、図6に示すように、離間領域Rは、第2露出部18bのうち、電極材料17の長手方向におけるタブ13の突出端と塗工部19の長縁との間の領域に対応する。
【0054】
図2に示すように、電極用切断装置20は、搬送方向D1におけるロータリーダイカッタ40より下流側に案内板60を備える。案内板60は、電極材料17から切断された電極10を搬送方向D1へ案内する一方で、電極10として切り出される部分とは異なる部分である端材54を、搬送方向D1とは異なる搬送方向D2へ案内する。
【0055】
端材54は、電極材料17のうち、短手方向における電極10よりも外側に位置した部分と、それらを短手方向に繋ぐ部分から形成され、梯子状である。電極用切断装置20は、搬送方向D1におけるロータリーダイカッタ40より下流側にエアノズル62を備える。エアノズル62は、電極10と端材54を分離するために電極10の下方からエアを噴射する。
【0056】
電極用切断装置20は、搬送方向D1におけるロータリーダイカッタ40より下流側に円柱状のガイドローラ64と、一対の第2ニップローラ65と、を備える。ガイドローラ64の軸心は、電極材料17の短手方向に沿って延びる。ガイドローラ64は、軸心まわりで回転できるように図示しない駆動装置に支持されている。ガイドローラ64によって向きの変更された端材54は、第2ニップローラ65によって挟持された状態で搬送される。
【0057】
図3に示すように、第2ニップローラ65は、第2ニップ用モータM2によって駆動され、可変速で回転する。第2ニップ用モータM2の回転速度を速くすることで、第2ニップローラ65による電極材料17の搬送速度が速くなり、単位時間当たりの電極材料17の送り量が多くなる。一方、第2ニップ用モータM2の回転速度を遅くすることで、第2ニップローラ65による電極材料17の搬送速度が遅くなり、単位時間当たりの電極材料17の送り量が少なくなる。
【0058】
第1ニップローラ28の第1ニップ用モータM1と、第2ニップローラ65の第2ニップ用モータM2とは同期して駆動され、第1ニップローラ28と第2ニップローラ65は同じ速度で回転する。このため、第1ニップ用モータM1及び第2ニップ用モータM2を同期して制御することで、第1ニップローラ28と第2ニップローラ65によって電極材料17の送り量を調節できる。その結果として、第1ニップローラ28及び第2ニップローラ65により電極材料17の搬送速度を調節でき、第1ニップローラ28と第2ニップローラ65は、電極用切断装置20におけるニップ部66を構成している。
【0059】
そして、図2に示すように、ガイドローラ64は、電極10が分離された端材54を搬送方向D2へ案内する。また、ガイドローラ64は、搬送方向D2へ案内された端材54に張力を働かせている。第2ニップローラ65は、搬送方向D2へ案内された端材54を挟持しながら引っ張る。
【0060】
電極用切断装置20は、第2露出部18bの寸法Nを検出する検出部70を備える。検出部70は、カラーセンサである。検出部70は、搬送方向D1における巻取リール23より下流側で、かつ第1のガイドローラ26aより上流側に配置されている。また、検出部70は、巻取リール23から送り出された電極材料17の上方に配置されている。検出部70は、塗工部19を検出することで第2露出部18bの寸法Nを検出する。
【0061】
図3に示すように、電極用切断装置20は、制御部71を備える。制御部71には検出部70が信号接続されている。また、制御部71には、上述の第1ニップ用モータM1、第2ニップ用モータM2、ダイカッタ用モータ48、及びダンサーローラ30が信号接続されている。
【0062】
検出部70は検出した寸法Nの信号を制御部71に出力する。制御部71は、入力された寸法Nが、規格内にあるか否かを判定する。制御部71は、寸法Nが規格外であると判定した場合は、第1ニップ用モータM1及び第2ニップ用モータM2の駆動を制御する。
【0063】
次に、電極用切断装置20の作用を制御部71による制御とともに説明する。
図2に示すように、送出装置22により、巻取リール23から電極材料17が送り出され、電極材料17は一定の搬送速度(一定速)で搬送方向D1に搬送される。検出部70は、塗工部19の位置を検出し、第2露出部18bの寸法Nを検出する。制御部71は、寸法Nが規格外であると判定した場合、以下の制御を行う。
【0064】
図7の2点鎖線に示すように、寸法Nが規格より短い場合、その規格外の第2露出部18bより一つ前の塗工部19がロータリーダイカッタ40によって切断された直後、ロータリーダイカッタ40が離間領域Rに入った時点で、制御部71は、ロータリーダイカッタ40の前後において、電極材料17の搬送速度を減速(調節)する制御を行う。具体的には、第1ニップ用モータM1及び第2ニップ用モータM2により、第1ニップローラ28と第2ニップローラ65による電極材料17の搬送速度を遅くし、一方で、速度差により、巻取リール23との間で発生する弛みを、ダンサーローラ30を下方に移動させることで吸収する。
【0065】
すると、図8(b)に示すように、離間期間中は、電極材料17は、ダイローラ41の刃型43と、アンビルローラ51の周面又は嵩上げ部材53と、によって挟持されていないため、ダイローラ41及びアンビルローラ51が空転し、電極材料17の搬送速度に対し、電極材料17が回転方向に早送りされる。すなわち、ロータリーダイカッタ40の回転と、電極材料17の搬送との相対速度が変更される。その結果、第2露出部18bの寸法Nが規格より短くても、第2露出部18b及び塗工部19は所定の位置で切断され、規格通りのサイズの電極10が電極材料17から切り出される。
【0066】
一方、図7の実線に示すように、寸法Nが規格より長い場合、その規格外の第2露出部18bより一つ前の塗工部19がロータリーダイカッタ40によって切断された直後、ロータリーダイカッタ40が離間領域Rに入った時点で、制御部71は、ロータリーダイカッタ40の前後において、電極材料17の搬送速度を増速(調節)する制御を行う。具体的には、第1ニップ用モータM1及び第2ニップ用モータM2により、第1ニップローラ28と第2ニップローラ65による電極材料17の搬送速度を速くすると同時に、ダンサーローラ30を上方に移動させ、搬送速度の増速に対応させる。
【0067】
離間期間中は、電極材料17は、ダイローラ41の刃型43と、アンビルローラ51の周面又は嵩上げ部材53と、に挟持されていないため、ダイローラ41及びアンビルローラ51が空転し、ダイローラ41及びアンビルローラ51の回転速度に対し、電極材料17が早送りされる。すなわち、ロータリーダイカッタ40の回転と、電極材料17の搬送との相対速度が変更される。その結果、第2露出部18b及び塗工部19は所定の位置で切断され、規格通りのサイズの電極10が電極材料17から切り出される。
【0068】
その後、図2に示すように、切り出された電極10にはエアノズル62からエアが吹き付けられ、端材54から分離されやすくなった状態で、電極10は、案内板60によって端材54から切り離されるとともに搬送方向D1へ案内される。また、ガイドローラ64は、電極10が分離された端材54を搬送方向D2へ案内し、搬送方向D2へ案内された端材54は第2ニップローラ65によって引っ張られるとともに、回収される。
【0069】
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1−1)電極材料17は、長尺金属箔18に塗工部19を間欠塗工して形成され、電極材料17の第2露出部18bから電極10の未塗工部11a及びタブ13が切り出される。第2露出部18bには、プレスロールの荷重に起因して長尺金属箔18の長手方向に延びが生じ、塗工部19が存在する場合のような延びの差が生じず、皺が生じ難い箇所である。このため、得られる電極10において、未塗工部11a及びタブ13に皺が形成されることを抑制できる。
【0070】
間欠塗工によって塗工部19を形成した電極材料17においては、塗工部19の塗工位置がずれ、第2露出部18bの寸法Nが規格から外れる場合がある。この場合、電極用切断装置20では、電極材料17が離間領域R(隙間領域42a,52a)に到達した時点で、第1ニップローラ28及び第2ニップローラ65による電極材料17の搬送速度を制御し、刃型43を電極材料17の所望する位置に配置されるように微調整できる。よって、塗工部19の位置のずれが生じても、電極材料17から所望するサイズの電極10を切り出すことができる。そして、ダイローラ41とアンビルローラ51の両方の隙間領域42a,52aに電極材料17が位置する離間期間中は、ダイローラ41とアンビルローラ51による電極材料17の挟持が無いため、電極材料17の搬送と、ロータリーダイカッタ40の回転との相対速度の変更を電極材料17に影響を及ぼすこと無く行うことができる。したがって、塗工部19の位置が長手方向にずれた電極材料17をロータリーダイカッタ40で切断しても、切断位置を微調整して規格外の電極10が製造されることを抑制できる。
【0071】
(1−2)ダイローラ41のクッション材46は、刃型43が電極材料17に接近していくに従い徐々に圧縮される。そして、電極材料17が切断された後、アンビルローラ51に向けて働くクッション材46の弾性力により、電極材料17から個片の電極10が切り離されやすくなる。
【0072】
(1−3)第2露出部18bの寸法Nが規格外の場合、制御部71は、第1ニップローラ28及び第2ニップローラ65による電極材料17の搬送速度を制御して、電極材料17の搬送と、ロータリーダイカッタ40の回転との相対速度を変更する。第1及び第2ニップローラ28,65は電極材料17を直接挟持するため、電極材料17の搬送が調節しやすく、相対速度の変更が行いやすい。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、電極用切断装置を具体化した第2の実施形態を図9にしたがって説明する。なお、第2の実施形態の説明について、第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0074】
図9に示すように、第2の実施形態の電極用切断装置20は、第1のガイドローラ26a、第2のガイドローラ26b、及びダンサーローラ30を備えず、速度調節領域Cを備えない。第2の実施形態では、ダイローラ41と、アンビルローラ51とは、可変速での回転が可能である。電極材料17の切断中は、ダイローラ41とアンビルローラ51は一定速で回転しているが、離間期間においては、前述の一定速に対し、増速又は減速された速度で回転し、一定速で搬送される電極材料17の搬送速度に対する相対速度を変更する。
【0075】
さて、寸法Nが規格より短い場合、規格外の第2露出部18bより一つ前の塗工部19がロータリーダイカッタ40によって切断された直後、ロータリーダイカッタ40が離間領域Rに入った時点で、制御部71は、ダイカッタ用モータ48を制御して、ダイローラ41と、アンビルローラ51との回転を増速する制御を行う。
【0076】
離間期間中、電極材料17は、ダイローラ41の刃型43と、アンビルローラ51の周面又は嵩上げ部材53と、に挟持されていないため、電極材料17はダイローラ41及びアンビルローラ51に引っ張られることなく、一定速で搬送される。その結果、第2露出部18b及び塗工部19の位置は、刃型43に対する所定の位置に微調整され、規格通りのサイズの電極10が電極材料17から切り出される。
【0077】
一方、寸法Nが規格より長い場合、規格外の第2露出部18bより一つ前の塗工部19がロータリーダイカッタ40によって切断された直後、ロータリーダイカッタ40が離間領域Rに入った時点で、制御部71は、ダイカッタ用モータ48を制御して、ダイローラ41と、アンビルローラ51との回転を減速する制御を行う。離間期間中、電極材料17は、ダイローラ41の刃型43と、アンビルローラ51の周面又は嵩上げ部材53と、に挟持されていないため、電極材料17はダイローラ41及びアンビルローラ51の間で詰まることなく、一定速で搬送される。その結果、第2露出部18b及び塗工部19の位置は、刃型43に対する所定の位置に微調整され、規格通りのサイズの電極10が電極材料17から切り出される。
【0078】
上記第2の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(2−1)第2露出部18bの寸法Nが規格外の場合、制御部71は、ダイローラ41と、アンビルローラ51の回転を増速又は減速する制御を行う。ダイローラ41と、アンビルローラ51は同期しており、駆動が制御しやすい。したがって、塗工部19の位置のずれが生じても、ダイローラ41とアンビルローラ51の駆動を制御するだけで簡単に対応できる。
【0079】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
図10に示すように、電極材料17の長手方向への塗工部19の寸法を2倍とする。そして、電極材料17の長手方向に2つの活物質層12が形成され、かつ電極材料17の長手方向に塗工部19を挟む第2露出部18bそれぞれに未塗工部11a及びタブ13が形成されるように電極材料17を切断してもよい。
【0080】
図11に示すように、電極10は、未塗工部11aからタブ13が突出しない形状であってもよい。この場合、第2露出部18bの寸法Nの規格値は、実施形態よりも短くなる。また、刃型43において、未塗工部用刃部44のタブ用刃部44cは削除されるとともに、アンビルローラ51における嵩上げ部材53の寸法Mも第2露出部18bの寸法Nに合わせて短くする。
【0081】
○ 検出部70は、第2露出部18bの寸法Nを検出できれば、カラーセンサ以外のセンサでよい。
○ 案内板60及びエアノズル62の少なくとも一方は無くてもよい。
【0082】
○ ダイローラ41におけるクッション材46は無くてもよい。
○ 第1の実施形態において、電極用切断装置20において、ダンサーローラ30は無くてもよい。
【0083】
○ クッション材46は、ローラ本体42の周面のうち、刃型43以外の全てを覆っていなくてもよく、例えば、刃型43に沿う場所だけを覆っていてもよい。
○ 電極用切断装置20において、電極材料17の送り出しは、巻取リール23からの巻き出しでなくてもよい。
【0084】
○ 電極材料17は、長尺金属箔18の片面に塗工部19を有していてもよく、この場合、電極10は、金属箔11の片面に活物質層12を有する。
○ ニッケル水素二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電装置に用いる電極の製造時に実施形態の電極用切断装置20を採用してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…電極、11…金属箔、12…活物質層、11a…未塗工部、13…未塗工部を構成するタブ、17…電極材料、18…長尺金属箔、18b…露出部としての第2露出部、19…塗工部、20…電極用切断装置、28…第1ニップローラ、30…ダンサーローラ、40…ロータリーダイカッタ、41…ダイローラ、42a…隙間領域、43…刃型、46…クッション材、51…アンビルローラ、52a…隙間領域、53…嵩上げ部材、65…第2ニップローラ、66…ニップ部、70…検出部、71…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11