特許第6879741号(P6879741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879741
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】適切な姿勢のためのハイヒール靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20210524BHJP
   A43B 21/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   A43B13/14 A
   A43B21/00
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-545997(P2016-545997)
(86)(22)【出願日】2015年1月12日
(65)【公表番号】特表2017-506931(P2017-506931A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】US2015011072
(87)【国際公開番号】WO2015106229
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】61/925,748
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/595,205
(32)【優先日】2015年1月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516205328
【氏名又は名称】ヒールゼロ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】HEELZERO LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100069615
【弁理士】
【氏名又は名称】金倉 喬二
(72)【発明者】
【氏名】カゼス, ハイム, ビターリ
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−523981(JP,A)
【文献】 特開2012−066050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/14
A43B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立および歩行に関して解剖学的に適した身体姿勢をヒトが取って維持することを可能にし、かつ整形外科的な傾斜を有するヒトの足用のハイヒール靴であって、爪先区域とヒール区域を備え、前記爪先区域と前記ヒール区域とが、ソール区域によって分離され、かつ前記ソール区域と接続され、前記ハイヒール靴が、ヒトの足の爪先、踵、および足底をそれぞれ支持するように構成され、前記爪先の支持部と前記踵の支持部との間の垂直距離が、5.08〜11.43cm(2〜4.5インチ)の間であり、ヒトの足底および踵を直接支持する前記ソール区域が、湾曲された傾斜を有し、前記爪先区域の底部から前記ソール区域が上昇し始める点に原点を有するx−y座標系と重ね合わされ、前記湾曲傾斜構成が、公式
y=(5/arctan(10k))*arctan(k*x)
に従って、前記ソール区域に沿って値xおよびyに従って決定され、
ここで、yは、前記ソール区域での1点のy座標であり、xは、前記点のx座標であり前記公式においてはその値の範囲は0から10に正規化され、kは、1/4.5〜1/2.75の間の範囲内の実験から得られた値であり、y値は、前記爪先区域の前記底部から延びる平面からの垂直距離を示し、ここで、前記y値は、ヒトの足の補正因子の公式
1/(1+(x−xj2/k2
を乗算され、ここで、xは、x座標であり前記ヒトの足の補正因子の公式においてはその値の範囲は0から100に正規化され、k2は、300であり、xjは、前記爪先区域と前記ヒール区域との間の垂直距離の関数であり、5.08〜11.43cm(2〜4.5インチ)の間の範囲内の前記垂直距離に関して20〜60の範囲である
ハイヒール靴。
【請求項2】
前記ソール区域と前記ヒール区域とが、連続する湾曲されたソールから構成される請求項1に記載のハイヒール靴。
【請求項3】
前記爪先区域が、7°〜26°の間の角度で前記爪先区域の前記底部から上昇する傾斜βを備える請求項2に記載のハイヒール靴。
【請求項4】
前記ヒール区域が、傾斜αを有し、前記傾斜αが、5°〜26°の間の角度で前記ヒール区域の底部から上昇し、実質的に直立した身体姿勢を提供するように選択される請求項2に記載のハイヒール靴。
【請求項5】
前記爪先区域が、8.89cm(3と1/2インチ)の高さまでのプラットフォームを有する前記ハイヒール靴の底部区域から上昇される請求項1に記載のハイヒール靴。
【請求項6】
前記爪先区域、前記ソール区域、および前記ヒール区域が、硬いウェッジソールとして構成され、前記ウェッジソールの上部が、前記ヒトの足の爪先、足底、および踵に関する直接の支持を提供する請求項1に記載のハイヒール靴。
【請求項7】
1.27cm(0.5インチ)の増分で5.08〜11.43cm(2〜4.5インチ)の範囲内の垂直高さを有するハイヒール靴に関して、A1が、5.08cm(2インチ)の垂直高さを表し、A2が、6.35cm(2と1/2インチ)を表し、A3が、7.62cm(3インチ)を表し、A4が、8.89cm(3と1/2インチ)を表し、A5が、10.16cm(4インチ)を表し、A6が、11.43cm(4.5インチ)を表し、以下の表が、前記ヒールの末端での前記靴の後部から計測した、前記ソールに沿ったいくつかの位置での角度曲率を含み、5.08〜11.43cm(2〜4.5インチ)の間の1.27cm(0.5インチ)きざみ以外の垂直高さについては、角度曲率がそこから外挿され、それぞれの位置において、A1に関する角度曲率値の範囲がA1〜A2の値に及び、A2に関しては前記角度曲率値がA1〜A3の値に及び、A3に関しては前記角度曲率値がA2〜A4の値に及び、A4に関しては前記角度曲率値がA3〜A5の値に及び、A5に関しては前記角度曲率値がA4〜A6の値に及び、A6に関しては前記角度曲率値がA5〜A6の値に及ぶ請求項1に記載のハイヒール靴。
【表5】
【請求項8】
1.27cm(0.5インチ)の増分で5.08〜11.43cm(2〜4.5インチ)の範囲内の垂直高さを有するハイヒール靴に関して、A1が、5.08cm(2インチ)の垂直高さを表し、A2が、6.35cm(2と1/2インチ)を表し、A3が、7.62cm(3インチ)を表し、A4が、8.89cm(3と1/2インチ)を表し、A5が、10.16cm(4インチ)を表し、A6が、11.43cm(4.5インチ)を表し、以下の表が、前記ヒールの末端での前記靴の後部から計測した、前記ソールに沿った角度曲率を含み、5.08〜11.43cm(2〜4.5インチ)の間の1.27cm(0.5インチ)きざみ以外の垂直高さについては、角度曲率がそこから外挿される請求項1に記載のハイヒール靴。
【表6】
【請求項9】
前記ヒール区域が、前記ヒール区域の底部から上昇する傾斜αと、前記爪先区域の底部から上昇する傾斜βとを備え、垂直高さを変えるためのαおよびβに関する前記値範囲が、以下の表に記載される請求項7に記載のハイヒール靴。
【表7】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイヒール靴に関し、特に、着用者が、起立および歩行中に解剖学的に適切な姿勢を取って維持することを可能にするハイヒール靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴、特に、一般に2インチ(5.08cm)を超えるヒール高さを有するハイヒール靴として知られている靴は、ヒトの足に着用されるように適合されている。快適性が、履物の主要な考慮事項であるが、特に上記のハイヒール靴(大抵は特に見栄えを考慮して着用される)に関しては、見栄えの方が重視される。
【0003】
解剖学的に、ヒトの足は、26本の異なる骨から構成され、それらの骨は、約30の関節によって互いに接続され靭帯および関節包によって、それぞれの場所に保たれる。30の腱が、脚の下側筋肉、および足の筋肉の腱に加えて、足の動きに役割を持つ。
【0004】
足首の関節は、足の背屈運動(爪先を上げ、踵のみで立つ)および底屈運動(爪先を下げ、爪先のみで立つ)を担当する。足首の関節の下に、足根骨と呼ばれる5本の骨があり、これらの骨は、必要であれば、それらが接する表面の性質に応じて、骨間の関節を介して1群として動くことによって、非常に耐性または剛性のある構造となり得る。足根骨は、足の前部に位置される5本の長い骨である。これらの足根骨構造の端部に、趾節骨からなる、通常の歩行に必要とされる指関節がある。足指は、中足趾節(MTP)関節を介して足根骨と接続され、最も重要なのは、足の親指に属する第1MTP関節である。
【0005】
足の構造は、3つの認識可能な部分に分けることができる。後部から始めて、第1の部分、すなわち踵は、距骨および踵骨からなる。第2のまたは中央部分は、舟状骨、中足骨、および他の骨(立方骨および3本の楔状骨)からなる。5本の足指が、足の第3の部分または前部を構成する。足の親指は、手の親指と同様に2本の趾節骨を有し、他の足指は、3本の趾節骨を有する。足指に負荷が及ぼされるとき、足の親指が地面を押す間、他の4本の足指は、把持運動位置を取る。
【0006】
足には2つのアーチ構造が存在する。1つは、足の前部での横方向アーチである。第2のまたは他方の縦方向アーチは、踵骨から始まり、足の親指の基節関節まで、足の内側に沿って延びる。前部でのアーチは、靭帯によって形成され、靭帯は、足に負荷が作用していないときにはアーチの形状を維持し、足に負荷が及ぼされるときには、地面に押し付けられるときに伸びる。踵骨から足指に広がっている足底腱膜(アーチ靭帯)も伸びる。アーチに及ぼされる負荷が大きければ大きいほど、靭帯は大きく伸びる。足および足指の多くの運動は、脚の下部から始まる筋肉によって制御され、その筋肉の腱は足に付着している。
【0007】
いくつかの筋肉は、足のより繊細な動きを制御し、これらの筋肉は、足自体から始まって足に付着されている。足の多くの運動は、靭帯を介して、脚の底部にある筋肉によって提供される。足の起立、歩行、および走りの機能は、これらの筋肉の収縮によって可能にされる。上記の筋肉以外の多くの小さな筋肉は、足底で底部を形成し、それらの筋肉の位置は骨の間である。
【0008】
典型的なヒトの足の構造において相互作用する構成要素が非常に多くあるので、相互の快適性レベルを高めるために、構成要素の支持および位置決めが、足の他の構成要素の支持および位置決めと付随的に関連付けられなければならないことが明らかである。足のいくつかの部分の支持および位置決めの極端な歪みは、快適性の実現を難しくする。
【0009】
今日使用されている女性用ハイヒール靴の機能は、健康的または快適なものでなく、大抵は、靴の美観のためのものにすぎないことが知られている。美観的な考慮は、足の適切な支持、特に足の運動とは相容れないものであることが多い。現在のほぼ全てのハイヒール靴における不正確な角度計算に起因する状況により、主に、そのような靴を履いた人の重心は、足の前部に向けて、すなわち中足骨に向けてずれる。したがって、そのような靴での歩行は、歪んだ不自然なものとなる。これは、アキレス腱の変形、腱の伸びに起因する身体の全ての部位の痛み(頭痛を含む)、半月板や股関節の脱臼を引き起こすことがあり、また、胴および首、すなわち「脊柱(Columna vertebralis)」の脊椎が通常よりも大きい脊椎湾曲を有する「S形状」を取るようになり得る。そのような靴を常に履いていると、脊椎の上記のS形状が大きくなり、それにより、着用者が、椎間板ヘルニアおよび頸椎椎間板ヘルニアになる可能性を高める。
【0010】
ハイヒール靴の構造において不正確なアークタンジェント値または不正確なヒール−爪先部角度値が使用されるときにしばしば起こり得るように、ハイヒール靴を履く人は、快適でなくなり、しばしば、短時間の後、足底の強い痛みを感じる。ヒールの角度が、最小の角度値よりも低い値に設定されるときでさえ、重心が必要以上に後ろになるので、足底の痛みが生じ、足は、想定以上に大きい弧状を取るように強いられる。
【0011】
従来、解剖学的に適正な支持と快適さの向上とを備えるハイヒール靴を提供するために、様々な国で、多くの異なる様式で、様々な手段が使用されている。しかし、そのような手段のうち、美観に影響を及ぼすことなく高水準の適正な支持および快適性を提供するものは、あったとしてもほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、最小限の、または見分けの付かない程の美観的な変更しか伴わず、それでも、着用する人、通常は女性(同様に男性の履物にも適用可能であるが、本明細書では女性の着用者に言及する)が解剖学的に適正(適切)な姿勢で起立および歩行することができるようにする、すなわちヒールのない平らな靴で歩くときと同様に歩くことができるようにするハイヒール靴を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、着用者の身体が適正なバランスで起立することができ、足が全ての点で支持されるようにするハイヒール靴を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、特にスタイリッシュなタイプのハイヒール靴の構成では通常は達成可能でない非常に高い快適性を伴って、解剖学的に適切な直立した身体姿勢を着用者が取って維持することができるようにするハイヒール靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
概して、本発明は、適切な相互の角度および長さを有する構造構成で構成要素を備えるように構成された2インチ(5.08cm)を超えるヒール高さのハイヒール靴であって、足のストレスおよび不快感が最小限にされると共に、靴の美観が保たれるハイヒール靴を備える。
【0016】
本発明によれば、解剖学的に適切な直立した身体姿勢およびそれに伴う快適さは、ハイヒール靴において、本明細書で述べるようなアークタンジェント値を調節することによって、実質的に正確に適合した形で実現することができる。これは、足の後部または中央部にくるように重心を調節することによってのみ可能にされ得る。すなわち、直立した身体姿勢は、身体を健康な解剖学的構造に適切な位置にすることによって実現することができる。
【0017】
ハイヒール靴の構成における足の支持、およびそれに関連する構成要素を実現するには、ハイヒール靴の各部の理解が必要であり、以下に定義する。通常は足の底部に接触する第1の部分は、「インソールボード」である。これは、靴の硬い部分であり、この部分は、ほとんどの履物で足の後部全体のすぐ下にある。インソールボードは通常、靴の後部(ヒール区域)から始まり、しばしば、爪先区域まで、または足の底部の曲率の端部まで延びる。インソールボードは通常、別のクッション層、および/またはその上のインソールライニングの層を有する。ライニングのこの厚さは変えることができ、しばしば変えられる。
【0018】
「シャンク」は、インソールボードの下の特定の点に配置された支持部(しばしば鋼などの金属、またはガラスファイバもしくは他の強い素材から形成することができる)であり、インソールボードの形状を支え、着用者によってインソールに加えられる重量を支持する。シャンクは、決まった配置位置を有さないが、その湾曲は、インソールボードの下(または時として上)にそれが配置される位置で、インソールボードの湾曲に合致する必要がある。本明細書において、「曲率」は通常、「インソールボード」に関するものであり、または、着用者の足のすぐ下にあり、足の後部から始まって、下がりきった(すなわち実質的に平坦な)点に達するまで前方に延びる靴の任意の部分に関するものである。これに関して、インソールボードが通常、別のクッション層、および/またはその上のインソールライニングの層を有することに留意されたい。ライニングの厚さは変えることができ、それにより曲率のパラメータに影響を及ぼすことがある。有意な厚さが存在し、クッション材料の硬さにより、足がインソール面以外の曲率の上に位置する場合、本明細書で規定される曲率は、着用者が靴に体重をかけたときに達成される曲率であり、靴を繰返し履いた後(最初の数回の使用後にクッションが安定した後、または形状を保つ強いクッションの場合には、最初に履いた後)に足のすぐ下に残る形状が、本明細書における「曲率」である。
【0019】
ハイヒール靴でのインソールボードの角度(アークタンジェント値)が、解剖学的構造に適合するように調節されるとき、足底での隆起部および窪み部の全ての点が、インソールボード上に正確に支持される。靴の様々な部分が着用者の足を直接支持することができるので、本明細書における用語「インソールボード」は、特に、着用者の足を直接支持し、着用者の足に接触する靴の部分およびその曲率を表す。これはまた、ウェッジソールタイプのハイヒール靴での同じタイプの上側構造も含む。
【0020】
ハイヒール靴のインソールボードは、一般に、arctan(k*x)関数と同様の形状に従う。
【0021】
この構造において上記関数の形状を得るため、および上記関数が所望の曲率をどのようにして示すかを把握するために、まず、「式1」を使用して、所望の曲率を有するインソールボード上の点に関してy値を得た。
y=(5/arctan(10k))*arctan(k*x) (式1)
ここで、x−y座標面は、ハイヒール靴のインソールボードの側方位置に対して重ね合わされ、インソールボードの上向きの傾斜の開始点に原点を有し、x座標の値は、座標面の垂直軸から、インソールボードが位置決めされる点まで延びる長さを表す。kの値は実験により定められる。定められるように、kの値は、ヒール高さに従って変化し、様々な値が以下の表4に記載されている(他のヒール高さ、および特定のヒール高さに関する有効範囲については、値の外挿および変更が成される)。
【0022】
因子(以下に記載する補正因子で使用される)は、曲率因子に関して、定数値300を表し、これは、本発明による解剖学的に適正な位置および最大限の快適さを決定するための実験研究により得られる。y座標の値は、座標面の水平軸から、インソールボードが位置決めされる点まで延びる長さを表す。
【0023】
式で与えられるxおよびyの値はそれぞれ、長さ値であり、y値は、インソールボード位置に沿って、距離xの変化と共に変化する。
【0024】
式1のy値から導出される所望のインソールボード曲率Kは、「式2」を使用して計算した。
K=y”/(1+(y’)3/2 (式2)
ここで、Kは、式2で与えられる、yの1次微分(y’)およびyの二次微分(y”)に関して変化する値を表す。
【0025】
K値に関する式2を、xおよび定数kに関する値に関して表現した形が、「式3」として示されており、この式は、決定された曲率に関して使用される。
【数1】

(式3)
【0026】
本発明による、解剖学的に適切な身体姿勢および歩行を可能にし、整形外科的な傾斜および高いヒールを有する特定のハイヒール靴の、ヒールおよびプラットフォームの高さに関するハイヒール靴構成は、以下の要素およびパラメータを備える。
−少なくとも1つのインソールボードは、靴の爪先部角度(β)、および付随的にヒール角度(α)が、適正な直立した身体姿勢を提供するように構成され、曲率Kでサイズ設定される。曲率Kは、y=(5/arctan(10k))*arctan(k*x))と、ヒトの足の実際の構成に関係する補正係数1/(1+(x−x/k)の積として得られ、0〜100の任意のインソールボード距離xの値を考慮することによって係数x(および付随的なy値)を用いて計算され、ヒールの高さは、望みに応じて、人の足の前部と踵との間の高さの差である、約2〜4.5インチ(最大10%の端点の可能な変動を有する;最大約3と1/2インチの前部プラットフォームを有する場合には、約4.5インチの最大差を保つために最大8インチ)の範囲内で選択された高さにより変えることができ、
−少なくとも1つの前部プラットフォームは、選択された高さだけ地面よりも足を高くするように形成される。
−少なくとも1つの爪先部は、足の先端が配置される場所に位置され、その角度は、約7°〜26°(10%の取り得る許容差を有する)の間の望みの量だけ変更され得る。
【0027】
本発明の上述および他の目的、特徴、利点は、以下の論述および図面からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】姿勢および快適性レベルに影響を及ぼす修正範囲を示すハイヒール靴の側面図である。
図2】インソールボード上昇の角度勾配の修正およびx−y成分の角度を示す、図1のハイヒール靴のインソールボードの側面図である。
図3】ヒールの厚さが減少された、図1のハイヒール靴の別の実施形態の側面図である。
図4図2のx、y成分の変化に基づいて快適性レベルの修正を決定する際に本来使用される関数y=(5/arctan(10k))*arctan(k*x)において、kの変化に応じて関数yが辿る軌跡のグラフである。
図5】様々なヒール高さのハイヒール靴のA、A、A、A、A、Aインソールボードの曲率変化のグラフである(本明細書では以後、それぞれ、2インチ、2と1/2インチ、3インチ、3と1/2インチ、4インチ、および4.5インチを表す)。これらは、インソールボード湾曲の異なる点でxおよびy軸に関して異なる曲率で生成され得る。
図6】4インチのヒールに関する本発明によるインソールボード、およびx−y傾斜パラメータを提供するインソールボードのグラフである。
図7】約2〜4.5インチの範囲内のヒールを有する靴に関する、図2に示されるような、ヒール角度(α)およびヒール支持構成を示す本発明のハイヒール靴の左側面図である。
図8A】従来技術のハイヒール靴を履いたときのヒトの脚の位置の差を示す図である。
図8B】本発明のハイヒール靴を履いたときのヒトの脚の位置の差を示す図である。
図9】適切なソール曲率の本発明のパラメータが具現化されているハイヒール靴のウェッジソールタイプ実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面に示される各構成要素は、以下のような共通の構成要素参照番号を付されている。
1.ハイヒール靴。
2.インソールボード。足に接触するインソールボードが上昇する点から計測され、靴の裏面または後部まで延びる。
3.インソールボードの一部としての、着用者の後部または踵を支持するヒール。
4.インソールボードの上昇点から前方に延びる前部プラットフォーム。
5.靴の前部としての爪先部。
【0030】
表1は、適切な「曲率」が実現されるソール設計を提供する。この「曲率」は、以下の「式」を使用することによって計算される。
K=4/i (式4)
ここで、iは、式2で与えられるKを4で割った値である。
【0031】
以下の表1は、式4を使用することによって最大の「曲率」が生じるソール設計(x値)を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
これらのデータに鑑みて、kが減少しているときに最大の湾曲が生じる設計に達するので、kを最小化すべきであることが分かる。得られる形状を検査すると、インソール(2)の角度およびヒール(3)の角度は、k値が減少するにつれて、予想以上に増加することが観察される。ヒール(3)の角度を非常に大きく増加することなく、湾曲設計を後方にシフトするために、因子関数が必要とされる。
【実施例】
【0034】
様々な高さのヒールを有する10個の異なるソールの試行を計算により行う。ヒール高さは、2インチ〜4インチ(5.08〜10.16cm)とし、「式1」および補正係数に従ってソールまたはインソールボード曲率を得る。2インチ、2と1/2インチ、3インチ、3と1/2インチ、4インチ、および4.5インチのヒールを有する実用的なA1、A2、A3、A4、A5、A6インソールボードの理想的な形態が得られる(または導出される)。式1と共に使用される適切な補正因子は、MatLab(登録商標)ソフトウェアプログラムのパラメータを使用して計算されるとき、以下のように与えられる「式5」である。
1/(1+(x−xj2/k2), x∈[0,100] (式5)
ここで、A1、A2、A3、A4、A5、A6のヒールサイズに関する変数xjは、以下の表4で与えられる。ここで、
jは、インソールボードがヒトの足の解剖学的構造により良く適するように、公式内での因子関数の効果を変えるために使用される変数である。k2は、インソールボードがヒトの足の解剖学的構造により良く適するように公式での因子関数の効果を変えるために使用される変数であり、300と定められている。
【0035】
得られる補正された公式を用いて、A、A、A、A、およびAインソールボードを形成し、これらのモデルを(直接的な足の支持体として)実験で観察すると、解剖学的に適正な支持と着用者の快適性の向上との両方を提供することに成功していることが分かる。
【0036】
表2は、前部プラットフォームなしのハイヒール靴では約2インチ〜4.5インチの範囲内の高さで、A、A、A、A、A、およびAインボードソールを形成することができることを示す。ここで、ハイヒール靴は、靴を履く足の前部から踵までの間の上昇距離が約4.5インチ以下になるという条件の下で、約0インチ〜3.5インチの範囲内の高さを有する適切なサイズの前部プラットフォームを有していてもよい。すなわち、前述のヒールに関して、0〜3.5インチの範囲内の適切なプラットフォームを有する。
【0037】
図面に示されるハイヒール靴(1)の爪先部角度(β)と、ヒール角度(α)とは、直立した身体姿勢を保証するようにインソールボード(2)に対して変化する。各ハイヒール靴(1)の爪先部角度(β)に対応するヒール角度(α)が、表2に与えられている。表2で見られるように、2インチ〜約8インチの間の範囲内の靴のヒールは、好ましくは、図7に示されるように約5°〜26°(取り得る10%の許容差を有する)の範囲内のヒール角度(α)の値を有する。ヒール角度の変化は、1つまたは2つの因子の関数である。第1の因子は、様々なヒール高さ(cm/インチ)の相違であり、第2の因子は、ラスティングプロセスなど、ハイヒール靴を製造する際に使用される材料によって生み出される相違である。最良の結果(姿勢および快適性)は、ハイヒール靴(1)の爪先部角度(β)が7°〜26°の間の角度であるときに得られる。ヒール角度(α)は、インソールボード曲率計算値の関数であり、ヒールは、インソールボードの後端部であるが、所与の範囲内でのその変更が、製造プロセスによって機能的に決定される。
【0038】
一般に、典型的なヒール区域距離は、ウェッジソール靴などでは、ヒール角度の計測の開始点となる靴の後部から35〜50mmの間の範囲内であり、非常に細いスチレットヒールに関してはより小さいことがある。本明細書で行われるときのヒール角度およびその範囲の計算は、一般に、足支持部に沿って靴の後部から35〜50mmの間の長さで決定される。
【0039】
〜Aに関して示される各ヒール高さを有するインソールボードに関して以下の表2に関して提供される距離は、靴の後部およびインソールボードの端部から始まり、インソールボードの長さに沿って延びる。
【0040】
【表2】
【0041】
上述したように上記の公式1と補正因子によって得られるインソールボードモデルは、適切な姿勢および快適性に適しているが、上記の範囲パラメータ内で、爪先部角度(β)とヒール角度(α)とに関して数度の許容差があり得る。快適性レベルの許容差を伴う許容差範囲は、それらの限度を、表内の隣接するヒール高さに関する値によって定義される。したがって、例えば、90〜100mmの距離の点で、A1に関する角度曲率値は、42.96°からA2の45.63°までの範囲でよい。A2に関して、値は、A1からA3までの値を見て、A1の42.96°からA3の49.61°までの範囲である。同様に、A3に関して、値は、A2の45.63°からA4の51.72°までの範囲であり、A4に関して、値は、A3の49.61°からA5の56.13°までの範囲である。A5に関する範囲は、A4の51.72°からA6の58.43°までである。A6に関する値は、A5の56.13°からA6の58.43°までである。A1およびA6に関する値は、それぞれ最小値および最大値であり、取り得る許容差を有する。範囲は、様々な距離の点にわたって同様に広げられる。
【0042】
同様に、ヒール角度αは、特定のヒール高さに関して表に与えられているように、隣接するヒール高さA〜Aの間の範囲内で変わってよく、Aに関するヒール角度は、5°〜16°の間であり、Aに関しては、5°〜18°の間であり、Aに関しては、12°〜20°の間であり、Aに関しては、14°〜22°の間であり、Aに関しては、16°〜26°の間であり、Aに関しては、18°〜26°の間であり、AおよびAに関する値は、それぞれ最小値および最大値である(10%までの取り得る許容差を有する)。
【0043】
2インチ〜4.5インチの範囲内にあるが、特定のA〜Aの高さとは異なるヒール高さに関して、特定の位置での湾曲角度、および湾曲値の有効範囲を決定する際、隣接するA〜Aの値の間の範囲値の外挿を提供するために表4のxおよびkの値が使用される。
【0044】
したがって、表2および表3でのA〜Aモデルインソールボードの値を使用して内挿することによって、中間のヒール高さ値に関しても上記の公式を使用することによって、モデリングを多くの異なるインソールボードに効果的に適用することができる。中間のヒール高さで形成されたインソールボードは、適切な姿勢および快適性を考慮して受け入れることができる。中間値で形成されたインソールボードも同様に、数度の許容差によって影響を及ぼされることなく、好適な靴の製造において使用することができる。A値の中間値が、以下に与えられる表3に提供される。
【0045】
【表3】
【0046】
1、A2、A3、A4、A5、A6インソールボードが形成されるとき、表4で与えられる変数xj、k、およびk2が上述したように使用され、kは、MatLab(登録商標)アルゴリズムの変数関数である。この表で与えられるk2は、インソールボードが足の解剖学的構造により良く適するように公式での因子関数の効果を変えるために使用される変数であり、実験から300と定められている。
【0047】
【表4】
【0048】
図面を参照すると、図1および図3に示されるように、典型的なハイヒール靴1は、爪先区域5と、ソールまたはプラットフォーム区域4とを備え、これらの区域は、図1に示されるように、足の前部のための厚みのある支持部を提供することがあり、または図3に示されるように最小の厚さでよい。インソールボードまたは直接的な足支持区域2は、ソールまたはプラットフォーム区域4から延在し、通常はソールまたはプラットフォーム区域4と一体化され、図2に示されるインソールボード2に関する上昇点から始まる。インソールボード2は、通常は靴の後部またはヒールに向かう湾曲区域として上昇し、ここで、インソールボード2の一部は、図1図3に異なる構成で示されるヒール3によって支持される。図8Aの従来技術の靴と、図8Bの本発明による靴とのどちらにおいても、図8Aおよび図8Bに示される靴1の着用者の踵は、ヒール3に乗り、ヒール3によって支持される。図2および図7に示される本発明の靴のヒール角度(α)は、5〜26°の比較的低い大きさであり、概して、従来技術のハイヒール靴でのヒール角度の大きさよりもかなり低い。図1の靴におけるように、爪先部角度は地面と面一でもよいが、より良い姿勢および快適性の向上のために、前方爪先部角度(β)は、7°〜26°の範囲の角度でわずかに上昇されるべきであり、この範囲からの変動はほとんどまたは全くない。
【0049】
従来技術の靴と本発明による靴との両方のインソールボード2の曲線形状は、x、y軸座標系によって定義され、このx、y軸座標系は、図2に示されるように、インソールボードが上昇し始めるインソールボード2の点に原点を取って、インソールボードに重ね合わされる。インソールボードでの各点は、相互に関連付けられるxおよびyパラメータ値によって定義される。インソールボードの曲率は、図4に示されるように関数kによって決定され、低いkでの限定された曲率から、高い曲率の形状までの範囲を取ることができ、様々な曲率が、異なる度合の支持、および/または快適さ/不快さ、ならびに適切な足の位置決めおよび姿勢を提供する。
【0050】
図5のx−yグラフに示されるように、本発明に従って、式1を利用して5つのインソールボード(A〜A)が形成され、これらは、曲線のあらゆるx、y値に関して式5の補正因子で補正されており、k定数値は300であり、異なる曲線によって表されている。A〜Aインソールボードは、それぞれ2インチ、2と1/2インチ、3インチ、3と1/2インチ、4インチ、および4.5インチのヒール高さに関して形成した。図6は、4インチのヒールを有するAインソールボードに関する湾曲を詳細に示す。
【0051】
図8Aおよび図8Bは、従来技術の靴1’(図8A)と、本発明による靴1(図8B)との着用者の位置および姿勢の支持を示し、ここで、従来技術の靴の着用者に関する適切な直立軸Aは、適切な姿勢よりも前に傾いたずれがあり、完璧な支持ではないことを示し、その結果生じる前方の爪先部での圧力が、ハイヒール靴で典型的な痛みを引き起こす。また、アーチ領域9での支持が欠如している。対照的に、図8Bでの靴1は、アーチ全体にわたって完全な支持を提供し、踵が完全に支持されており、それにより、着用者は、より見た目の美しい立ち姿で軸Aに沿って立つ。ここで、図8A図8Bの靴は、スタイリッシュな外観の観点ではほとんど見分けが付かない。
【0052】
図9は、ウェッジソール靴として知られているハイヒール靴の実施形態を示し、ここでは、他の実施形態で使用されるような鋼インソールボードの代わりに、完全に支えられたソールが使用される。ソール2の曲率は、インソールボードでの実施形態の曲率と実質的に同一である。
【0053】
上記の開示および例は、本発明の例示にすぎず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく材料、構造、構成などの変更が可能であり、例えば、特に踵またはその周囲において、靴インソールの圧力が加わる部位または痛みが通常生じる部位に追加のクッションが提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9