特許第6879641号(P6879641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879641
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/16 20060101AFI20210524BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B60N2/16
   A47C7/14 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-146488(P2017-146488)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-26032(P2019-26032A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 豪也
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 將司
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−087630(JP,U)
【文献】 実開昭62−046041(JP,U)
【文献】 特開平06−247201(JP,A)
【文献】 米国特許第04775185(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に支持されると共に前記ベース部材に対して上下に相対変位する昇降部材と、
前記昇降部材に支持されるクッション部材と、
前記クッション部材の外面を被覆する表皮と、
前記昇降部材の前方側または側方側の外周に沿って延設されるカバー部材と、を備え、
前記表皮のうち、前記クッション部材の外面から前記カバー部材の内面側に向けて垂下する部位が、前記昇降部材の昇降時における前記カバー部材と前記昇降部材との間の隙間を遮蔽する遮蔽部として構成される車両用シートにおいて、
前記昇降部材は、前記カバー部材の内面側に配設されると共に前記遮蔽部が固定される第1固定部を備え
前記昇降部材が最上端に位置する場合に、前記第1固定部が前記遮蔽部を介して前記カバー部材の内面に当接されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記昇降部材は、第2固定部を備え、
前記遮蔽部は、前記第1固定部の下端で折り返されつつ前記第2固定部に固定されることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第2固定部は、前記第1固定部と同じ高さか、若しくは、前記第1固定部よりも上方に位置することを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記昇降部材の昇降時に、前記カバー部材の内面の上端が前記遮蔽部に当接されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項5】
前記カバー部材の延設方向と直交する平面で切断した断面視において、
前記第1固定部を挟んで前記カバー部材とは反対側の内方側に配設されると共に前記昇降部材が回転する軸として構成される回転軸を備え、
前記回転軸周りの回転による前記昇降部材の昇降時に、前記第1固定部は、前記回転軸よりも下方に位置し、前記クッション部材の外方側の端部は、前記回転軸よりも上方に位置することを特徴とする請求項4記載の車両用シート。
【請求項6】
前記カバー部材の延設方向と直交する平面で切断した断面視において、
前記第1固定部の前記カバー部材側の外面は、前記カバー部材側へ向けて下降傾斜する第1傾斜面を備え、
前記カバー部材の内面は、前記第1固定部側へ向けて上昇傾斜する第2傾斜面を備え、
前記昇降部材が最上端に位置する場合に、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面が平行に形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、耐久性を向上させることができる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
上下に昇降可能に構成される昇降部材の上昇時に、その昇降部材の外周を覆うカバー部材と昇降部材との間に生じる隙間を表皮によって遮蔽する技術が知られている。例えば、特許文献1には、シートクッションの表皮の延長部(遮蔽部)の端末が弾性体(例えば、ゴム紐やコイルスプリング)を介してフィニッシャーカバー(カバー部材)の内面に固定される車両用シートが開示されている。
【0003】
この車両用シートによれば、シートクッションが上昇する場合には、フィニッシャーカバーとシートクッションとの間に生じる隙間を表皮によって遮蔽することができる。また、シートクッションが下降する場合には、弾性体の収縮によって表皮をフィニッシャーカバーの内面側に引き込むことができる。よって、シートクッションの昇降時において、フィニッシャーカバーとシートクッションとの間に生じる隙間を常に表皮によって遮蔽すると共に、表皮に皺が寄ることを弾性体の弾性力によって抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−188235号公報(例えば、8頁11行目〜10頁5行目、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、遮蔽部の端末が弾性体を介してカバー部材に接続されるため、シートクッションが上昇すると弾性体が伸長し、その伸長状態が続くと弾性体が劣化しやすくなる。よって、車両用シートの耐久性が低下するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、耐久性を向上させることができる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の車両用シートは、車両に固定されるベース部材と、前記ベース部材に支持されると共に前記ベース部材に対して上下に相対変位する昇降部材と、前記昇降部材に支持されるクッション部材と、前記クッション部材の外面を被覆する表皮と、前記昇降部材の前方側または側方側の外周に沿って延設されるカバー部材と、を備え、前記表皮のうち、前記クッション部材の外面から前記カバー部材の内面側に向けて垂下する部位が、前記昇降部材の昇降時における前記カバー部材と前記昇降部材との間の隙間を遮蔽する遮蔽部として構成されるものであり、前記昇降部材は、前記カバー部材の内面側に配設されると共に前記遮蔽部が固定される第1固定部を備え、前記昇降部材が最上端に位置する場合に、前記第1固定部が前記遮蔽部を介して前記カバー部材の内面に当接される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の車両用シートによれば、昇降部材は、カバー部材の内面側に配設されると共に遮蔽部が固定される第1固定部を備えるので、カバー部材の内面側に向けて垂下する遮蔽部を、第1固定部を介して昇降部材に接続することができる。これにより、昇降部材の昇降時に、昇降部材と遮蔽部との位置関係を一定に保つ(遮蔽部を昇降部材の昇降に追従させる)ことができるので、弾性体を用いることなく、遮蔽部に皺が寄ることを抑制できる。即ち、遮蔽部に皺が寄ることを抑制するための弾性体を用いる必要がないので、車両用シートの耐久性が向上するという効果がある。
また、昇降部材が最上端に位置する場合に、第1固定部が遮蔽部を介してカバー部材の内面に当接されるので、カバー部材の内面と第1固定部とによって遮蔽部を挟持することができる。よって、昇降部材が最上端まで変位した場合に、カバー部材の内面と遮蔽部との間に隙間が生じることを抑制できるという効果がある。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、請求項1記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。昇降部材は、第2固定部を備え、遮蔽部は、第1固定部の下端で折り返されつつ第2固定部に固定されるので、遮蔽部の端末を第2固定部に固定するための部材(例えば、フック)を第1固定部と第2固定部との間の領域に配設することができる。よって、昇降部材の上昇によってカバー部材の上端まで第1固定部が変位した場合に、遮蔽部の端末を固定するための部材がカバー部材の上方側に露出することを抑制できるので、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
【0010】
請求項3記載の車両用シートによれば、請求項2記載の車両用シートの奏する効果に加え、第2固定部は、第1固定部と同じ高さか、若しくは、第1固定部よりも上方に位置するので、第1固定部よりも下方側に第2固定部が露出することを抑制できる。これにより、上下方向における第1固定部および第2固定部の配設領域を最小限に抑えることができる。よって、例えば、第1固定部および第2固定部を被覆するカバー部材を下方に延長することを不要にできるので、その分、カバー部材を小型化することができる。よって、車両用シートの製品コストを低減できるという効果がある。
【0011】
請求項4記載の車両用シートによれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、昇降部材の昇降時に、カバー部材の内面の上端が遮蔽部に当接されるので、カバー部材の内面の上端を遮蔽部に食い込ませつつ昇降部材を昇降させることができる。よって、昇降部材の昇降時に、カバー部材の内面の上端と遮蔽部との間に隙間が生じることを抑制できるので、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
【0012】
請求項5記載の車両用シートによれば、請求項4記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。カバー部材の延設方向と直交する平面で切断した断面視において、第1固定部を挟んでカバー部材とは反対側の内方側に配設されると共に昇降部材が回転する軸として構成される回転軸を備え、回転軸周りの回転による昇降部材の昇降時に、第1固定部は、回転軸よりも下方に位置し、クッション部材の外方側の端部は、回転軸よりも上方に位置する。これにより、例えば、昇降部材が回転軸周りに回転しつつ上昇すると、第1固定部は、回転軸周りに回転しつつ外方側へ向けて変位し、クッション部材の外方側の端部は、回転軸周りに回転しつつ内方側へ向けて変位する。
【0013】
よって、昇降部材の昇降時に、カバー部材の内面の上端の遮蔽部への食い込み量を一定に保ちやすくすることができるので、カバー部材の内面の上端が遮蔽部に過剰に食い込むことや、遮蔽部から離間することを抑制できる。従って、遮蔽部に過剰な摩擦が加わることや、遮蔽部に皺が寄ることを抑制できるので、車両用シートの耐久性を向上させると共に意匠性を向上させることができるという効果がある。
【0014】
【0015】
請求項記載の車両用シートによれば、請求項1から5のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。カバー部材の延設方向と直交する平面で切断した断面視において、1固定部のカバー部材側の外面は、カバー部材側へ向けて下降傾斜する第1傾斜面を備え、カバー部材の内面は、第1固定部側へ向けて上昇傾斜する第2傾斜面を備える。昇降部材が最上端に位置する場合に、第1傾斜面および第2傾斜面が平行に形成されるので、第1固定部に固定される遮蔽部を、カバー部材の第2傾斜面によって第1固定部の第1傾斜面に沿って押し当てることができる。即ち、カバー部材と第1固定部とによって遮蔽部を挟持する場合に、遮蔽部が変形(湾曲)した状態で挟持されることを抑制できるので、遮蔽部に傷が生じることを抑制できる。よって、車両用シートの耐久性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態における車両用シートの斜視図であり、(b)は、車両用シートの正面図である。
図2図1(b)のII−II線における車両用シートの部分拡大断面図である。
図3図2の状態からフロントパネルが上昇した状態を示す車両用シートの部分拡大断面図である。
図4】(a)は、第2実施形態における車両用シートの部分拡大断面図であり、(b)は、図4(a)の状態からクッションフレームが上昇した状態を示す車両用シートの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態における車両用シート1の斜視図であり、図1(b)は、車両用シート1の正面図である。なお、図1では、理解を容易にするために、車両用シート1の一部の図示を省略し、模式的に図示している。
【0018】
図1に示すように、車両用シート1は、車両(例えば、自動車や鉄道車両)に搭載されるシートであり、車両に固定される脚部2と、その脚部2に支持されると共にシート前後方向(図1(b)の紙面垂直方向)に延設される一対のレール3と、それら一対のレール3に支持されるクッションフレーム4と、そのクッションフレーム4の後端側に接続されるバックフレーム5と、クッションフレーム4及びバックフレーム5に支持されるクッション部材6(図2参照)と、そのクッション部材6の外面を被覆する表皮7と、クッションフレーム4の前方側から表皮7の外面を被覆するフロントカバー8とを備える。
【0019】
脚部2は、レール3を介してクッションフレーム4及びバックフレーム5を車両(車体フレーム)に固定するための部材であり、レール3は、車両に対してクッションフレーム4及びバックフレーム5を前後方向(図1(b)の紙面垂直方向)に変位させるための部材である。
【0020】
クッションフレーム4は、座面を形成するシートクッションの骨格となる金属製のフレームとして構成され、バックフレーム5は、背もたれを形成するシートバックの骨格となる金属製のフレームとして構成される。
【0021】
弾力性を有する発泡樹脂製(例えば、軟質ポリウレタンフォーム)から成るクッション部材6(図2参照)をクッションフレーム4及びバックフレーム5によって支持し、ファブリックや合成皮革または皮革等から構成される表皮7でクッション部材6を被覆することにより、シートバック及びシートクッションが形成される(図1(b)参照)。
【0022】
クッションフレーム4は、レール3に支持される一対のサイドフレーム40と、それら一対のサイドフレーム40の後端どうしを接続すると共にばね部材9が固定される後部フレーム41と、一対のサイドフレーム40のそれぞれに配設される一対の回転軸42と、それら一対の回転軸42に軸支されるフロントパネル43と、そのフロントパネル43に連結される第1ワイヤ44及び第2ワイヤ45と、サイドフレーム40に接続されると共にフロントカバー8が取り付けられる取付け部46とを備える。
【0023】
一対のサイドフレーム40は、クッションフレーム4の前後方向に沿ってそれぞれ延設され、一対のサイドフレーム40の上端側の部位に回転軸42が配設される。回転軸42は、サイドフレーム40の前後方向略中央部分に配設されると共にクッションフレーム4の幅方向(図1(b)の左右方向)に沿って軸を向ける姿勢で配設される。よって、フロントパネル43は、クッションフレーム4の幅方向に沿った軸周りに回転可能に構成される。
【0024】
フロントパネル43は、回転軸42よりも前方側のサイドフレーム40の上面と、一対のサイドフレーム40の前端側の対向間とを上方から被覆するパネルとして構成される。フロントパネル43と後部フレーム41との間には、複数(本実施の形態では、4個)のばね部材9が掛け渡され、それら複数のばね部材9とフロントパネル43とによってクッション部材6が支持される(図2参照)。
【0025】
第1ワイヤ44及び第2ワイヤ45は、フロントパネル43の前端部分に連結されると共に断面円形の金属製のワイヤとして構成される。第1ワイヤ44は、フロントパネル43から下方に延びる一対の第1基部44aと、それら一対の第1基部44aからクッションフレーム4の幅方向中央側に向けて屈曲すると共に前方側に向けて下降傾斜して形成される一対の傾斜部44bと、それら一対の傾斜部44bどうしをクッションフレーム4の幅方向に沿って接続する第1接続部44cと、を備える。
【0026】
第2ワイヤ45は、一対の第1基部44aよりもクッションフレーム4の幅方向中央側に配設されると共にフロントパネル43から下方に延びる一対の第2基部45aと、それら一対の第2基部45aどうしをクッションフレーム4の幅方向に沿って接続する第2接続部45bとを備える。第1ワイヤ44及び第2ワイヤ45には、後述する遮蔽部70(表皮7の一部)が固定される(図2参照)。
【0027】
第1ワイヤ44及び第2ワイヤ45に遮蔽部70を固定した状態で取付け部46にフロントカバー8を取り付けることにより、フロントカバー8は、表皮7の外面を被覆する態様でクッションフレーム4の幅方向に沿って延設される(図1(b)参照)。
【0028】
次いで、図2を参照して、車両用シート1の詳細構成について説明する。図2は、図1(b)のII−II線における車両用シート1の部分拡大断面図である。なお、図2では、理解を容易にするために、車両用シート1の一部の図示を省略し、模式的に図示すると共に、クッション部材6の一部を破断して図示している。また、図2では、フロントパネル43が最下端に位置する状態を図示している。
【0029】
図2に示すように、フロントパネル43は、クッションフレーム4の幅方向(図2の紙面垂直方向)に沿って延びるフロントフレーム10によって下方から支持されている。フロントフレーム10は、回転軸42よりも前方側に配設され、図示しない駆動源によって上下に昇降可能に構成される。かかる駆動源は、着座者によって操作可能に構成されており、その操作によってフロントフレーム10が昇降し、そのフロントフレーム10の昇降動作によってフロントパネル43が回転軸42周りに回転する。即ち、フロントパネル43は、その前端部分(図2の左側の端部)を上下動させる態様で回転軸42周りに回転することにより、サイドフレーム40に対して上下に相対変位可能に構成される。
【0030】
フロントパネル43の上面(図2の上側の面)および前面(図2の左側の面)を被覆するクッション部材6は、その上面及び前面が表皮7によって被覆され、クッション部材6の前面から垂下する表皮7の端末は、フロントカバー8の内面側(図2の右側)で第1ワイヤ44及び第2ワイヤ45に固定される。なお、以下の説明において、クッション部材6を被覆する表皮7のうち、クッション部材6から下方に垂下する部位(フロントパネル43の前面を被覆するクッション部材6よりも下方に位置する部位)を遮蔽部70と定義して説明する。
【0031】
遮蔽部70の端末にはフック71が縫合されており、第1接続部44cの下端で遮蔽部70が折り返されて第2接続部45bにフック71が引っ掛けられることにより、遮蔽部70が第1ワイヤ44及び第2ワイヤ45に固定される。フック71は、第2接続部45bよりも若干短い寸法でクッションフレーム4の幅方向(図2の紙面垂直方向)に沿って延設される。
【0032】
次いで、図2及び図3を参照して、フロントパネル43の動作について説明する。図3は、図2の状態からフロントパネル43が上昇した状態を示す車両用シート1の部分拡大断面図である。なお、図3では、理解を容易にするために、車両用シート1の一部の図示を省略し、模式的に図示すると共に、クッション部材6の一部を破断して図示している。また、図3では、フロントパネル43が最上端に位置する状態を図示している。
【0033】
フロントパネル43が最下端に位置する場合(図2参照)、及び、最上端に位置する場合(図3参照)の双方の場合において、第1接続部44cは、フロントカバー8の内面80と対向する位置に配設される。即ち、フロントパネル43が最下端に位置する場合、第1接続部44cは、内面80の下端よりも上方に位置しており(図2参照)、かかる状態からフロントパネル43が上昇して最上端まで変位した場合には、第1接続部44cは、内面80の上端よりも下方に位置している(図3参照)。
【0034】
これにより、フロントパネル43の昇降時に、フロントパネル43(クッション部材6)とフロントカバー8の上端との間に生じる隙間(図3の左側から正面視した場合に生じる隙間)を、第1接続部44cに固定される遮蔽部70によって遮蔽することができる。この場合、遮蔽部70が第1ワイヤ44及び第2ワイヤ45を介してフロントパネル43に接続されるので、フロントパネル43に追従させて遮蔽部70を昇降させることができる。
【0035】
これにより、フロントパネル43の昇降時に、フロントパネル43と遮蔽部70の端末との位置関係を一定に保つことができるので、弾性体を用いることなく、遮蔽部70に皺が寄ることを抑制できる。即ち、遮蔽部70に皺が寄ることを抑制するための弾性体を用いる必要がないので、車両用シート1の耐久性が向上する。更に、弾性体の弾性力が遮蔽部70に作用することを抑制できるので、遮蔽部70に過剰な張力が加わることを抑制できる。よって、車両用シート1の耐久性が向上する。
【0036】
ここで、フロントパネル43に追従させて遮蔽部70を昇降させるために、例えば、フック71を第1接続部44cに直接接続する構成を採用することも可能である。しかしながら、かかる構成では、第1接続部44cがフロントカバー8の上端付近まで変位すると、遮蔽部70の端末とフック71との縫合部分、若しくは、フック71がフロントカバー8よりも上方に露出する恐れがある。更に、その露出を抑制するためにフロントカバー8の上下方向における寸法を長くすると、フロントカバー8を大型化する必要があり、車両用シート1の製品コストが増大する。
【0037】
これに対して、本実施の形態では、第1接続部44cの下端で遮蔽部70が折り返され、第2接続部45bに遮蔽部70の端末が固定されるので、遮蔽部70の端末とフック71との縫合部分、及び、フック71を、第1接続部44cと第2接続部45bとの間の領域に配設することができる。これにより、フロントカバー8の上端付近まで第1接続部44cが変位した場合であっても、遮蔽部70の端末とフック71との縫合部分、及び、フック71がフロントカバー8の上方側に露出することを抑制できる。即ち、遮蔽部70のみをフロントカバー8の上方側に露出させることができるので、車両用シート1の意匠性が向上する。
【0038】
また、第2接続部45bは、第1接続部44cよりも上方に位置するので、第1接続部44cよりも下方側に第2接続部45bが露出することを抑制できる。これにより、上下方向における第1ワイヤ44および第2ワイヤ45の配設領域を最小限に抑えることができる。
【0039】
よって、例えば、第1接続部44cよりも下方側に露出する第2接続部45bを前方側からフロントカバー8によって被覆するために、フロントカバー8の上下方向における寸法を長く設定する(フロントカバー8を下方に延長する)ことを不要にできる。従って、フロントカバー8を小型化することができるので、車両用シート1の製品コストを低減できる。更に、遮蔽部70(第1接続部44cよりも上方に位置する部位)の背面側のデッドスペースに第2接続部45bを設けることにより、車両用シート1が配設される車両内のスペースを有効に利用することや、車両用シート1に他の部材を配設することができる。
【0040】
ここで、フロントカバー8の延設方向(図2及び図3の紙面垂直方向)と直交する平面で切断した断面視において、クッション部材6の前端と、第1接続部44cの前端とを接続する直線を仮想線Vと定義する。この場合、フロントパネル43が最下端に位置する場合と、最上端に位置する場合との双方の場合において、フロントカバー8の内面80の上端は、仮想線Vよりも回転軸42側(内方側)に配設される。
【0041】
これにより、フロントパネル43の昇降時に、クッション部材6の前端と、第1接続部44cの前端とを接続する遮蔽部70に内面80の上端が当接される。即ち、内面80の上端を遮蔽部70に食い込ませつつフロントパネル43を昇降させることができるので、フロントパネル43の昇降時に、内面80の上端と遮蔽部70との間に隙間が生じることを抑制できる。よって、車両用シート1の意匠性が向上する。
【0042】
この場合、例えば、フロントパネル43が上下方向に沿って昇降する構成であれば、クッション部材6の前端と、第1接続部44cの前端とを内面80の上端から所定距離を隔てた前方側に位置させることにより、フロントパネル43の昇降時に、遮蔽部70に対する内面80の上端の食い込み量を一定に保ちやすい。
【0043】
しかしながら、フロントパネル43が回転軸42周りに回転して昇降する構成の場合、かかる食い込み量を一定に保つことが困難となる。即ち、例えば、回転軸42がクッション部材6の前端よりも上方に位置する場合、フロントパネル43の上昇時に、内面80の上端が遮蔽部70に過剰に食い込み、遮蔽部70に過剰な摩擦力が加わる恐れがある。一方、回転軸42が第1接続部44cの前端よりも下方に位置する場合、フロントパネル43の上昇時に、内面80の上端が遮蔽部70に当接した状態から離間し、遮蔽部70の張力に変化が生じて遮蔽部70に皺が寄る恐れがある。
【0044】
これに対して、本実施の形態では、フロントパネル43が最下端に位置する場合と、最上端に位置する場合との双方において、回転軸42が第1接続部44cの前端よりも上方であってクッション部材6の前端よりも下方に位置する。これにより、例えば、フロントパネル43が最下端から上昇すると、第1接続部44cの前端は、回転軸42周りに回転しつつ前方側(クッションフレーム4の外方側)へ向けて変位し、クッション部材6の前端は、回転軸42周りに回転しつつ後方側(クッションフレーム4の内方側)へ向けて変位する。
【0045】
よって、フロントパネル43が回転軸42周りに回転して昇降する構成であっても、フロントパネル43の昇降時に、遮蔽部70(仮想線V)に対する内面80の上端の食い込み量を一定に保ちやすくできる。これにより、内面80の上端が遮蔽部70に過剰に食い込むことや、遮蔽部70から離間することを抑制できるので、遮蔽部70に過剰な摩擦が加わることや、遮蔽部70に皺が寄ることを抑制できる。よって、車両用シート1の耐久性を向上させると共に意匠性を向上させることができる。
【0046】
ここで、フロントカバー8の延設方向(図2及び図3の紙面垂直方向)と直交する平面で切断した断面視において、第1ワイヤ44の傾斜部44bが前方側(フロントカバー8側)へ向けて下降傾斜することにより、傾斜部44b(及び第1接続部44c)の外面(フロントカバー8と対向する面)には第1傾斜面44dが形成される。また、フロントカバー8の内面80の上端側の部位は、第1ワイヤ44側(後方側)へ向けて上昇傾斜する第2傾斜面80aとして構成される。
【0047】
第2傾斜面80aは、フロントパネル43の上昇時における第1傾斜面44d(第1接続部44c)の変位軌跡上に位置しており、フロントパネル43が最上端に位置する場合には、第1傾斜面44dが遮蔽部70を介して第2傾斜面80aに当接される(図3参照)。これにより、第1傾斜面44dと第2傾斜面80aとによって遮蔽部70を挟持することができるので、フロントパネル43が最上端まで変位した場合に、第1傾斜面44dと第2傾斜面80aとの間に隙間が生じることを抑制できる。よって、車両用シート1の意匠性を向上させることができる。
【0048】
この場合、フロントカバー8と第1ワイヤ44とによって遮蔽部70が挟持されるものの、例えば、遮蔽部70(フロントカバー8の上方に露出する部位)が上方に引っ張られることにより、遮蔽部70がフロントカバー8の上方側に引き出され、遮蔽部70に皺が寄る恐れがある。これに対して、フロントカバー8と第1ワイヤ44とによって遮蔽部70を強固に挟持するために、例えば、第1ワイヤ44の第1接続部44cと嵌合可能な溝をフロントカバー8に形成する構成を採用することも可能である。しかしながら、かかる構成の場合、遮蔽部70が湾曲した状態で挟持されるため、遮蔽部70が変形することや遮蔽部70に傷が生じる恐れがある。
【0049】
これに対して、本実施形態では、フロントパネル43が最上端に位置する場合に、第1傾斜面44d及び第2傾斜面80aが平行に形成されるので、フロントカバー8と第1ワイヤ44とによって遮蔽部70を挟持する場合に、第2傾斜面80aによって遮蔽部70を第1傾斜面44dに沿って押し当てることができる。
【0050】
即ち、第1傾斜面44dと第2傾斜面80aとの面どうしで遮蔽部70を挟持することにより、遮蔽部70の挟持面積を確保して強固に保持しつつ、遮蔽部70の平面状態を保った状態で挟持することができる。よって、フロントカバー8の上方に露出する遮蔽部70に皺が寄ることを抑制しつつ、フロントカバー8及び第1ワイヤ44に挟持される遮蔽部70に傷が生じることを抑制できる。従って、車両用シート1の意匠性を向上させつつ、その耐久性を向上させることができる。
【0051】
次いで、図4を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、フロントパネル43が回転軸42周りに回転することでサイドフレーム40に対して上下に昇降する場合について説明したが、第2実施形態では、フロントパネル243が鉛直方向に沿ってスライドすることでサイドフレーム40に対して上下に昇降する場合について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0052】
図4(a)は、第2実施形態における車両用シート201の部分拡大断面図であり、図4(b)は、図4(a)の状態からフロントパネル243が上昇した状態を示す車両用シート201の部分拡大断面図である。なお、図4では、理解を容易にするために、車両用シート201の一部の図示を省略し、模式的に図示している。また、図4(a)では、フロントパネル243が最下端に位置する状態を図示しており、図4(b)では、フロントパネル243が最上端に位置する状態を図示している。
【0053】
図4に示すように、車両用シート201のクッションフレーム204は、図示しない駆動源によって上下に昇降可能に構成されるフロントパネル243を備える。一対のサイドフレーム40には、上下方向に沿って延びる案内溝(図示せず)が形成され、その案内溝に対してスライド可能に構成されるスライド部(図示せず)がフロントパネル243に形成される。即ち、フロントパネル243の昇降動作は、サイドフレーム40に形成される案内溝によって案内され、フロントパネル243は、上下方向に沿ってサイドフレーム40に対して相対変位可能に構成される。
【0054】
この場合にも、遮蔽部70が第1ワイヤ44及び第2ワイヤ45を介してフロントパネル243に接続されるので、フロントパネル243に追従させて遮蔽部70を昇降させることができる。これにより、第1実施形態と同様、フロントパネル243の昇降時に、フロントパネル243と遮蔽部70の端末との位置関係を一定に保つことができるので、弾性体を用いることなく、遮蔽部70に皺が寄ることを抑制できる。
【0055】
また、フロントカバー8の延設方向(図4の紙面垂直方向)と直交する平面で切断した断面視において、フロントパネル243が最下端に位置する場合と、最上端に位置する場合との双方の場合において、フロントカバー8の内面80(第2傾斜面80a)の上端は、仮想線Vよりも後方側に配設される。これにより、フロントパネル243の昇降時に、内面80(第2傾斜面80a)の上端を遮蔽部70に当接させることができるので、内面80(第2傾斜面80a)の上端と遮蔽部70との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0056】
ここで、クッション部材6の前端が内面80の上端よりも前方側に位置する(フロントパネル243の前面がクッション部材6で被覆される)構成であると、フロントパネル243の下降時に、フロントパネル243の前面を被覆するクッション部材6の下端と、内面80の上端とが近づくことにより、クッション部材6とフロントカバー8とに挟まれるようにして遮蔽部70に皺が寄りやすくなる。即ち、フロントパネル243が最上端に位置する場合に比べ、最下端に位置する場合に遮蔽部70(フロントカバー8の上方に露出する部位)に皺が寄りやすくなる。
【0057】
これに対して、本実施の形態では、クッション部材6の前端が第1接続部44cの前端よりも前方に位置するので、フロントパネル243が最上端に位置する場合よりも、最下端に位置する場合において、遮蔽部70(仮想線V)への内面80の上端の食い込み量を大きくする(遮蔽部70に加わる張力を大きくする)ことができる。これにより、フロントパネル243が最下端に位置する場合であっても、遮蔽部70に皺が寄ることを抑制できるので、車両用シート201の意匠性が向上する。
【0058】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0059】
上記各実施形態では、ベース部材の一例として、サイドフレーム40を例示し、そのベース部材に対して昇降する昇降部材の一例として、フロントパネル43,243を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、車両に固定されるベース部材(カバー部材)に対して、クッションフレーム(シートクッション)の全体が昇降する構成でも良い。即ち、車両に固定される側(固定側)のベース部材と、そのベース部材に対して上下に相対変位する(可動側の)昇降部材とを備える車両用シートであれば、本発明の技術思想を適用することができる。
【0060】
上記各実施形態では、フロントパネル43,243の前方側の外周に沿って延設されるフロントカバー8と、フロントパネル43,243との間の隙間が遮蔽部70によって遮蔽される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、フロントパネル43,243の側方側の外周に沿って延設されるサイドカバーと、フロントパネル43,243との間の隙間を遮蔽部によって遮蔽する場合おいても、上記各実施形態の技術思想を適用することができる。
【0061】
上記各実施形態では、遮蔽部70をフロントパネル43,243に固定するための第1固定部および第2固定部の一例として、金属製のワイヤから構成される第1ワイヤ44及び第2ワイヤを例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1固定部または第2固定部を金属または樹脂材料からなる板状体から構成しても良い。この場合には、フック71を引っ掛けるための溝を第2固定部に形成すれば良い。第1固定部を板状体から構成する場合には、第2固定部と干渉しない位置で第1固定部をフロントパネル43,243に固定すれば良い。
【0062】
上記各実施形態では、遮蔽部70が第1ワイヤ44の下端で折り返されつつ遮蔽部70の端末がフック71によって第2ワイヤ45に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、遮蔽部70の端末をフック71によって第1ワイヤ44に直接固定する構成でも良い。また、フック71以外の公知の固定手段によって遮蔽部70の端末を第2ワイヤ45に固定する構成でも良く、遮蔽部70を第2ワイヤ45に巻回させつつ端末を遮蔽部70に縫合する構成でも良い。
【0063】
上記各実施形態では、第1接続部44cよりも上方側に第2接続部45bが配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1接続部44cよりも下方に第2接続部45bが配設される構成でも良い。この場合には、フロントカバー8を下方に延長させて第2接続部45bを前方側から被覆すれば良い。
【0064】
上記第1実施形態では、フロントパネル43(昇降部材)が回転軸42によって回転して昇降する場合を説明し、上記第2実施形態では、フロントパネル243(昇降部材)が案内溝によって直線的に昇降する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、フロントパネル43,243(昇降部材)が直線や曲線を組み合わせた案内溝に沿って昇降する構成でも良い。
【0065】
上記各実施形態では、フロントパネル43,243の昇降時に、遮蔽部70にフロントカバー8の内面80の上端が当接される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、フロントパネル43,243の昇降時に、遮蔽部70と内面80とを離間させる構成でも良い。
【0066】
上記各実施形態では、フロントパネル43,243が最上端に位置する場合に、第1ワイヤ44(第1接続部44c)が遮蔽部70を介して第2傾斜面80aに当接される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1ワイヤ44側に向けて突出する凸部(クッションフレーム4,204の幅方向に延設されるもの)をフロントカバー8の内面80に設け、かかる凸部に遮蔽部70を介して第1ワイヤ44(第1接続部44c)を当接させる構成でも良い。
【0067】
上記第1実施形態では、フロントカバー8の内面80が第2傾斜面80aを備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、内面80が上下方向に沿う直線状に形成される構成でも良い。かかる構成であっても、回転軸42周りの第1接続部44cの変位軌跡上に内面80を位置させることにより、内面80に遮蔽部70を介して第1接続部44cを当接させることができる。
【0068】
上記第1実施形態では、回転軸42が第1接続部44cの前端よりも上方であってクッション部材6の前端よりも下方に位置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、回転軸42がクッション部材6の前端よりも上方に位置する構成や、回転軸42が第1接続部44cの前端よりも下方に位置する構成でも良い。
【符号の説明】
【0069】
1,201 車両用シート
40 サイドフレーム(ベース部材)
42 回転軸
43,243 フロントパネル(昇降部材)
44 第1ワイヤ(第1固定部)
44d 第1傾斜面
45 第2ワイヤ(第2固定部)
6 クッション部材
7 表皮
70 遮蔽部
8 フロントカバー(カバー部材)
80 内面
80a 第2傾斜面
図1
図2
図3
図4