特許第6879442号(P6879442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879442
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】車両骨格部材
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/00 20060101AFI20210524BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20210524BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20210524BHJP
   F16B 5/08 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B62D25/00
   B62D25/04 B
   B60R19/04 M
   F16B5/08 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-571002(P2020-571002)
(86)(22)【出願日】2020年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2020009744
(87)【国際公開番号】WO2020179916
(87)【国際公開日】20200910
【審査請求日】2020年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-40176(P2019-40176)
(32)【優先日】2019年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 幸一
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−171133(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/088207(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
B60R 19/04
F16B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハット部材と、
クロージングプレートと、
補強部材と、
複数の溶接部と
を備え、
前記ハット部材は、第1天板、2つの第1縦壁及び2つのフランジを備え、
前記第1天板は、前記2つの第1縦壁の間に配置され、
前記第1縦壁は、前記天板と前記フランジの間に配置され、
前記フランジは前記クロージングプレートと接合され、
前記補強部材は、第2天板と2つの第2縦壁を備え、
前記第2天板は2つの前記第2縦壁の間に配置され、
前記第1縦壁と前記第2縦壁とは重ね合わされ、
前記複数の溶接部は前記第1縦壁と前記第2縦壁とを接合し、
前記第1縦壁と前記第2縦壁とを接合する前記複数の溶接部は、前記第1縦壁において前記第1天板と前記クロージングプレートとの中間面よりクロージングプレート側にあり、
前記第2縦壁の引張強さは、前記第1縦壁の引張強さより大きく、
前記第2縦壁の前記第2天板と反対側の端部が、前記補強部材の端部であり、
前記複数の溶接部の間に前記補強部材の端部がある、車両骨格部材。
【請求項2】
前記補強部材の端部は、隣り合う前記溶接部の間の領域を横断する、請求項1に記載の車両骨格部材。
【請求項3】
前記補強部材の端部は、隣り合う前記溶接部の間の領域を横断し、さらに、前記第1縦壁における前記第1天板と前記クロージングプレートとの中間面より前記第1天板に近い位置に延びている、請求項2に記載の車両骨格部材。
【請求項4】
前記第1縦壁は、隣り合う前記溶接部の間において、前記第1縦壁の端部が配置されないように形成され、
隣り合う前記溶接部の間において、前記補強部材の端部は、前記第1縦壁と重なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両骨格部材。
【請求項5】
前記複数の溶接部の間を通る前記補強部材の端部は、前記第2天板と前記第2縦壁の間の稜線に達しない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両骨格部材。
【請求項6】
前記第2縦壁の引張強さは、1100MPa以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両骨格部材。
【請求項7】
前記第1縦壁の引張強さは980MPa以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両骨格部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両骨格部材を備え、
前記第1天板面が車両外側に配置され、
前記クロージングプレートが車両内側に配置された、車両骨格。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材を含む車両骨格部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、Bピラーやサイドシルのような車両骨格部材には、耐衝撃性が求められる。例えば、特開2011−37291号公報(特許文献1)には、フロントピラー構造が開示されている。このフロントピラー構造では、断面ハット形状のフロントピラーアウタ部とピラーレインフォースメントロアとの接合によって、車幅方向内向きに開口された開断面構造のフロントピラーロアが形成される。ピラーレインフォースメントロアの前壁、及び、フランジは、他の部分よりも高強度の厚板部である。
【0003】
また、特開2014−73769号公報(特許文献2)には、車体構造が開示されている。この車体構造は、センタピラーインナパネルの端縁部と、センタピラーアウタレインフォースの端縁部と、サイドアウタパネルの端縁部とが重ね合わされてスポット溶接により接合されている。センタピラーアウタレインフォースは高強度鋼板で形成されている。センタピラーアウタレインフォースの端縁部には、スポット溶接部の間に、端縁長手方向に沿って波形に形成された波形形状部が設けられている。波形形状部は、端縁部が端縁長手方向に沿って引っ張り方向に変形する場合に、端縁長手方向に伸びることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−37291号公報
【特許文献2】特開2014−73769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、ハット部材とクロージングプレートを備えた車両骨格部材を、溝形の補強部材で補強する構成を検討した。補強部材は、軽量であることが好ましい。効率よく補強するため補強部材を高強度材料で形成した場合、補強部材とハット部材との接合部が破断の起点となりやすいことがわかった。
【0006】
本願は、高強度の補強部材を付加した構造において、補強効果を効率よく発揮できる車両骨格部材を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態における車両骨格部材は、ハット部材と、クロージングプレートと、補強部材と、複数の溶接部とを備える。前記ハット部材は、第1天板、2つの第1縦壁及び2つのフランジを備える。前記第1天板は、前記2つの第1縦壁の間に配置される。前記第1縦壁は、前記天板と前記フランジの間に配置される。前記フランジは前記クロージングプレートと接合される。前記補強部材は、第2天板と2つの第2縦壁を備える。前記第2天板は2つの前記第2縦壁の間に配置される。前記第1縦壁と前記第2縦壁とは重ね合わされる。前記複数の溶接部は前記第1縦壁と前記第2縦壁とを接合する。前記第1縦壁と前記第2縦壁とを接合する前記複数の溶接部は、前記第1縦壁において前記第1天板と前記クロージングプレートとの中間面よりクロージングプレート側にある。前記第2縦壁の引張強さは、前記第1縦壁の引張強さより大きい。前記第2縦壁の前記第2天板と反対側の端部が、前記補強部材の端部である。前記複数の溶接部の間に前記補強部材の端部がある。
【発明の効果】
【0008】
本願開示によれば、高強度の補強部材を付加した構造において、補強効果を効率よく発揮できる車両骨格部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本実施形態における構造部材の構成を示す斜視図である。
図1B図1Aに示す構造部材をy方向から見た側面図である。
図1C図1Aに示す構造部材をx方向から見た正面図である。
図2】不連続部の配置例を示す図である。
図3】不連続部の配置例を示す図である。
図4】不連続部の配置例を示す図である。
図5】不連続部の変形例を示す図である。
図6】不連続部の変形例を示す図である。
図7】不連続部の変形例を示す図である。
図8】不連続部の変形例を示す図である。
図9】不連続部の変形例を示す図である。
図10】不連続部の変形例を示す図である。
図11】構造部材の断面形状の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明者らは、車両骨格部材として、ハット部材とクロージングプレートを接合した閉断面構造に、溝形の補強部材を付加して補強する構成を検討した。補強部材は、軽量であることが好ましい。そこで、補強部材に、ハット部材より強度の高い高強度材料を用いることを試みた。さらに、高強度材料の補強部材の効率のよい配置を検討した。その結果、ハット部材とクロージングプレートの接合部と、ハット部材の天板との中間面よりもクロージングプレートに近い部分で、ハット部材の縦壁と補強部材を接合する構成に想到した。この構成により、効率よく補強効果が得られる可能性がある。車両骨格部材を曲げ圧潰変形させる際に効率よくエネルギー吸収させるには、ハット部材の縦壁を塑性変形させて仕事させることが必要である。補強部材をハット部材の縦壁の高さの中間よりもクロージングプレートに近い位置に配置して縦壁と接合することで、縦壁の塑性変形を誘発し、効率よくエネルギー吸収をさせることができる。ここで、補強部材の強度を、ハット部材の縦壁の強度より強くすることで、エネルギー吸収をより効率よくできる。
【0011】
しかし、上記の構成においては、ハット部材の天板に対して衝撃が加わった場合、ハット部材と補強部材とを接合する溶接部が起点となる破断が発生しやすいことがわかった。高強度を持つ補強部材とハット部材との接合が溶接である場合、補強部材の溶接部の周囲が軟化する場合がある。軟化部をHAZ軟化部という。
【0012】
このような高強度材を補強部材として付加したハット部材を自動車の車体骨格部品に適用した場合、自動車の衝突時に補強部材とハット部材の溶接部のHAZ軟化部にひずみが集中し、このHAZ軟化部を起点とした破断が発生することがある。より詳細には、補強部材をハット部材より高強度とすることで、補強部材にHAZ軟化が発生しやすくなる。
【0013】
発明者らは、補強部材とハット部材の接合部を起点とした破断のメカニズムについて検討した。その結果、補強部材とハット部材を接合する溶接部が、中立面より引張側にある場合に、溶接部にハット部材の長手方向の引張力が付加され、HAZ軟化部を起点とした破断が発生しやすくなることを見いだした。すなわち、溶接部をハット部材の縦壁の高さの中間よりもクロージングプレートに近い位置に配置して曲げ変形時のエネルギー吸収効率をよくすることで、溶接部にハット部材の長手方向の引張力が生じやすくなる。そのため、引張力によるHAZ軟化部へのひずみ集中が発生し、HAZ軟化部を起点した破断が生じやすくなる。
【0014】
この知見に基づき、発明者らは、ハット部材の縦壁の高さの中間よりもクロージングプレートに近い位置で、ハット部材と補強部材を接合する複数の溶接部を設定した構成において、複数の溶接部の間に、補強部材の切り欠きや穴等を設けることに想到した。すなわち、溶接部の間に、補強部材の端部を配置する構成に想到した。これにより、隣り合う接合部の間にハット部材の長手方向の引張力が負荷された場合でも、隣り合う接合部の間の補強部材の端部により引張力が緩和される。この構成により、複数の溶接部の間に引張力が負荷された場合にHAZ軟化部へのひずみ集中を抑制できる。そのため、HAZ軟化部を起点とした破断を抑制することが可能となる。結果として、補強部材の補強効果を効率よく発揮できる。
【0015】
(構成1)
本発明の実施形態における車両骨格部材は、ハット部材と、クロージングプレートと、補強部材と、複数の溶接部とを備える。前記ハット部材は、第1天板、2つの第1縦壁及び2つのフランジを備える。前記第1天板は、前記2つの第1縦壁の間に配置される。前記第1縦壁は、前記天板と前記フランジの間に配置される。前記フランジは前記クロージングプレートと接合される。前記補強部材は、第2天板と2つの第2縦壁を備える。前記第2天板は2つの前記第2縦壁の間に配置される。前記第1縦壁と前記第2縦壁とは重ね合わされる。前記複数の溶接部は前記第1縦壁と前記第2縦壁とを接合する。前記第1縦壁と前記第2縦壁とを接合する前記複数の溶接部は、前記第1縦壁において前記第1天板と前記クロージングプレートとの中間面よりクロージングプレート側にある。前記第2縦壁の引張強さは、前記第1縦壁の引張強さより大きい。前記第2縦壁の前記第2天板と反対側の端部が、前記補強部材の端部である。前記複数の溶接部の間に前記補強部材の端部がある。
【0016】
上記構成によれば、ハット部材と補強部材とを接合する複数の溶接部は、ハット部材の第1天板とクロージングプレートの中間面よりクロージングプレート側にある。補強部材の第2縦壁は、ハット部材の第1縦壁より強度が高い。これにより、第1天板の外側から第1天板に垂直な力を受けて車両骨格部材が変形する際に、補強部材がハット部材とともに変形する。その際、補強部材により変形に対する抵抗が高くなる。このように、ハット部材及び補強部材は、荷重に耐えながら、縦壁の塑性変形を誘発する。そのため、車両骨格部材は、曲げ圧潰変形時にエネルギーを効率よく吸収することができる。また、第1天板に垂直な力を受けて、車両骨格部材が変形する場合、複数の溶接部の間にハット部材の長手方向の引張力が発生する。補強部材の強度をハット部材の強度より高くすることで、溶接部の周囲にHAZ軟化部が生じやすくなる。HAZ軟化部に引張力によるひずみが集中するとHAZ軟化部を起点とした破断が発生する。しかし、上記構成では、複数の溶接部の間に、補強部材の端部がある。すなわち、補強部材の溶接部の間は切断されている。補強部材の端部は、例えば、補強部材の切り込み又は穴の縁であってもよい。これにより、複数の溶接部の間に作用する引張力を緩和することができる。そのため、車両骨格部材の変形時に溶接部を起点とする破断を起こりにくくすることができる。また、溶接部の間の補強部材の端部は、第2縦壁の第2天板と反対側の端部である。これにより、溶接部の間では、第2縦壁が、第2天板から溶接部の間の領域まで延びて形成される。このため、第2縦壁が、第2天板からフランジまで延びて形成する場合に比べて、補強部材が覆う領域が小さくなる。すなわち、少ない補強部材で、効率のよいエネルギー吸収を実現できる。結果として、補強部材の補強効果を効率よく発揮できる。
【0017】
上記構成1において、前記第1天板と前記第2天板が重ね合わされてもよい。これにより、補強部材による補強効果をより高めることができる。この場合、前記第1天板と前記第2天板を接合する溶接部が設けられてもよい。これにより、補強部材による補強効果をさらに高めることができる。なお、2つの部材が重ね合わされる状態では、2つの部材が少なくとも一部において接触している。
【0018】
(構成2)
上記構成1において、前記補強部材の端部は、隣り合う前記溶接部の間の領域を横断することが好ましい。これにより、熱影響部(HAZ軟化部)に作用する引張力を緩和する効果がより得られやすくなる。なお、隣り合う前記溶接部とは、前記複数の溶接部のうち少なくとも一対の隣り合う溶接部である。補強部材の端部が、隣り合う溶接部の間の領域を横断しない場合は、補強部材の端部の最も第1天板に近い位置は、隣り合う溶接部の間の領域内に存在する。補強部材の端部が隣り合う溶接部の間の領域を横断しない場合に比べて、補強部材が前記領域を横断する場合は、隣り合う溶接部の間のハット部材の長手方向の引張力の緩和効果が顕著に向上する。
【0019】
前記第2天板は、前記第1縦壁における前記第1天板と前記クロージングプレートとの中間面より前記第1天板側にあってもよい。これにより、第2縦壁は、中間面より第1天板に近い位置から、中間面よりクロージングプレートに近い位置まで配置される。そのため、補強部材による第1縦壁の補強効果が向上する。結果として、車両骨格部材は、曲げ圧潰変形時にエネルギーをより効率よく吸収することができる。
【0020】
(構成3)
上記構成2において、前記補強部材の端部は、隣り合う前記溶接部の間の領域を横断し、さらに、前記第1縦壁における前記第1天板と前記クロージングプレートとの中間面より前記第1天板に近い位置に延びていることが好ましい。すなわち、補強部材の端部は、溶接部の間の領域から中間面より第1天板に近い領域に達してもよい。構造部材が第1天板の外側から第1天板に垂直な力を受けて変形する場合、第1縦壁の中間面の位置は、中立軸に近いため、ハット部材の長手方向の引張力が小さくなる。引張力は中間面からクロージングプレートに近くなるにつれて大きくなる。補強部材の端部が中間面より第1天板側に延びて形成されることで、変形時の引張力が発生し得る領域を網羅するように補強部材の端部が配置される。これにより、複数の溶接部の間に作用する引張力を緩和する効果をより高めることができる。
【0021】
前記補強部材の端部は、隣り合う前記溶接部の間において、前記第1縦壁における前記第1天板と前記クロージングプレートとの中間面より前記第1天板に近い位置に延び、且つ、前記第2天板には達しないようにしてもよい。すなわち、前記補強部材の端部は、隣り合う溶接部の間において、第2天板と第2縦壁の間の稜線に達しないよう構成されてもよい。さらに、言い換えれば、前記補強部材の端部は、隣り合う前記溶接部の間の領域と、前記中間面と前記第2天板との間の領域の両方に位置するよう構成されてもよい。これにより、補強部材の第2天板と第2縦壁の間の稜線による補強効果を確保しつつ、溶接部間の引張力の緩和効果を高めることができる。
【0022】
この構成において、補強部材の端部の最も第2天板に近い位置と前記中間面との距離HTは、(2/3)h以下(HT≦(2/3)h)であることが好ましい。ここで、hは、前記第2天板と前記中間面との間の距離hである。これにより、補強部材の第2天板と第2縦壁の間の稜線による補強効果をより確実に確保しつつ、溶接部間の引張力の緩和効果を高めることができる。なお、第2天板と第2縦壁の間の稜線がR形状(丸み)を有する場合、R形状の第2縦壁側の端と中間面との間の距離を上記距離hとする。
【0023】
第1天板とクロージングプレートとの中間面と、第1縦壁の外面との交線を中間線とする。第1縦壁の中間線は、ハット部材の長手方向に垂直な断面において、第1縦壁の第1天板側の端からフランジ側の端までのフランジの面に垂直な方向における高さの中間(1/2)の位置とする。第1縦壁において前記中間面よりクロージングプレート側の位置は、第1縦壁において前記中間線よりクロージングプレートに近い位置である。第1縦壁において前記中間面より第1天板側の位置は、第1縦壁において前記中間線より第1天板1に近い位置である。第1天板と第1縦壁の間の稜線の断面形状がR形状(丸み)を有する場合、中間線を決定する際の第1縦壁の第1天板側の端は、稜線のR形状の第1天板側の端とする。第1縦壁とフランジの間の稜線の断面形状がR形状(丸み)を有する場合、第1縦壁のフランジ側の端は、R形状のフランジ側の端とする。
【0024】
なお、ハット部材及び補強部材は長手方向において湾曲していてもよい。この場合、ハット部材の第1天板と第1縦壁の間の稜線、及び、第1縦壁とフランジの間の稜線の少なくとも一方は湾曲して延びる。ハット部材の第1天板と第1縦壁の間の稜線と、第1縦壁とフランジの間の稜線は、平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
【0025】
なお、ハット部材の第1天板及び第1縦壁は、平板で形成されてもよいし、平板の一部に凹凸を有する形状であってもよい。補強部材の第2天板及び第2縦壁は、平板で形成されてもよいし、平板の一部に凹凸を有する形状であってもよい。ハット部材の第1天板とフランジは、平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
【0026】
(構成4)
構成1〜3のいずれかにおいて、前記第1縦壁は、隣り合う前記溶接部の間において、前記第1縦壁の端部が配置されないように形成されてもよい。隣り合う前記溶接部の間において、前記補強部材の端部は、前記第1縦壁と重なってもよい。この場合、ハット部材の第1縦壁は、隣り合う溶接部の間の領域において全体にわたって切れ目なく連続的に配置される。これにより、補強部材より強度が低いハット部材の第1縦壁が、溶接部間の引張力による変形に対して耐える機能を適度に強めることができる。補強部材の第2縦壁は、溶接部間の引張力を緩和しつつも、構造部材は、全体としてより曲げ変形に耐えながら変形することができる。これらのハット部材の第1縦壁と補強部材の第2縦壁が協働して耐えながら変形することで、より効率のよいエネルギー吸収が可能になる。
【0027】
(構成5)
上記構成1〜4のいずれかにおいて、前記複数の溶接部の間を通る前記補強部材の端部は、前記第2天板と前記第2縦壁の間の稜線に達しないことが好ましい。補強部材の端部が稜線を分断しない構成とすることで、補強部材の端部が稜線に達する場合と比べて、補強部材の強度を高めることができる。なお、前記第2天板と前記第2縦壁の間の稜線がR形状(丸み)を有する形状である場合、すなわち、前記第2天板と前記第2縦壁の間の角の部分の外面が曲面となる形状の場合は、R形状(丸み)の部分の第2縦壁側の端を稜線の位置とする。
【0028】
(構成6)
上記1〜5のいずれかにおいて、前記第2縦壁の引張強さは、1100MPa以上であってもよい。また、補強効果をより向上させる観点から、第2縦壁の引張強さは、1180MPa以上であることが好ましい。
【0029】
(構成7)
上記構成1〜6のいずれかにおいて、前記第1縦壁の引張強さは980MPa以下であることが好ましい。これにより、ハット部材の第1縦壁における溶接部において、HAZ軟化部を起点とする破断の発生を抑えることができる。同様の観点から、ハット部材の第1縦壁の引張強さを1100MPa未満としてもよい。なお、変形に対する耐力を高める観点からは、第1縦壁の強度は高い方が好ましい。例えば、第1縦壁の引張強さを、1100MPa以上としてもよい。第1縦壁の引張強さの上限は特にないが、例えば、第1縦壁の引張強さを1180MPa未満としてもよい。
【0030】
(構成8)
上記構成1〜7のいずれかの車両骨格部材を備える車両骨格も、本発明の実施形態の1つである。前記車両骨格において、前記第1天板面が車両外側に配置され、前記クロージングプレートが車両内側に配置されてもよい。これにより、車両の外側からの衝撃に対する耐衝撃性を有する車両骨格を形成することができる。
【0031】
なお、補強部材は、ハット部材とクロージングプレートで形成される閉断面構造の外側に配置されてもよい。或いは、補強部材は、閉断面構造の内側、すなわち、ハット部材とクロージングプレートの間に配置されてもよい。
【0032】
[実施形態]
図1Aは、本実施形態における構造部材10の構成を示す斜視図である。図1Bは、図1Aに示す構造部材10を長手方向及び高さ方向に垂直な方向(y方向)から見た側面図である。図1Cは、図1Aに示す構造部材10を、長手方向から見た正面図である。
【0033】
構造部材10は、ハット部材1と、クロージングプレート2と、補強部材6を備える。ハット部材1は、ハット型の断面を有する。ハット部材1の一部と、クロージングプレート2の一部は互い重ね合わされて接合される。ハット部材1とクロージングプレート2は、互いに接合されて閉断面構造を形成する。補強部材6の一部とハット部材1の一部は、互いに接合される。
【0034】
図1Aに示すように、ハット部材1は、第1天板1aと、2つの第1縦壁1bと、2つのフランジ1cを有する。2つの第1縦壁1bは、第1天板1aの両端から延び、互いに対向する。2つのフランジ1cは、2つの第1縦壁1bそれぞれにおいて、第1縦壁1bの第1天板1a側の一方端部とは反対側の他方端部から互いに離れる方向に延びる。すなわち、2つフランジ1cは、2つの第1縦壁1bの他方端部から、2つの第1縦壁1bの対向方向において外側に延びる。2つのフランジ1cと、クロージングプレート2とは、重ね合わされて接合される。クロージングプレート2と2つのフランジ1cは、複数の溶接部33によって接合される。溶接部33は、一例として、スポット溶接の溶接部である。
【0035】
第1天板1aと2つの第1縦壁1bの境界部分(肩部)は、ハット部材1の屈曲部となる。この屈曲部は、構造部材10の長手方向(x方向)に延びる稜線を形成する。2つの第1縦壁1bのそれぞれと各フランジ1cとの境界部分は、ハット部材1の屈曲部となる。この屈曲部も、x方向に延びる稜線を形成する。
【0036】
補強部材6は、第2天板6aと、2つの第2縦壁6bを備える溝形部材である。第2天板6aの両端から2つの第2縦壁6bが延びる。すなわち、2つの第2縦壁6bの間に第2天板6aが配置される。2つの第2縦壁6bは、互いに対向する。第2天板6aは、ハット部材1の第1天板1aと重ね合わされる。第2天板6aは、第1天板1aと、の溶接部32により接合される。第2縦壁6bは、第1縦壁1bと重ね合わされる。第2縦壁6bは、ハット部材1の第1縦壁1bと複数の溶接部31により接合される。溶接部31、32は、一例として、スポット溶接の溶接部である。補強部材の第2縦壁6bは、ハット部材1の第1縦壁1bよりも高い引張強さを有する。
【0037】
図1B及び図1Cに示すように、第1縦壁1bと第2縦壁6bを接合する複数の溶接部31は、第1天板1aとクロージングプレート2との中間面C1よりクロージングプレート2側にある。中間面C1と第1天板1aの間の距離と、中間面C1とクロージングプレート2の間の距離は等しい。本実施形態では、中間面C1は、第1天板1aに対して垂直な方向に荷重が加わった場合の中立軸と略重なる。中立軸は、部材に曲げモーメントが生じた場合に、部材の長手方向の引張力と圧縮力が釣り合い、応力がゼロになる位置である。部材に曲げモーメントが生じた場合に、中立軸における応力はゼロとなり、中立軸から引張側に離れるに従って引張力が大きくなり、中立軸から圧縮側に離れるに従って圧縮力が大きくなる。中間面C1よりクロージングプレート2側に溶接部31を配置することで、第1天板1aに対して衝撃が加わった場合に、溶接部31の間に引張力が生じることになる。図1Cに示す例では、第1天板1a(フランジ1cの面)に垂直な方向における第1縦壁1bの高さHの2分の1(H/2)の高さに中間面C1が位置する。
【0038】
また、溶接部31が、中間面C1よりクロージングプレート2に近い位置にあるため、第1天板1aに垂直な方向の荷重により構造部材10が変形する際に、ハット部材1及び補強部材6が荷重に耐えながら、縦壁1bの塑性変形を誘発しやすくなる。また、第2縦壁6bの引張強さが、第1縦壁1bの引張強さより大きいため、ある程度荷重に耐えながら、縦壁1bが変形する。その結果、構造部材10は、荷重によって変形する際に、効率よくエネルギーを吸収することができる。また、図1A図1Cに示す例では、補強部材6が、縦壁1bの高さ方向の半分以上を支持する。これにより、構造部材10は変形時により効率よくエネルギーを吸収できる。
【0039】
図1A図1Cに示す例では、補強部材6の第2天板6aは、中間面C1より第1天板1aに近い位置にある。すなわち、補強部材6は、中立軸付近の領域をまたぐように設けられる。これにより、補強部材6による第1縦壁1bの補強効果がより高まる。また、構造部材10の変形時は、補強部材6の第2天板6aと第2縦壁6bの稜線は、圧縮力に耐えながら変形する。そのため、構造部材10の変形時のエネルギー吸収効率を高めることができる。
【0040】
本実施形態では、ハット部材1の第1縦壁1bの引張強さは、一例として、980MPa以下である。補強部材6は、一例として、1100MPa以上である。例えば、補強部材6は、マルテンサイト組織を含む鋼板で形成されてもよい。補強部材6は、ホットスタンプ材、又は超ハイテン材が用いられる。部材の強度が高いほど、溶接部31、32、33の周囲において、溶接の熱の影響により軟化したHAZ軟化部が形成されやすい。引張強さが1100MPa未満のハット部材1では、HAZ軟化部を起点とする破断は起こりにくい。引張強さが980MPa以下のハット部材1では、HAZ軟化部を起点とする破断はさらに起こりにくい。これに対して、引張強さが1100MPa以上の補強部材6では、HAZ軟化部を起点とする破断が発生しやすい。特に、補強部材6の第2縦壁6bの溶接部31の間に引張力が生じた場合に、溶接部31のHAZ軟化部を起点とした破断が生じやすくなる。
【0041】
なお、ハット部材1(第1縦壁1b)と補強部材6(第2縦壁6b)の強度の範囲は、上記例に限られない。例えば、ハット部材1(第1縦壁1b)の引張強さを1100MPa未満として、補強部材6(第2縦壁6b)の引張強さを1100MPa以上としてもよい。これにより、補強部材6の強度を高めて変形に対する耐力を高めつつ、ハット部材1にHAZ軟化部を発生しにくくしてHAZ軟化部を起点とする破断のリスクを低減することができる。また、変形に対する耐力をより高めるために、例えば、補強部材6(第2縦壁6b)の引張強さを1180MPa以上とし、ハット部材1(第1縦壁1b)の引張強さを1180MPa未満としてもよい。これらの場合も、変形時における、エネルギー吸収の効率化と溶接部間の引張力の緩和の効果を得ることができる。
【0042】
第1縦壁1bの第2縦壁6bを接合する複数の溶接部31の間には、補強部材6の端部4がある。この補強部材の端部4は、第2縦壁6bの第2天板6aとは反対側の端部でもある。すなわち、補強部材の端部4は、第2縦壁6bのクロージングプレート2側の端部である。図1A及び図1Bに示す例では、補強部材6の端部4は、補強部材6の切欠きの縁である。言い換えれば、隣り合う溶接部31の間に、補強部材6が不連続部となる部分すなわち補強部材6の端部4が配置される。隣り合う溶接部31の間の補強部材6は、端部4によって分断されている。
【0043】
第1天板1aへの衝撃により構造部材10が曲げ変形する際に生じる溶接部31の間の引張力は、溶接部31の間の補強部材6の端部4によって緩和される。すなわち、溶接部31間の補強部材6の端部4は、補強部材6の第2縦壁6bにかかる引張力が、隣り合う溶接部31の間で伝わりにくくする。例えば、構造部材10が第1天板1aに垂直な方向に外力を受けて曲げ変形した時に、ある隣り合う2つの溶接部31の間において補強部材6を長手方向に引っ張る引張力が働く。この場合、1つの溶接部31とその隣の溶接部31との間には補強部材6の端部4があるので、1つの溶接部31にかかる力は、隣の溶接部31に伝わりにくい。そのため、隣り合う2つの溶接部31が互いに拘束しあわずに補強部材6が変形することができる。これにより、溶接部31の周りのHAZ軟化部へのひずみ集中が抑制される。その結果、溶接部31の周りのHAZ軟化部を起点にした破断が発生しにくくなる。
【0044】
なお、溶接部の間の引張力を緩和する方法として、例えば、溶接部31の間の第1縦壁1b及び第2縦壁6bにたわみを持たせ、引張力が発生した場合に、溶接部31間の第1縦壁1b及び第2縦壁6bが引張方向に伸びることができるようにすることも考えられる。しかし、この場合、たわみが伸びきってしまうと、その後は、溶接部31に引張力が負荷されてひずみが集中することになる。この場合、溶接部31の破断抑制効果が得られない。これに対して、本実施形態のように、溶接部31の間に補強部材6の端部を配置する構成とすることで、より確実に溶接部31の破断を抑制することができる。
【0045】
図1A及び図1Bに示す例では、ハット部材1の第1縦壁1bは、隣り合う溶接部31の間において、第1縦壁1bの端部が配置されないように形成される。すなわち、隣り合う溶接部31の間の第1縦壁1bには、例えば、穴、切欠き、又は切れ込み等の不連続部となる部分が存在しない。この場合、第1縦壁1bは、隣り合う溶接部31の間の領域において全体的且つ連続的に形成される。また、隣り合う溶接部31の間において、補強部材6の端部4は、第1縦壁1bと重なっている。
【0046】
このように、溶接部31の間の領域において、補強部材より強度の低いハット部材1の第1縦壁1bは連続的に存在し、より高強度の補強部材6は不連続になっている。この構成により、構造部材の変形時に溶接部31の間に発生する引張力に対して、補強部材6の第2縦壁6bより強度が低い第1縦壁1bによって、変形に対して耐える力を発生させることができる。そのため、引張による変形に対して適度に耐力を発生させながら、溶接部31の間に引張力が過度に負荷されないようにすることができる。これに対して、例えば、溶接部31の間の第1縦壁1b及び第2縦壁6bにたわみを持たせて、引張方向に伸びることができるように構成した場合、たわみが引張方向に伸びている間は、引張に対する耐力がほぼ発生しない。そのため、本実施形態の溶接部間に補強部材の端部を配置する構成の方が、溶接部間にたわみを持たせる構成に比べて、構造部材全体として変形に対する耐力が強くなる。
【0047】
第2縦壁6bは、中間面C1よりクロージングプレート2側では、溶接部31の間に端部があり、長手方向(稜線方向)において不連続となる部分がある。一方、中間面C1より第1天板1a側では、長手方向(稜線方向)において第2縦壁6bが連続している、すなわち一体的に繋がっている部分がある。すなわち、中間面C1より第1天板1a側において、長手方向(稜線方向)の全体にわたって第2縦壁6bが第1縦壁1bと重なる領域が存在する。本実施形態では、一例として、中間面C1は中立軸と重なる。第1天板1aに対する垂直な荷重による構造部材10の変形時に、中間面C1より第1天板1aに近い領域は、圧縮力が発生する。中間面C1よりクロージングプレート2に近い領域には、引張力が発生する。本実施形態では、変形時に圧縮力が発生する領域において、連続的に補強部材6を形成し、引張力が発生する領域で、補強部材6とハット部材1を接合し、且つ、補強部材6を部分的に不連続に形成する。これにより、構造部材10は、荷重によって変形する際に、効率よくエネルギーを吸収することができる。
【0048】
第2縦壁6bの端部すなわち補強部材6の端部は、フランジ1cに達していない。これにより、中間面C1よりクロージングプレート2側において、長手方向(稜線方向)の全体にわたって第2縦壁6bが第1縦壁1bと重なっていない領域が存在する。このように、第1縦壁1bの変形時に引張力が大きくなる領域における補強部材6の量を、圧縮力が大きくなる領域における補強部材6の量より少なくすることができる。これにより、構造部材10は、荷重によって変形する際に、効率よくエネルギーを吸収することができる。また、補強部材6を第1縦壁1bの全面に設ける場合に比べて、補強部材6の量を少なくできる。少ない補強部材6で変形時のエネルギー吸収の向上が可能になる。
【0049】
なお、図1A及び図1Bに示す例では、補強部材6は、ハット部材1の長手方向の全体にわたって配置されているが、補強部材6は、ハット部材1の長手方向の一部に配置されてもよい。例えば、ハット部材1の長手方向全体のうち、補強したい部分のみに補強部材6を設けてもよい。
【0050】
図1Bに示す例では、補強部材6の端部4は、隣り合う溶接部31の間の領域を横断し、さらに、中間面C1より第1天板1aに近い位置に延びている。すなわち、補強部材6の端部4は、中間面C1よりクロージングプレート2に近い領域から中間面C1より第1天板1aに近い領域にまで達するように形成される。ハット部材1の中間面C1付近は中立軸に近いため、変形時の引張力が小さくなり、中間面C1からクロージングプレート2の方へ離れる程、引張力が大きくなる。端部4を中間面C1より第1天板1aに近い位置に延ばすことで、変形時に引張力が発生し得る領域を網羅するように端部4を配置できる。これにより、引張の応力集中による溶接部の破断抑制効果をより高めることができる。
【0051】
図1Bに示す例では、隣り合う溶接部31の間において、補強部材6の端部4は、中間面C1よりクロージングプレート2に近い領域から、中間面C1より第1天板1aに近い領域に入り、再び、中間面C1よりクロージングプレート2に近い領域に戻るように延びている。これにより、端部4が形成する切欠きの先端部(第1天板1aに向かって凹んだ凹部)の第1天板1aに最も近い部分が、中間面C1より第1天板1aに近い領域に位置する。中間面C1より第1天板1aに近い位置では、曲げ変形時に、引張力が小さくなるか又は圧縮力が生じることになる。そのため、切欠きの先端部が割れの起点になりにくくなる。このように、補強部材6の端部4を、中間面C1をまたぐように配置し、且つ、端部4の第1天板1aに最も近い部分を、中間面C1より第1天板1aに近い領域に配置することができる。これにより、端部4の先端部が割れの起点になりにくくなる。結果として、補強部材6を割れにくくできる。
【0052】
図1Bに示す例では、隣り合う溶接部31の間において、補強部材6の端部4は、第2天板6aに達しない。すなわち、補強部材6の端部4は、第2天板6aと第2縦壁6bの間の稜線に達しない。補強部材6の端部4の先端部の最も第1天板1aに近い部分は、中間面C1と稜線との間に位置する。補強部材6は、第2天板6aと第2縦壁6bの間の稜線が圧縮力に耐えることで、構造部材10全体の衝撃に対する強度の向上に貢献する。そのため、端部4が稜線に達しない構成とすることで、稜線による補強効果を確保できる。端部4の最も第1天板1aに近い部分を、中間面C1と第2天板6aとの間に配置することで、補強効果を確保しつつ、引張力の緩和効果を高めることができる。
【0053】
本実施形態は、中立軸が、中間面C1とほぼ重なる場合の例である。中立軸は、中間面C1と厳密に一致していなくてもよい。中立軸が中間面C1から多少ずれている場合であっても、中間面C1を基準とした上記の補強部材4の端部の配置による効果は得られる。中間面C1と中立軸がずれていても、第1天板1aに垂直な荷重による構造部材10の変形時に、第1縦壁1b及び第2縦壁6bにおいて、中間面C1付近から第1天板1aに近づくにつれて圧縮力が大きくなり、中間面C1からクロージングプレート2に近づくにつれて引張力が大きくなる傾向は変わらないためである。また、第1縦壁1b及び第2縦壁6bにおいて、中間面C1の近くの領域は、中立軸に近いため、圧縮力及び引張力のいずれも小さくなる。中立軸が中間面C1から多少ずれている場合であっても、隣り合う溶接部31の間において、補強部材6の端部4を、中間面C1より第1天板1aに近い位置に延びて形成することの効果は得られる。
【0054】
<補強部材の端部の構成例>
図2図4は、溶接部の間における補強部材6の端部4の構成例を示す図である。図2に示す例では、端部4は、y方向(第1縦壁に略垂直な方向)から見て、隣り合う溶接部31で挟まれる領域(隣り合う溶接部31の間の領域)を横切るよう形成される。これにより、端部4による溶接部31周りのHAZ軟化部を起点とする破断抑制効果をより高めることができる。なお、図2において、隣り合う溶接部31で挟まれる領域は、隣り合う溶接部31のz方向の一方端同士を結ぶ線L1と、隣り合う溶接部31のz方向の他方端同士を結ぶ線L2との間の領域である。
【0055】
図3に示す例では、隣り合う溶接部31で挟まれる領域内に、端部4の上端(第2天板6aに最も近い端)4aが配置される。このように、隣り合う溶接部31で挟まれる領域を補強部材6の端部4が横切らなくても、当該領域の一部に補強部材6の端部4を配置してもよい。この場合も、補強部材6の端部4による溶接部31の周囲のHAZ軟化部を起点とする破断抑制効果が得られる。
【0056】
図4に示す例では、補強部材6の端部4は、隣り合う溶接部31の中心間を結ぶ線LCと交差するように配置される。これにより、補強部材6の端部4による溶接部31の周囲のHAZ軟化部を起点とする破断抑制効果をより高めることができる。
【0057】
図5は、補強部材6の端部4の他の構成例を示す図である。図5に示す例では、端部4の第2天板6aに最も近い位置は、中間面C1と第2天板6aとの間の領域にある。図5に示す例では、補強部材の端部4の最も第2天板6aに近い位置と中間面C2との距離HTは、(2/3)hとなっている。ここで、hは、第2天板6aと中間面C1との間の距離hである。これにより、補強部材6の端部4は、第2天板6aからある程度離れて配置される。このように、HT≦(2/3)hとすることで、補強部材6の第2天板6aと第2縦壁6bの間の稜線による補強効果が確保される。この観点から、HT≦(1/2)hであることがより好ましく、HT≦(1/4)hであることがさらに好ましい。
【0058】
図2図5に示す例では、端部4が、切欠きの縁となっている。この場合、切欠きの形状は、図2図5に示すような2つの直角な角を有する形状に限られない。例えば、図6及び図7に示すように、切欠きの縁の形状を、角を有さない形状、又は、R形状(丸み)を持つ角を有する形状にしてもよい。これにより、端部4が、割れの起点になりにくくなる。
【0059】
図6に示す例では、端部4の切欠きの縁は、第2天板6aへ向かって凹の曲線を含む。具体的には、切欠きの先端部における縁の形状が第2天板6a側に凹の円弧になっている。
【0060】
図7に示す例では、切欠きの先端部における縁は、直線部分4bとその両端のR形状(丸み)で構成され、且つ、第2天板6a側に凹の形状となっている。
【0061】
図8及び図9は、溶接部31間の補強部材6の端部4の変形例である。図2図7に示す例では、補強部材6の第2縦壁6bの切り欠き(スリット)の縁が端部4を形成している。これに対して、図8に示す例では、補強部材6の第2縦壁6bの穴(貫通孔)の縁が端部4を形成している。図9に示す例では、補強部材6の切れ込みが端部4を形成している。切れ込みの部分では、補強部材6の第2縦壁6bの内部に入り込んだ対向する2つの面同士が摺動可能な状態で互いに接している。
【0062】
なお、図8又は図9に示す貫通孔又は切れ込みの縁で形成される端部4も、図3と同様に、隣り合う溶接部31で挟まれる領域の一部に配置してもよい。また、貫通孔又は切れ込みの縁で形成される端部4を、図4と同様に、隣り合う溶接部31の中心間を結ぶ線LC上に配置してもよい。
【0063】
図8に示す貫通孔は、円形であるが、貫通孔の形状は、これに限られない。例えば、貫通孔の長手方向(稜線方向)の寸法が、これに垂直な方向の寸法より長くなってもよい。例えば、図10に示すように、貫通孔4の縁は、長手方向に延びる2本の直線4dと、2本の直線の端を結び、外側に凸の曲線4eによって形成されてもよい。
【0064】
図2図5に示す例では、補強部材6の第2縦壁6bにおける溶接部31間の端部4は、第2縦壁6bと第2天板6aの間の稜線に達していない。すなわち、第2縦壁6bの溶接部31間の端部4は、第2天板6aに達しない位置に配置される。これにより、端部4によって補強部材6の曲げ剛性が低下するのを避けることができる。なお、図2図3図4、及び図6に示す例では、第2縦壁6bにおける溶接部31間の補強部材6の端部4は、第2天板6aと反対側の端部から連続するものとなっている。
【0065】
本実施形態の構造部材10では、第1天板1aに垂直な衝撃が加わった場合、ハット部材1の第1縦壁1bと補強部材6の第2縦壁6bを接合する複数の溶接部31の間に引張力が発生する。補強部材6の第2縦壁6bの溶接部31の間に、補強部材6の端部4を配置することで引張力を分散させることができる。その結果、溶接部31の周囲のHAZ軟化部へのひずみ集中が抑制される。その結果、HAZ軟化部を起点とする破断が抑制される。
【0066】
<ハット部材、クロージングプレート及び補強部材の変形例>
図11は、構造部材の断面形状の変形例を示す断面図である。図1Cに示す構造部材10aの断面形状は、クロージングプレート2の垂直2等分面(x軸を含む面)に対して左右対称の形状である。これに対して、図11に示す構造部材10aは、クロージングプレート2の垂直2等分面に対して左右対称となっていない。図11に示す構造部材10aのハット部材1は、形状の異なる2つの第1縦壁1bを有する。2つの第1縦壁1bは、フランジ1cに対する角度及び、z方向の高さHR、HLが互いに異なる。
【0067】
図11に示す例では、2つの第1縦壁1bのうち一方の第1縦壁1bは、段差を有する。また、2つの第1縦壁1bのうち他方の第1縦壁1bは、外面が曲面となるように曲がった形状になっている。具体的には、上記他方の第1縦壁1bの第1天板1aから延びる部分の外面が曲面となっている。
【0068】
なお、図示しないが、第1天板1a、第1縦壁1b、フランジ1c及びクロージングプレート2の少なくとも1つの表面は、平面でなく曲面としてもよい。すなわち、第1天板1a、第1縦壁1b、フランジ1c及びクロージングプレート2の少なくとも1つは、表面の一部が曲面になっていてもよい。また、補強部材6の第1天板6a、第2縦壁6bの少なくともの1つの表面は、平面でなく曲面であってもよい。例えば、第2天板6a、及び第2縦壁6bの表面の少なくとも一部は曲面になっていてもよい。
【0069】
図11に示す例では、クロージングプレート2は、ハット部材1から離れる方向に突出する形状を有する。具体的には、クロージングプレート2は、ハット部材1のフランジ1cと重ね合わされる2つの部分2bと、これら2つの部分2bの間の部分2aを含む。この部分2aは、ハット部材1から離れる方向に突出する形状となっている。この例では、クロージングプレート2の断面形状がハット型になっている。これにより、いわゆるダブルハット形状の構造部材が構成される。なお、図11に示す構成において、クロージングプレート2のフランジ1cと重ね合わされる部分2aの間の部分2aが、突出せず平板で形成されてもよい。
【0070】
補強部材6は、ハット部材1とクロージングプレート2の間に配置される。図1に示す例では、補強部材6は、ハット部材1とクロージングプレート2で形成される閉断面構造の外側に配置される。これに対して、図11に示す例では、補強部材6は、閉断面構造の内側に配置される。補強部材6の第2縦壁6bの外面が、ハット部材1の第1縦壁1bの内面と接した状態で、溶接部31によって接合される。溶接部31は、2つの第1縦壁1bのそれぞれにおいて、第1天板1aとクロージングプレート2との中間面C1より、クロージングプレート2側にある。
【0071】
図11に示す例では、補強部材6の第2天板6aは、中間面C1より第1天板1aに近い位置にある。この場合、補強部材6の第2縦壁6bは、第2天板6bから、中間面C1よりクロージングプレート2に近い位置まで延びて形成される。なお、第2天板6aは、中間面C1よりクロージングプレート2に近い位置にあってもよい。なお、図11に示す例では、補強部材6の端部、すなわち、第2縦壁6bの第2天板6aと反対側の端部の最もクロージングプレート2に近い部分は、中間面C1とクロージングプレート2の間に位置している。
【0072】
一方の第1縦壁1bにおいて、一方の第1縦壁1bのクロージングプレート2から第1天板1aまでの高さHLの2分の1の高さ(HL/2)の面が、中間面C1となる。他方の第1縦壁1bにおいても、当該他方の第1縦壁1bのクロージングプレート2から第1天板1aまでの高さHRの2分の1の高さ(HR/2)の面が、中間面C1となる。
【0073】
本実施形態の構造部材は、車両骨格部材である。本実施形態の構造部材は、曲げによる変形や破壊が想定される曲げ圧潰部材に好適に用いることができる。この場合、構造部材は、閉断面構造に、圧縮側の耐力向上のための補強部材が付加した構成とすることができる。上記例の構造部材10、10aでは、第1天板1aへの衝撃による曲げ変形が想定される車両骨格部材として用いることができる。この場合、溶接部を起点とする破断が発生しにくい。そのため、容易に破壊されない車両骨格部材を得ることができる。
【0074】
車両骨格部材の例として、フロントフレーム、リアフレーム、サイドシル、フロントピラー(Aピラー)、センターピラー(Bピラー)、クロスメンバー、サイドレール、トンネル、バンパレインフォース、他各種レインフォース(補強部材)といった自動車構造体のフレーム系部品が挙げられる。これら自動車構造体は自動車が衝突した際に変形、破壊されるため、本発明が効果を発揮する。
【0075】
例えば、Bピラーに上記の構造部材10、10aを適用する場合、ハット部材1がアウター、クロージングプレート2がインナー、補強部材6がレインフォースとなる。この場合、ハット部材1が車両外側、クロージングプレート2が車両内側に配置されるように、構造部材10は車両に取り付けられる。これにより、車両外側からの衝撃は、ハット部材1の第1天板1aに入力される。この車両外側からの衝撃により構造部材10、10aが曲げ変形すると、第1縦壁1b及び第2縦壁6bの溶接部31間に引張力が生じる。溶接部31間に補強部材6の端部4が配置されるため、溶接部31付近へのひずみ集中が抑制される。これにより、溶接部31周辺のHAZ軟化部を起点とする破断が発生しにくくなる。
【0076】
例えば、構造部材10、10aの溶接部31が並ぶ方法すなわち第1縦壁1bの長手方向が、車両の外形に沿うように構造部材10、10aを車両に配置してもよい。すなわち、構造部材10、10aの溶接部31が並ぶ方向が、車両の外部からの衝撃に対して略直交するよう構造部材10を車両に配置してもよい。これにより、構造部材10、10aが、車両外部からの衝撃を受けた場合に、効率よくエネルギーを吸収することができる。さらに、溶接部31の周囲のHAZ軟化部を起点とする破断を発生しにくくすることができる。このように、上記の構造部材を車両骨格部材としたものや、上記の車両骨格部材を含む車両も、本発明の実施形態に含まれる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1:ハット部材
2:クロージングプレート
31、32、33:接合部
4:端部
6:補強部材
10:構造部材
1a:第1天板
1b:第1縦壁
1c:フランジ
6a:第2天板
6b:第2縦壁
図1A
図1B
図1C
図2
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