特許第6879409号(P6879409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6879409
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】不整地走行用の二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/11 20060101AFI20210524BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B60C11/11 A
   B60C11/03 E
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-90728(P2020-90728)
(22)【出願日】2020年5月25日
【審査請求日】2020年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】日南 有紀子
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/093325(WO,A1)
【文献】 特開2010−143370(JP,A)
【文献】 特開2009−067245(JP,A)
【文献】 特開平02−175305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00− 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する不整地走行用の二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、ベース面と、前記ベース面からタイヤ半径方向外側に隆起する複数のブロックとを含み、
前記複数のブロックの少なくとも1つは、フィン付きブロックを含み、
前記フィン付きブロックは、ブロック本体と、前記ブロック本体よりも小さいタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向の一方側に延びる少なくとも2つのフィン部とを含み、
前記2つのフィン部の間には、前記ベース面から凹む凹部が設けられ、
前記凹部のタイヤ周方向の長さは、前記凹部のタイヤ軸方向の長さよりも大きい、
不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記凹部は、前記2つのフィン部のそれぞれをタイヤ周方向に平行に延長した各領域の間に設けられている、請求項1に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記ブロック本体から前記凹部までのタイヤ周方向の距離は、前記2つのフィン部のそれぞれのタイヤ周方向の長さよりも小さい、請求項1又は2に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項4】
トレッド展開図において、前記凹部は、前記2つのフィン部の各先端を結ぶ直線よりも前記ブロック本体側に設けられている、請求項3に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記凹部のタイヤ周方向の長さは、前記2つのフィン部のそれぞれのタイヤ周方向の長さよりも大きい、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記凹部は、前記2つのフィン部のタイヤ軸方向の中間位置に設けられる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記凹部は、前記2つのフィン部の間に1つ設けられる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記フィン付きブロックのタイヤ軸方向の長さは、前記フィン付きブロックのタイヤ周方向の長さよりも大きい、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部は、タイヤの回転方向が指定され、
前記フィン部は、前記ブロック本体の前記回転方向の後着側に設けられている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記フィン付きブロックは、タイヤ周方向の他方側を向く第1側面を含み、
前記第1側面は、湾曲面を介して前記ベース面と連なっている、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項11】
前記湾曲面の前記ベース面からの最大高さは、前記フィン付きブロックの前記ベース面からの最大高さよりも小さい、請求項10に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項12】
前記フィン付きブロックは、踏面からブロック高さ方向に突出した突起部と、前記踏面よりも凹んだ踏面凹部とを含んでいる、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項13】
前記トレッド部は、タイヤの回転方向が指定され、
前記フィン付きブロックの踏面は、前記回転方向の先着側の縁を有し、
前記先着側の縁には、面取り部が設けられている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項14】
前記フィン付きブロックは、タイヤ赤道側のクラウンブロックと、前記クラウンブロックに隣り合うミドルブロックとを含む、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項15】
前記トレッド部は、タイヤの回転方向が指定され、
前記ミドルブロックの踏面の図心は、前記クラウンブロックの踏面の図心よりも前記回転方向の先着側に配される、請求項14に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地走行用の二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、トレッド部に、クラウンブロックが設けられた不整地走行用の自動二輪車空気入りタイヤが記載されている。前記クラウンブロックは、横長状のブロック本体と、前記ブロック本体の後着側に突出する凸部とを有している。このような空気入りタイヤは、タイヤ軸方向のエッジ成分を多く含み、直進走行時のトラクション性能を向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6047131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述のような二輪車用タイヤにおいて、トラクション性能をさらに高めることが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、トラクション性能を向上し得る不整地走行用の二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する不整地走行用の二輪車用タイヤであって、前記トレッド部は、ベース面と、前記ベース面からタイヤ半径方向外側に隆起する複数のブロックとを含み、前記複数のブロックの少なくとも1つは、フィン付きブロックを含み、前記フィン付きブロックは、ブロック本体と、前記ブロック本体よりも小さいタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向の一方側に延びる少なくとも2つのフィン部とを含み、前記2つのフィン部の間には、前記ベース面から凹む凹部が設けられ、前記凹部のタイヤ周方向の長さは、前記凹部のタイヤ軸方向の長さよりも大きい。
【0007】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記凹部が、前記2つのフィン部のそれぞれをタイヤ周方向に平行に延長した各領域の間に設けられている、のが望ましい。
【0008】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記ブロック本体から前記凹部までのタイヤ周方向の距離が、前記2つのフィン部のそれぞれのタイヤ周方向の長さよりも小さい、のが望ましい。
【0009】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、トレッド展開図において、前記凹部が、前記2つのフィン部の各先端を結ぶ直線よりも前記ブロック本体側に設けられている、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記凹部のタイヤ周方向の長さが、前記2つのフィン部のそれぞれのタイヤ周方向の長さよりも大きい、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記凹部が、前記2つのフィン部のタイヤ軸方向の中間位置に設けられる、のが望ましい。
【0012】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記凹部が、前記2つのフィン部の間に1つ設けられる、のが望ましい。
【0013】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記フィン付きブロックのタイヤ軸方向の長さが、前記フィン付きブロックのタイヤ周方向の長さよりも大きい、のが望ましい。
【0014】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記トレッド部が、タイヤの回転方向が指定され、前記フィン部は、前記ブロック本体の前記回転方向の後着側に設けられている、のが望ましい。
【0015】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記フィン付きブロックが、タイヤ周方向の他方側を向く第1側面を含み、前記第1側面は、湾曲面を介して前記ベース面と連なっている、のが望ましい。
【0016】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記湾曲面の前記ベース面からの最大高さが、前記フィン付きブロックの前記ベース面からの最大高さよりも小さい、のが望ましい。
【0017】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記フィン付きブロックが、踏面からブロック高さ方向に突出した突起部と、前記踏面よりも凹んだ踏面凹部とを含んでいる、のが望ましい。
【0018】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記トレッド部が、タイヤの回転方向が指定され、前記フィン付きブロックの踏面は、前記回転方向の先着側の縁を有し、前記先着側の縁には、面取り部が設けられている、のが望ましい。
【0019】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記フィン付きブロックが、タイヤ赤道側のクラウンブロックと、前記クラウンブロックに隣り合うミドルブロックとを含む、のが望ましい。
【0020】
本発明に係る不整地走行用の二輪車用タイヤは、前記トレッド部が、タイヤの回転方向が指定され、前記ミドルブロックの踏面の図心は、前記クラウンブロックの踏面の図心よりも前記回転方向の先着側に配される、のが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れたトラクション性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の二輪車用タイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2図1のトレッド部のトレッドパターンを示す展開図である。
図3図2のフィン付きブロックの拡大斜視図である。
図4図2のフィン付きブロックの平面図である。
図5】フィン付きブロック(クラウンブロック)の平面図である。
図6図5のB−B線断面図である。
図7図2のミドルブロックの拡大平面図である。
図8】本発明の他の実施形態のフィン付きブロックの拡大平面図である。
図9図8のC−C線断面図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態のフィン付きブロックの拡大平面図である。
図11図10のD−D線断面図である。
図12】基準タイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示す不整地走行用の二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含む子午線断面図である。図2は、タイヤ1のトレッド部2のトレッドパターンを示す展開図である。図1は、図2のA−A線断面図である。
【0024】
前記「正規状態」とは、各種の規格が定められたタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、タイヤの各部の寸法等ついて、測定位置によって微小な差が生じる場合は、特に断りのない限り、本明細書に示される各寸法は、その最小値と最大値との間の中央値を意味するものとする。また、本明細書で説明された各構成は、ゴム成形品に含まれる通常の誤差を許容するものとする。
【0025】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0026】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0027】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、モトクロス競技用のタイヤとして好適に用いられる。本実施形態のタイヤは、例えば、モトクロス車両の後輪用のタイヤとして好適に用いられる。但し、タイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、前記断面において、その外面がタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。
【0028】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、カーカス6及びトレッド補強層7を具えている。これらには、公知の構成が適宜採用される。
【0029】
トレッド部2は、ベース面8と、ベース面8からタイヤ半径方向外側に隆起した複数のブロック10とを含む。本実施形態のブロック10は、複数のクラウンブロック11と、複数のミドルブロック12と、複数のショルダーブロック13とを含む。
【0030】
複数のブロック10の少なくとも1つは、フィン付きブロック15を含む。フィン付きブロック15は、本実施形態では、クラウンブロック11及びミドルブロック12である。
【0031】
図3は、フィン付きブロック15の拡大斜視図である。図4は、フィン付きブロック15の拡大平面図である。図3及び図4に示されるフィン付きブロック15は、クラウンブロック11である。クラウンブロック11で説明されるフィン付きブロック15の構成は、特に言及されるものを除いてミドルブロック12にも適用される。
【0032】
図3又は図4に示されるように、フィン付きブロック15は、ブロック本体16と、ブロック本体16よりも小さいタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に延びる少なくとも2つのフィン部17とを含んでいる。このようなフィン付きブロック15は、大きなタイヤ周方向剛性を有し、泥濘地などの不整地に対して高いせん断力を発揮する。ブロック本体16は、本明細書では、第1ブロック縁16eと第2ブロック縁16iとの間に形成される。第1ブロック縁16eは、フィン部17からタイヤ周方向に最も離間してタイヤ軸方向に延びるフィン付きブロック15のブロック縁である。第2ブロック縁16iは、2つのフィン部17を継ぐブロック縁17e上で第1ブロック縁16eと最も近接する位置を第1ブロック縁16eと平行に延びる仮想のブロック縁である。フィン部17は、本明細書では、第2ブロック縁16iから延びている部分である。
【0033】
また、本実施形態では、2つのフィン部17の間には、ベース面8から凹む凹部18が設けられている。そして、凹部18のタイヤ周方向の長さL5は、凹部18のタイヤ軸方向の長さL4よりも大きく形成されている。このような凹部18は、接地時、タイヤ子午線断面のトレッドプロファイルを曲率半径T(図1に示す)が大きくなるように変化させる。これにより、フィン付きブロック15は、そのタイヤ軸方向の両端15e、15eに亘って十分に接地するので、せん断力を高める。したがって、本実施形態のタイヤ1は、優れたトラクション性能を発揮する。
【0034】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される構成は、本発明の必須の要素ではなく、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤ1に、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合でも、各構成に応じた性能の向上は期待できる。
【0035】
図2に示されるように、トレッド部2は、例えば、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部3(図1に示す)に、文字又は記号で表示される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0036】
トレッド部2は、例えば、クラウン領域Cr、ミドル領域Mi及びショルダー領域Shに区分されている。クラウン領域Crは、タイヤ赤道Cを中心とする、トレッド展開幅TWeの1/3の幅を有する領域である。ショルダー領域Shは、各トレッド端Teからタイヤ赤道C側にトレッド展開幅TWeの1/6の幅を有する領域である。ミドル領域Miは、クラウン領域Crとショルダー領域Shとの間の領域である。
【0037】
トレッド展開幅TWeは、トレッド部2を平面に展開したときのトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。トレッド端Teは、トレッド部2に配されたブロックの内、最もタイヤ軸方向外側に位置するブロック端縁である。
【0038】
クラウンブロック11は、踏面の図心11cがクラウン領域Cr内に位置している。望ましい態様では、クラウンブロック11は、タイヤ赤道C上に設けられている。ミドルブロック12は、踏面の図心12cがミドル領域Mi内に位置している。また、ミドルブロック12は、クラウンブロック11とタイヤ軸方向で隣り合っている。ショルダーブロック13は、踏面の図示がショルダー領域Shに位置している。また、ショルダーブロック13は、ミドルブロック12とタイヤ軸方向で隣り合っている。
【0039】
クラウンブロック11のタイヤ軸方向の長さLaは、例えば、トレッド展開幅TWeの20%〜40%である。ミドルブロック12のタイヤ軸方向の長さL11は、例えば、トレッド展開幅TWeの10%〜20%である。ショルダーブロック13のタイヤ軸方向の長さLcは、例えば、トレッド展開幅TWeの8%〜15%である。各ブロックのタイヤ周方向の長さは、例えば、ブロック10の1ピッチ長さP1の10%〜30%である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0040】
図4に示されるように、凹部18のタイヤ軸方向の長さL4は、凹部18のタイヤ周方向の長さL5の20%〜30%であるのが望ましい。これにより、フィン部17によるフィン付きブロック15のタイヤ周方向剛性の維持と、凹部18によるフィン付きブロック15の十分な接地とが確保される。
【0041】
凹部18は、例えば、2つのフィン部17のそれぞれをタイヤ周方向に平行に延長した領域(以下、「フィン部延長領域」という場合がある。)25の間に設けられている。凹部18は、本実施形態では、その全体が、フィン部延長領域25、25の間のブロック隣接領域20内に配置されている。換言すると、本実施形態の凹部18は、フィン部延長領域25には形成されない。これにより、トレッド部2の剛性を過度に低下させることなく、フィン付きブロック15を十分に接地することができる。とりわけ、凹部18は、タイヤ軸方向の長さL4がタイヤ周方向の長さL5よりも小さいので、前記トレッドプロファイルを曲率半径Tが大きくなるような変化を促進するとともに、過度の剛性低下が抑制される。
【0042】
ブロック隣接領域20は、2つのフィン部17の各先端17t、17tを結ぶ直線(仮想線)19と2つのフィン部17とに囲まれる間隙部21、及び、間隙部21からブロック本体16と離間する(後着側)向きに延びる延長部22とからなる。ブロック隣接領域20は、フィン付きブロック15の後着側で隣り合うブロック(図示省略)まで延びている。理解し易いように、図4において、間隙部21と延長部22とは、異なる色で表されている。なお、凹部18は、ブロック隣接領域20とフィン部延長領域25とに跨って設けられても良いし、さらに、フィン部延長領域25をタイヤ軸方向に超えて設けられてもよい。
【0043】
凹部18は、直線19よりもブロック本体16側に設けられている。換言すると、凹部18は、直線19を挟んで間隙部21及び延長部22に設けられている。凹部18が間隙部21に設けられることにより、フィン付きブロック15を効果的に変形しやすくすることができる。凹部18が延長部22にまで設けられることで、フィン付きブロック15の両端15e、15eを効果的に接地することができる。
【0044】
凹部18は、本実施形態では、2つのフィン部17のタイヤ軸方向の中央位置29に設けられている。これにより、フィン付きブロック15をタイヤ軸方向の両端15e、15eに亘ってさらに十分に接地することができる。前記「中央位置29に設けられる」は、凹部18の幅中心線18cが、2つのフィン部17のタイヤ軸方向の中間に設けられる対応のみならず、凹部18が2つのフィン部17のタイヤ軸方向の中間と重複する対応を含む。
【0045】
凹部18は、例えば、2つのフィン部17の間に1つ設けられている。これにより、例えば、凹部18を2つのフィン部17の間に複数設ける場合に比して、凹部18の1つ当たりのタイヤ軸方向の長さL4が大きくなる。このため、凹部18内に挟まった泥土がスムーズに排出されるので、凹部18によるせん断力を高く発揮することができる。なお、凹部18の個数は、2つのフィン部17の間に複数設けられている場合がある。
【0046】
凹部18のタイヤ周方向の長さL5は、例えば、各フィン部17のそれぞれのタイヤ周方向の長さ(最大長さ)Ldよりも大きく形成されている。これにより、フィン付きブロック15のタイヤ軸方向の剛性が効果的に小さくなり、かつ、そのタイヤ周方向の剛性が高く維持されるので、高いトラクション性能が発揮される。特に限定されるものではないが、凹部18の長さL5は、フィン部17の長さLdの1.5倍以上が望ましく、1.8倍以上がさらに望ましく、3.5倍以下が望ましく、3.2倍以下がさらに望ましい。
【0047】
凹部18のタイヤ周方向の長さL5は、例えば、フィン付きブロック15のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1(図2に示す)の20%以上が望ましく、30%以上がさらに望ましく、80%以下が望ましく、50%以下がさらに望ましい。なお、凹部18の大きさは、このような態様に限定されるものではない。
【0048】
凹部18の深さd1(図1に示す)は、例えば、フィン付きブロック15の最大高さ(図3に示す)h1の50%以下であるのが望ましい。これにより、トレッド部2の剛性が大きく低下するのが抑制される。トラクション性能を高めるために、凹部18の深さd1は、フィン付きブロック15の最大高さh1の10%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、40%以下がさらに望ましい。
【0049】
ブロック本体16から凹部18までのタイヤ周方向の距離L2は、フィン付きブロック15のタイヤ周方向の長さL1よりも小さいのが望ましい。前記距離L2が前記長さL1よりも大きい場合、前記トレッドプロファイルの変形が小さくなり、本実施形態と比較してトラクション性能を損ねるおそれがある。トラクション性能を高めつつ、ブロック本体16の剛性の低下を抑制するために、前記距離L2は、例えば、前記長さL1の5%〜25%であるのが望ましい。
【0050】
本実施形態では、ブロック本体16から凹部18までの距離L2が規定され、かつ、凹部18がフィン部17をタイヤ周方向に平行に延長した領域と重複しないように設けられている。これにより、フィン付きブロック15のタイヤ周方向の剛性が高く維持されつつ、トレッドプロファイルの変化が促進される。したがって、さらにトラクション性能の向上が見込まれる。
【0051】
凹部18のタイヤ軸方向の長さL4は、2つのフィン部17のタイヤ軸方向距離L3の20%以上が望ましく、25%以上がさらに望ましく、30%以上が一層望ましく、60%以下が望ましく、55%以下がさらに望ましく、50%以下が一層望ましい。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0052】
フィン部17は、例えば、ブロック本体16の回転方向Rの後着側(以下、単に「後着側」という場合がある。)に設けられている。これにより、ブロック本体16の後着側への変形が抑制されて、トラクション性能がさらに向上する。なお、フィン部17は、ブロック本体16の回転方向Rの先着側(以下、単に「先着側」という場合がある。)に設けられても良い。
【0053】
本実施形態のフィン付きブロック15は、例えば、タイヤ周方向の長さL1(図2に示す)が、タイヤ軸方向の長さL6よりも小さい。具体的には、フィン付きブロック15は、タイヤ周方向の長さL1がタイヤ軸方向の長さL6の50%以上が望ましく、60%以上がさらに望ましく、80%以下が望ましく、70%以下がさらに望ましい。このようなタイヤ軸方向に対して横長のフィン付きブロック15は、トラクション性能を高めるのに役立つ。とりわけ、本実施形態では、フィン付きブロック15のフィン部17の間に、タイヤ周方向に縦長の凹部18が設けられているので、トラクション性能がより一層向上する。
【0054】
図5は、フィン付きブロック15として構成されたクラウンブロック11の拡大平面図である。図5に示されるように、本実施形態のクラウンブロック11は、例えば、フィン部17を3つ含むフィン付きブロック15として構成されている。3つのフィン部17は、例えば、タイヤ軸方向の一方側の第1フィン部26と、タイヤ軸方向の他方側の第2フィン部27と、第1フィン部26と第2フィン部27との間の第3フィン部28とを含む。また、本実施形態では、第1フィン部26と第3フィン部28との間のブロック隣接領域20、及び、第2フィン部27と第3フィン部28との間のブロック隣接領域20のそれぞれに、凹部18が1つずつ配されている。これにより、クラウンブロック11がタイヤ軸方向に亘って確実に接地されるので、高いトラクション性能が発揮される。
【0055】
第1フィン部26は、ブロック本体16のタイヤ軸方向の一方側の側面と連なっている。第2フィン部27は、ブロック本体16のタイヤ軸方向の他方側の側面と連なっている。第1フィン部26及び第2フィン部27は、実質的に同じ形状で構成されている。
【0056】
第3フィン部28は、ブロック本体16のタイヤ軸方向の中央部に連なっている。本実施形態では、クラウンブロック11がクラウン領域Crに配されており、かつ、第3フィン部28がタイヤ赤道C上に配されている。クラウンブロック11の踏面の図心11cは、第3フィン部28を先着側に向かってタイヤ周方向に平行に延長したブロック本体16上に位置している。これにより、ブロック本体16の倒れ込みを第3フィン部28が効果的に抑制する。
【0057】
上述の効果を確実に発揮させるために、第3フィン部28のタイヤ周方向の長さLeは、例えば、第1フィン部26及び第2フィン部27のタイヤ周方向の長さLfよりも大きく形成されている。また、第3フィン部28は、第1フィン部26及び第2フィン部27よりも後着側に突出している。
【0058】
第3フィン部28のタイヤ軸方向の幅W2は、例えば、第1フィン部26及び第2フィン部27のタイヤ軸方向の幅W1よりも大きい。具体的には、第3フィン部28の幅W2は、例えば、第1フィン部26の幅W1の130%〜200%である。これにより、第3フィン部28がブロック本体16の倒れ込みを抑制し、かつ、第1フィン部26及び第2フィン部27が適度に変形することでフィン部17間に挟まった泥土を効果的に排出することができる。
【0059】
クラウンブロック11の各フィン部17のタイヤ軸方向の幅W1、W2は、例えば、クラウンブロック11のタイヤ軸方向の長さLa(図2に示す)の5%以上が望ましく、10%以上がさらに望ましく、20%以下が望ましく、15%以下がさらに望ましい。
【0060】
クラウンブロック11の各フィン部17のタイヤ周方向の最大の長さ(本実施形態では、第3フィン部28のタイヤ周方向の長さLe)L8は、例えば、クラウンブロック11のタイヤ周方向の長さL7の60%以上が望ましく、80%以上がさらに望ましく、150%以下が望ましく、135%以下がさらに望ましい。
【0061】
トレッド展開図において、クラウンブロック11の先着側を向く第1側面23は、例えば、タイヤ軸方向の両端から中間へ後着側に向かって凹んでいる。本実施形態の第1側面23は、例えば、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜した2つの平面が稜線を介して連なることにより構成されている。第1側面(第1ブロック縁16e)23のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、例えば、5〜30°である。このような第1側面23は、不整地走行時において泥や土を押し退けるときに大きな反力を発揮する。
【0062】
図6には、図5のクラウンブロック11のB−B線断面図が示されている。図6に示されるように、第1側面23は、湾曲面30を介してベース面8と連なっている。湾曲面30は、ブロックの外側に中心を持つ円弧状に湾曲した面である。湾曲面30のベース面8からの最大高さh2は、フィン付きブロック15のベース面8からの最大高さh1よりも小さい。なお、本実施形態では、フィン部17とブロック本体16とが同じ高さを有している。湾曲面30の最大高さh2は、例えば、フィン付きブロック15の最大高さh1の20%〜50%である。このような湾曲面30は、クラウンブロック11を倒れ難くし、トラクション性能を高めるのに役立つ。
【0063】
本実施形態では、湾曲面30と上述の凹部18との相乗効果により、クラウンブロック11のタイヤ軸方向の両側への変形が促進され、ひいてはトラクション性能が向上する。とりわけ、凹部18の形状が上述のようなタイヤ周方向に縦長とされることにより、トラクション性能がより一層向上し得る。
【0064】
図7は、フィン付きブロック15として構成されたミドルブロック12の拡大平面図である。図7に示されるように、本実施形態のミドルブロック12は、フィン部17を2つ含むフィン付きブロック15として構成されている。2つのフィン部17は、例えば、タイヤ軸方向の一方側の第1フィン部26と、タイヤ軸方向の他方側の第2フィン部27とで構成されている。また、本実施形態では、ミドルブロック12の第1フィン部26と第2フィン部27との間のブロック隣接領域20に1つの凹部18が配されている。
【0065】
ミドルブロック12の第1フィン部26及び第2フィン部27のタイヤ周方向の長さL10は、例えば、クラウンブロック11の第3フィン部28のタイヤ周方向の長さLe(図5に示す)よりも小さい。ミドルブロック12の第1フィン部26及び第2フィン部27のタイヤ軸方向の長さL10は、クラウンブロック11の第1フィン部26及び第2フィン部27のタイヤ周方向の長さLfと同じである。これにより、直進時及び旋回時のトラクションの変化がリニアになる。
【0066】
ミドルブロック12のフィン部17のタイヤ周方向の長さL10は、例えば、ミドルブロック12のタイヤ周方向の長さL9の60%以上が望ましく、80%以上がさらに望ましく、130%以下が望ましく、115%以下がさらに望ましい。また、ミドルブロック12のフィン部17のタイヤ軸方向の幅W3は、例えば、ミドルブロック12のタイヤ軸方向の長さL11の5%以上が望ましく、10%以上がさらに望ましく、20%以下が望ましく、15%以下がさらに望ましい。
【0067】
ミドルブロック12の回転方向Rの先着側を向く側面12eは、例えば、タイヤ赤道C側からトレッド端Te側に向かって、先着側に傾斜している。前記側面のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、例えば、5〜30°である。
【0068】
ミドルブロック12のタイヤ軸方向の長さL11は、クラウンブロック11のタイヤ軸方向の長さLaよりも小さいのが望ましい。具体的には、ミドルブロック12の長さL11は、クラウンブロック11の長さLaの50%〜80%である。
【0069】
図2に示されるように、ミドルブロック12の踏面の図心12cは、クラウンブロック11の踏面の図心11cよりも先着側に位置している。ミドルブロック12の図心12cからクラウンブロック11の図心11cまでのタイヤ周方向の距離L12は、例えば、ブロックの1ピッチ長さP1の10%〜30%である。これにより、ミドルブロック12がタイヤ赤道C側に押し退けた泥や土をクラウンブロック11側に案内し、これらがクラウンブロック11によってさらに押し退けられる。したがって、より一層トラクション性能が向上する。
【0070】
本実施形態のショルダーブロック13は、例えば、上述のフィン部17を含まないフィン無しブロックとして構成されている。ショルダーブロック13の踏面は、例えば、矩形状であり、望ましくは台形状である。本実施形態のショルダーブロック13の踏面は、タイヤ周方向に平行に延びる2本のエッジを含んでいる。ショルダーブロック13のタイヤ周方向の長さは、トレッド端Te側に向かって大きくなっている。このようなショルダーブロック13は、トレッド端Te側に向かってその剛性が大きくなるため、車体のキャンバー角を増加させるときの手応えをリニアにできる。
【0071】
トレッド部2は、例えば、クラウンタイバー31及びショルダータイバー32を含む。クラウンタイバー31は、ベース面8が隆起しかつクラウンブロック11及びミドルブロック12を連結している。ショルダータイバー32は、ベース面8が隆起しかつショルダーブロック13及びミドルブロック12を連結している。本実施形態では、各タイバーで連結したブロック群が一体となってトラクション性能を向上させる。
【0072】
以下、本発明の他の実施形態が説明される。他の実施形態を示す図において、既に説明された要素には、上述のものと同じ符号が付されており、上述の構成を適用することができる。
【0073】
図8は、本発明の他の実施形態のフィン付きブロック15の拡大平面図である。図9は、図8のC−C線断面図である。図8及び図9に示されるフィン付きブロック15は、例えば、図2に示されるトレッドパターンのクラウンブロック11に適用される。また、図8及び図9に示されるフィン付きブロック15は、例えば、図2に示されるミドルブロック12に適用されてもよい。
【0074】
図8及び図9に示されるように、この実施形態のフィン付きブロック15の踏面15sには、ブロック高さ方向に突出した突起部35が設けられている。突起部35の踏面15sからの突出高さh3は、フィン付きブロック15の最大高さh1の5%〜25%である。また、突起部35は、例えば、踏面15sよりも凹んだ踏面凹部36で囲まれている。このような突起部35は、路面に刺さることでタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に大きな反力を提供し、かつ、ブロック周辺に泥や土が付着して保持されるのを防ぐことができる。
【0075】
突起部35は、上述のフィン部17や踏面凹部36及び凹部18と相俟って、トラクション性能をより一層高める。また、突起部35の変形により、フィン部17や踏面凹部36及び凹部18の周辺に泥が保持されるのを防ぐことができる。
【0076】
また、突起部35は、本実施形態のようなタイヤ周方向に横長のフィン付きブロック15に配されることにより、トラクション時及びブレーキ時の操縦安定性の向上という相乗効果を期待できる。
【0077】
図10は、本発明のさらに他の実施形態のフィン付きブロック15の拡大平面図である。図11は、図10のD−D線断面図である。図10及び図11に示されるフィン付きブロック15は、例えば、図2に示されるトレッドパターンのクラウンブロック11に適用される。また、図10及び図11に示されるフィン付きブロック15は、例えば、図2に示されるミドルブロック12に適用されてもよい。
【0078】
図10及び図11に示されるように、このフィン付きブロック15の踏面15sの縁(第1ブロック縁16e)には、面取り部37が設けられている。面取り部37は、踏面15sからベース面8に向かって傾斜する傾斜面37eとして形成される。より望ましい態様では、面取り部37は、第1側面23と連なっている。このような面取り部37は、ブロックが路面から受ける反力を分散し、ひいてはブロックに過度な負荷が作用するのを防ぐことができる。
【0079】
面取り部37のベース面8側の内縁37iは、ブロック本体16の踏面よりもベース面8側に配されているのが望ましい。面取り部37のブロック高さ方向の長さL13は、フィン付きブロック15の最大高さh1の5%〜50%である。面取り部37のブロック踏面に沿った方向の幅W4は、ブロック本体16のタイヤ周方向長さL14の5%〜50%である。このような面取り部37は、トラクション性能を維持しつつ、ブロックの耐久性を高めることができる。
【0080】
面取り部37は、上述の横長のフィン付きブロック15及び縦長の凹部18と組み合わされることにより、フィン付きブロック15の耐久性をより一層向上させることができる。また、面取り部37と突起部35とが組み合わされることにより、フィン付きブロック15の耐久性とトラクション性能とをより高いレベルで両立させることができる。
【0081】
以上、本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤの望ましい態様が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0082】
図2の基本パターンを有する不整地走行用の二輪車用の後輪タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。性能比較のための基準となる不整地走行用の二輪車用の後輪タイヤ(基準タイヤ)として、図12に示されるトレッド部を有するタイヤが試作された。この基準タイヤのトレッド部には、矩形状の踏面を有するブロックが複数設けられている。比較例のタイヤは、フィン部の間の凹部が全く設けられていない点を除き、図2で示されるトレッドパターンと実質的に同じである。各テストタイヤのトラクション性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
使用車両:排気量450cc モトクロス競技車両
タイヤサイズ:120/80−19
リムサイズ:2.15WM
内圧:80kPa
テスト方法は以下の通りである。
【0083】
<トラクション性能>
上記テスト車両で不整地の100mの直線路を全開加速して走行したときのタイムが複数回測定され、その平均タイムが算出された。結果は、基準タイヤの前記平均タイムからの短縮タイムが、比較例の前記短縮タイムを100とする指数で示されている。数値が大きい程、前記短縮タイムが大きく、トラクション性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1〜表6に示される。なお、L5は、比較例及び各実施例全て同じ定数である。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
表1〜表6に示されるように、実施例のタイヤは、トラクション性能が向上していることが確認できた。表2に示されるように、フィン付きブロックの各種寸法は、トラクション性能に影響を及ぼしているのが確認できた。また、表3に示されるように、湾曲面の各種寸法は、トラクション性能に影響を及ぼしているのが確認できた。さらに、表4に示されるように、突起部は、トラクション性能の向上に役立つことが確認できた。また、表5に示されるように、面取り部は、トラクション性能に影響を及ぼしていることが確認できた。さらに、表6に示されるように、ミドルブロックの図心とクラウンブロックの図心との距離は、トラクション性能に影響を及ぼしていることが確認できた。
【符号の説明】
【0091】
1 二輪車用タイヤ
2 トレッド部
8 ベース面
10 ブロック
15 フィン付きブロック
16 ブロック本体
17 フィン部
18 凹部
L4 タイヤ軸方向の長さ
L5 タイヤ周方向の長さ
【要約】      (修正有)
【課題】トラクション性能を向上し得る不整地走行用の二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有する不整地走行用の二輪車用タイヤ1である。トレッド部2は、ベース面8と、ベース面8からタイヤ半径方向外側に隆起した複数のブロック10とを含む。複数のブロック10の少なくとも1つは、フィン付きブロック15を含む。フィン付きブロック15は、ブロック本体と、ブロック本体よりも小さいタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向の一方側に延びる少なくとも2つのフィン部とを含む。2つのフィン部の間には、ベース面8から凹む凹部が設けられている。凹部のタイヤ周方向の長さL5は、凹部のタイヤ軸方向の長さL4よりも大きい。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12