(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本発明の一態様に係る平面コイル基板は、合成樹脂を主成分とする1又は複数の絶縁層と、多重状配線パターンを含むn層(nは2以上)の導電層とを交互に備える平面コイル基板であって、上記複数の導電層の配線パターンが、平面視で近似又は重複し、かつ中心を通るm個(mは2以上)の扇状領域に分断されており、第1層の導電層における特定扇状領域の最外配線の一方側端部及びその扇状領域に一方側に隣接する扇状領域の最外配線の他方側端部に電気的に接続される一対の端子と、第k層(kは1〜n)の導電層における上記一方側に数えてp番目(pは1〜m)の扇状領域の一方側端部及び第k層以外の導電層におけるp+1番目の扇状領域の他方側端部と電気的に接続し、平面視で上記一対の端子の一方側から中心に移動し、かつ中心から他方側の端子に移動する渦巻き状閉ループを構成するよう配設される複数のインタースティシャルビアホールとを備える。
【0012】
当該平面コイル基板は、複数の導電層の複数の扇状領域がインタースティシャルビアホールにより電気的に接続されて、一対の端子の一方側から中心を経由して他方側の端子に移動する渦巻き状閉ループを構成するのでコイルの最内にコイルの端部を有しない。このため、コイルの外側から電気的接続を行うためにジャンパー線を有する層を別途設ける必要がない。また当該平面コイル基板は、第1層の導電層で隣接する2つの扇状領域の最外配線に電気的に接続される一対の端子を備える。つまり、当該平面コイル基板は、一対の端子が同一の導電層で隣接する2つの扇状領域の最外配線に接続されるので、コイルの両端を容易に取り扱うことができる。
【0013】
上記n層の導電層のうち1の導電層の配線パターンが、一部分のみ分断され、その他の部分が分断されていない最内配線を有するとよい。当該平面コイル基板がこのような最内配線を有すると、外側から中心に近づくように渦巻き、最内配線でUターンし、その後中心から外側に遠ざかるように渦巻く閉ループを形成しやすい。
【0014】
1層の上記絶縁層と、その絶縁層の両面側に積層される2層の導電層とを備え、これらの導電層の配線パターンが2個の扇状領域に分断されているとよい。当該平面コイル基板がこのように構成されていると、両面基板を用いて配線パターンを形成できるとともにインタースティシャルビアホールの数を少なくすることができるので、当該平面コイル基板の製造が容易となる。
【0015】
なお、本発明において「渦巻き状閉ループ」とは、一方の端子から他方の端子に向けて多重状配線パターンに電気が流れた際に、電流が旋回するよう流れるにしたがって中心に近づく、又は電流が旋回するよう流れるにしたがって中心から遠ざかるような閉ループを意味する。また「中心を通る扇状領域」とは、コイルの中心を扇の中心とする扇状の領域を示し、半径となる2つの辺の形状が直線、曲線又は折れ線であるものを含む。また「配線パターンが扇状領域に分断される」とは、配線パターンが複数の扇状領域に区分けされ、かつこの扇状領域の境界線又は境界線近傍において配線パターンが他の扇状領域と電気的に切断されることを示す。
【0016】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る平面コイル基板を説明する。
【0017】
[第一実施形態]
<平面コイル基板>
図1、
図2A及び
図2Bの平面コイル基板は、合成樹脂を主成分とする1の絶縁層1と、多重状配線パターン2を含む2層の導電層とを交互に備えている。当該平面コイル基板は、絶縁層1の両面側に積層される2層の導電層を備えている。つまり、当該平面コイル基板は、2層の導電層の間に絶縁層1を挟んだ構造となっており、絶縁層1と導電層とを交互に備えている。当該平面コイル基板は、絶縁層1の表面側に第1層の導電層を有し、絶縁層1の裏面側に第2層の導電層を有する。そして第1層の導電層は、多重状配線パターン2及び最内配線6を含み、第2層の導電層は、多重状配線パターン2を含むように構成されている。また当該平面コイル基板は、
図2A及び
図2Bに示されるように、第1層の導電層における最外配線2aの端部及び最外配線2pの端部に電気的に接続される一対の端子4と、第1層の導電層の多重状配線パターン2及び第2層の導電層の多重状配線パターン2の端部同士を電気的に接続する複数のインタースティシャルビアホール5とをさらに備えている(
図1においては不図示)。
【0018】
(絶縁層)
絶縁層1は、電気絶縁性を有する合成樹脂を主成分とする層である。また絶縁層1は、導電層を形成するためのベースフィルムでもある。絶縁層1は、可撓性を有しない構成であってもよいが、可撓性を有する構成であると平面コイル基板をフレキシブル平面コイル基板として構成できるので好ましい。この絶縁層1の主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリマー、フッ素樹脂等の合成樹脂が選択される。なお、「主成分」とは、最も含有量が多い成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
【0019】
絶縁層1の平均厚さの下限としては、2.5μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、絶縁層1の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、80μmがより好ましい。絶縁層1の平均厚さが上記下限に満たないと、絶縁層の強度や絶縁性が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層1の平均厚さが上記上限を超えると、平面コイル基板を薄型化できないおそれがある。
【0020】
(導電層)
第1層の導電層及び第2層の導電層は、平面視で略円環形状の多重状配線パターン2を含んでいる。第1層の導電層における多重状配線パターン2及び第2層の導電層における多重状配線パターン2は、複数の略円環形状の配線を有している。これらの複数の配線は、半径の異なる略円環形状に形成されており、略同心円となるように配設されている。また第1層の導電層は、多重状配線パターン2の内側に多重状配線パターン2とは別の配線パターンとして、円環形状の最内配線6を有している。
【0021】
多重状配線パターン2の各配線及び最内配線6は、金属箔、例えば銅箔によって略等幅で細長い帯状の形状に形成されている。多重状配線パターン2及び最内配線6は、特に限定されないが、例えば絶縁層1の両面に積層された金属層をエッチングすることによって形成される。
【0022】
多重状配線パターン2の各配線及び最内配線6は、略均一な厚さに形成されている。配線の平均厚さの下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、配線の平均厚さの上限としては、230μmが好ましく、210μmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限に満たないと、導体抵抗により導体損失が大きくなる、又は強度が不足するおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、平面コイル基板を薄型化できないおそれがある。
【0023】
第1層の導電層における多重状配線パターン2及び第2層の導電層における多重状配線パターン2は、
図1に示すように、絶縁層1の表裏に対を為すように形成されており、平面視で近似又は重複するような形状となっている。つまり、複数の導電層の配線パターンが平面視で近似又は重複している。なお「複数の導電層の配線パターンが平面視で近似する」とは、複数の導電層における配線パターンが、平面視において共通の形状又は対称的な形状を含むように形成されていることを示し、例えば大部分の形状が同一であるもの、相似比が1に近い相似形状のもの又は鏡映の関係にあるものを含む。また「複数の導電層の配線パターンが平面視で重複する」とは、複数の導電層における配線パターンが、平面視において互いに重なりあう部分を含むように形成されていることを示し、配線の一部が重ならない形状のものも含む。なお、当該平面コイル基板においては、複数の導電層の配線パターンが平面視で近似かつ重複している。
【0024】
第1層の導電層における多重状配線パターン2及び第2層の導電層における多重状配線パターン2は平面視で重複する度合が高いと好ましい。第1層の導電層における多重状配線パターン2及び第2層の導電層における多重状配線パターン2は、全体の30%以上において平面視で重複していることが好ましく、70%以上において重複していることがより好ましく、90%以上において重複していることがさらに好ましい。第1層の導電層における多重状配線パターン2及び第2層の導電層における多重状配線パターン2の重複度合が上記下限に満たないと、多重状配線パターン2の設計が複雑になるおそれがある。
【0025】
第1層の導電層の多重状配線パターン2及び第2層の導電層の多重状配線パターン2は、中心を通る2個の扇状領域に分断されている。具体的には、各導電層の円環形状の多重状配線パターン2が、
図1に示すように、2つの領域に分断され、中心を通る扇状領域3a及び扇状領域3bを形成している。さらに具体的には、第1層の導電層の扇状領域3aが、4本の半円形状の配線2a、配線2c、配線2e、配線2gを有し、第1層の導電層の扇状領域3bが、4本の半円形状の配線2j、配線2l、配線2n、配線2pを有し、第2層の導電層の扇状領域3aが、4本の半円形状の配線2i、配線2k、配線2m、配線2oを有し、第2層の導電層の扇状領域3bが、4本の半円形状の配線2b、配線2d、配線2f、配線2hを有するように、複数の導電層の多重状配線パターンが扇状領域に分断されている。一方、第1層の導電層の最内配線6は、1つの部分でのみ分断され、他の部分では分断されていない。つまり、第1層の導電層の配線パターンは、一部分のみ分断され、その他の部分が分断されていない最内配線6を有する。
【0026】
扇状領域の中心角の下限としては、15度が好ましく、30度がより好ましく、90度がさらに好ましい。一方、扇状領域の中心角の上限としては、345度が好ましく、330度がより好ましく、270度がさらに好ましい。扇状領域の中心角が上記下限に満たないと、扇状領域の配線の長さが短くなり、コイルにおける当該扇状領域の配線の寄与が小さくなるおそれがある。逆に、扇状領域の中心角が上記上限を超えると、他の扇状領域の配線の長さが短くなり、コイルにおける当該他の扇状領域の配線の寄与が小さくなるおそれがある。なお、扇状領域の中心角とは、多重状配線パターンの最内配線の2つの分断位置と中心とが形成する角度を示す。
【0027】
扇状領域に分断された多重状配線パターン2は、
図1に示すように、一方の領域境界から他方の領域境界まで連続しており、
図2A及び
図2Bに示すように、その両端の各々が領域境界近傍に位置するように形成されている。つまり、第1層の導電層の多重状配線パターン2及び第2層の導電層の多重状配線パターン2は、扇状領域の境界近傍において電気的に切断されることで、複数の扇状領域に区分けされている。
【0028】
区分けされた扇状領域の各配線及び最内配線6は、
図2A及び
図2Bに示すように、領域境界線近傍において端部が屈曲した形状を有している。つまり、扇状領域の各配線及び最内配線6は、円弧状の本体部と屈曲した形状の接続端部とを有する。扇状領域の各配線及び最内配線6が屈曲した形状の接続端部を有することで、後述するように、異なる導電層にある配線の端部同士がインタースティシャルビアホール5を介して電気的に接続される。
【0029】
第1層の導電層における右側の扇状領域(特定扇状領域)の最外配線2pの一方側端部(左下側の端部)及び右側の扇状領域の一方側(左下側)に隣接する左側の扇状領域の最外配線2aの他方側端部(右下側の端部)には一対の端子4が電気的に接続されている。この一対の端子4は、電気的接続を行うための接続端子であり、特に限定されないが、例えば配線から連続した銅箔によって形成され、はんだ付け、金属間圧接、超音波金属接合、又はコネクタを用いて他の配線と電気的に接続される。
【0030】
1の導電層の扇状領域の多重状配線パターン2の一方側端部は、この扇状領域の一方側に隣接する扇状領域であって、1の導電層とは異なる導電層にある扇状領域の多重状配線パターン2の他方側端部と平面視で重複して形成されており、この重複位置において2つの端部がインタースティシャルビアホール5を介して電気的に接続されている。つまり、当該平面コイル基板は、第k層(kは1〜2)の導電層における上記一方側に数えてp番目(pは1〜2)の扇状領域の一方側端部及び第k層以外の導電層におけるp+1番目の扇状領域の他方側端部と電気的に接続する複数のインタースティシャルビアホール5を備えている。例えば、第1層の導電層における左側の扇状領域の多重状配線パターン2の一方側端部(右上側の端部)が、第2層の導電層における右側の扇状領域の多重状配線パターン2の他方側端部(左上側の端部)とインタースティシャルビアホール5を介して電気的に接続されている。なおpが2である場合にはp+1番目は3番目を示すことになるが、当該平面コイル基板の導電層における扇状領域は2個であるためp+1番目は戻って1番目を示す。
【0031】
インタースティシャルビアホール5は、一対の端子4の一方側から出発して平面視で一方向に旋回しながら中心に移動し、1の導電層(第1層の導電層)の最内配線6を一方向に一周し、かつ一方向に旋回しながら中心から他方側の端子に移動する渦巻き状閉ループを構成するように複数の扇状領域の複数の多重状配線パターン2の端部同士を接続している。つまり、複数のインタースティシャルビアホール5が、複数の扇状領域の複数の多重状配線パターン2の端部同士を電気的に接続することで、平面視で上記一対の端子の一方側から中心に移動し、かつ中心から他方側の端子に移動する渦巻き状閉ループを構成するよう配設されている。
【0032】
第一実施形態の平面コイル基板における配線の電気的接続について
図2A及び
図2Bを参照して具体的に説明する。なお
図2A及び
図2Bに示される多重状配線パターン2については、一対の端子の一方側から中心に移動する配線を太線で表現し、中心から他方側の端子に移動する配線を細線で表現している。まず一方側の端子4が、第1層の導電層の最外配線2aの他方側端部に接続される。次に第1層の導電層の最外配線2aの一方側端部が、第2層の導電層の最外配線2bの他方側端部にインタースティシャルビアホール5を介して電気的に接続される。次に第2層の導電層の最外配線2bの一方側端部が、第1層の導電層の最外配線2cの他方側端部にインタースティシャルビアホール5を介して電気的に接続される。他の配線についても同様に、配線2cの一方側端部が配線2dの他方側端部に接続され、配線2dの一方側端部が配線2eの他方側端部に接続され、配線2eの一方側端部が配線2fの他方側端部に接続され、配線2fの一方側端部が配線2gの他方側端部に接続され、配線2gの一方側端部が配線2hの他方側端部に接続される。第2層の導電層の配線2hの一方側端部は、第1層の導電層の最内配線6の他方側端部に接続され、この最内配線6の一方側端部は、第2層の導電層の配線2iの他方側端部に接続される。以下同様に、配線2iの一方側端部が配線2jの他方側端部に接続され、配線2jの一方側端部が配線2kの他方側端部に接続され、配線2kの一方側端部が配線2lの他方側端部に接続され、配線2lの一方側端部が配線2mの他方側端部に接続され、配線2mの一方側端部が配線2nの他方側端部に接続され、配線2nの一方側端部が配線2oの他方側端部に接続され、配線2oの一方側端部が配線2pの他方側端部に接続される。最後に第1層の導電層の最外配線2pの一方側端部が、他方側の端子4に接続される。
【0033】
ここで第一実施形態の平面コイル基板における配線の通過順を表1に示す。表1における「層」とは導電層を示し、例えば第1層とは導電層の第1層を示す。また表1における「側」とは扇状領域を示し、例えば左側とは
図1における左側の扇状領域を示す。また表1における「配線番号」とは導電層における配線の番号を示し、数が大きいほど外側の配線であることを示す。また「通過順」の数字は、一対の端子4の左側から出発して一対の端子4の右側に到達するまでに通る配線の通過順を昇順で示し、この通過順に従って配線がインタースティシャルビアホール5により接続されていることを示す。「通過順」の−は通過する配線が存在しないことを示す。
【0035】
表1に示すように、当該平面コイル基板の配線は、導電層の第1層及び導電層の第2層間を交互に移動するように接続されている。また当該平面コイル基板の配線は、2つの導電層の分断された配線同士を2つの導電層間で直列に入れ替えるように接続されている。また配線番号(2)から(5)の領域においては、分断された全ての配線が接続されている。
【0036】
[利点]
当該平面コイル基板は、第1層の導電層で隣接する2つの最外配線がコイルの両端の配線となるので、これらの最外配線に一対の端子4が接続されることでコイルの両端を容易に取り扱うことができる。また当該平面コイル基板は、コイルの一端となる配線をコイルの内側に有しないので、ジャンパー線を有する層を別途設ける必要もない。また当該平面コイル基板は、一部分のみ分断され、その他の部分が分断されていない円環形状の最内配線6を有するので、この最内配線6がUターン配線として機能し、全ての分断された複数の多重状配線パターン2がインタースティシャルビアホール5を介して接続される閉ループを形成しやすい。また当該平面コイル基板は、絶縁層の両面に2層の導電層が積層され、これらの導電層の配線パターンが2個の扇状領域に分断された構成であるので、両面基板を用いて配線パターンを形成できるとともにインタースティシャルビアホール5の数を少なくすることができ、当該平面コイル基板の製造が容易となる。さらに当該平面コイル基板の配線が、第1層の導電層及び第2層の導電層間を交互に移動するように接続されているので、第1層の導電層及び第2層の導電層で形成されるコンデンサの静電容量を減少させることができ、これによるコイルの周波数特性の低下を抑制することができる。
【0037】
[第二実施形態]
第一実施形態の平面コイル基板は、2層の導電層の多重状配線パターンが2つの扇状領域に分断された構成であったが、第二実施形態の平面コイル基板は、3層の導電層の多重状配線パターンが2つの扇状領域に分断された構成である点で第一実施形態の平面コイル基板とは異なる。以下、第一実施形態の平面コイル基板の説明と重複する点については説明を省略し、第一実施形態の平面コイル基板とは異なる点について説明する。
【0038】
<平面コイル基板>
図3A、
図3B、
図3C及び
図4の平面コイル基板は、合成樹脂を主成分とする2層の絶縁層11と、多重状配線パターン12を含む3層の導電層とを交互に備えている。当該平面コイル基板は、
図4に示すように、3層の導電層間の2つの隙間に絶縁層11を1層ずつ挟んだ多層基板の構造となっている。当該平面コイル基板は、特に限定されないが、例えば逐次積層法により一層ずつ層を積み上げることで製造される。なお、
図3Aにおいて示される多重状配線パターン12を含む導電層が第1層の導電層であり、
図3Bにおいて示される多重状配線パターン12を含む導電層が第2層の導電層であり、
図3Cにおいて示される多重状配線パターン12及び最内配線13を含む導電層が第3層の導電層である。
【0039】
(導電層)
当該平面コイル基板の各導電層は、
図3A、
図3B及び
図3Cに示すように、平面視で略矩形(角丸四角形形状)の多重状配線パターン12を含んでいる。これらの導電層の多重状配線パターン12は、平面視で近似又は重複するように形成されている。また第1層の導電層は、多重状配線パターン12とは別の配線パターンとして、一部分のみ分断され、その他の部分が分断されていない角丸四角形形状の最内配線6を有している。なお各導電層の多重状配線パターン12が、中心を通る2個の扇状領域に分断されている点は第一実施形態の平面コイル基板と同様であり、当該平面コイル基板においても、複数の導電層の配線パターンが平面視で近似かつ重複している。
【0040】
1の導電層の扇状領域の多重状配線パターン12の一方側端部は、この扇状領域の一方側に隣接する扇状領域であって、1の導電層とは異なる導電層にある扇状領域の多重状配線パターン12の他方側端部と平面視で重複して形成されており、この重複位置において2つの端部がインタースティシャルビアホール5を介して電気的に接続されている。つまり、当該平面コイル基板は、第k層(kは1〜3)の導電層における上記一方側に数えてp番目(pは1〜2)の扇状領域の一方側端部及び第k層以外の導電層におけるp+1番目の扇状領域の他方側端部と電気的に接続する複数のインタースティシャルビアホール5を備えている。
【0041】
ここで第二実施形態の平面コイル基板における配線の通過順を表2に示す。表中の用語の意味は表1と同様である。
【0043】
表2に示すように、当該平面コイル基板の配線は、導電層の第1層から第3層間を循環的に移動するように接続される。また当該平面コイル基板の配線は、2つの導電層の分断された配線同士を2つの導電層間で直列に入れ替えるように接続されている。また配線番号(2)から(4)の領域においては、分断された全ての配線が接続されている。
【0044】
[利点]
当該平面コイル基板は、第一実施形態の平面コイル基板と同様に、コイルの両端を容易に取り扱うことができ、ジャンパー線を有する層を別途設ける必要もない。また当該平面コイル基板の多重状配線パターン12及び最内配線6は、平面視で略矩形の形状であるので、矩形形状の基板の周縁に沿って効率よく配線パターンを配設することができるとともに、基板の中央の領域についても他の用途に活用しやすい。
【0045】
[第三実施形態]
第三実施形態の平面コイル基板は、4層の導電層の配線パターンが3つの扇状領域に分断された構成である点で第一実施形態の平面コイル基板とは異なる。以下、第一実施形態の平面コイル基板の説明と重複する点については説明を省略し、第一実施形態の平面コイル基板とは異なる点について説明する。
【0046】
<平面コイル基板>
図5A、
図5B、
図5C、
図5D及び
図6の平面コイル基板は、合成樹脂を主成分とする3層の絶縁層21と、多重状配線パターン22を含む4層の導電層とを交互に備えている。当該平面コイル基板は、
図6に示すように、4層の導電層間の3つの隙間に絶縁層21を1層ずつ挟んだ多層基板の構造となっている。当該平面コイル基板は、特に限定されないが、例えば逐次積層法により一層ずつ層を積み上げることで製造される。なお、
図5Aにおいて示される多重状配線パターン22及び最内配線6を含む導電層が第1層の導電層であり、
図5Bにおいて示される多重状配線パターン22を含む導電層が第2層の導電層であり、
図5Cにおいて示される多重状配線パターン22を含む導電層が第3層の導電層であり、
図5Dにおいて示される多重状配線パターン22を含む導電層が第4層の導電層である。
【0047】
(導電層)
当該平面コイル基板の各導電層は、
図5A、
図5B、
図5C及び
図5Dに示すように、平面視で円環形状の多重状配線パターン22を含んで構成されており、各導電層の多重状配線パターン22は、平面視で近似又は重複するように形成されている。なお、当該平面コイル基板においても、複数の導電層の配線パターンが平面視で近似かつ重複している。
【0048】
各導電層の多重状配線パターン22は、中心を通る3個の扇状領域に分断されている。具体的には、各導電層の円環形状の多重状配線パターン22が、
図5A、
図5B、
図5C及び
図5Dに示すように、中心角がそれぞれ約120度の扇状領域23a、扇状領域23b及び扇状領域23cに分断されている。一方、第1層の導電層の円環形状の最内配線6は、扇状領域23a及び扇状領域23cの境界部分でのみ分断され、その他の部分では分断されていない。つまり、第1層の導電層の配線パターンが、一部分のみ分断され、その他の部分が分断されていない最内配線6を有する。
【0049】
扇状領域に分断された多重状配線パターン22は、一方の領域境界近傍から他方の領域境界近傍まで連続しており、その両端の各々が領域境界近傍に位置するように形成されている。つまり、第1層の導電層の多重状配線パターン22、第2層の導電層の多重状配線パターン22、第3層の導電層の多重状配線パターン22及び第4層の導電層の多重状配線パターン22は、扇状領域の境界近傍において電気的に切断されることで、複数の扇状領域に区分けされている。
【0050】
1の導電層の扇状領域の多重状配線パターン22の一方側端部は、この扇状領域の一方側に隣接する扇状領域であって、1の導電層とは異なる導電層にある扇状領域の多重状配線パターン22の他方側端部と平面視で重複して形成されており、この重複位置において2つの端部がインタースティシャルビアホール5を介して電気的に接続されている。つまり、当該平面コイル基板は、第k層(kは1〜4)の導電層における上記一方側に数えてp番目(pは1〜3)の扇状領域の一方側端部及び第k層以外の導電層におけるp+1番目の扇状領域の他方側端部と電気的に接続する複数のインタースティシャルビアホール5を備えている。
【0051】
ここで第三実施形態の平面コイル基板における配線の通過順を表3に示す。表中の用語の意味は表1と同様である。
【0053】
表3に示すように、当該平面コイル基板の配線は、導電層の第1層から導電層の第4層間を循環的に移動するように接続される。また配線番号(2)から(3)の領域においては、分断された全ての配線が接続されている。
【0054】
[利点]
当該平面コイル基板は、第一実施形態の平面コイル基板と同様に、コイルの両端を容易に取り扱うことができ、ジャンパー線を有する層を別途設ける必要もない。また当該平面コイル基板は、一部分のみ分断され、その他の部分が分断されていない最内配線6を有するので閉ループを形成しやすい。
【0055】
[他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0056】
上記第一実施形態では、平面コイル基板の絶縁層の数が1、導電層の数が2及び分断された扇状領域の数が2であるものについて説明し、上記第二実施形態では、平面コイル基板の絶縁層の数が2、導電層の数が3及び分断された扇状領域の数が2であるものについて説明し、上記第三実施形態では、平面コイル基板の絶縁層の数が3、導電層の数が4及び分断された扇状領域の数が3であるものについて説明したが、同じ導電層における2つの最外配線がコイルの両端の配線となる構成であれば、これらの数は任意に設定することが可能である。したがって、平面コイル基板が、合成樹脂を主成分とする1又は複数の絶縁層と、多重状配線パターンを含むn層(nは2以上)の導電層とを交互に備える構成であってもよく、複数の導電層の配線パターンが、平面視で近似又は重複し、かつ中心を通るm個(mは2以上)の扇状領域に分断されていてもよい。
【0057】
上記第一実施形態では、多重状配線パターンの配線の数が4であるものについて説明し、上記第二実施形態では、多重状配線パターンの配線の数が3であるものについて説明し、上記第三実施形態では、多重状配線パターンの配線の数が2であるものについて説明したが、多重状配線パターンの配線の数は特に限定されず、必要に応じて増加又は減少させることが可能である。
【0058】
上記各実施形態では、複数の導電層の配線パターンが、平面視で近似かつ重複しているものについて説明し、さらに平面視で重複度合が高いと好ましいと説明したが、このような構成に限定されない。例えば上記第一実施形態の変形例として示す
図7の平面コイル基板のように、第2層の導電層の多重状配線パターン32を第1層の導電層の多重状配線パターン32より小さな円環形状かつ相似形状とすることで、複数の導電層の多重状配線パターン32が平面視で重複しない構成としてもよい。つまり、複数の導電層の多重状配線パターンが平面視で近似しかつ重複しない構成であってもよい。ただし、多重状配線パターン2の設計が容易となることを考慮すれば、複数の導電層の配線パターンが、平面視で重複していると好ましい。
【0059】
上記各実施形態では、渦巻き状閉ループとして、平面視で円形又は角丸四角形の多重状配線パターンが複数の扇状領域に分断され、これらの扇状領域の端部同士が接続されるものについて説明したが、渦巻き状閉ループを構成する多重状配線パターンは、上記各実施形態のものに限定されない。例えば、平面視で楕円形や多角形の多重状配線パターンが複数の扇状領域に分断されるものであってもよい。また、渦巻き状閉ループを構成する多重状配線パターンの配線は、本体部と屈曲した形状の接続端部とを有するものに限定されない。つまり、渦巻き状閉ループを構成する多重状配線パターンの配線は、配線に電気が流れた際に、電流が旋回するよう流れるにしたがって中心に近づく(あるいは遠ざかる)曲線形状又は折れ線形状であればよい。
【0060】
上記各実施形態では、導電層の多重状配線パターンが所定の位置で扇状領域に分断されるものについて説明したが、インタースティシャルビアホールが各導電層の配線の端部同士を接続できる構成であれば、多重状配線パターンが分断される位置は配線毎に任意に設定することが可能である。ただし、多重状配線パターンが分断される位置は、回転対称となる位置に設定されると好ましい。例えば多重状配線パターンが、2つに分断される場合は約180度巻回される毎に分断され、3つに分断される場合は約120度巻回される毎に分断され、4つに分断される場合は約90度巻回される毎に分断されるとよい。このように多重状配線パターンが分断されると配線パターンの対称性が高まることから、コイルの周波数特性の低下を抑制することができる。
【0061】
また多重状配線パターンが分断される位置が回転対称となる位置に設定される構成においては、当該位置の動径方向が、中心から離れるにつれて変化していると好ましい。例えば上記第一実施形態の変形例として示す
図8の平面コイル基板のように、中心から離れるにつれて多重状配線パターンが分断される位置が時計回りに移動するように設定されてもよいし、中心から離れるにつれて多重状配線パターンが分断される位置が反時計回りに移動するように設定されてもよい。インタースティシャルビアホールの配設領域の幅が配線の幅より大きい場合、複数のインタースティシャルビアホールが近接して配設されるとこれらが干渉する可能性がある。このため、多重状配線パターンが分断される位置の動径方向が中心から離れるにつれて変化していると、これらの干渉を防止することができる。
【0062】
上記各実施形態では、1の導電層の配線パターンが、一部分のみ分断され、その他の部分が分断されていない最内配線を有する構成について説明したが、平面コイル基板がこのような最内配線を有するものに限定されない。例えば上記第一実施形態の変形例として示す
図9A及び
図9Bの平面コイル基板のように、1の導電層の配線パターンが、断片的な最内配線53を有する構成であってもよい。ただし、閉ループを形成しやすい点で、平面コイル基板が、一部分のみ分断され、その他の部分が分断されていない最内配線を有する構成であることが好ましい。
【0063】
平面コイル基板が、可撓性及び絶縁性を有するカバーレイを備え、このカバーレイが導電層の外面側を被覆する構成としてもよい。このように構成すれば、導電層を外部から保護することができる。