特許第6879185号(P6879185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879185
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】バッテリ式産業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20210524BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20210524BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B60K1/04 A
   B66F9/24 Z
   H01R13/639 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-236089(P2017-236089)
(22)【出願日】2017年12月8日
(65)【公開番号】特開2019-104255(P2019-104255A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井脇 貴
【審査官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−357498(JP,A)
【文献】 特開2003−048693(JP,A)
【文献】 実開昭62−007158(JP,U)
【文献】 実開昭61−079479(JP,U)
【文献】 実開昭57−006126(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B66F 9/24
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に搭載されたバッテリコントローラと接続され、かつ前記車体におけるプラグ固定部に固定された車体側プラグと、
前記車体に搭載されたバッテリと、
前記バッテリと接続されたバッテリ側プラグと、
を有し、前記車体側プラグと前記バッテリ側プラグとが挿抜可能に嵌合されるバッテリ式産業車両であって、
前記プラグ固定部に設けられた抜け止め孔と、
前記バッテリ側プラグにおいて、前記車体側プラグとの嵌合状態で前記抜け止め孔と重なる位置に設けられたバッテリ側貫通孔と、
前記バッテリ側貫通孔、及び該バッテリ側貫通孔に重なる前記抜け止め孔を貫通する複数のピン、及び前記複数のピンを併設状態に保持する保持部を備える抜け止め部材と、
前記抜け止め孔及び前記バッテリ側貫通孔からの前記ピンの抜け出しを規制する規制手段と、を備えることを特徴とするバッテリ式産業車両。
【請求項2】
前記車体は、前記バッテリを収納する収納部と、前記収納部を開閉可能とするサイドカバーと、を備えるとともに、前記抜け止め部材の前記保持部を前記車体と繋ぐワイヤを備える請求項1に記載のバッテリ式産業車両。
【請求項3】
前記保持部は平板状であり、前記規制手段は、前記サイドカバーと一体であり、該サイドカバーによって前記収納部を閉じた状態で前記保持部に対向配置される当接板である請求項2に記載のバッテリ式産業車両。
【請求項4】
前記規制手段は、前記プラグ固定部に設けた連結部材と、該連結部材に対し連結可能な連結機構とから構成され、前記連結機構は、前記連結部材に連結した状態で前記保持部に対向配置されて前記ピンの抜け出しを規制する請求項1に記載のバッテリ式産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリコントローラと接続された車体側プラグと、バッテリと接続されたバッテリ側プラグとが挿抜可能に嵌合されるバッテリ式産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車体内部にバッテリを搭載したバッテリ式フォークリフトにおいて、バッテリと、バッテリコントローラとをバッテリケーブルユニットで電気的に接続することが行われている。バッテリケーブルユニットの途中にはバッテリコネクタが設けられ、バッテリからのケーブルと、バッテリコントローラからのケーブルとが該バッテリコネクタによって接続される。バッテリコネクタは、バッテリからのケーブルの先端に接続されたバッテリ側プラグと、バッテリコントローラからのケーブルの先端に接続された車体側プラグとで構成され、互いのプラグが挿抜自在に嵌合されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の産業車両において、図11に示すように、車体側プラグである第1バッテリプラグ90は、車体の外装フレーム91の内側に配置された板状部材92に対し、サブプレート93を介して取り付けられている。第1バッテリプラグ90とサブプレート93とは、取付ビス94によって係止されるとともに、板状部材92とサブプレート93とは締結ボルト95によって締結されている。そして、外装フレーム91に固定された第1バッテリプラグ90に対し、バッテリ側プラグである第2バッテリプラグ96が挿抜可能に嵌合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−67565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、バッテリ側プラグと車体側プラグとの嵌合は互いの挿抜力で維持されているだけである。このため、産業車両の振動等により、バッテリ側プラグと車体側プラグとの嵌合状態が解除されてしまう虞がある。そこで、嵌合状態が解除されないように挿抜力を大きく(強く)することが考えられるが、挿抜力が大きくなるほど、バッテリ側プラグと車体側プラグの挿抜に要する力が大きくなり、バッテリの充電作業や交換作業を行う際の作業性が低下して好ましくない。
【0006】
作業性を考慮して挿抜力を小さく(弱く)すると、産業車両の振動により、嵌合状態が解除されやすく、バッテリ側プラグと車体側プラグとの端子同士の接触不良が発生する虞があり、好ましくない。
【0007】
本発明の目的は、挿抜作業が行いやすく、嵌合状態を維持できるバッテリ式産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するためのバッテリ式産業車両は、車体と、前記車体に搭載されたバッテリコントローラと接続され、かつ前記車体におけるプラグ固定部に固定された車体側プラグと、前記車体に搭載されたバッテリと、前記バッテリと接続されたバッテリ側プラグと、を有し、前記車体側プラグと前記バッテリ側プラグとが挿抜可能に嵌合されるバッテリ式産業車両であって、前記プラグ固定部に設けられた抜け止め孔と、前記バッテリ側プラグにおいて、前記車体側プラグとの嵌合状態で前記抜け止め孔と重なる位置に設けられたバッテリ側貫通孔と、前記バッテリ側貫通孔、及び該バッテリ側貫通孔に重なる前記抜け止め孔を貫通する複数のピン、及び前記複数のピンを併設状態に保持する保持部を備える抜け止め部材と、前記抜け止め孔及び前記バッテリ側貫通孔からの前記ピンの抜け出しを規制する規制手段と、を備えることを要旨とする。
【0009】
これによれば、バッテリ側プラグのバッテリ側貫通孔、及びプラグ固定部の抜け止め孔に抜け止め部材のピンが挿通されると、抜け止め孔を区画したプラグ固定部に各ピンが当接して複数のピンがプラグ固定部に一体に組付けられるとともに、複数のピンによってバッテリ側プラグが支持される。そして、プラグ固定部に支持されたピンにより、バッテリ側プラグが支持される。その結果、バッテリ側プラグが車体側プラグから抜け落ちることを抑止できる。よって、車体側プラグからバッテリ側プラグが抜けないように挿抜力を大きくする必要がなく、抜け止め部材による抜け止めがない状態では、車体側プラグに対するバッテリ側プラグの挿抜が行いやすくなる。また、抜け止め部材により、車体側プラグにバッテリ側プラグが嵌合した状態を維持できるため、走行に伴う車体の振動やバッテリの振動が発生しても、接触不良の発生を回避できる。
【0010】
また、バッテリ式産業車両について、前記車体は、前記バッテリを収納する収納部と、前記収納部を開閉可能とするサイドカバーと、を備えるとともに、前記抜け止め部材の前記保持部を前記車体と繋ぐワイヤを備えていてもよい。
【0011】
これによれば、ワイヤによって抜け止め部材が吊り下げられると、抜け止め部材はバッテリに重なる。例えば、抜け止め部材によってバッテリ側プラグの抜け落ちを抑止しないままサイドカバーを閉じる方向へ移動させると、バッテリとサイドカバーとの間に抜け止め部材が挟まれる。すると、作業者は、抜け止め部材によってバッテリ側プラグの抜け落ちを抑止していないことに気付き、抜け止め部材が未使用な状態のままになることを無くすことができる。
【0012】
また、バッテリ式産業車両について、前記保持部は平板状であり、前記規制手段は、前記サイドカバーと一体であり、該サイドカバーによって前記収納部を閉じた状態で前記保持部に対向配置される当接板であってもよい。
【0013】
これによれば、サイドカバーによって収納部を閉じたとき、当接板が保持部に対向配置される。このため、サイドカバーによって収納部を閉塞するだけで、当接板によって抜け止め部材を抜け止めできる。
【0014】
また、バッテリ式産業車両について、前記規制手段は、前記プラグ固定部に設けた連結部材と、該連結部材に対し連結可能な連結機構とから構成され、前記連結機構は、前記連結部材に連結した状態で前記保持部に対向配置されて前記ピンの抜け出しを規制するようにしてもよい。
【0015】
これによれば、プラグ固定部に連結部材を設けることで、連結機構による連結を行いやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、挿抜作業が行いやすく、嵌合状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態のリーチ式フォークリフトを示す側面図。
図2】実施形態のリーチ式フォークリフトを後側から示す部分斜視図。
図3】車体側プラグとバッテリ側プラグと抜け止め部材とを示す分解斜視図。
図4】リーチ式フォークリフトのサイドカバーを開いた状態を示す部分斜視図。
図5】車体側プラグ及びバッテリ側プラグを示す斜視図。
図6】車体側プラグとバッテリ側プラグの嵌合状態を車体内側から示す分解斜視図。
図7】バッテリコネクタを示す斜視図。
図8】サイドカバーを閉じた状態でのバッテリコネクタを示す側面図。
図9】サイドカバーを閉じた状態を示す正面図。
図10】別例のバッテリコネクタを示す斜視図。
図11】背景技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、バッテリ式産業車両をバッテリ式のリーチ式フォークリフトに具体化した一実施形態を図1図9にしたがって説明する。以下の説明において「前」「後」「左」「右」「上」「下」は、リーチ式フォークリフトの運転者がフォークリフトの前方を向いた状態を基準とした場合の「前」「後」「左」「右」「上」「下」を示すものとする。
【0019】
図1又は図2に示すように、リーチ式フォークリフト11は、車体12と、車体12から前方に向かって延設された左右一対のリーチレグ13と、を備える。車体12は、機台12aと、機台12aを覆う機台カバー15とから構成されている。リーチ式フォークリフト11は、各リーチレグ13の前方に設けられた前輪14を備える。リーチ式フォークリフト11は、車体12の後方に設けられた後輪16aと、キャスタホイール16bとを備える。後輪16aは、操舵輪及び駆動輪となる。
【0020】
リーチ式フォークリフト11は、後輪16aを駆動させるための走行モータMと、走行モータMの電力源となるバッテリ30と、バッテリ30を制御するバッテリコントローラ34を備える。バッテリコントローラ34は、バッテリ30からの電気エネルギを走行モータMに供給するものである。
【0021】
バッテリ30とバッテリコントローラ34とは、図3に示すように、バッテリケーブルユニット46を介して電気的に接続されている。バッテリケーブルユニット46は、バッテリ30から延びるバッテリ側ケーブル33と、バッテリコントローラ34から延びる車体側ケーブル55とをバッテリコネクタ60で接続して構成されている。バッテリコネクタ60は、バッテリ側ケーブル33に接続されたバッテリ側プラグ35と、車体側ケーブル55に接続された車体側プラグ54とを嵌合して構成される。
【0022】
図1に示すように、リーチ式フォークリフト11は、車体12の前方に設置された荷役装置21を備える。荷役装置21は、リーチシリンダ(図示せず)の駆動により、各リーチレグ13に沿って前後動作するマスト22を備える。マスト22の前方には、左右一対のフォーク23がリフトブラケット24を介して設けられている。フォーク23は、マスト22に沿って昇降する。
【0023】
リーチ式フォークリフト11は、車体12の後部に立席タイプの運転室25を備える。リーチ式フォークリフト11の運転室25には、荷役操作のための荷役操作レバー26や、前後進操作のためのアクセル操作レバー27が設けられている。また、運転室25には、ステアリングホイール28が設けられている。
【0024】
図4に示すように、リーチ式フォークリフト11は、車体12の前部にバッテリ収納する収納部18を有する。収納部18は、機台12aの右側面から凹設されている。収納部18は、機台12aの右側面に開口した開口部18aを備える。リーチ式フォークリフト11に搭載されたバッテリ30は、収納部18に収納されている。リーチ式フォークリフト11は、バッテリ30の電力を動力源として走行するバッテリ式のフォークリフトである。バッテリ30は、多数の図示しないバッテリセルと、これらのバッテリセルを収納するバッテリケース31と、を有する。なお、バッテリセルは鉛蓄電池であり、角形電池である。バッテリケース31は、全体として直方体状である。収納部18に収納されたバッテリ30は、そのバッテリケース31の前面31a、後面31b、上面31c、下面31d及び図示しない左面が収納部18の内面によって覆われる一方で、右面31eは収納部18の開口部18aから露出する。
【0025】
リーチ式フォークリフト11は、バッテリ30の充電、交換等のメンテナンス作業を行うために、収納部18の開口部18aを開閉可能とするサイドカバー40を備える。サイドカバー40は、機台カバー15とともに車体12の一部を構成する。サイドカバー40は、収納部18の開口部18aを閉じる閉位置H1(図1参照)と、収納部18の開口部18aを外部に開放する開位置H2とを取り得る。サイドカバー40は、平板状である。
【0026】
サイドカバー40は、上下方向に延びる一対の縁部のうち、閉位置H1で前側に位置する第1縁部40aと、第1縁部40aの対辺であり、かつ閉位置H1で後側に位置する第2縁部40bと、を有する。また、サイドカバー40は、第1縁部40a及び第2縁部40bの上端同士を繋ぐ第3縁部40cと、第1縁部40a及び第2縁部40bの下端同士を繋ぐ第4縁部40dとを有する。
【0027】
サイドカバー40は、第2縁部40bに設けたヒンジ41によって機台カバー15に連結されている。サイドカバー40は、ヒンジ41を回動中心として回動可能である。サイドカバー40は、閉位置H1で車体12の右側面の一部を構成する面に外面40eを備え、閉位置H1でバッテリ30の右面31eに対向する内面40fを備える。リーチ式フォークリフト11は、サイドカバー40の内面40fに固定された規制手段としての当接板43を備える。当接板43は、サイドカバー40の第3縁部40cよりも上方に突出している。当接板43は、第3縁部40cからの突出方向先端に向かってサイドカバー40の外面40e側に突出するように曲げられている。
【0028】
リーチ式フォークリフト11は、車体12における収納部18より上側に車体開口部17を備える。車体開口部17は、機台カバー15の一部を切り欠いて形成されている。車体開口部17から機台12aの内部が露出している。サイドカバー40が閉位置H1にあるとき、当接板43は、車体開口部17に配設される。
【0029】
バッテリ30は、バッテリ側ケーブル33を備える。バッテリ30に接続されたバッテリ側ケーブル33は、バッテリケース31の上面31cから外部に引き出されている。バッテリ側ケーブル33の先端にはバッテリ側プラグ35が接続されている。
【0030】
図5に示すように、バッテリ側プラグ35は、略直方体状のプラグ本体36aと、プラグ本体36aに一体の差込部36bを備える。バッテリ側プラグ35は、プラグ本体36aの長手方向両側にバッテリ側貫通孔37を2つずつ備える。
【0031】
図6に示すように、リーチ式フォークリフト11は、機台カバー15の内面であって、車体開口部17の上方に固定されたブラケット50を備える。ブラケット50は、矩形板状の固定片51と、固定片51の上下方向に延びる一方の縁から立設された矩形板状の連結片52と、連結片52の突出端から突設され、かつ連結片52からの突設方向が固定片51と相反する矩形板状のプラグ設置片53とを有する。固定片51は、機台カバー15の内面における車体開口部17の上側に締結されている。連結片52は、機台カバー15の内面から機台12aに向けて突出している。
【0032】
プラグ設置片53の上下方向への長さは、固定片51及び連結片52の上下方向への長さより長い。プラグ設置片53の下部は、固定片51の下端及び連結片52の下端よりも下方へ突出している。プラグ設置片53の下部は、車体開口部17から車体12の外部に露出している。
【0033】
図5に示すように、プラグ設置片53は、プラグ設置片53の下部に抜け止め孔53bを備える。抜け止め孔53bは、プラグ設置片53の短手方向の両側に2つずつ設けられている。プラグ設置片53の短手方向に並ぶ2つの抜け止め孔53bのピッチは、バッテリ側プラグ35の長手方向に並ぶ2つのバッテリ側貫通孔37のピッチと略同じである。また、プラグ設置片53の長手方向に並ぶ2つの抜け止め孔53bのピッチは、バッテリ側プラグ35の短手方向に並ぶ2つのバッテリ側貫通孔37のピッチと略同じである。また、プラグ設置片53の上下方向に延びる一対の長縁部のうち、一方の長縁部には、ワイヤ連結部53aが設けられている。
【0034】
プラグ設置片53の上部には、バッテリコネクタ60を構成する車体側プラグ54が固定され、この車体側プラグ54に対し、バッテリ側プラグ35が挿抜可能となっている。したがって、本実施形態では、プラグ設置片53がプラグ固定部を構成している。ここで、車体側プラグ54に対しバッテリ側プラグ35を挿抜する方向を挿抜方向Yとすると、本実施形態では、挿抜方向Yは上下方向となる。また、プラグ設置片53における車体側プラグ54を固定した設置面53dに沿い、かつ挿抜方向Yに直交する方向を車体側プラグ54及びバッテリ側プラグ35の幅方向Xとする。
【0035】
車体側プラグ54は、幅方向Xに長手が延びる直方体状のプラグ本体54aと、プラグ本体54aに一体の嵌合部54bを備える。嵌合部54bの内側に、バッテリ側プラグ35の差込部36bが差し込まれて、嵌合部54bと差込部36bが嵌合する。そして、バッテリ30からは、例えば48Vの直流電圧が出力されるようになっている。各プラグ35,54の内部には、正極及び負極に対応した金属端子が配置され、各金属端子にはバッテリ側ケーブル33及び車体側ケーブル55の正極ライン及び負極ラインが接続されている。バッテリ側プラグ35と車体側プラグ54が嵌合された状態では、内部に設けられた金属端子同士が係合して、電気的に接続されている。
【0036】
バッテリ側プラグ35と車体側プラグ54において、嵌合部54bと差込部36bとの挿抜力は大きすぎず、車体側プラグ54に対するバッテリ側プラグ35の挿抜に要する力が大きくなりすぎない程度である。このため、車体側プラグ54に対するバッテリ側プラグ35の差込及び抜き出しが容易に行えるようになっている。
【0037】
車体側プラグ54は、その幅方向Xであるプラグ本体54aの長手方向両側に車体側貫通孔56を2つずつ備える。車体側プラグ54は、車体側貫通孔56を貫通した固定ボルト57を、プラグ設置片53の雌ねじ孔(図示せず)に螺合することでブラケット50のプラグ設置片53に固定されている。車体側プラグ54は、プラグ設置片53の上部に固定され、機台カバー15の内面に対向している。このため、車体側プラグ54は、車体開口部17から車体12の外部に露出していない。
【0038】
次に、バッテリコネクタ60におけるバッテリ側プラグ35の抜け止め構造について説明する。
図3に示すように、プラグ設置片53に固定された車体側プラグ54の嵌合部54bに対し、バッテリ側プラグ35の差込部36bが嵌合された状態では、プラグ設置片53とバッテリ側プラグ35とが重なりあっており、この重なり方向にバッテリ側プラグ35及びプラグ設置片53を見た場合を正面視とする。正面視では、バッテリ側プラグ35のバッテリ側貫通孔37と、プラグ設置片53の抜け止め孔53bとが重なっている。バッテリ側貫通孔37及び抜け止め孔53bは4つ設けられているため、バッテリ側貫通孔37と抜け止め孔53bとが重なる箇所が4箇所設けられている。
【0039】
バッテリコネクタ60は、車体側プラグ54からバッテリ側プラグ35が抜けることを防止する抜け止め部材61を備える。抜け止め部材61は、4本のピン62と、4本のピン62の並設状態を保持する保持部63とを有する。保持部63は矩形平板状であり、保持部63の四隅からピン62から立設されている。保持部63は、保持部63の長手方向に並ぶ2本のピン62のピッチ、及び保持部63の短手方向に並ぶ2本のピン62のピッチを、以下となるように保持している。
【0040】
保持部63の長手方向に並ぶ2本のピン62のピッチは、バッテリ側プラグ35の幅方向X(図5参照)に並ぶ2つのバッテリ側貫通孔37のピッチ、及びプラグ設置片53の短手方向に並ぶ2つの抜け止め孔53bのピッチと略同じである。保持部63の短手方向に並ぶ2本のピン62のピッチは、バッテリ側プラグ35の挿抜方向Y(図5参照)に並ぶ2つのバッテリ側貫通孔37のピッチ、及びプラグ設置片53の長手方向に並ぶ2つの抜け止め孔53bのピッチと略同じである。
【0041】
抜け止め部材61のピン62は、正面視で重なり合うバッテリ側貫通孔37と抜け止め孔53bに挿通される。ピン62において、保持部63側を基端側とし、保持部63から離れた側を先端側とする。
【0042】
図6又は図8に示すように、4本のピン62それぞれは、正面視で重なり合うバッテリ側貫通孔37と抜け止め孔53bを貫通し、プラグ設置片53から突出している。各抜け止め孔53bを区画したプラグ設置片53に各ピン62が当接して複数のピン62がプラグ設置片53に一体に組付けられるとともに、複数のピン62によってバッテリ側プラグ35が支持される。その結果、抜け止め部材61によってバッテリ側プラグ35が車体側プラグ54から抜け落ちることが抑止されている。
【0043】
抜け止め部材61は、ワイヤ64によってプラグ設置片53のワイヤ連結部53aに連結されている。ワイヤ64の長さは、ワイヤ64によって抜け止め部材61をプラグ設置片53に吊下げたとき、抜け止め部材61が車体開口部17より下方、及びバッテリ30の右面31eに吊り下げられるような長さに設定されている。
【0044】
図8又は図9に示すように、バッテリ側プラグ35と車体側プラグ54が嵌合状態にあり、サイドカバー40が閉位置H1にある状態では、サイドカバー40に一体の当接板43が抜け止め部材61の保持部63の外側に配設されている。当接板43は、サイドカバー40を閉じる際、保持部63に近付いていく。このため、当接板43は、サイドカバー40を閉じる方向から保持部63に当接又は僅かに離れた位置にある。保持部63に対し当接板43が対向配置されることにより、正面視で重なり合うバッテリ側貫通孔37と抜け止め孔53bからのピン62の抜けが抑止され、抜け止め部材61が抜け止めされている。したがって、当接板43は、抜け止め孔53b及びバッテリ側貫通孔37からのピン62の抜け出しを規制する規制手段を構成する。
【0045】
次に、リーチ式フォークリフト11の作用を記載する。
バッテリ30に対する充電作業や、バッテリ30の交換作業を行う場合は、まず、図4に示すように、サイドカバー40を開位置H2に位置させる。すると、当接板43が抜け止め部材61から離れる。そして、抜け止め部材61を手で把持して、バッテリ側プラグ35から離れる方向へ移動させ、4本のピン62をそれぞれバッテリ側貫通孔37及び抜け止め孔53bから抜き出す。すると、バッテリ側プラグ35は、ピン62による支持が無くなり、バッテリ側プラグ35を車体側プラグ54から抜き取り可能になる。その後、バッテリ側プラグ35を車体側プラグ54から抜き取る。
【0046】
4本のピン62をバッテリ側貫通孔37及び抜け止め孔53bから抜き出した抜け止め部材61は、ワイヤ64によってプラグ設置片53に吊下げられ、バッテリ30におけるバッテリケース31の右側に重なるように吊り下げられた状態となる。
【0047】
バッテリ30の充電作業や、バッテリ30の交換作業が完了した後、図7に示すように、車体側プラグ54にバッテリ側プラグ35を嵌合し、バッテリコネクタ60を形成する。
【0048】
その後、サイドカバー40を閉位置H1から開位置H2へ移動させる。ここで、サイドカバー40が開位置H2にある状態では、図4に示すように、抜け止め部材61は、バッテリ30におけるバッテリケース31の右側に重なるように吊り下げられている。このため、抜け止め部材61による抜け止めを行わず、サイドカバー40を閉位置H1に移動させると、バッテリ30の右面31eとサイドカバー40の内面40fとの間に抜け止め部材61が挟み込まれ、抜け止め部材61を使用忘れに気付くことになる。
【0049】
そして、正面視で重なり合うバッテリ側貫通孔37と抜け止め孔53bにピン62を挿通し、各ピン62の先端側をプラグ設置片53から突出させる。すると、抜け止め部材61により、バッテリ側プラグ35が車体側プラグ54から抜け落ちることが抑止される。
【0050】
次に、サイドカバー40を閉じて閉位置H1に位置させる。すると、図8又は図9に示すように、当接板43が抜け止め部材61の保持部63の外側に対向配置され、当接板43によって抜け止め部材61が抜け止めされる。
【0051】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)バッテリ側プラグ35のバッテリ側貫通孔37を貫通させたピン62を、プラグ設置片53の抜け止め孔53bを貫通させることにより、バッテリ側プラグ35が車体側プラグ54から抜け落ちることを抑止できる。その結果として、車体側プラグ54からバッテリ側プラグ35が抜けないように挿抜力を大きく(強く)する必要がなく、車体側プラグ54に対するバッテリ側プラグ35の挿抜が行いやすくなり、バッテリ30の充電作業や交換作業の作業性が向上する。また、車体側プラグ54にバッテリ側プラグ35が嵌合した状態を維持できるため、走行に伴う車体12の振動やバッテリ30の振動が発生しても、金属端子同士の接触不良の発生を回避できる。
【0052】
(2)バッテリ側プラグ35のバッテリ側貫通孔37及びプラグ設置片53の抜け止め孔53bに対し、抜け止め部材61のピン62を差すだけで、バッテリ側プラグ35が車体側プラグ54から抜け落ちることを抑止できる。よって、バッテリ側プラグ35の抜け落ち防止のために、例えばバッテリ側プラグ35を貫通させたボルトをプラグ設置片53に螺合する必要がなく、ボルトの螺合のための工具も必要ない。よって、手作業で車体側プラグ54に対するバッテリ側プラグ35の挿抜を行うことができる。
【0053】
(3)抜け止め部材61をワイヤ64によってプラグ設置片53と連結した。そして、ワイヤ64によって抜け止め部材61が吊り下げられたとき、抜け止め部材61がバッテリ30の右面31eと重なるようにワイヤ64の長さを設定した。このため、抜け止め部材61によってバッテリ側プラグ35の抜け落ちを抑止しないままサイドカバー40を閉位置H1に移動させると、バッテリ30とサイドカバー40との間に抜け止め部材61が挟まれ、サイドカバー40を閉位置H1に移動できなくなる。これにより、抜け止め部材61が未使用な状態を気付くことができ、抜け止め部材61が未使用なまま、すなわち、バッテリ側プラグ35と車体側プラグ54が嵌合だけの状態になることを無くすことができる。
【0054】
(4)サイドカバー40に一体の当接板43により、抜け止め部材61を抜け止めできる。当接板43は、サイドカバー40を閉位置H1に位置させたとき、保持部63に対向配置される。このため、サイドカバー40によって収納部18を閉塞するだけで、当接板43によって抜け止め部材61を抜け止めできる。
【0055】
(5)抜け止め部材61において、4本のピン62を保持する保持部63は矩形板状である。そして、抜け止め部材61を抜け止めする当接板43も板状である。このため、保持部63と当接板43とが接触する面積を広くして、抜け止め部材61を抜け止めしやすくなる。
【0056】
(6)抜け止め部材61は、ワイヤ64によってプラグ設置片53に吊り下げられた状態では、バッテリ30の右面31eに重なるように吊り下げられる。また、バッテリ側プラグ35が抜け止めされるプラグ設置片53は、車体開口部17から車体12の外部に露出している。このため、バッテリ側プラグ35を車体側プラグ54に嵌合する作業は車体開口部17から行うことができ、抜け止め部材61によるバッテリ側プラグ35の抜け止め作業も車体開口部17から行うことができる。よって、機台カバー15の裏側に手を回してバッテリ側プラグ35の抜け止め作業を行う場合と比べると、作業性が向上する。
【0057】
(7)車体側プラグ54からのバッテリ側プラグ35の抜け止めは、バッテリ側プラグ35とは別体の抜け止め部材61のピン62を、バッテリ側プラグ35及びプラグ設置片53を貫通させることで行われる。バッテリ側プラグ35の抜け止めのために、バッテリ側プラグ35及び車体側プラグ54に他部品を組付ける必要がなく、他部品の組付けのためのビス止め等も必要がない。よって、バッテリ側プラグ35の抜け止めのために部品点数を増やすことがない。
【0058】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図10に示すように、プラグ設置片53は、一方の長縁部から立設されたL字状の連結部材58を備える。連結部材58は、プラグ設置片53に直交して立設された突出片58aと、突出片58aの突出端から外方へ突出した連結板58bとを備える。連結部材58は、連結板58bに雌ねじ孔58cを備える。
【0059】
抜け止め部材71は、バッテリ側プラグ35の長手方向(幅方向X)一端側の2つのバッテリ側貫通孔37に挿通される2本のピン72と、2本のピン72を並設状態に保持する保持部73と、保持部73に取着されたローレットボルト74と、を備える。また、抜け止め部材71は、ワイヤ75によって連結板58bに連結されている。ローレットボルト74は、手の指で摘んでローレットボルト74を回転可能とする円盤状の頭部74aと、頭部74aに一体の雄ねじ部74bとを備える。雄ねじ部74bは、保持部73を貫通しているとともに、連結部材58の雌ねじ孔58cに螺合可能であり、抜け止め部材71を連結部材58に連結する連結機構を構成する。そして、この形態では、連結部材58と、ローレットボルト74とは抜け止め部材71の抜けを規制するための規制手段を構成する。
【0060】
車体側プラグ54にバッテリ側プラグ35が嵌合された状態で、抜け止め部材71のピン72を、正面視で重なるバッテリ側貫通孔37と抜け止め孔53bに挿通する。このとき、ローレットボルト74の雄ねじ部74bを連結部材58の雌ねじ孔58cに螺合する。ローレットボルト74の頭部74aは指で摘んで回せるため、ローレットボルト74を雌ねじ孔58cに螺合する作業は手作業で行うことができる。
【0061】
そして、ローレットボルト74を雌ねじ孔58cに螺合すると、抜け止め部材71が抜け止めされ、抜け止め部材71によってバッテリ側プラグ35が車体側プラグ54から抜け落ちることを抑止できる。
【0062】
また、ローレットボルト74を螺合する雌ねじ孔58cを板状の連結板58bに設け、この連結板58bは突出片58aにより車体12の外面に近付けられている。このため、ローレットボルト74を雌ねじ孔58cに挿入した状態で、頭部74aを車体12の外面近くに位置させることができ、頭部74aを手の指で回すことができる。
【0063】
○ 抜け止め部材61の抜け止めを行う当接板43はサイドカバー40と別体であってもよい。例えば、当接板43を、機台カバー15における車体開口部17の側方に回動可能に支持したり、バッテリケース31の右面31eに回動可能に支持したりしてもよい。そして、当接板43を回動させて抜け止め部材61の保持部63に対向配置させてもよい。
【0064】
○ 抜け止め部材61,71は、ワイヤ64,75によってプラグ設置片53又は連結部材58に連結されていなくてもよい。
○ 実施形態では、機台カバー15に固定したブラケット50に車体側プラグ54を固定したが、車体側プラグ54は機台カバー15に直接固定されていてもよい。この場合、機台カバー15がプラグ固定部となる。
【0065】
○ 車体側プラグ54の固定場所は、機台カバー15の内面側でなく、外面側でもよく、車体12の外側で車体側プラグ54とバッテリ側プラグ35を嵌合してバッテリコネクタ60を構成してもよい。この場合、図10に示す抜け止め部材71を採用し、抜け止め部材71の抜け止めは、ローレットボルト74で行う。
【0066】
○ 実施形態の抜け止め部材61において、ピン62は、保持部63の長手方向に1本ずつ備える2本としてもよい。この場合、バッテリ側プラグ35のバッテリ側貫通孔37も両側に1つずつとなり、プラグ設置片53の抜け止め孔53bも短手方向に1つずつとなる。また、保持部63の長手方向両側に1本ずつ配設されたピン62は、長手方向に対向しておらず、保持部63の短手方向にずれていてもよい。この場合、ずれたピン62に対応して、バッテリ側プラグ35のバッテリ側貫通孔37もずれることとなる。
【0067】
○ 抜け止め部材61の保持部63は矩形板状であったが、4本のピン62を一体に保持でき、かつ当接板43が当接可能であれば、形状は適宜変更してもよい。
○ 抜け止め部材61は、バッテリ側プラグ35の長手方向に並ぶ一対のバッテリ側貫通孔37に挿通できるU字ピンであってもよい。実施形態では、バッテリ側プラグ35の長手方向に2つのバッテリ側貫通孔37を有するため、位置決め部材はU字ピンを2本備える構成となる。この場合、U字ピンの両端側がピンを構成し、ピン同士を繋ぐ部分が保持部となる。
【0068】
○ バッテリ式産業車両は、リーチ式でなく、カウンタ式フォークリフトでもよいし、牽引車であってもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0069】
(1)前記連結機構はローレットボルトであるバッテリ式産業車両。
【符号の説明】
【0070】
11…バッテリ式産業車両としてのリーチ式フォークリフト、12…車体、18…収納部、30…バッテリ、34…バッテリコントローラ、35…バッテリ側プラグ、37…バッテリ側貫通孔、40…サイドカバー、43…規制手段としての当接板、50…プラグ固定部としてのブラケット、53b…抜け止め孔、54…車体側プラグ、58…連結部材、61,71…抜け止め部材、62,72…ピン、63,73…保持部、64,75…ワイヤ、74…連結機構としてのローレットボルト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11