(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記遷移金属は、タンタル、金、オスミウム、ハフニウム、タングステン、白金、イリジウム、レニウム、及びジルコニウムの群から選択した1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した反射型フォトマスクブランク。
上記反射層は、多層構造からなる多層反射層と、上記多層反射層の上に形成された中間層とを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した反射型フォトマスクブランク。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
【0012】
(反射型フォトマスクブランク)
本実施形態に係る反射型フォトマスクブランクは、EUV光を反射し、反射光を転写用試料に照射する反射型フォトマスクを形成するためのフォトマスクブランクである。
本実施形態の反射型フォトマスクブランク10は、
図1に示すように、基板1と、基板1上に積層した反射層2と、反射層2上に積層した吸収層4とを備えている。
反射層2は、入射した光を反射する層である。
図1に示す反射層2は、多層構造からなる多層反射層2aと中間層2bとを備える。
吸収層4は、入射した光を吸収する層である。吸収層4は、単層構造、又は複数の層が積層した積層構造からなる。
【0013】
(反射型フォトマスク)
図2に示すように、本実施形態に係る反射型フォトマスク20は、反射型フォトマスクブランク10の吸収層4が、所定の吸収層パターン4aに形成されることによって得られる。
反射型フォトマスク20は、
図2に示すように、基板1と、基板1上に積層された反射層2と、反射層2上に形成された吸収層4とを備えている。
反射層2は、上述の通り、入射した光を反射する層である。
図2に示す反射層2は、多層構造からなる多層反射層2aと中間層2bとを備える。
吸収層4は、予め設定した吸収層パターン4aが形成された、入射した光を吸収する層である。吸収層4は、単層構造又は複数の層が積層した積層構造からなる。
【0014】
(吸収層)
吸収層4は、少なくとも最表層に、錫、インジウム及びテルルの群から選択した第1の材料と、遷移金属、ビスマス(Bi)、及び珪素(Si)の群から選択した1種又は2種以上の材料からなる第2の材料と、を含む。
第1の材料は、上記の錫、インジウム及びテルルのいずれか1種類からなる。第1の材料の含有量は、吸収層4に要求される消衰係数kの値に応じて決定すればよい。例えば、リソ特性を良好に維持可能な消衰係数kとして0.052以上を要求値とした場合には、同一層内(単位体積当たり)で、第1の材料が錫(Sn)の場合には17原子%以上、第1の材料がインジウム(In)の場合には21原子%以上、第1の材料がテルル(Te)の場合には17原子%以上、含まれている必要がある。
【0015】
第2の材料の含有量は、同一層内(単位体積当たり)で、20原子%より多く、50原子%未満となっている。
また反射型フォトマスクブランク10の加工性や耐熱性を考慮すると、吸収層4は、少なくとも最表層に酸素を含んでいることが好ましい。
このとき、第1の材料の原子数と吸収層4に含まれる酸素の原子数との合計値である合計原子数(A)に対する、第2の材料の原子数(B)の割合(B/A)が、1/4より大きく、1未満の範囲であることが好ましい。ここで「含まれる酸素」は、第1の材料や第2の材料の酸化物として含まれる。「含まれる酸素」は、第1の材料の酸化物としてのみ含まれていてよい。
【0016】
吸収層4の膜厚は、薄膜化による転写性能の向上を考慮すると、18nm以上45nm未満であることが好ましく、18nm以上35nm未満であるとより好ましい。
ここで、反射型フォトマスクブランク10の吸収層4の一部を除去することにより、反射型フォトマスク20としての吸収層パターン4aが形成される。このとき、EUVリソグラフィにおいて、反射型フォトマスクに斜めに入射する入射光は吸収層パターンの影を反射層上につくり、ウエハへの転写性能を悪化させる。この転写性能の悪化は吸収層4の厚さを薄くすることで軽減できる。
【0017】
また、反射層2からの反射光の強度をRmとし、吸収層4からの反射光の強度をRaとし(
図2参照)、反射層2及び吸収層4に基づく光学濃度ODを下記式(1)で規定したとき、光学濃度ODの値が1以上であることが好ましい。光学濃度ODの値は、1以上であれば特に限定はないが、吸収層4の薄膜化を考慮すると、光学濃度ODの値は例えば2以下となる。
OD=−log(Ra/Rm) ・・・(1)
更に、本実施形態では、吸収層4に対し、従来の吸収層消衰係数よりも大きな消衰係数kを持つ上述のような第1の材料を含有させた。これによって、本実施形態では、吸収性能を維持しつつ薄膜化が可能となる。
【0018】
<第1の材料について>
図3は、各金属材料のEUV光の波長における光学定数を示すグラフである。
図3の横軸は屈折率nを示し、縦軸は消衰係数kを示している。
図3に示すように、消衰係数kの高い材料には、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、テルル(Te)、インジウム(In)などが存在する。これらの金属材料の消衰係数は、0.07から0.08の範囲にあり、従来の吸収層の材料であるタンタル(Ta)の消衰係数0.041に対して大きい。
【0019】
このように、本実施形態では、大きな消衰係数を持つ第1の材料(錫(Sn)、テルル(Te)、インジウム(In))を吸収層4に含有させることで、吸収性能を維持しつつ吸収層4の薄膜化が可能である。そして、本実施形態では、薄膜化によって、転写性能の悪化を抑えることができる。
第1の材料は、通常、錫と酸素を含む酸化錫など、第1の材料の酸化物の状態で吸収層4に含有されているが、この酸化物の状態でも、吸収性能の維持と薄膜化が可能であることを確認している(実施例参照)。
ここで、吸収層4に含まれる酸素は、第1の材料の酸化による形態ばかりでなく、第2の材料の酸化などの形態でも吸収層4に含有される。
【0020】
<光学濃度ODについて>
また、反射型フォトマスクの基本性能を示す指標のひとつとして、上述の光学濃度(Optical Density:OD)がある。
図4は、錫を含有する吸収層領域におけるEUV光反射率をシミュレーションした結果である。
図5は、
図4におけるOD値をシミュレーションした結果である。
シミュレーション条件として、フォトマスク構造は、吸収層4の下に厚さ2.5nmのルテニウム(Ru)からなるキャッピング層(中間層2b)、更にその下にはシリコンとモリブデンを一対とする積層膜を40対積層させた多層反射層2a、その下に平坦な合成石英からなる基板1、更に基板1の裏面には窒化クロム(CrN)から成る裏面導電層という層構成となるように設定した。吸収層4として、タンタル膜と、タンタル含有率が30原子%である酸化錫膜の2種類を用いた。タンタル膜の屈折率は0.94、消衰係数は0.041である。タンタル含有率が30原子%である酸化錫膜の屈折率は0.93、消衰係数は0.062である。
【0021】
図4から分かるように、タンタル膜を吸収層4とした場合に対し、タンタルを含む酸化錫膜を吸収層4とした場合は、例えば吸収層4が同じ膜厚の場合、EUV光反射率を大幅に低くできることが分かる。また、同じ反射率の場合に膜厚を大幅に低減できることが分かる。このように、タンタルを含む酸化錫膜は、EUV光の波長における高吸収層を構成する構成要素として有効である。
また
図5から分かるように、1以上のOD値を得るためには、タンタル膜は少なくとも40nm以上の膜厚が必要であるのに対して、タンタルを含む酸化錫膜の場合は、半分以下の膜厚である約18nmの膜厚でよい。このように、タンタルを含む酸化錫膜は、OD値という観点からも、タンタル膜と比較して、吸収層の全体の厚さを低減できる構成要素として有効であることが分かる。
【0022】
また、2以上のOD値を得るためには、タンタル膜の場合は少なくとも70nm以上の膜厚が必要であるのに対して、タンタルを含む酸化錫膜の場合は33nmの膜厚でよい。このように、タンタルを含む酸化錫膜は、2以上のOD値においても、タンタル膜と比較して、吸収層4の全体の厚さを低減できる構成要素として有効であることが分かる。なお、従来の吸収層では、70nm(OD値が2)程度の膜厚のタンタル膜が標準的に用いられている。
このように、タンタルを含む酸化錫膜を吸収層4に用いることで、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの基本性能を示すOD値を維持したまま、吸収層4を薄くすることが可能になる。
【0023】
また
図6は、インジウムを含有する吸収層領域におけるEUV光反射率をシミュレーションした結果である。
図7は
図6におけるOD値をシミュレーションした結果である。
シミュレーション条件として、フォトマスク構造は、吸収層の下に厚さ2.5nmのルテニウム(Ru)からなるキャッピング層(中間層2b)、更にその下にはシリコンとモリブデンを一対とする積層膜を40対積層させた多層反射層2a、その下に平坦な合成石英からなる基板1、更に基板1の裏面には窒化クロム(CrN)から成る裏面導電層からなる層構成に設定した。吸収層4としては、タンタル膜と、タンタル含有率が30原子%である酸化インジウム膜の2種類を用いた。タンタル膜の屈折率は0.94、消衰係数は0.041である。タンタル含有率が30原子%である酸化インジウム膜の屈折率は0.93、消衰係数は0.059である。
【0024】
図6から分かるように、タンタル膜を吸収層とした場合に対してタンタルを含む酸化インジウム膜を吸収層とした場合は、例えば吸収層が同じ膜厚の場合、EUV光反射率を大幅に低くできる。また、同じ反射率の場合に膜厚を大幅に低減できる。このようにタンタルを含む酸化インジウム膜は、EUV光の波長における高吸収層を構成する構成要素として有効である。
図7から分かるように、1以上のOD値を得るためには、タンタル膜は少なくとも40nm以上の膜厚が必要であるのに対して、タンタルを含む酸化インジウム膜は、半分以下の膜厚である約18nmの膜厚でよい。このように、タンタルを含む酸化インジウム膜は、OD値という観点からも、タンタル膜と比較して、吸収層の全体の厚さを低減できる構成要素として有効であることが分かる。
【0025】
また、2以上のOD値を得るためには、タンタル膜は少なくとも70nm以上の膜厚が必要であるのに対して、タンタルを含む酸化インジウム膜は33nmの膜厚でよい。このように、タンタルを含む酸化インジウム膜は、2以上のOD値においても、タンタル膜と比較して、吸収層の全体の厚さを低減できる構成要素として有効であることが分かる。
このように、タンタルを含む酸化インジウム膜を吸収層に用いることで、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの基本性能を示すOD値を維持したまま、吸収層を薄くすることが可能になる。
【0026】
図8は、テルルを含有する吸収層領域におけるEUV光反射率をシミュレーションした結果である。
図9は
図8におけるOD値をシミュレーションした結果である。
シミュレーション条件として、フォトマスク構造は、吸収層の下に厚さ2.5nmのルテニウム(Ru)からなるキャッピング層(中間層2b)、更にその下にはシリコンとモリブデンを一対とする積層膜を40対積層させた多層反射層2a、その下に平坦な合成石英からなる基板1、更に基板1の裏面には窒化クロム(CrN)から成る裏面導電層を設ける層構成に設置した。吸収層4にはタンタル膜と、タンタル含有率が30原子%である酸化テルル膜の2種類を用いた。タンタル膜の屈折率は0.94、消衰係数は0.041である。タンタル含有率が30原子%である酸化テルル膜の屈折率は0.95、消衰係数は0.062である。
【0027】
図8から分かるように、タンタル膜を吸収層4とした場合に対して、タンタルを含む酸化テルル膜を吸収層とした場合は、例えば吸収層が同じ膜厚の場合、EUV光反射率を大幅に低くできる。また、同じ反射率の場合に膜厚を大幅に低減できる。このようにタンタルを含む酸化テルル膜は、EUV光の波長における高吸収層を構成する構成要素として有効である。
図9から分かるように、1以上のOD値を得るためには、タンタル膜は少なくとも40nm以上の膜厚が必要であるのに対して、タンタルを含む酸化テルル膜は、半分以下の膜厚である約18nmの膜厚でよい。このように、タンタルを含む酸化テルル膜は、OD値という観点からも、タンタル膜と比較して、吸収層の全体の厚さを低減できる構成要素として有効であることが分かる。
【0028】
また、2以上のOD値を得るためには、タンタル膜は少なくとも70nm以上の膜厚が必要であるのに対して、タンタルを含む酸化テルル膜は33nmの膜厚でよい。このように、タンタルを含む酸化テルル膜は、2以上のOD値においても、タンタル膜と比較して、吸収層の全体の厚さを低減できる構成要素として有効であることが分かる。
このように、タンタルを含む酸化テルル膜を吸収層4に用いることで、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの基本性能を示すOD値を維持したまま、吸収層4を薄くすることが可能になる。
【0029】
<耐久性(照射耐性)>
現在のEUV露光装置では、フォトマスクは水素ラジカル雰囲気下に置かれている。そのため、フォトマスクは、水素ラジカル雰囲気下のEUV照射に対する耐久性(照射耐性)を有する必要がある。
本実施形態の吸収層4は、他の金属材料に比べて水素に対して反応性が少なく且つ揮発性が少ない第2の材料(遷移金属、ビスマス、及び珪素の少なくとも1種)を含む。この結果、本実施形態によれば、EUV光による吸収層4への露光ダメージを抑制でき、十分な照射耐性を得ることが可能となる。
【0030】
吸収層4が積層構造をなす場合には、少なくともその最表層が、第2の材料を含むことで、水素ラジカル雰囲気下のEUV照射に対する耐久性(照射耐性)を得られる。
ここで、第2の材料である、遷移金属、ビスマス、及び珪素は、フッ素に対する反応性が高いため、エッチングにより加工も可能である。
吸収層4に含む遷移金属は、水素との反応性が低い、タンタル、金、オスミウム、ハフニウム、タングステン、白金、イリジウム、レニウム、及びジルコニウムから選択すると良い。また、吸収層4に含む遷移金属は、上記金属を1種類又は2種類以上含んでもよい。
【0031】
吸収層4が単層構造の場合、吸収層4に含まれる遷移金属、ビスマス、及び珪素の合計の割合は20原子%より多く、50原子%未満であることが好ましい。
吸収層4が積層構造の場合、吸収層4の少なくとも最表層に含まれる遷移金属、ビスマス、及び珪素の合計の割合が、20原子%より多く、50原子%未満であることが好ましい。
吸収層4が酸化錫膜である場合、含有する遷移金属、ビスマス、及び珪素の合計の割合が20原子%より多く、50原子%未満であれば、EUV光に対する光学定数である屈折率はほとんど変化しない。また、消衰係数は0.050以上を維持できる。更に、この範囲の含有率にすることで、EUV光に対する十分な照射耐性も得られる。これにより、遷移金属又はビスマス、珪素を含む酸化錫膜は、既存の吸収膜の形成材料であるTaより良い光吸収性が得られ、且つEUV露光に対する十分な照射耐性が得られる。
【0032】
同様に、吸収層4が酸化インジウム膜である場合、含有する遷移金属、ビスマス、及び珪素の合計の割合が20原子%より多く、50原子%未満であれば、EUV光に対する光学定数である屈折率はほとんど変化しない。また、消衰係数は0.05以上を維持できる。更に、この範囲の含有率にすることで、EUV光に対する十分な照射耐性も得られる。これにより、遷移金属又はビスマス、珪素を含む酸化インジウム膜は、既存の吸収膜の形成材料であるTaより良い光吸収性が得られ、且つEUV露光に対する十分な照射耐性が得られる。
【0033】
また、吸収層4が酸化テルル膜である場合、含有する遷移金属、ビスマス、及び珪素の合計の割合が20原子%より多く、50原子%未満であれば、EUV光に対する光学定数である屈折率はほとんど変化しない。また、消衰係数は0.05以上を維持できる。更に、この範囲の含有率にすることで、EUV光に対する十分な照射耐性も得られる。これにより、遷移金属又はビスマス、珪素を含む酸化テルル膜は、既存の吸収膜の形成材料であるTaより良い光吸収性が得られ、且つEUV露光に対する十分な照射耐性が得られる。
【0034】
(反射層)
図1及び
図2に示す反射層2は、多層反射層2aと、多層反射層2a上に形成された中間層2bとを備える。
多層反射層2aは、例えばシリコン(Si)膜とモリブデン(Mo)膜とを積層した積層膜が複数対積層されて構成される。
中間層2bには、例えばキャッピング層、バッファー層(緩衝層)、エッチングストッパー層等が挙げられる。キャッピング層は、多層反射層2aを保護するための保護層としての機能を発揮する。キャッピング層は、例えばルテニウム(Ru)で形成されている。
【0035】
(作用その他)
以上のように、本実施形態の反射型フォトマスクブランク10や反射型フォトマスク20によれば、EUV露光時の照射耐性を向上できるため、反射型フォトマスクの寿命を延命することができる。
更に、本実施形態によれば、更に薄い吸収膜厚で、EUV光吸収性の高さを持つことができるため、射影効果の影響が緩和され、ウエハ上に転写したパターンの解像性を向上させることができる。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明に係る反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの実施例について説明する。
(第1の実施例)
まず、吸収層に錫を含有させた場合(酸化錫膜)の実施例について説明する。
〔実施例1−1〕
図10に示すように、低熱膨張特性を有する合成石英の基板11の上に、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)を一対とする積層膜が40対積層されて形成された多層の反射層(多層反射層)12を形成した。多層反射層12の膜厚は280nmであった。
【0037】
次に、多層反射層12上に、中間層として、ルテニウム(Ru)で形成されたキャッピング層13を膜厚が2.5nmとなるように成膜した。これにより、基板11上には、多層反射層12及びキャッピング層13を有する反射層2が形成される。キャッピング層13の上にタンタルと酸化錫を混合成膜してタンタルを含む酸化錫膜を有する吸収層14を形成し、反射型フォトマスクブランク100を作製した。また、
図10に示すように、基板11の裏面には窒化クロム(CrN)で形成された裏面導電層15を100nmの膜厚で成膜した。
ここで、基板11上へのそれぞれの膜の成膜は、多元スパッタリング装置を用いた。また、吸収層14はタンタルを含んだ酸化錫膜とした。タンタルの含有率は、反応性スパッタリング法において、タンタルと錫のそれぞれのターゲットに印加する電力の調整により実施した。また、各々の膜の膜厚は、スパッタリング時間で制御した。
【0038】
次に、反射型フォトマスク200の作製方法について
図11〜
図13を参照して説明する。
図11に示すように、反射型フォトマスクブランク100に備えられた吸収層14上に、ポジ型化学増幅レジスト(SEBP9012:信越化学社製)を120nmの膜厚に塗布してレジスト膜16を形成した。
次いで、電子線描画機(JBX3030:日本電子社製)によってポジ型化学増幅レジストに所定のパターンを描画する。その後、ポジ型化学増幅レジストに110℃、10分のPEB処理を施し、次いでスプレー現像(SFG3000:シグマメルテック社製)する。これにより、
図11に示すように、レジストパターン16aを形成した。
【0039】
次に、レジストパターン16aをエッチングマスクとして、塩素系ガスを主体としたドライエッチングにより、吸収層14のパターニングを行い、
図12に示すように、吸収層14に吸収層パターンを形成した。次に、残ったレジストパターン16aの剥離を行い、本実施例による反射型フォトマスク200を作製した。
本実施例において、吸収層14に形成した吸収層パターン14aは、転写評価用の反射型フォトマスク200上で線幅64nmLS(ラインアンドスペース)パターン、AFMを用いた吸収層の膜厚測定用の線幅200nmLSパターン、EUV反射率測定用の4mm角の吸収層除去部を含んでいる。
実施例1−1では、タンタルを含む酸化錫からなる吸収層14のタンタルの原子数比を、21原子%、30原子%、49原子%の3種類とした。吸収層14の膜厚を、33nmと18nmの2種類とした。更に、タンタル21原子%については、吸収層14の膜厚を16nmから45nmの範囲で変えた複数のサンプルを作製した(表1、表3参照)。
【0040】
〔実施例1−2〕
吸収層14についてビスマスを含んだ酸化錫膜とし、ターゲットを錫とビスマスの組合せに変更して、実施例1と同様の方法で反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
実施例1−2では、ビスマスを含む酸化錫からなる吸収層14のビスマスの原子数比を、21原子%と40原子%の2種類とした。吸収層14の膜厚を、33nmと18nmの2種類とした(表2参照)。
【0041】
〔比較例1−1〕
比較例1−1は、吸収層をタンタル膜とし、ターゲットをタンタルのみに変更して、実施例1−1と同様の方法(ただし、ターゲットがタンタルのみであるため、印加電力の調整による含有率の調整は行っていない。)で、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。吸収層の膜厚を、70nmと40nmの2種類とした。
〔比較例1−2〕
比較例1−2は、吸収層を酸化錫膜とし、ターゲットを錫のみに変更して、実施例1−1と同様の方法(ただし、ターゲットが錫のみであるため、印加電力の調整による含有率の調整は行っていない。)で、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。吸収層の膜厚を、26nmと17nmの2種類とした。
〔比較例1−3〕
比較例1−3は、実施例1−1と同様に、吸収層はタンタルを含んだ酸化錫膜とし、実施例1−1と同様の方法で、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。タンタルを含む酸化錫からなる吸収層のタンタルの原子数比は、70原子%とした。吸収層の膜厚を40nmと24nmの2種類とした。
【0042】
前述の実施例及び比較例において、膜厚は透過電子顕微鏡によって測定し、吸収層における原子数比はXPS(X線光電子分光測定法)によって測定し、それぞれ確認した。
前述の各実施例及び各比較例で作製した反射型フォトマスクの反射層領域の反射率Rmと吸収層領域の反射率RaをEUV光による反射率測定装置で測定した。反射率Rmの測定は4mm角の吸収層除去部で行った。その測定結果から、式(1)を用いてOD値を計算した。
【0043】
(ウエハ露光評価)
EUV露光装置(NXE3300B:ASML社製)を用いて、EUV用ポジ型化学増幅レジストを塗布した半導体ウエハ(不図示)上に、実施例及び比較例で作製した反射型フォトマスクの吸収層パターンを転写露光した。電子線寸法測定機により転写されたレジストパターンの観察、線幅測定を実施し、解像性の確認を行った。
(照射耐性)
反射型フォトマスクのEUV露光時の照射耐性評価をEUV露光装置NXE3300B(ASML製)にて行った。このとき、実施例及び比較例で作製した反射型フォトマスクに対して、30kJ/cm
2のEUV光を照射した。露光時の雰囲気は真空度3Paの条件下で水素を導入した。EUV光照射前後での吸収層の膜厚変化を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて確認した。測定は線幅200nmLSパターンで行った。
なお、吸収層の膜厚変化が1.0nm以下の場合ダメージがないと判断した。
評価結果を、表1〜3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1では、吸収層にタンタル膜、酸化錫膜及びタンタルを含有した酸化錫膜を用いたものからOD値が1.0及び2.0に近いものを示した。吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性については酸化錫膜(比較例1−2)を除き良好な結果となった。解像性については、吸収層がタンタル膜である場合(比較例1−1)を除いて20nm以下であり、良好であった。吸収層をタンタル含有酸化錫膜とすることで良好な照射耐性と良好な解像性をともに備えた(実施例1−1、比較例1−3)。
また、タンタル含有酸化錫膜のタンタル含有量を20原子%より多く、50原子%より低くすることで、実施例1−1のように、解像性が15nm以下となり、更に良いことが分かった。
【0048】
表2では、吸収層にビスマスを含有した酸化錫膜を用いたものを示した(実施例1−2)。実施例1−2では、吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性が1.0nm以下、解像性は15nm以下であった。このように、本実施例に基づくことで、照射耐性、解像性ともに良好な結果であった。
【0049】
表3では、吸収層にタンタルの含有量が21原子%であるタンタルを含有した酸化錫膜を用いたものを示した。そして、吸収層の膜厚を16nmから45nmで変化させて評価した。吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性については1.0nm以下、解像性は20nm以下であり、ともに良好であった。更に、表3から分かるように、吸収層の膜厚を18nm以上45nm以下とすることで、解像性は17nm以下となり、よりよい結果となった。また、吸収層の膜厚を18nm以上35nm以下とすることで、解像性は15nm以下となり、更によい結果となった。
【0050】
(第2の実施例)
次に、吸収層にインジウムを含有させた場合(酸化インジウム膜)の実施例について説明する。
〔実施例2−1〕
図10に示すように、低熱膨張特性を有する合成石英の基板11の上に、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)を一対とする積層膜が40対積層されて形成された多層反射層12を形成する。多層反射層12の膜厚は280nmであった。
次に、多層反射層12上に、中間層として、ルテニウム(Ru)で形成されたキャッピング層13を膜厚が2.5nmとなるように成膜した。これにより、基板11上には、多層反射層12及びキャッピング層13を有する反射層2が形成される。キャッピング層13の上にタンタルと酸化インジウムを混合成膜してタンタルを含む酸化インジウム膜を有する吸収層14を形成し、反射型フォトマスクブランク100を作製した。また、
図10に示すように、基板11の裏面には窒化クロム(CrN)で形成された裏面導電層15を100nmの膜厚で成膜した。
【0051】
基板11上へのそれぞれの膜の成膜は、多元スパッタリング装置を用いた。吸収層14はタンタルを含んだ酸化インジウム膜とした。タンタルの含有率は、反応性スパッタリング法において、タンタルとインジウムのそれぞれのターゲットに印加する電力の調整により実施した。また、各々の膜の膜厚は、スパッタリング時間で制御した。
反射型フォトマスク200については、第1の実施例と同様な方法で作製した。
実施例2−1では、タンタルを含む酸化インジウムからなる吸収層14のタンタルの原子数比を、21原子%、30原子%、49原子%の3種類とした。吸収層14の膜厚を、33nmと18nmの2種類とした。更に、タンタル21原子%については、吸収層14の膜厚を16nmから45nmの範囲で変えた。
【0052】
〔実施例2−2〕
吸収層14はタングステンを含んだ酸化インジウム膜とし、ターゲットをインジウムとタングステンの組合せに変更して、実施例1と同様の方法で反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
実施例2−2では、タングステンを含む酸化インジウムからなる吸収層14のタングステンの原子数比を、21原子%と40原子%の2種類とした。吸収層14の膜厚を、34nmと18nmの2種類とした。
【0053】
〔比較例2−1〕
吸収層をタンタル膜とし、ターゲットをタンタルのみに変更して、実施例2−1と同様の方法(ただし、ターゲットがタンタルのみであるため、印加電力の調整による含有率の調整は行っていない。)で、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。吸収層の膜厚を、70nmと40nmの2種類とした。
〔比較例2−2〕
吸収層を酸化インジウム膜とし、ターゲットをインジウムのみに変更して、実施例2−1と同様の方法(ただし、ターゲットがインジウムのみであるため、印加電力の調整による含有率の調整は行っていない。)で、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。吸収層の膜厚を、27nmと18nmの2種類とした。
〔比較例2−3〕
実施例2−1と同様に、吸収層はタンタルを含んだ酸化インジウム膜とし、実施例2−1と同様の方法で反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。タンタルを含む酸化インジウムからなる吸収層のタンタルの原子数比は、70原子%であった。吸収層の膜厚を、40nmと24nmの2種類とした。
評価は、第1の実施例と同じ評価方法にて実施した。
これらの評価結果を表4〜表6に示めす。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
表4では吸収層にタンタル膜、酸化インジウム膜及びタンタルを含有した酸化インジウム膜を用いたものからOD値が1.0及び2.0に近いものを示した。吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性については、酸化インジウム膜(比較例2−2)を除き良好な結果となった。解像性については、吸収層がタンタル膜(比較例2−1)である場合を除いて20nm以下であり、良好であった。また吸収層をタンタル含有酸化インジウム膜とすることで良好な照射耐性と良好な解像性をともに備えることが分かった(実施例2−1、比較例2−3)。そして、実施例2−1のように、タンタル含有酸化インジウム膜のタンタル含有量を20原子%より多く、50原子%より低くすることで、解像性が15nm以下となり、更に良くなることが分かった。
【0058】
表5では、吸収層にタングステンを含有した酸化インジウム膜を用いたものを示した(実施例2−2)。実施例2−2では、吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性については1.0nm以下、解像性は15nm以下であった。照射耐性、解像性ともに良好な結果であった。
表6では、吸収層にタンタルの含有量が21原子%であるタンタルを含有した酸化インジウム膜を用いたものを示した。吸収層の膜厚は16nmから45nmの間で変化させて評価した。実施例2−1によれば、吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性については1.0nm以下、解像性は20nm以下であり、ともに良好であった。吸収層の膜厚を18nm以上45nm以下とすることで、解像性は17nm以下となり、よりよい結果となった。また、吸収層の膜厚を18nm以上35nm以下とすることで、解像性は15nm以下となり、更によい結果となった。
【0059】
(第3の実施例)
次に、吸収層にテルルを含有させた場合(酸化テルル膜)の実施例について説明する。
〔実施例3−1〕
図10に示すように、低熱膨張特性を有する合成石英の基板11の上に、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)を一対とする積層膜が40対積層されて形成された多層反射層12を形成する。多層反射層12の膜厚は280nmであった
次に、多層反射層12上に、中間層として、ルテニウム(Ru)で形成されたキャッピング層13を膜厚が2.5nmとなるように成膜した。これにより、基板11上には、多層反射層12及びキャッピング層13を有する反射層2が形成される。キャッピング層13の上にタンタルと酸化テルルを混合成膜してタンタルを含む酸化テルル膜を有する吸収層14を形成し、反射型フォトマスクブランク100を作製した。また、
図10に示すように、基板11の裏面には窒化クロム(CrN)で形成された裏面導電層15を100nmの膜厚で成膜した。
【0060】
基板11上へのそれぞれの膜の成膜は、多元スパッタリング装置を用いた。吸収層14はタンタルを含んだ酸化テルル膜とした。タンタルの含有率は、反応性スパッタリング法において、タンタルとテルルのそれぞれのターゲットに印加する電力の調整により実施した。また、各々の膜の膜厚は、スパッタリング時間で制御した。
反射型フォトマスク200の作製は、第1の実施例と同様な方法で行った。
実施例3−1では、タンタルを含む酸化テルルからなる吸収層14のタンタルの原子数比を、21原子%、30原子%、49原子%の3種類とした。吸収層14の膜厚を33nmと18nmの2種類とした。更に、タンタル21原子%については、吸収層14の膜厚を16nmから45nmの範囲で変えた。
【0061】
〔実施例3−2〕
吸収層14はハフニウムを含んだ酸化テルル膜とし、ターゲットをテルルとハフニウムの組合せに変更して、実施例1と同様の方法で反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
実施例3−2では、ハフニウムを含む酸化テルルからなる吸収層14のハフニウムの原子数比を、21原子%と40原子%の2種類とした。吸収層14の膜厚を33nmと18nmの2種類とした。
【0062】
〔比較例3−1〕
比較例3−1では、吸収層をタンタル膜とし、ターゲットをタンタルのみに変更して、実施例3−1と同様の方法(ただし、ターゲットがタンタルのみであるため、印加電力の調整による含有率の調整は行っていない。)で、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。吸収層の膜厚を、70nmと40nmの2種類とした。
〔比較例3−2〕
比較例3−2では、吸収層を酸化テルル膜とし、ターゲットをテルルのみに変更して、実施例3−1と同様の方法(ただし、ターゲットがテルルのみであるため、印加電力の調整による含有率の調整は行っていない。)で、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。吸収層の膜厚を、31nmと17nmの2種類とした。
〔比較例3−3〕
比較例3−3では、実施例3−1と同様に、吸収層はタンタルを含んだ酸化テルル膜とし、実施例3−1と同様の方法で、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを作製した。タンタルを含む酸化テルルからなる吸収層のタンタルの原子数比は、70原子%であった。吸収層の膜厚を40nmと24nmの2種類とした。
評価は、第1の実施例と同じ方法で評価した。
これらの評価結果を表7から表9に示す。
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
表7では吸収層にタンタル膜、酸化テルル膜及びタンタルを含有した酸化テルル膜を用いたものからOD値が1.0及び2.0に近いものを示した。吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性については酸化テルル膜(比較例3−2)を除き良好な結果となった。解像性については、吸収層がタンタル膜(比較例3−1)である場合を除いて20nm以下であり、良好である。吸収層をタンタル含有酸化テルル膜とすることで良好な照射耐性と良好な解像性をともに備えることが分かる。実施例3−1のように、タンタル含有酸化テルル膜のタンタル含有量を20原子%より多く、50原子%より低くすることで、解像性が15nm以下となり、更に良いことが分かった。
【0067】
表8では、吸収層にハフニウムを含有した酸化テルル膜を用いたものを示した(実施例3−2)。吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性については1.0nm以下、解像性は15nm以下であった。実施例3−2は、照射耐性、解像性ともに良好な結果であった。
表9では、吸収層にタンタルの含有量が21原子%であるタンタルを含有した酸化テルル膜を用いたものを示した。吸収層の膜厚は16nmから45nmで評価した。吸収層の水素雰囲気下でのEUV照射耐性については1.0nm以下、解像性は20nm以下であり、ともに良好であった。吸収層の膜厚を18nm以上45nm以下とすることで、解像性は17nm以下となり、よりよい結果となった。また、吸収層の膜厚を18nm以上35nm以下とすることで、解像性は15nm以下となり、更によい結果となった。