特許第6879767号(P6879767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879767
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G08C 15/00 20060101AFI20210524BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20210524BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   G08C15/00 E
   G08C19/00 J
   G01D21/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-24133(P2017-24133)
(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-132820(P2018-132820A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佑一
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 克則
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−95702(JP,A)
【文献】 特表2016−511483(JP,A)
【文献】 特開2007−30784(JP,A)
【文献】 特開2010−127865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 15/00−15/12
G08C 19/00−19/48
G01D 18/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと1対1の関係で着脱可能に接続され、前記センサから出力されるセンサ出力を取得するとともに、取得したセンサ出力に基づくデータを外部に出力する回路を少なくとも内蔵した複数の計測モジュールと、
複数の前記計測モジュールを着脱可能に収容するとともに、前記計測モジュールの其々から出力された前記データを収集する本体部と、
を備える計測装置であって、
前記データを補正するための補正値情報を用いて、前記データを補正するデータ補正部と、
前記センサのそれぞれに備えられて前記センサの個体識別情報を記憶する個体情報記憶部と、
前記計測モジュールとの接続実績のある前記センサに関する前記補正値情報と前記個体識別情報とを関連づける関連情報を記憶する関連情報記憶部と、
前記計測モジュールに接続された前記センサの前記個体情報記憶部から前記個体識別情報を取得し、取得した前記個体識別情報が前記関連情報記憶部に記憶されているか否かを判断し、記憶されている場合には、前記個体識別情報に関連づけられている前記補正値情報を前記データ補正部で用いる補正値情報として設定し、記憶されていない場合には、予め定められた初期補正情報を前記データ補正部で用いる補正値情報として設定する補正値設定部と、
補正値計測環境下に設置された前記センサの前記センサ出力を取得し、取得した前記センサ出力に基づいて前記補正値情報を計測する補正値計測部と、
前記補正値計測部で得られた前記補正値情報を用いて、前記関連情報記憶部における前記センサの前記補正値情報を更新する補正値更新部と、
前記補正値設定部にて前記初期補正情報が前記補正値情報として設定された場合に、前記計測モジュールに接続された前記センサの前記補正値情報の計測作業が必要であることを示すメッセージを表示するように構成された表示部と、
を備える計測装置。
【請求項2】
前記関連情報記憶部および前記補正値設定部は、前記計測モジュールに備えられる、
請求項1に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサが接続されて、センサから出力されるセンサ出力を収集する計測装置が知られている。
センサは、製造時の誤差などの影響によりセンサ特性に個体差が生じることがあり、個体差によってセンサ毎にセンサ出力が変動すると、計測装置での計測精度(検出精度)が低下する。これに対して、検出対象の状態量が所定値(予め定められた計測基準値)となるように調整された補正値計測環境下にセンサを配置して、そのときのセンサ出力を取得し、計測基準値と取得したセンサ出力との差に基づいて個体差の影響を低減するための補正値(校正データ)を計測することがある(キャリブレーション作業)。このキャリブレーション作業で計測された補正値を用いてセンサ出力を補正することで、個体差に起因するセンサ出力の誤差を低減できる。
【0003】
また、センサは、経年劣化などの影響によりセンサ特性が変化することがあり、センサ特性の変化によってセンサ出力が変動すると、計測装置での計測精度(検出精度)が低下する。これに対して、検出対象の状態量が計測基準値となるように調整された補正値計測環境下でのセンサのセンサ出力を取得し、計測基準値と取得したセンサ出力との差に基づいてセンサ特性変化の影響を低減するための補正値を計測することがある(キャリブレーション作業)。このキャリブレーション作業で計測された補正値を、既存の補正値の代わりに利用することで、センサ特性変化に起因するセンサ出力の誤差を低減できる。
【0004】
なお、計測装置としては、センサが着脱可能に接続される形態のものがある(特許文献1)。センサが着脱可能に接続される形態の計測装置においては、センサが付け替えられると、その都度、補正値を計測することで、取り付けられたセンサに応じた適切な補正値を用いてセンサ出力を補正できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−095702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、センサが着脱可能に接続される形態の計測装置においては、センサが付け替えられると補正値を計測する必要が生じるため、センサの付け替えに伴う補正値計測作業の作業負担が大きいという問題がある。
【0007】
とりわけ、センサの付け替え頻度が高い用途の計測装置においては、センサ付け替えに伴う補正値計測作業の実行回数が増加するため、補正値計測作業の作業負担がさらに大きくなる。
【0008】
そこで、本開示の一局面は、センサが着脱可能に接続される形態の計測装置において、補正値計測の作業負担を低減できる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの局面は、複数の計測モジュールと、本体部と、を備える計測装置であって、データ補正部と、個体情報記憶部と、関連情報記憶部と、補正値設定部と、を備える。
【0010】
複数の計測モジュールは、それぞれ、センサと1対1の関係で着脱可能に接続され、センサから出力されるセンサ出力を取得するとともに、取得したセンサ出力に基づくデータを外部に出力する回路を少なくとも内蔵して構成されている。本体部は、複数の計測モジュールを着脱可能に収容するとともに、計測モジュールの其々から出力されたデータを収集するように構成されている。ここで、センサ出力に基づくデータとは、センサ出力そのものでも良いし、例えば、センサ出力に基づき算出したガス濃度であっても良い。
【0011】
データ補正部は、計測モジュールが出力するデータセンサのセンサ出力を補正するための補正値情報を用いて、データを補正する。個体情報記憶部は、センサのそれぞれに備えられてセンサの個体識別情報を記憶する。関連情報記憶部は、計測モジュールとの接続実績のあるセンサに関する補正値情報と個体識別情報とを関連づける関連情報を記憶する。
【0012】
補正値設定部は、計測モジュールに接続されたセンサの個体情報記憶部から個体識別情報を取得し、取得した個体識別情報が関連情報記憶部に記憶されているか否かを判断する。そして、補正値設定部は、取得した個体識別情報が関連情報記憶部に記憶されている場合には、個体識別情報に関連づけられている補正値情報をデータ補正部で用いる補正値情報として設定し、取得した個体識別情報が関連情報記憶部に記憶されていない場合には、予め定められた初期補正情報をデータ補正部で用いる補正値情報として設定する。
【0013】
このような計測装置によれば、計測モジュールから取り外したセンサを、再度、計測モジュールに接続した場合において、補正値情報の計測作業を再度実施することなく、補正値情報を設定できる。なお、「データを補正する」とは、センサ出力そのものを補正値情報に基づいて補正することでも良いし、センサ出力に基づき算出したガス濃度を補正値情報に基づいて補正することでも良い。
【0014】
これにより、計測装置を、センサと計測モジュールとの着脱が繰り返される用途に用いる場合でも、接続実績のあるセンサについては補正値情報の計測作業(キャリブレーション作業)を省略でき、作業の煩雑さを軽減できる。
【0015】
よって、この計測装置によれば、センサが着脱可能に接続される形態において、補正値計測の作業負担を低減できる。
本開示の計測装置においては、関連情報記憶部および補正値設定部は、計測モジュールに備えられる構成であってもよい。このような構成においては、センサが接続された計測モジュールが、そのセンサの個体情報記憶部から個体識別情報を取得する処理と、取得した個体識別情報が関連情報記憶部に記憶されているか否かを判断する処理と、を少なくとも実行する。
【0016】
もし、センサと直接接続されていない本体部でこれらの処理を実行する場合には、本体部は計測モジュールを介してセンサの個体情報記憶部から個体識別情報を取得することになり、本体部および計測モジュールがそれぞれ処理を実行する必要があるため、計測装置全体として処理が煩雑になる可能性がある。これに対して、センサが接続された計測モジュールのみでこれらの処理を実行する形態であれば、計測装置全体として処理が煩雑になることを抑制できる。
【0017】
本開示の計測装置においては、関連情報記憶部がセンサに備えられ、個体情報記憶部は、個体識別情報として補正値情報を記憶し、補正値設定部は、計測モジュールに接続されたセンサの個体情報記憶部から個体識別情報としての補正値情報を取得し、取得した個体識別情報が関連情報記憶部に記憶されているか否かの判断を行うことなく、取得した補正値情報をデータ補正部で用いる補正値情報として設定する構成であってもよい。
【0018】
このような構成であれば、補正値設定部での判断処理(取得した個体識別情報が関連情報記憶部に記憶されているか否かの判断)を省略でき、補正値設定部を実行する際の処理負荷の上昇を低減できる。
【0019】
本開示の計測装置においては、補正値計測環境下に設置されたセンサのセンサ出力を取得し、取得したセンサ出力に基づいて補正値情報を計測する補正値計測部と、補正値計測部で得られた補正値情報を用いて関連情報記憶部におけるセンサの補正値情報を更新する補正値更新部と、を備えてもよい。
【0020】
この計測装置によれば、最新のセンサ状態に応じた適切な補正値情報を補正値計測部で計測することができ、そのような適切な補正値情報を関連情報記憶部に記憶することで、センサ出力の補正精度を向上できる。
【0021】
なお、初期補正情報を補正値情報として設定した場合には、補正値情報の計測作業(キャリブレーション作業)を実行することで、接続されたセンサに応じた補正値情報を取得し、取得した補正値情報を用いて補正値情報を更新してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の計測装置の斜視図である。
図2】第1実施形態の計測モジュールとセンサの斜視図である。
図3】第1実施形態のメインユニットの斜視図である。
図4】第1実施形態のメインユニットの開口部の各スロットと各計測モジュールとの関係を示す説明図である。
図5】第1実施形態における表示部の表示画面を示す説明図である。
図6】第1実施形態のメインユニットと計測モジュールの構成を示すブロック図である。
図7】第1実施形態の補正値設定処理を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態のキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態の補正値設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0024】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
本実施形態に係る計測装置1の構成について説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る計測装置1の外観を表す斜視図である。
図1に示すように、計測装置1は、1台のメインユニット3と、7台の計測モジュール5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gとを備える。以下、計測モジュール5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gを、計測モジュール5と総称する。
【0026】
なお、図1では、7台の計測モジュール5が装着される例を挙げているが、このメインユニット3は、後述するように、最小単位の計測モジュール(即ち最小計測モジュール)5を8台装着できるように構成されている。
【0027】
以下、各構成について、詳細に説明する。
メインユニット3は、筐体7と、取手9とを備える。
筐体7は、直方体(本第1実施形態では、例えば高さ270mm×幅340mm×奥行280mm)の箱形状に形成されており、その内部に、メインユニット3の構成要素と計測モジュール5を収容する。
【0028】
筐体7の直方体を構成する6面のうちの正面に、矩形状の開口部11が形成されており、この開口部11から計測モジュール5を挿入することにより、計測モジュール5が筐体7の内部に着脱可能に収納される。
【0029】
なお、開口部11のうち、各最小計測モジュールが収容される各部分(各領域)が各スロット12であり、ここでは8台分の最小計測モジュールを収容可能なように8台分のスロット12が設けられている。つまり、8箇所のスロット12が一体となって開口部11が構成されている。
【0030】
メインユニット3は、複数の計測モジュール5を着脱可能に収容するとともに、計測モジュール5の其々から出力されたデータを収集するように構成されている。
取手9は、筐体7の直方体を構成する6面のうちの上面に取り付けられている。メインユニット3の使用者は、取手9を把持することにより、メインユニット3を持ち運ぶことができる。
【0031】
複数の計測モジュール5のうち、例えば計測モジュール5aは、その内部にディーゼルエンジンの排気ガスの一部を導入し、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter)の量(PM)と数(PN)を計測する装置である。計測モジュール5bは、NOxセンサと1対1の関係で着脱可能に接続され、NOxセンサから出力されるセンサ出力を取得して外部に出力する回路を少なくとも内蔵した装置であり、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の濃度を計測する装置である。計測モジュール5cは、アンモニアセンサと1対1の関係で着脱可能に接続され、アンモニアセンサから出力されるセンサ出力を取得して外部に出力する回路を少なくとも内蔵した装置であり、排気ガス中に含まれるアンモニアの濃度を計測する装置である。計測モジュール5dは、空燃比センサ(酸素センサ)と1対1の関係で着脱可能に接続され、空燃比センサから出力されるセンサ出力を取得して外部に出力する回路を少なくとも内蔵した装置であり、排気ガスの空燃比(排気ガス中に含まれる酸素の濃度)を計測する装置である。
【0032】
なお、他の計測モジュール5e〜5gについても、センサと1対1の関係で着脱可能に接続され、センサから出力されるセンサ出力を取得して外部に出力する回路を少なくとも内蔵した装置であり、各種の測定対象の状態を計測する装置である。ここでは、その説明は省略する。
【0033】
[1−2.計測モジュール]
次に、計測モジュール5の構成について説明する。
計測モジュール5は、ケース13、取付板15、案内レール17、ユニット接続コネクタ19、センサ接続コネクタ21を備える。
【0034】
ケース13は、直方体の箱形状に形成されており、その内部に、計測モジュール5の構成要素を収容する。
ケース13の高さHcと奥行Dcは、各計測モジュール5が水平方向に沿って整列して筐体7の内部に収納されるように、各計測モジュール5で同一の寸法となるように予め設定されている。
【0035】
ケース13の幅Wcは、計測モジュール5の幅の最小単位となるスロット幅Ws(即ち、最小計測モジュールの幅)の整数倍となるように設定されている。なお、計測モジュール5aの幅Wcは、スロット幅Wsの約2倍である。また、計測モジュール5b,5c,5d,5e,5f,5gの幅Wcは、スロット幅Wsの約1倍である。
【0036】
なお、スロット幅Wsとは、各スロット12の幅であり、最小計測モジュールの幅に相当している。即ち、スロット幅Wsは、計測モジュール5b,5c,5d,5e,5f,5gの各幅に相当している。
【0037】
取付板15は、矩形状の開口部11の高さとほぼ同じ高さを有するとともに、ケース13の幅Wcと同じ幅を有する矩形状に形成された板状の部材である。
なお、取付板15のうちケース13と接触していない部分には、計測モジュール5をメインユニット3の内部に収納した状態で固定するためのネジを挿入するための貫通孔23が形成される。
【0038】
案内レール17は、ケース13の直方体を構成する6面のうちの上面と下面に取り付けられる(図1では、下面に取り付けられた案内レール17は不図示)。案内レール17は、ケース13の直方体を構成する正面から背面に向かう方向に沿って、上面と下面から突出するように設けられている。
【0039】
ユニット接続コネクタ19は、計測モジュール5をメインユニット3に接続するためのコネクタであり、ケース13の背面に取り付けられている。ユニット接続コネクタ19は、各計測モジュール5で互いに同一の形状を有している。なお、後述するように、各計測モジュール5には、それぞれユニット接続コネクタ19が1個設けられている。
【0040】
センサ接続コネクタ21は、センサ25(図2参照)を計測モジュール5に接続するためのコネクタであり、取付板15の正面に取り付けられている。
[1−3.センサ]
図2に示すように、センサ25は、センサ素子27と、コネクタ29と、信号ケーブル31とを備える。センサ素子27は、接続される計測モジュール5の機能に対応した物理量を検出する。コネクタ29は、センサ25が接続される計測モジュール5のセンサ接続コネクタ21と着脱可能に嵌め合う構造を有している。信号ケーブル31は、センサ素子27とコネクタ29とを電気的に接続する信号線である。
【0041】
このため、センサ25のコネクタ29と計測モジュール5のセンサ接続コネクタ21とを嵌め合わせることにより、センサ25からの検出信号が計測モジュール5へ入力可能となる。
【0042】
なお、計測モジュール5b,5c,5dに接続されるセンサ25は、それぞれNOxセンサ、アンモニアセンサ、空燃比センサである。NOxセンサ、アンモニアセンサおよび空燃比センサは、内燃機関の排気管に直接挿入される直挿型センサである。
【0043】
[1−4.メインユニット]
次に、メインユニット3の構成等について説明する。
図3に示すように、メインユニット3は、スロット案内溝群33、モジュール接続コネクタ群35、スイッチパネル37を備える。
【0044】
スロット案内溝群33は、各計測モジュール5を、予め設定された8個のスロット12にそれぞれ案内するスロット案内溝41,42,43,44,45,46,47,48を備える。
【0045】
スロット案内溝41〜48は、計測モジュール5のケース13における上面と下面に設けられた案内レール17と嵌め合うことが可能な凹部であり、筐体7の直方体を構成する正面から背面に向かう方向に沿って延びるように設置される。
【0046】
また、スロット案内溝41〜48は、開口部11の矩形を構成する上辺の付近と下辺の付近に設置されている(図3では、上辺の付近に設置されたスロット案内溝41〜48は不図示)。
【0047】
そして、スロット案内溝41〜48は、開口部11の矩形を構成する上辺および下辺と平行になるように予め設定されたスロット12の配列方向Ds(換言すれば、計測モジュール5の配列方向)に沿ってスロット幅Ws毎に設置される。
【0048】
このため、以下に示す手順で、スロット案内溝41〜48に対応する各スロット12に各計測モジュール5を収容することができる。
まず、筐体7の外部から開口部11内に計測モジュール5を挿入するときに、各計測モジュール5の上辺及び下辺の案内レール17を、それぞれ開口部11の上辺及び下辺の付近に設けられた各スロット案内溝41〜48に嵌める。そして、各案内レール17と各スロット案内溝41〜48とが嵌め合った状態で、各スロット案内溝41〜48が延びている方向に沿って各計測モジュール5を筐体7の内部へ移動させる。これにより、各計測モジュール5が筐体7内に収容される。
【0049】
なお、計測モジュール5aは、2つのスロット12を使用するので、両スロット案内溝41、42を使用して、筐体7に収容される。
このような手順で、各スロット案内溝41〜48に対応する各スロット12に、各計測モジュール5を収容することができる。以下、各スロット案内溝41〜48に対応するスロット12を、それぞれ第1スロット61,第2スロット62,第3スロット63,第4スロット64,第5スロット65,第6スロット66,第7スロット67,第8スロット68(図4参照)という。
【0050】
モジュール接続コネクタ群35は、各スロット12に対応して、8個のモジュール接続コネクタ51,52,53,54,55,56,57,58を備える。モジュール接続コネクタ51〜58は、それぞれ第1スロット61〜第8スロット68に収容された計測モジュール5をメインユニット3に接続するためのコネクタである。
【0051】
また、モジュール接続コネクタ51〜58は、それぞれ第1〜8スロットに各計測モジュール5が収容されている状態において、各計測モジュール5の背面71、73(図4参照)に設置されているユニット接続コネクタ19とそれぞれ嵌め合うことができる位置に設置される。
【0052】
詳しくは、図4に示すように、筐体7の開口部11の奥の壁面11aには、各スロット12毎に(即ち、第1スロット61〜第8スロット68に対応して)、モジュール接続コネクタ51〜58が配置されている。
【0053】
そして、2つのスロット12を占有する計測モジュール5a(詳しくは収容時に壁面11aと向かい合う背面71)には、計測モジュール5aを第1スロット61および第2スロット62の領域に押し込んだ際に、モジュール接続コネクタ51と接続する位置に、1個のユニット接続コネクタ19が設けられている。なお、複数のスロット12を占有する1台の計測モジュール5には、同様に、1個のユニット接続コネクタ19が設けられている。
【0054】
一方、1つのスロット12を占有する他の計測モジュール5b〜5g(詳しくは収容時に壁面11aと向かい合う背面73)には、計測モジュール5b〜5gを第3スロット63〜第8スロット68に押し込んだ際に、各モジュール接続コネクタ53〜58と接続する位置に、それぞれ1個のユニット接続コネクタ19が設けられている。
【0055】
スイッチパネル37は、メインユニット3の動作を指示するための複数のスイッチ75と、メインユニット3の動作状況などを示すLCD(Liquid Crystal Display)からなる表示部(即ち液晶の表示部)77と、LED(Light Emitting Diode)ランプ(図示せず)とを備え、筐体7の直方体を構成する6面のうちの正面に設置される。
【0056】
[1−5.表示部]
次に、表示部77の構成等について説明する。
図5に示すように、表示部77(詳しくはその表示面78)は、各種の表示を行うとともに、タッチパネルの機能を有している。
【0057】
例えば、表示部77の左側の辺に沿って、各計測モジュール5に関する内容を表示するモジュール用表示領域79が設定されている。また、その他の領域には、計測装置1の動作を指示する複数の操作ボタン81などが設定されている。
【0058】
モジュール用表示領域79は、8つのスロット12に対応して、8つの領域(即ち個別表示領域)に区分されている。
詳しくは、モジュール用表示領域79は、各個別表示領域として、図5の上方より、第1スロット61に関する情報(即ち第1スロット61に装着される計測モジュール5に関する情報;以下同様)を示す第1表示領域91、第2スロット62に関する情報を示す第2表示領域92、第3スロット63に関する情報を示す第3表示領域93、第4スロット64に関する情報を示す第4表示領域94、第5スロット65に関する情報を示す第5表示領域95、第6スロット66に関する情報を示す第6表示領域96、第7スロット67に関する情報を示す第7表示領域97、第8スロット68に関する情報を示す第8表示領域98が、設定されている。
【0059】
なお、図5では、第1表示領域91〜第8表示領域98を区別するために、CH1、CH2、CH3、CH4、CH5、CH6、CH7、CH8と表示している。
なお、例えば、図1に示すように、第1スロット61および第2スロット62の領域に一台の計測モジュール5aが装着されている場合には、一箇所の個別表示領域(ここでは第1表示領域91)にCH1とのみ表示し、第2表示領域92には何も表示しない(即ちCH2の表示は無い)。これにより、第1表示領域91および第2表示領域92に、一台の計測モジュール5aが装着されていることを示すことができる。
【0060】
また、他の第3スロット63〜第8スロット68に最小計測モジュールである各計測モジュール5b〜5gが装着されている場合には、第3表示領域93〜第8表示領域98には、CH3〜CH8がそれぞれ表示される。これにより、第3スロット63〜第8スロット68のそれぞれに最小計測モジュールである各計測モジュール5b〜5gが装着されていることを示すことができる。
【0061】
なお、スロット12に計測モジュール5が装着されている場合には、そのことを示すために、対応する個別表示領域の色を、特定の色(例えば緑色)に設定する。一方、スロット12に計測モジュール5が装着されていない場合には、そのことを示すために、対応する個別表示領域の色を、特定の色(例えば白色)に設定し、CHの表示も行わない。
【0062】
[1−6.計測装置の電気的構成]
次に、計測装置1の電気的構成について説明する。
図6に示すように、メインユニット3は、電力供給部111、データ入出力部113、CAN(Controller Area Network)インターフェース回路(以下、CANI/F回路という)115、内部メモリ117、操作制御回路119、メインCPU(Central Processing Unit)121を備える。
【0063】
電力供給部111は、電源コネクタ123、ヒューズ125、電源回路127、レギュレータ129を備える。
電源コネクタ123は、バッテリVBからバッテリ電圧を入力するために、バッテリVBと接続されるコネクタである。
【0064】
電源回路127は、ヒューズ125を介してバッテリVBからバッテリ電圧を入力し、このバッテリ電圧から、12Vの電圧を生成する。そして電源回路127は、生成した12V電圧を、モジュール接続コネクタ51〜58の12V端子132から出力する。
【0065】
レギュレータ129は、電源回路127から12V電圧を入力し、5Vの電圧を生成する。レギュレータ129は、生成した5V電圧を、データ入出力部113、CANI/F回路115、内部メモリ117、操作制御回路119、メインCPU121、スイッチパネル37へ出力する。
【0066】
データ入出力部113は、USB(Universal Serial Bus)メモリモジュール141、CANI/F回路142、USBインターフェースモジュール143、OBD(On Board Diagnosis)2インターフェースモジュール144、GPS(Global Positioning System)インターフェースモジュール145、Bluetooth(登録商標)インターフェースモジュール146を備える。
【0067】
以下、USBインターフェースモジュール143、OBD2インターフェースモジュール144、GPSインターフェースモジュール145、Bluetoothインターフェースモジュール146を、それぞれUSBI/Fモジュール143、OBD2I/Fモジュール144、GPSI/Fモジュール145、BTI/Fモジュール146ともいう。
【0068】
なお、データ入出力部113は、USBメモリ用コネクタ151、CAN通信用コネクタ152、USB用コネクタ153、OBD2用コネクタ154、GPS用コネクタ155を備える。
【0069】
USBメモリモジュール141は、USB規格に準拠した方式で、USBメモリ用コネクタ151を介して接続されたUSBメモリとの間でデータの送受信を行う。
CANI/F回路142は、CAN通信プロトコルに従って、CAN通信用コネクタ152を介して接続された装置(例えば、パーソナルコンピュータ(即ちパソコン)161)との間でデータの送受信を行う。なお、パソコン161は、接続されていなくともよい。
【0070】
USBI/Fモジュール143は、USB規格に準拠した方式で、USB用コネクタ153を介して接続された装置との間でデータの送受信を行う。
OBD2I/Fモジュール144は、OBD2規格に準拠した方式で、OBD2用コネクタ154を介して接続された装置(例えば、車載ECU(Electronic Control Unit)163)との間でデータの送受信を行う。
【0071】
GPSI/Fモジュール145は、GPS衛星からの衛星信号を受信するGPS受信機(不図示)を、GPS用コネクタ155を介してメインユニット3に接続するためのインターフェースである。
【0072】
BTI/Fモジュール146は、Bluetooth規格に準拠した方式で近距離無線通信を行う。
また、CANI/F回路115は、CAN通信プロトコルに従って、モジュール接続コネクタ51〜58のCAN_H端子134とCAN_L端子135(図6参照)に接続された計測モジュール5との間でデータの送受信を行う。
【0073】
内部メモリ117は、各種データを記憶するための記憶装置である。
操作制御回路119は、使用者がスイッチパネル37のスイッチ75を介して行った入力操作を特定するための入力操作情報をメインCPU121へ出力する。また、操作制御回路119は、メインCPU121からの指示に基づいて、スイッチパネル37の表示部77における表示動作を制御する。
【0074】
メインCPU121は、データ入出力部113、CANI/F回路115、内部メモリ117、操作制御回路119からの入力に基づいて各種処理を実行し、データ入出力部113、CANI/F回路115、内部メモリ117、操作制御回路119を制御する。
【0075】
例えばメインCPU121は、CANI/F回路115を介して計測モジュール5から受信した計測データを、内部メモリ117に記憶する。
また、メインCPU121は、計測モジュール5から受信した計測データを、CANI/F回路142等に接続されたパソコン161へ出力する。
【0076】
また、メインCPU121は、後述するように、装着された計測モジュール5の装着状態及び種類や、その動作状態を、表示部77に表示する処理を行う。
一方、計測モジュール5は、CANI/F回路171と、モジュールCPU173と、記憶部175と、を備える。
【0077】
CANI/F回路171は、CAN通信プロトコルに従って、メインユニット3との間でデータの送受信を行う。
モジュールCPU173は、センサ25とCANI/F回路171からの入力に基づいて各種処理を実行し、センサ25とCANI/F回路171を制御する。
【0078】
記憶部175は、各種データを記憶するための記憶装置である。記憶部175は、計測モジュール5との接続実績のあるセンサ25に関する補正値情報と個体識別情報とを関連づける関連情報を少なくとも記憶している。補正値情報は、センサ25のセンサ出力を補正するための補正値(校正データ)に関する情報であって、センサ25ごとの個体差の影響を低減するための補正値に関する情報である。例えば、補正値は、後述する式(1)で用いられるゲインGaとオフセット値Ofとを含んで構成される。個体識別情報は、同一品番のセンサ25における個々のセンサ25を識別するための情報である。個体識別情報としては、例えば、各センサ25に割り当てられた製造番号などを用いることができる。関連情報は、過去に計測モジュール5に接続されたセンサ25の個体識別情報と、そのセンサ25の補正値として設定された最新の補正値情報とを関連づける情報である。記憶部175は、過去に計測モジュール5に接続された全てのセンサ25における関連情報を記憶している。
【0079】
センサ25は、少なくとも自身の個体識別情報を記憶する情報記憶部32を備える。情報記憶部32は、メモリなどの記憶媒体で構成されるとともに、センサ25が接続された計測モジュール5から記憶内容を読み取り可能に構成されている。
【0080】
[1−7.制御処理]
次に、計測モジュール5のモジュールCPU173が実行する補正値設定処理の手順を説明する。
【0081】
補正値設定処理は、計測モジュール5のVB端子131または12V端子132から電圧が供給されることにより、モジュールCPU173が起動した後に開始される。
補正値設定処理が開始されると、モジュールCPU173は、図7に示すように、まずステップ110(以下ステップをSと記す)にて、センサ25の情報記憶部32から個体識別情報を取得する。
【0082】
次のS120では、S110で取得した個体識別情報が記憶部175に記憶されている関連情報に含まれているか否かを判断し、含まれている場合(肯定判定)にはS130に移行し、含まれていない場合(否定判定)にはS140に移行する。換言すれば、S120では、取得した個体識別情報が記憶部175に記憶されているか否かを判定している。
【0083】
S120で肯定判定されると、S130では、個体識別情報に関連づけされた補正値情報を記憶部175から読み取り、読み取った補正値情報をセンサ出力の補正値として設定する。
【0084】
S120で否定判定されると、S140では、予め定められた初期設定値をセンサ出力の補正値として設定する。次のS150では、センサ25のキャリブレーション作業が必要であることを示すメッセージを表示部77に表示する。
【0085】
キャリブレーション作業では、検出対象の状態量(例えば、ガス濃度)が予め定められた補正値計測環境下でのセンサ25のセンサ出力を取得し、予め定められた状態量(ガス濃度)と取得したセンサ出力との差に基づいてセンサ特性変化の影響を低減するための補正値を計測する。このようにして計測された補正値を用いてセンサ出力を補正することで、センサ特性変化に起因するセンサ出力の誤差を低減できる。なお、キャリブレーション作業が実行されると、キャリブレーションが必要であることを示すメッセージが表示部77から消去される。
【0086】
S130またはS150の処理が完了すると、補正値設定処理が終了する。
このような補正値設定処理を実行することで、計測モジュール5は、起動時に接続されているセンサ25が過去に接続実績のあるセンサ25である場合には、キャリブレーション作業を行うことなく、適切な補正値情報を設定することができる。また、計測モジュール5は、起動時に接続されているセンサ25が過去に接続実績のないセンサ25である場合には、初期設定値をセンサ出力の補正値として設定することでセンサ出力を利用可能な状態にすると共に、メッセージを表示部77に表示することで作業者に対してキャリブレーション作業を喚起することができる。
【0087】
また、計測モジュール5のモジュールCPU173は、各種制御処理の1つとして、設定された補正値に基づいてセンサ25のセンサ出力を補正する出力補正処理を実行する。例えば、補正値は、ゲインGaとオフセット値Ofとを含んで構成される。補正値を用いてセンサ出力Isを補正して得られる補正後センサ出力Iscは、式(1)を用いた演算により得ることができる。
【0088】
Isc = Is × Ga + Of ・・・・ (1)
計測モジュール5は、補正後センサ出力Iscを表す信号をメインユニット3に対して出力する。
【0089】
また、計測モジュール5のモジュールCPU173は、各種制御処理の1つとして、キャリブレーション処理を実行する。計測モジュール5のモジュールCPU173は、メインユニット3からキャリブレーション処理の実行指令信号を受信すると、キャリブレーション処理を開始する。
【0090】
なお、作業者がメインユニット3のスイッチパネル37を操作してキャリブレーション起動指令を入力すると、メインユニット3は、指令対象の計測モジュール5に対して、キャリブレーション処理の実行指令信号を出力する。このとき、作業者は、キャリブレーション起動指令を入力する前に、センサ25を補正値計測環境下(キャリブレーション環境下)に設置する。補正値計測環境は、センサ25の検出対象である状態量(例えば、ガス濃度)が予め定められた計測基準値となるように調整された環境である。作業者は、キャリブレーション起動指令を入力する時に、スイッチパネル37を操作して少なくとも計測基準値に関する情報を入力する。
【0091】
図8に示すように、キャリブレーション処理が起動されると、S210では、作業者から入力された計測基準値をメインユニット3から取得する。
次のS220では、センサ25のセンサ出力Isを取得する。
【0092】
次のS230では、計測基準値とセンサ25の取得したセンサ出力との差に基づいて、センサ出力におけるセンサ特性変化の影響を低減するための補正値(ゲインGa、オフセット値Of)を計測する。S230では、例えば、値が異なる少なくとも2つの計測基準値と、それらに対応する少なくとも2つのセンサ出力Isと、に基づいて、上述の式(1)における補正値情報(ゲインGa、オフセット値Of)を演算する。つまり、2つの計測基準値(補正後センサ出力Iscに相当)と2つのセンサ出力Isを用いることで、2つの未定値(ゲインGa、オフセット値Of)を含んだ式(1)の連立方程式を得られる。この連立方程式を解いて、ゲインGaおよびオフセット値Ofを得ることで、補正値情報が得られる。
【0093】
なお、このようにして得られた補正値情報(ゲインGa、オフセット値Of)が設定された上述の式(1)を用いてセンサ出力Isを補正することで、補正後センサ出力Iscは計測基準値と同等の値を示す。これにより、センサ特性変化に起因するセンサ出力Isの誤差を低減できる。
【0094】
次のS240では、S230で得られた補正値を用いて、記憶部175に記憶された関連情報におけるセンサ25の補正値情報を更新する。
S240が完了すると、キャリブレーション処理が終了する。
【0095】
[1−8.効果]
以上説明したように、計測装置1は、メインユニット3と、複数の計測モジュール5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gとを備える。
【0096】
計測モジュール5のモジュールCPU173は、出力補正処理を実行することで、補正値情報に基づき設定された補正値に基づいてセンサ25のセンサ出力を補正する。
計測モジュール5のモジュールCPU173は、補正値設定処理のS110を実行することで、接続されたセンサ25の情報記憶部32から個体識別情報を取得する。また、モジュールCPU173は、補正値設定処理のS120を実行することで、取得した個体識別情報が記憶部175に記憶されている関連情報に含まれているか否かを判断する。このとき、個体識別情報が関連情報に含まれている場合は(S120で肯定判定)、個体識別情報に関連づけられている補正値情報を出力補正処理で用いる補正値(ゲインGa、オフセット値Of)として設定し(S130)、個体識別情報が関連情報に含まれていない場合は、初期設定値を出力補正処理で用いる補正値として設定する(S140)。
【0097】
このような計測装置1によれば、計測モジュール5から取り外したセンサ25を、再度、計測モジュール5に接続した場合において、補正値情報の計測作業(キャリブレーション作業)を再度実施することなく、補正値情報を設定できる。
【0098】
これにより、計測装置1を、センサ25と計測モジュール5との着脱が繰り返される用途に用いる場合でも、接続実績のあるセンサ25については補正値情報の計測作業(キャリブレーション作業)を省略でき、作業の煩雑さを軽減できる。
【0099】
よって、計測装置1によれば、センサ25が着脱可能に接続される形態において、補正値計測の作業負担を低減できる。
次に、計測装置1は、関連情報を記憶するための記憶部175および補正値設定処理を実行するモジュールCPU173が、計測モジュール5に備えられる構成である。このような構成においては、センサ25が接続された計測モジュール5が、そのセンサ25の情報記憶部32から個体識別情報を取得する処理(S110)と、取得した個体識別情報が記憶部175(換言すれば、関連情報を記憶する記憶部)に記憶されているか否かを判断する処理(S120)と、を少なくとも実行する。このように、センサ25が接続された計測モジュール5のみでこれらの処理を実行する形態であれば、計測装置1の全体としての処理が煩雑になることを抑制できる。
【0100】
つまり、例えば、センサ25と直接接続されていないメインユニット3でこれらの処理を実行する形態では、メインユニット3は計測モジュール5を介してセンサ25の情報記憶部32から個体識別情報を取得することになり、メインユニット3および計測モジュール5がそれぞれ処理(個体識別情報の送受信処理)を実行する必要がある。このような構成では、計測装置1の全体としての処理が煩雑になる可能性があるが、センサ25が接続された計測モジュール5のみでこれらの処理を実行する形態を採ることで、計測装置1の全体として処理の煩雑さを低減できる。
【0101】
次に、計測装置1は、作業者がキャリブレーション起動指令を入力すると、計測モジュール5のモジュールCPU173がキャリブレーション処理を実行するように構成されている。
【0102】
キャリブレーション処理を実行するモジュールCPU173は、補正値計測環境下に設置されたセンサ25のセンサ出力Isを取得し(S220)、取得したセンサ出力Isに基づいて補正値情報を計測する(S230)。このあと、モジュールCPU173は、S230で得られた補正値を用いて、記憶部175に記憶された関連情報におけるセンサ25の補正値情報を更新する(S240)。
【0103】
この計測装置1によれば、最新のセンサ状態に応じた適切な補正値情報を計測モジュール5で計測することができ、そのような適切な補正値情報が反映された関連情報を記憶部175に記憶することで、センサ出力の補正精度を向上できる。
【0104】
なお、S140で初期補正値を補正値情報として設定した場合には、S150で、キャリブレーション作業が必要であることを示すメッセージを表示部77に表示する。このメッセージに応じて、作業者が補正値情報の計測作業(キャリブレーション作業)を実行することで、接続されたセンサ25に応じた補正値情報を取得し、取得した補正値情報を用いて補正値情報を更新できる。
【0105】
また、本実施形態は、キャリブレーション作業を促すメッセージを表示する形態であるが、メッセージ表示を行わず、キャリブレーション作業を実施するか否かを作業者の判断に任せる形態であってもよい。もしくは、補正値情報として初期補正値を設定してから、所定時間が経過してもキャリブレーション作業が実施されない場合に、キャリブレーション作業が必要であることを示すメッセージを表示する形態としても良い。
【0106】
[1−9.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
計測装置1が計測装置の一例に相当し、メインユニット3が本体部の一例に相当し、計測モジュール5が計測モジュールの一例に相当する。出力補正処理を実行するモジュールCPU173がデータ補正部の一例に相当し、センサ25の情報記憶部32が個体情報記憶部の一例に相当し、計測モジュール5の記憶部175が関連情報記憶部の一例に相当し、補正値設定処理を実行するモジュールCPU173が補正値設定部の一例に相当する。
【0107】
S220およびS230を実行するモジュールCPU173が補正値計測部の一例に相当し、S240を実行するモジュールCPU173が補正値更新部の一例に相当する。
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態として、関連情報を記憶する記憶部がセンサ25に備えられる構成の計測装置1について説明する。
【0108】
第2実施形態の計測装置1は、第1実施形態に比べて、ハードウェア構成は同様であり、メインユニット3および計測モジュール5で実行される各種制御処理の内容、および各種情報を記憶する記憶部の場所が異なる。そのため、以下の説明は異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を用いて説明する。
【0109】
まず、第2実施形態では、センサ25の情報記憶部32は、センサ25の個体識別情報としてセンサ25の補正値情報(ゲインGa、オフセット値Of)を記憶している。この場合、個体識別情報が補正値情報となるため、個体識別情報そのもの、あるいは補正値情報そのものが、補正値情報と個体識別情報とを関連づける関連情報であると解釈することが可能となる。
【0110】
このため、第2実施形態では、センサ25に関する補正値情報と個体識別情報とを関連づける関連情報は、計測モジュール5の記憶部175ではなく、センサ25の情報記憶部32に記憶されている。
【0111】
次に、第2実施形態の計測モジュール5のモジュールCPU173が実行する補正値設定処理の手順を説明する。
補正値設定処理は、計測モジュール5のVB端子131または12V端子132から電圧が供給されることにより、モジュールCPU173が起動した後に開始される。
【0112】
補正値設定処理が開始されると、モジュールCPU173は、図9に示すように、まずS310にて、センサ25の情報記憶部32から個体識別情報を取得する。上述したように、第2実施形態では、個体識別情報が補正値情報となるため、モジュールCPU173は、S310を実行することで、個体識別情報としての補正値情報を取得する。
【0113】
次のS320では、S310で取得した補正値情報(個体識別情報)をセンサ出力の補正値として設定する。つまり、第2実施形態の計測モジュール5は、取得した個体識別情報が関連情報に記憶されているか否かの判断を行うことなく、取得した補正値情報を補正値情報として設定するように構成されている。
【0114】
S310の処理が完了すると、補正値設定処理が終了する。
このような補正値設定処理を実行することで、計測モジュール5は、起動時に接続されているセンサ25から補正値情報を取得できるため、キャリブレーション作業を行うことなく、適切な補正値情報を設定することができる。
【0115】
なお、センサ25の出荷前には、作業者によりキャリブレーション作業が実行されてセンサ25に適した補正値情報が取得されるとともに、その補正値情報がセンサ25の情報記憶部32に記憶されることで、センサ25それぞれに適した補正値情報が設定される。また、計測モジュール5にセンサ25が接続された後は、作業者が定期的にキャリブレーション処理を実行することで、経年劣化などの影響によりセンサ特性が変化してセンサ出力が変動した場合でも、補正値情報を適切な値に更新できる。
【0116】
このような構成のセンサ25および計測モジュール5を備える計測装置1は、補正値設定処理を実行するモジュールCPU173での判断処理(取得した個体識別情報が記憶部175に記憶されているか否かの判断)を省略でき、補正値設定処理を実行する際の処理負荷の上昇を低減できる。
【0117】
ここで、文言の対応関係について説明する。センサ25の情報記憶部32が個体情報記憶部の一例に相当すると共に関連情報記憶部の一例に相当する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0118】
例えば、上記実施形態では、関連情報記憶部および補正値設定部が計測モジュールに備えられる構成(第1実施形態)と、関連情報記憶部がセンサに備えられるとともに補正値設定部が計測モジュールに備えられる構成(第2実施形態)と、について説明したが、関連情報記憶部および補正値設定部の設置箇所は、このような構成に限られることはない。
【0119】
例えば、計測装置は、関連情報記憶部が計測モジュールに備えられ、補正値設定部が本体部に備えられる構成であってもよい。このような構成においては、本体部は、計測モジュールを介してセンサの個体識別情報を取得するとともに、取得した個体識別情報が計測モジュールの関連情報記憶部に記憶されているか否かを判断する処理を実行する。このような構成においては、関連情報記憶部の設置領域を計測モジュールに設けるとともに、上記の処理を実行する補正値設定部の設置領域を本体部に設けることができ、情報を記憶する部分と処理を実行する部分とを別々に配置できる。
【0120】
あるいは、計測装置は、関連情報記憶部がセンサに備えられ、補正値設定部が計測モジュールに備えられる構成であってもよい。このような構成においては、計測モジュールは、センサから個体識別情報を取得するとともに、取得した個体識別情報がセンサの関連情報記憶部に記憶されているか否かを判断する処理を実行する。このような構成においては、関連情報記憶部の設置領域をセンサに設けるとともに、上記の処理を実行する補正値設定部の設置領域を計測モジュールに設けることができ、情報を記憶する部分と処理を実行する部分とを別々に配置できる。
【0121】
あるいは、計測装置は、関連情報記憶部がセンサに備えられ、補正値設定部が本体部に備えられる構成であってもよい。このような構成においては、本体部は、計測モジュールを介してセンサから個体識別情報を取得するとともに、取得した個体識別情報がセンサの関連情報記憶部に記憶されているか否かを判断する処理を実行する。このような構成においては、関連情報記憶部の設置領域をセンサに設けるとともに、上記の処理を実行する補正値設定部の設置領域を本体部に設けることができ、情報を記憶する部分と処理を実行する部分とを別々に配置できる。
【0122】
あるいは、計測装置は、関連情報記憶部が本体部に備えられ、補正値設定部が計測モジュールに備えられる構成であってもよい。このような構成においては、計測モジュールはセンサから個体識別情報を取得するとともに、取得した個体識別情報が本体部の関連情報記憶部に記憶されているか否かを判断する処理を実行する。このような構成においては、関連情報記憶部の設置領域を本体部に設けるとともに、上記の処理を実行する補正値設定部の設置領域を計測モジュールに設けることができ、情報を記憶する部分と処理を実行する部分とを別々に配置できる。このように、本体部に関連情報記憶部を備えることで、使用実績のない計測モジュールに使用実績のあるセンサが接続された場合でも、個体識別情報に関連づけられている補正値情報をデータ補正部で用いる補正値情報として設定することが可能となる。
【0123】
あるいは、計測装置においては、関連情報記憶部および補正値設定部が、本体部に備えられる構成であってもよい。このような構成においては、本体部は、計測モジュールを介してセンサから個体識別情報を取得するとともに、取得した個体識別情報が自身の関連情報記憶部に記憶されているか否かを判断する処理を実行する。このように、本体部に関連情報記憶部を備えることで、使用実績のない計測モジュールに使用実績のあるセンサが接続された場合でも、個体識別情報に関連づけられている補正値情報をデータ補正部で用いる補正値情報として設定することが可能となる。
【0124】
次に、例えば、上記実施形態では、ディーゼルエンジンの排気ガスの粒子状物質の量、窒素酸化物の濃度などを計測するものを示したが、計測モジュールの計測対象はこれに限定されるものではない。
【0125】
また、上記実施形態では、計測モジュールが水平方向に沿って1列に整列して収容されるものを示したが、計測モジュールが垂直方向に沿って1列に整列して収容されるようにしてもよいし、水平方向または垂直方向に沿って2列以上に整列して収容されるようにしてもよい。
【0126】
さらに、上記実施形態では、計測モジュールから受信した計測データを、内部メモリに記憶する構成である。これに対して、計測装置が表示部を備えている場合又は計測装置外に表示部がある場合には、計測モジュールから受信した計測データが示す計測結果を、この表示部に表示させるようにしてもよい。
【0127】
なお、各実施形態の構成等を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…計測装置、3…メインユニット、5(5a〜5g)…計測モジュール、7…筐体、11…開口部、12…スロット、13…ケース、19…ユニット接続コネクタ、21…センサ接続コネクタ、25…センサ、27…センサ素子、29…コネクタ、31…信号ケーブル、32…情報記憶部、33…スロット案内溝群、35…モジュール接続コネクタ群、37…スイッチパネル、41〜48…スロット案内溝、51〜58…モジュール接続コネクタ、61〜68…第1スロット〜第8スロット、77…表示部、78…表示面、79…モジュール用表示領域、81…操作ボタン、91〜98…第1表示領域〜第8表示領域、111…電力供給部、113…データ入出力部、115…CANI/F回路、117…内部メモリ、119…操作制御回路、121…メインCPU、171…CANI/F回路、173…モジュールCPU、175…記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9