(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
【0012】
本開示の第一実施形態に係る積層体について説明する。本開示に係る化粧シートは、例えば、壁面、建具、家具等に施工される化粧シートであり、特に、ドア枠、窓枠、巾木、見切り、廻り縁の予め建物に組み込まれる造作材に用いることが好ましい化粧シートである。なお、以下の説明では、化粧シートの貼り付け面に接触する側を「下」、化粧シートの貼り付け面に接触する側と反対側(表面)を「上」として説明する場合がある。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
【0013】
1.第一実施形態
(1.1)化粧シートの基本構成
図1は、本開示の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係る化粧シート1の一構成例を説明するための断面図である。
図1に示すように、化粧シート1は、プライマー層11と、原反層12と、着色層13と、トップコート層14と、を備えている。化粧シート1は、プライマー層11、原反層12、着色層13及びトップコート層14がこの順に積層されて構成されている。
【0014】
プライマー層11は、化粧シート1と化粧シート1が貼りつけられる建具や造作物、壁面等の貼り付け面との接着性を向上させるために設けられる層である。原反層12は、化粧シート1の基材となる層であり、貼り付け面の凹凸や段差などを吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にするとともに、貼り付け面の色・模様を隠蔽するための層である。また、原反層12は、化粧シート1に生じる傷を抑制し、化粧シートに柔らかく心地よい手触りを与えるための層である。着色層13は、化粧シート1に所望の色彩を付与する層である。トップコート層14は、化粧シート1の最上面に設けられ、化粧シート1の保護や化粧シート1表面の艶の調整のために設けられる層である。
本実施形態に係る化粧シート1は、少なくとも、原反層12の上に着色層13とトップコート層とがこの順に積層された構成であればよい。
本実施形態においてトップコート層14は、内側トップコート(第2トップコート層の一例)14Aと、外側トップコート層(第1トップコート層の一例)14Bと、を有している。
以下、プライマー層11、原反層12、着色層13及びトップコート層14の各層について詳細に説明する。
【0015】
<原反層>
原反層12は、基材層12Aと、基材層12Aの少なくとも一方の面に設けられたスキン層12Bとを有している。原反層12は、基材層12Aの上面(後述する着色層13側の面)もしくは基材層12Aの両面にスキン層12Bが設けられた構成である。
本実施形態に係る化粧シート1において、原反層12の厚みは、50μm以上200μm以下の範囲内が好ましい。原反層12の厚さが50μm以上である場合、建具や造作材に貼り付けられた化粧シート1の耐傷性がさらに高くなる。また、原反層12の厚さが200μm以下である場合、化粧シート1の曲げ性が必要以上に高くなりすぎず、複雑な形状の建具や造作材に対しても、密着した状態で施工することができる。
本実施形態では、基材層12Aの両面にスキン層12Bが設けられた2種3層の構成の原反層12について説明する。
【0016】
[基材層]
基材層12Aは、樹脂材料に着色のための無機顔料を混合して形成された層である。基材層12Aは、例えば、ポリプロピレン樹脂に白色顔料が混合された白色ポリプロピレンフィルムである。
基材層12Aの厚さは、例えば40μm以上200μm以下であることが好ましく、120μm以上160μm以下であることがより好ましい。基材層12Aの厚さが40μm以上である場合、化粧シートとして要求される隠蔽性を十分に発揮することができるとともに、基材としての強度を十分に有し、耐傷性の悪化を抑制することができる。一方、基材層12Aの厚さが200μm以下である場合、曲げ加工時において白化や割れといった不具合が生じることを抑制することができる。
【0017】
(樹脂材料)
基材層12Aを構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで基材層等として用いられていた熱可塑性樹脂と同様の材料を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0018】
なかでも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0019】
基材層12Aには、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていてもよい。なお、基材層12Aは、化粧シート1の表面(上面)から壁面等の化粧シート1の貼り付け面を隠蔽する隠蔽性を有することが好ましい。
基材層12Aは、着色剤を含むことが好ましい。着色剤としては、隠蔽性を付与するための白色顔料である酸化チタンに代表される公知の無機顔料を用いることが好ましい。隠蔽性が低い場合、化粧シート1の貼り付け面の模様が透過するため好ましくない。無機顔料を含有することにより、隠蔽性が良好な化粧シート1を得ることができる。
【0020】
[スキン層]
スキン層12Bは、樹脂材料と樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤とを含む層であり、表面に凹凸形状を有している。本実施形態では、造核剤は、外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で樹脂材料に添加されている。
スキン層12Bの厚さは、例えば1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。スキン層12Bの厚さが1μm以上である場合、化粧シート1の耐傷性が十分に高くなる。また、スキン層12Bの厚さが50μm以下である場合、化粧シート1の曲げ性が必要以上に高くなりすぎず、化粧シート1を貼り付ける貼り付け面が平面でない場合にも化粧シート1を貼り付け面に密着させた状態で施工することができる。
【0021】
(樹脂材料)
スキン層12Bを構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、基材層12Aと同様の樹脂材料を用いることができる。
【0022】
(樹脂材料)
スキン層12Bを構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、基材層12Aと同様の樹脂材料を用いることができる。
【0023】
(造核剤)
スキン層12Bはナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されることが好ましい。また、本実施形態において、スキン層12Bを構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。スキン層12Bは造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート1の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
【0024】
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
【0025】
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなる。一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
【0026】
スキン層12Bは、例えば、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤が添加された樹脂材料により形成される。造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、スキン層12Bの耐傷性が十分に向上しないおそれがある。また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、スキン層12Bの耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
ここで、「主成分」とは、スキン層12Bを構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料を示すものとする。
【0027】
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズ
の粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0028】
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0029】
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
【0030】
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0031】
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0032】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本実施形態の化粧シート1においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、化粧シート1の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
【0033】
上述のように、本実施形態の化粧シート1は、原反層12(具体的には、スキン層12B)が樹脂材料と造核剤とを含有する点に特徴を有している。また、本実施形態の化粧シート1は、スキン層12Bを形成する際に、樹脂材料に対してベシクルに内包された造核剤を添加して樹脂材料を結晶化させる点に特徴を有している。造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわちスキン層12B中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏する。一方、ベシクルに内包された造核剤を、完成された化粧シート1の状態における物の構造や特性にて直接特定することが、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。
【0034】
ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、作製された化粧シート1の前駆体である積層体の状態においてもスキン層12Bに高分散されている。しかしながら、化粧シート1の作製工程において、通常、積層体は圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施され、このような処理によって造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕したり化学反応する場合がある。このため、化粧シート1の処理工程によって、完成後の化粧シート1における造核剤の外膜が破砕したり化学反応している状態がばらつき、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高い。そして、造核剤が外膜で包含されていない場合、造核剤の物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本開示は、従来に比して、化粧シート1に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート1の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0035】
スキン層12Bの少なくとも一方の表面は、凹凸形状とされている。凹凸形状は、表面側(着色層13側)のスキン層12B、裏面側(プライマー層11側)のスキン層12Bの一方もしくは双方に設けられており、表面側(着色層13側)のスキン層12Bに設けられていることが好ましい。
【0036】
<着色層>
着色層13は、例えばマトリックスと、染料又は顔料等の着色剤とを含む層である。着色層13は、例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散した印刷インキやコーティング剤を用いることができる。
着色層13の厚さは、3μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。着色層13の厚さがこの数値範囲内である場合、印刷を明瞭にすることができるとともに、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
【0037】
(マトリックス)
マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。
【0038】
(着色剤)
着色層13を構成する着色剤としての無機顔料は、特に限定されないが、例えば天然無機顔料、合成無機顔料が挙げられる。天然無機顔料としては、例えば、土系顔料、焼成土、鉱物性顔料などが挙げられる。合成無機顔料としては、例えば、酸化物顔料、水酸化物顔料、硫化物顔料、珪酸塩顔料、燐酸塩顔料、炭酸塩顔料、金属粉顔料、炭素顔料などが挙げられる。また、天然無機顔料、合成無機顔料の中から、1種類もしくは2種類以上を混合した混合顔料を用いてもよい。より具体的に、無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等を用いることができる。
また、着色層13を構成する着色剤として、有機顔料を用いても良い。有機顔料としては、カーボンブラック、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。無機顔料及び有機顔料は、併用しても構わない。
更に、分散性の向上や、押出適正を改善するために脂肪酸金属塩などの添加剤を加えても構わない。
【0039】
また、着色層13には、意匠性を付与するための絵柄を付加してもよい。これにより、着色層13は絵柄模様層として機能する。着色層13に付加する絵柄としては、任意の絵柄を用いることができ、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、或いはそれらの組み合わせ等を用いることできる。
【0040】
また、着色層13には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
ここで、着色層13は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。これらの印刷方法は、形成する層によって別々に選択してもよいが、同じ方法を選択して一括加工することが効率的である。
【0041】
<トップコート層>
トップコート層14は、着色層13上に形成される層であり、化粧シート1に耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられた層である。本実施形態において、トップコート層14には、抗ウイルス剤が含まれている。これにより、化粧シート1に抗ウイルス性が付与される。抗ウイルス剤の構成については後述する。
トップコート層14は単層でも良く、また複数の層を重ねてトップコート層14としても良い。本実施形態では、
図1に示すように、内側トップコート層14Aおよび外側トップコート層14Bの2層で構成されるトップコート層14について説明する。まず、トップコート層14の最表層である外側トップコート層14Bについて説明する。
【0042】
[外側トップコート層]
外側トップコート層14Bは、トップコート層14を構成する層(内側トップコート層14A、外側トップコート層14B)のうち、最表面(最外面)に位置する層(最表層)である。外側トップコート層14Bは、樹脂材料により構成される。外側トップコート層14Bを構成する樹脂材料の主成分となる材料は、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などの樹脂材料から適宜選択して用いられる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。樹脂材料の硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法、熱硬化法、光硬化型など適宜選択して行うことができる。
【0043】
外側トップコート層14Bの主成分として用いる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などの硬化剤より適宜選定して用いることができる。なかでも、耐候性の点から、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)を用いることが好ましい。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制及び密着性の向上を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る化粧シート1において、最表層である外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量は、1g/m
2以上8g/m
2以下の範囲内であると好ましく、2g/m
2以上4g/m
2以下の範囲内がより好ましい。
外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量が1g/m
2以上であれば、耐摩耗性、耐候性、耐傷性など、各種耐性に優れた化粧シートを得ることができる。また、外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量が8g/m
2以下であれば、性能とコストとのバランスがよく、必要以上のコストの増加を抑えることができる。一方、外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量が1g/m
2に満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷付性が低下し、バラつきが大きくなることがある。また、外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量が8g/m
2を超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。
外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量が2g/m
2以上4g/m
2以下の範囲内であると、各種耐性にさらに優れるとともに、性能とコストとのバランスがより良い化粧シートを得ることができる。
【0045】
(抗ウイルス剤)
外側トップコート層14Bは、抗ウイルス性を向上させる抗ウイルス剤を含んでいる。これにより、抗ウイルス性に優れた化粧シート1を得ることができる。外側トップコート層14Bに含まれる抗ウイルス剤は、有効成分として銀成分を含んでいることが好ましい。つまり、外側トップコート層14Bは、銀系抗ウイルス剤(銀系添加剤)を含んでいることが好ましい。
抗ウイルス剤としては、ジンクピリジオン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、10、10−オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン−2−チオール−オキシド等を使用してもよいが、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。なお、外側トップコート層14Bには、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤を添加してもよい。
【0046】
また、銀系抗ウイルス剤は、銀成分が無機材料により担持された構成による銀系材料を含有していてもよい。銀成分を無機材料に担持させることで、経時での銀成分の脱落や、ポリ塩化ビニル層への転移を防ぐことができる。これにより、ウイルス効果の持久性が優れた化粧シート1を得ることができる。ここで、無機担持体に用いる無機材料としては、例えばガラスを使用することができる。なお当該無機材料は、ガラスに限定されない。また、銀系材料は、銀成分が無機材料による担持体(無機担持体)に担持されている構成であってもよいし、銀成分単体で構成されてもよい。
【0047】
(銀系抗ウイルス剤の有効成分濃度)
トップコート層の最表層である外側トップコート層14Bにおいて、抗ウイルス剤における銀系材料の固形分濃度(質量%)を「A」とし、銀系材料中の銀成分の割合(質量%)を「B」とし、単位面積当たりの抗ウイルス剤の塗布量(g/m
2)を「C」としたときに、下記の式(1)の関係が成立することが好ましい。
A×B×C≧10 ・・・式(1)
上記式(1)は、「A」「B」「C」の数値における関係式を表している。
ここで、例えば銀系抗ウイルス剤における銀系材料が、銀成分が無機材料により担持された構成であるとする。この場合、上記「A」の「固形分濃度」とは、銀系抗ウイルス剤中の「銀系材料」、つまり「銀成分」及び「無機担持体」(銀成分+無機担持体)の濃度を示す。また、上記「B」は、銀系抗ウイルス剤の中の銀成分(有効成分)の濃度、すなわち銀系材料中の銀の担持量を示す。さらに、上記「C」の塗布量は、外側トップコート層14Bの目付量ではなく、外側トップコート層14Bにおける、1平方メートル当たりの抗ウイルス剤の塗布量(g)、つまり添加量を示す。
上記式(1)の「A×B×C」、すなわち銀系抗ウイルス剤中の銀系材料の固形分濃度(A)、銀系材料中の銀の担持量(B)、銀系抗ウイルス剤の塗布量(C)の積が有効成分濃度に相当し、当該有効成分濃度を示す値が「10」以上であれば、抗ウイルス活性値「3」以上(ウイルスの99.9%減少)という非常に優れた抗ウイルス性を化粧シート1に付与することができる。
【0048】
また、本実施形態において、銀系抗ウイルス剤中の銀系材料の固形分濃度は、0.2質量%以上13質量%以下の範囲内であると好ましい。これにより、抗ウイルス剤が効果的に作用し、化粧シート1における抗ウイルス性を向上することができる。また、抗ウイルス剤の添加量が13質量%以下である場合、耐傷性が向上する。
【0049】
(抗ウイルス剤の平均粒径と外側トップコート層の塗布量との関係)
抗ウイルス剤の平均粒径(μm)を「D50」とする。また、トップコート層の最表層である外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量(g/m
2)を「Dsurf」とする。このとき、下記の式(2)の関係が成立することが好ましい。
D50≦Dsurf<3×D50 ・・・式(2)
上記式(2)は、銀系抗ウイルス剤の「D50」(μm)と「Dsurf」(g/m
2)との数値における関係式を表している。
つまり、本実施形態において外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量の値は、抗ウイルス剤の平均粒径の値の1倍以上3倍未満の範囲内であることが好ましい。
上記「式(2)」の関係が成立することで、化粧シート1の抗菌・抗ウイルス効果がさらに向上される。
【0050】
ここで、銀系抗ウイルス剤における銀系材料が、無機材料によって銀成分が担持された構成である場合、抗ウイルス材の平均粒径「D50」は、銀成分と無機担持体との混合物の平均粒径を示す。このとき、上記式(2)が成立することにより、例えば銀成分を担持する無機担持体の一部が外側トップコート層14Bから突起し易くなる。このため、化粧シート1における抗菌・抗ウイルス効果がさらに向上される。
【0051】
[内側トップコート層]
図1に示すように、トップコート層14は2層構造であり、最表層である外側トップコート層14Bと、外側トップコート層14Bと着色層13との間に設けられた内側トップコート層14Aとを有している。
内側トップコート層14Aについては、最表層である外側トップコート層14Bと同様の組成の樹脂を用いればよい。なお、これに限られず、内側トップコート層14Aは、別個に樹脂の種類や組成、比率を外側トップコート層14Bと変えたものを用いても構わない。
内側トップコート層14Aには、外側トップコート層14Bと同様の構成の抗ウイルス剤が添加されていてもよいし、添加されていなくてもよい。内側トップコート層14Aに抗ウイルス剤が添加される場合、化粧シート1は、トップコート層14の最表層(外側トップコート層14B)が摩耗して内側トップコート層14Aが露出した場合であっても、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る化粧シート1において、内側トップコート層14Aの単位面積当たりの塗布量は、2g/m
2以上9g/m
2以下の範囲内であると好ましく、3g/m
2以上5g/m
2以下の範囲内がより好ましい。
内側トップコート層14Aの単位面積当たりの塗布量が上記範囲内(2g/m
2以上9g/m
2以下)であれば、各種耐性に優れ、性能とコストとのバランスがよい化粧シートを得ることができる。一方、内側トップコート層14Aの単位面積当たりの塗布量が2g/m
2に満たない場合には、生産が難しくなるため生産性が低下したり、耐候性や耐傷性が低下してバラつきが大きくなることがある。また、内側トップコート層14Aの単位面積当たりの塗布量が9g/m
2を超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることや、可撓性が低下することがある。
内側トップコート層14Aの単位面積当たりの塗布量が3g/m
2以上5g/m
2以下の範囲内であると、各種耐性にさらに優れるとともに、性能とコストとのバランスがより良い化粧シートを得ることができるため、より好ましい。
【0053】
本実施形態において、内側トップコート層14Aおよび外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量(g/m
2)の合計、すなわちトップコート層14の単位面積当たりの塗布量は、4g/m
2以上9g/m
2以下の範囲内が好ましい。トップコート層14の単位面積当たりの塗布量が4g/m
2以上である場合、耐傷性の向上効果が高くなる。また、トップコート層14の当該塗布量が9g/m
2以下である場合、曲げ加工時におけるクラックや割れの発生を抑制し、化粧シート1の意匠性や耐候性の悪化を抑制することができる。なお、トップコート層14が一層から構成される構造(単層構造)の場合、内側トップコート層14Aまたは外側トップコート層14Bのいずれかをトップコート層14とすればよい。また、この場合、単層のトップコート層14に抗ウイルス剤(例えば、銀系抗ウイルス剤)が含まれていればよい。
【0054】
トップコート層14は、艶調整のために艶調整剤を含んでいても良い。艶調整剤は、外側トップコート層14Bに含まれてもよいし、外側トップコート層14Bおよび内側トップコート層14Aの両方に含まれてもよい。艶調整剤としては、市販されている公知の材料を用いればよく、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子を用いてもよい。また、艶調整剤として、アクリル等の有機材料からなる微粒子を用いることもできる。ただし、高い透明性が要求される場合には、艶調整剤として透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが好ましい。特に、シリカやガラス等の微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集した嵩密度の低い艶調整剤は、添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、嵩密度の低い艶調整剤を用いることで、艶調整剤の添加量を少なくすることができる。
【0055】
また、トップコート層14に含まれる艶調整剤は、化粧シート1の光沢度が10以下となるように調整されることが好ましい。上述したように、基材層12Aに艶調整剤が含まれる場合には、化粧シート1全体の光沢度が10以下となるように調整される必要がある。化粧シート1の光沢度が10以下である場合、落ち着いた印象の外観を有する化粧シート1が得られる。このため、絵柄のある家具や建具との調和性が向上し、例えばドア枠、窓枠、巾木、見切り、廻り縁の予め建物に組み込まれる造作材に用いる化粧シートとしてより好ましい外観がえられる。
【0056】
また、トップコート層14に各種機能を付与するために、トップコート層14の各層は抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を含んでいてもよい。また、トップコート層14の各層は、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。また、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系の光安定化剤が挙げられる。
【0057】
<プライマー層>
図1に示すように、プライマー層11は、原反層12の着色層13と反対側の面に設けられている。
プライマー層11としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの混合物等を使用することができる。更に、ポリオールとイソシアネートによる2液タイプにすることで、着色層13とプライマー層11との密着性及びプライマー層11自体の凝集力が向上する。ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4'ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の脂肪族系が挙げられる。プライマー層11は、反応性の早さ、耐熱性の点で芳香族系のポリオールを用いることが好ましい。
【0058】
プライマー層11の厚みは、1μm以上であることが好ましい。プライマー層11の厚みを1μm以上とすることにより、溶剤によって接着剤が溶解し、プライマー層11が消失して密着性が低下することを防止することができる。
なお、化粧シート1を施工する面の凹凸が大きい場合には、予めパテによる目止め等を行い、必要時応じてプライマー塗布を行うのが良い。
【0059】
以上のような構成の化粧シート1の表面(トップコート層14上)の算術平均粗さRaは、2.0μm以上4.5μm以下であることが好ましく、2.5μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。また、化粧シート1表面の十点平均粗さRz(RzJIS)は、12μm以上30μm以下であることが好ましく、15μm以上20μm以下であることがより好ましい。さらに、化粧シート1表面の凹凸の局部山頂の平均間隔Sは、90μm以上200μm以下であることが好ましく、90μm以上130μm以下であることがより好ましい。ここで、算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzはJIS B0601:2001において定義された値であり、局部山頂の平均間隔SはJIS B0601:1994において定義された値である。
【0060】
化粧シート1の表面が上述した算術平均粗さRa、十点平均粗さRz及び局部山頂の平均間隔Sを有するようにスキン層12Bの凹凸形状を形成することにより、耐傷性が高く、かつ柔らかく心地よい手触りの化粧シート1を得ることができる。また、このような凹凸形状を有する化粧シート1は、耐傷性が高く、柔らかく心地よい手触りを有しつつ、目視では凹凸の感じが分かりにくい程度の微細な梨地調の意匠感を得ることができる。このような化粧シート1は、建具に組み込まれる造作材に用いる化粧シートとして好ましい落ち着いた外観を得ることができる。
【0061】
(1.2)化粧シートの製造方法
化粧シート1の一製造例について説明する。
ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料に必要に応じて無機顔料等を添加して溶融混錬し、基材層12Aとなる無機顔料等を含む基材層用樹脂材料を得る。次に、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料に造核剤ベシクルを混合してスキン層12B用の造核剤ベシクル含有樹脂材料を得る。続いて、加熱溶融した基材層12A用の樹脂材料及びスキン層12B用の造核剤ベシクル含有樹脂材料を、例えば基材層用樹脂材料/造核剤ベシクル含有樹脂材料/基材層用樹脂材料の順に積層されるように押出機から同時に押し出し、冷却ロールで冷却して積層フィルムを形成した。このとき、少なくとも一方の冷却ロールとして表面に所定の凹凸形状を有する冷却ロールを用いる。これにより、スキン層12B/基材層12A/スキン層12Bが積層され、少なくとも一方のスキン層12B表面に所定の凹凸形状が転写された原反層12を得る。
【0062】
続いて、原反層12の裏面となる面にウレタン系樹脂等の樹脂材料を塗工してプライマー層11を形成する。さらに、原反層12の着色層13側の面に、着色顔料を含む樹脂材料を塗布及び硬化させて着色層13を形成する。最後に、アクリルウレタン樹脂等の樹脂材料を塗布及び硬化させてトップコート層14を形成する。
【0063】
トップコート層14を形成する際、まずは、着色層13の表面に、抗ウイルス剤(例えば銀系抗ウイルス剤)が添加されていない樹脂材料を下塗りし、硬化させて下塗り層(内側トップコート層14A)を形成する。
次に、下塗り層の表層に、抗ウイルス剤が添加された樹脂材料を上塗りし、硬化時に架橋させ、上塗り層(外側トップコート層14B)を形成する。なお、各層を形成する際に、塗工面に対してコロナ処理等の表面処理を行っても良い。
【0064】
上塗り層に添加する銀系抗ウイルス剤としては、次のいずれか一種類を使用することができる。
【0065】
(1)「ビオサイド TB−B100、タイショーテクノス製、銀担持量1%、平均粒径5μm」
上塗り層の樹脂材料に対する、上記「ビオサイド TB−B100」の添加量(DRY換算)は、例えば0.2wt%以上13wt%以下の範囲内であればよく、4wt%以上6wt%以下であるとより好ましい。
上記「ビオサイド TB−B100」の塗布量は、1g/m
2以上3g/m
2以下の範囲内であればよい。
【0066】
(2)「PTC−NT ANV添加剤(ST)、大日精化製、銀担持量3%、平均粒径(D50)3μm」
上塗り層の樹脂材料に対する、上記「PTC−NT ANV添加剤(ST)」の添加量(DRY換算)は、例えば1wt%以上5wt%以下の範囲内であればよい。
上記「PTC−NT ANV添加剤(ST)」の塗布量は、1g/m
2以上3g/m
2の範囲内であればよい。
(3)「PTC−NT ANV添加剤(S1)、大日精化製、銀担持量2%、平均粒径(D50)1μm」
上塗り層の樹脂材料に対する、上記「PTC−NT ANV添加剤(S1)」の添加量(DRY換算)は、例えば1wt%以上5wt%以下の範囲内であればよい。「PTC−NT ANV添加剤(ST)」と同じである。
上記「PTC−NT ANV添加剤(S1)」の塗布量は、1g/m
2以上3g/m
2の範囲内であればよい。
【0067】
上記(1)から(3)において、上記添加量(DRY換算)が上記「A」(銀系抗ウイルス剤の銀系材料の固形分濃度)に相当し、銀担持量が上記「B」に相当し、各抗ウイルス剤の塗布量(本例では、1g/m
2以上3g/m
2以下)が上記「C」に相当する。
【0068】
以上により、プライマー層11、原反層12、着色層13及びトップコート層14がこの順に積層され、抗ウイルス剤を含む外側トップコート層14Bを有する第一実施形態の化粧シートを得ることができる。
【0069】
(1.3)第一実施形態の効果
以上のような化粧シート1は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の化粧シート1は、原反層12の上に、着色層13とトップコート層14とがこの順に積層され、原反層12は、造核剤と樹脂材料とを含み、トップコート層14は、抗ウイルス剤を含む外側トップコート層14Bを有する。
この構成によれば、化粧シート1は、高い耐傷性を有することで傷が生じることを抑制し、優れた抗ウイルス性を有する化粧シート1を得ることができる。
(2)本実施形態の化粧シート1は、原反層の厚が、50μm以上200μm以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、高い耐傷性と優れた抗ウイルス性を有するとともに、優れた加工適性(例えば曲げ加工性)を有する化粧シート1を得ることができる。
【0070】
(3)本実施形態の化粧シート1において、トップコート層14は、最表層である外側トップコート層14Bと、外側トップコート層と着色層13との間に設けられた内側トップコート層との2層で形成されていてもよい。
この構成によれば、化粧シート1は、耐傷性をより向上し、各種添加剤(例えば抗ウイルス剤)により付与される性能の効果を高めることができる。
(4)本実施形態の化粧シート1において、外側トップコート層14Bの単位面積当たりの塗布量は、1g/m
2以上8g/m
2以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、高い耐傷性と優れた抗ウイルス性を有するとともに、性能とコストとのバランスに優れた化粧シートを得ることができる。
(5)本実施形態の化粧シート1において、内側トップコート層14Aの単位面積当たりの塗布量は、2g/m
2以上9g/m
2以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、高い耐傷性と優れた抗ウイルス性を有するとともに、性能とコストとのバランスに優れた化粧シートを得ることができる。
(6)本実施形態の化粧シート1において、トップコート層14の単位面積当たりの塗布量は4g/m
2以上9g/m
2以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、耐傷性がさらに向上されるとともに、加工適性(例えば曲げ加工性)に優れた化粧シートを得ることができる。
【0071】
(7)本実施形態の化粧シート1において、抗ウイルス剤は、銀成分を含んでいてもよい。
この構成によれば、抗ウイルス性がより優れた化粧シートを得ることができる。
(8)本実施形態の化粧シート1において、抗ウイルス剤は、銀成分が無機材料により担持された構成による銀系材料を含有していてもよい。
この構成によれば、ウイルス効果の持久性が優れた化粧シートを得ることができる。
(9)本実施形態の化粧シート1は、外側トップコート層14Bにおいて、抗ウイルス剤が含有する銀系材料の固形分濃度(質量%)をA、前記銀系材料中の銀成分の割合(質量%)をB、単位面積当たりの抗ウイルス剤の塗布量をC(g/m
2)としたときに、下記(式1)の関係が成立していてもよい。
A×B×C≧10・・・(式1)
この構成によれば、抗ウイルス活性値「3」以上(ウイルスの99.9%減少)という非常に優れた抗ウイルス性を化粧シート1に付与することができる。
【0072】
(10)本実施形態の化粧シート1において、抗ウイルス剤における銀系材料の固形分濃度は、0.2質量%以上13質量%以下であってもよい。
この構成によれば、化粧シート1は、抗ウイルス性を向上することができるとともに、耐傷性を向上することができる。
(11)本実施形態の化粧シート1において、外側トップコート層14Bの1平方メートル当たりの塗布量の値は、抗ウイルス剤の平均粒径の値の1倍以上3倍未満であってもよい。
この構成によれば、化粧シート1は、銀成分を担持する無機担持体の一部が外側トップコート層14Bから突起し易くなり、抗菌・抗ウイルス効果をより向上することができる。
(12)本実施形態の化粧シート1において、原反層12は、着色層13と反対側の面に設けられたプライマー層を有してもよい。
この構成によれば、化粧シート1と建具や造作物との接着に用いられる接着剤との密着性を向上することができる。
【0073】
(1.4)第一実施形態の変形例
本実施形態に係る化粧シートの変形例について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態の変形例による化粧シート1の一構成例を説明するための断面模式図である。
図2に示すように、化粧シート1において、原反層12は、両方の表面が平坦に形成されたスキン層112Bを有していてもよい。なお、スキン層112Bは、両方の表面が平坦である以外は、
図1に示すスキン層12Bと同一の構成を有する。
スキン層112Bの両方の表面が平坦に形成されることにより、原反層12の形成時において、スキン層に凹凸形状を形成するための作業負荷や製造コストを低減することができ、結果として、化粧シート1の製造に係る作業負荷や製造コストを低減することができる。また、スキン層12Bの両方の表面を平坦とした場合であっても、耐傷性や抗ウイルス性といった性能は十分に維持することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の変形例による化粧シート1において、原反層12におけるスキン層112Bは、両方の表面が平坦に形成されていてもよい。
これにより、化粧シート1の製造に係る作業の簡略化や製造コストを低減することができるとともに、高い耐傷性と優れた抗ウイルス性とを有する化粧シートを得ることができる。
【0075】
2.第二実施形態
以下、本開示の第二実施形態に係る化粧シートについて、
図2を用いて説明する。
図2は、本開示の第二実施形態に係る化粧シート2の一構成例を説明するための断面図である。本実施形態に係る化粧シート2は、化粧シート1と同様に、例えば、壁面、建具、家具等に施工される化粧シートであり、特に、ドア枠、窓枠、巾木、見切り、廻り縁の予め建物に組み込まれる造作材に用いることが好ましい化粧シートである。
【0076】
化粧シート2は、プライマー層11と、原反層22と、着色層13と、トップコート層14と、を備えている。すなわち、化粧シート2は、原反層12に代えて原反層22を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート1と相違する。
【0077】
以下、原反層12について説明する。なお、原反層12以外の各層(プライマー層11、着色層13及びトップコート層14)については、化粧シート1の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0078】
(2.1)化粧シートの基本構成
<原反層>
原反層22は、基材層22Aと、基材層22Aの少なくとも一方の面に設けられたスキン層22Bとを有している。原反層22は、基材層22Aの上面(後述する着色層13側の面)もしくは基材層22Aの両面にスキン層22Bが設けられた構成である。本実施形態では、基材層22Aの両面にスキン層22Bが設けられた構成の原反層22について説明する。
【0079】
[基材層]
基材層22Aは、第一実施形態に係る基材層12Aと同様の構成であるため説明を省略
する。
【0080】
[スキン層]
スキン層22Bは、樹脂材料と無機材料とを含む層である。第一実施形態にかかる化粧シート1では、造核剤を含む樹脂材料によって高い結晶性を有する高耐傷性樹脂シートを形成してスキン層12Bとした。一方、第二実施形態にかかる化粧シート2では、造核剤に代えて、硬度の高い無機粒子を含む樹脂材料によって高い硬度を有するスキン層22Bとすることで高耐傷性を有する化粧シート2を得る。
【0081】
無機粒子としては、例えばナノサイズのシリカ、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子が挙げられる。
スキン層22Bは、例えば、樹脂材料100質量部に対して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で無機粒子が添加された樹脂材料により形成される。
【0082】
原反層12と同様に、スキン層22Bの少なくとも一方の表面は凹凸形状とされている。スキン層22B表面の算術平均粗さRa、十点平均粗さRz及び局部山頂の平均間隔Sは、スキン層12Bと同様である。
造核剤に代えて無機粒子を用いる場合であっても、スキン層22Bが凹凸形状を有することにより化粧シート2自体の表面は平坦でありながら耐傷性が高く、かつ柔らかく心地よい手触りの化粧シート2を得ることができる。
【0083】
原反層22は、例えば、ナノサイズの無機粒子を含む無機粒子含有ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、造核剤ベシクル含有樹脂材料とともに共押し出し成形することにより、基材層22Aの少なくとも一方の面にスキン層22Bが設けられて形成される。なお、
図2に示す原反層12におけるスキン層12Bと同様に、スキン層22Bの少なくとも一方の表面が凹凸形状ではなく、平坦であってもよい。
【0084】
(2.2)第二実施形態の効果
以上のような化粧シート2は、以下の効果を有する。
本実施形態の化粧シート2において、原反層22は、樹脂材料と無機粒子とを含み、高硬度化された原反層22を有している。
この構成によれば、化粧シート2に生じる傷を抑制し、かつ優れた抗ウイルス性を有する化粧シート2を得ることができる。さらに、化粧シート2に柔らかく心地よい手触りを付与することができる。
また、本実施形態に係る化粧シート2は、上記第一実施形態と同様の効果を有する。
【0085】
3.第三実施形態
本開示の第三実施形態に係る化粧材について、
図4を用いて説明する。
図4は、本開示の第三実施形態に係る化粧材10の一構成例を説明するための断面図である。
(化粧材)
化粧材10は、原反層12の一方の面側に、着色層13、及びトップコート層14がこの順に積層されており、原反層12の他方の面側に設けられたプライマー層11と、基材9とが貼り合わされている。
すなわち、化粧材10は、基材9を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート1と相違する。
【0086】
以下、基材9について説明する。なお、化粧シート1については、上記第一実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0087】
[基材]
基材9としては、例えば建具・造作材用基材が想定され、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。基材9の厚さは3mm以上25mm以下程度が好適である。なお基材9は、アルミなどの金属やプラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。基材9を形成することにより、建具等を人が開閉したり、物が乗せられたり、床の近くに配設されることによる傷の発生を抑制可能な化粧材10を提供することができる。
また、化粧材10において、プライマー層11を化粧シート1ではなく、基材9の一方の面に設け、基材9上のプライマー層を介して化粧シート1と基材9とが貼り合わされてもよい。なお、本実施形態においては、化粧シート1に基材9が貼り合わされているが、この化粧シート1は、原反層12において両面が平坦なスキン層112B(
図2参照)が設けられた化粧シート1であってもよい。また、化粧シート1に代えて化粧シート2又は化粧シート3を用いて化粧材10を形成してもよい。
【0088】
<第三実施形態の効果>
本実施形態に係る化粧材10は、第一実施形態および第二実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(13)本実施形態の化粧材10は、基材9と、基材9に貼り合わされた化粧シート(化粧シート1,2)を備えている。
この構成によれば、化粧材10は、高い耐傷性を有し建具などの使用時における化粧材10での傷の発生を抑制することができるとともに、優れた抗ウイルス性を有する化粧材を得ることができる。
【実施例】
【0089】
以下、本開示に係る化粧シートについて、実施例を挙げて説明する
実施例では、以下の各実施例及び各比較例で説明する構成の化粧シートを作製し、建具用の基材上に貼り合せて化粧シートの評価を行った。
【0090】
<実施例1>
単色の化粧シートを以下の手順で作成した。
ポリプロピレン樹脂に白顔料と耐候剤を混合して溶融混錬し、白顔料を30質量%、耐候剤を1質量%含有する白色ポリプロピレン樹脂を得た。次に、透明ポリプロピレン樹脂に造核剤ベシクルを混合し、造核剤ベシクルを0.1質量%含有する造核剤ベシクル含有ポリプロピレン樹脂を得た。続いて、加熱溶融した白色ポリプロピレン樹脂及び造核剤ベシクル含有ポリプロピレン樹脂を、白色ポリプロピレン樹脂/造核剤ベシクル含有ポリプロピレン樹脂/白色ポリプロピレン樹脂の順に積層されるように押出機から同時に押し出し、冷却ロールで冷却して積層フィルムを形成した。このとき、白色ポリプロピレン樹脂の一方の側の冷却ロールとして表面に凹凸形状を有する冷却ロールを用い、他方の側の冷却ロールとして表面が平滑な冷却ロールを用いた。これにより、白色の基材層と、基材層の両面に設けられた透明なスキン層を有し、スキン層の一方の面に凹凸形状が形成された層厚100μmの着色原反層を得た。
【0091】
このとき、押出機では、スキン層、基材層及びスキン層の厚み比が0.5:9:0.5となるように各樹脂の押し出し量を調整した。また、一方の冷却ロール表面の凹凸形状は、完成した化粧シートのトップコート層形成面の算術平均粗さRaが2.589μm、十点平均粗さRzが16.330μm、凹凸の局部山頂の平均間隔Sが92.8μmとなる凹凸が転写できる形状とした。
【0092】
続いて、着色原反層の他方の面(平滑な面)にグラビア印刷により二液ウレタン系樹脂を固形分量が1g/m
2となるように塗工してプライマー層を形成した。さらに、着色原反層の一方の面(凹凸を有する面)にコロナ処理を施した後、グラビア印刷により着色ポリプロピレン樹脂を固形分量が5g/m
2となるように塗工及び硬化して着色層を形成した。
【0093】
続いて、着色層の上にアクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィック社製、アクリルウレタン樹脂)を単位面積当たりの塗布量が5g/m
2となるように塗布及び硬化して内側トップコート層を形成した。さらに、上記アクリル系二液硬化型樹脂を単位面積当たりの塗布量が4g/m
2となるように塗布及び硬化して外側トップコート層を形成した。これにより、単位面積当たりの塗布量の合計が9g/m
2となる2層構造のトップコート層を形成した。また、外側トップコート層の樹脂材料には、抗ウイルス剤として、アクリル系樹脂組成物に平均粒径5μmの銀系無機添加剤(株式会社タイショーテクノス製、ビオサイドTB−B100)を添加した。なお、当該銀系無機添加剤の添加量(DRY換算)は5wt%とし、単位面積当たりの塗布量を1g/m
2とした。また、当該銀系無機添加剤の有効成分(銀成分)は無機材料により担持されており、担持量は1wt%とした。
以上により、プライマー層、着色原反層、着色層及びトップコート層がこの順に積層され、着色原反層のトップコート層側の表面に凹凸が形成された実施例1の化粧シートを得た。
【0094】
<実施例2>
抗ウイルス剤の単位面積当たりの塗布量を3g/m
2に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の化粧シートを作製した。
<実施例3>
抗ウイルス剤の単位面積当たりの塗布量を2g/m
2に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の化粧シートを作製した。
<実施例4>
抗ウイルス剤の単位面積当たりの塗布量を0.5g/m
2に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の化粧シートを作製した。
<実施例5>
抗ウイルス剤の単位面積当たりの塗布量を4g/m
2に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の化粧シートを作製した。
【0095】
<実施例6>
外側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を1g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例6の化粧シートを作製した。
<実施例7>
外側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を0.5g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例7の化粧シートを作製した。
<実施例8>
外側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を15g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例8の化粧シートを作製した。
<実施例9>
内側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を2g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例9の化粧シートを作製した。
【0096】
<実施例10>
内側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を9g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例10の化粧シートを作製した。
<実施例11>
内側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を10g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例11の化粧シートを作製した。
<実施例12>
内側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を1g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例12の化粧シートを作製した。
【0097】
<実施例13>
外側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を8g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例13の化粧シートを作製した。
<実施例14>
外側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を1g/m
2に変更し、内側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を3g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例14の化粧シートを作製した。
<実施例15>
外側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を1g/m
2に変更し、内側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を2g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例15の化粧シートを作製した。
【0098】
<実施例16>
抗ウイルス剤(銀系無機添加剤)の添加量(DRY換算)を、0.2wt%に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例16の化粧シートを作製した。
<実施例17>
抗ウイルス剤(銀系無機添加剤)の添加量(DRY換算)を、13wt%に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例17の化粧シートを作製した。
<実施例18>
外側トップコート層の単位面積当たりの塗布量を5g/m
2に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例18の化粧シートを作製した。
【0099】
<実施例19>
原反層において、単層膜の外膜を具備するベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いて基材層を形成した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例19の化粧シートを作製した。
<実施例20>
原反層において、造核剤ベシクルではなく無機粒子を0.1質量%添加した基材層を形成した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例26の化粧シートを作製した。
【0100】
<実施例21>
原反層の厚みを50μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例21の化粧シートを作製した。
<実施例22>
原反層の厚みを200μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例22の化粧シートを作製した。
<実施例23>
原反層の厚みを210μmに変更した。それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例23の化粧シートを作製した。
【0101】
<比較例1>
トップコート層において、抗ウイルス剤の添加を省略した。それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例1の化粧シートを作製した。
<比較例2>
原反層において、造核剤ベシクルおよび無機粒子のいずれも添加せずに基材層を形成した。それ以外は実施例3と同様の方法で、比較例2の化粧シートを作製した。
【0102】
<評価判定>
上述した実施例1〜23、比較例1、2で得られた化粧シートについて、以下の方法で抗ウイルス性能及び耐傷性の評価を行った。
【0103】
<評価>
〔抗ウイルス性能〕
実施例1〜23及び比較例1、2の化粧シートをISO 21702に準じて抗ウイルス試験を実施した。供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、エンペローブウイルス(インフルエンザウイルス)を含むウイルス液を使用した。その後、50mm四方の試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
〈ウイルス感染価の測定(プラーク法)〉
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO
2・温度37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2〜3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
〈ウイルス感染価の算出〉
以下の式に伴い、試料1cm
2当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm
2当たりのウイルス感染価(PFU/cm
2)
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
〈抗ウイルス活性値の算出〉
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)−log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm
2当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm
2当たりのウイルス感染価の常用対数値
算出した抗ウイルス活性値を以下の◎、〇、×の3段階で評価した。
<評価基準>
◎:抗ウイルス活性値3log
10以上である場合
○:抗ウイルス活性値2log
10以上である場合
×:抗ウイルス活性値2log
10未満である場合
【0104】
〔耐傷性〕
実施例1から実施例23及び比較例1、2の各化粧シートのそれぞれに対して、JIS K5600−5−4:1999に規定する引っかき硬度(鉛筆法)試験により、化粧シートの表面(原反層又はトップコート層)に傷跡を生じなかった最も固い鉛筆の硬度(鉛筆硬度)を測定し、以下の◎、〇、×の3段階で評価した。なお、引っかき硬度試験は、JIS K5600−5−4:1999に記載の機器を用いて行った。
<評価基準>
◎:B以上で傷なし
○:2B〜3Bで傷なし
×:4B以下で傷あり
以上の評価結果を表1に示す。
【0105】
以上の評価結果を、トップコート層および原反層の組成とともに表1に示す。
なお、表1において、抗ウイルス剤(銀系無機添加剤)の添加量(DRY換算)を「添加量A」と表記し、抗ウイルス剤における無機材料による銀成分の担持量を「銀担持量B」と表記し、抗ウイルス剤の単位面積当たりの塗布量を「塗布量C」と表記する。また、これらA、B、Cの積を「A×B×C」と表記する。
【0106】
【表1】
【0107】
表1中に表されるように、実施例1から23の評価結果から、実施例1から23のように、トップコート層の最表層(外側トップコート層)に抗ウイルス剤が含まれている場合には、抗ウイルス活性値が2log
10以上となり、比較例1のように抗ウイルス剤がトップコート層の最表層に添加されていない場合と比べて、抗ウイルス性が高いことが分かった。また、実施例1から23のように、原反層に造核剤又は無機粒子のうちいずれか一方が含まれる場合には、比較例2のように造核剤又は無機粒子のいずれも原反層に含まれない場合と比べて、耐傷性が高いことが分かった。
また、抗ウイルス剤の銀系材料の固形分濃度A(質量%)、抗ウイルス剤中の銀の担持量B(質量%)、単位面積当たりの抗ウイルス剤の塗布量C(g/m
2)の積(A×B×C)が、「10」以上(A×B×C≧10)である場合、抗ウイルス活性値「3」以上となり、特に優秀な抗ウイルス活性値が得られることがわかった。
【0108】
なお、本開示の化粧シート及び化粧材は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【解決手段】化粧シートは、原反層の上に、着色層とトップコート層とがこの順に積層され、原反層は、造核剤又は無機粒子のうちいずれか一方と樹脂材料とを含み、トップコート層は、抗ウイルス剤を含む第1トップコート層を有する。