(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(化粧シート10)
図1中、10は、化粧シートであり、化粧シート10は、例えば建装材の外装用に用いられる。
化粧シート10は、
図1に示すように、次の層が順次積層されている。
なお、次の(1)〜(4)については後述する。
(1)着色熱可塑性樹脂層20
(2)絵柄模様層30
(3)透明熱可塑性樹脂層40
(4)表面保護層50
なお、化粧シート10の各層は、上記した(1)〜(4)に限定されず、透明熱可塑性樹脂層40の表面にエンボス部60を形成しても良い。
【0014】
(外装建具用部材100)
化粧シート10を、
図1に示すように、外装建具用基材110に接着して外装建具用部材100を作製しても良い。
外装建具用部材100は、化粧シート10のほか、次の各層を有する。
なお、次の(1)及び(2)については後述する。
(1)外装建具用基材110
(2)接着層120
なお、外装建具用部材100の各層は、上記した(1)及び(2)に限定されず、図示しないが、外装建具用基材110の表裏面の両面或いは片面に、プライマー層を形成しても良い。
なお、プライマー層の機能には、接着性改善のほか、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等も含まれる。
【0015】
(着色熱可塑性樹脂層20)
着色熱可塑性樹脂層20は、化粧シート10の支持体となるものであって、具体的には、オレフィン素材からなる着色シートを用いている。
【0016】
(絵柄模様層30)
絵柄模様層30は、着色熱可塑性樹脂層20の表面に、印刷方法を用いて形成され、化粧シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用により形成される。なお、印刷方法は、上記例示した印刷方法に限定されず、例えば手描き法、墨流し法や、転写法、写真法、電子写真法、感光性樹脂法、真空蒸着法、化学腐蝕法、感熱発色法、放電破壊法等、従来公知の任意の画像形成手段を適用することができる。
【0017】
絵柄模様層30の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
印刷方法に用いられる印刷インキとしては、例えば塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)用いている。
なお、印刷インキとしては、塩酢ビ系インキを例示したが、これに限定されず、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を、体質顔料、充填材、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものである。
【0018】
(透明熱可塑性樹脂層40)
透明熱可塑性樹脂層40は、絵柄模様層30の表面に積層され、透明であり、透明熱可塑性樹脂層40の表面から絵柄模様層30が透けて見える。
透明熱可塑性樹脂層40は、透明熱可塑性樹脂であり、透明熱可塑性樹脂に、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とを添加することが好ましい。
上記透明熱可塑性樹脂の種類や、添加する紫外線吸収剤の種類は、特に限定しない。
また、透明熱可塑性樹脂層40の厚みが、60μm以上200μm以下であることが好ましく、例えば厚み70μmの透明シートを用いている。
これは、表面保護層50の最表層に、エンボス加工が施すためである。
【0019】
(透明熱可塑性樹脂層40の透明熱可塑性樹脂)
透明熱可塑性樹脂層40の透明熱可塑性樹脂は、その種類を特に限定しないが、例えばホモポリプロピレン系樹脂製の透明シートを用いている。
(透明熱可塑性樹脂層40の紫外線吸収剤)
透明熱可塑性樹脂層40の紫外線吸収剤は、その種類を特に限定しないが、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、トリアジン系紫外線吸収剤を用いている。
【0020】
(表面保護層50)
表面保護層50は、化粧シート10の表面に耐磨耗性や耐水性等の表面物性を付与する目的で設けられるものである。
表面保護層50は、第一に透明熱可塑性樹脂であり、透明熱可塑性樹脂に、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている。
上記透明熱可塑性樹脂の種類や、紫外線吸収剤の種類は、特に限定されず、紫外線吸収剤の種類については後述する。
表面保護層50は、第二に、最表層には抗ウイルス添加剤を添加している。
上記添加する抗ウイルス添加剤の種類は、特に限定されず、後述する。
【0021】
(表面保護層50の層構造)
表面保護層50は、複数層、例えば2層から形成され、下塗り層と、下塗り層の表面に上塗りされる上塗り最表層とから構成される。
なお、表面保護層50として、2層を例示したが、これに限定されず、単層でも良いし、或いは3層以上でも良い。
【0022】
(下塗り層)
下塗り層としては、例えば紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤の添加させたアクリルポリオールに、硬化剤を添加してなるコーティング剤を、下塗りとして、所定の厚み、例えば6μmにて塗工している。
紫外線吸収剤の種類や、硬化剤の種類を特に限定しないが、硬化剤としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤を用いている。
また、紫外線吸収剤の種類も、特に限定されず、後述する。
【0023】
(上塗り最表層)
上塗り最表層としては、例えば下塗りに使用した同様のコーティング剤に、抗ウイルス添加剤を、固形分比率で所定の比率、例えば7重量%配合し、これを所定の厚み、例えば
3μmで塗工している。
なお、抗ウイルス添加剤や、固形分比率については、後述する。
【0024】
(表面保護層50の透明熱可塑性樹脂)
表面保護層50の透明熱可塑性樹脂は、その種類を特に限定しないが、例えばアクリル製のコート剤を使用する。
(表面保護層50の紫外線吸収剤)
表面保護層50の紫外線吸収剤は、その種類を特に限定しないが、例えばベンゾトリアゾール系や、トリアジン系紫外線吸収剤を用いている。
【0025】
(表面保護層50の抗ウイルス添加剤)
表面保護層50の抗ウイルス添加剤は、その有効成分が、無機材料により担持することが好ましい。
ここで、「無機材料」としては、「ガラス」を使用するが、「無機材料」はガラスに限定されない。
すなわち、「有効成分」としては、例えば「銀」が相当するが、これに限定されない。
これは、抗ウイルス添加剤の有効成分を、無機材料により担持することで、ウイルス効果の持久性を向上できる。
抗ウイルス添加剤としては、例えば、タイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を用いている。
なお、抗ウイルス添加剤として、タイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤を例示したが、これに限定されず、大日精化工業株式会社製の抗ウイルス剤(PTC−NT ANV添加剤(ST))や、(PTC−NT ANV添加剤(ST))用いても良い。
【0026】
(抗ウイルス添加剤の平均粒径)
抗ウイルス添加剤は、平均粒径を
「φ」(μm)とし、最表層の前記表面保護層の厚みを
「D」(μm)としたとき、下記の式(1)の関係が成立していることが望ましい。
0.5D≦φ≦2D ・・・式(1)
上記式(1)の関係が成り立つとき、抗ウイルス添加剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積の拡大により、抗ウイルス効果、すなわち抗ウイルス性を向上できる。
【0027】
(抗ウイルス添加剤の粒度分布)
抗ウイルス添加剤は、その粒度分布が、1〜5μmの間と、5〜10μmとの間の2つのピークを持つことが好ましい。
これは、粒度分布に2つのピークを持つことにより、抗ウイルス添加剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積の拡大でき、抗ウイルス効果の有する化粧シート10を得ることができる。
【0028】
(抗ウイルス添加剤の添加量)
抗ウイルス添加剤は、その添加量が、表面保護層50の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であることが望ましい。
これは、抗ウイルス添加剤の添加量が、表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であることにより、抗ウイルス性を有する化粧シート10を得ることができる。
すなわち、0.2質量%未満の場合は、効果が発現せず、10質量%を超える場合は、膜の機械強度への影響が大きい。
【0029】
(表面保護層50の添加剤)
表面保護層50は、第一に、その最表層にシリコン系成分若しくはフッ素系成分を添加していることが好ましい。
これは、最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分を添加することにより、耐汚染性能が向上し、ウイルスが表面に長期間存在することがなくなるため、結果として抗ウイルス性を向上できる。
表面保護層50は、第二に、抗ウイルス添加剤が含まれる表面保護層50中に、界面活性剤を添加することが好ましい。
これは、界面活性剤が添加されていることにより、抗ウイルス添加剤と表面保護層50のバインダー中との相溶性が良好となり、塗工中の抗ウイルス添加剤の沈殿等による濃度のバラツキが抑制された化粧シートを得ることができる。
【0030】
(エンボス部60)
エンボス部60は、表面保護層50の表面に形成され、化粧シート10の質感を向上させるものである。エンボス部60の柄や模様は、例えば絵柄模様層30の模様と同調させている。
ここでは、透明熱可塑性樹脂層40の厚みが、60μm以上200μm以下で設定し、表面保護層50にエンボス加工を施すことにより、質感があり、耐候性の優れた化粧シート10を作製できる。
【0031】
(外装建具用基材110、接着層120)
外装建具用基材110は、化粧シート10を含む外装建具用部材100の支持体となるものである。外装建具用基材110の表面に、接着層120を介して、化粧シート10の着色熱可塑性樹脂層20の裏面を接着する。
これにより、抗ウイルス性に優れ、且つ表面の各種の物性にも優れ、製造が容易な化粧シート10を用いた外装建具用部材100を提供できる。
【0032】
(化粧シート10の製造方法)
上記した構成を有する化粧シート10の製造方法は、次の通りである。
(1)着色熱可塑性樹脂層20と絵柄模様層30との積層
着色熱可塑性樹脂層20として、例えばオレフィン素材からなる着色シート上に、絵柄模様層30として、例えば木目印刷を実行する。
(2)絵柄模様層30と透明熱可塑性樹脂層40との積層
木目印刷後、透明熱可塑性樹脂層40として、例えばホモポリプロピレン系樹脂に、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤を添加し、例えば厚み70μmの透明シートを貼り合わせる。
【0033】
(3)表面保護層50の下塗り
貼り合わせ後に、表面保護層50として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤の添加させた、例えばアクリルポリオールに、例えばヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤を添加してなるコーティング剤を、下塗りとして、例えば6μmにて塗工する。
(4)表面保護層50の上塗り
下塗り後、上塗り最表層として、下塗りに使用した同様のコーティング剤に、例えば平均粒径が1〜10μmの無機系材料に、例えば銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で、例えば7重量%配合し、これを、例えば
3μmで塗工し、化粧シート10を製造する。
【0034】
(外装建具用部材100の製造方法)
上記した構成を有する外装建具用部材100の製造方法は、次の通りである。
外装建具用基材110の表面に、接着層120を介して、化粧シート10の着色熱可塑性樹脂層20の裏面を接着し、外装建具用部材100を製造する。
【0035】
(実施形態1の作用・効果)
実施形態1の作用・効果は、次の通りである。
(1)
本実施形態1によれば、着色熱可塑性樹脂層20、絵柄模様層30、透明熱可塑性樹脂層40、表面保護層50を、少なくともこの順に設けられた化粧シート10であって、表面保護層50には、抗ウイルス添加剤が添加され、抗ウイルス添加剤の添加量が、表面保護層50の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、透明熱可塑性樹脂層40の厚みが、60μm以上200μm以下であり、透明熱可塑性樹脂層40及び表面保護層50には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とを添加することで、抗ウイルス性に優れ、且つ表面の各種の物性に優れ、製造が容易な化粧シート10を提供できる。
本実施形態1によれば、銀系抗ウイルス剤の添加量が、表面保護層50の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下とすることで、抗ウイルス性を有する化粧シート10を得ることができる。0.2質量%未満の場合は、効果が発現せず、10質量%を超える場合は、膜の機械強度への影響が大きい。
【0036】
本実施形態1によれば、透明接着性樹脂層及び表面保護層50に、紫外線吸収剤,ヒンダードアミン系光安定剤を添加することで、外装用途でも使用可能な耐候性に優れた化粧シート10を得ることができる。
本実施形態1によれば、抗ウイルス添加剤の平均粒径が1〜10μmの範囲内であることで、抗ウイルス剤との接触面積拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積拡大により、抗ウイルス効果の有する化粧シート10を得ることができる。
本実施形態1によれば、透明熱可塑性樹脂の厚みが60μm以上200μm以下であることで、耐候性の優れた化粧シート10を得ることができる。
【0037】
(2)本実施形態1によれば、抗ウイルスの有効成分が、無機材料により担持されていることで、ウイルス効果の持久性の優れた化粧シート10を得ることができる。
(3)本実施形態1によれば、抗ウイルス添加剤の平均粒径を「φ」、最表層の表面保護層50の厚みを「D」としたとき、「0.5D≦φ≦2D」の式(1)の関係が成立することで、抗ウイルス剤との接触面積拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積拡大により、抗ウイルス効果の有する化粧シート10を得ることができる。
【0038】
(4)本実施形態1によれば、抗ウイルス添加剤の粒度分布が1〜5μmの間と5〜10μmの間の2つのピークを持つことで、抗ウイルス剤との接触面積拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積拡大により、抗ウイルス効果の有する化粧シート10を得ることができる。
(5)本実施形態1によれば、最表層の表面保護層50にシリコン系成分若しくはフッ素系成分を添加することで、耐汚染性能が向上し、ウイルスが表面に長期間存在することがなくなるため、結果として抗ウイルス性が向上する。
【0039】
(6)本実施形態1によれば、抗ウイルス添加剤が添加された表面保護層50中に、界面活性剤が添加されていることで、銀系抗ウイルス添加剤と表面保護層50バインダー中の相溶性が良好となり、塗工中の抗ウイルス添加剤の沈殿等による濃度のバラツキが抑制された化粧シート10を得ることができる。
(7)本実施形態1によれば、エンボス加工(例えばエンボス部60)を施すことで、質感がある化粧シート10を得ることができる。
(8)本実施形態1によれば、抗ウイルス性に優れ、且つ表面の各種の物性に優れ、製造が容易な化粧シート10を用いた外装建具用部材100を提供できる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例7について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例1〜実施例4に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
実施例1は、着色熱可塑性樹脂層20としてオレフィン素材からなる着色シート上に絵柄模様層30として、木目印刷を実行する。
木目印刷後、透明熱可塑性樹脂層40としてホモポリプロピレン系樹脂にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤を添加した厚み70μmの透明シートを貼り合わせた。
貼り合わせ後に、表面保護層50としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤の添加させたアクリルポリオールに、ヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤を添加してなるコーティング剤を、下塗りとして6μmにて塗工する。
下塗り後、上塗り最表層として、下塗りに使用した同様のコーティング剤に、平均粒径が1〜10μmの無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で7重量%配合し、これを
3μmで塗工し、化粧シート10を得た。
【0042】
(実施例2)
実施例2では、実施例1における透明熱可塑性樹脂層40に、トリアジン系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を使用した以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
(実施例3)
実施例3では、実施例1における表面保護層50に、トリアジン系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を使用した以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
(実施例4)
実施例4では、実施例2における透明熱可塑性樹脂層40及び表面保護層50に、トリアジン系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を使用した以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
【0043】
(比較例1)
比較例1では、実施例1における透明熱可塑性樹脂層40の透明シート厚みを30μmとした以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
(比較例2)
比較例2では、実施例1における透明熱可塑性樹脂層40に紫外線吸収剤及び光安定剤を添加しない以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
【0044】
(比較例3)
比較例3では、実施例1における表面保護層50に紫外線吸収剤及び光安定剤を添加しない以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
(比較例4)
比較例4では、実施例1における表面保護層50の最表層において、銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で0.1%配合した以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
【0045】
(比較例5)
比較例5では、実施例1における表面保護層50の最表層において、銀系無機添加剤(ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で14%配合した以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
(比較例6)
比較例6では、実施例1における表面保護層50の最表層において、平均粒径が0.5μmの無機系材料に銀イオンを担持させた銀系無機添加剤を使用した以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
(比較例7)
比較例7では、実施例1における表面保護層50の最表層において、平均粒径が13μmの無機系材料に銀イオンを担持させた銀系無機添加剤を使用した以外は、実施例1と同様に化粧シート10を得た。
【0046】
(評価基準)
以上のようにして得た実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例7の化粧シート10に対し、下記の性能評価を行なった。
なお、(1)〜(4)については後述する。
(1)耐候性
(2)抗ウイルス性
(3)化粧シート10の鋼鈑曲げ加工適正
(4)総合判定
【0047】
(化粧シート10の耐候性)
化粧シート10の耐候性は、「耐候性試験(サンシャインウェザー)」を用いた。
上記「耐候性試験」は、「JIS K7350−4 プラスチック 実験室光源による暴露試験方法に準ずる。
上記「耐候性試験」においては、サンシャインウェザーメーターを用い、4000時間後の表面状態を観察する。
判定結果は、「○、△、×」の三段階で評価し、次の通りである。
(1)外観に異常あり(クラック,剥離):「×」(不合格)
(2)外観に僅かな白化確認:「△」
(3)外観に異常無し:「○」(合格)
【0048】
(抗ウイルス性)
「抗ウイルス性」は、次の通り測定した。
「抗ウイルス試験方法」は、「ISO21702」に準じて実施した。
供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。
その後、40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。
シャーレに蓋をした後、25℃、湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。
所定時間後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。
洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
【0049】
(ウイルス感染価の測定(プラーク法))
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。
5%CO
2、37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2〜3日培養した。
培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
【0050】
(ウイルス感染価の算出)
ウイルス感染価の算出は、以下の式(2)に伴い、試料1cm
2当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A ・・・(式2)
・V:試料1cm
2当たりのウイルス感染価(PFU/cm
2)
・C:計測したプラーク数
・D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
・N:SCDLP量
・A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
【0051】
(抗ウイルス活性値の算出)
以下の式(3)に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。抗ウイルス活性値が2log10以上の場合、抗ウイルス効果ありと判定した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)−log(Vc) ・・・式(3)
・Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm
2当たりのウイルス感染価の常用対数値
・Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm
2当たりのウイルス感染価の常用対数値
【0052】
(化粧シート10の鋼鈑曲げ加工適正)
化粧シート10を鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に接着剤として2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生することで建具用鋼鈑化粧材とした。
これらの建具用化粧材を、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施し、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した。
判定結果は、「○、×」の二段階で評価し、次の通りである。
(1)折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ,白化等無し:「〇」(合格)
(2)折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ,白化発生:「×」(不合格)
【0053】
(総合評価)
判定結果は、「○、×」の二段階で評価し、次の通りである。
(1)すべての項目が「○」で、且つ抗ウイルス性が「2.0」以上:「○」(合格)
(2)上記の「(1)」以外:「×」(不合格)
【0054】
(評価結果)
結果を表1に示すものである。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例1〜実施例4と比較例1〜比較例7)
実施例1〜実施例4は、すべての項目が「○」で、且つ抗ウイルス性が「2.0」以上であり、「総合判定」が「○」で、「合格」である。
これに対し、比較例1〜比較例7は、「総合判定」が「×」で、「不合格」である。
【0057】
(比較例1〜比較例3)
比較例1〜比較例3は、「耐候性」が「×」で、「不合格」である。
比較例1は、透明熱可塑性樹脂層40の透明シート厚みが、「30μm」であることが原因と推測できる。比較例1は、実施例1と比較すると、透明シート厚みが厚すぎたことが原因と推測できる。
その結果、透明熱可塑性樹脂層40の厚みとの関係においては、「耐候性」を得るために、透明熱可塑性樹脂層40の厚みが「30μm」を超えていることが、少なくとも必要であることが推測できる。
【0058】
比較例2は、実施例1と比較すると、透明熱可塑性樹脂層40に紫外線吸収剤及び光安定剤を添加しないことが原因と推測できる。
比較例3は、実施例1と比較すると、表面保護層50に紫外線吸収剤及び光安定剤を添加しないことが原因と推測できる。
その結果、「耐候性」を得るために、透明熱可塑性樹脂層40と、表面保護層50とが共に、紫外線吸収剤及び光安定剤が添加されていることが必要であることが推測できる。
【0059】
(比較例4及び比較例5)
比較例4は、抗ウイルス剤の固形分比率が、「0.1質量%」であり、抗ウイルス性が「2.0」未満であり、「総合判定」が「×」、「不合格」である。
比較例4は、抗ウイルス剤の固形分比率が、少なすぎたことが原因と推測できる。
比較例5は、抗ウイルス剤の固形分比率が、「14質量%」であり、化粧シート10の鋼鈑曲げ加工適正が「×」で、「不合格」である。
比較例5は、抗ウイルス剤の固形分比率が、多すぎたことが原因と推測できる。
その結果、抗ウイルス剤の固形分比率は、比較例4の「0.1質量%」を超え、比較例5の「14質量%」未満であることが少なくとも必要であることが推測できる。
【0060】
(比較例6及び比較例7)
比較例6は、表面保護層50の平均粒径が「0.5μm」であり、抗ウイルス性が「2.0」未満であり、「総合判定」が「×」、「不合格」である。
比較例6は、平均粒径が小さすぎたことが原因と推測できる。
比較例7は、表面保護層50の平均粒径が「13μm」であり、抗ウイルス性が「2.0」未満であり、「総合判定」が「×」、「不合格」である。
比較例7は、平均粒径が大きすぎたことが原因と推測できる。
その結果、平均粒径が、比較例6の「0.5μm」を超え、比較例7の「13μm」未満であることが、少なくとも必要であることが推測できる。
【課題】例えば建装材の外装用に用いる化粧シート及びそれを用いた外装建具用部材に関し、抗ウイルス性に優れ、且つ表面の各種の物性に優れ、製造が容易な化粧シートを提供できる。
【解決手段】着色熱可塑性樹脂層20、絵柄模様層30、透明熱可塑性樹脂層40、表面保護層50を、少なくともこの順に設けられた化粧シート10であって、表面保護層50には、抗ウイルス添加剤が添加され、抗ウイルス添加剤の添加量が、表面保護層50の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、透明熱可塑性樹脂層40の厚みが、60μm以上200μm以下であり、透明熱可塑性樹脂層40及び表面保護層50には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている。また、抗ウイルスの有効成分を、無機材料により担持しても良い。