(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全重量に対して、前記有効成分を0.0001〜10重量%含む、請求項11から16のいずれか1項に記載のメラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明による新規の化合物、これを含む化粧料組成物および薬学的組成物について以下で詳述するが、ここで使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有しており、下記の説明で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0035】
本明細書において、「アルキル」、「アルコキシ」およびその他の「アルキル」部分を含む置換体は、直鎖または分岐鎖の形態をいずれも含む。また、本発明によるアルキル、アルコキシなどは、直鎖状の炭素数1〜10を有するものまたは前記炭素数に直鎖状を有するものが優先されるが、炭素数11〜30を有するものも本発明の一態様であることは言うまでもない。
【0036】
本明細書において、「アルキルカルボニル」は、*−C(=O)アルキルを意味し、この際、前記アルキルは、上述の定義に従う。
【0037】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」は、当業界に知られている通常の技術を使用して製造されるものであって、薬学的に許容される無機酸、有機酸または塩基から誘導された塩を含む。前記無機酸または有機酸の一例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ホルム酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸またはベンゼンスルホン酸などが挙げられる。また、前記塩基の一例としては、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウムなどのアルカリ土類金属;またはアンモニウム;などが挙げられる。
【0038】
本明細書において、「改善」は、本発明による組成物の塗布により状態が緩和または好転したり良好に変更するすべての行為を言う。
【0039】
また、本明細書において使用される単数形態は、文脈で特に断らない限り、複数の形態も含むと意図し得る。
【0040】
また、本明細書において特に断らず使用された単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味する。
【0041】
また、本明細書において使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅で論理的に誘導される増分、二重限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。
【0042】
また、本明細書において、「含む」と言う表現は、「備える」、「含む」、「有する」または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに挙げていない要素、材料または工程を排除しない。
【0043】
本発明者らは、美白素材について鋭意研究を重ねたところ、オートファジー活性化により効果的にメラノソーム分解を誘導することができる新規の化合物を考案した。本発明による化合物は、オートファジー活性化能力に優れており、メラニン色素の過剰沈着による疾患の改善、予防および治療に積極活用できることが期待される。
【0044】
具体的には、本発明による化合物は、オートファジー活性化関連タンパク質の発現を増大し、これによりメラノソームの分解を誘導する。これにより、メラノソームの生成を効果的に抑制することができる。したがって、これを有効成分として含む組成物は美白効果は言うまでもなく、メラニン色素の過剰沈着疾患の改善、予防および治療に卓越した効果を発現することができる。
【0045】
同時に、本発明による化合物は、角化細胞で発現されたプロテアーゼ−活性型受容体2(PAR−2)の活性化を抑制し、角化細胞のエンドサイトーシス(endocytosis)を有効に抑制することで、メラノソームの流入を効果的に阻止することができる。
【0047】
本発明の一実施形態による化合物は、下記化学式1で表されてもよく、その薬学的に許容される塩であってもよい。
【化4】
[前記化学式1中、
AAは、置換または非置換のプロリンを含むアミノ酸残基である。]
【0048】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、細胞内のオートファジーを活性化するとともに、メラノソーム分解を誘導し、MITF(Melanogenesis Associated Transcription Factor)の発現を効果的に抑制する。また、メラニン細胞のメラノソーム成熟化を抑制し、角化細胞内のエンドサイトーシスを抑制することで、驚くほどの美白効果を実現する。すなわち、本発明による前記化学式1で表される化合物は、オートファジー活性化機能を有する美白素材として有用に活用されることができる。
【0049】
細胞内のオートファジー活性化は、若い人の組織および細胞では活溌に起こるが、老化が進むにつれて細胞内のオートファジー関連タンパク質の発現量が急激に減少するため、オートファジー活性度が急激に低下する。そのため、細胞内老朽タンパク質、脂質およびミトコンドリアが適時に除去されず、細胞老化現象が急速に生じることになる。本発明によると、オートファジー活性化により、各細胞、各組織および各個体の老化を最初から抑制し、老化によってもたらされる各種疾患の予防、改善および治療を可能とする。
【0050】
また、オートファジーの活性化は、細胞内の有害なタンパク質および器官の除去により老化した細胞の生存率を向上させ、さらに、各個体の寿命増加と非常に密接な関係がある。
【0051】
したがって、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、様々な原因によるメラニン細胞内のメラノソームの成熟化を抑制し、メラニン色素の過剰沈着疾患の予防および治療に対してより有用に作用する。
【0052】
前記化学式1において、前記AAは、ヒドロキシ、C
1−10アルコキシ、C
1−10アルキルカルボニルおよびカルボキシから選択される1つ以上の置換体で置換または非置換のプロリンを含むアミノ酸残基であってもよい。
【0053】
一例として、前記化学式1において、前記AAは、アミド結合で結合されたプロリンを含むアミノ酸残基であってもよい。この際、前記プロリンおよびプロリン以外のアミノ酸残基は、上述の置換体で置換または非置換のものであってもよい。また、前記アミノ酸残基は、プロリンを含み2個以上のアミノ酸がアミド結合で結合されていてもよい。
【0054】
一例として、前記化学式1において、前記AAは、アミド結合で結合されたプロリンを含むアミノ酸残基であり、前記アミノ酸残基は、2個のN−末端を有するAsn、Gln、Lysなどから選択される1つ以上を含むアミノ酸残基であってもよい。
【0055】
一例として、前記化学式1において、前記AAは、上述の置換体で置換または非置換のプロリンが直接結合されたアミノ酸残基であってもよい。
【0056】
本発明の一実施形態による化合物は、下記化学式2で表される化合物であってもよい。
【化5】
[前記化学式2中、
R
1は、C
1−10アルキルカルボニルであり;
R
2は、水素、ヒドロキシ、C
1−10アルコキシ、C
1−10アルキルカルボニルまたはカルボキシである。]
【0057】
前記化学式2で表される化合物は、オートファジー活性化によるメラノソーム分解効果に卓越しており、本明細書では、オートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物を意味し得る。
【0058】
一例として、前記化学式2において、前記R
1は、C
1−4アルキルカルボニルであり;前記R
2は、水素、ヒドロキシまたはC
1−4アルコキシであってもよい。
【0059】
一例として、前記化学式2において、前記R
1は、直鎖C
1−4アルキルカルボニルであり;前記R
2は水素またはヒドロキシであってもよい。
【0060】
一例として、前記化学式2において、前記R
1は、C
1−2アルキルカルボニルであり;前記R
2は、水素またはヒドロキシであってもよい。
【0061】
また、前記化学式2で表される化合物は、1つ以上のキラル非対称炭素原子を含む。これにより、前記化学式2で表される化合物は、ラセミ体および光学的活性形態で存在することができる。すなわち、前記化学式2で表される化合物のジアステレオマーおよびエナンチオマーは、いずれも本発明の範疇に含まれる。
【0062】
本発明の一実施形態による化合物は、下記化学式3で表される化合物であってもよい。
【化6】
[前記化学式3中、
R
3は、ヒドロキシまたはC
1−10アルキルであり;
R
4は、水素、ヒドロキシ、C
1−10アルコキシ、C
1−10アルキルカルボニルまたはカルボキシである。]
【0063】
前記化学式3で表される化合物は、エンドサイトーシス抑制による角化細胞内でメラノソーム流入を効果的に抑制することができ、本明細書では、エンドサイトーシス抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物を意味し得る。
【0064】
一例として、前記化学式3において、前記R
3は、ヒドロキシまたはC
1−4アルキルであり;前記R
4は、水素、ヒドロキシまたはC
1−4アルコキシであってもよい。
【0065】
一例として、前記化学式3において、前記R
3は、ヒドロキシまたは直鎖C
1−4アルキルであり;前記R
4は、水素、ヒドロキシまたは直鎖C
1−4アルコキシであってもよい。
【0066】
一例として、前記化学式3において、前記R
3は、ヒドロキシまたはC
1−2アルキルであり;前記R
4は、水素またはヒドロキシであってもよい。
【0067】
また、前記化学式3で表される化合物は、1つ以上のキラル非対称炭素原子を含む。これにより、前記化学式3で表される化合物は、ラセミ体および光学的活性形態で存在することができる。すなわち、前記化学式3で表される化合物のジアステレオマーおよびエナンチオマーは、いずれも本発明の範疇に含まれる。
【0068】
以下、本発明の用途について具体的に説明する。
【0069】
本発明の一実施形態による一態様の用途は、皮膚美白用化粧料組成物であってもよい。
【0070】
本発明の一実施形態による皮膚美白用化粧料組成物は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含んでもよい。
【0071】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、活性を示す濃度範囲内で細胞毒性を誘発せず、非常に低い濃度範囲(例えば、1μm)でも美白効果を発現する。また、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、通常の化粧料組成物に剤形化する場合にも剤形の安定性および保存性を低下させない。
【0072】
本発明の一実施形態による皮膚美白用化粧料組成物は、有効成分として、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容される塩(A)を含んでもよい。この際、前記(A)は1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0073】
本発明の一実施形態による皮膚美白用化粧料組成物は、有効成分として、前記化学式3で表される化合物またはその薬学的に許容される塩(B)を含んでもよい。この際、前記(B)は、1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0074】
本発明の一実施形態による皮膚美白用化粧料組成物は、有効成分として、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容される塩(A)と前記化学式3で表される化合物またはその薬学的に許容される塩(B)を含む混合物であってもよい。
【0075】
本発明の一実施形態による皮膚美白用化粧料組成物は、実質的なオートファジー活性化効果を実現するための面において、全重量に対して、前記有効成分を0.0001〜10重量%含んでもよい。含量に対する効果を考慮すると、前記有効成分は、具体的には0.0005〜5重量%、より具体的には0.001〜1重量%、最も具体的には0.001〜0.1重量%含んでもよい。
【0076】
さらに、本発明の一実施形態による皮膚美白用化粧料組成物は、より向上した美白効果の実現のために、オートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物およびエンドサイトーシス抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物の混合物を同時に有効成分として含むことができる。
【0077】
一例として、前記オートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物は、前記化学式2で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物(A)であってもよく、前記エンドサイトーシス抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物は、前記化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物(B)であってもよい。
【0078】
本発明の一実施形態による皮膚美白用化粧料組成物は、適用形態、使用目的および所望の効果によって適切な重量比で前記オートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物およびエンドサイトーシス抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物の混合物を使用することができることは言うまでもない。
【0079】
一例として、前記混合物は、1:0.1〜1:1の重量比(A:B)で混合されてもよい。
【0080】
一例として、前記混合物は、1:0.1〜1:0.8の重量比(A:B)で混合されてもよい。
【0081】
一例として、前記混合物は、1:0.1〜1:0.5の重量比(A:B)で混合されてもよい。
【0082】
前記皮膚美白用化粧料組成物は、通常知られている製造方法を用いて、一般的な乳化剤形および可溶化剤形などに剤形化されることができる。
【0083】
一例として、前記皮膚美白用化粧料組成物は、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、アイクリーム、栄養クリーム、マッサージクリーム、パウダー、エッセンス、パックなどから構成された群から選択される剤形に剤形化されてもよい。
【0084】
一例として、前記皮膚美白用化粧料組成物は、石けん、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォータなどから構成された群から選択される剤形に剤形化されてもよい。
【0085】
また、前記皮膚美白用化粧料組成物は、目的に応じて、適切にさらなる添加剤をさらに含んでもよい。一例として、前記添加剤は、安定化剤、乳化剤、粘増剤、保湿剤、液晶膜強化剤、pH調節剤、抗菌剤、水溶性高分子、被膜剤、金属イオン封鎖剤、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚営養剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、防腐剤、香料などから選択される1つ以上の水性添加剤;油脂類、ワックス類、炭化水素油、高級脂肪酸油、高級アルコール、合成エステル油およびシリコン油などから選択される1つ以上の油性添加剤;などが挙げられる。
【0086】
この際、前記各添加剤は、組成物の全重量に対して、0.001〜20重量%含まれてもよく、具体的には0.01〜10重量%、0.05〜10重量%含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0087】
本発明の一実施形態による他の一態様の用途は、メラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物であってもよい。
【0088】
また、本発明の一実施形態による一態様の用途は、メラニン色素の過剰沈着疾患を緩和または治療する方法であってもよい。具体的には、前記方法は、有効量の前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を、これを要する対象の皮膚に適用させることであってもよく、これを要する対象の皮膚は、メラニン色素の過剰沈着疾患の皮膚であってもよい。
【0089】
この際、前記有効量は、上述の有効成分の使用量の範囲であれば制限されない。
【0090】
本発明の一実施形態によるメラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含んでもよい。
【0091】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、卓越した美白効果の実現により、メラニン色素の過剰沈着疾患の改善、予防および治療に卓越した効果を発現する。具体的には、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、オートファジー関連タンパク質の発現を増加させてオートファジーを活性化し、酸化ストレスから細胞を保護することができ、酸化ストレスによる各種疾患および現象を改善、予防および治療することができる。特に、メラノソーム分解を誘導してメラニン生成を低減するとともに、メラノソームの成熟化を抑制し、角質細胞のエンドサイトーシスを効果的に抑制してメラノソームの流入を阻止し、メラニンから誘導される色素の過剰沈着疾患の改善、予防および治療に非常に効果的である。
【0092】
前記色素の過剰沈着疾患は、ソバカス;老人性色素斑;肝斑;シミ;茶色または黒のホクロ;日光性色素斑;青色黒皮症;薬物使用後の過剰な色素沈着;妊娠性褐色斑;または炎症後の過剰な色素沈着;などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0093】
本発明の一実施形態によるメラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は有効成分として、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容される塩(A´)を含んでもよい。この際、前記(A´)は1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0094】
本発明の一実施形態によるメラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は有効成分として、前記化学式3で表される化合物またはその薬学的に許容される塩(B´)を含んでもよい。この際、前記(B´)は1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0095】
本発明の一実施形態によるメラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は有効成分として、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容される塩(A´)と前記化学式3で表される化合物またはその薬学的に許容される塩(B´)を含む混合物であってもよい。
【0096】
本発明の一実施形態によるメラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は、実質的なオートファジー活性化効果を実現するための面において、全重量に対して、前記有効成分を0.0001〜10重量%含んでもよい。含量に対する効果を考慮すると、前記有効成分は、具体的には0.001〜5重量%、より具体的には0.001〜1重量%、最も具体的には0.001〜0.1重量%含んでもよい。
【0097】
さらに、本発明の一実施形態によるメラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は、より向上した効果の実現のために、オートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物およびエンドサイトーシス抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物の混合物を有効成分として含むことができる。
【0098】
一例として、前記オートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物は、前記化学式2で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物(A´)であってもよく、前記エンドサイトーシス抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物は、前記化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物(B´)であってもよい。
【0099】
本発明の一実施形態によるメラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は、適用形態、使用目的および所望の効果に応じて適切な重量比で前記オートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物およびエンドサイトーシス抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物の混合物を使用することができることは言うまでもない。
【0100】
一例として、前記混合物は1:0.1〜1:1の重量比(A´:B´)で混合されてもよい。
【0101】
一例として、前記混合物は1:0.1〜1:0.8の重量比(A´:B´)で混合されてもよい。
【0102】
一例として、前記混合物は1:0.1〜1:0.5の重量比(A´:B´)で混合されてもよい。
【0103】
前記メラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は、通常知られている製造方法を用いて、薬剤学的に許容される担体を含む剤形に剤形化されることができる。
【0104】
一例として、前記メラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ、噴霧剤などから構成された群から選択される皮膚外用剤形に剤形化されてもよい。
【0105】
一例として、前記メラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は、経口(錠剤、カプセル剤、粉末剤)、口腔内、舌下、直腸内、膣内、鼻腔内、局所または非経口(静脈内、海綿体内、筋肉内、皮下および管こう内を含む)投与剤形に剤形化されてもよい。
【0106】
また、前記メラニン色素の過剰沈着疾患の改善または治療用薬学的組成物は、目的に応じて適切にさらなる薬剤学的に許容される担体を含んでもよい。一例として、ラクトース、デックストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムまたはミネラルオイルであってもよく、これに限定されるものではない。また、前記担体の他に、滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤または保存剤などの担体をさらに含んでもよい。
【0107】
この際、前記各担体は、組成物の全重量に対して、0.001〜20重量%含まれてもよく、具体的には0.01〜10重量%、0.05〜10重量%含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0108】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するだけであって、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0109】
(実施例1)化合物1の合成
ステップ1.化合物1a(Fmoc−Lys(Dde)−O−2−クロロトリチル樹脂)の合成
【化7】
10mlの反応容器に2−クロロトリチルクロライド樹脂(2−chloro trityl chloride resin、100−200mesh、Novabiochem100mg、1当量)とFmoc−Lys(Dde)−OH(Nα−Fmoc−Nε−Dde−L−リジン、Nα−Fmoc−Nε−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]−L−リジン)(106.5mg、2当量)およびジイソプロピルアミン(DIPEA、69.7μl、4当量)を5mlのジクロロメタン(DCM)に溶解して添加し、常温(23℃)で12時間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのジクロロメタンとメタノール(MeOH)、ジクロロメタンおよびジメチルホルムアミド(DMF)を用いて順に洗浄し、化合物1aを定量的に得た。
【0110】
ステップ2.化合物1b(Fmoc−Lys(Fmoc)−Lys(Dde)−O−2−クロロトリチル樹脂)の合成
【化8】
ステップ1の反応容器(ステップ1で得られた化合物1a)に5mlの20%ピペリジン(in DMF)を入れて常温で5分間反応させた後、濾過して反応液を除去した。5mlの20%ピペリジン(in DMF)をさらに加え、常温で5分間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄した後、Fmoc−Lys(Fmoc)−OH(236.3mg、4当量)とHOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール、54.1mg、4当量)およびN,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(61.9μl、4当量)を5mlのDMFに溶解して加え、常温で2時間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄し、化合物1bを定量的に得た。
【0111】
ステップ3.化合物1c(tert−ブトキシカルボニルメチル)2−Lys(tert−ブトキシカルボニルメチル)2−Lys(Dde)−O−2−クロロトリチル樹脂)の合成
【化9】
ステップ2の反応容器(ステップ2で得られた化合物1b)に5mlの20%ピペリジン(in DMF)を入れて常温で5分間反応させた後、濾過して反応液を除去した。5mlの20%ピペリジン(in DMF)をさらに加え、常温で5分間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ500mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄した後、t−ブチルブロモアセテート(tert−butyl bromoacetate、147.7μl、10当量)とDIPEA(261.3μl、15当量)を5mlのDMFに溶解して加え、常温で48時間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄し、化合物1cを定量的に得た。
【0112】
ステップ4.化合物1d(tert−ブトキシカルボニルメチル)2−Lys(tert−ブトキシカルボニルメチル)2−Lys(NH2)−O−2−クロロトリチル樹脂)の合成
【化10】
ステップ3の反応容器(ステップ3で得られた化合物1c)に5mlの2%ヒドラジン(in DMF)を入れて5分間常温で反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂を10ml DMFを用いて洗浄した後、10mlの10%DIPEA(in DMF)を加え、常温で5分間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄し、化合物1dを定量的に得た。
【0113】
ステップ5.化合物1の合成
【化11】
ステップ4の反応容器(ステップ4で得られた化合物1d)にN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン(N−Acetyl−L−hydroxyproline、138.5mg、8当量)とHOBt(180.1mg、8当量)およびDIC(123.9μl、8当量)を5mlのDMFに溶解して加え、常温で3時間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとDMF、DCMを用いて順に洗浄した。
【0114】
真空乾燥した後、5mlのcleavage cocktail(トリフルオロ酢酸:トリイソプロピルシラン:DW=95:2.5:2.5)を加え、常温で3時間反応させた。濾過して反応液を集め、これに45mlのジエチルエーテルを加えて生成物を沈殿させた。遠心分離機を用いて固体生成物を集め、45mlのジエチルエーテルで2回洗浄した。得られた固体生成物をPrep−HPLC(column C18、10μm、250mm×22mm)用いて精製した後、凍結乾燥して化合物1(LC massで測定された分子量:661.66)を55%全収率で36.4mg得た。
【0115】
(実施例2)化合物2の合成
ステップ1.化合物2a(Fmoc−Hyp(tBu)−O−2−クロロトリチル樹脂)の合成
【化12】
10mlの反応容器に2−クロロトリチルクロライド樹脂(100−200mesh、Novabiochem 200mg、1当量)とFmoc−Hyp(tBu)−OH(Fmoc−O−tert−ブチル−L−ヒドロキシプロリン)(163.8mg、2当量)およびDIPEA(139.3μl、4当量)を5mlのDCMに溶解して添加し、常温で12時間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄し、化合物2aを定量的に得た。
【0116】
ステップ2.化合物2b(Fmoc−Lys(Fmoc)−Hyp(tBu)−O−2−クロロトリチル樹脂)の合成
【化13】
ステップ1の反応容器(ステップ1で得られた化合物2a)に5mlの20%ピペリジン(in DMF)を入れて常温で5分間反応させた後、濾過して反応液を除去した。5mlの20%ピペリジン(in DMF)をさらに加え、常温で5分間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄した後、Fmoc−Lys(Fmoc)−OH(472.6mg、4当量)とHOBt(108.1mg、4当量)およびDIC(123.9μl、4当量)を5mlのDMFに溶解して加え、常温で2時間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄し、化合物2bを定量的に得た。
【0117】
ステップ3.化合物2c(tert−ブトキシカルボニルメチル)2−Lys(tert−ブトキシカルボニルメチル)2−Hyp(tBu)−O−2−クロロトリチル樹脂)の合成
【化14】
ステップ2の反応容器(ステップ2で得られた化合物2b)に5mlの20%ピペリジン(in DMF)を入れて常温で5分間反応させた後、濾過して反応液を除去した。5mlの20%ピペリジン(in DMF)をさらに加え、常温で5分間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ500mlのDCMとMeOH、DCMおよびDMFを用いて順に洗浄した後、t−ブチルブロモアセテート(295.3μl、10当量)とDIPEA(522.5μl、15当量)を5mlのDMFに溶解して加え、常温で48時間反応させた。濾過して反応液を除去し、合成された樹脂をそれぞれ10mlのDCMとDMFおよびDCMを用いて順に洗浄し、化合物2cを定量的に得た。
【0118】
ステップ4.化合物2の合成
【化15】
ステップ3の反応容器(ステップ3で得られた化合物2c)に5mlのcleavage cocktail(トリフルオロ酢酸:トリイソプロピルシラン:DW=95:2.5:2.5)を加え、常温で3時間反応させた。濾過して反応液を集め、これに45mlのジエチルエーテルを加えて生成物を沈殿させた。遠心分離機を用いて固体生成物を集め、45mlのジエチルエーテルで2回洗浄した。得られた固体生成物をPrep−HPLC(column C18、10μm、250mm×22mm)用いて精製した後、凍結乾燥して化合物2(LC massで測定された分子量:491.45)を60%全収率で59mg得た。
【0119】
(実施例3)チロシナーゼ抑制能の確認
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2がチロシナーゼ活性を抑制するのか分析するために、チロシナーゼ活性阻害試験(Tyrosinase inhibition assay)を行った。
【0120】
具体的な実験方法として、マッシュルームチロシナーゼ(Mushroom tyrosinase)を0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(sodium phosphate buffer)に2unit/μlで希釈し、チロシン(Tyrosine)0.03重量%で水に溶解した。下記表1に記載の各実験群も0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液に10ppm、100ppm、1000ppm、10000ppmで希釈し、表1のように混合した。37℃で1時間反応させ、吸光度をそれぞれ測定した(波長:490nm、Epoch、バイオテック社製)。その結果に基づき、コントロールに対するチロシナーゼ抑制率で計算した。
【0122】
図2に示されているように、化合物1と化合物2は、全濃度においてチロシナーゼ活性を抑制しないことを確認した。
【0124】
(実施例4)適正処理濃度の確認
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2による細胞毒性のない処理濃度を確認するために、MTTアッセイを行った。
【0125】
具体的な実験方法として、化合物1と化合物2の処理濃度による細胞毒性を確認するために、メラニン細胞(human primary melanocyte、HEMn−DP、cat# C2025C、Gibco社製)と角化細胞(human primary keratinocyte、HEKn、cat# C0015C、Gibco社製)で細胞死分析を行った。96ウェルプレートに細胞数を1×10
4cells/wellで分注し、24時間、37℃、5%CO
2の条件でインキュベータで培養した。
【0126】
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2それぞれを100mMの濃度で蒸留水(DW)に溶解して濃縮液とし、これを培地で希釈して5μM、10μM、50μMの濃度で処理した。4日後にプレートの培地を除去し、MTT試薬(シグマアルドリッチ社製、0.5mg/ml)100μlを処理した。4時間後、試薬を除去し、ジメチルスルホキシド(DMSO)を入れた後、吸光度を測定した(波長:570nm、Epoch、バイオテック社製)。この際、細胞生存率は、化合物で処理されていないコントロール(Blank)の吸光度に対する百分率で計算した。
【0128】
図3および
図4に示されているように、化合物1と化合物2は、5μM、10μM、50μMの濃度でも細胞毒性がほとんどないことを確認した。すなわち、本発明による化合物は、前記濃度でメラニン細胞および角化細胞のいずれにおいて細胞毒性がないことを確認した。したがって、以降の実験では、10μMの濃度で実験を行った。
【0129】
(実施例5)メラノソーム成熟化関連遺伝子の変化とメラニン含量の変化の確認
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2が、メラノソーム成熟化にどのような影響を与えるのか分析するために、化合物1と化合物2を処理した後、メラノソーム成熟化関連mRNAの量をQPCRで分析し、メラニン含量を吸光度で測定した。
【0130】
具体的な実験方法として、ヒト由来のメラニン細胞(HEMn−DP、cat# C2025C、Gibco社製)を培養用6ウェルプレートに1×10
5個の細胞数で一定に分注し、M254(cat# M−254−500、Gibco社製)で24時間、37℃、5%CO
2の条件で、インキュベータで培養した。化合物1と化合物2それぞれを100mMの濃度でDWに溶解して濃縮液とし、これを培地で希釈して20μMの濃度で希釈した後、各ウェルに1mlの培地がまず入っている状態で各希釈液を1mlずつ入れて処理した後、48時間培養し、RNeasy mini kit(cat# 74106、キアゲン社製)を用いてメラニン細胞からRNAを抽出した。抽出したRNAは、cDNA合成キット(cat# FSQ−201、東洋紡社製)を用いてcDNA合成を行い、MITF(F:TAA CCT GTA CAA CAA CTC TCG ATC TCA;R:GTT GGC CTC AGT CCC AGT TC)、チロシナーゼ(F:AGC ACC CCA CAA ATC CTA ACT TAC;R:ATG GCT GTT GTA CTC CTC CAA TC)プライマーとPOWER SYBR MASTER MIX(cat# 4367659、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を合成したcDNAとともに適正割合で混合し、QuantStudio 3装備(cat# A28131、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)でqPCRを行った。また、同様に実験を行って培養を終了した後、培地を除去し、トリプシン−EDTA(cat# LS−015−09、WELGENE社製)を用いてメラニン細胞をプレートから分離し、1.5mlのチューブに移した後、スピンダウン(spin down)してペレットの写真を撮影し、そのペレットを1N NaOHに溶解した溶液の吸光度を測定した(波長:400nm、Epoch、バイオテック社製)。
【0132】
図5〜
図7に示されているように、前記実施例で得られた、化合物1と化合物2は、メラニン細胞内のメラノソーム成熟化活性にはほとんど影響を与えないことが分かる。
【0133】
(実施例6)角化細胞のオートファジー活性増加とエンドサイトーシス関連遺伝子の発現減少の確認
前記実施例で得られた、化合物1の処理による細胞内オートファジー分析のために、LC3(light chain 3;オートファジーマーカー)タンパク質に対するウェスタンブロッティング(western blot)を行った。また、前記実施例で得られた、化合物2の処理によるエンドサイトーシス関連遺伝子の変化を分析するために、PAR2、AAK1(AP2 Associated Kinase1)に対してqPCRを行った。
【0134】
具体的な実験方法として、化合物1を角化細胞(HEKn、cat# C0015C、Gibco社製)に処理し、タンパク質分解阻害剤が含まれている細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を用いて溶解させた。前記溶解された溶液を遠心分離機を用いて全溶液を分画した後、タンパク質が含まれた溶液のみ抽出した。前記抽出されたタンパク質は、BCA(ビシンコニン酸)方法によって定量化した。20μgのタンパク質を10%SDS−ポリアクリルアミド(polyacrylamide)ゲル電気泳動法で分離し、ニトロセルローズ(nitrocellulose)膜に移した。タンパク質が移された膜は、非特異的な結合を減少させるために、5%脱脂乳(non−fat milk)が含まれたTBS−T(トリス緩衝生理食塩水/0.05%ツイン−20)溶液で常温で1時間遮断(blocking)した後、1次抗体を4℃の条件で一晩(overnight)反応させた後、2次抗体を1時間常温で反応させた。視覚化のためには、化学発光システム(Enhance chemiluminescence system)を用いた。
【0135】
具体的な実験方法として、化合物2を処理した角化細胞(HEKn、cat# C0015C、Gibco社製)は、RNeasy mini kit(cat# 74106、キアゲン社製)を用いてRNAを抽出し、cDNA合成キット(cat# FSQ−201、東洋紡社製)を用いてcDNA合成した後、PAR2(F:CTC TCC TGC AGT GGC ACC AT;R:GAT GTG CCA TCA ACC TTA CCA A)プライマーとPOWER SYBR MASTER MIX(cat# 4367659、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を合成したcDNAとともに適正割合で混合し、QuantStudio 3装備(cat# A28131、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)でqPCRを行った。
【0137】
図8に示されているように、化合物1によりLC3−II(成熟したオートファゴソーム)の生成が増加することを確認することができ、化合物2によりPAR−2遺伝子の発現が減少することが分かった。
【0138】
(実施例7)メラニン沈着減少の確認
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2が、メラニン沈着にどのような影響を与えるのか分析するために、メラニン処理による沈着抑制程度を分析した。
【0139】
具体的な実験方法として、ヒト由来の角化細胞(HEKn、cat# C0015C、Gibco社製)を培養用6ウェルプレートに1×10
5個の細胞数で一定に分注し、EpiLife(登録商標、cat# MEPI500CA、Gibco社製)で24時間、37℃、5%のCO
2条件でインキュベータで培養した。前記実施例で得られた化合物1または化合物2それぞれを100mMの濃度で溶解して濃縮液とし、これを培地で希釈して20μMの濃度で希釈した後、各ウェルに1mlの培地がまず入っている状態で各希釈液を1mlずつ入れて処理した後、48時間培養し、メラニン10mg/mlを2μlずつ添加し、2時間さらに培養した。培養終了後、培地を除去し、トリプシン−EDTA(cat# LS−015−09、WELGENE社製)を用いて細胞をプレートから分離して1.5mlのチューブに移した後、スピンダウンしてペレットの写真を撮影し、そのペレットを1N NaOHに溶解した溶液の吸光度を測定した(波長:400nm、Epoch、バイオテック社製)。
【0141】
図9に示されているように、化合物1または化合物2によって角化細胞へのメラニン沈着が効果的に抑制されることを確認することができた。
【0142】
また、化合物1または化合物2を単一化合物で処理した場合よりも、これらを混合した場合に、メラニン沈着がさらに抑制されることが分かった。
【0143】
(実施例8)メラニン沈着抑制活性がオートファジー活性に依存的であるかに関する分析
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2の処理による角化細胞へのメラニン沈着抑制活性が、オートファジー活性に依存的であるか分析するために、オートファジー活性に必要なタンパク質であるATG5をKnock−Downした後、メラニン処理による沈着抑制活性の変化を分析した。
【0144】
具体的な実験方法として、ATG5 siRNAをトランスフェクション試薬(RNAiMAX、cat♯13778−075、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)の方法で混合した後、角化細胞(HEKn、cat# C0015C、Gibco社製)に分注した。8時間後、化合物1と化合物2をサプリメント(supplement)と抗生剤のないEpiLife(cat# MEPI500CA、Gibco社製)に最終濃度が10μMになるよう希釈して処理し、64時間さらに培養した細胞をタンパク質分解阻害剤が含まれている細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を用いて溶解させた。前記溶解された溶液を遠心分離機を用いて全溶液を分画した後、タンパク質が含まれた溶液のみを抽出した。前記抽出されたタンパク質は、BCA(ビシンコニン酸)方法によって定量化した。20μgのタンパク質を10%SDS−ポリアクリルアミド(polyacrylamide)ゲル電気泳動法で分離し、ニトロセルローズ(nitrocellulose)膜に移した。タンパク質が移された膜は、非特異的な結合を減少させるために、5%BSA(ウシ血清アルブミン、Gendepot社製、Cat# A0100−010)が含まれたTBS−T(トリス緩衝生理食塩水/0.05%ツイン−20)溶液で常温で1時間遮断(blocking)した後、1次抗体を4℃の条件で一晩(overnight)反応させた後、2次抗体を1時間常温で反応させた。視覚化のためには、化学発光システム(Enhance chemiluminescence system)を用いた。また、メラニン沈着抑制活性を分析するために、トランスフェクションと化合物の処理まで同様に行った後、メラニン10mg/mlを2μlずつ添加して2時間さらに培養した。培養終了後、培養液を除去し、トリプシン−EDTA(cat# LS−015−09、WELGENE社製)を用いて細胞をプレートから分離し、1.5mlのチューブに移した後、スピンダウン(spin down)してペレットの写真を撮影し、そのペレットを1N NaOHに溶解した溶液の吸光度を測定した(波長:400nm、Epoch、バイオテック社製)。
【0146】
図10に示されているように、オートファジー活性に必要なタンパク質であるATG5をKnock−downさせると、化合物1と化合物2による角化細胞でのメラニン量が減少しないことを確認した。また、ATG5がknock−downした条件で、化合物1と化合物2によるオートファジータンパク質であるLC3−IIとATG5の発現活性が抑制されることを確認した。したがって、化合物1と化合物2によるメラニン沈着抑制活性が、オートファジー活性に依存的であることが分かった。
【0147】
(実施例9)メラノソーム分解効果
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2の処理により、メラノソームとオートファゴソームがco−localizationするのか確認するために、電子顕微鏡と共焦点顕微鏡で分析した。
【0148】
具体的な実験方法として、ヒト由来の高濃度のメラニンが入っているメラニン細胞(HEMn−DP、cat# C2025C、Gibco社製)に溶解緩衝液(トリス20mm、NaCl150mm、EDTA1mM、スクロース250mm in DW)を入れて冷却してから解凍することを2回繰り返して細胞膜を壊し、1000x gで5分間遠心分離して上澄み液を得る。Cushion Buffer(トリス20mm、NaCl150mm、EDTA1mM、スクロース1.5M in DW)を超遠心分離機チューブに満たし、同一量の上澄み液を入れた後、25,000rpm、30分、4℃の条件で遠心分離し、メラノソームを得た。メラノソームの濃度は、合成メラニン(cat# M8631、シグマアルドリッチ社製)を標準物として測定した。角化細胞(HEKn、cat# C0015C、Gibco社製)を6ウェルに1×10
5cells/wellずつ分注し、1日間培養した。化合物1と化合物2を10μMずつ処理して1日間培養した後、分離したメラノソーム(5μg/well)を添加し、さらに2日培養した。培養終了後、培養液を除去し、電子顕微鏡用固定液を用いて細胞を固定した後、抗体(Pmel17、LC3)で蛍光標識を行った後、共焦点顕微鏡でメラノソームとオートファゴソームがCo−localizationするかを確認した。また、同様に実験した細胞を透過電子顕微鏡で細胞内小器官の様相を観察した。
【0150】
図11に示されているように、化合物1と化合物2によって増加したオートファゴソームがメラノソームとCo−localizationされることを共焦点顕微鏡で確認した。また、角化細胞内にメラノソームが多く存在するコントロールとは異なり、化合物1と化合物2の混合物を処理すると、メラノソームが迅速に分解され、その量が著しく減少することを確認することができた。
【0151】
また、
図12に示されているように、化合物1と化合物2の混合物を処理すると、全メラノソームに対する86%がオートファゴソームの中に入っている現象を透過電子顕微鏡で確認することができた。
【0152】
(実施例10)メラノソームの沈着抑制効果
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2を処理して角化細胞でメラノソームの沈着が抑制されるのか分析するために、角化細胞から分離したメラノソームを処理し、メラニン含量とメラノソーム指標を分析した。
【0153】
具体的な実験方法として、角化細胞(HEKn、cat# C0015C、Gibco社製)を6ウェルに1×10
5cells/wellずつ分注して1日培養した後、化合物1と化合物2を10μMずつ1日間処理し、実施例9のように分離したメラノソームを(5μg/well)を添加した後、さらに2日間培養した。培養終了後、培養液を得てトリプシン−EDTA(cat# LS−015−09、WELGENE社製)を用いて細胞をプレートから分離し、1.5mlチューブに移した後、スピンダウンしてペレットの写真を撮影し、そのペレットを1N NaOHに溶解した溶液の吸光度を測定した(波長:400nm、Epoch、バイオテック社製)。
【0154】
また、これを定量分析するために、合成メラニン(cat# M8631、シグマアルドリッチ社製)を標準品として培養液とセルペレット(cell pellet)内部のメラノソームの量を分析した。得られた培養液は、凍結乾燥の後、ペレットと同様に1N NaOHに溶解した後、吸光度を測定した(波長:400nm、Epoch、バイオテック社製)。
【0156】
図13に示されているように、化合物1と化合物2の混合物を処理すると、角化細胞の内部のメラノソーム量が減少し、培養液のメラノソーム量が増加することを確認することができた。かかる結果は、化合物1と化合物2の混合物の処理によって角化細胞へのメラノソームの流入を効果的に抑制したことを意味する。これにより、化合物1と化合物2の混合物を処理すると、メラノソームによる色素沈着を有意に抑制することができる。
【0157】
また、本発明による角質細胞の色素沈着過程を抑制するメカニズムを下記の
図1に図示した。
【0158】
(実施例11)メラニン沈着抑制効果
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2が組織学的にメラニン沈着抑制にどのような影響を与えるのか分析するために、人工皮膚モデルを用いてメラニン色素沈着抑制程度を分析した。
【0159】
具体的な実験方法として、肌の黒い人由来の人工皮膚モデル(MelanoDerm(商標)、MEL−300−B、MatTek社製)を専用培地(EPI−100−NMM−PRF)で15日間、37℃、5%CO
2の条件でインキュベータで培養した。前記実施例で得られた化合物1と化合物2を100ppmの濃度で人工皮膚モデルの表面に25μlずつ24時間ごとに一度処理した。化合物1と化合物2の処理時に既存に存在する化合物1と化合物2は除去してから処理し、培地も24時間ごとに取り替えた。実験の進行中に1日目、9日目、15日目に組織表面の写真を撮影し、この結果を用いて組織表面の色変化程度(L*value)を分析した。
【0161】
図14に示されているように、コントロールに比べて化合物1と化合物2の混合物が処理された群において、メラニン色素沈着が統計的に有意に減少したことを確認することができた。
【0162】
(実施例12)メラニン分解効果
前記実施例で得られた、化合物1と化合物2のメラニン分解効果を分析するために、人工皮膚モデルを用いてメラニン含量を分析した。
【0163】
具体的な実験方法として、前記実施例11に述べられたように人工皮膚モデルを培養した。15日目に組織を得て、4%リン酸緩衝ホルマリンで24時間固定した。固定した組織を流れる水で12時間洗浄し、アルコール濃度の上昇順に脱水を行った後、キシレンで置換し、パラフィンで包埋した。パラフィンで包埋した組織を5μmの厚さで薄切りし、フォンタナ・マッソン染色法でメラニンを染色した後、分析に使用した。全組織の写真と角質層部分の写真をそれぞれimage Jで分析して比較した。
【0165】
図15に示されているように、コントロールに比べて、化合物1と化合物2の混合物が処理された群においてメラニンが統計的に有意に減少したことを確認することができた。また、角質層に上行するメラニンの量が43.25%であり、コントロールに比べ、統計的に有意に減少したことを確認することができた。
【0166】
上述の結果から、本発明による化合物は、オートファジー活性化により効果的にメラノソーム分解を誘導し、且つPAR−2抑制を促進することで、メラノソームの流入を効果的に抑制することができることを確認した。
【0167】
具体的には、化合物1は、オートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物として、メラニン細胞のオートファジー活性を誘導してメラノソームを効果的に分解し、化合物2は、エンドサイトーシス抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物として、メラノソームが角化細胞に入って来ることを阻止する役割に卓越した効果を発揮することを確認した。これにより、結果として、角化細胞内のメラニンを減少させて皮膚色素沈着の緩和、治療および予防に非常に効果的に使用可能になることが期待される。特に、本発明による化学式2および化学式3で表される化合物を混合して使用する場合、美白効果は言うまでもなく、メラニン色素の過剰沈着による疾患の改善、予防および治療に卓越した効果を実現することができる。
【0168】
(実施例13〜実施例14および比較例1)皮膚美白用化粧料組成物の製造
下記表2に記載の成分および含量で、乳化反応器に投入して混合攪拌しながら75℃に加熱して乳化させた。以降、乳化が終了すると、攪拌機で攪拌させて徐々に常温に冷却させて皮膚美白用化粧料組成物(o/wクリーム)を製造した。
【0170】
(実施例15)美白効果
前記方法で製造された実施例の皮膚美白用化粧料組成物の美白効果を調べるために臨床試験を行った。
【0171】
具体的な実験方法として、色素沈着過剰症のある平均年齢37歳(36.57±5.90)の成人男女20名(女性15名、男性5名)の肌をUV露出で黒化を誘導した後、前記表2のように、化合物1および化合物2が含まれている高濃度および低濃度含有クリーム(試験試料)と、化合物1および化合物2が含まれていないクリーム(比較例1、対照試料)を1日2回塗布した。各クリームを塗布した後、4週目、8週目にMexameterとChromameterを使用して機器のマニュアルに
したがって測定し、測定値は、正規性検定の後、評価時間による変化はANOVAを実施し、対応のあるt検定(paired t−test)により、試料適用の前後および週差別の試験試料/対照試料間の有意性可否を仮説平均差5%(P<0.05)で確認した。統計分析プログラムは、IBM SPSS version18.0を用いた。
【0172】
その結果を下記表3および表4に示した。
【0175】
表3、表4に示されているように、本発明のオートファジー活性化によるメラノソーム分解誘導化合物とエンドサイトーシスの抑制によるメラノソーム流入抑制誘導化合物を含む化粧料組成物を使用したグループにおいてメラニン色素沈着および肌の明るさの変化が改善したことを確認することができた。また、メラニン色素沈着および肌の明るさの変化の改善率は、使用時間が経過するにつれて、より向上した効果を発現することを確認できた。
【0176】
以上、本発明は、特定された事項と限定された実施例により説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、かかる記載から様々な修正および変形が可能である。
【0177】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定まってはならず、後述する特許請求範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等または等価的な変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属するといえる。