(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879508
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】織物
(51)【国際特許分類】
D03D 15/54 20210101AFI20210524BHJP
【FI】
D03D15/00 102Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-103103(P2017-103103)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-214691(P2017-214691A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2020年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-106298(P2016-106298)
(32)【優先日】2016年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309042783
【氏名又は名称】大喜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝政
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳由
【審査官】
相田 元
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3126729(JP,U)
【文献】
特開2002−119146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸及び緯糸のうちの一方を第1構成糸とし、他方を第2構成糸として製織された織物において、
前記第1構成糸の一部が側面発光型光ファイバーであり、
前記第2構成糸の少なくとも一部が遮光糸であって、
前記側面発光型光ファイバーの意匠面側における発光を遮る遮光組織を有し、
前記遮光組織は、前記意匠面側において2〜4本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差する前記遮光糸により形成された第1遮光糸群と、
前記意匠面側において2〜4本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差する前記遮光糸により形成された第2遮光糸群と、
前記第1遮光糸群と前記第2遮光糸群との間に配置され、非意匠面側において前記側面発光型光ファイバーと交差する1本の前記遮光糸と、によって形成され、
前記遮光組織の間に発光部が形成され、前記発光部では、前記非意匠面側において前記遮光糸が4〜8本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差しており、
前記遮光糸のうち少なくとも前記発光部の周縁部に位置する遮光糸が濃色であることを特徴とする織物。
【請求項2】
前記非意匠面側において前記側面発光型光ファイバーと交差する1本の前記遮光糸を介して、前記側面発光型光ファイバーの方向に複数の前記遮光組織が連続して配置されている請求項1に記載の織物。
【請求項3】
連続して配置されている複数の前記遮光組織の個数が2〜6個である請求項2に記載の織物。
【請求項4】
前記非意匠面側において前記遮光糸を4〜8本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差させた部位の両側部に、前記側面発光型光ファイバーと前記遮光糸との1/1織組織を連接させ、前記部位を淡色発光部とした請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の織物。
【請求項5】
経糸及び緯糸のうちの一方を第1構成糸とし、他方を第2構成糸として製織された織物において、
前記第1構成糸の一部が側面発光型光ファイバーであり、
前記第2構成糸の少なくとも一部が遮光糸であって、
前記側面発光型光ファイバーの意匠面側における発光を遮る遮光組織を有し、
前記遮光組織は、前記意匠面側において2〜4本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差する前記遮光糸により形成された第1遮光糸群と、
前記意匠面側において2〜4本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差する前記遮光糸により形成された第2遮光糸群と、
前記第1遮光糸群と前記第2遮光糸群との間に配置され、非意匠面側において前記側面発光型光ファイバーと交差する1本の前記遮光糸と、によって形成され、
前記遮光組織の間に発光部が形成され、前記発光部では、前記非意匠面側において前記遮光糸が4〜8本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差しており、
前記非意匠面側において前記遮光糸を4〜8本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差させた部位の両側部に、前記側面発光型光ファイバーと前記遮光糸との1/1織組織を連接させ、前記部位を淡色発光部としていることを特徴とする織物。
【請求項6】
前記非意匠面側において前記側面発光型光ファイバーと交差する1本の前記遮光糸を介して、前記側面発光型光ファイバーの方向に複数の前記遮光組織が連続して配置されている請求項5に記載の織物。
【請求項7】
連続して配置されている複数の前記遮光組織の個数が2〜6個である請求項6に記載の織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面発光型光ファイバーと、この側面発光型光ファイバーによる発光部の周縁部からの漏光を抑えるための遮光組織を構成する遮光糸等とにより製織され、明瞭な発光部が形成されるため、例えば、車両内装用表皮材として用いたときに、車室内の意匠性を向上させることができる織物に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及等とともに、光通信などの技術分野において光ファイバーの使用が拡大している。また、一端から入射した光を他端に導いて光を伝送させることができるという光ファイバーの特性に基づき、例えば、各種の照明及びディスプレー等の用途でも用いられている。例えば、アクリル系樹脂を主成分とするコア層を有する光ファイバー及びそれを備える布帛であって、室内装飾用品等の自動車用品などとして有用であり、コア層に与える損傷を抑えてクラッド層が除去されているとともに、その露出位置が精密に加工された光ファイバー及びそれを備えた布帛が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、経糸又は緯糸として光ファイバーと普通糸とが織られた光ファイバー織物と、光ファイバーの少なくとも一端部に光を照射する光源とを備え、光源からの光を光ファイバー内に入光させることにより、ドアトリム、小物部品等の自動車内装部品として利用することができる照明装置として機能する光ファイバー織物が知られている(例えば、特許文献2参照。)。そして、この光ファイバー織物では、光ファイバーと普通糸とを規則的に織り込み、織組織及び発光輝度を所定の状態に制御することにより、光ファイバー織物の発光ムラを低減することができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−39287号公報
【特許文献2】特開2010−267573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された光ファイバーを備える布帛は、室内装飾用品等の自動車用品などとして有用である。また、特許文献2に記載の光ファイバー織物では、織組織及び発光輝度を所定の状態に制御することにより、発光ムラを低減することができる。しかし、特許文献1、2には、周縁部からの漏光によりドット状の発光部が不明瞭になり、織物の意匠性が低下することについては全く言及されていない。
【0006】
本発明は、上述の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、側面発光型光ファイバーと、この側面発光型光ファイバーによる発光部の周縁部からの漏光を抑えるための遮光組織を構成する遮光糸等とにより製織され、明瞭な発光部が形成されるため、例えば、車両内装用表皮材として用いたときに、車室内の意匠性を向上させることができる織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
1.経糸及び緯糸のうちの一方を第1構成糸とし、他方を第2構成糸として製織された織物において、
前記第1構成糸の一部が側面発光型光ファイバーであり、
前記第2構成糸の少なくとも一部が遮光糸であって、
前記側面発光型光ファイバーの意匠面側における発光を遮る遮光組織を有し、
前記遮光組織は、前記意匠面側において2〜4本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差する前記遮光糸により形成された第1遮光糸群と、
前記意匠面側において2〜4本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差する前記遮光糸により形成された第2遮光糸群と、
前記第1遮光糸群と前記第2遮光糸群との間に配置され、非意匠面側において前記側面発光型光ファイバーと交差する1本の前記遮光糸と、によって形成されていることを特徴とする織物。
2.前記遮光組織の間に発光部が形成され、前記発光部では、前記非意匠面側において前記遮光糸が4〜8本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差している前記1.に記載の織物。
3.前記非意匠面側において前記側面発光型光ファイバーと交差する1本の前記遮光糸を介して、前記側面発光型光ファイバーの方向に複数の前記遮光組織が連続して配置されている前記1.又は2.に記載の織物。
4.連続して配置されている複数の前記遮光組織の個数が2〜6個である前記3.に記載の織物。
5.前記遮光糸のうち少なくとも前記発光部の周縁部に位置する遮光糸は濃色である前記2.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の織物。
6.前記非意匠面側において前記遮光糸を4〜8本連続して前記側面発光型光ファイバーと交差させた部位の両側部に、前記側面発光型光ファイバーと前記遮光糸との1/1織組織を連接させ、前記部位を淡色発光部とした前記2.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の織物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の織物では、第1構成糸の一部が側面発光型光ファイバーであり、第2構成糸の少なくとも一部が遮光糸であって、意匠面側において2〜4本連続して側面発光型光ファイバーと交差する遮光糸により形成された第1遮光糸群及び第2遮光糸群と、第1遮光糸群と第2遮光糸群との間に配置され、非意匠面側において側面発光型光ファイバーと交差する1本の遮光糸と、によって形成される遮光組織を備える。そして、この遮光組織を、側面発光型光ファイバーにより形成される発光部の周縁部に配置することにより、周縁部からの漏光を抑えることができ、発光部をより明瞭に発光させることができるとともに、意図した意匠面を形成することができる。
また、遮光組織の間に発光部が形成され、発光部では、非意匠面側において遮光糸が4〜8本連続して側面発光型光ファイバーと交差している場合は、ドット状の明瞭な発光部を形成することができ、この発光部を所定位置に所要個数形成することで、規則正しく並べられたドット状の発光部とすることができ、落ち着いた雰囲気の意匠面を形成することができる。一方、ドット状の発光部により特定の模様を有する意匠面を形成することもできる。
更に、非意匠面側において側面発光型光ファイバーと交差する1本の遮光糸を介して、側面発光型光ファイバーの方向に複数の遮光組織が連続して配置されている場合は、発光部の周縁部からの漏光をより十分に抑えることができ、より明瞭な発光部とすることができる。
また、連続して配置されている複数の遮光組織の個数が2〜6個である場合は、漏光がより十分に抑えられるとともに、ドット状の発光部の間隔を意匠的に好ましいものとすることができる。
更に、遮光糸のうち少なくとも発光部の周縁部に位置する遮光糸が濃色である場合は、より確実に漏光を抑えることができ、より明確な発光部とすることができ、意匠的に好ましいものとすることができる。
また、非意匠面側において遮光糸を4〜8本連続して側面発光型光ファイバーと交差させた部位の両側部に、側面発光型光ファイバーと遮光糸との1/1織組織を連接させ、前記部位を淡色発光部とした場合は、明確な発光部と淡色発光部とを所望の位置に配置させることで、幅広い意匠表現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る織物の織組織の一例を側面発光型光ファイバーの側面方向からみた模式的な説明図である。
【
図2】
図1の織物の側面発光型光ファイバーに導光させ、明瞭なドット状の発光部が形成された様子を表す模式的な説明図である。
【
図3】遮光組織を有さない織組織の一例を側面発光型光ファイバーの側面方向からみた模式的な説明図である。
【
図4】
図3の織物の側面発光型光ファイバーに導光させ、漏光により不明瞭になったドット状の発光部が形成された様子を表す模式的な説明図である。
【
図5】遮光組織を有する明瞭な発光部と、発光させる部位の両側部に、側面発光型光ファイバーと遮光糸との1/1組織が連接されて形成された淡色発光部とを備える織物の、側面発光型光ファイバーの側面方向からみた模式的な説明図である。
【0010】
尚、第1構成糸の一部に側面発光型光ファイバーを使用し、所定位置に発光部位を設けたとしても、遮光組織を有さない場合、例えば、
図3のように、発光部位の両側部に、側面発光型光ファイバーと遮光糸との1/1織組織を連続して配置した形態では、1/1織組織からの漏光により、発光部位の両側部において淡い発光が生じる。そのため、
図4のように、不明瞭な淡色発光部となってしまう。このような織物では、例えば、車両内装用表皮材として用いたときに、車室内の意匠性が低下し、好ましくない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、図も参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
本発明の織物10は、経糸及び緯糸のうちの一方を第1構成糸とし、他方を第2構成糸として製織された織物10である。また、第1構成糸の一部は側面発光型光ファイバー1であり、第2構成糸の少なくとも一部は遮光糸である。更に、織物10は、側面発光型光ファイバー1の意匠面側aにおける発光を遮る遮光組織2を有し、この遮光組織2は、意匠面側aにおいて2〜4本連続して側面発光型光ファイバー1と交差する遮光糸により形成された第1遮光糸群21と、意匠面側aにおいて2〜4本連続して側面発光型光ファイバー1と交差する遮光糸により形成された第2遮光糸群22と、第1遮光糸群21と第2遮光糸群22との間に配置され、非意匠面側bにおいて側面発光型光ファイバー1と交差する1本の遮光糸23と、によって形成されている。
【0013】
ここで、遮光糸とは、遮光機能を有するという意味で用いており、例えば、顔料などによって遮光性が付与された合成樹脂製マルチフィラメント等が挙げられる。また、発光部5から離間した位置においては、遮光性が付与されていない通常の合成樹脂製マルチフィラメント等を用いてもよい。更に、側面発光型光ファイバー1を除く第1構成糸及び第2構成糸の全てが遮光糸であってもよい。
【0014】
第1遮光糸群21及び第2遮光糸群22において、意匠面側aにおいて2〜4本連続して側面発光型光ファイバー1と交差する遮光糸の本数は2〜4本であるが、3本であることが好ましい(
図1参照)。3本であれば、漏光を十分に抑えることができるとともに、織物10の強度の低下も抑えられる。
【0015】
また、遮光組織2の間には発光部5が形成されている。この発光部5では、非意匠面側bにおいて遮光糸が連続して側面発光型光ファイバー1と交差しており、意匠面側aでは側面発光型光ファイバー1が露出している。非意匠面側bにおいて側面発光型光ファイバー1と連続して交差している遮光糸(
図1における発光部5を形成するための6本の遮光糸群4参照)の本数は、明瞭な発光部5(
図2参照)を形成すること、及び十分な強度を有する織物10とすること、という観点で、3〜9本、特に4〜8本、更に5〜7本であることが好ましい。
【0016】
更に、遮光組織2は発光部5の間に1個のみ配置されていてもよいが、漏光を十分に抑え、意匠性を向上させるという観点では、複数個配置させ、発光部5間を所定の間隔とすることが好ましい。即ち、遮光組織2は、非意匠面側bにおいて側面発光型光ファイバー1と交差する1本の遮光糸(
図1における遮光組織2間に介在する1本の遮光糸3参照)を介して、側面発光型光ファイバー1の方向に複数個連続して配置されていることが好ましい。連続して配置される遮光組織2の個数は特に限定されないが、この個数が過多であると、発光部5が離間し過ぎ、例えば、織物10を車両内装用表皮材として用いる場合等に、意匠性が低下することもある。このように、意匠性の観点では、連続して配置されている複数の遮光組織2の個数は2〜6個、特に3〜5個であることが好ましい(
図1の織物1では連続して配置されている複数の遮光組織2の個数は4個である)。
【0017】
また、遮光糸としては顔料等を含有する合成樹脂製マルチフィラメントなどを用いることができ、材質は特に限定されないが、少なくとも発光部5の周縁部に位置する遮光糸は濃色であることが好ましい。遮光糸が濃色であれば、発光部5の周縁部での漏光がより十分に抑えられ、明瞭な発光部5とすることができる。更に、発光部5の周縁部を除く他の部位の遮光糸も濃色であることがより好ましい。このように、全ての遮光糸が濃色であれば、多数の発光部5が形成された場合であっても、発光部5間での漏光が十分に抑えられ、より明瞭な発光部5とすることができる。
尚、濃色とは、明度及び彩度の低い色調を意味し、例えば、黒色、紺色、茶色等が挙げられる。
【0018】
更に、遮光糸は第1構成糸としても第2構成糸としても用いられるが、第1構成糸として、特に側面発光型光ファイバー1の側方部に近接して織り込まれている遮光糸の繊度は、第2構成糸として用いられる遮光糸等の繊度より小さいことが好ましい。このように、第1構成糸として用いられる遮光糸の繊度が、第2構成糸として用いられる遮光糸等の繊度より小さいことが好ましい理由は、側面発光型光ファイバー1の径が、一般的な合成樹脂製マルチフィラメント等と比べて小さいためである。
【0019】
即ち、側面発光型光ファイバー1と並行して織り込まれる遮光糸の径が、側面発光型光ファイバー1の径と大差がなければ、遮光糸が意匠面側aに表出し難くなり、より明瞭な発光部5とすることができる。また、側面発光型光ファイバー1と略直交して織り込まれる遮光糸等の径が大きければ、側面発光型光ファイバー1の織物10の最表面への表出が抑制され、側面発光型光ファイバー1の摩耗を抑えることができる。更に、発光部5を備える意匠面としての性能を維持しながら、十分な強度を有する織物10とすることができる。
【0020】
第1構成糸として、特に側面発光型光ファイバー1の側方部に近接して織り込まれている遮光糸の繊度(d
1)は特に限定されないが、例えば、20〜2000dtexとすることができ、35〜1000dtexであることが好ましく、50〜700dtexであることがより好ましい。また、第1構成糸として用いられる遮光糸の繊度(d
1)と、第2構成糸として用いられる遮光糸等の繊度(d
2)とを比較した場合に、各々の繊度は同じであってもよく、いずれか一方が他方に比べて大きくてもよいが、(d
2)が(d
1)よりも大きいことが好ましい。(d
1)が(d
2)よりも小さい場合には、(d
1)及び(d
2)の両方が大きい場合に比べると、第1構成糸として用いられる遮光糸の長手方向に沿った方向への柔軟性が増し、第2構成糸として用いられる遮光糸による遮光性を十分に確保しつつも生地全体の柔軟性を得ることができる。
【0021】
また、第2構成糸として用いられる遮光糸、例えば、第1遮光糸群21及び第2遮光糸群22の形成に用いられる遮光糸として撚糸を用いてもよい。撚糸であれば、製織時に織り込まれる方向に加わるテンションにより撚りが戻り、嵩高くなり、これによっても発光部5の周縁部における漏光が抑えられ、より明瞭な発光部5とすることができる。更に、側面発光型光ファイバー1の織物10の最表面への表出が抑制され、側面発光型光ファイバー1の摩耗を抑えることもできる。また、撚り方向はZ方向でもS方向でもよいが、織物10の表面の摩擦係数等を考慮するとZ撚りが好ましい。撚り数も特に限定されないが、上述の作用効果を十分に得るためには、150〜1000T/m、特に150〜850T/mの中撚糸であることが好ましい。
【0022】
更に、遮光組織2の間に特定の構成の発光部5が形成されることは前述のとおりであるが、非意匠面側bにおいて遮光糸を4〜8本連続して側面発光型光ファイバー1と交差させた部位の両側部に、側面発光型光ファイバー1と遮光糸との1/1織組織6を連接させることもできる(
図5参照)。このように両側部に1/1織組織6を連接させた部位では、側面発光型光ファイバー1が発光するが、両側部で漏光するため、遮光組織2の間のような明瞭な発光部5とはならず、輝度の低い淡い発光部、即ち、淡色発光部7が形成される(
図5参照)。この淡色発光部7を、遮光組織2の間の発光部5の配置を勘案しつつ、適所に設けることで、より幅広い意匠表現が可能となる。
【0023】
側面発光型光ファイバー1は、側面から漏光し、発光する光ファイバーであり、通常、コア層とクラッド層とから構成されており、コア層の外周をクラッド層が被覆した構造を有する。また、コア層及びクラッド層は、それぞれ単層でもよく、複数層が積層された形態であってもよい。側面発光型光ファイバー1としては、例えば、コア層に散乱物質を配合することにより、コア層とクラッド層との境界部での全反射を生じることなく、側面から散乱光が漏光するもの、及びクラッド層の一部が除去されて、側面から漏光するものが挙げられる。更に、側面発光型光ファイバー1としては、樹脂製光ファイバー、石英系光ファイバー等の各種のものがあるが、本発明では、織物10に織り込まれる光ファイバーであるため、柔軟で曲げ衝撃等に優れ、容易に製織することができる樹脂製光ファイバーを用いることが好ましい。
【0024】
また、既存の樹脂製光ファイバー等の側面発光型光ファイバー1の直径は0.1〜10mm程度であるが、製織のし易さ、及び前述の第1構成糸として用いられる遮光糸の繊度等の観点から、直径が0.25〜1.0mm、特に0.25〜0.5mmの側面発光型光ファイバー1を用いることが好ましい。この側面発光型光ファイバー1は、側方からみた
図1等では1本のみであるように図示されているが、側面発光型光ファイバー1が織り込まれた方向と略直交する方向に2〜4本、特に2〜3本の側面発光型光ファイバー1を並列に配設してもよい。これによって、より輝度の高い明瞭な発光部5とすることができる。
【0025】
更に、織物10に織り込まれた側面発光型光ファイバー1を発光させるためには、複数本の側面発光型光ファイバー1の先端部が束ねられ、その端面と対向する位置に光源が配置される。光源は特に限定されないが、通常、LEDが用いられる。そして、LED光源から束ねられた側面発光型光ファイバー1の端面に向けて光を照射させ、導光させることで、側面発光型光ファイバー1が発光し、発光部5が形成される。また、複数本の側面発光型光ファイバー1の先端部を束ねる場合、織物10に織り込まれた全ての側面発光型光ファイバー1を束ねてもよいが、通常、所定本数の側面発光型光ファイバー1が束ねられた複数の側面発光型光ファイバー束とされる。
【0026】
樹脂製光ファイバーのコア層としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリオレフィン系樹脂等の優れた透明性を有する樹脂が用いられていることが好ましい。更に、クラッド層としては、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニリデンテトラフルオロエチレン共重合樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、トリフルオロイソプロピルメタクリレート樹脂等の優れた透明性を有するとともに、コア層より屈折率が小さい樹脂が用いられていることが好ましい。
【0027】
また、遮光糸としては、顔料を含有させること等により遮光性が付与された合成樹脂製マルチフィラメントなどを用いることができる。マルチフィラメントの材質は特に限定されず、各種の合成樹脂からなるマルチフィラメントを用いることができる。この合成樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。合成樹脂としては、特にポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましい。
【0028】
経糸又は緯糸として側面発光型光ファイバー1を用い、経糸及び緯糸として遮光糸を用いた織物10の織製に用いる織機は特に限定されず、例えば、レピア織機(伊国、イテマウィービング社製、型式「G6500、R9500」)、ジャカード織機(仏国、ストーブリ社製、型式「CX880、DX110、LX1602、SXB」)、ドビー織機(仏国、ストーブリ社製、型式「UVIVAL500」)等が挙げられる。
【0029】
更に、織物10の用途は特に限定されないが、例えば、車両内装用表皮材として用いることができる。この場合、織物は、車両内装用基体に貼着され、車室内の意匠面を形成することになる。車両内装用基体は、通常、合成樹脂製の成形体であり、成形型を用いて加熱、加圧するプレス成形法により、ドアトリム、ルーフトリム等の車両用内装材の形状に成形される。
【0030】
また、車両内装用基体の成形に用いる合成樹脂は特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、及びナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂が用いられる。これらの合成樹脂のうちでは、成形のし易さ、強度等の観点でポリプロピレンが好ましい。また、剛性等の物性を向上させるため、ガラス繊維、カーボン繊維等が配合された繊維強化樹脂を用いることもできる。
【0031】
尚、前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施態様の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その態様において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の特定の構造、材料及び実施態様を詳述し、これを参照したが、これは本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、特にドット状の複数の発光部を備え、例えば、車両内装用表皮材として用いられ、車室内の意匠面の形成に利用することができる織物の技術分野において利用することができる。特に、ドアトリム、ルーフトリムなどの車両内装材の表皮材の技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0033】
10;織物、1;側面発光型光ファイバー、2;遮光組織、21;第1遮光糸群、22;第2遮光糸群、23;非意匠面側において側面発光型光ファイバーと交差する1本の遮光糸、3;遮光組織間に介在する1本の遮光糸、4;発光部を形成するための遮光糸群、5;発光部、6;側面発光型光ファイバーと遮光糸との1/1組織、7;淡色発光部。