(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ラミネートシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレンで構成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の二芯平行ケーブル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
本発明の一実施形態では、
一対の金属線と、
該一対の金属線を長手方向に沿って一体的に被覆する絶縁性の被覆体と、
前記被覆体を全周にわたって被覆する導電性のシールドと、
前記シールドを被覆する絶縁性の外被と、
を有し、
前記シールドは、金属コーティング層で構成され、
前記外被は、絶縁樹脂のラミネートシートにより構成される、二芯平行ケーブルが提供される。
【0013】
前述のように、従来の二芯平行ケーブルにおいては、高周波領域に「ディップ」と称される急激な信号減衰が発生する場合がある。
【0014】
図1には、従来の二芯平行ケーブルにおいて得られる典型的な信号周波数と挿入損失量の関係を模式的に示す。この図から、従来の二芯平行ケーブルでは、高周波数側に、信号の急激な減衰、すなわちディップが生じていることがわかる。
【0015】
このようなディップが生じる周波数域では、二芯平行ケーブルを使用することが難しくなるという問題がある。
【0016】
なお、このようなディップは、二芯平行ケーブルを構成する一部の部材の周期性に起因して、発生するものと考えられる。
【0017】
例えば、前述の特許文献1に記載された差動信号伝送用ケーブルでは、金属箔テープを芯材に螺旋状に巻き付けることによりシールドが構成され、抑え巻きテープをシールドに螺旋状に巻き付けることにより、外被が構成されている。この場合、シールドの周期性、および外被の周期性によって、ディップが生じるものと考えられる。
【0018】
また、例えば、前述の特許文献2に記載の二芯平行ケーブルでは、外被は、シールドの外側に、絶縁性の樹脂テープを螺旋状に巻き付けることにより構成されている。この場合、外被の周期性によって、ディップが生じるものと考えられる。
【0019】
これに対して、本発明の一実施形態による二芯平行ケーブルでは、シールドは、金属のコーティング層で構成され、外被は、絶縁樹脂のラミネートシートで構成される。すなわち、本発明の一実施形態による二芯平行ケーブルでは、シールドおよび外被はいずれも、テープ状部材を巻き付ける構成を有しておらず、シールドおよび/または外被は、周期構造を有しない。
【0020】
従って、本発明の一実施形態による二芯平行ケーブルでは、従来のようなディップの発生が有意に抑制される。またこれにより、本発明の一実施形態では、高周波側においてもディップが発生し難い二芯平行ケーブルを提供することが可能となる。
【0021】
(本発明の一実施形態による二芯平行ケーブル)
次に、
図2および
図3を参照して、本発明の一実施形態による二芯平行ケーブルについて、より詳しく説明する。
【0022】
図2には、本発明の一実施形態による二芯平行ケーブル(以下、「第1の二芯平行ケーブル」と称する)100の概略的な斜視図を示す。また、
図3には、
図1に示した第1の二芯平行ケーブル100の長手方向に垂直な断面を模式的に示す。
【0023】
図2および
図3に示すように、第1の二芯平行ケーブル100は、金属線110aおよび金属線110bと、被覆体120と、シールド130と、外被160と、を有する。
【0024】
金属線110aおよび金属線110bは、例えば、銅またはアルミニウムのような金属材料を含み、相互に接触することなく、第1の二芯平行ケーブル100の長手方向(以下、「軸方向」とも称する)に沿って延伸する。
【0025】
被覆体120は、両方の金属線110aおよび110bを、第1の二芯平行ケーブル100の軸方向の少なくとも一部において、一体的に被覆するように構成される。被覆体120は、絶縁樹脂のような絶縁性の材料で構成される。
【0026】
シールド130は、第1の二芯平行ケーブル100の軸方向の少なくとも一部において、被覆体120を全周にわたって被覆するように構成される。通常、シールド130は、金属のような導電性材料で構成される。
【0027】
外被160は、第1の二芯平行ケーブル100の軸方向の少なくとも一部において、シールド130を全周にわたって被覆するように構成される。通常、外被160は、絶縁樹脂のような絶縁性の材料で構成される。
【0028】
外被160の外周には、2つのつば部152が存在する。このつば部152は、後述するように、外被160を形成するためのラミネート工程において、樹脂シート同士の接合部分として生じる。
【0029】
ここで、第1の二芯平行ケーブル100において、シールド130は、金属のコーティング層で構成される。例えば、シールド130は、被覆体120の周囲に、金属を蒸着したり、めっきしたりすることにより形成されてもよい。
【0030】
また、外被160は、シールド130の周囲に、絶縁性のシートをラミネートすることにより構成される。絶縁性のシートは、例えば、絶縁性樹脂等で構成されてもよい。
【0031】
第1の二芯平行ケーブル100では、従来のようなテープ状の部材を巻き付けることにより構成される部材は、含まれていない。
【0032】
従って、第1の二芯平行ケーブル100では、高周波側におけるディップの発生を有意に抑制することができる。
【0033】
(各構成部材の詳細)
以下、第1の二芯平行ケーブル100に含まれる各部材の詳細について説明する。なお、ここでは、明確化のため、各部材を表す際には、
図2および
図3に示した参照符号を使用する。
【0034】
(金属線110a)
金属線110aは、単一の金属線で構成されてもよい。また、金属線の周囲には、導電性のコーティング層が設置されてもよい。
【0035】
金属線110aを構成する金属は、特に限られないが、例えば、銅(または銅合金)、アルミニウム(またはアルミニウム合金)から選定されてもよい。また、コーティング層は、スズまたは銀などのめっき層であってもよい。
【0036】
あるいは、金属線110aは、撚り線であってもよい。
【0037】
金属線110aは、AWG(American Wire Gauge)の規格において、例えば、AWG38〜AWG22の範囲である。
【0038】
金属線110bについても同様のことが言える。
【0039】
金属線110aと金属線110bの間の中心間距離は、例えば、いずれかの直径の0.5倍〜5倍の範囲である。
【0040】
なお、第1の二芯平行ケーブル100において、被覆体120に覆われる金属線の本数は、特に限られず、金属線は、3本以上であってもよい。
【0041】
(被覆体120)
被覆体120は、例えば、絶縁性樹脂のような絶縁材料で構成される。
【0042】
絶縁性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポロプロピレン(PP)、およびポリ塩化ビニル(PVC)等の誘電率が低い熱可塑性の樹脂が選定される。
【0043】
被覆体120の断面形状は、円または長円等であってもよい。長円には、楕円形状、円を扁平にした形状、および二本の平行線を円弧状の曲線でつないだ形状等が含まれる。特に、被覆体120の断面形状は、短軸1に対して長軸1.2〜2.5が好ましい。
【0044】
被覆体120は、充実体であっても、発泡体であってもよい。発泡体は、充実体よりも誘電率が低い点で好ましい。
【0045】
被覆体120は、例えば、押出成形法により形成することができる。
【0046】
(シールド130)
シールド130は、コーティング層であり、該コーティング層は、例えば、銅、アルミニウム、銀、およびニッケル等を含んでもよい。
【0047】
また、シールド130は、これに限られるものではないが、被覆体120の外周面上に金属をめっきしたり、金属を物理的または化学的に成膜したりすることにより構成される。
【0048】
めっき法としては、無電解めっき法等が用いられる。無電解めっき法では、被めっき材質に応じて、パラジウム触媒等を使用してもよい。
【0049】
金属を物理的に成膜する方法としては、真空蒸着法が挙げられる。また、金属を化学的に成膜する方法としては、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、またはプラズマCVD法などの化学気相成膜法が挙げられる。
【0050】
シールド130の厚さは、0.1μm以上10μmとすることが好ましい。一般にシールド130の厚さが薄い(例えば1μm以下の)場合、シールド130は蒸着により形成され、シールド130の厚さが厚い場合、シールド130はめっきにより形成されてもよい。
【0051】
シールド130の厚さは、例えば、0.4μm〜20μmの範囲である。
【0052】
(外被160)
外被160は、前述のように、シールド130の周囲に、絶縁性のシートをラミネートすることにより構成される。
【0053】
外被160は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレン等の樹脂で構成される。外被160をこのような材料で構成した場合、シールド130への外傷を回避(保護)することができ、電気特性を安定化させることが可能になる。
【0054】
外被160の厚さは、例えば、4μm〜100μmの範囲である。
【0055】
また、外被160のつば部152の長さは、0.1mm〜10mmである。つば部152の長さは、0.1mm〜1mmであると好ましく、0.1mm〜0.5mmであればさらに好ましい。つば部152の長さをこの範囲とした場合、電気特性を安定化させることができる。
【0056】
なお、2つのつば部152において、それぞれの長さは、必ずしも同じである必要はなく、相互に異なっていてもよい。
【0057】
(本発明の一実施形態による二芯平行ケーブルの製造方法)
次に、
図4〜
図8を参照して、本発明の一実施形態による二芯平行ケーブルの製造方法の一例について説明する
図4には、本発明の一実施形態による二芯平行ケーブルを製造する方法(以下、「第1の方法」と称する)のフローを模式的に示す。
【0058】
図4に示すように、第1の方法は、
(1)金属線を被覆する被覆体を形成する工程(S110)と、
(2)被覆体をシールドで覆い、第1の部材を形成する工程(S120)と、
(3)第1の部材を外被で覆い、第2の部材を構成する工程(S130)と、
を有する。
【0059】
以下、
図5〜
図8を参照して、各工程について説明する。なお、ここでは、明確化のため、第1の二芯平行ケーブル100を例に、各工程について説明する。従って、各部材を説明する際には、
図2〜
図3に使用した参照符号を使用する。
【0060】
(工程S110)
まず、金属線110aおよび金属線110bが準備される。金属線110aおよび金属線110bは、相互に一定の間隔を空けて平行に配置される。
【0061】
次に、金属線110aおよび金属線110bを取り囲むようにして、被覆体120を構成する樹脂が押出し成形される。
【0062】
これにより、
図5に示すような断面形態の被覆体120が製造される。被覆体120により、金属線110aおよび金属線110bは、一体的に被覆される。
【0063】
(工程S120)
次に、被覆体120の周囲にシールド130が形成される。前述のように、シールド130は、各種コーティング方法を用いて、被覆体120の周囲に金属層をコーティングすることにより形成される。
【0064】
工程S120後には、
図6に示すような断面形態の第1の部材139が製造される。
【0065】
(工程S130)
次に、第1の部材139の周囲に樹脂シートがラミネートされ、外被160が形成される。
【0066】
このラミネート工程のため、
図7に示すように、第1の部材139の上方に樹脂シート140aが設置され、第1の部材139の下方に樹脂シート140bが設置される。樹脂シート140a、140bは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレン等で構成される。
【0067】
この状態で、上側から樹脂シート140aに圧力を加え、下側から樹脂シート140bに圧力を加えると、樹脂シート140aおよび樹脂シート140bが変形して、両者が第1の部材139の外周面に接触される。また、樹脂シート140aの端部と、樹脂シート140bの端部とが接触し、樹脂シート140aと樹脂シート140bが相互に接合される。
【0068】
これにより、シールド130の外周面に外被160が形成される。
【0069】
なお、このラミネート工程は、ホットプレスにより実施されてもよい。例えば、室温よりも高い温度、例えば、50℃〜150℃に加熱された押付け部材を、上下方向から樹脂シート140aおよび樹脂シート140bに押し付けて、ラミネート工程を実施してもよい。
【0070】
また、この際に使用される押付け部材は、ラバーで構成されてもよい。ラバー製の押付け部材を使用することにより、樹脂シート140aおよび樹脂シート140bを、第1の部材139に均一に押し付けることができる。
【0071】
ラミネート工程の後に、例えば、
図8に示すような断面を有する第2の部材149が構成される。
【0072】
図8に示すように、通常、第2の部材149は、樹脂シート140aと樹脂シート140bの接合部分につば部152を有する。このようなつば部152は、その後、除去されてもよい。
【0073】
なお、
図8では、第2の部材149のつば部152において、樹脂シート140aと樹脂シート140bの境界が明確に示されている。
【0074】
しかしながら、これは単なる一例であって、ラミネート工程の条件によっては、このような境界が実質的に視認できなくなる場合も、しばしば認められる。
【0075】
以上の工程により、例えば、
図2および
図3に示したような第1の二芯平行ケーブル100を製造することができる。
【0076】
(本発明の別の実施形態による二芯平行ケーブル)
次に、
図9を参照して、本発明の別の実施形態による二芯平行ケーブルについて説明する。
【0077】
図9には、本発明の別の実施形態による二芯平行ケーブル(以下、「第2の二芯平行ケーブル」と称する)200の概略的な構成を模式的に示す。
図9には、第2の二芯平行ケーブル200の軸方向に垂直な断面が模式的に示されている。
【0078】
図9に示すように、第2の二芯平行ケーブル200は、前述の第1の二芯平行ケーブル100と同様の構成を有する。従って、
図9において、第1の二芯平行ケーブル100と同様の部材には、同様の参照符号が付されている。
【0079】
ただし、第2の二芯平行ケーブル200は、さらに、ドレイン線250を有する点が、前述の第1の二芯平行ケーブル100とは異なっている。
【0080】
ドレイン線250は、金属線を含み、例えば、金属線110a、110bと同様の構成を有してもよい。
【0081】
ドレイン線250は、シールド130と、外被160との間に、両者に接するように設置される。
【0082】
なお、
図9に示した例では、ドレイン線250は、第2の二芯平行ケーブル200の断面視、2つの金属線110aおよび110bとともに、略二等辺三角形の頂点を構成する位置に設置されている。しかしながら、これは単なる一例にすぎず、ドレイン線250は、シールド130と外被160の間のいかなる場所に設置されてもよい。
【0083】
このような構成の第2の二芯平行ケーブル200においても、前述の第1の二芯平行ケーブル100と同様の効果が得られることは当業者には明らかである。
【0084】
また、第2の二芯平行ケーブル200では、製造の際に、ドレイン線250の位置ずれが有意に抑制されるという追加の効果が得られる。
【0085】
例えば、ドレイン線を含む従来の二芯平行ケーブルを製造する場合、一対の金属線を覆う樹脂製の被覆体の周囲に、シールドが形成される。その後、シールドに接触するようにしてドレイン線を設置した後、シールドおよびドレイン線を一体的に覆うように、外被用のテープが巻き付けられる。
【0086】
しかしながら、この外被用のテープを巻き付ける際に、ドレイン線に、シールドの外周方向に沿った力が加わり易くなる。特に、巻き付け回数が多くなるほど、そのような傾向が高まる。このため、従来の二芯平行ケーブルの構成では、製造の際に、ドレイン線が所望の設置位置からずれるという問題が生じ得る。
【0087】
これに対して、第2の二芯平行ケーブル200では、外被160は、シールド130およびドレイン線250を一体的にラミネートすることにより構成される。従って、ドレイン線250の設置位置が後工程でずれる可能性は、有意に抑制される。
【0088】
(本発明のさらに別の実施形態による二芯平行ケーブル)
次に、
図10を参照して、本発明のさらに別の実施形態による二芯平行ケーブルについて説明する。
【0089】
図10には、本発明のさらに別の実施形態による二芯平行ケーブル(以下、「第3の二芯平行ケーブル」と称する)300の概略的な構成を模式的に示す。
図10には、第3の二芯平行ケーブル300の軸方向に垂直な断面が模式的に示されている。
【0090】
図10に示すように、第3の二芯平行ケーブル300は、前述の第1の二芯平行ケーブル100と同様の構成を有する。従って、
図10において、第1の二芯平行ケーブル100と同様の部材には、
図3と同様の参照符号が付されている。
【0091】
ただし、第3の二芯平行ケーブル300は、二芯平行ケーブルの長手方向に垂直な断面において、外被160の外周に形成されたつば部152が1つである点が、前述の第1の二芯平行ケーブル100とは異なっている。つば部152の長さは0.1mm〜10mmである。つば部152の長さは、0.1mm〜1mmであると好ましく、0.1mm〜0.5mmであればさらに好ましい。
【0092】
第3の二芯平行ケーブル300では1枚の樹脂シートを折り曲げてラミネートすることにより、外被160を形成する。このため、つば部152が1つ形成される。つば部152が1つであることで、電気特性をさらに安定させることができる。
【0093】
以上、第1〜第3の二芯平行ケーブル100、200、300を参照して、本発明の一実施形態について説明した。
【0094】
しかしながら、本発明が第1〜第3の二芯平行ケーブル100、200、300の構成に限定されるものではないことは、当業者には明らかである。
【0095】
例えば、第1〜第3の二芯平行ケーブル100、200、300では、被覆体120に被覆される金属線は、2本である。しかしながら、被覆体120に被覆される金属線は、3本以上であってもよい。
【0097】
従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載により定められ、本発明には、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
一対の金属線と、該一対の金属線を長手方向に沿って一体的に被覆する絶縁性の被覆体と、前記被覆体を全周にわたって被覆する導電性のシールドと、前記シールドを被覆する絶縁性の外被と、を有し、前記シールドは、金属コーティング層で構成され、前記外被は、絶縁樹脂のラミネートシートにより構成される、二芯平行ケーブル。