(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の位置合わせでは、粘着テープを利用する場合、ケース内に配置された折り畳まれたエアバッグの外周面であって、ケースにおけるエアバッグの突出用の開口部位から露出している外周面と、その突出用の開口部位の両縁側のケースと、に対して、粘着テープを貼着するものであり、折り畳んだエアバッグがその周方向に回転するように位置ずれして、粘着テープが貼着される虞れがあり、的確に、位置決めして、ケースに配置する点で、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便に、所定の取付部位に対して、位置ずれせずに、折り畳まれたエアバッグを取り付けることができる頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、車両の窓の上縁側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時、前記窓を覆い可能に展開膨張するエアバッグが、
バッグ本体と、
折り畳まれた前記バッグ本体を所定の取付部位に取り付ける組付部材と、
を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記組付部材が、
組付基板と、
該組付基板から突設される首部と、
該首部の先端に膨出するように配設されて、前記取付部位に挿入されて前記取付部位に係止される係止頭部と、
を備え、
前記バッグ本体が、
折り畳まれた前記バッグ本体の折畳体における外表面側から、前記係止頭部を突出させるように、前記首部を挿通させる挿通孔を備えて、
前記折畳体における前記挿通孔の裏面側の周縁に、前記組付基板を配置させて、前記組付部材を組み付けていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、バッグ本体の折畳体における挿通孔の裏面側の周縁に対し、組付部材の組付基板を配置させ、首部と係止頭部とを挿通孔から外表面側に突出させれば、組付部材を折畳体に組み付けることができる。そして、組付部材の係止頭部を、ケース、あるいは、ボディ等の所定の取付部位の係止孔(取付孔)に挿入係止させれば、折畳体を、回転させずに、かつ、折畳体の長手方向に沿った位置も、所定配置位置として、取付部位に対し、取り付けることができる。
【0008】
すなわち、単に、バッグ本体(折畳体)の挿通孔を貫通させるように、係止頭部と首部とを挿通孔に挿通させて、組付基板を挿通孔の裏面側周縁に配置させるだけで、簡便に、組付部材をバッグ本体に組み付けることができ、かつ、係止頭部を所定の取付部位の係止孔に挿入係止させるだけで、バッグ本体を、回転させずに所定配置位置として、所定の取付部位に取り付けることができる。
【0009】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、簡便に、所定の取付部位に対して、位置ずれせずに、折り畳まれたエアバッグを取り付けることができる。
【0010】
取付部位としては、折り畳まれた折畳体を収納するケースに、係止孔(取付孔)を設けて構成したり、あるいは、車両のボディに、係止孔(取付孔)を設けて構成することができる。すなわち、ケースとしては、展開膨張時のバッグ本体を突出可能な開口を備えるとともに、取付部位を構成可能に、係止頭部を挿入させて係止頭部を係止可能な係止孔、を設けて構成すればよい。また、組付部材の係止頭部が、エアバッグを搭載するボディに設けられた取付部位の係止孔に対して、挿入係止されるように、構成すれば、車両のボディを、取付部位として構成できる。
【0011】
また、エアバッグを収納するケースに取付部位を形成する場合には、ケースが、折り畳まれた折畳体の長手方向で、複数配設され、組付部材が、隣接するケース相互に設けられた係止孔に挿入係止される係止頭部を備え、組付部材の組付基板が、隣接するケース間に配設される連結部を備え、連結部が、曲げ変形を許容し、かつ、捩れ変形を規制するように、形成されていてもよい。
【0012】
このような構成では、ケースに収納されたエアバッグを、連結部の部位で捩じること無く、折り曲げることができて、車両搭載前のケースに収納したエアバッグを、折り曲げて、コンパクトに運搬したり保管することができる。勿論、ケース間で捩れないことから、車両搭載時には、ケース間での捩れを生じさせずに、折り畳んだエアバッグを、適正な姿勢で、ケースごと、車両に搭載することができる。
【0013】
また、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、組付部材の組付基板が、折り畳まれた折畳体の長手方向に沿って延びるように配設され、組付基板が、係止頭部を先端に設けた首部を突設させるとともに、少なくとも首部周りの組付基板の回転を防止可能に、折畳体の外表面側に突出する突出部を、配設させて、構成されていてもよい。
【0014】
このような構成では、組付部材が、首部周りで回転せずに、折畳体に組み付けられ、そして、組付基板を、挿通孔の周縁の裏面側で、折畳体の長手方向に沿って、長く配設させることができる。すなわち、挿通孔の周縁の裏面側で組付基板を長く配設させることができて、組付部材が、バッグ本体(折畳体)の挿通孔から抜ける虞れが生じない。そのため、係止頭部が、所定の取付部位の係止孔(取付孔)に挿入係止された状態で、組付部材が、バッグ本体の挿通孔周縁を、安定して、取付部位側に押し付けておくことができて、バッグ本体の展開膨張時に、取付部位から外れること無く、バッグ本体が円滑に展開膨張し、そして、組付部材自体のバッグ本体からの外れも、的確に防止される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、
図1に示すように、第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1は、エアバッグ19を、展開膨張完了時に、車両Vの窓(サイドウィンド)W1,W2を覆い可能に、窓W1,W2の上縁側の周縁、すなわち、フロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRを経てリヤピラー部RPの上方付近までの範囲に、折り畳んで収納させている。なお、この車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、略上下方向に沿って配設される一つの中間ピラー部CPを配設させ、展開膨張完了時のエアバッグ19は、窓W1,W2とともに、中間ピラー部CPの中間ピラーガーニッシュ7やリヤピラー部RPのリヤピラーガーニッシュ8の一部の車内側も、覆うように、構成されている。
【0017】
頭部保護エアバッグ装置M1は、
図1,5に示すように、エアバッグ19、エアバッグ19に膨張用ガスを供給するインフレーター10、取付ブラケット11,15、取付ボルト12,16、及び、折り畳まれたエアバッグ19の折畳体40を収納するケース70(70F,70B)、を備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ19、インフレーター10、及び、ケース70は、車両Vへの搭載時に、車内側Iをエアバッグカバー9に覆われて収納されている(
図1〜3参照)。エアバッグカバー9は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ5の下縁5aとルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング6の下縁6aとから構成されている。
【0018】
フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6とは、中間ピラーガーニッシュ7やリヤピラーガーニッシュ8とともに、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側Iに、取り付けられている。そして、これらの下縁5a,6aから構成されるエアバッグカバー9は、展開膨張時のエアバッグ19を突出可能に、エアバッグ19に押されて、下縁5a,6a側を車内側Iに開くように、構成されている(
図2,3の二点鎖線参照)。
【0019】
インフレーター10は、略円柱状とされて、先端(前端)側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口が、配設されている。インフレーター10は、ガス吐出口付近を含めた先端付近をバッグ本体20の接続口部26に挿入させ、接続口部26の後端付近に外装されるクランプ13を利用して、エアバッグ19の接続口部26に連結されている。また、インフレーター10は、インフレーター10を保持する取付ブラケット11と、取付ブラケット11をボディ1側のインナパネル2に固定するための取付ボルト12と、を利用して、インナパネル2に取り付けられている。
【0020】
エアバッグ19は、バッグ本体20と組付部材50(
図3,7参照)とを備えて構成されている。バッグ本体20は、
図1の二点鎖線に示すように、膨張用ガスを流入させて、窓W1,W2を覆うように展開膨張する部位であり、組付部材50は、
図3,7に示すように、折り畳まれたバッグ本体20の折畳体40を、位置ずれせずに、ケース70(F,B)に取り付けるための部材である。
【0021】
バッグ本体20は、
図2,3の二点鎖線や
図4のAに示すように、膨張用ガスGを流入させて車内側壁部21aと車外側壁部21bとを離すように膨張するガス流入部21と、車内側壁部21a、車外側壁部21b相互を結合させるように形成されて、膨張用ガスGを流入させない非流入部28と、を備えて構成されている。ガス流入部21は、保護膨張部22、ガス供給路部25、及び、接続口部26、を備えて構成され、非流入部28は、周縁部29、延設部30、取付片部31、板状部32、及び、閉じ部33、を備えて構成されている。
【0022】
ガス流入部21の保護膨張部22は、バッグ本体20の展開膨張完了時に、前席の側方の窓W1を覆う前保護部23と、後席の側方の窓W2を覆う後保護部24と、を備えている。また、ガス供給路部25は、バッグ本体20の上縁20a側で後端の接続口部26から前方に延びて、前保護部23と後保護部24とに接続口部26からの膨張用ガスGを供給できるように配設されている。接続口部26は、バッグ本体20の上縁20a側の後端に配置されて、インフレーター10からの膨張用ガスGを保護膨張部22内に導入できるように、配設されている。
【0023】
そして、バッグ本体20の下縁20b側における前保護部23と後保護部24との間には、長方形板状の板状部32が配設され、さらに、前保護部23と後保護部24との領域内には、膨張時のバッグ本体20が厚さを規制されて前後方向に延びる板形状を維持できるように、種々の形状の閉じ部33が配設されている。また、延設部30は、バッグ本体20の前端から前方に延びるように配設されている。板状部32と延設部30とは、バッグ本体20の全体形状を確保するとともに、膨張用ガスGを流入させる部位の容積を減らして、バッグ本体20の膨張開始から膨張完了前の時間を極力短くするために配設されている。非流入部28の周縁部29は、ガス流入部21の外周縁に配置されている。
【0024】
取付片部31は、バッグ本体20の上縁20a側からに、上方へ突出するように、複数、配置されて、取付ボルト16を利用してバッグ本体20をインナパネル2に止めるための取付孔31aを備えて、構成されている。取付片部31は、バッグ本体20の前縁側に取り付けられた延設部30の上縁30a側にも、配設されている。各取付片部31は、各取付孔31aに挿入される取付ボルト16を利用して、バッグ本体20をインナパネル2に強固に止めることとなる。各取付片部31には、二枚一組の板金製の取付ブラケット15が、取付孔31a周縁を挟持し、かつ、一部をかしめて、取り付けられている。そして、各取付片部31は、取付ブラケット15の取付孔15aとともに、取付孔31aを貫通する取付ボルト16を利用して、インナパネル2に取り付けられることなる(
図2参照)。なお、取付片部31に取り付ける取付ブラケット15のかしめ部15bは、取付孔15aの前後両側に配置されている(
図4のB参照)。また、各取付ボルト16は、インナパネル2の取付孔3に設けられたナット4に螺合して、各取付片部31を、取付ブラケット15やケース70の後述する取付片部75とともに、車両Vのボディ1側のインナパネル2に対して、取り付けることとなる。
【0025】
また、バッグ本体20は、
図4に示すように、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって形成される本体部35と、ポリアミド糸やポリエステル糸等の織布からなって本体部35に縫製される別体布36,37,38と、を備えて構成されている。別体布36は、取付片部31の部位を構成し、別体布37は、延設部30の部位を構成し、別体布38は、板状部32の部位を構成している。本体部35は、長方形形状に形成されて、前保護部23、後保護部24、ガス供給路部25、周縁部29、及び、板状部32、の部位を備えて、袋織りにより製造されている。なお、袋織りで製造された板状部32の部位は、その部位を切除されて、接続口部26内の図示しないインナチューブを形成する部位となる。切除された部位には、別体布38が縫合されて塞がれ、板状部32が形成されている。
【0026】
そして、バッグ本体20には、周縁部29の上縁29a側に、組付部材50を組み付ける組付座43が、組付部材50に対応して、複数(実施形態では3箇所)、形成されている。各組付座43は、大小二つの挿通孔44,46を設けて構成されている(
図7参照)。組付座43は、バッグ本体20が折り畳まれた際の上縁側に配設されている。
【0027】
詳しく述べれば、
図3,7に示すように、バッグ本体20を折り畳んだ折畳体40は、平らに展開させたバッグ本体20の下縁20b側が、車外側Oの側に巻かれて、上縁20a側に接近させるようにロール折りされ、ロール折りしたロール折り部42の残部であるバッグ本体20の上縁20a側が、前後方向に沿った折目41b,41dを付けた蛇場折りにされ、ロール折り部42の上に蛇場折り部41を設けた形状としている。そして、各組付座43は、蛇腹折り部41の最も外表面側の第1層41aに、前後方向に沿って挿通孔44,46を並設させて、それぞれ、第1層41aを貫通するように、配設させている。
【0028】
組付部材50は、
図6,7に示すように、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製として、前後方向に延びた略長方形板状の組付基板51から、取付ピン55と位置決めピン60とを突設させて構成されている。取付ピン55は、組付基板51から組付基板51と直交方向に突出する円柱状の首部56と、首部56の先端で膨出するように突出する係止頭部57と、を備えて構成されている。実施形態の場合には、係止頭部57は、首部56の先端において、円板状(長円形板状)に突出するように形成されている。位置決めピン60も、組付基板51から組付基板51と直交方向に突出する円柱状の首部61と、首部61の先端で、円板状に膨らむように突出する係止頭部62と、を備えて構成されている。取付ピン55と位置決めピン60とでは、首部56が、首部61より太く、かつ、長く形成され、係止頭部57が、係止頭部62より首部56,61から突出する外径寸法を大きくしている。
【0029】
この寸法差は、取付ピン55が、エアバッグ19の膨張時に、ケース70の後述する取付部位77から外れないように、取付部位77の係止孔(取付孔)78に係止される必要があるのに対し、位置決めピン60は、バッグ本体20の挿通孔46に挿入されて、組付部材50が、挿通孔44に挿入された取付ピン55を中心として、回転不能に、バッグ本体20の挿通孔46に係止されるだけでよいことから、取付ピン55と位置決めピン60とに寸法差が生じている。
【0030】
そのため、バッグ本体20の挿通孔46は、位置決めピン60の小径の係止頭部62を周縁で係止すればよいことから、係止頭部62より、若干、開口径を小さく設定され、挿通孔44は、取付ピン55における取付部位77の係止孔78に係止される大径の係止頭部57を、挿通し易いように、係止頭部57と同等、あるいは、僅かに、小径とした開口径として、設定されている。
【0031】
なお、組付部材50は、バッグ本体20を折り畳んで折畳体40を形成した後、第1層41aの裏面側から挿通孔44,46に、対応する取付ピン55と位置決めピン60との首部56,61と係止頭部57,62を貫通させ、組付基板51を、第1層41aと、蛇腹折り部41の折目41b,41d間の第2層41cと、の間に配置させて、その状態で、折畳体40の所定箇所を、複数本の折り崩れ防止用とした破断可能な粘着テープ等からなるラッピング材65を巻けば(
図4のB参照)、折畳体40の組付座43に組み付けられることとなる。
【0032】
ケース70(F,B)は、
図1〜3,5,7に示すように、折り畳まれたエアバッグ19(バッグ本体20、すなわち、折畳体40)を収納可能として、下方側に展開膨張時のエアバッグ19を突出可能な開口70aを設けた断面逆U字形状として、前後方向に延びた長尺状に形成されている。実施形態の場合、折り畳まれたバッグ本体20の前保護部23側を収納するケース70Fと後保護部24側を収納するケース70Bとの二つが使用されている。各ケース70(70F,70B)は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂から形成され、半割り円筒状の天井壁部71と、天井壁部71の車外側Oの縁71bから下方に延びる縦壁部72と、を備える断面逆U字形状としている。なお、ケース70Fは、前席の窓W1の上縁側に対応して、前端側が下方に曲げられ、ケース70Bは、後席の窓W2の上縁側に対応して、前後方向に延びる略直線状に形成されている。
【0033】
そして、それぞれの天井壁部71における上部付近には、上方へ延びる複数の取付片部75が配設されている(
図2,5参照)。各取付片部75は、それぞれ、収納するバッグ本体20の各取付片部31B,31C,31D,31E,31Fに対応する位置に配置され、その元部側の車内側Iにおける天井壁部71との境界部位には、各取付片部31B,31C,31D,31E,31Fを上方へ突出させるスリット状の貫通孔73が形成されている。なお、バッグ本体20の前端の取付片部31A付近は、ケース70Fに収納されず、ケース70Fから離れた前方へ突出するように、構成されている。
【0034】
各取付片部75には、
図2,5に示すように、バッグ本体20の取付ブラケット15を取り付けた取付片部31に対応するように、取付ボルト16を貫通させる挿通孔75aが配設されている。さらに、各取付片部75の上縁側の前後の両角の部位には、車内側Iに突出して下方へ反転するように、断面L字状の規制片75bが配設されている。これらの取付片部75には、折り畳まれたバッグ本体20をケース70F,70Bに収納させた状態で、貫通孔73を経て、取付ブラケット15を取り付けた取付片部31が車内側面75cに配置され、その際、各取付片部31の車内側Iの面(取付ブラケット15の面)が、各規制片75bに係止される。その結果、取付ブラケット15を取り付けた各取付片部31は、規制片75bと取付片部75の車内側面75cとの間で挟持されて、ケース70F,70Bの各取付片部75に取り付けられることとなる。
【0035】
そして、ケース70F,70Bの所定の取付片部75,75間には、
図3,7に示すように、組付部材50に対応する取付部位77が形成されている。取付部位77は、取付ピン55の係止頭部57を周縁で係止する首部56の外径寸法と同等の開口径を有した係止孔(取付孔)78と、係止孔78内に首部56を案内する案内凹部79と、折畳体40から突出する位置決めピン60を収納する収納部80と、を備えて構成されている。係止孔78は、天井壁部71を貫通するように形成されて、案内凹部79は、天井壁部71の開口側縁71aに配置される幅広部79aから幅寸法を狭める幅狭部79bを設けて構成され、幅狭部79bは、首部56を係止孔78側に挿入可能であるものの、首部56を係止できるような開口幅として、形成されている。収納部80は、天井壁部71の開口側縁71aから上方へ凹む凹部を設けて形成されている。
【0036】
第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1の車両Vへ搭載する工程の概略を説明すると、まず、
図4のAに示すように、バッグ本体20を非膨張状態の平らに展開した状態とし、そして、折り畳む。折り畳みは、既述したように、上縁20aからガス供給路部25までのエリアを、上縁20aと平行な折目を付けた蛇腹折りとし、その下方の下縁20bまでのエリアを、下縁20bを車外側壁部21b側で巻くロール折りとしている(
図2参照)。
【0037】
そして、折り畳み後、組付座43の挿通孔44に対して、第1層41aの裏面側から、取付ピン55の係止頭部57と首部56とを挿通させ、挿通孔46に位置決めピン60の係止頭部62と首部61とを挿通させて、第1層41aと第2層41cとの間に、組付部材50の組付基板51を配置させ、その後、折畳体40の所定箇所に、折り崩れ防止用のラッピング材65を巻き付ける(
図4のB参照)。
【0038】
ついで、接続口部26に対し、クランプ13を利用して、取付ブラケット11を取り付け済みのインフレーター10を結合させるとともに、各取付片部31に取付ブラケット15をかしめて取り付ける。
【0039】
そして、折畳体40におけるバッグ本体20の前保護部23のエリアをケース70Fに収納するとともに、後保護部24のエリアをケース70Bに収納させる。その際、
図7のA,Bに示すように、各組付部材50の取付ピン55の首部56を、案内凹部79の幅広部79aから幅狭部79bを経て係止孔78内に挿入させて、係止頭部57の首部56側の裏面を、係止孔78の周縁に係止される位置に配置させるように、係止頭部57を配置させるとともに、位置決めピン60の折畳体40から突出している係止頭部62を、収納部80内に収納する。
【0040】
また、折畳体40のケース70F,70Bへの収納時には、貫通孔73に挿通させつつ、取付ブラケット15を取り付け済みの各取付片部31B,31C,31D,31E,31Fを、所定の取付片部75の車内側面75cに配置させる。その際、各取付片部31B,31C,31D,31E,31Fは、取付ブラケット15ごと、規制片75bと車内側面75cとの間で、挟持されて、ケース70F,70Bの各取付片部75に取り付けられる。
【0041】
そして、折畳体40のケース70F,70Bへの収納時、取付片部31(C,D,E,F)の部位が、ケース70F,70Bの貫通孔73に挿入されて、取付片部75に取り付けられることから、取付片部31(C,D,E,F)付近の折畳体40のケース70(F,B)への前後方向の位置ずれと、折畳体40の断面中心C(
図2参照)周りの周方向の角度のずれとが、防止される。同時に、組付座43付近においても、組付部材50が取付部位77に取り付けられて、組付座43付近の折畳体40のケース70(F,B)への前後方向の位置ずれと、折畳体40の断面中心C(
図3参照)周りの周方向の角度のずれとが、防止されて、組付精度良く(配置位置精度良く)、折畳体40がケース(F,B)に収納されることとなる。
【0042】
このように組み付けた頭部保護エアバッグ装置M1の車両Vへの搭載時には、各取付ブラケット11,15を、所定のインナパネル2の位置に配置させて、取付ボルト12,16を使用して、所定のインナパネル2の位置に固定すれば、頭部保護エアバッグ装置M1を車両Vに組み付けることができる。その後、インフレーター10に、インフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線するとともに、フロントピラーガーニッシュ5、ルーフヘッドライニング6、中間ピラーガーニッシュ7、及び、リヤピラーガーニッシュ8を、ボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置M1の車両Vへの搭載が完了することとなる。
【0043】
車両Vへの搭載後、第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1が作動して、インフレーター10が膨張用ガスGをエアバッグ19(バッグ本体20)に供給すれば、バッグ本体20は、ガス供給路部25、前保護部23、及び、後保護部24に膨張用ガスGを流入させ、エアバッグカバー9を押し開いて下方へ展開し、
図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2や中間ピラー部CP,リヤピラー部RPの車内側を覆うように、展開膨張を完了させることなる。
【0044】
このバッグ本体20の展開膨張時、バッグ本体20の周縁部29の上縁29aでは、組付部材50の取付ピン55が、大径の係止頭部57をケース70の取付部位77における係止孔78に対して係止させて、ケース70に取り付けられていることから、ケース70から外れず、そのため、エアバッグ19の組付座43付近が、ケース70から外れず、組付部材50もケース70から外れず、円滑に、エアバッグ19(バッグ本体20)が、乗員の頭部を受け止めて保護できるように、展開膨張することとなる。なお、エアバッグ19の膨張時には、取付ピン55は、首部56の軸方向に沿った引張力が作用して、係止頭部57が取付部位77の外表面77a側(
図7参照)の係止孔78の周縁に係止されて、ケース70からの外れが防止される。
【0045】
なお、エアバッグ19の展開膨張時には、主に、取付片部31が、エアバッグ19の展開膨張時に引張力に対向することから、取付ピン55側には、係止孔78から外れるような大きな引張力は作用せず、エアバッグ19(バッグ本体20)は、乗員の頭部を受け止めて保護できるように、展開膨張する。
【0046】
以上のように、第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、バッグ本体20の折畳体40における挿通孔44の裏面側の周縁45に対し、組付部材50の組付基板51を配置させ、首部56と係止頭部57とを挿通孔44から外表面43a側に突出させれば、組付部材50を折畳体40に組み付けることができる。そして、組付部材50の係止頭部57を、ケース70の取付部位77の係止孔78に挿入係止させれば、折畳体40を、回転させずに、かつ、折畳体40の長手方向に沿った位置も、所定配置位置として、取付部位77に対し、取り付けることができる。
【0047】
すなわち、単に、バッグ本体20(折畳体40)の挿通孔44を貫通させるように、係止頭部57と首部56とを挿通孔44に挿通させて、組付基板51を挿通孔44の裏面側周縁45に配置させるだけで、簡便に、組付部材50をバッグ本体20に組み付けることができ、かつ、係止頭部57を所定の取付部位77の係止孔78に挿入係止させるだけで、バッグ本体20を、回転させずに所定配置位置として、所定の取付部位77に取り付けることができる。
【0048】
したがって、第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、簡便に、所定の取付部位77に対して、位置ずれせずに、折り畳まれたエアバッグ19(バッグ本体20)を取り付けることができる。
【0049】
また、第1実施形態の頭部保護エアバッグ装置M1では、組付部材50の組付基板51が、折り畳まれた折畳体40の長手方向に沿って延びるように配設され、組付基板51が、係止頭部57を先端に設けた首部56を突設させるとともに、少なくとも首部56周りの組付基板51の回転を防止可能に、折畳体40の外表面43a側に突出する突出部としての位置決めピン60を、配設させて、構成されている。
【0050】
そのため、実施形態では、組付部材50が、首部56周りで回転せずに、折畳体40に組み付けられ、そして、組付基板51を、挿通孔44の周縁の裏面側(裏面側の周縁)45で、折畳体40の長手方向に沿って、長く配設させることができる。すなわち、挿通孔44の裏面側周縁45で組付基板51を長く配設させることができて、組付部材50が、バッグ本体20(折畳体40)の挿通孔44から抜ける虞れが生じない。そのため、係止頭部57が、所定の取付部位77の係止孔(取付孔)78に挿入係止された状態で、組付部材50が、バッグ本体20の挿通孔44の周縁45を、安定して、取付部位77側に押し付けておくことができて、バッグ本体20の展開膨張時に、取付部位77から外れること無く、バッグ本体20が円滑に展開膨張し、組付部材50自体のバッグ本体20からの外れも、的確に防止される。
【0051】
さらに、エアバッグを収納するケースに取付部位を形成する場合には、
図8,9に示す第2実施形態の頭部保護エアバッグ装置M2のように構成してもよい。
【0052】
このエアバッグ装置M2では、折畳体40Aを収納するケース70F,70Bが、折り畳まれた折畳体40Aの長手方向で、複数(図例では2個)配設され、組付部材50Aが、隣接するケース70F,70B相互に設けられた係止孔78に挿入係止される係止頭部57を備え、組付部材50Aの組付基板51Aが、隣接するケース70F,70B間に配設される連結部53を備え、連結部53が、曲げ変形を許容し、かつ、捩れ変形を規制するように、形成されている。すなわち、第2実施形態の組付部材50Aは、組付部材50と同様に、ポリオレフィン系熱可塑性エアラストマー等の合成樹脂から形成されて、組付基板51Aが、首部56と係止頭部57とを有した取付ピン55を突設させた基板部52,52を、帯状の連結部53により連結して構成されている。連結部53は、帯形状として、基板部52の直交方向(取付ピン55の突出方向)には曲げ変形できるものの、ケース70F,70B相互を一回転させるまで、捩れ変形させない板厚と幅寸法とを有して、形成されている。
【0053】
また、ケース70F,70Bは、組付部材50Aの各基板部52から突出する取付ピン55と位置決めピン60とに対応する取付部位77を備えている。すなわち、案内凹部79を設けた係止孔78と収納部80とが、各ケース70F,70Bに、配設されている。勿論、エアバッグ19Aのバッグ本体20A側にも、取付ピン55と位置決めピン60とを挿入係止できる挿通孔44,46を設けた組付座43が、配設されている。
【0054】
このエアバッグ装置M2では、バッグ本体20Aを折り畳んで折畳体40Aを形成して、折畳体40Aの各組付座43に、対応する取付ピン55と位置決めピン60とを挿入係止させ、ラッピング材65を巻き付けて、折畳体40Aに組付部材50Aを組み付け、ついで、インフレーター10を取り付けた後、組付部材50Aを組み付けた折畳体40Aを、第1実施形態と同様に、ケース70F,70Bに収納する。すなわち、組付部材50Aの各取付ピン55を係止孔78に係止させるとともに、位置決めピン60を収納部80に収納し、また、取付ブラケット15を取り付けた各取付片部31を、貫通孔73を貫通させて、各取付片部75に取り付ければ、エアバッグ装置M2を組み立てることができる。
【0055】
この第2実施形態の頭部保護エアバッグ装置M2では、
図9に示すように、ケース70F,70Bに収納されたエアバッグ19Aを、連結部53の部位で捩じること無く、折り曲げることができて、車両搭載前のケース70F,70Bに収納したエアバッグ19Aを、折り曲げて、コンパクトに運搬したり保管することができる。勿論、ケース70F,70B間で捩れないことから、車両搭載時には、ケース70F,70B間での捩れを生じさせずに、折り畳んだエアバッグ19Aを、適正な姿勢で、ケース70F,70Bごと、車両に搭載することができる。
【0056】
また、バッグ本体への組付部材の組付部位としては、
図10〜12に示す第3実施形態の頭部保護エアバッグ装置M3のように構成してもよい。この第3実施形態では、エアバッグ19Bのバッグ本体20Bが、組付部材50Bを組み付ける組付座43Bを、袋織りの二枚組織部分を利用して、設けている。
【0057】
すなわち、このエアバッグ19Bのバッグ本体20Bでは、組付座43Bを設けた周縁部29の上縁29aが、袋織りしたガス流入部21における保護膨張部22との間に、膨張用ガスGの流入しない境界部位としての閉じ部47を周囲に設けて、車内側壁部21aaと車外側壁部21baとを相互に離隔可能として、車内側壁部21aaと車外側壁部21baとの間に、組付座用スペース48を設けている。そして、組付座用スペース48には、上縁48a側の一部に、組付部材50Bの挿入用開口48bを設けて、組付部材50Bを組付座用スペース48内に挿入可能に構成されている。
【0058】
組付座用スペース48における車内側壁部21aaの部位が、組付座43Bを構成して、組付部材50Bの取付ピン55を貫通させる挿通孔44を配設させている。
【0059】
組付部材50Bには、2本の取付ピン55が突設されており、組付座43Bには、挿通孔44が2つ開口されている。なお、組付部材50Bの組付基板51Bは、組付座用スペース48内に収納される長方形板状としており、一方の取付ピン55を中心として、回転不能の状態で、組付部材50Bは、バッグ本体20Bの折畳体40Bに組み付けられている。
【0060】
各取付ピン55は、ケース70に設けられた取付部位77Bの係止孔(取付孔)78に挿入係止されることとなり、組付部材50Bにより、ケース70に対して、エアバッグ19Bのバッグ本体20Bを折り畳んだ折畳体40Bが、前後方向の位置ずれや断面中心Cの周方向への角度のずれを防止されて、ケース70に取り付けられることとなり、上記のように、組付部材50Bは、袋織りの織り組織の内部に、組み付けるように構成してもよい。
【0061】
また、各実施形態M1,M2,M3では、組付部材50,50A,50Bの取付部位77,77Bとして、折畳体40,40A,40Bを収納するケース70の部位とした場合を示したが、
図13,14に示す第4実施形態の頭部保護エアバッグ装置M4のように、組付部材50Cの取付部位77Cとしては、車両のボディ1に、係止孔(取付孔)78を設けて構成することができる。
【0062】
第4実施形態の頭部保護エアバッグ装置M4では、エアバッグ19Cのバッグ本体20Cは、第1実施形態のバッグ本体20と同様としているが、ケースを使用せずに、組付座43Cに組み付けた組付部材50Cの取付ピン55の係止頭部57を、ボディ1側に溶接等により固着させた取付ブラケット85に、係止孔(取付孔)78を設けた取付部位77Cを形成している。
【0063】
また、組付部材50Cは、バッグ本体20Cの折畳体40Cにおける組付座43Cの挿通孔44に裏面側周縁45から取付ピン55の首部56と係止頭部57とを突出させ、図示しない挿通孔46にも位置決めピン60を挿入させて、組付座43Cに組み付けられている。このバッグ本体20Cでは、車両のボディ1側に対し、取付ブラケット15を設けた取付片部31がインナパネル2にボルト16止めされ、また、組付部材50Cの係止頭部57が、取付ブラケット85に設けられた取付部位77Cの係止孔78に挿入係止されて、ボディ1側に取り付けられている。そして、エアバッグ19Cの組付座43C付近では、組付部材50Cの係止頭部57が取付部位77Cの係止孔78に挿入係止されており、折畳体40Cが、ボディ1に対して、前後方向の位置ずれが防止され、また、断面中心Cの周方向の角度のずれも防止されて、所定配置位置として、ボディ1側に取り付けられることとなる。
【0064】
さらに、組付部材としては、
図15に示す頭部保護エアバッグ装置M5の組付部材50Dのように、バッグ本体20Dを折り畳んだ折畳体40Dの略全長の長さ寸法に対応させて、組付基板51Dを長く延ばすように形成したり、あるいは、
図16に示す頭部保護エアバッグ装置M6の組付部材50Eのように、折畳体40Eの略全長を複数に分割した長さ寸法分として、組付基板51Eを長く延ばすようにしてもよい。これらの場合には、バッグ本体20D,20Eの上縁20a側に、多数の挿通孔44を設けて、長い組付座43D,43Eを設け、対応する組付基板51D,51Eから突出させた取付ピン55の係止頭部57を、首部56(図符号省略)とともに、裏面側周縁45から挿通孔44に挿通させ、そして、挿通孔44から突出させて、組付部材50D,50Eをバッグ本体20D,20Eに組み付ければよい。組付部材50D,50Eを組み付けた折畳体40D,40Eは、第1実施形態のようなケース70を使用せずに、係止頭部57をボディ1側に設けた取付部位の係止孔に挿入係止させれば、組付座43D,43Eの部位を、ボディ1側に対し、前後方向の位置ずれを防止し、かつ、折畳体40D,40Eにおける断面中心の周方向の角度のずれも防止して、所定配置位置として、ボディ1側に取り付けることができる。
【0065】
なお、
図16に示すエアバッグ19Eは、バッグ本体20Eの前後方向の中央部位に、インフレーターと接続させる接続口部26を配設させて構成されている。
【0066】
また、これらの組付部材50D,50Eでは、エアバッグ19D,19Eの膨張時、取付片部31や接続口部26と干渉しないように、取付片部31や接続口部26の配設部位には、凹部54を設けておくことが望ましい(
図15,16参照)。