特許第6879274号(P6879274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6879274樹脂成形シート、樹脂成形シートの製造方法、造形物及び造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879274
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】樹脂成形シート、樹脂成形シートの製造方法、造形物及び造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20210524BHJP
   B32B 3/28 20060101ALI20210524BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20210524BHJP
   B29C 59/00 20060101ALI20210524BHJP
   B29C 59/16 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B32B5/18 101
   B32B3/28 C
   B29C44/24
   B29C59/00 C
   B29C59/16
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-151770(P2018-151770)
(22)【出願日】2018年8月10日
(65)【公開番号】特開2020-26084(P2020-26084A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀樹
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−089839(JP,A)
【文献】 特開2015−071286(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0070452(US,A1)
【文献】 特開2015−205403(JP,A)
【文献】 特開2013−220641(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103373099(CN,A)
【文献】 特開平10−129166(JP,A)
【文献】 実開平01−089164(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 44/00−44/60、67/20
B41M 1/00−3/18、7/00−9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる基材と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備え、
前記第1の熱膨張層は、前記基材の第1の面上において、前記第1の熱膨張層によって前記基材を変形させる第1の領域に少なくとも設けられており、
前記第2の熱膨張層は、前記基材の第2の面上において、前記第2の熱膨張層によって前記基材を変形させる第2の領域に少なくとも設けられている、
ことを特徴とする樹脂成形シート。
【請求項2】
前記第1の領域と前記第2の領域とは前記基材を介して対向しないように配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形シート。
【請求項3】
前記第1の熱膨張層と前記第2の熱膨張層との少なくともいずれか一方が、少なくとも部分的に前記基材から剥離可能に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形シート。
【請求項4】
前記第1の熱膨張層と前記基材との間に設けられる第1の中間層と、前記第2の熱膨張層と前記基材との間に設けられる第2の中間層と、の少なくともいずれか一方を更に備え、
前記第1の中間層と前記基材との間の剥離強度は、前記第1の熱膨張層と前記第1の中間層との間の剥離強度より低くされ、前記第1の中間層と前記第1の熱膨張層とが前記基材から除去可能であり、
前記第2の中間層と前記基材との間の剥離強度は、前記第2の熱膨張層と前記第2の中間層との間の剥離強度より低くされ、前記第2の中間層と前記第2の熱膨張層とが前記基材から除去可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂成形シート。
【請求項5】
前記第1の熱膨張層と前記第2の熱膨張層との少なくともいずれか一方が、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を更に含む、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂成形シート。
【請求項6】
電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含み、前記第1の領域において前記第1の熱膨張層上に設けられた第1の熱変換層と、
電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含み、前記第2の領域において前記第2の熱膨張層上に設けられた第2の熱変換層と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂成形シート。
【請求項7】
樹脂からなる基材の第1の面上に、熱膨張性材料を含む第1の熱膨張層を形成する第1の熱膨張層形成工程と、
前記基材の第2の面上に、熱膨張性材料を含む第2の熱膨張層を形成する第2の熱膨張層形成工程と、を有し、
前記第1の熱膨張層形成工程では、前記基材の第1の面上において、前記第1の熱膨張層によって前記基材を変形させる第1の領域に少なくとも前記第1の熱膨張層を形成し、
前記第2の熱膨張層形成工程では、前記基材の第2の面上において、前記第2の熱膨張層によって前記基材を変形させる第2の領域に少なくとも前記第2の熱膨張層を形成する、
ことを特徴とする樹脂成形シートの製造方法。
【請求項8】
樹脂からなる基材と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、
前記第1の熱膨張層上であって、前記基材を前記第1の熱膨張層を用いて変形させる第1の領域に設けられ、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含む第1の熱変換層と、
前記第2の熱膨張層上であって、前記基材を前記第2の熱膨張層を用いて変形させる第2の領域に設けられ、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含む第2の熱変換層と、を備え、
前記第1の領域において、前記第1の熱膨張層は膨張により隆起しており、前記基材が前記第1の熱膨張層に追従して変形しており、
前記第2の領域において、前記第2の熱膨張層は膨張により隆起しており、前記基材が前記第2の熱膨張層に追従して変形している、
ことを特徴とする造形物。
【請求項9】
樹脂からなる基材と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備える樹脂成形シートを用い、
前記第1の熱膨張層の上であって、前記第1の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第1の領域上に、電磁波を熱に変換する第1の熱変換層を形成する第1の熱変換層形成工程と、
前記第2の熱膨張層の上であって、前記第2の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第2の領域上に、電磁波を熱に変換する第2の熱変換層を形成する第2の熱変換層形成工程と、
前記第1の熱変換層に電磁波を照射し、前記第1の熱膨張層を膨張させ、前記第1の領域において前記基材を変形させる第1の成形工程と、
前記第2の熱変換層に電磁波を照射し、前記第2の熱膨張層を膨張させ、前記第2の領域において前記基材を変形させる第2の成形工程と、
を有することを特徴とする造形物の製造方法。
【請求項10】
前記第1の熱膨張層と、前記第2の熱膨張層との少なくともいずれか一方は、前記基材に対して剥離可能に接着されており、
前記基材の成形後に、前記第1の熱膨張層と前記第2の熱膨張層との少なくともいずれか一方を除去する除去工程を更に有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の造形物の製造方法。
【請求項11】
樹脂からなる基材と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備える樹脂成形シートを用い、
前記第1の熱膨張層の上であって、前記第1の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第1の領域上に、電磁波を熱に変換する第1の熱変換層を形成する第1の熱変換層形成工程と、
前記第2の熱膨張層の上であって、前記第2の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第2の領域上に、電磁波を熱に変換する第2の熱変換層を形成する第2の熱変換層形成工程と、
前記樹脂成形シートの一方の面又は他方の面から電磁波を照射することによって、前記第1の熱変換層において熱を生じさせ、前記第1の熱膨張層を膨張させて前記第1の領域において前記基材を変形させるとともに、前記第2の熱変換層において熱を生じさせ、前記第2の熱膨張層を膨張させて前記第2の領域において前記基材を変形させる成形工程と、
を有することを特徴とする造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収した熱量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を利用した樹脂成形シート及び樹脂成形シートの製造方法と、これを用いた造形物及び造形物の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の数字等の入力部として、メンブレンスイッチ等のスイッチが用いられている。メンブレンスイッチでは、例えばエンボス加工を施した樹脂製のシートが用いられる。また、エンボス加工では、凹状の型と凸状の型とを用いて所望の形状へ成形を行う(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−8254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような方法では、樹脂製のシートの成形に先立ち、加工する形状に応じた金型を用意する必要がある。このため、金型を製造するコスト及び時間が必要となるという問題があった。
【0005】
特に試作品の製造段階では、金型を加工することは開発に必要な時間を増大させるため、樹脂製のシートを金型を要することなく容易に成形することが求められている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易に成形することが可能な樹脂成形シート及び樹脂成形シートの製造方法と、これを用いた造形物及び造形物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る樹脂成形シートは、
樹脂からなる基材と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備え、
前記第1の熱膨張層は、前記基材の第1の面上において、前記第1の熱膨張層によって前記基材を変形させる第1の領域に少なくとも設けられており、
前記第2の熱膨張層は、前記基材の第2の面上において、前記第2の熱膨張層によって前記基材を変形させる第2の領域に少なくとも設けられている、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点に係る樹脂成形シートの製造方法は、
樹脂からなる基材の第1の面上に、熱膨張性材料を含む第1の熱膨張層を形成する第1の熱膨張層形成工程と、
前記基材の第2の面上に、熱膨張性材料を含む第2の熱膨張層を形成する第2の熱膨張層形成工程と、を有し、
前記第1の熱膨張層形成工程では、前記基材の第1の面上において、前記第1の熱膨張層によって前記基材を変形させる第1の領域に少なくとも前記第1の熱膨張層を形成し、
前記第2の熱膨張層形成工程では、前記基材の第2の面上において、前記第2の熱膨張層によって前記基材を変形させる第2の領域に少なくとも前記第2の熱膨張層を形成する、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点に係る造形物は、
樹脂からなる基材と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、
前記第1の熱膨張層上であって、前記基材を前記第1の熱膨張層を用いて変形させる第1の領域に設けられ、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含む第1の熱変換層と、
前記第2の熱膨張層上であって、前記基材を前記第2の熱膨張層を用いて変形させる第2の領域に設けられ、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含む第2の熱変換層と、を備え、
前記第1の領域において、前記第1の熱膨張層は膨張により隆起しており、前記基材が前記第1の熱膨張層に追従して変形しており、
前記第2の領域において、前記第2の熱膨張層は膨張により隆起しており、前記基材が前記第2の熱膨張層に追従して変形している、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点に係る造形物の製造方法は、
樹脂からなる基材と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備える樹脂成形シートを用い、
前記第1の熱膨張層の上であって、前記第1の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第1の領域上に、電磁波を熱に変換する第1の熱変換層を形成する第1の熱変換層形成工程と、
前記第2の熱膨張層の上であって、前記第2の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第2の領域上に、電磁波を熱に変換する第2の熱変換層を形成する第2の熱変換層形成工程と、
前記第1の熱変換層に電磁波を照射し、前記第1の熱膨張層を膨張させ、前記第1の領域において前記基材を変形させる第1の成形工程と、
前記第2の熱変換層に電磁波を照射し、前記第2の熱膨張層を膨張させ、前記第2の領域において前記基材を変形させる第2の成形工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点に係る造形物の製造方法は、
樹脂からなる基材と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備える樹脂成形シートを用い、
前記第1の熱膨張層の上であって、前記第1の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第1の領域上に、電磁波を熱に変換する第1の熱変換層を形成する第1の熱変換層形成工程と、
前記第2の熱膨張層の上であって、前記第2の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第2の領域上に、電磁波を熱に変換する第2の熱変換層を形成する第2の熱変換層形成工程と、
前記樹脂成形シートの一方の面又は他方の面から電磁波を照射することによって、前記第1の熱変換層において熱を生じさせ、前記第1の熱膨張層を膨張させて前記第1の領域において前記基材を変形させるとともに、前記第2の熱変換層において熱を生じさせ、前記第2の熱膨張層を膨張させて前記第2の領域において前記基材を変形させる成形工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易に成形することが可能な樹脂成形シート及び樹脂成形シートの製造方法と、これを用いた造形物及び造形物の製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る樹脂成形シートの概要を示す断面図である。
図2図2(a)〜図2(c)は、実施形態1に係る樹脂成形シートの製造方法を示す断面図である。
図3図3(a)は、実施形態1に係る造形物を示す断面図であり、図3(b)は造形物の一部を示す断面図である。
図4図4は、膨張装置の構成を示す図である。
図5】実施形態1に係る造形物の製造方法を示すフローチャートである。
図6図6(a)〜図6(c)は、実施形態1に係る造形物の製造方法を模式的に示す断面図である。
図7】実施形態2に係る樹脂成形シートの概要を示す断面図である。
図8図8(a)〜図8(d)は、実施形態1に係る樹脂成形シートの製造方法を示す断面図である。
図9図9(a)は、実施形態2に係る樹脂成形シートの熱膨張層を膨張させた状態を示す図であり、図9(b)は、実施形態2に係る造形物の概要を示す図である。
図10】実施形態2に係る造形物の製造方法を示すフローチャートである。
図11図11(a)〜図11(d)は、実施形態2に係る造形物の製造方法を模式的に示す断面図である。
図12図12(a)は実施形態3に係る樹脂成形シートの概要を示す断面図であり、図12(b)は実施形態3に係る造形物を示す断面図である。
図13図13(a)は、その他の実施形態に係る樹脂成形シートを示す図であり、図13(b)は、図13(a)に示す樹脂成形シートの熱膨張層を膨張させた状態を示す図であり、図13(c)は、その他の実施形態に係る造形物を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る樹脂成形シート、樹脂成形シートの製造方法、造形物及び造形物の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
本明細書において、「造形物」は、凸部(凸)、凹部(凹)等の単純な形状、幾何学形状、文字、模様、装飾等の形状を、所定の面に造型(形成)されている樹脂成形シートを指す。ここで、「装飾」とは、視覚及び/又は触覚を通じて美感を想起させるものである。「造形(又は造型)」は、形のあるものを作り出すことを意味し、装飾を加える加飾、装飾を形成する造飾のような概念をも含む。また、本実施形態の造形物は、所定の面に、凹凸、幾何学形状、装飾等を有する立体物であるが、いわゆる3Dプリンタにより製造された立体物と区別するため、本実施形態の造形物を2.5次元(2.5D)オブジェクト又は疑似三次元(Pseudo−3D)オブジェクトとも呼ぶ。本実施形態の造形物を製造する技術は、2.5D印刷技術又はPseudo−3D印刷技術とも呼べる。
【0016】
また、本明細書では、説明の便宜上、樹脂成形シートにおいて、熱膨張層が設けられている面を表側(表面)又は上面、基材側を裏側(裏面)又は下面という表現をする。ここで、「表」、「裏」、「上」又は「下」の用語は樹脂成形シートの使用方法を限定するものではなく、成形後の樹脂成形シートの利用方法によっては、樹脂成形シートの裏面を表として使用することもある。造形物についても同様である。
【0017】
<実施形態1>
(樹脂成形シート10)
樹脂成形シート10は、図1に示すように、基材11と、基材11の第1の面(図1に示す上面)上に設けられた第1の熱膨張層12と、基材11の第2の面(第1の面に対向する面、図1に示す下面)上に設けられた第2の熱膨張層13と、を備える。詳細に後述するように、樹脂成形シート10では、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13が膨張する力を利用して基材11を変形させ、基材11は変形後の形状を維持する。これにより、樹脂成形シート10の基材11を所望の形に成形し、造形物41を製造する。
【0018】
基材11は、第1の熱膨張層12及び第2の熱膨張層13を支持する。基材11は、シート状の部材であり、樹脂製である。樹脂としては、熱可塑性樹脂が挙げられ、これらに限定するものではないが、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)系樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。また、基材11としては、変形が容易であるよう、無延伸PETフィルムなどを用いることが好適である。基材11の厚みは、例えば100〜500μmである。また、後述するように第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを膨張させる工程を同時に行う場合、基材11は透明であることが好適である。
【0019】
また、基材11は熱によって変形しやすいことが求められるため、基材11として用いる材料、基材11の厚さ等は、熱によって容易に変形するように決定される。また、基材11は変形後の形状を維持することが必要であるため、基材11として用いる材料、基材11の厚さ等は、変形後の形状を維持可能なように決定される。また、基材11は、加工後の造形物41の用途に応じて適した材料、厚み等に設計する。例えば、造形物41の用途によっては、変形後の形状を維持するだけでなく、押圧によって変形された後に元の形状に復元可能な弾性力を有することが求められる。このような場合には、変形後の基材11が要求される弾性力を有するよう、基材11の材料を決定する。
【0020】
第1の熱膨張層12は、基材11の第1の面(図1では上面)上に設けられる。第1の熱膨張層12は、加熱の程度(例えば、加熱温度、加熱時間)に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル、マイクロパウダー)が分散配置されている。なお、第1の熱膨張層12は、1つの層を有する場合に限らず、複数の層を有してもよい。第1の熱膨張層12のバインダとしては、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の任意の熱可塑性樹脂を用いる。また、熱膨張性マイクロカプセルは、プロパン、ブタン、その他の低沸点気化性物質を、熱可塑性樹脂の殻内に含むものである。殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、あるいは、それらの共重合体等の熱可塑性樹脂から形成される。例えば、熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、約5〜50μmである。このマイクロカプセルを熱膨張開始温度以上に加熱すると、樹脂からなる殻が軟化し、内包されている低沸点気化性物質が気化し、その圧力によって殻がバルーン状に膨張する。用いるマイクロカプセルの特性にもよるが、マイクロカプセルの粒径は膨張前の粒径の5倍程度に膨張する。なお、マイクロカプセルの粒径には、ばらつきがあり、全てのマイクロカプセルが同じ粒径を有するものではない。
【0021】
また、本実施形態では、詳細に後述するように、第1の熱膨張層12は、基材11の第1の面上に第1の凸部11aを形成するために用いられる。このため、第1の熱膨張層12は、基材11の第1の面において、少なくとも第1の凸部11aを形成する領域(図1に示す第1の領域10A)に設けられている。また、第1の熱膨張層12は、第1の凸部11aを形成しない領域(図1に示す第3の領域10C)にも形成されていてもよい。
【0022】
また、第1の熱膨張層12は、少なくとも基材11を所望の形に変形可能な程度の厚みを備えればよい。このため、第1の熱膨張層12は、基材11の厚みと同じ又は薄く形成することができる。結果として、第1の熱膨張層12を形成するための材料を低減させることができ、コスト削減を図ることができる。もっとも、例えば、基材11が変形しにくい材料である、造形物の形状により第1の熱膨張層12を高く発泡させる必要がある等、第1の熱膨張層12を厚く形成する必要がある場合には、第1の熱膨張層12は基材11よりも厚く形成されてもよい。
【0023】
第2の熱膨張層13は、基材11の第2の面(図1では、下面)上に設けられる。第2の熱膨張層13も第1の熱膨張層12と同様に、加熱の程度に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性材料が分散配置されている。第2の熱膨張層13も、1つの層を有する場合に限らず、複数の層を有してもよい。第2の熱膨張層13のバインダと、熱膨張性マイクロカプセルとは、第1の熱膨張層12で説明したバインダと熱膨張性カプセルと同様である。第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とは、一部又は全てが異なる材料から形成されていてもよいが、同じ材料を用いて形成するとコストを削減することができ好適である。
【0024】
また、第2の熱膨張層13も、第1の熱膨張層12と同様に基材11の第2の面上に第2の凸部11cを形成するために用いられる。このため、第2の熱膨張層13は、基材11の第2の面において少なくとも第2の凸部11cを形成する領域(図1に示す第2の領域10B)に設けられている。また、第2の熱膨張層13も、第2の凸部11cを形成しない領域(第1の熱膨張層12における第3の領域10Cと同様の領域)にも形成されていてもよい。また、第2の熱膨張層13も、少なくとも基材11を所望の形に変形可能な程度の厚みを備えればよい。このため、第2の熱膨張層13は、基材11の厚みと同じ又は薄く形成することができる。もっとも、第1の熱膨張層12と同様に、第2の熱膨張層13を基材11より厚く形成してもよい。
【0025】
基材11を良好に変形させるためには、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13との一方を用いて基材11を変形させる領域で、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13との他方によって基材11の変形が阻害されないようにすることが好適である。従って、基材11において第1の熱膨張層12によって変形される領域(図1に示す第1の領域10A)では、基材11の第2の面上には第2の熱膨張層13が設けられないことが好適である。同様に、基材11において第2の熱膨張層13によって変形される領域(図1に示す第2の領域10B)では、基材11の第1の面上には第1の熱膨張層12が設けられないことが好適である。このため、第1の領域10Aと第2の領域10Bは重複しないように設けられることが好適である。換言すると、第1の領域10Aと第2の領域10Bとは基材11を介して対向しないように設けられている。なお、基材11において第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とのいずれによっても変形されない領域(例えば、図1に示す第3の領域10C)では、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13との少なくともいずれか一方が設けられていてもよい。
【0026】
(樹脂成形シート10の製造方法)
また、本実施形態の樹脂成形シート10は、以下に示すようにして製造される。
まず、図2(a)に示すように、基材11としてシート状の材料、例えば無延伸PETからなるシートを用意する。基材11は、ロール状であっても、予め裁断されていてもよい。
【0027】
次に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル)とを混合させ、第1の熱膨張層12を形成するためのインクを調製する。このインクを用い、任意の印刷装置、例えばスクリーン印刷装置によって、基材11の第1の面上に第1の熱膨張層12に対応するパターンにインクを載せる。続いて溶媒を揮発させ、図2(b)に示すように、第1の熱膨張層12を形成する。なお、所望の厚さの第1の熱膨張層12を形成するため、印刷を複数回行ってもよい。
【0028】
続いて、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料とを混合させ、第2の熱膨張層13を形成するためのインクを調製する。このインクを用い、任意の印刷装置、例えばスクリーン印刷装置によって、基材11の第2の面上に第2の熱膨張層13に対応するパターンにインクを載せる。続いて溶媒を揮発させ、図2(c)に示すように、第2の熱膨張層13を形成する。所望の厚さの第2の熱膨張層13を形成するため、印刷を複数回行ってもよい。なお、第1の熱膨張層12を形成するためのインクと同じインクを用いて、第2の熱膨張層13を形成してもよい。また、ロール状の基材11を用いた場合は、必要であれば裁断を行う。
これにより、樹脂成形シート10が製造される。
【0029】
(造形物41)
次に、造形物41について、図面を用いて説明する。造形物41は、樹脂成形シート10の第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを膨張させて製造される。
【0030】
造形物41では、図3(a)に示すように第1の熱膨張層12は、上面に凸部12aを備え、第2の熱膨張層13は、図3(a)に示す下方向に突出した凸部13aを備える。なお、図3(b)は造形物41の一部を示す断面図である。基材11は、第1の面において、第1の熱膨張層12の膨張に追従するように変形された凸部11aを有する。同様に基材11は、第2の面において、第2の熱膨張層13の膨張に追従するように変形された凸部11cを有する。また、基材11は、第1の凸部11aに対応する形状を有する凹部11bと、第2の凸部11cに対応する形状を有する凹部11dとを有する。
【0031】
第1の凸部11a及び第1の熱膨張層12の凸部12aは、基材11の第1の面において周囲の領域から突出している。同様に第2の凸部11c及び第2の熱膨張層13の凸部13aは、基材11の第2の面において周囲の領域から突出している。また、凸部12a上には、第1の熱膨張層12を膨張させるために用いられる第1の電磁波熱変換層(以下、熱変換層と称する)81が設けられる。凸部13a上にも、第2の熱膨張層13を膨張させるために用いられる第2の電磁波熱変換層(以下、熱変換層と称する)82が設けられる。
【0032】
本実施形態では、後述するように、第1の熱変換層81と第2の熱変換層82とへ電磁波を照射することにより、第1の熱変換層81と第2の熱変換層82とを発熱させる。電磁波熱変換材料としては、セシウム酸化タングステン、六ホウ化ランタンのような赤外線吸収剤、カーボンブラック等が挙げられる。第1の熱変換層81及び第2の熱変換層82は、電磁波の照射により、熱を帯びるため、帯熱層とも呼べる。樹脂成形シート10に設けられた第1の熱変換層81で生じた熱は、基材11へと伝達され、基材11を軟化させる。加えて、第1の熱変換層81で生じた熱は、第1の熱膨張層12へと伝達することにより、第1の熱膨張層12中の熱膨張性材料が発泡し、その結果、第1の熱膨張層12が膨張する。第1の熱変換層81は、第1の熱変換層81が設けられていない他の領域と比較し、電磁波を速やかに熱へと変換する。このため第1の熱変換層81の近傍の領域のみを選択的に加熱することができ、第1の熱膨張層12の特定の領域のみを選択的に膨張させることができる。また、基材11は、第1の熱膨張層12を発泡、膨張させる際に第1の熱膨張層12の膨張する方向に追従する形で変形し、変形後はその形状を維持する。第2の熱変換層82についても同様であり、第2の熱変換層82で生じた熱によって、第2の熱膨張層13の特定の領域を選択的に膨張させることができる。これにより、基材11は、第2の熱膨張層13の膨張する方向に追従する形で変形する。
【0033】
第1の熱膨張層12が膨張することにより、第1の熱膨張層12には図3(a)に示す凸部12aが形成される。この凸部12aが形成される際、第1の熱膨張層12が膨張する力は基材11とは反対の方向(図3(a)に示す上側)に働く。この膨張する力に引かれるようにして、基材11は図3(a)に示す上方向に変形する。そして、周囲の領域から突出するように、基材11の上面に第1の凸部11aが形成される。また、基材11の裏面では、表面に形成される第1の凸部11aの形状に対応する第1の凹部11bが形成される。第1の凹部11bの形状は、第1の凸部11aとほぼ同じ形状であり、基材11の厚み分だけ、第1の凸部11aを縮小させた形状である。本明細書では、このような第1の熱膨張層12の凸部12a、基材11の第1の凸部11a及び第1の凹部11bの形状をエンボス形状と表現する。
【0034】
同様に第2の熱膨張層13が膨張することにより、第2の熱膨張層13には図3(a)に示す凸部13aが形成される。この凸部13aが形成される際、第2の熱膨張層13が膨張する力は、基材11とは反対の方向(図3(a)に示す下側)に働くため、基材11は図3(a)に示す下方向に変形する。そして、周囲の領域から突出するように、基材11の下面に第2の凸部11cが形成される。また、基材11の表面では、下面に形成される第2の凸部11cの形状に対応する第2の凹部11dが形成される。第2の凹部11dの形状は、第2の凸部11cとほぼ同じ形状である。第2の熱膨張層13の凸部13a、基材11の第2の凸部11c及び第2の凹部11dの形状もエンボス形状と表現する。
【0035】
また、本実施形態の樹脂成形シート10では、特に第1の熱膨張層12を利用して基材11を変形させるため、図3(b)に示すように、基材11の変形量Δh1を、第1の熱膨張層12の発泡高さΔh2と比較して大きくしてもよい。なお、変形量Δh1は、基材11の変形していない領域の表面と比較した第1の凸部11aの高さである。また、第1の熱膨張層12の発泡高さ(差分)Δh2は、第1の熱膨張層12の膨張後の高さから、第1の熱膨張層12の膨張前の高さを引いたものである。また、差分Δh2は、熱膨張性材料の膨張によって生じた第1の熱膨張層12の高さの増加量とも言いうる。第2の熱膨張層13を用いて形成される基材11の変形量についても同様である。
【0036】
造形物41は、例えばランプシェードなどに用いる。この場合、造形物41は、造形物41の表側の面と裏側の面との少なくともいずれか一方の上に、カラーインク層(図示せず)を備えてもよい。カラーインク層は、オフセット印刷、フレキソ印刷等任意の印刷装置で用いられるインクからなる層である。カラーインク層は、水性インク、油性インク、紫外線硬化型インク等のいずれから形成されてもよい。また、カラーインク層は、文字、数字、写真、模様等の任意の画像を表現する層である。特に、例えば水性インクジェットプリンタでカラーインク層を形成する場合は、樹脂成形シート上にインクを受容するインク受容層(図示せず)を設け、カラーインク層を形成することが好適である。造形物41は、ランプシェードに限られず、任意の物に使用可能である。
【0037】
(造形物41の製造方法)
次に、図4図5及び図6(a)〜図6(c)を参照して、樹脂成形シート10を用いて造形物41を製造する方法の流れを説明する。以下の造形物41の製造方法では、枚葉式を例に挙げて説明するが、ロール状に巻かれた樹脂成形シート10を使用してもよい。
【0038】
まず、第1の熱膨張層12及び第2の熱膨張層13を膨張させる膨張装置50を図4に示す。膨張装置50は、照射部51、反射板52、温度センサ53、冷却部54及び筐体55を備え、照射部51、反射板52、温度センサ53及び冷却部54は筐体55内に収められている。樹脂成形シート10は、膨張装置50の下を搬送される。
【0039】
照射部51は、ランプヒータ、例えばハロゲンランプを備えており、樹脂成形シート10に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)、又は、中赤外領域(波長1400〜4000nm)の電磁波(光)を照射する。熱変換材料を含む発泡インクによる熱変換層が印刷された樹脂成形シート10に電磁波を照射すると、熱変換層が印刷された部分では、熱変換層が印刷されていない部分に比べて、より効率良く電磁波が熱に変換される。そのため、樹脂成形シート10のうちの熱変換層が印刷された部分が主に加熱され、膨張を開始する温度に達すると熱膨張性材料が膨張する。なお、照射部51はハロゲンランプに限られず、電磁波を照射可能であれば、他の構成を採ることも可能である。また、電磁波の波長も上記の範囲に限定されるものではない。
【0040】
反射板52は、照射部51から照射された電磁波を受ける被照射体であって、ランプヒータから照射された電磁波を樹脂成形シート10に向けて反射する機構である。
温度センサ53は、熱電対、サーミスタ等であって、反射板52の温度を測定する測定手段として機能する。反射板52の温度を測定することで、照射部51が照射している電磁波の強さ、すなわち電磁波のエネルギーの大きさの指標とすることができる。
冷却部54は、反射板52の上側に設けられる。冷却部54は、少なくとも1つの給気ファンを備え、膨張装置50の内部を冷却する冷却手段として機能する。
【0041】
膨張装置50において、樹脂成形シート10は、図示しない搬送ローラ等によって搬送されながら、照射部51によって照射される電磁波を受ける。その結果、樹脂成形シート10に設けられた第1の熱変換層81及び/又は第2の熱変換層82が熱を帯びる。この熱によって第1の熱膨張層12及び/又は第2の熱膨張層13が膨張し、基材11が変形する。
【0042】
また、本実施形態の造形物の製造方法では、濃淡画像(第1の発泡データ、第2の発泡データ)の濃淡の制御、電磁波の制御等により、熱膨張性材料の膨張量を制御し、第1の熱膨張層12及び第2の熱膨張層13の隆起する高さを制御し、樹脂成形シート10の表面に所望の凸又は凹凸形状を形成することができる。また、電磁波の制御は、膨張装置50において樹脂成形シート10に電磁波を照射して膨張させる際、樹脂成形シート10を所望の高さに膨張させるために、樹脂成形シート10が単位面積当たりに受けるエネルギー量を制御することをいう。
【0043】
(造形物41の製造方法)
次に、図5に示すフローチャート及び図6(a)〜図6(c)に示す樹脂成形シート10の断面図を参照して、樹脂成形シート10を成形し、造形物41を製造する処理(造形物製造処理)の流れを説明する。
【0044】
第1に、樹脂成形シート10を準備する。樹脂成形シート10の表面において発泡及び膨張させる部分を示す第1の発泡データ(第1の熱変換層81を形成するためのデータ)と、樹脂成形シート10の裏面において発泡及び膨張させる部分を示す第2の発泡データ(第2の熱変換層82を形成するためのデータ)とは、事前に決定しておく。樹脂成形シート10を印刷装置(図示せず)へと搬送し、樹脂成形シート10の表面に第1の熱変換層81を印刷する(ステップS1)。第1の熱変換層81は、電磁波熱変換材料を含むインク、例えばカーボンブラックを含む発泡インクで形成された層である。印刷装置は、指定された第1の発泡データに従って、樹脂成形シート10の表面に、熱変換材料を含む発泡インクを印刷する。その結果、図6(a)に示すように、樹脂成形シート10の表面に第1の熱変換層81が形成される。
【0045】
第2に、樹脂成形シート10を印刷装置(図示せず)へと搬送し、樹脂成形シート10の裏面に第2の熱変換層82を印刷する(ステップS2)。第2の熱変換層82は、電磁波熱変換材料を含むインク、例えばカーボンブラックを含む発泡インクで形成された層である。印刷装置は、指定された第2の発泡データに従って、樹脂成形シート10の裏面に、熱変換材料を含む発泡インクを印刷する。その結果、図6(b)に示すように、樹脂成形シート10の裏面に第2の熱変換層82が形成される。なお、ステップS1とステップS2とは逆の順に実施してもよい。
【0046】
第3に、第1の熱変換層81と第2の熱変換層82とが印刷された樹脂成形シート10を、膨張装置50へと搬送する。膨張装置50では、搬送された樹脂成形シート10へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS3)。具体的に説明すると、膨張装置50では、照射部51によって樹脂成形シート10の表面(第1の面)に電磁波を照射する。樹脂成形シート10の表面に印刷された第1の熱変換層81に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、第1の熱変換層81が発熱し、基材11が軟化する。更に、第1の熱変換層81で生じた熱は第1の熱膨張層12に伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。その結果、図6(c)に示すように、樹脂成形シート10の第1の熱膨張層12のうちの第1の熱変換層81が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。第1の熱変換層81からの熱により軟化された基材11は、第1の熱膨張層12の膨張する力に引かれて変形する。
【0047】
同様に照射部51によって照射された電磁波は、基材11を介して第2の熱変換層82に含まれる熱変換材料にも吸収される。これにより第2の熱変換層82が発熱し、基材11が軟化する。更に、第2の熱変換層82で生じた熱により、第2の熱膨張層13の第2の熱変換層82が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。結果として図6(c)に示すように、第2の熱変換層82からの熱により軟化された基材11は、第2の熱膨張層13の膨張する力に引かれて変形する。このように照射部51から、樹脂成形シート10の一方の面から電磁波を照射することで、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを同時に膨張させることができる。この場合、電磁波が基材11の第2の面へも良好に伝わるよう、基材11は透明であることが好ましい。なお、電磁波の照射は樹脂成形シート10の裏面に対して行ってもよい。この場合は、電磁波は、第2の熱変換層82に含まれる熱変換材料に吸収されるとともに、基材11を介して第1の熱変換層81に含まれる熱変換材料に吸収されることとなる。
【0048】
以上のような手順によって、樹脂成形シート10の基材11が変形され、造形物41が製造される。
【0049】
このように本実施形態では、第1の熱変換層81と第2の熱変換層82とを印刷により形成し、これらの熱変換層へ電磁波を照射することによって、樹脂成形シート10を容易に所望の形状に変形させることができる。特に、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13を膨張させることによって基材11を変形させることができるため、成形するための金型などが不要となり、樹脂成形シート10の成形に要する時間及び費用を低減させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、第1の熱変換層81(第1の発泡データ)と第2の熱変換層82(第2の発泡データ)との濃淡の制御、電磁波の制御等を用いることで、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを隆起させる位置、高さ等を任意に制御して、容易に樹脂成形シート10を成形し、造形物を形成することができる。
【0051】
加えて、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを同時に発泡させ、膨張させることで基材11の第1の面と第2の面とを同時に成形することができ、更に簡易に成形することが可能となる。特に基材11として透明な樹脂シートを選択すると、樹脂成形シート10のいずれか一方の面からの電磁波の照射により、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを膨張させることもできる。
【0052】
<実施形態2>
以下、実施形態2に係る樹脂成形シート、樹脂成形シートの製造方法、造形物及び造形物の製造方法について、図面を用いて説明する。本実施形態の樹脂成形シート20が実施形態1に係る樹脂成形シート10と異なるのは、基材11と第1の熱膨張層12との間に第1の中間層21を備え、基材11と第2の熱膨張層13との間に第2の中間層22を備える点である。実施形態1と共通する特徴については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
(樹脂成形シート20)
樹脂成形シート20は、図7に示すように、基材11と、第1の中間層21と、第1の熱膨張層12と、第2の中間層22と、第2の熱膨張層13と、を備える。基材11、第1の熱膨張層12及び第2の熱膨張層13は、実施形態1の樹脂成形シート10の基材11、第1の熱膨張層12及び第2の熱膨張層13と同様である。
【0054】
第1の中間層21は、基材11の第1の面(図7に示す上面)上に設けられる。第1の中間層21は、基材11に対して剥離可能に接着されている。また、第1の中間層21の上には第1の熱膨張層12が設けられる。本実施形態では、第1の中間層21を基材11と第1の熱膨張層12との間に設け、更に第1の中間層21と基材11との間の剥離強度を、第1の中間層21と第1の熱膨張層12との間の剥離強度より弱くすることにより、第1の中間層21を基材11から剥離し、これにより第1の熱膨張層12を基材11から除去することができる。
【0055】
第1の中間層21は、第1の熱膨張層12の一部又は全部の下に設けられる。第1の中間層21は、図7に示すように基材11の第1の面全体を覆うように設けられていてもよいし、基材11の第1の面において、第1の熱膨張層12を膨張後に剥離する部分等、第1の熱膨張層12の一部だけを除去するように設けられてもよい。
【0056】
第1の中間層21の剥離強度としては、第1の熱膨張層12の膨張前に、少なくとも通常の使用範囲において第1の熱膨張層12が樹脂成形シート20から剥離してしまわないことが求められる。通常の使用範囲は、例えば樹脂成形シート20を持ち運ぶといった、ユーザによって行われる一般的な動作、樹脂成形シート20に印刷を施す、第1の熱膨張層12を膨張させるといった樹脂成形シート20において通常想定される使用態様を含む。
【0057】
加えて、第1の中間層21は、第1の熱膨張層12を剥離する際に内部で破断しない程度の破断強度を有することが好ましい。このような第1の中間層21としては、一方の面に接着層が設けられた樹脂フィルムが挙げられる。接着層としては、熱硬化系の接着剤を用いることができる。熱硬化系の接着剤としては、例えば塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を用いた接着剤が好適である。接着剤の溶媒としては、水系、溶剤系のいずれでもよい。また、接着層としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の微粘着力の粘着剤を用いてもよい。樹脂フィルムは、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、又はこれらの共重合体から選択される樹脂からなる。また、樹脂フィルムの接着層が設けられた面を基材11に対向させ、接着層によって第1の中間層21を基材11に剥離可能に接着する。第1の中間層21としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるフィルムを使用することができる。例えば、第1の中間層21のフィルムは、12〜15μmの厚みとし、接着層は2μmの厚みとする。また、接着層の剥離強度としては、180°剥離強度試験で測定した場合、0.06N/20mm以上であれば、ユーザによる一般的な動作によって第1の中間層21が基材11から剥離することを実質的に防ぐことができる。また、第1の中間層21を基材11から良好に剥離させるため、接着層の剥離強度は、180°剥離強度試験で測定した場合、0.5N/20mm以下、更には0.4N/20mm以下であることが好ましい。
【0058】
また、第1の中間層21は、接着層とフィルムとを有する構成に限られない。中間層は、第1の中間層21と基材11との間の剥離強度が、第1の中間層21と第1の熱膨張層12との間の剥離強度より弱ければよく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等から選択される樹脂を用いて形成することができる。このような樹脂として、例えば、高松油脂社製NS625が挙げられる。
【0059】
第1の熱膨張層12は、基材11の第1の面上に設けられ、第1の熱膨張層12の少なくとも一部は第1の中間層21上に設けられる。第1の熱膨張層12は、実施形態1に示す第1の熱膨張層12と同様に、加熱の程度に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性材料が分散配置されている。熱膨張性材料及びバインダの材料は、実施形態1と同様である。
【0060】
第2の中間層22は、基材11の第2の面(図7に示す下面)上に設けられる。第2の中間層22は、基材11に対して剥離可能に接着されている。また、第2の中間層22の上には第2の熱膨張層13が設けられる。第2の中間層22も、第1の中間層21と同様に、第2の中間層22と基材11との間の剥離強度を、第2の中間層22と第2の熱膨張層13との間の剥離強度より弱くすることにより、第2の熱膨張層13を基材11から剥離して除去することができる。第2の中間層22は、基材11の第2の面の全体を覆うように設けられていてもよいし、第2の面を部分的に覆うように設けられてもよい。この場合、第2の熱膨張層13を除去するため、少なくとも第2の熱膨張層13が設けられる領域において第2の中間層22を設ければよい。
【0061】
第2の中間層22の剥離強度も、第1の中間層21と同様に、少なくとも通常の使用範囲において剥離してしまわないことが求められる。加えて、第2の中間層22は、第2の熱膨張層13を剥離する際に内部で破断しない程度の破断強度を有することが好ましい。第2の中間層22としては、第1の中間層21と同様の、一方の面に接着層が設けられた樹脂フィルムを使用することができる。また、第2の中間層22も、第1の中間層21と同様に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等から選択される樹脂を用いて形成することもできる。
【0062】
第2の熱膨張層13は、第2の中間層22上に設けられる。第2の熱膨張層13は、実施形態1に示す第2の熱膨張層13と同様に、加熱の程度(例えば、加熱温度、加熱時間)に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性材料が分散配置されている。熱膨張性材料及びバインダの材料は、実施形態1と同様である。
【0063】
本実施形態でも、第1の領域10Aと第2の領域10Bとは重複しないように設けられることが好適である。なお、基材11において第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とのいずれによっても変形されない領域(例えば、図7に示す第3の領域10C)では、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13との少なくともいずれか一方が設けられていてもよい。
【0064】
(樹脂成形シート20の製造方法)
また、本実施形態の樹脂成形シート20は、以下に示すようにして製造される。
まず、図8(a)に示すように、基材11としてシート状の材料、例えば無延伸PETからなるシートを用意する。基材11は、ロール状であっても、予め裁断されていてもよい。
【0065】
次に、入力ローラ、ヒータローラ、ローラ、及び出力ローラを備えるラミネート装置によって、基材11の第1の面上に第1の中間層21を貼り付ける。第1の中間層21としては、基材11に対向する面に接着層が設けられた樹脂フィルムを使用する。接着層としては、熱硬化系の接着剤を用い、例えば塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を用いることが好適である。また、接着層としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の微粘着力の粘着剤を用いてもよい。例えば、基材11は、巻き取られた状態で、ラミネート装置の巻き出し位置に置かれる。基材11は、更に一対の入力ローラの間を通り、ヒータローラ及びローラに向かって搬送される。第1の中間層21として用いられるフィルムはヒータローラへと供給される。フィルムは、ヒータローラによって熱せられるとともに、ヒータローラとローラとの間を通過する際、圧がかけられ基材11に対して剥離可能に接着される。フィルムの接着後、基材11は、一対の出力ローラの間を通り、搬出され、巻き取られる。
【0066】
次に、第1の中間層21と同様の方法で、基材11の第2の面上に第2の中間層22を設ける。なお、基材11の第1の面と第2の面とにそれぞれフィルムを供給し、第1の中間層21と第2の中間層22とを同時に基材11に設けることも可能である。これにより図8(b)に示すように、第1の中間層21と第2の中間層22とが基材11上に貼り付けられる。
【0067】
次に、実施形態1と同様に、第1の熱膨張層12を形成するためのインクを調製し、スクリーン印刷装置等の任意の印刷装置を用いて、図8(c)に示すように第1の熱膨張層12を形成する。続いて、実施形態1と同様に第2の熱膨張層13を形成するためのインクを調製し、図8(d)に示すように第2の熱膨張層13を形成する。また、ロール状の基材11を用いた場合は、必要であれば裁断を行う。これにより、樹脂成形シート20が製造される。
【0068】
(造形物42)
次に、造形物42について、図面を用いて説明する。造形物42は、樹脂成形シート20の第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを膨張させ、基材11を変形させた後、第1の中間層21及び第1の熱膨張層12と、第2の中間層22及び第2の熱膨張層13とを除去したものである。
【0069】
まず、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを膨張させた状態の樹脂成形シート20を図9(a)に示し、造形物43を図9(b)に示す。第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを膨張させた後の樹脂成形シート20では、図9(a)に示すように、第1の熱膨張層12は、凸部12aを備える。また、第2の熱膨張層13も凸部13aを備える。基材11は、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13に追従して変形されており、実施形態1と同様の凸部11a、11cを備える。また、凸部12a上には第1の熱変換層81が、凸部13a上には第2の熱変換層82がそれぞれ設けられている。
【0070】
第1の熱膨張層12、第2の熱膨張層13等が除去された造形物42は、図9(b)に示すように、第1の面に凸部11aを備え、第2の面に凸部11aに対応する形状を有する凹部11bを備える。また、造形物42は、第2の面に凸部11cを備え、第1の面に凸部11cに対応する形状を有する凹部11dを備える。造形物42でも、実施形態1と同様に凸部11a,11c及び凹部11b,11dの形は任意に変更可能であり、使用方法も任意である。また、造形物42でも、造形物42の表側の面と裏側の面との少なくともいずれか一方の上に、カラーインク層(図示せず)を備えてもよい。
【0071】
(造形物42の製造方法)
次に、図10に示すフローチャート及び図11(a)〜図11(d)に示す樹脂成形シート20の断面図を参照して、樹脂成形シート20を用いて造形物42を得る処理(造形物製造処理)の流れを説明する。
【0072】
第1に、実施形態1と同様にして、図11(a)に示すように樹脂成形シート20の第1の面上に設けられた第1の熱膨張層12上に第1の熱変換層81を印刷する(ステップS21)。第2に、実施形態1と同様にして図11(b)に示すように、樹脂成形シート20の第2の面上に設けられた第2の熱膨張層13上に第2の熱変換層82を形成する(ステップS22)。
【0073】
第3に、樹脂成形シート20を、第1の面が上側を向くように膨張装置50へと搬送し、樹脂成形シート20へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS23)。その結果、第1の熱変換層81と第2の熱変換層82とが発熱し、基材11が軟化する。更に、第1の熱変換層81で生じた熱は第1の熱膨張層12へと伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。第1の熱変換層81からの熱により軟化された基材11は、図11(c)に示すように第1の熱膨張層12の膨張する力に引かれて変形する。同様に第2の熱変換層82で生じた熱により第2の熱膨張層13が発泡、膨張し、基材11が変形する。
【0074】
第4に、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを基材11から剥離させ、除去する(ステップS24)。具体的には、樹脂成形シート20の端において、第1の中間層21の一部を基材11から剥離させ、第1の中間層21とその上に設けられた第1の熱膨張層12とを引っ張りながら基材11から剥離させる。剥離は手作業で行ってもよく、器具、機械などを使用してもよい。その結果、図11(d)に示すように、第1の中間層21と第1の熱膨張層12とが剥離される。同様に、第2の中間層22と第2の熱膨張層13とを基材11の第2の面から剥離して除去する。
【0075】
以上のような手順によって、樹脂成形シート20の基材11が成形され、造形物42が製造される。
【0076】
このように本実施形態によれば、第1の熱変換層81と第2の熱変換層82とを印刷により形成し、これらの熱変換層へ電磁波を照射することによって、樹脂成形シート20を容易に所望の形状に変形させることができる。
【0077】
第1の熱膨張層12及び第2の熱膨張層13は、透明又は半透明の基材11と比較すると可視光透過性が低く、特に膨張された部分では第1の熱膨張層12及び第2の熱膨張層13の可視光透過性は低い。このため、透明又は半透明の基材11の上に熱膨張層が存すると可視光透過性が第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13によって低下する。しかし、本実施形態では、第1の熱膨張層12及び第2の熱膨張層13を除去することができるため、基材11の透光性が熱膨張層によって損なわれない。従って、特に透明又は半透明の基材の成形に特に好適である。
【0078】
上述した実施形態2では、基材11の第1の面と第2の面の両方に中間層を設ける構成を例に挙げたがこれに限られず、いずれか一方の面に中間層を設け、一方の面に設けられた熱膨張層を剥離する構成であってもよい。この場合は他方の面に設けられた熱膨張層は除去されないため、実施形態1のように基材11の成形後に残存する。
【0079】
また、上述した実施形態2では、熱膨張層と基材との間に中間層を設けることによって熱膨張層を除去する構成を例に挙げて説明したが、これに限られず、熱膨張層(第1の熱膨張層12、第2の熱膨張層13)に含有されるバインダを熱可塑性エラストマーとし、熱膨張層自体を引っ張って基材11から剥離させることも可能である。このような熱可塑性エラストマーとしては、これに限るものではないが、ポリ塩化ビニール、エチレンプロピレンラバー(EPR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、又はポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。スチレン系エラストマーを用いることが好適である。
【0080】
また、熱膨張層を基材11を変形させた後に剥離させる場合、剥離させる際に熱膨張層が破断しないことが求められる。加えて、熱膨張層を膨張させる際に熱膨張層が基材11から剥離してしまうと、基材11を良好に変形させることができないことがある。このため、熱膨張層と基材との間の接着力は、基材11が熱膨張層に追従して変形可能な程度以上有する必要がある。加えて、熱膨張層の破断強度は、熱膨張層と基材との間の剥離強度と比較して大きく、2倍以上であることが好適である。
【0081】
<実施形態3>
次に実施形態3に係る樹脂成形シート30について図12(a)及び図12(b)を用いて説明する。本実施形態では、熱膨張層中に熱変換材料が混合されている点に特徴を有する。上述した実施形態と重複する部分については、詳細な説明は省略する。
【0082】
(樹脂成形シート30)
樹脂成形シート30は、図12(a)に示すように、基材11と、第1の熱膨張層31と、第2の熱膨張層32と、を備える。基材11は実施形態1と同様である。
【0083】
第1の熱膨張層31は、実施形態1と同様に、加熱の程度に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性材料が分散配置されている。熱膨張性材料及びバインダの材料は、実施形態1と同様である。本実施形態では、バインダ、熱膨張性材料に加えて、熱変換材料を更に含む点に特徴を有する。
【0084】
熱変換材料は、電磁波を熱に変換可能な材料であれば任意の材料を使用することができる。熱変換材料としては、カーボン、無機赤外線吸収剤などが挙げられる。本実施形態の膨張装置50では、ハロゲンランプを使用するため、特に近赤外領域で吸収率が高い(透過率が低く)ことが好ましい。また、熱膨張層に混入した際に色味が強く表れないことが好適であるため、可視光領域の透過率が高いことが好適である。このような熱変換材料としては、六ホウ化ランタン(LaB)又はセシウム酸化タングステンが好ましい。なお、熱変換材料は、いずれかを単独で用いてもよく、又は2つ以上の異なる材料を併用してもよい。
【0085】
第1の熱膨張層31は、実施形態1の第1の熱膨張層12と同様に基材11の第1の面上に設けられる。第1の熱膨張層31は、基材11の第1の面上に第1の凸部11aを形成するために用いられる。このため、第1の熱膨張層31は、基材11において、第1の凸部11aを形成する領域(第1の領域10A)に設けられている。
【0086】
第2の熱膨張層32は、第1の熱膨張層31と同様に、加熱の程度に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性材料が分散配置されている。また、本実施形態では第2の熱膨張層32は、上記の熱変換材料を更に含む。
【0087】
第2の熱膨張層32は、基材11の第2の面上に設けられる。第2の熱膨張層32は、基材11の第2の面上に第2の凸部11cを形成するために用いられる。このため、第2の熱膨張層32は、基材11において、第2の凸部11cを形成する領域(第2の領域10B)に設けられている。
【0088】
本実施形態でも、第1の領域10Aと第2の領域10Bとは重複しないように、換言すると第1の領域10Aと第2の領域10Bは基材11を介して対向しないように配置されることが好適である。
【0089】
(樹脂成形シート30の製造方法)
また、本実施形態の樹脂成形シート30は、以下に示すようにして製造される。
まず、実施形態1と同様に、基材11としてシート状の材料、例えば無延伸PETからなるシートを用意する。基材11は、ロール状であっても、予め裁断されていてもよい。
【0090】
次に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料とを混合させ、第1の熱膨張層31を形成するためのインクを調製する。この際、インクに更に熱変換材料を混合する。このインクを用い、任意の印刷装置、例えばスクリーン印刷装置によって、基材11の第1の面上に第1の熱膨張層31に対応するパターンにインクを載せる。続いて溶媒を揮発させ、第1の熱膨張層31を形成する。なお、所望の厚さの第1の熱膨張層31を形成するため、印刷を複数回行ってもよい。
【0091】
続いて、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料と熱変換材料とを混合させ、第2の熱膨張層32を形成するためのインクを調製する。このインクを用い、任意の印刷装置、例えばスクリーン印刷装置によって、第2の熱膨張層32を形成する。なお、第1の熱膨張層31を形成するためのインクと同じインクを用いて、第2の熱膨張層32を形成してもよい。また、必要であれば裁断を行う。
これにより、樹脂成形シート30が製造される。
【0092】
(造形物43)
次に、造形物43について、図面を用いて説明する。造形物43は、実施形態1と同様に第1の熱膨張層31と第2の熱膨張層32とを膨張させることで製造される。造形物43では、図12(b)に示すように第1の熱膨張層31は、上面に凸部31aを備え、第2の熱膨張層32は、図12(b)に示す下方向に突出した凸部32aを備える。基材11は、第1の面において、第1の熱膨張層31の膨張に追従するように変形された凸部11aを有する。同様に基材11は、第2の面において、第2の熱膨張層32の膨張に追従するように変形された凸部11cを有する。また、基材11は、第1の凸部11aに対応する形状を有する凹部11bと、第2の凸部11cに対応する形状を有する凹部11dとを有する。また、本実施形態では、熱変換材料は第1の熱膨張層31と第2の熱膨張層32内に含まれるため、造形物43は熱変換層を備えない。
【0093】
また、本実施形態の造形物43でも、実施形態1と同様に基材11の変形量は、第1の熱膨張層31の発泡高さと比較して大きくしてもよい。第2の熱膨張層32についても同様である。また、実施形態1と同様に、造形物43の用途も任意であり、造形物43は図示しないカラーインク層を備えてもよい。
【0094】
(造形物43の製造方法)
本実施形態では、第1の熱膨張層31と第2の熱膨張層とが、熱変換層の機能も兼ねるため、実施形態1のフローチャート(図5)におけるステップS1及びステップS2を省略し、ステップS3の実施のみで造形物43を製造することができる。
【0095】
具体的には、樹脂成形シート30を、表面が上側を向くように膨張装置50へと搬送する。膨張装置50では、搬送された樹脂成形シート30へ照射部51によって電磁波を照射する。その結果、第1の熱膨張層31と第2の熱膨張層32が発熱し、基材11が軟化する。更に、第1の熱膨張層31内で生じた熱により、熱膨張性材料が発泡、膨張する。その結果、樹脂成形シート30の第1の熱膨張層31が設けられた領域が膨張し、盛り上がる。第1の熱膨張層31からの熱により軟化された基材11は、図12(b)に示すように、第1の熱膨張層31の膨張する力に引かれて変形する。第2の熱膨張層32についても同様に、第2の熱膨張層32内で生じた熱により、基材11が軟化するとともに熱膨張性材料が発泡し、膨張する。これにより、基材を第2の熱膨張層32の膨張する力に引かれるように変形させることができる。
【0096】
このように本実施形態では、実施形態1と同様に、樹脂成形シート30を容易に所望の形状に成形することができる。特に本実施形態では、第1の熱膨張層31と第2の熱膨張層32内に熱変換材料が含有されていることにより、熱変換層を形成する工程を省略することができ、更に容易に樹脂成形シート30を容易に所望の形状に成形することができる。
【0097】
なお、本実施形態に実施形態2の特徴を組み合わせ、第1の熱膨張層31と第2の熱膨張層32との少なくともいずれか一方を基材11から剥離可能としてもよい。例えば、図13(a)に示すように、樹脂成形シート34は、基材11と第1の熱膨張層31との間に第1の中間層21を備え、基材11と第2の熱膨張層32との間に第2の中間層22を備える。次に、この樹脂成形シート34において、第1の熱膨張層31と第2の熱膨張層32とを実施形態3と同様に膨張させ、基材11を成形する。成形後、第1の中間層21と第2の中間層22とを基材11から剥離することで、第1の熱膨張層31と第2の熱膨張層32とを基材11から除去し、造形物44を得ることができる。
【0098】
本実施形態は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態1では、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを同時に膨張させる構成を例に挙げたが、これに限られない。第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13の一方を先に膨張させ、他方を後に膨張させることも可能である。例えば、図4に示す膨張装置50を用いて第1の熱膨張層12を膨張させ、基材11の第1の面上に凸部11aを形成し、続いて第2の熱膨張層13を膨張させ基材11の第2の面上に凸部11cを形成してもよい。実施形態2及び実施形態3についても同様である。この場合、実施形態2では、中間層を剥離する工程(ステップS24)は、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを膨張させた後、行ってもよいし、一方の熱膨張層を膨張させた後にステップS24を行い、他方の熱膨張層を膨張させた後に再度ステップS24を行ってもよい。
【0099】
また、上述した実施形態1では、膨張装置50では、樹脂成形シート10の一方の面から電磁波を照射する構成を例に挙げたが、これに限らず、膨張装置50が、別の照射部51を更に備え、樹脂成形シート10の他方の面から(図4に示す下側から)も電磁波を照射してもよい。この構成では、樹脂成形シート10の第1の面と第2の面に対して、各々の照射部から電磁波を照射し、同時に電磁波を照射することができる。これにより、第1の熱膨張層12と第2の熱膨張層13とを一括して膨張させることが可能である。実施形態2及び実施形態3についても同様である。
【0100】
上述した実施形態1及び2では、造形物の製造方法において第1の熱変換層81、第2の熱変換層82を形成する構成を例に挙げたが、これに限られない。例えば、第1の熱変換層81と、第2の熱変換層82とを形成する工程を樹脂成形シートの製造方法中に行うことも可能である。この場合、例えば実施形態1の樹脂成形シート10が、更に第1の熱変換層81及び第2の熱変換層82を備える。
【0101】
上述した実施形態では、印刷装置で熱変換層を印刷し、膨張装置50によって熱膨張層を膨張させる構成を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、印刷装置、膨張装置等がフレーム中に納められた造形物製造装置を利用することも可能である。
【0102】
また、各実施形態において用いられている図は、いずれも各実施形態を説明するためのものである。従って、樹脂成形シートの各層の厚みが、図に示されているような比率で形成されると限定して解釈されることを意図するものではない。また、各実施形態において用いられている図では、樹脂成形シートの表面及び/又は裏面に設けられる熱変換層なども、説明のため強調して図示されている。このため、熱変換層などの厚みも図に示されているような比率で形成されると限定して解釈されることを意図するものではない。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0104】
[付記]
[付記1]
樹脂からなる基材と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備え、
前記第1の熱膨張層は、前記基材の第1の面上において、前記第1の熱膨張層によって前記基材を変形させる第1の領域に少なくとも設けられており、
前記第2の熱膨張層は、前記基材の第2の面上において、前記第2の熱膨張層によって前記基材を変形させる第2の領域に少なくとも設けられている、
ことを特徴とする樹脂成形シート。
【0105】
[付記2]
前記第1の領域と前記第2の領域とは前記基材を介して対向しないように配置される、
ことを特徴とする付記1に記載の樹脂成形シート。
【0106】
[付記3]
前記第1の熱膨張層と前記第2の熱膨張層との少なくともいずれか一方が、少なくとも部分的に前記基材から剥離可能に設けられている、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の樹脂成形シート。
【0107】
[付記4]
前記第1の熱膨張層と前記基材との間に設けられる第1の中間層と、前記第2の熱膨張層と前記基材との間に設けられる第2の中間層と、の少なくともいずれか一方を更に備え、
前記第1の中間層と前記基材との間の剥離強度は、前記第1の熱膨張層と前記第1の中間層との間の剥離強度より低くされ、前記第1の中間層と前記第1の熱膨張層とが前記基材から除去可能であり、
前記第2の中間層と前記基材との間の剥離強度は、前記第2の熱膨張層と前記第2の中間層との間の剥離強度より低くされ、前記第2の中間層と前記第2の熱膨張層とが前記基材から除去可能である、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載の樹脂成形シート。
【0108】
[付記5]
前記第1の熱膨張層と前記第2の熱膨張層との少なくともいずれか一方が、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を更に含む、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の樹脂成形シート。
【0109】
[付記6]
電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含み、前記第1の領域において前記第1の熱膨張層上に設けられた第1の熱変換層と、
電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含み、前記第2の領域において前記第2の熱膨張層上に設けられた第2の熱変換層と、を更に備える、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の樹脂成形シート。
【0110】
[付記7]
樹脂からなる基材の第1の面上に、熱膨張性材料を含む第1の熱膨張層を形成する第1の熱膨張層形成工程と、
前記基材の第2の面上に、熱膨張性材料を含む第2の熱膨張層を形成する第2の熱膨張層形成工程と、を有し、
前記第1の熱膨張層形成工程では、前記基材の第1の面上において、前記第1の熱膨張層によって前記基材を変形させる第1の領域に少なくとも前記第1の熱膨張層を形成し、
前記第2の熱膨張層形成工程では、前記基材の第2の面上において、前記第2の熱膨張層によって前記基材を変形させる第2の領域に少なくとも前記第2の熱膨張層を形成する、
ことを特徴とする樹脂成形シートの製造方法。
【0111】
[付記8]
樹脂からなる基材と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、
熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、
前記第1の熱膨張層上であって、前記基材を前記第1の熱膨張層を用いて変形させる第1の領域に設けられ、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含む第1の熱変換層と、
前記第2の熱膨張層上であって、前記基材を前記第2の熱膨張層を用いて変形させる第2の領域に設けられ、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換材料を含む第2の熱変換層と、を備え、
前記第1の領域において、前記第1の熱膨張層は膨張により隆起しており、前記基材が前記第1の熱膨張層に追従して変形しており、
前記第2の領域において、前記第2の熱膨張層は膨張により隆起しており、前記基材が前記第2の熱膨張層に追従して変形している、
ことを特徴とする造形物。
【0112】
[付記9]
樹脂からなる基材と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備える樹脂成形シートを用い、
前記第1の熱膨張層の上であって、前記第1の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第1の領域上に、電磁波を熱に変換する第1の熱変換層を形成する第1の熱変換層形成工程と、
前記第2の熱膨張層の上であって、前記第2の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第2の領域上に、電磁波を熱に変換する第2の熱変換層を形成する第2の熱変換層形成工程と、
前記第1の熱変換層に電磁波を照射し、前記第1の熱膨張層を膨張させ、前記第1の領域において前記基材を変形させる第1の成形工程と、
前記第2の熱変換層に電磁波を照射し、前記第2の熱膨張層を膨張させ、前記第2の領域において前記基材を変形させる第2の成形工程と、
を有することを特徴とする造形物の製造方法。
【0113】
[付記10]
前記第1の熱膨張層と、前記第2の熱膨張層との少なくともいずれか一方は、前記基材に対して剥離可能に接着されており、
前記基材の成形後に、前記第1の熱膨張層と前記第2の熱膨張層との少なくともいずれか一方を除去する除去工程を更に有する、
ことを特徴とする付記9に記載の造形物の製造方法。
【0114】
[付記11]
樹脂からなる基材と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第1の面に設けられた第1の熱膨張層と、熱膨張性材料を含み、前記基材の第2の面に設けられた第2の熱膨張層と、を備える樹脂成形シートを用い、
前記第1の熱膨張層の上であって、前記第1の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第1の領域上に、電磁波を熱に変換する第1の熱変換層を形成する第1の熱変換層形成工程と、
前記第2の熱膨張層の上であって、前記第2の熱膨張層を用いて前記基材を変形する第2の領域上に、電磁波を熱に変換する第2の熱変換層を形成する第2の熱変換層形成工程と、
前記樹脂成形シートの一方の面又は他方の面から電磁波を照射することによって、前記第1の熱変換層において熱を生じさせ、前記第1の熱膨張層を膨張させて前記第1の領域において前記基材を変形させるとともに、前記第2の熱変換層において熱を生じさせ、前記第2の熱膨張層を膨張させて前記第2の領域において前記基材を変形させる成形工程と、
を有することを特徴とする造形物の製造方法。
【符号の説明】
【0115】
10,20,30,34・・・樹脂成形シート、11・・・基材、11a・・・第1の凸部、11b・・・第1の凹部、11c・・・第2の凸部、11d・・・第2の凹部、12,31・・・第1の熱膨張層、12a,13a,31a,32c・・・凸部、13,32・・・第2の熱膨張層、21・・・第1の中間層、22・・・第2の中間層、41,42,43,44・・・造形物、50・・・膨張装置、51・・・照射部、52・・・反射板、53・・・温度センサ、54・・・冷却部、55・・・筐体、81・・・第1の熱変換層、82・・・第2の熱変換層
図1
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