(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)が、下記の(1)〜(5)のいずれかから選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  (1)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、
  (2)イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸が共重合されたポリブチレンテレフタレート樹脂、
  (3)エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のジオール成分が共重合されたポリブチレンテレフタレート樹脂、
  (4)イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸が共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂、
  (5)若しくは1,3−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のジオール成分が共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂。
  ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレート樹脂であって、ポリエステル樹脂組成物中におけるエチレングリコール(EG)−テレフタル酸(TPA)−ブタンジオール(BD)の連鎖構造比率(%)で表されるエステル交換比率が、0.8〜3.0%である請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
  以下、本発明について詳細に説明する。
(ポリエステル樹脂組成物)
  本発明のフィルムに用いられるポリエステル樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を主たる構成成分とするものであり、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の含有率は60重量%以上が好ましく、75重量%以上が好ましく、更には85重量%以上が好ましい。60重量%未満であると耐ピンホール性、耐破袋性が低下してしまう。
  主たる構成成分として用いるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、更に好ましくは98モル%以上であり最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4−ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、更に好ましくは97モル%以上であり、最も好ましくは重合時に1,4−ブタンジオールのエーテル結合により生成する副生物以外は含まれないことである。
 
【0013】
  本発明のフィルムに用いられるポリエステル樹脂組成物は二軸延伸を行う時の製膜性や得られたフィルムの力学特性を調整する目的でポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)を含有することができる。
  ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)としては、下記の(1)〜(5)のいずれかから選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
  (1)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、
  (2)イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸が共重合されたポリブチレンテレフタレート樹脂、
  (3)エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のジオール成分が共重合されたポリブチレンテレフタレート樹脂、
  (4)イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸が共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂、
  (5)若しくは1,3−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のジオール成分が共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂。
 
【0014】
  中でもポリエチレンテレフタレート樹脂は融点が高く耐熱性に優れるため寸法変化がしにくく、ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性も優れるため透明性に優れることから、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)としては、ポリエチレンテレフタレートおよび共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
 
【0015】
  本発明のフィルムに用いるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度の下限は好ましくは0.8dl/gであり、より好ましくは0.95dl/gであり、更に好ましくは1.0dl/gである。  ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が0.9dl/g未満の場合、製膜して得られるフィルムの固有粘度が低下し、破袋強度や突き刺し強度などが低下することがある。
  ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度の上限は好ましくは1.3dl/gである。上記を越えるとフィルムの接着強度が低下したり、延伸時の応力が高くなりすぎ、製膜性が悪化するとなることがある。更に固有粘度の高いポリブチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、樹脂の溶融粘度が高くなるため押出し温度を高温にする必要があるが、ポリブチレンテレフタレート樹脂をより高温で押出しすると分解物が出やすくなることがある。
 
【0016】
  これらポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)の添加量の上限としては、40重量%以下が好ましく、より好ましくは35重量%以下が好ましく、15重量%以下が特に好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)の添加量が40重量%を超えると、耐ピンホール性、耐破袋性が損なわれるほか、透明性やガスバリア性が低下するなどが起こることがある。
 
【0017】
  前記ポリエステル樹脂組成物は必要に応じ、従来公知の添加剤、例えば、滑剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
 
【0018】
  本発明のフィルムの動摩擦係数を調整するための滑剤種としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機系滑材のほか、有機系滑剤が好ましく、シリカ、炭酸カルシウムがより好ましく、中でもシリカがヘイズを低減する点で特に好ましい。これらにより透明性と滑り性と発現することができる。
 
【0019】
ポリエステル樹脂組成物における滑剤の含有量の下限は好ましくは100重量ppmであり、より好ましくは800重量ppmであり、100重量ppm未満であると滑り性が低下となることがある。滑剤の含有量の上限は好ましくは20000重量ppmであり、より好ましくは1000重量ppmであり、特に好ましくは1800重量ppmであり、20000重量ppmを越えると透明性が低下することがある。
 
【0020】
(二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法)
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得るための好適な方法のとして、溶融ポリエステル樹脂組成物を冷却ロールにキャストする時に同一の組成のポリエステル樹脂組成物原料を多層化してキャストすることが挙げられる。
  ポリブチレンテレフタレート樹脂は結晶化速度が速いため、キャスト時にも結晶化が進行する。このとき、多層化せずに単層でキャストした場合には、結晶の成長を抑制しうるような障壁が存在しないために、これらの結晶はサイズの大きな球晶へと成長してしまう。その結果、得られた未延伸シートの降伏応力が高くなり、長手方向(以下、MDと略す場合がある)の延伸時に破断しやすくなる。
  そればかりか、長手方向の延伸の間にも結晶化が進むため、幅方向(以下、TDと略す場合がある)の延伸時にも破断しやすくなる。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの破袋強度や突き刺し強度も不十分なフィルムとなってしまう。
 
【0021】
  キャストする時の多層化の効果として、単層に比べポリエステル樹脂組成物中のポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)のエステル交換比率を抑えることが可能である。その結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)として、例えば耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂を使用しても、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とのエステル交換反応により、ポリエステル樹脂組成物の結晶性が低下し、高温でフィルムがのびやすくなるといった弊害が抑えられる。その結果、サーマルメカニカルアナライザー(TMA)(以下、TMAと略す場合がある)を用いて測定した温度寸法変化曲線のフィルム原長に対する80℃での寸法変化率がフィルムの長手方向(MD)において1.0%以下となり、印刷時のピッチずれやシーラントなどとの貼り合せ時の位置ずれなどを防ぐことが可能となる。多層化により、エステル交換比率が抑制される要因は明らかになっていないが、筆者らは多層化される際は、層間が物理的に隔離されているためだと推測している。
 
【0022】
  本発明の二軸配向ポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法は、具体的にはポリブチレンテレフタレート樹脂を60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物を溶融して溶融流体を形成する工程(1)で形成された溶融流体からなる積層数60以上の積層流体を形成するする工程(2)で形成された積層流体をダイから吐出し、冷却ロールに接触させて固化させ積層体を形成する工程(3)、前記積層体を二軸延伸する工程(4)を少なくとも有する。
  工程(1)と工程(2)、工程(2)と工程(3)の間には、他の工程が挿入されていても差し支えない。例えば、工程(1)と工程(2)の間には濾過工程、温度変更工程等が挿入されていても良い。また、工程(2)と工程(3)の間には、温度変更工程、電荷付加工程等が挿入されていても良い。但し、工程(2)と工程(3)の間には、工程(2)で形成された積層構造を破壊する工程があってはならない。
 
【0023】
  工程(1)において、ポリエステル樹脂組成物を溶融して溶融流体を形成する方法は特に限定されないが、好適な方法としては、一軸押出機や二軸押出機を用いて加熱溶融する方法を挙げることができる。
 
【0024】
  工程(2)における積層流体を形成する方法は特に限定されないが、設備の簡便さや保守性の面から、スタティックミキサーおよび/または多層フィードブロックがより好ましい。また、シート幅方向の均一性の面から、矩形のメルトラインを有するものがより好ましい。矩形のメルトラインを有するスタティックミキサーまたは多層フィードブロックを用いることが更に好ましい。なお、複数のポリエステル樹脂組成物を合流させることによって形成された複数層からなる樹脂組成物を、スタティックミキサー、多層フィードブロックおよび多層マニホールドのいずれか1種または2種以上に通過させてもよい。
 
【0025】
  工程(2)における理論積層数は60以上である必要がある。理論積層数の下限は、好ましくは200であり、より好ましくは500である。理論積層数が少なすぎると、あるいは、層界面間距離が長くなって結晶サイズが大きくなりすぎ、本発明の効果が得られない傾向にある。また、シート両端近傍での結晶化度が増大し、製膜が不安定となるほか、成型後の透明性が低下することがある。工程(2)における理論積層数の上限は特に限定されないが、好ましくは100000であり、より好ましくは10000であり、更に好ましくは7000である。理論積層数を極端に大きくしてもその効果が飽和する場合がある。
 
【0026】
  工程(2)における積層をスタティックミキサーで行う場合、スタティックミキサーのエレメント数を選択することにより、理論積層数を調整することができる。スタティックミキサーは、一般的には駆動部のない静止型混合器(ラインミキサー)として知られており、ミキサー内に入った流体は、エレメントにより順次撹拌混合される。ところが、高粘度流体をスタティックミキサーに通過させると、高粘度流体の分割と積層が生じ、積層流体が形成される。スタティックミキサーの1エレメントを通過するごとに、高粘度流体は2分割され次いで合流し積層される。このため、高粘度流体をエレメント数nのスタティックミキサーに通過させると、理論積層数N=2のn乗の積層流体が形成される。
 
【0027】
  典型的なスタティックミキサーエレメントは、長方形の板を180度ねじった構造を有し、ねじれの方向により、右エレメントと左エレメントがあり、各エレメントの寸法は直径に対して1.5倍の長さを基本としている。本発明に用いることのできるスタティックミキサーはこの様なものに限定されない。
 
【0028】
  工程(2)における積層を多層フィードブロックで行う場合、多層フィードブロックの分割・積層回数を選択することによって、理論積層数を調整することができる。多層フィードブロックは複数直列に設置することが可能である。また、多層フィードブロックに供給する高粘度流体自体を積層流体とすることも可能である。例えば、多層フィードブロックに供給する高粘度流体の積層数がp、多層フィードブロックの分割・積層数がq、多層フィードブロックの設置数がrの場合、積層流体の積層数Nは、N=p×qのr乗となる。
  なお、本願発明のように同一組成のポリエステル樹脂組成物で多層化する場合は、一台の押し出し機のみを用いて、押し出しからダイまでのメルトラインに上述の多層化装置を導入することもできる。
 
【0029】
  工程(3)において、積層流体をダイから吐出し、冷却ロールに接触させて固化させる。
 
【0030】
  ダイ温度の下限は好ましくは255℃であり、より好ましくは260℃であり、特に好ましくは265℃であり、上記未満であると吐出が安定せず、厚みが不均一となることがあることに加え、フィルムのエステル交換比率が低下することにより、フィルムの結晶性が高くなり、シーラント等との接着強度が低下しやすい。
  また、樹脂の溶融押出し工程内で滞留した融点が高いポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が未溶融物となって、フィルム中に混入し異物となり、フィルムの品位を損ねてしまうことがある。樹脂溶融温度の上限は好ましくは285℃であり、より好ましくは280℃であり、最も好ましくは275℃である。上記を越えると樹脂の分解が進行し、フィルムが脆くなってしまう。またPETを添加した場合においては、フィルムのエステル交換比率が高くなりすぎるために、フィルムの結晶性が低下することにより、TMAを用いて測定した温度寸法変化曲線のフィルム原長に対する80℃での寸法変化率がフィルムの長手方向(MD)において1.0%を超え、印刷工程やシーラントなどとの貼り合せ工程でかかる張力により、フィルムの走行方向に伸びやすくなり、印刷時のピッチずれやシーラントなどとの貼り合せ時の位置ずれなどを引き起こすことがある。
  ダイ温度の上限は好ましくは320℃であり、より好ましくは300℃以下であり、更に好ましくは280℃以下である。上記を越えると厚みが不均一となるほか、樹脂の劣化が起こり、ダイリップ汚れなどで外観不良となることがある。
 
【0031】
  冷却ロール温度の上限は好ましくは25℃であり、より好ましくは20℃以下である。上記を越えると溶融したポリエステル樹脂組成物が冷却固化する際の結晶化度が高くなりすぎて延伸が困難となることがある。冷却ロール温度の下限は好ましくは0℃であり、上記未満であると溶融したポリエステル樹脂組成物が冷却固化する際の結晶化抑制の効果が飽和することがある。また冷却ロールの温度を上記の範囲とする場合、結露防止のため冷却ロール付近の環境の湿度を下げておくことが好ましい。
 
【0032】
  冷却ロール表面に溶融ポリエステル樹脂組成物をキャストした時、表面に高温の樹脂が接触するため冷却ロール表面の温度が上昇する。通常、チルロールは内部に配管を通して冷却水を流して冷却するが、充分な冷却水量を確保する、配管の配置を工夫する、配管にスラッジが付着しないようメンテナンスを行う、などして、チルロール表面の幅方向の温度差を少なくする必要がある。特に、多層化などの方法を用いずに低温で冷却する場合には注意が必要である。
  このとき、未延伸シートの厚みは15〜2500μmの範囲が好適である。より好ましくは500μm以下であり、更に好ましくは300μm以下である。
 
【0033】
  上述における多層構造でのキャストは、少なくとも60層以上、好ましくは250層以上、更に好ましくは1000層以上で行う。層数が少ないと、未延伸シートの球晶サイズが大きくなり、延伸性の改善効果が小さいのみならず得られた二軸延伸フィルムの降伏応力を下げる効果が失われる。
 
【0034】
  次に工程(4)の延伸方法について説明する。延伸方法は、同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でも可能であるが、耐ピンホール性と耐破袋性が良い点、面配向係数を高めやすい点、フィルム厚みを幅方向に均一にしやすい点、製膜速度が速く生産性が高い点から、逐次二軸延伸が最も好ましい。
 
【0035】
  フィルム長手方向(MD)の延伸温度の下限は好ましくは55℃であり、より好ましくは60℃である。55℃未満であると破断が起こりやすくなることがあるばかりか、低温での延伸により縦方向の配向が強くなるため、熱固定処理の際の収縮応力が大きくなることによって、幅方向の分子配向の歪みが大きくなり、結果として長手方向の直進引裂き性が低下することがある。MD延伸温度の上限は好ましくは100℃であり、より好ましくは95℃である。100℃を越えると配向がかからないため力学特性が低下することがある。
 
【0036】
  MD延伸倍率の下限は好ましくは3.0倍であり、特に好ましくは3.2倍である。上記未満であると、得られた二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向の配向度を0.049以上としにくく、その結果、得られた二軸配向ポリエステルフィルムが印刷工程やシーラントとの貼り合せ工程を通る場合に、フィルムにかかる張力と温度によって伸び易くなり、TMAを用いて測定した温度寸法変化曲線のフィルム原長に対する80℃での寸法変化率がフィルムの長手方向において1.0%を超え、印刷パターンのピッチずれやシーラントなどとの貼り合せ時の位置ずれを招くことがある。
  MD延伸倍率の上限は好ましくは4.3倍であり、より好ましくは4.0倍であり、特に好ましくは3.8倍である。上記を越えると力学強度や厚みムラ改善の効果が飽和することがある。
 
【0037】
  フィルムの幅方向(TD)の延伸温度の下限は好ましくは60℃であり、上記未満であると破断が起こりやすくなることがある。TD延伸温度の上限は好ましくは100℃であり、上記を越えると配向がかからないため力学特性が低下することがある。
 
【0038】
  TD延伸倍率の下限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.6倍であり、特に好ましくは3.7倍である。上記未満であると幅方向の配向度が小さくなるため力学強度や厚みムラが悪くなることがある。TD延伸倍率の上限は好ましくは5倍であり、より好ましくは4.5倍であり、特に好ましくは4.0倍である。上記を越えると力学強度や厚みムラ改善の効果が飽和することがある。
 
【0039】
  フィルムの幅方向(TD)の熱固定温度の下限は好ましくは200℃であり、より好ましくは205℃である。上記未満であると熱収縮率が大きくなり、印刷時のピッチずれやシーラントなどとの貼り合せ時の位置ずれが起こる恐れがある。TD熱固定温度の上限は好ましくは240℃であり、上記を越えるとフィルムが融けてしまうほか、融けない場合でも著しく脆くなることがある。
 
【0040】
  フィルムの幅方向(TD)のリラックス率の下限は好ましくは0.5%であり、上記未満であると熱固定時に破断が起こりやすくなることがある。TDリラックス率の上限は好ましくは7%であり、上記を越えるとたるみなどが生じて厚みムラが発生することがあるばかりか、熱固定時の長手方向への収縮が大きくなる結果、端部の分子配向の歪みが大きくなり、幅方向で寸法安定性などが不均一となることがある。
 
【0041】
(二軸配向ポリエステルフィルムの特性)
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムでは、フィルム厚みの下限は好ましくは3μmであり、より好ましくは5μmであり、更に好ましくは8μmである。3μm未満であるとフィルムとしての強度が不足することがある。
  フィルム厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは75μmであり、更に好ましくは50μmである。100μmを越えると厚くなりすぎて本発明の目的における加工が困難となることがある。
 
【0042】
  本発明の二軸配向ポリブチレンテレフタレートフィルムの固有粘度の下限は好ましくは0.80dl/gであり、より好ましくは0.85dl/gであり、さら好ましくは0.90dl/gであり、特に好ましくは0.95dl/gである。上記以上であるとインパクト強度や耐突き刺し性などが改善される。また、屈曲後のバリア性も良好である。
  二軸配向ポリブチレンテレフタレートフィルムの固有粘度の上限は好ましくは1.2dl/gであり、更に好ましくは1.1dl/gである。上記を超えると延伸時の応力が高くなりすぎず、製膜性が良好になる。
  本発明の二軸配向ポリブチレンテレフタレートフィルムはフィルム全域に亘って同一組成の樹脂があることが好ましい。
 
【0043】
  サーマルメカニカルアナライザー(TMA)を用いて測定した温度寸法変化曲線のフィルム原長に対する80℃での寸法変化率がフィルムの長手方向(MD)において1.0%以下であることが必要である。寸法変化率は0.8%以下でることが好ましく、0.6%以下であることがより好ましく、0.4%以下であることが特に好ましい。
  寸法変化率が1.0%以下であると、印刷パターンのピッチずれやシーラントなどとの貼り合せ時の位置ずれを抑制することができ、フィルムの加工性に優れる。
  フィルムの長手方向の温度寸法変化曲線のフィルム原長に対する80℃での寸法変化率の下限は、−1.0%である。
  寸法変化率が−1.0%以下であると、印刷パターンのピッチずれやシーラントなどとの張り合わせ時に位置ずれが生じることがあり、フィルムの加工が困難となることがある。
 
【0044】
  ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)としてポリエチレンテレフタレートまたは共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用する場合において、ポリエステル樹脂組成物中におけるエチレングリコール(EG)−テレフタル酸(TPA)−ブタンジオール(BD)の連鎖構造比率(%)で表されるエステル交換比率としては、0.8以上3.0%以下であることが好ましい。上限は2.8%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることが更に好ましく、2.0%以下であることが特に好ましい。下限は0.9%以上がより好ましく、1.2%以上が更に好ましい。
  エステル交換比率が3.0%以下である場合、フィルムの結晶性が高まり、印刷工程やシーラントなどとの貼り合せ工程でかかる張力によりフィルムの走行方向に伸びにくくなり、TMAを用いて測定した温度寸法変化曲線のフィルム原長に対する80℃での寸法変化率がフィルムの長手方向において1.0%以下となりやすい。
  エステル交換比率が0.8以上であると、フィルム表面のポリエステル樹脂組成物の結晶性が高くなり過ぎない。そのためフィルムの面配向係数が高くなりすぎないので、シーラント等との接着強度が維持される。また、樹脂の溶融押出し工程内で、滞留したPET樹脂が未溶融物となり、溶融フィルム中に異物として残存することが少なくなり、フィルムの品位を維持しやすい。
  エステル交換比率の測定方法は、実施例に記載のとおりである。
 
【0045】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向(MD)の配向度(ΔNx)の下限は、好ましくは0.049である。より好ましくは0.050であり、更に好ましくは0.052である。上記未満であると配向が弱いため、フィルムとして十分な強度が得られず、耐破袋性が低下することがある、また、当該フィルム上が印刷工程やシーラントなどとの貼り合せ工程を通る場合に、フィルムにかかる張力と温度によって伸び易くなり、印刷時のピッチずれやシーラントなどとの貼り合せ時の位置ずれを招くことがある。上記以上であると、フィルムとして十分な強度が得られ、耐袋性が得られやすい。また、TMAを用いて測定した温度寸法変化曲線のフィルム原長に対する80℃での寸法変化率がフィルムの長手方向において1.0%以下のフィルムが得られやすい。
 
【0046】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向(MD)の配向度(ΔNx)の上限は、好ましくは0.076であり、より好ましくは0.075であり、更に好ましくは0.074である。上記を越えると、TMAを用いて測定した温度寸法変化曲線のフィルム原長に対する80℃での寸法変化率が飽和することがある。
  MD配向度(ΔNx)の測定方法は、実施例に記載のとおりである。
 
【0047】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの面配向度(ΔP)の上限は好ましくは0.154であり、より好ましくは0.151であり、更に好ましくは0.146である。上記以上であるとフィルム面に平行な方向に配向が強く、シーラント等との接着強度が低下してしまうことがある。
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの面配向度(ΔP)の下限は好ましくは0.136であり、より好ましくは0.138であり、更に好ましくは0.140である。上記以下であると配向が弱く、衝撃強度や破袋性などが低下してしまうことがある。
  面配向度(ΔP)の測定方法は、実施例に記載のとおりである。
 
【0048】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのMD及びTDの方向における150℃×15分加熱後の熱収縮率の上限は4.0%であることが必要である。好ましくは3.0%であり、より好ましくは2%である。TD方向における150℃×15分加熱後の熱収縮率の上限は特に好ましくは1.0%である。上記を越えると印刷時のピッチずれやシーラントなどとの貼り合せ時の位置ずれが起こることがある。また、耐破袋性が低下してしまうことがある。
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのMD及びTDの方向ににおける150℃×15分加熱後の熱収縮率の下限は、好ましくは−2.0%であり、−1.0%以上がより好ましく、0%以上が更に好ましく、0.2%以上が特に好ましい。上記未満であると印刷時のピッチずれやシーラントなどとの貼り合せ時の位置ずれ改善の効果が飽和するばかりか、フィルムのたるみによりむしろ印刷時のピッチずれやシーラントなどとの貼り合わせ時の位置ずれが起こることがあるほか、耐破袋性が低下してしまうことがある。
  150℃×15分加熱後の熱収縮率の測定方法は、実施例に記載のとおりである。
 
【0049】
  耐衝撃強度の下限は好ましくは0.05J/μmである。上記未満であると袋として用いる際に強度が不足するとなることがある。耐衝撃強度の上限は好ましくは0.2J/μmである。上記を越えると改善の効果が飽和するとなることがある。
 
【0050】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの加工性を向上させるための手段として、フィルムの少なくとも片面の滑り性を調整することが有効である。フィルムの少なくとも片面の動摩擦係数の上限としては、0.4以下が好ましく、0.39以下が好ましく、0.38以下が最も好ましい。
 
【0051】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みあたりのヘイズの上限は好ましくは0.66%/μmであり、より好ましくは0.60%/μmであり、更に好ましくは0.53%/μmである。  上記を超えるとフィルムに印刷を施した際に、印刷された文字や画像の品位を損ねる可能性がある。
 
【0052】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに印刷層を積層していてもよい。
  印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。
 
【0053】
  印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
 
【0054】
  また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
 
【0055】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に無機薄膜層やアルミ箔のような金属箔などのガスバリア層を設けても良い。
 
【0056】
  ガスバリア層として無機薄膜層を用いる場合の無機薄膜層としては、金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。
 
【0057】
  この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の重量比でAlが20〜70%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO
2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl
2O
3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
 
【0058】
  無機薄膜層の膜厚は、通常1〜100nm、好ましくは5〜50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
 
【0059】
  無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO
2とAl
2O
3の混合物、あるいはSiO
2とAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm〜5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。更に、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
更に、上記無機薄膜層上に印刷層を積層していてもよい。
 
【0060】
(積層体)
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに他素材の層を積層して良く、その方法として、二軸配向ポリエステルフィルムを作製後に貼り合わせるか、製膜中に貼り合わせることができる。
 
【0061】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフン系樹脂が好適に使用できる。
 
【0062】
  シーラント層は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン−環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。  また、シーラント層は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤が配合されてもよい。
  シーラント層16の厚さは、10〜100μmが好ましく、20〜60μmがより好ましい。
 
【0063】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを用いた積層体の層構成については、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムおよびシーラント層をそれぞれ少なくとも1層有するものであれば、特に限定されない。例えば、基材層/シーラント層、基材層/バリア層/シーラント層、基材層/バリア層/樹脂層/シーラント層、基材層/樹脂層/バリア層/シーラント層、基材層/バリア層/印刷層/シーラント層、基材層/印刷層/バリア層/シーラント層、基材層/バリア層/樹脂層/印刷層/シーラント層、基材層/樹脂層/印刷層/バリア層/シーラント層、基材層/印刷層/バリア層/樹脂層/シーラント層、基材層/印刷層/樹脂層/シーラント層、基材層/印刷層/樹脂層/バリア層/シーラント層、基材層/樹脂層/バリア層/印刷層/シーラント層、等が挙げられる。
 
【0064】
  本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを用いた積層体は、包装製品、各種ラベル材料、蓋材、シート成型品、ラミネートチューブ等の用途に好適に使用することができ、特に、積層フィルムまたは包装用袋(例えば、ピロー袋、スタンディングパウチや4方パウチ等のパウチ)が好ましい。積層体の厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、5〜500μm、好ましくは10〜300μm程度の厚みのフィルムないしシート状の形態で用いられる。
 
【実施例】
【0065】
  次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
[80℃での寸法変化率]
  島津製作所社製のサーマルメカニカルアナライザー(TMA)を用いて室温から200℃まで昇温して測定した。ただし、昇温速度は10℃/分、測定サンプルの幅は4mm、測定サンプルの長さは10mm、初期張力は100mNとした。  得られた温度変化曲線の80℃におけるフィルムの長手方向(MD)のフィルム原長に対する寸法変化率(%)を読み取った。
【0066】
[エステル交換比率]
  得られたフィルム60mgをHFIP/C
6D
6=1/1(重量比)溶液に溶解し、遠心分離した後、上澄み液を採取し、
13C−NMRを測定した。エステル交換比率は、ブタンジオール−テレフタル酸−ブタンジオール(BD−TPA−BD)に起因する134ppm付近のピーク面積をSa、エチレングリコール−テレフタル酸−エチレングリコール(EG−TPA−EG)に起因する133.7ppm付近のピーク面積をSb、エチレングリコール−テレフタル酸−ブタンジオール(EG−TPA−BD)に起因する133.5ppm付近のピーク面積をScとし、下記式(1)によりエステル交換比率を算出した。
  エステル交換比率(%)=Sc/{0.5(Sa+Sb)+Sc}    ・・・(1)
【0067】
[フィルムの厚み]
  JIS  K7130−1999  A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
【0068】
[フィルムの縦方向(MD)の配向度ΔNx]
  サンプルについてJIS  K  7142−1996  A法により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(n
x)、幅方向の屈折率(n
y)、厚み方向の屈折率(n
z)を測定し、式(2)の計算式によりΔNxを算出した。
    MDの配向度(ΔNx)=n
x−(n
y+n
z)/2      (2)
【0069】
[フィルムの面配向度ΔP]
  サンプルについてJIS  K  7142−1996  A法により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(n
x)、幅方向の屈折率(n
y)、厚み方向の屈折率(n
z)を測定し、式(3)の計算式によりΔPを算出した。
    面配向係数(ΔP)=(n
x+n
y)/2−n
z      (3)
【0070】
[熱収縮率]
  ポリエステルフィルムの熱収縮率は、試験温度150℃、加熱時間15分間とした以外は、JIS−C−2151−2006.21に記載の寸法変化試験法で測定した。試験片は21.1(a)の記載に従い使用した。
【0071】
[評価用ラミネート積層体の作製]
  後述する実施例および比較例に示したフィルム基材の内側に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」を13.5:1(重量比)の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、ヒートシール性樹脂層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「P1147」)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネートガスバリア性積層体を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。
【0072】
[耐ピンホール性]
  前述のラミネート積層体を20.3cm(8インチ)×27.9cm(11インチ)の大きさに切断し、その切断後の長方形テストフィルムを、温度23℃の相対湿度50%の条件下に、24時間以上放置してコンディショニングした。しかる後、その長方形テストフィルムを巻架して長さ20.32cm(8インチ)の円筒状にする。そして、その円筒状フィルムの一端を、ゲルボフレックステスター(理学工業社製、NO.901型)(MIL−B−131Cの規格に準拠)の円盤状固定ヘッドの外周に固定し、円筒状フィルムの他端を、固定ヘッドと17.8cm(7インチ)隔てて対向したテスターの円盤状可動ヘッドの外周に固定した。
  そして、可動ヘッドを固定ヘッドの方向に、平行に対向した両ヘッドの軸に沿って7.6cm(3.5インチ)接近させる間に440゜回転させ、続いて回転させることなく6.4cm(2.5インチ)直進させた後、それらの動作を逆向きに実行させて可動ヘッドを最初の位置に戻すという1サイクルの屈曲テストを、1分間あたり40サイクルの速度で、連続して2000サイクル繰り返した。実施は5℃で行った。
  しかる後に、テストしたフィルムの固定ヘッドおよび可動ヘッドの外周に固定した部分を除く17.8cm(7インチ)×27.9cm(11インチ)内の部分に生じたピンホール数を計測した(すなわち、497cm
2  (77平方インチ)当たりのピンホール数を計測した)。
【0073】
[レトルト処理後の耐破袋性]
  前述のラミネート積層体を15cm四方の大きさにカットし、シーラントが内側になるように2枚を重ね合わせ、3方を160℃のシール温度、シール幅1.0cmにてヒートシールすることで内寸13cmの3方シール袋を得た。
  得られた3方シール袋に水250mLを充填した後、ヒートシールにて4方目の口を閉じ、水の充填された4方シール袋を作製した。
  得られた4方シール袋に対して、130℃の熱水中に30分間保持する湿熱処理を行った後、室温5℃、湿度35%R.H.の環境下、高さ100cmの位置からコンクリート板の上に落下させ、破れやピンホールが発生するまでの落下回数を数えた。
【0074】
[ラミネート強度]
  上記で作製したラミネート積層体に対して、130℃の熱水中に30分間保持する湿熱処理を行い、未乾燥のままの状態で、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT−II−500型」)を用いてラミネート強度(レトルト後)を測定した。ラミネート強度は、引張速度を200mm/分とし、積層フィルムとヒートシール性樹脂層との間に水を付けて、剥離角度90度で剥離させたときの強度とした。
【0075】
[印刷時ピッチずれ]
得られた二軸配向ポリエステルフィルムについて、市販の多色刷り印刷機(東谷鉄工所社製「3色グラビア印刷機PAS−247型」)にて通常の運転条件で印刷(2色)を行った。乾燥工程での加熱と張力によりフィルムが伸びやすいと寸法変化が大きくなり、ピッチずれが起こるので、以下のような基準で印刷適性(二次加工適性)を判断した。  
ピッチずれの測定方法は以下のとおり。
  作成した二軸配向フィルムから幅400mm、長さ150mの試験フィルムを切り出し、このフィルムの処理面に、インキを用いて、2色(赤と黒)のトンボの図柄をそれぞれ50cmピッチで印刷した。最初のトンボは赤と黒の2色が重なるように調製し、60m印刷した後の赤と黒のトンボのずれ量を測定し、このずれ量を印刷時のピッチズずれ量として、下記のように評価した。
  ◎:印刷ピッチのずれが0.3mm以内。
  ○:印刷ピッチのずれが0.5mm以内で、実用上問題ないもの。
  △:印刷ピッチのずれが1mm程度認められたが、印刷機の調整で対応できたもの。
  ×:印刷ピッチのずれが1mm以上あり、印刷機の調整が困難であったもの。
【0076】
[
参考例1]
  一軸押出機を用い、ポリブチレンテレフタレート樹脂(1100−211XG(CHANG  CHUN  PLASTICS  CO.,LTD.、固有粘度1.28dl/g)とテレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)からなる固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂、不活性粒子として平均粒径2.4μmのシリカ粒子をシリカ濃度として1600重量ppmとなるように配合したものを290℃で溶融させた後、メルトラインを12エレメントのスタティックミキサーに導入した。これにより、溶融体の分割・積層を行い、同一の原料からなる理論上4096層の多層溶融体を得た。270℃のT−ダイからキャストし、15℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。
  次いで、60℃で長手方向(MD)に3.3倍ロール延伸し、次いで、テンターに通して90℃で幅方向(TD)に4.0倍延伸し、210℃で3秒間の緊張熱処理と1秒間5%の緩和処理を実施した後、両端の把持部を10%ずつ切断除去して厚みが15μmのフィルムのミルロールを得た。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。
 
【0077】
[実施例2〜7]
  
参考例1において、原料組成、製膜条件を表1に記載した二軸延伸フィルムに変えた以外は
参考例1と同様に行った。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。
 
【0078】
  参考例1、実施例2〜7のフィルムは、耐破袋性、耐屈曲ピンホール性、レトルト殺菌処理のような、過酷な湿熱処理後のシーラントとの接着強度に優れ、かつ、印刷工程のように加熱されながら張力がかかる工程であっても印刷時ピッチずれが小さく、フィルム加工性が良好であることがわかる。
 
【0079】
[比較例1〜6]
  一軸押出機を用い、表1記載の条件によりフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。
【0080】
    (比較例1)  得られたフィルムの耐ピンホール性やレトルト処理後の耐破袋性、ラミネート強度は良好であったが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の組成が100%であり、寸法変化率が大きく、印刷時のピッチずれが生じた。
    (比較例2)  得られたフィルムの耐ピンホール性や印刷時のピッチずれは良好であったが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の組成が100%であり、MD方向の熱収縮率が4.5%であるため、レトルト処理後の耐破袋性やラミネート強度が不良であった。
    (比較例3)  得られたフィルムのラミネート強度や印刷時のピッチずれは良好であったが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の組成が50%であるため、耐ピンホール性やレトルト処理後の耐破袋性が不良であった。
    (比較例4)  得られたフィルムの耐ピンホール性やレトルト処理後の耐破袋性、印刷時のピッチずれは良好であったが、面配向度が0.155であるため、ラミネート強度が不良であった。
    (比較例5)  得られたフィルムの耐ピンホール性やレトルト処理後の耐破袋性、ラミネート強度は良好であったが、寸法変化率が1.1であるため、印刷時のピッチずれが不良であった。
    (比較例6)  得られたフィルムの耐ピンホール性やラミネート強度は良好であったが、MD方向の熱収縮率が4.7%であるため、レトルト処理後の耐破袋性や印刷時のピッチずれが不良であった。
【0081】
【表1】