(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触させる工程の前記シリコーンゴム膜への前記コラーゲンの接触が、コラーゲン含有液の噴霧であり、前記積層膜の前記コラーゲンの層の厚みが10μm以下である請求項1に記載の細胞培養プレートの製造方法。
【背景技術】
【0002】
細胞等の試験研究等のために、種々の培養法が開発され実用化されている。細胞の培養法として、多数のくぼみ(ウェル)が設けられたウェルプレートやマイクロプレートなどと呼ばれる細胞培養用のプレートが用いられている。この細胞培養用のプレートは、主にポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂等のプラスチック製のプレートが広く利用されている。
【0003】
一方、プラスチック製のプレートは、そのままでは培養できる細胞に限りがあり、より、生体を構成する細胞等を培養しやすい培養方法が提案されている。特に細胞塊形成等を目的とする細胞培養用の器具等が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、細胞、典型的には哺乳動物細胞の成長のための生存細胞培養プラスチック用品の設定及び使用のために適合された、高分子化した高内相エマルジョンポリマー(poly HIPE)を含む細胞培養基材、及びその基材の細胞増殖、分化及び機能の分析のための細胞培養システムを開示しようとするものであり、複数のマイクロセルラー高分子材料を含む細胞培養基材であって、前記マイクロセルラー高分子材料の細孔容積が88%から92%である基材等を開示するものである。
【0005】
また、特許文献2は、培養細胞が伸展、増殖し、更に細胞凝集塊へと組成形成を促進すると共に機能発現し、且つ、抗血栓性にも優れた細胞培養膜(シート)及びそれを利用した3次元培養用ディッシュや培養プレートを開示しようとするものであり、多孔性のシート状物に、ポリアミノ酸ウレタン共重合体とコラーゲンをコーティングしてなる細胞培養用シート等を開示するものである。
【0006】
また、特許文献3は、細胞等の接着と増殖を生体内と同じような条件で手軽に行うことができるものを提供しようとするものであり、ウェルプレートのウェルの底壁が、細胞親和性物質をコーティングしてなる多孔質膜と酸素透過性膜の複合膜で、多孔質膜の側をウェルの内側にして構成されている3次元細胞培養プレート等を開示するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3に開示されているように、従来のプラスチックプレートを改良し、コラーゲンを併用することで、細胞接着性を向上させた培養プレート等が提供されてきた。これらの培養プレートは、細胞塊を形成する細胞の培養に利用すると、細胞培養開始後、速やかに細胞塊を形成することがわかってきている。
【0009】
一方で、従来、培養され集合体となっている細胞塊のような細胞全体としての状態や物性等を観察評価していたが、近年では、細胞観察技術や解析技術が進歩し、個別の細胞の構造や、その機能・物性等の解析が可能となっている。例えば、ハイコンテントアナリシス(High Content Analysis:HCA)と呼ばれる、個別の細胞の形状や細胞内の蛍光シグナル等の複数のパラメータについて、必要に応じて経時的に検出し、数値化するなどの詳細な解析を行う技術が実用化され始めている。
【0010】
このハイコンテントアナリシス等の解析技術は、個別の細胞の解析を可能とするため、培養される対象となる細胞も細胞塊を形成せず、個別の細胞が分離されていることが好ましい。しかしながら、一部前述したような、従来の培養プレート等は、このようなハイコンテントアナリシスに適さないものであった。
【0011】
まず、典型的な培養プレートであるプラスチックプレートのみの場合、生体適合性が低く、十分に細胞が培養されなかったり、培養液を必須としてその液中で細胞が移動しやすいため、観察位置の特定が不安定となるようにプレートへの細胞接着性が不足したり、培養される細胞の形態として延伸と呼ばれるような細胞間が不明瞭なまま拡散するように広がるものであった。また、特許文献1〜3等に例示される改良された培養プレートは、従来の観察対象であった集合体としての細胞塊を形成してしまうことから個別の細胞としての解析は困難であった。
【0012】
係る状況下、本発明は、細胞塊の形成を抑制し、個別の細胞を培養可能であり細胞接着性を有する培養プレート、またのその製造方法ならびに細胞培養方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> シリコーンゴム膜の表層の濡れ性を接触角50度以下となるように表層処理する工程と、その後、シリコーンゴム膜にコラーゲンを接触させる工程とを有し、前記接触させる工程により、前記シリコーンゴム膜上に前記コラーゲンの層を設けた積層膜を有する細胞培養プレートの製造方法。
<2> 前記表層処理が、シリコーンゴム膜の表層に、100〜300nmの紫外線を照射することによる表層処理である前記<1>記載の細胞培養プレートの製造方法。
<3> 前記シリコーンゴム膜の厚みが、1mm以下である前記<1>または<2>記載の細胞培養プレートの製造方法。
<4> 前記接触させる工程の前記シリコーンゴム膜への前記コラーゲンの接触が、コラーゲン含有液の噴霧であり、前記積層膜の前記コラーゲンの層の厚みが10μm以下である前記<1>〜<3>のいずれかに記載の細胞培養プレートの製造方法。
<5> 前記<1>〜<4>のいずれかに記載の細胞培養プレートの製造方法により製造された細胞培養プレートを用いて、細胞塊形成性細胞を培養する細胞培養方法。
<6> シリコーンゴム膜と、前記シリコーンゴム膜の少なくとも一方の面に設けられた厚さ10μm以下のコラーゲン層とからなる積層膜を有し、前記コラーゲン層が前記シリコーンゴム膜に密着することで前記コラーゲン層が水洗試験後も残存する細胞培養プレート。
<7> 前記積層膜を、底部として有するウェル形状の前記<6>記載の細胞培養プレート。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、個別の細胞を培養可能であり細胞接着性を有する細胞培養プレートおよびその製造方法、ならびに細胞培養方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0018】
本発明の細胞培養プレートの製造方法は、シリコーンゴム膜の表層の濡れ性を接触角50度以下となるように表層処理する工程と、その後、シリコーンゴム膜にコラーゲンを接触させる工程とを有し、前記接触させる工程により、前記シリコーンゴム膜上に前記コラーゲンの層を設けた積層膜を有する細胞培養プレートの製造方法に関する。以下、本願において、この製造方法を「本発明の細胞培養プレートの製造方法」、またこれにより製造される細胞培養プレートを「本発明の細胞培養プレート」と略記する場合がある。
【0019】
この細胞培養プレートの製造方法により製造される細胞培養プレートは、個別の細胞を培養可能であり細胞接着性を有する。これは、詳細な原理は明確ではないが、次のような要素が関連するものと考えられる。まず、シリコーンゴム膜により酸素透過性が担保されることで、その膜上に植えた細胞に適切な酸素が供給され細胞が長期間生育できること。また、シリコーンゴム膜と本来接着性が低いコラーゲンが、表層処理により適度な密着性で積層され、このコラーゲン層に細胞接着性が維持されること。そして、実質的にコラーゲン層とシリコーンゴム膜とからなる積層膜は、細胞塊を形成する足場とするには不足する一方で、個別細胞が分離するのに適していることである。
【0020】
[細胞培養プレート]
本発明は、細胞培養プレートを提供するものである。ここで、本発明に係る細胞培養プレートとは、前記した積層膜を有するものであり、細胞培養試験等に適した任意の形状とできる。本発明の細胞培養プレートに適した、典型的な形状としては、マルチウェルプレート(ディッシュ)と呼ばれるウェルを有する培養プレートがあげられる。マルチウェルプレートは、例えば6、12、48、96、384、および1536ウェル(well)形式に、実質的に標準化や規格化されているようなマルチウェル(ミクロ)プレートがある。これらは、自動装填及びロボット処理システムに適合しており、本発明がハイコンテントアナリシス等の機械的分析にも適したものであることからも、本発明の細胞培養プレートとして適した形状である。
【0021】
[シリコーンゴム膜]
本発明の細胞培養プレート、およびその製造方法は、シリコーンゴム膜を用いる。シリコーンゴム膜を用いることで、細胞培養プレートに適した酸素や二酸化炭素等の気体透過性を有し、培養対象となる生体細胞等の細胞が長期間安定して培養(生育)する。また、シリコーンゴム膜は、細胞培養プレートの一部(特に底面)としての貼り付けや形状調整等の利用しやすさや、生体に対する毒性が低く生体適合性も優れている点でも適している。
【0022】
このシリコーンゴム膜を得るにあたっては、まず、生ゴム状の高重合度ジメチルポリシロキサンと補強材として微粉末シリカとを基本成分として、各種添加剤を配合してシリコーンゴムコンパウンドが得られる。そして、このコンパウンドに有機過酸化物や触媒などの加硫剤を使用時に添加して加熱硬化して得られるシリコーンゴムを膜状の成形したものがシリコーンゴム膜となる。
【0023】
このシリコーンゴム膜の成形工程では、原料等に由来して加硫工程等を行った後も低分子シロキサンが含有される場合がある。この低分子シロキサンは、生体細胞に毒性を示す場合があるため、本発明の細胞培養プレートには、このような低分子シロキサンが可能な限り低減されたものを用いることが好ましい。低分子シロキサンの除去には、加熱による揮発等が一般的に行われる。さらに、本願発明においては、シリコーンゴム膜に含まれる低分子シロキサンをより低減するために、減圧下での処理も行うことが好ましく、この減圧下の環境は真空相当であることが好ましい。この処理は、併用して、減圧下(真空状態)で加熱処理(例えば80℃程度)することが好ましく、その処理時間は、1時間以上、好ましくは10時間以上、より好ましくは1日以上とすることが特に好ましい。その処理時間は、長くするほど低分子シロキサンを低減できるため上限を定めないでもよいが、その効果は一定以上の時間で飽和する場合がある。よって、その上限は10日以下や、7日程度としてもよい。
【0024】
本発明の細胞培養プレートの製造方法等に用いられるシリコーンゴム膜は、細胞培養プレート全体の形状や、具体的な培養対象、シリコーンゴムの詳細な構造等によって、適宜、その層の厚み等が設計される。このシリコーンゴム膜の厚みの上限は、1mm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5mm(500μm)以下である。シリコーンゴム膜の厚みが1mmを超えて厚くなりすぎると、酸素透過性が低下して細胞培養に適さない場合がある。また、厚みが厚いほど相対的な剛性が高くなりすぎて、細胞培養プレートとしての成形性が低下する場合がある。一方、シリコーンゴム膜の厚みの下限は、50μm以上であることが好ましく、より好ましくは100μm以上である。シリコーンゴム膜が薄すぎると、細胞培養プレートの一部としての靭性等の機械特性が不足する場合がある。
【0025】
[シリコーンゴム膜の濡れ性]
本発明の細胞培養プレートの製造方法においては、前記したシリコーンゴム膜の表層の濡れ性を接触角50度以下となるように処理する。一般に、シリコーンゴム膜の表層の濡れ性は、接触角が90度程度であり、水等を弾き濡れ性が低い。これに、詳しくは後述する紫外線照射等の手段で、その表面を活性化して濡れ性を向上させることができる。この状態で、コラーゲンを接触させることで、シリコーンゴム膜に実質的に直接コラーゲンが積層されたものを得ることができる。
【0026】
ここで、シリコーンゴム膜の濡れ性が低い(接触角が50度を超える)まま、コラーゲンを接触させても、そのコラーゲンはシリコーンゴム膜に十分に密着せず、容易に剥離する状態となる。これは、細胞培養等を行うときに培養対象の細胞培養液を添加したときに流失してしまったり、細胞培養プレートを非使用時に保管しているときに脱落してしまうものとなる。
【0027】
[濡れ性]
この濡れ性は、接触角度計により測定することができる。前記のシリコーンゴム膜の表層の濡れ性は、接触角50度以下であり、より好ましくは40度以下、更に好ましくは30度以下である。
【0028】
[表層処理]
一部前述したように、本発明の細胞培養プレートの製造方法は、シリコーンゴム膜の表層の濡れ性を接触角50度以下となるように表層処理する工程を有する。この表層処理は、シリコーンゴム膜の表層の特性として直接濡れ性が改善する手法を適宜採用することができる。この表層処理の工程は、シリコーンゴム膜の表層に、100〜300nmの紫外線の照射による表層処理であることが好ましい。特に好ましくは、150〜250nmの紫外線の照射による表層処理であることが好ましい。この紫外線の照射によると、シリコーンゴム膜の層としての物性等の低下が生じることなく、濡れ性のみを改善することができる。
【0029】
紫外線の照射による場合、その照射の程度は、前述したようなシリコーンゴム膜の濡れ性を指標とすることができる。このような濡れ性となる照射量は、シリコーンゴム膜の種類や、照射方式等にもよるが、照射強度50mW/cm
2程度で、20〜120秒とすることができる。このような条件は、本発明の細胞培養プレートの製造方法としても、その製造効率の向上に資するものである。なお、その照射強度、照射時間により、濡れ性との関連性をあらかじめ把握しておくことで、本発明の細胞培養プレートの製造方法では、濡れ性を想定値として把握することができることから、実用上は毎回濡れ性を評価する必要はなく、本発明は濡れ性が達成されながら製造することも含む概念である。
【0030】
[コラーゲン]
本発明の細胞培養プレートおよびその製造方法は、コラーゲンを用いる。このコラーゲンは、前記した所定の濡れ性のシリコーンゴム膜の表層に接触させて、シリコーンゴム膜の表層にコラーゲン層を形成す
るためのものである。このコラーゲン層を有することで、本発明の細胞培養プレートは、コラーゲン層へ、細胞が強く密着するため、その後の解析等を安定して行うことができる。
【0031】
本発明に用いるコラーゲンは、各種生物の構成タンパク質としてのコラーゲンを使用することができる。例えば、哺乳動物性コラーゲンや、海洋性コラーゲン(鮭由来など)、合成コラーゲン等を用いることができる。特に、細胞との接着性の観点から、哺乳動物性コラーゲンや、海洋性コラーゲンが好ましく用いられる。これらのコラーゲンは単独のものでものよく、適宜、組み合わせて用いてもよい。
【0032】
[コラーゲン接触]
本発明の細胞培養プレートの製造方法は、コラーゲンを接触させる工程を有する。シリコーンゴム膜と、コラーゲンとの接触は、任意の手法で行われるが、シリコーンゴム膜は、シートやフィルム状として形成されている状態であり、ここにコラーゲン層を設けるものとなる。例えば、この手法は、コラーゲンを含有するコラーゲン含有液を塗工等して、余分な溶媒等を乾燥等により除去する溶液塗工および溶媒の乾燥除去とする手法があげられる。このコラーゲン含有液(溶液)とするときの溶媒は、水やアルコール等のコラーゲンの分散性が優れており、溶媒除去後に微量程度残存しても、生体細胞の培養性にほとんど影響を与えないものが用いられる。この接触させる工程の前記シリコーンゴム膜への前記コラーゲンの接触は、コラーゲン含有液の噴霧であることが好ましい。これは、後述するように、コラーゲン層は比較的薄いものとすることが好ましく、このような厚みを達成しやすい手法であり、かつ、乾燥除去する溶媒の全量も少ないことから、製造効率もよい手法である。
【0033】
[コラーゲン層]
本発明の細胞培養プレートにおける積層膜のコラーゲンの層(コラーゲン層)の厚みは、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは、5μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下である。一方、その下限は、0.2μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることが特に好ましい。これは、コラーゲン層の厚みがこのような範囲となることで、より単独細胞の状態での培養と、その状態で長時間維持しやすいことが見出されたことに基づく厚みである。前述した噴霧法により、この厚みは達成することができる。なお、コラーゲン層の厚みは、コラーゲン層積層前後の、シリコーンゴム膜との厚みの差から求めてもよいし、積層膜の断面を顕微鏡等で観察した厚みから求めてもよい。簡易的には、シリコーンゴム膜への、コラーゲン含有液等の塗工量(噴霧量)と、そのコラーゲンの含有濃度とから、算定される厚みで求めてもよい。
【0034】
[積層膜]
本発明の細胞培養プレートの製造方法は、前記接触させる工程により、前記シリコーンゴム膜上に前記コラーゲンの層を設けた積層膜を有する細胞培養プレートを製造するものである。この積層膜は、細胞に直接接触するコラーゲン層が生体由来物質の組成であることと、シリコーンゴム膜が適度な酸素等の気体透過性を示すことから、生体内の環境に類似した環境を得ることができる点でも優れているものと考えられる。なお、この積層膜の内、コラーゲン層は、シリコーンゴム膜の全面に均一に設けられていてもよいし、ウェル等の形状とするときは、そのウェルの細胞培養部となる凹部(溝部)の底部でのみ均一なものとするように、部分的にコラーゲン層が設けられていてもよい。本発明による一実施形態としては、所定の紫外線照射による均一な表面処理と、また、その後のコラーゲン溶液を噴霧でコーティングすることで均一なコーティングができるところが、大きな特徴である。これにより、非常に薄い、コラーゲンの薄膜が酸素透過膜上に形成される。
【0035】
また、前述したような知見や本発明の態様から、本発明の細胞培養プレートは、シリコーンゴム膜と、前記シリコーンゴム膜の少なくとも一方の面に設けられた厚さ10μm以下のコラーゲン層とからなる積層膜を有し、前記コラーゲン層が前記シリコーンゴム膜に密着することで前記コラーゲン層が水洗試験後も残存する細胞培養プレートに関するものとすることができる。この細胞培養プレートは、本発明の細胞培養プレートの製造方法により製造される典型的な細胞培養プレートである。なお、この積層膜としたときの、シリコーンゴム膜と、コラーゲン層との接着性は、水洗試験により評価することができる。この水洗試験は、例えば、常温の水を張った容器内に、この積層膜が十分に浸漬するものとして、1時間程度静置して、その後、コラーゲン層をその容器内で下向きにして手で揺らしたあと乾燥するものとできる。この後、コラーゲン層の残存の有無を確認する。この残存は、均一なコラーゲン層として残存しているかによって、均一な場合、水洗試験後もコラーゲン層が残存していると判断される。
【0036】
[他の構成]
本発明の細胞培養プレートは、前述したシリコーンゴム膜とコラーゲン層とが所定の要件で積層された積層膜を有するものである。この積層膜は、例えば、細胞培養プレートをウェル形状とする場合、その底部に積層膜がコラーゲン層を溝の上側を向くように設けられる。
図1は、代表的なウェル形状の細胞培養プレートの底部に、本発明の積層膜を有する細胞培養プレートの略断面図である。この細胞培養プレートは、例えば、底が開口されているプラスチック製のウェル状体に、その底面に、本発明の細胞培養プレートに用いられる積層膜を貼りつけることで製造することができる。また、この細胞培養プレートは、EOG(エチレンオキサイド)滅菌等を行うことができ、適宜、滅菌処理等の処理を行って利用される。なお、
図2は参考としての一般的な従来の細胞培養プレートを示すものである。
【0037】
[細胞]
本発明の細胞培養プレートによれば、細胞塊を形成しやすい細胞(細胞塊形成性細胞)等を、長時間、分離された細胞の状態で、かつ、それらの細胞が所定の位置に接着し培養することができる。このような培養が求められる細胞は、各種生体細胞等が典型的なものである。具体的には、幹細胞や、腫瘍細胞、初代培養細胞(肝臓、腎臓、皮膚、骨など)などがあげられる。
【0038】
以上、前述した本発明の細胞培養プレートは、その細胞培養プレートのコラーゲン層側に、培養しようとする細胞を播種して、その細胞を培養して使用される。この播種にあたっては、培養対象の細胞を含有する培養液の状態で播種することができる。なお、液状で播種しても、その培養液中の細胞は、本発明の細胞培養プレートのコラーゲン層に接着して培養され観察等も容易となる。そして、この特性により、個別の細胞の解析を行うような、HCA等への利用に適している。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
以下、本発明の細胞培養プレートの代表的な製造例と、その細胞培養プレートを用いた細胞培養結果を説明する。
【0041】
[評価装置]
・濡れ性試験
協和界面科学株式会社製「簡易接触計 DMe−210」を用いて、濡れ性を試験した。濡れ性の試験液は、超純水を用いて、常温(20℃)における静的接触角を測定し、これを接触角度とした。
【0042】
[原料等]
・シリコーンゴム膜(A)
SIR(株)「C6−530」(PDMS系シリコーンゴム膜)を、80℃にて真空乾燥を7日間行ったものをシリコーンゴム膜(A)として用いた。このシリコーンゴム膜(A)は、厚み0.3mmm(300μm)である。
・コラーゲン(A)
高研社製「ブタアテロコラーゲン」 (哺乳動物性コラーゲン)
・溶媒(コラーゲン噴霧用)
ウオーター社製「超純水」
・ウェル
底面部分が開口された、96ウェル状体および384ウェル状体を用いた。これらのウェル状体は、底面に相当する開口部にシート等を設けることで、細胞培養プレートとして用いられる。これらのウェル状体は、ポリスチレン製のものを使用した。
【0043】
[細胞培養プレートの製造]
(製造例1)
(1) シリコーンゴム膜(A)の表層に、中心波長172nmの紫外線(浜松ホトニクス社製「FLAT EXCIMER EX−mini L12530−01」)を照射(強度:50mW/cm
2、照射時間:30秒)した。照射後の、濡れ性試験によるシリコーンゴム膜の表層の接触角度は、40度であった。
(2) その後、濃度1質量%のコラーゲン含有水溶液を作成し、前記シリコーンゴム膜の紫外線照射した面側に、コラーゲン含有液の乾燥後の残存コラーゲン厚みが約1μmとなるようにコラーゲン含有液を噴霧した。
(3) その後、常温で静置し、コラーゲン含有液の溶媒(水)を乾燥除去させて、シリコーンゴム膜の紫外線照射された表層側にコラーゲン膜を設けた積層膜を得た。
(4) この積層膜を、前記のウェルの底面側に、コラーゲン層がウェルの溝の上部を向くように(ウェルの凹部の底がコラーゲン層となるように)、貼りつけた。なお、この貼り付けは、押圧で圧着することで行った。これにより、細胞培養プレート(A)を製造した。
【0044】
[細胞培養試験]
前記細胞培養プレート(A)に、ヒト肝癌由来細胞「HepG2」(理研BRC細胞材料開発室−CELL BANK)を播種して、細胞培養試験を行った。播種密度2×10
4cells/well、播種液量100μL/wellとした。培養時の環境は、インキュベータを用いて、37度 CO
2濃度5% 湿潤状態下で静置した。
【0045】
[細胞培養結果の評価法]
「細胞数」
プロメガ社製“CellTiter(登録商標)96 AQueous One Solution Assay”を用いて、細胞数を求め、細胞増殖性を評価した。
「細胞の蛍光染色」
(染色試薬1)全細胞の染色:Hoechast33258(染色:青)(同仁化学社製)
(染色試薬2)生胞の細胞質:Calcei−AM(染色:緑)(同仁化学社製)
(染色試薬3)視細胞の各:Propidium Iodide(PI)(染色:赤)(タカラバイオ社製)
※各染色試薬の使用要領に則って、細胞を蛍光染色し、“Operetta”(パーキンエルマー社製)により、細胞の状態を観察した。
【0046】
[従来の細胞培養プレート]
なお、対比試験に用いた細胞培養プレートは以下のものであり、前述の細胞培養試験の手法に準じて、細胞培養プレート(A)に代えて同様に細胞培養結果の評価を行った。
(比較例1)プラスチックプレート(Plastic Plate)
VIOLAMO社製96ウェルプレート(ポリスチレン樹脂製の96ウェルプレート)
(比較例2)易細胞塊形成プレート
ベセル株式会社製“Gas Permeable VECELL Plate - G-Plate”。この細胞培養プレートは、シリコーンゴム膜の表層処理を行わずに、両親媒性ポリマーを塗工し両親媒性ポリマー層を設け、その後、さらにコラーゲン含有液を塗工してコラーゲン膜を設けたものである。
【0047】
前記した細胞培養試験により、HepG2を培養した後の、細胞数および細胞の蛍光染色観察結果を
図3〜5に示す。
【0048】
図3に細胞数を示す。本発明に係る細胞培養プレート(A)は、他の従来の細胞培養プレートと同程度の細胞数を示しており、細胞培養が抑制される等の問題は発生しなかった。
【0049】
図4は、96wellとして製造した各細胞培養プレートを用いて培養した細胞の染色観察を、培養開始から2日後(2Days)、5日後(5Days)に行ったものである。本発明に係る実施例1(細胞培養プレート(A))は、2日時点で、優れた細胞分離性を奏しており、5日時点でも細胞分離性を維持していた。一方、比較例1(プラスチックプレート)は、2日時点で細胞塊類似(ただし細胞塊としての3次元構造ではないと考えられる)の状態で培養されており、5日時点では培養環境に延伸した細胞間構造が不明瞭なものとなった。また、比較例2(易細胞塊形成プレート)は、2日時点、5日時点で、いずれも細胞塊を形成したものとなっていた。
【0050】
図5は、96wellと、384wellとして製造した各細胞培養プレートを用いて培養した細胞の染色観察を、培養開始から2日後(2Days)に行ったものである。本発明に係る実施例1は、96well、384wellいずれも分離性で各細胞が観察された。一方、比較例1は、細胞の集合が多数みられ、分離されて培養されている細胞がほとんど見られなかった。