特許第6879647号(P6879647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879647
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】シールド端子及びシールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6594 20110101AFI20210524BHJP
   H01R 24/38 20110101ALI20210524BHJP
   H01R 13/6597 20110101ALI20210524BHJP
【FI】
   H01R13/6594
   H01R24/38
   H01R13/6597
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-33561(P2019-33561)
(22)【出願日】2019年2月27日
(65)【公開番号】特開2020-140786(P2020-140786A)
(43)【公開日】2020年9月3日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】三井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】康 麗萍
(72)【発明者】
【氏名】窪田 基樹
(72)【発明者】
【氏名】春日 将宣
(72)【発明者】
【氏名】山中 航
(72)【発明者】
【氏名】金村 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】平野 藍
(72)【発明者】
【氏名】若原 忍
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−006152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46−13/72
H01R 24/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の導電部に接続される内導体接続片を有する内導体端子と、
前記回路基板のグランド部に接続される複数の外導体接続片を有し、前記内導体端子の外周を包囲する外導体端子と、を備え、
前記外導体端子には、前記内導体接続片を前記回路基板側に引き出す引出開口が設けられ、
前記複数の外導体接続片は、前記引出開口に臨むように配置される、第1、第2外導体接続片および第3外導体接続片を有し、
前記第1、第2外導体接続片は、前記外導体端子の背板部から下方に延びる垂下部と、前記垂下部から後方に延びて前記回路基板の表面に沿って配置され、前記グランド部に接続されるグランド接続部と、を有し、
前記内導体接続片は、前記回路基板の表面に形成された前記導電部に接続される導体接続部を有し、前記導体接続部は、前記背板部と前記回路基板との間でかつ前記第1、第2外導体接続片の前記垂下部間から後方に引き出され、
前記第1、第2外導体接続片の前記グランド接続部は、平面視において、1つの前記内導体接続片の前記導体接続部を挟んだ左右両側に並んで配置され、
前記第3外導体接続片は、前記第1、第2外導体接続片の並び方向と直交する方向でかつ1つの前記内導体接続片の導体接続部を通る軸線方向で前記内導体接続片と対向する位置に配置される、シールド端子。
【請求項2】
前記引出開口は、前記第3外導体接続片を前記回路基板側に折り曲げることで開口形状が形成され、前記第3外導体接続片は、曲げの外側の板面を前記内導体接続片に向けて配置されている請求項1に記載のシールド端子。
【請求項3】
前記第3外導体接続片は、前記外導体端子の外端部を除く中央領域から突出し、前記回路基板の接続孔を貫通して実装される請求項1又は請求項2に記載のシールド端子。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシールド端子を備えたシールドコネクタであって、
前記シールド端子は前記内導体端子と前記外導体端子との間に介在する誘電体を有し、前記シールド端子を収容するコネクタハウジングを備えたシールドコネクタ。
【請求項5】
前記コネクタハウジングは、前記第3外導体接続片が前記回路基板のグランド部に接続される位置から退避する方向に凹む形態の凹部を有している請求項4に記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド端子及びシールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内導体端子と、内導体端子を包囲する外導体端子と、外導体端子と内導体端子との間に介在する誘電体とを備えたシールド端子が開示されている。シールド端子は、コネクタハウジングに収容される。内導体端子は、タブ状であってL字形に屈曲され、上下方向に延びる基板組付けタブを有している。内導体端子の基板組付けタブは、回路基板(プリント基板)のスルーホールに挿入される。外導体端子は、内導体端子を覆う外導体端子本体と、外導体端子本体の背面側の開口を閉塞する蓋体とからなる。外導体端子本体は、内導体端子の基板組付けタブを引き出す引出開口の四隅から下方に突出する基板組付けタブを有している。外導体端子の各基板組付けタブは、回路基板のスルーホールに挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−192474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内導体端子の基板組付けタブの周囲は、外導体端子本体および蓋体で覆われてシールドされている。しかし、材料費の削減および歩留りの向上を考慮すると、内導体端子の基板組付けタブの前方を覆う前壁部分などを除去し、外導体端子の各基板組付けタブを内導体端子の基板組付けタブの周囲に配置することで、内導体端子のシールド性を確保する構成にするのが好ましい。上記の場合、外導体端子の各基板組付けタブは、引出開口の四隅に配置され、それぞれ内導体端子の基板組付けタブから離れた位置に配置されている。このため、内導体端子のシールド性を十分に確保することができない懸念がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シールド性を向上させることが可能なシールド端子およびシールドコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシールド端子は、回路基板の導電部に接続される内導体接続片を有する内導体端子と、前記回路基板のグランド部に接続される複数の外導体接続片を有し、前記内導体端子の外周を包囲する外導体端子と、を備え、前記外導体端子には、前記内導体接続片を前記回路基板側に引き出す引出開口が設けられ、前記複数の外導体接続片は、前記引出開口に臨むように配置され、平面視において、前記内導体接続片を挟んだ両側に位置する第1、第2外導体接続片と、前記第1、第2外導体接続片の並び方向と直交する方向でかつ前記並び方向に関して前記第1、第2外導体接続片間となる位置で前記内導体接続片と対向して位置する第3外導体接続片と、を有しているところに特徴を有する。
【0007】
第1〜第3外導体接続片が引出開口に臨むように配置され、平面視において、第1、第2外導体接続片が内導体接続片を挟んだ両側に位置し、第3外導体接続片が第1、第2外導体接続片の並び方向と直交する方向でかつ並び方向に関して第1、第2外導体接続片間となる位置で内導体接続片と対向して位置するため、上記特許文献1に記載された外導体端子の基板組付けタブが引出開口の四隅に対角状に位置する場合と比較し、第1〜第3外導体接続片を内導体接続片の近くに位置させて内導体端子を効果的に遮蔽することができ、シールド性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1のシールドコネクタの正面図である。
図2図1のX−X線断面図である。
図3】第1〜第3外導体接続片の位置関係を示す平断面図である。
図4図1のY−Y線断面図である。
図5】シールドコネクタの側面図である。
図6】外導体端子を下方から見た斜視図である。
図7】外導体端子の正面図である。
図8】外導体端子の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態を以下に示す。
(1)引出開口は、第3外導体接続片を回路基板側に折り曲げることで開口形状が形成され、第3外導体接続片は、曲げの外側の板面を内導体接続片に向けて配置されているとよい。これによれば、第3外導体接続片が金属板の打ち抜き加工後の曲げ加工によって引出開口とともに歩留りよく形成される。また、第3外導体接続片の板面が内導体接続片に対向することにより、内導体接続片が良好にシールドされる。
【0010】
(2)第3外導体接続片は、外導体端子の外端部を除く中央領域から突出し、回路基板の接続孔を貫通して実装されるとよい。これによれば、例えば、加熱環境下で外導体端子に伝わる応力が外導体端子の中央領域から突出する第3外導体接続片を介して回路基板へと良好に逃がされ、外導体端子が回路基板に対して位置ずれするのを防止することができる。
【0011】
(3)上記に記載のシールド端子は内導体端子と外導体端子との間に介在する誘電体を有し、シールド端子を収容するコネクタハウジングを備えたシールドコネクタが構成されるとよい。本発明によれば、良好なシールド性を実現することができるため、例えば、自動車の高速通信用のシールドコネクタとして好適に用いることができる。
【0012】
(4)コネクタハウジングは、第3外導体接続片が回路基板のグランド部に接続される位置から退避する方向に凹む形態の凹部を有しているとよい。これによれば、第3外導体接続片が回路基板のグランド部に接続される位置に施される半田ペーストにコネクタハウジングが接触するのを回避することができ、回路基板に対する実装の信頼性を向上させることができる。また、凹部によってコネクタハウジングが変形しにくくなるから、回路基板に対するコプラナリティを確保することができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1を図1図8を参照して説明する。本実施例1のシールドコネクタ10は、図示しない自動車に搭載され、車載電装品間の高速通信に用いられる。なお、以下の説明において、前後方向については、図4の左側を前側とし、上方及び下方は、図1および図4の上下方向を基準とする。
【0014】
シールドコネクタ10は、図1および図4に示すように、シールド端子20と、シールド端子20を収容するコネクタハウジング60とを備えている。シールド端子20は、内導体端子21と、内導体端子21の外周を包囲する外導体端子22と、外導体端子22と内導体端子21との間に介在する誘電体23とを有している。
【0015】
内導体端子21は導電性の金属板を曲げ加工などして形成される。図4に示すように、内導体端子21は、軸線を前後方向に向けて配置される円筒状の内導体本体24と、内導体本体24の前方に突出するタブ25と、内導体端子21の後方に突出する一つの内導体接続片26とを有している。
【0016】
タブ25は、シールドコネクタ10が図示しない相手コネクタと嵌合されたときに、相手コネクタに備わる図示しない相手端子金具に電気的に接続される。内導体接続片26は、一定幅の帯板状であって側面視略L字形に屈曲され、内導体本体24の後方から下方へ延びる垂直部27と、垂直部27の下端から後方へ延びる導体接続部28とからなる。導体接続部28は、後方へ向けて少し下り勾配に傾斜して配置され、プリント回路基板(回路基板90)の表面に形成された信号伝送用のランド(導電部91)に接触し、回路基板90に電気的に接続される。
【0017】
誘電体23は、所定の比誘電率を有する絶縁性の合成樹脂材によって形成され、内部に前後方向に貫通する端子収容室29を有している。端子収容室29には内導体本体24が収容される。内導体端子21は、内導体本体24が誘電体23に保持された状態で、端子収容室29の前端開口から前方にタブ25を突出させ、端子収容室29の後端開口から導体接続部28を露出させる。内導体端子21と外導体端子22との間は、誘電体23によって絶縁状態に保たれる。
【0018】
コネクタハウジング60は合成樹脂製であって、図1および図4に示すように、左右方向(幅方向)および上下方向にほぼ沿った基壁部61と、基壁部61の外周から前方へ突出する左右方向に長い角筒状のフード部62とを有している。コネクタハウジング60は、基壁部61の左右両端から後方へ突出する一対の側壁部63を有している(図4図5で一方のみを図示)。コネクタハウジング60は、左右両側の外面においてフード部62と側壁部63とにまたがる部分に、一対の固定部材65を装着させている。固定部材65は金属製の板材であって、断面L字形をなし、上下方向に沿う部分がコネクタハウジング60に装着され、左右方向に沿う部分が回路基板90の表面に沿って配置されて半田付けによって回路基板90に固定される。
【0019】
図1および図4に示すように、フード部62は、上壁の内面に、ハウジングロック部66を有している。フード部62内には、図示しない相手コネクタが嵌合される。ハウジングロック部66は、相手コネクタを係止することで両コネクタを嵌合状態に保持する役割を果たす。
【0020】
基壁部61は、前後方向(基壁部61の壁厚方向)に貫通する複数の装着孔67を有している。図1に示すように、各装着孔67は、断面略円形をなし、基壁部61に左右方向に間隔をあけて4つ並んで配置され、内部に外導体端子22が挿入される。
【0021】
図4に示すように、基壁部61は、回路基板90に臨む下面に、凹部68を有している。凹部68は、基壁部61の下端角部を断面略L字形に切り欠くようにして形成され、基壁部61の下面、後面および両側面に開口している。凹部68の内上面は、フード部62の下面よりも回路基板90の表面から離れて位置する退避面69とされている。コネクタハウジング60は、リフロー半田を行う際の加熱環境下で幅方向に湾曲変形する懸念があるが、凹部68の存在によって湾曲変形するのが抑えられ、コプラナリティを確保することができる。また、凹部68は、回路基板90に設けられた後述する第3グランド部94の上方に退避面69を位置させており、第3グランド部94に形成された半田ペーストに接触することなく上方から臨むように配置されている。このため、半田ペーストがリフローで溶融したときにコネクタハウジング60と接触するのを回避することができ、回路基板90に対する実装の信頼性を向上させることができる。
【0022】
外導体端子22は、導電性の金属板を図8に示す展開形状に打ち抜いたあと曲げ加工などして形成される。外導体端子22は、図4および図6に示すように、軸線を前後方向に向けた筒状の外導体本体31と、外導体本体31の後端に対してヒンジ部32を介して開閉可能に連結される平板状の蓋部33とを有している。
【0023】
図6に示すように、外導体本体31は、円筒状の筒状部34と、筒状部34の後端上部に連なって外導体本体31の上部に段差なく連続する断面弧状の連結部35とを有している。
【0024】
筒状部34は、下端の左右中央に、突き合わせ端36を有している。図6に示すように、筒状部34の突き合わせ端36には、凹凸部37が前後に並んで設けられている。筒状部34は、凹凸部37の噛み合いによって円筒状に維持される。
【0025】
筒状部34は、左右両側の上下中央に、上下方向に沿って線状(一直線状)に開口する一対の本体側スリット38(図6で1つのみ図示)を有し、本体側スリット38を挟んだ前後両側のうち、前側に、コネクタハウジング60に係止される一対の外側係止部39を有し、後側に、誘電体23に係止される一対の内側係止部41を有している。外側係止部39は、筒状部34の側壁部分を、本体側スリット38を介して外側に曲げ起こしてなり、側面視略三角形の爪状に形成されている。図1に示すように、外導体端子22は、外導体本体31が装着孔67を貫通した状態で、両外側係止部39が装着孔67の内面を係止することで、コネクタハウジング60に抜け止め状態に保持される。外導体端子22がコネクタハウジング60に保持された状態では、図4に示すように、筒状部34の前部がフード部62内に突出して配置され、外導体本体31の後部および蓋部33が基壁部61の後方に露出して配置される。外導体本体31の後部および蓋部33は、左右両側を側壁部63で覆われて保護される。
【0026】
内側係止部41は、筒状部34の側壁部分を、本体側スリット38を介して内側に曲げ起こしてなり(図7を参照)、側面視略三角形の爪状に形成されている。誘電体23は、筒状部34内に挿入されて内側係止部41に係止されることで、筒状部34に抜け止め状態に保持される。
【0027】
図6に示すように、筒状部34は、前後方向中央より少し後方の下端左右中央部に、下方に突出するタブ状の第3外導体接続片42を有している。第3外導体接続片42は、展開形状で後方に延びるタブ状の舌片部分(図8のA部を参照)を下向きに折り曲げて形成される。第3外導体接続片42は、板面を上下方向に沿わせて配置され、図7に示すように、筒状部34に連なる左右幅広の基部43と、基部43から左右両側に張り出す一対の張出部44と、基部43の左右中央部から下方へ基部43より幅狭で延びるタブ部45とを有している。図4に示すように、第3外導体接続片42のタブ部45は、回路基板90のスルーホール(接続孔95)に挿入されることで、回路基板90に形成された第3グランド部94に電気的に接続される。
【0028】
外導体本体31は、筒状部34の後方でかつ連結部35の下方に、内導体接続片26を回路基板90側に引き出すための引出開口46を有している(図4図6を参照)。第3外導体接続片42は、曲げの外側の板面である後面を引出開口46に臨ませて配置されている。
【0029】
連結部35は、左右両側の下部(周方向両端部)に、図7に示すように、下方に突出する一対の本体側ロック部47を有している。
両本体側ロック部47は、板状をなし、板面を前後方向に沿わせて配置される側板部48と、側板部48の後方に連なる接触部49(図4を参照)とを有している。側板部48の前端は、後述する蓋部33の蓋側ロック部56に当接して係止可能とされている(図6を参照)。
【0030】
接触部49は、側板部48の後端の板厚部分において上下方向に間隔をあけた二箇所に連なる断面略矩形のピン状部分であり、板厚方向内側(引出開口46側)に屈曲されてなる(図4を参照)。
【0031】
ヒンジ部32は、連結部35と蓋部33との間に位置して両者をつなぐ幅狭の可撓性ヒンジとして構成される。
蓋部33は、ヒンジ部32が直線状に延びて引出開口46の後方を開放する開状態と、ヒンジ部32が回曲状に屈曲して引出開口46の後方を閉塞する閉状態とに、回動変位可能とされている。図6に示すように、蓋部33は、後面部分となる背板部51と、側面部分となる一対の側部52と、背板部51に連設される第1外導体接続片53および第2外導体接続片54とを有している。
【0032】
背板部51は、背面視矩形状をなし、図4に示すように、閉状態で上下方向に沿って配置され、外導体本体31の後面の開口を閉塞する。
一対の側部52は、それぞれ、背板部51の左右両端部から側方に張り出す板状部分(図8のB部を参照)を前方へ屈曲させてなり、閉状態では板面を前後方向に沿わせて、対応する本体側ロック部47に外側から覆い被さるように配置される(図7を参照)。
【0033】
側部52は、図6に示すように、略中央部に、閉状態において上下方向に沿って線状(一直線状)に開口する蓋側スリット55を有し、蓋側スリット55を挟んだ前後両側のうち、前側に、蓋側ロック部56を有している。蓋側ロック部56は、蓋側スリット55を介して内側(閉状態で引出開口46側)に曲げ起こされ、側面視矩形の扁平台状をなし(図7を参照)、蓋側スリット55に臨む後端の板厚部分が上下方向に沿って配置されている。背板部51は、前面の左右両端部の前面において、蓋側ロック部56との間に本体側ロック部47を挟み込み、本体側ロック部47の各接触部49と接触する。
【0034】
第1外導体接続片53および第2外導体接続片54は、互いに同一形状であって、背板部51から下方へ互いに対をなして突出している。第1、第2外導体接続片53、54は、図6に示すように、全長にわたって同幅で連なる帯板状をなし、側面視略L字形に形成されている。具体的には、第1、第2外導体接続片53、54は、閉状態において背板部51の下端の左右両端側から下方に延びる垂下部57と、垂下部57の下端から後方に屈曲して延びるグランド接続部58とを有している。垂下部57は、前側の板面である前面を引出開口46に臨ませて配置されている。第1、第2外導体接続片53、54は、図4に示すように、グランド接続部58が回路基板90の表面に沿って配置されることで、回路基板90の表面に形成された第1、第2グランド部92、93にそれぞれ電気的に接続される。
【0035】
次に、本実施例1の作用を説明する。
まず、外導体端子22がコネクタハウジング60の基壁部61の装着孔67に挿入される。本実施例1の場合、4つの外導体端子22がそれぞれに対応する装着孔67に組み付けられる(図1を参照)。ここで、蓋部33は開状態にあり、各接触部49は屈曲前の直線状態にある。
続いて、外導体端子22の内側に、後方から誘電体23が挿入される。次いで、誘電体23の端子収容室29に、内導体端子21が挿入される。その後、各接触部49が屈曲させられ、その状態から蓋部33がヒンジ部32を介して閉状態に回動させられる。蓋部33が閉状態に変位する過程で、両側部52の蓋側ロック部56が対応する本体側ロック部47と干渉し、両側部52が背板部51との連結部位を支点として拡開変形(弾性変形)させられる。
【0036】
蓋部33が閉状態に至ると、外導体本体31の後面の開口が背板部51によって閉塞されるとともに、両側部52の蓋側ロック部56が本体側ロック部47を乗り越え、両側部52が弾性復帰し、対応する本体側ロック部47を外側から覆う。また、蓋部33が閉状態に至ると、側部52の蓋側スリット55の上部に側板部48前側下端部が進入し(図6を参照)、蓋側ロック部56の後端が側板部48の前端に上下方向に沿って当接する。同時に、背板部51が上下の接触部49の先端部分(屈曲部分より先方の部分)に左右方向に沿って当接する。この場合に、各接触部49は、側板部48に連なる付け根部分を支点として少し撓み変形した状態で、曲げの外側の板面を背板部51の前面に沿わせて接触する。これにより、蓋部33が外導体本体31に対して閉状態に確実に保持されることになる。
【0037】
その後、シールドコネクタ10は、回路基板90の表面に設置され、リフロー半田が施されて、回路基板90に固定部材65を介して固定される。また、リフロー半田によって、内導体接続片26の導体接続部28が回路基板90の導電部91に接続されるとともに、第3外導体接続片42のタブ部45が回路基板90の接続孔95に挿入されて第3グランド部94に接続され、かつ第1、第2外導体接続片53、54部のグランド接続部58が回路基板90の第1、第2グランド部92、93に接続される。
【0038】
内導体端子21に流れる電気信号は、内導体接続片26を介して回路基板90の導電部91に流れる。外導体端子22には電気信号に対するリターン電流が発生する。リターン電流は、外導体端子22の内面に沿って流れ、第1〜第3外導体接続片42、53、54を介して回路基板90の第1〜第3グランド部92〜94に落とされる。
【0039】
ここで、内導体接続片26の導体接続部28は、背板部51の下端と回路基板90との間でかつ第1、第2外導体接続片53、54の垂下部57間に開口する隙間を通して後方へ引き出される。図2に示すように、回路基板90を上方から見た平面視において、第1、第2グランド部92、93は、導電部91を挟んだ左右両側に導電部91と近接して配置され、それぞれ導電部91より幅広で大きいランド面積を有している。第3グランド部94は、第1、第2グランド部92、93および導電部91の前方にこれらと近接して配置され、第1、第2グランド部92、93および導電部91をあわせた一括領域よりも幅広で大きいランド面積を有している。
【0040】
図3に示すように、第1、第2外導体接続片53、54のグランド接続部58は、平面視において、内導体接続片26の導体接続部28を挟んだ左右両側に対をなして導体接続部28と近接して配置され、それぞれ導体接続部28より幅広に形成されている。第3外導体接続片42のタブ部45は、内導体接続片26の導体接続部28の前方に近接して配置され、板面(後面)を導体接続部28に向けることで導体接続部28より幅広に形成されている。具体的には、第3外導体接続片42のタブ部45は、第1、第2外導体接続片53、54のグランド接続部58が内導体接続片26の導体接続部28を間に挟んで並ぶ並び方向(幅方向、左右方向であって図3のL方向)と直交する方向で、かつ内導体接続片26を通る軸線上の方向(図3のC方向)に、内導体接続片26に後面を向けつつ近接して配置されている。第1、第2外導体接続片53、54のグランド接続部58および第3外導体接続片42のタブ部45をそれぞれ結ぶと、三角形、詳細には正三角形または二等辺三角形が形成され、内側に内導体接続片26が位置することになる。
【0041】
本実施例1の場合、外導体端子22は、内導体接続片26の下端部の前方を覆う位置に、外導体本体31を有さず、内導体接続片26の下端部の後方を覆う位置に、背板部51を有していない。しかし、上記のとおり、第1、第2外導体接続片53、54が内導体接続片26の左右両側に近接して配置され、第3外導体接続片42が内導体接続片26を通る軸線上に内導体端子21に後面を向けつつ配置されているため、内導体接続片26が周囲を取り囲む第1〜3外導体接続片によって効果的に遮蔽される。その結果、第1〜第3外導体接続片42、53、54によって外導体端子22によるシールド性が良好に確保される。
【0042】
本実施例1によれば、第1〜第3外導体接続片42、53、54が内導体接続片26の周囲を平面視において円状(仮想円状)に囲むようにバランス良く配置されている。そして、第3外導体接続片42は第3グランド部94に実質的に最短経路でグランド接続されている。
具体的には、第1〜第3外導体接続片42、53、54が引出開口46に臨むように配置され、平面視において、第1、第2外導体接続片53、54が内導体接続片26を挟んだ両側に位置し、第3外導体接続片42が第1、第2外導体接続片53、54の並び方向(図3のL方向)と直交しかつ内導体接続片26を通る軸線方向(図3のC方向)で内導体接続片26と対向して位置するため、第1〜第3外導体接続片42、53、54を内導体接続片26の近くに位置させることができ、その分、シールド性を向上させることができる。
【0043】
また、引出開口46の開口形状が第3外導体接続片42を回路基板90側に折り曲げることで形成されるため、第3外導体接続片42が金属板の打ち抜き加工後の曲げ加工によって引出開口46とともに歩留りよく形成される。しかも、第3外導体接続片42が曲げの外側の板面を内導体接続片26に向けて配置されているため、内導体接続片26が第3外導体接続片42によって良好にシールドされる。
【0044】
さらに、第3外導体接続片42が外導体本体31の下端における前後方向および幅方向の略中央部(外導体端子22の外端部を除く中央領域)から突出し、回路基板90の接続孔95を貫通して実装されるため、例えば、リフロー半田などの加熱環境下でコネクタハウジング60を変形させる応力が外導体端子22に作用しても、その応力が第3外導体接続片42を介して回路基板90へと良好に逃がされ、外導体端子22が回路基板90に対して位置ずれするのを防止することができる。
【0045】
<他の実施例>
以下、他の実施例を簡単に説明する。
(1)外導体端子は、ヒンジ部を有さず、蓋部と外導体本体とが分離可能な別体として構成されるものであってもよい。
(2)外導体端子は、第1〜第3外導体接続片に加え、内導体接続片の周囲を取り囲む位置に、さらなる外導体接続片を有していてもよい。
(3)第3外導体接続片は、必ずしも幅方向(第1、第2外導体接続片の並び方向)に関して内導体接続片と同じ位置となるように内導体接続片を通る軸線上の位置に配置されている必要はなく、幅方向(第1、第2外導体接続片の並び方向)に関して第1、第2外導体接続片間の位置(図3の矢印Lの範囲内)に配置されていればよい。
【0046】
(4)第1、第2外導体接続片は、内導体接続片を挟んだ左右両側で内導体接続片に対して前後方向に位置ずれして配置されていてもよい。
(5)第1、第2外導体接続片は、互いに異形状とされるものであってもよい。
(6)内導体接続片は、回路基板の接続孔に挿入されるスルーホール実装型であってもよい。
(7)第1、第2外導体接続片は、回路基板の接続孔に挿入されるスルーホール実装型であってもよい。
(8)第3外導体接続片は、回路基板の表面に沿って配置される部分を有する表面実装型であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…シールドコネクタ
20…シールド端子
21…内導体端子
22…外導体端子
23…誘電体
26…内導体接続片
42…第3外導体接続片
46…引出開口
53…第1外導体接続片
54…第2外導体接続片
60…コネクタハウジング
68…凹部
90…回路基板
91…導電部
95…接続孔
図1
図2
図3
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図5
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図8