(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の清掃具について添付の図面に基づき詳細に説明する。
本発明の清掃具は、基本的には、
図1に示すように、基布(1)およびその表面から立ち上がるモノフィラメント立毛(2)からなる立毛布帛の立毛層に捲縮繊維からなる嵩高不織布(3)が充填された構造を有しており、該立毛(2)は該嵩高不織布(3)内を貫通して該不織布の表面に該立毛の先端部が露出あるいは容易に露出する状態となっている。そして基布(1)の裏面側には、接着剤層(4)を介して支持体(5)が一体化されていてもよい。
【0019】
基布は、織物、編物、不織布のいずれの布帛でも良いが、手荒く扱われても形態が崩れにくいことから織物が好ましい。織物の場合、該基布を構成している経糸と立毛が、ともにポリエステル系樹脂から形成されている糸であり、かつ緯糸が芯鞘型の熱融着性ポリエステル系繊維を含み、さらに立毛が、該基布を構成する該熱融着性繊維により溶融固定されているのが濡れた場合の耐へたり性、すなわち形態保持性の点で好ましい。
【0020】
立毛には、剛直性および形状保持性が求められ、そのために合成繊維製のモノフィラメントが用いられる。そして本発明では、濡れても性能が殆ど変わらない、すなわち耐水性に優れていることからこのモノフィラメントとして、ポリエステル系、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート系またはポリブチレンテレフタレート系、中でもポリブチレンテレフタレート系ポリエステルから構成されるモノフィラメントが用いられる。
【0021】
立毛を構成するモノフィラメントとしては、直径0.10〜0.25mmのモノフィラメントが好ましく、より好ましくは直径0.15〜0.20mmのモノフィラメントである。直径0.10mm以上とすることで、汚れの掻き取り効果が高くかつ耐へたり性が向上し、0.25mm以下とすることで、引っ掻き傷を与え難い。
【0022】
なお、立毛の断面形状は円形である必要はなく、楕円、扁平、多葉、多角形等の異形断面であっても、中空断面であってもよい。ここでいう直径とは断面積相当円に換算した場合の直径を意味している。
【0023】
立毛を形成する方法としては、モノフィラメントからなるループを基布上に形成し、そしてループ先端部に切れ目を入れて、ループを2本の立毛とする方法が好ましい。なお、ループ先端部に切れ目を入れるに先立って、織物を加熱して、前記芯鞘型断面繊維の鞘成分を溶融させて溶融樹脂により基布の形状を固定するとともに、ループの形状を熱固定する方法を用いるのが好ましい。このような方法を用いることにより、先端部を切断した立毛が、隣接した立毛2本が対となり、湾曲した先端部が互いに近づくような湾曲形状を有している構造となり、不織布の把持性と汚れの掻き取り性が向上する。
【0024】
そして、立毛の高さとしては2〜5mmが、不織布層を十分に充填でき、かつ汚れ掻き取り効果が高いことから好ましい。ここでいう立毛の高さとは、基布表面から立毛先端部までの高さであり、任意に選び出した立毛10本の平均値である。より好ましくは、立毛高さ2〜4.5mmである。
【0025】
そして、立毛の先端部は、
図2に示すように立毛(2)の先端部が押し潰されて、例えば略楕円形状となり、切断面の中央部が尾根状に高くなっている(2−2)形状を有しているのが好ましく、この尾根状の尖った部分が汚れを剥ぎ取る効果を高めている。切断面を、このような断面形状にするためには、ループの先端部をバリカン等で両側から圧縮してカットすることにより容易に得られる。もちろん、切断面の全てがこのような尾根状の断面形状を有している必要はないが、その多くがこのような形状を有しているのが好ましい。
【0026】
立毛の先端部は、基布から遠ざかる方向に向いた状態で、モノフィラメントを切断した状態のままであるのが好ましい。従来の面ファスナーの雄材のように、フック状となって基布面に近づいている場合や、先端部を加熱溶融させてキノコ状の膨頭部となっている場合には、剥ぎ取り効果は不十分となる。
【0027】
本発明において立毛の密度としては、5〜50本/cm
2が不織布への挿入し易さや汚れの掻き取り効果、耐へたり性等の点で好ましい。特に好ましくは10〜40本/cm
2の範囲である。そして、立毛用モノフィラメントを経糸12本に1本の割合で経糸に平行に基布に織り込むのが好ましい。
【0028】
さらに、本発明において、立毛を倒れにくくするためには、経糸3本以上を跨いで立毛用ループが形成され、特に好ましくは経糸を6本以上跨いでループを形成している構造を有する場合である。跨ぐ本数に上限は特に限定しないが、製造上10本以下が好ましい。このように、経糸を多く跨ぐことによりループの足元が広がり、ループの先端部を連続的に切断することが容易となる。
【0029】
また、経糸としてはポリエチレンテレフタレート製のマルチフィラメント糸、緯糸として、前記したように芯鞘型で鞘成分が低融点のポリエステル、芯成分が高融点のポリエステル、例えば、融点を下げるために共重合成分により変性した共重合ポリエチレンテレフタレートで、芯成分が実質的に共重合していないポリエチレンテレフタレートホモポリマーからなるポリエステル系芯鞘型繊維からなるマルチフィラメント糸が用いられる。
【0030】
経糸および緯糸としては、ポリエステル系樹脂から製造された太さ100〜400dtex/10〜96フィラメントのマルチフィラメント糸が好適に用いられる。織密度としては経糸が50〜60本/cm、緯糸が10〜25本/cmが好ましい。織組織としては平織が一般的である。そして、基布の目付けとしては200〜300g/cm
2が好ましい。
【0031】
前記した芯鞘型熱融着性繊維により織物構成繊維を固定する場合には、経糸、緯糸および立毛用モノフィラメントのいずれもが、同種のポリマーから構成されているのが接着力により立毛用モノフィラメントの倒れや基布のへたり等を防ぐ上で好ましく、具体的には、ポリエステル系のポリマーから構成されているのが好ましい。
【0032】
そして、本発明の清掃具を構成する基布や立毛には、雑菌が繁殖しにくくするために抗菌剤を付与することも可能であり、さらに基布を構成する繊維や立毛モノフィラメントに抗菌剤を練り込むことも可能である。
【0033】
次に、本発明を構成するもう一方の素材の嵩高不織布(3)について説明する。
不織布は嵩高で特定の範囲の密度であることが立毛を貫通させる上で好ましく、そのためには、従来の一般的な不織布のように高密度となるようにニードルパンチを両面から多数打ち、不織布構成繊維を不織布厚さ方向に配向させて組織を緻密化したものは、本発明には使用し難い。
【0034】
具体的には、不織布の密度を0.02〜0.11g/cm
3の範囲に抑えた不織布が用いられる。より好ましくは0.03〜0.08g/cm
3の範囲である。そして、不織布を構成する繊維を不織布の面方向に配向させ、不織布の厚さ方向には実質的に配向させないのが好ましい。そのためには、繊維ウエッブを厚さ方向に交絡させるのではなく、加熱処理して構成繊維の立体捲縮を発現させることが好ましく、発現した立体捲縮好ましくはコイル状の捲縮により不織布面方向の交絡を発現させて形状を保っているものである。不織布面方向にコイル捲縮繊維が配向していることにより、立毛がコイル間に挟まり、不織布が立毛から容易に抜け難いこととなる。
【0035】
より具体的には、加熱により立体捲縮を発現することとなるステープル繊維からまずカード法により得られるウエッブを、次の工程で加熱して立体捲縮を発現させる方法を用いる。後に行う加熱捲縮発現処理において繊維が飛散することを防止する目的で繊維ウエッブのごく一部の繊維を軽度に絡合させてもよい。具体的には、立体捲縮が発現しない程度の低温でかつ低圧力の水を噴射させて繊維ウエッブを濡れた状態とし、そして次の工程で加熱して立体捲縮を発現させる方法を用いる。
【0036】
低温低圧力水の噴射として、ウエッブ全体が濡れる程度の低圧力で、水温が10〜40℃程度の水を用いるのが好ましい。この処理は、水流絡合不織布で行われているような、高圧水流により繊維を強固に厚さ方向に交絡させてウエッブ強度を飛躍的に高める処理方法とは異なり、単に繊維が湿潤により飛散することを抑える程度の軽い処理である。
【0037】
そして、その次に行う加熱捲縮発現処理としては、乾熱処理であってもよいが、不織布内部まで捲縮が均一に発現させ難いことから高温水蒸気で処理する方法が好ましい。高温水蒸気で処理する方法としては、具体的には、低温の水で処理された繊維ウエッブを、コンベアベルトで高温水蒸気処理に供する方法を用いる。繊維ウエッブは高温水蒸気処理により大きく収縮する。したがって、供給する繊維ウエッブをオーバーフィードさせて高温水蒸気処理するのが好ましい。オーバーフィードの割合としては目的とする不織布の長さに対して110〜250%が好ましい。
【0038】
高温水蒸気による加熱処理を行うと、加熱水蒸気は繊維ウエッブの内部まで浸透して、表面から裏面に至るまで均一にコイル状の立体捲縮が発現する。一方、乾熱処理の場合には、繊維ウエッブの表面のみが集中的に加熱されて捲縮を発現し、一方繊維ウエッブの内部や裏面側は十分に捲縮が発現しないという問題点を有している。
【0039】
高温水蒸気噴射は、供給される繊維ウエッブの幅方向にピッチ1〜2.5mm間隔で並べた直径0.2〜0.5mmのオリフィスから高温水蒸気を噴射する。高温水蒸気の圧力としては、0.2〜1.5MPaの圧力で温度80〜120℃が好ましい。
【0040】
捲縮発現繊維としては、熱収縮率の異なるポリエステル系樹脂をサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の断面形状を有する複合繊維が好適例として挙げられる。もちろん、このような複合繊維と他の繊維とのブレンドでもよい。収縮率の異なるポリエステル系樹脂の組み合わせとして、一方の樹脂をポリエチレンテレフタレートホモポリマー、もう一方の樹脂をイソフタル酸、スルホイソフタル酸ソーダやジエチレングリコール、ブタンジオール等を共重合したポリエチレンテレフタレートとした組み合わせが好適例として挙げられる。
【0041】
このような複合繊維の平均繊度としては、1〜5dtex、特に1.5〜4dtexが好ましい。細すぎると綺麗な立体捲縮を発現させるのが難しく、太すぎると繊維が剛直となり、これまた綺麗な立体捲縮を発現させることが難しい。さらに複合繊維の平均繊維長としては20〜70mm、特に30〜60mmが好ましい。繊維が短すぎると繊維同士の交絡が不十分となり、強度や伸縮性を得ることが難しく、逆に繊維が長すぎる場合には、均一の目付の繊維ウエッブを形成することが難しく、かつ捲縮を発現させる際に繊維同士が邪魔し合って綺麗なコイル状の立体捲縮(以下、コイル捲縮と称することもある。)の発現が妨げられる。
【0042】
繊維をウエッブ化するためには、繊維は5〜15個/25mm程度の捲縮を有していることは必要であるが、本発明では、このようなレベルの捲縮では、低密度で耐へたり性に優れた嵩高不織布は得られず、したがって本発明の用途である清掃具には不十分である。よって、加熱により25〜120個/25mm程度のコイル捲縮を発現させるのが好ましく、25〜50個/25mm程度がより好ましい。
【0043】
発現するコイル捲縮の円の平均曲率半径としては50〜200μmが好ましく、コイルの平均ピッチとしては0.03〜0.3mmが好ましい。そして、このようなコイル捲縮が、不織布を貫通する立毛を抜け難くする。すなわち立毛がコイルの螺旋に挟まれて抜け難くするとともに、不織布がへたることを防止する。そして不織布面方向に平行にコイルが存在することにより、不織布の圧縮に対して抵抗して、いつまでも嵩高性を保つこととなる。
【0044】
得られた不織布の厚さとしては、立毛高さの60〜110%が好ましく、具体的には厚さ1.2〜5.5mm、特に2.5〜4.5mmが好ましい。不織布1枚では、充分な厚さを得ることができない場合には、複数枚の不織布を重ねて、上記厚さとすることも可能である。ただ、重ねて使用する場合には、上部の不織布が剥がれ易く、使い難い場合があることから、好ましくは1枚の不織布で上記の厚みを有している場合である。
【0045】
なお、不織布の厚さと密度は、JIS L1913「一般短繊維不織布試験法(A法)」に準じて厚さを測定し、この値と同JIS L1913「一般短繊維不織布試験法」に従って測定した目付から密度を測定した。
【0046】
このようにして得られた不織布には、雑菌が繁殖しにくくするために抗菌剤を付与することも可能であり、さらに不織布を構成する繊維に抗菌剤を練り込むことも可能である。
【0047】
以上の方法で得られた立毛を有する布帛の立毛面に、上記の嵩高不織布を重ね合わせて軽く押さえると、立毛が不織布層を貫通し、立毛層に不織布が充填されることとなる。不織布を構成している捲縮繊維がコイル捲縮しており、しかも不織布面に平行にコイル捲縮繊維が配向していることにより、立毛がコイル間に挟まり、不織布が立毛から容易に抜け難いこととなる。したがって、清掃具として、使用しても、いつまでも不織布層は厚みを保持して、へたることが長期にわたり阻止することができる。
【0048】
このようにして得られた清掃具において、立毛は、該嵩高不織布内を貫通して該不織布の表面に該立毛の先端部が露出あるいは容易に露出する状態となっていることが必要であり、立毛が不織布層の半ばで止まっている場合や不織布裏面に留まっている場合には、充分な汚れ掻き取り効果が得られない。このような、嵩高不織布内を貫通して該不織布の表面に該立毛の先端部が露出あるいは容易に露出する状態は、前記したような立毛の状態により、さらに前記した嵩高不織布の状態を満足していることにより、容易に達成される。
【0049】
本発明の清掃具には、
図1に示すように基布(1)の裏面に支持体(5)を接着剤(4)を介して取り付けることができる。例えば、家庭用に使用する清掃具として、支持体(5)に把持棒を取り付けることができる。さらに、電動の洗浄具として、立毛布帛の基布裏面に面ファスナーを取り付け、もう一方の面ファスナーを取り付けた支持盤に両方の面ファスナーを係合させることにより固定して使用することもできる。
【0050】
清掃具に洗剤や薬剤を含む水を含ませて、洗浄対象物の表面を本発明の洗浄具で擦ることによりなされ、掻き落とされた汚れは不織布により保持され、洗浄対象物表面から取り除かれる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により説明する。
実施例1
[立毛布帛の製造]
次の経糸、緯糸、立毛用モノフィラメントを用い、以下の製造方法により立毛布帛を製造した。
[経糸]167dtex/48フィラメントからなるポリエチレンテレフタレート製マルチフィラメント糸
[緯糸]鞘成分がイソフタル酸20モル%共重合ポリエチレンテレフタレートで芯成分がポリエチレンテレフタレートホモポリマーである芯鞘型複合断面の198dtex/96フィラメントのマルチフィラメント糸
[立毛用モノフィラメント]320dtex(直径0.17mm)のポリブチレンテレフタレートからなるモノフィラメント
【0052】
[製造方法]
経糸密度:140本/インチ
緯糸密度:48本/インチ
立毛用モノフィラメントは経糸12本に1本の割合となるように経糸と平行に打込んだ。
織組織:平織
【0053】
立毛用モノフィラメントの織込方法:立毛用モノフィラメントは、緯糸5本の下と上を交互に沈み浮きしたのち基布の表面にループとして突出し、経糸6本および緯糸1本を飛ばしてループのもう一方の脚部が基布内に沈み、その状態で経糸と平行に緯糸5本の下と上を交互に沈み浮きしたのち、基布の表面に再度ループとして突出し、経糸6本および緯糸1本を飛ばして元の経糸間に戻ることを繰り返す。
【0054】
上記の方法で得られたループ布帛を温度190℃で1分間熱処理し、ついで立毛用モノフィラメントが形成しているループの先端部中央をバリカンで押し潰すようにカットして立毛布帛を作製した。立毛用モノフィラメントは緯糸の収縮と融着により基布に充分に固定されている。その結果、隣接した立毛2本(すなわちひとつのループの先端部をカットすることにより
図1に示すように、生じた2本の立毛)が対となり、湾曲した先端部が互いに近づくような湾曲形状を有していた。立毛先端部を拡大して観察したところ、
図2に示すように、ほとんどの立毛の先端部が押し潰されて、略楕円でかつ切断面の中央部が尾根状に高くなっている形状を有していた。
立毛密度:30個/cm
2
立毛の高さ:2mm
【0055】
[嵩高不織布の製造]
潜在捲縮性繊維として、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂(A成分)と、イソフタル酸20モル%及びジエチレングリコール5モル%を共重合した変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B成分)とで構成されたサイドバイサイド型複合ステープル繊維((株)クラレ社製「PN-780」1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分間熱処理後におけるコイル捲縮数62個/25mm)を準備した。
【0056】
このサイドバイサイド型複合ステープル繊維を100質量%用いて、パラレルカードにより35.3g/m
2のカードウエッブとした。
【0057】
ついで、このカードウエッブをベルトコンベアにより移送しながら少量の水によりウエッブを濡らし軽く絡合した後、水蒸気噴射装置へウエッブを導入し、この水蒸気噴射装置から0.5MPaの水蒸気をウエッブに対して垂直に噴出して水蒸気処理を施して、潜在捲縮繊維のコイル状の立体捲縮を発現させた。
【0058】
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、このノズルがコンベア幅方向に沿って2mmピッチで1列に並べられた装置を使用した。水蒸気処理を行う際のオーバーフィードは約210%に設定し、加工速度は10m/分で行った。
【0059】
得られた不織布は、目付75.5g/m
2、厚さが1.21mm、密度が0.06g/cm
3であった。この不織布は嵩高でクッション性を有していた。
【0060】
得られた不織布の表面を電子顕微鏡(100倍)で撮影した。さらに、厚さ方向の断面を電子顕微鏡(100倍)で撮影した。その結果、得られた不織布は、各繊維が、厚さ方向において均一に略コイル状に捲縮(コイル捲縮数29個/25mmコイルの平均ピッチ126μm)するとともに、不織布の面方向に対して略平行にコイルを発現しつつ配向していることが観察できた。
【0061】
上記の方法で得られた立毛を有する布帛の立毛面に、上記の嵩高不織布を重ね合わせ、軽く押さえ付けた。その結果、立毛は、不織布層を貫通し、その先端部が不織布表面にわずかに露出していた。なお、立毛を有する布帛の裏面側には、
図1に示すようにプラスチック製の支持部を貼り付け、支持部の端部には手で持てるように把持棒を取り付けて、清掃具を完成させた。
【0062】
このような清掃具に、台所用洗剤を含有させた温水を含ませ、台所流しのシンク内のぬめりを有する箇所を軽く擦ったところ、ぬめりは簡単に落ち、鮮やかなシンクの金属色が蘇った。また、同様に、洗剤水を含ませた同清掃具を用いて、ガスコンロの裏面のタイル面を擦って、付着した汚れを除去したところ、汚れは軽く擦るだけで完全に取り除くことができた。
【0063】
さらに台所の壁面の塩ビ製壁紙面を軽く擦ったところ、長年にわたり付着した汚れや塩ビ可塑剤の浮き出しにより付着した汚れが、極めて簡単に除去することができた。さらに、洗剤水を含ませた状態で同清掃具を用いて、アルミサッシの溝部に付着した汚れとカビを除去するために擦ったところ、簡単に除去できるとともに除去した汚れやカビも不織布で吸着除去できた。しかも、いずれの場合も、シンク面やタイル面、壁紙やアルミサッシを傷付けることは全くなかった。
また作業中に、不織布が立毛布帛から剥がれることもなく、さらに使用後においても不織布は最初の厚みと腰を有しており、へたっている感じは全くなかった。さらに、不織布を剥がして立毛布帛の状態を観察した結果、見た目には、使用前と変わりなかった。
【0064】
実施例2
上記実施例1において、立毛モノフィラメントを360dtex(直径0.18mm)のポリブチレンテレフタレートからなるモノフィラメント糸に置き換え、立毛高さを3.4mmに変更した。
さらに使用する不織布は、上記実施例1において潜在捲縮繊維として用いたサイドバイサイド型複合ステープル繊維((株)クラレ社製「PN-780」1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分間熱処理後における捲縮数62個/25mm)と、湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン‐ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量44モル%、鹸化度98.4モル%)である芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ社製、「ソフィスタ」、3.3dtex×51mm長)を準備した。サイドバイサイド型複合ステープル繊維/湿熱接着性繊維=70/30の割合(質量比)で概均一に混綿し、パラレルカードにより106.1g/m
2のカードウエッブとした。
ついで、絡合処理無で水蒸気噴射装置へウエッブを導入し、この水蒸気噴射装置から0.5MPaの水蒸気をウエッブに対して垂直に噴出して水蒸気処理を施して、潜在捲縮繊維のコイル状捲縮(コイル捲縮数28個/25mmコイルの平均ピッチ131μm)を発現させるとともに、湿熱接着性繊維による繊維間の接着点を形成した。
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、このノズルがコンベア幅方向に沿って2mmピッチで1列に並べられた装置を使用した。水蒸気処理を行う際のオーバーフィードは約110%に設定し、加工速度は10m/分で行った。
得られた不織布は、目付122g/m
2、厚さが3.75mm、密度が0.03g/cm
3であった。この不織布は嵩高でクッション性を有していた。
【0065】
上記不織布を実施例1と同様にして清掃具を作製した。
得られた清掃具を用いて、上記実施例1と同様に、台所壁紙の清掃に使用したところ、実施例1のものと同様に、極めて、清掃力に優れたものであり、さらに清掃中に不織布が立毛から剥がれることもなく、また清掃具として使用することにより不織布がへたることもなく、また立毛布帛も立毛が曲がったりすることもなかった。
【0066】
実施例3
上記実施例1において、立毛モノフィラメントを360dtex(直径0.18mm)のポリブチレンテレフタレートからなるモノフィラメント糸に置き換え、立毛高さを3.4mmに変更した。
上記実施例1で作製した立体捲縮不織布を2枚重ねとする以外は全く同一にして、実施例1と同様に清掃具を作製した。
得られた清掃具を用いて、上記実施例1と同様に、台所壁紙の清掃に使用したところ、実施例1のものと同様に、極めて、清掃力に優れたものであり、さらに清掃中に、2枚の不織布のうちの上部に位置する不織布が、立毛から剥がれることもなく、また清掃具として使用することにより不織布がへたることもなく、また立毛布帛も立毛が曲がったりすることもなかった。
【0067】
比較例1
実施例1と同様に、サイドバイサイド型複合ステープル繊維((株)クラレ社製「PN−780」1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分間熱処理後における捲縮数62個/25mm)を準備した。
このサイドバイサイド型複合ステープル繊維を100質量%用いて、セミランダムカードにより75.0g/m
2のカードウエッブとした。
ついで、このカードウエッブをベルトコンベアにより移送しながら少量の水によりウエッブを濡らし軽く絡合した後、直径0.1mmのオリフィスがウエッブの幅方向に0.6mm間隔で一列に設けられたノズルを表裏2段ずつ用いて、ノズルから水を噴射し繊維を交絡させた。水圧は、前段のノズル列では表と裏の両面共に4MPaで噴射し、後段のノズル列では表と裏の両面共に7MPaで噴射した。
その後、水蒸気噴射装置へウエッブを導入し、この水蒸気噴射装置から0.5MPaの水蒸気をウエッブに対して垂直に噴出して水蒸気処理を施して、潜在捲縮繊維のコイル状捲縮を発現させた。なお、潜在捲縮繊維は高絡合構造となりコイル捲縮数とコイルの平均ピッチの計測ができなかった。
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、このノズルがコンベア幅方向に沿って2mmピッチで1列に並べられた装置を使用した。水蒸気処理を行う際のオーバーフィードは行わずに、加工速度は10m/分で行った。
得られた不織布は、目付75.0g/m
2、厚さが0.46mm、密度が0.16g/cm
3で不織布構成繊維が不織布厚さ方向に配向していた。
この不織布を上記実施例2に使用した立毛布帛に重ね合わせて、立毛が不織布を貫通するように押さえつけたところ、不織布を構成する繊維の絡合により立毛はほとんど貫通することができず、立毛の先端が露出するには程遠く、いずれも不織布裏面で曲がり、立毛布帛に不織布を重ね合わせて一体化することができなかった。
【0068】
比較例2
実施例1と同様に、サイドバイサイド型複合ステープル繊維((株)クラレ社製「PN−780」1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分間熱処理後における捲縮数62個/25mm)を準備した。
このサイドバイサイド型複合ステープル繊維を100質量%用いて、パラレルカードのクロスウエッブにより250g/m
2のウエッブとし、既知のニードルパンチ法によりウエッブ両面から絡合させた。潜在捲縮繊維は高絡合構造となりコイル捲縮数とコイルの平均ピッチの計測ができなかった。
得られた不織布は、目付250g/m
2、厚さが2.1mm、密度が0.12g/cm
3で不織布構成繊維が不織布厚さ方向に配向していた。
この不織布を上記実施例2に使用した立毛布帛に重ね合わせて、立毛が不織布を貫通するように押さえつけたところ、不織布を構成する繊維の絡合により立毛はほとんど貫通することができず、立毛の先端が露出するには程遠く、いずれも不織布裏面で曲がり、立毛布帛に不織布を重ね合わせて一体化することができなかった。
【0069】
比較例3
前記実施例1において、得られた嵩高不織布を立毛布帛に重ね合わせることなく、単独で実施例1と同様に洗浄剤含有温水を含浸させて清掃具としてアルミサッシの清掃に使用したところ、溝の隅の奥まで嵩高不織布が到達できず、従来の雑巾を使用した清掃とほとんど大差なく、しかも、窓5枚の清掃により不織布はへたりを生じ嵩高性は低くなった。
【0070】
【表1】