(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記石膏スラリー排出工程直後の前記石膏スラリーの酸化還元電位が100以上300mV以下、及び/又はpH値が4.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の石膏回収方法。
前記水銀溶出工程では、前記石膏スラリーを分離槽内若しくは固液分離部上に供給して、前記ORP上昇−pH低下手段により前記分離槽内若しくは前記固液分離部上に酸化剤及び/又は酸を供給することによって、前記分離槽内若しくは前記固液分離部上の石膏スラリーの酸化還元電位を800mVまで上昇させ、及び/又は前記分離槽内若しくは前記固液分離部上の石膏スラリーのpH値を4.0以下まで低下させ、
前記排水処理工程では、前記水銀を分離した溶液の一部を前記排水として排水処理又は無排水化処理し、かつその他の溶液について、前記脱硫装置に送液する再利用、前記水銀溶出工程にて再利用及び前記石膏分離回収工程の前記洗浄液として再利用のうちの少なくとも1つ以上の再利用を行うことを含むことを特徴とする請求項3に記載の石膏回収方法。
前記石膏分離回収工程にて回収した石膏の一部を粉砕部に供給して粉砕し、前記粉砕した石膏を前記脱硫装置に供給して水銀除去剤として利用する粉砕工程を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の石膏回収方法。
前記脱硫装置から排出した直後の石膏スラリーの酸化還元電位が100以上300mV以下、及び/又は前記脱硫装置から排出した直後の石膏スラリーのpH値が4.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項8に記載の石膏回収システム。
前記水銀溶出部が、分離槽若しくは前記水銀溶出部の後流に位置した固液分離部であり、前記石膏スラリーを前記分離槽内若しくは前記固液分離部上に供給して、前記ORP上昇−pH低下手段から酸化剤及び/又は酸を供給することにより、前記分離槽内若しくは前記固液分離部上の石膏スラリーの酸化還元電位を800mVまで上昇させ、及び/又は石膏スラリーのpH値を4.0以下まで低下させるように構成され、
前記排水処理装置が、排水処理設備又は無排水化処理設備と前記脱硫装置と前記水銀溶出部と前記石膏分離回収部とにそれぞれ流路を介して独立して連通し、前記水銀を分離した溶液の一部を排水として排水処理又は無排水化処理し、かつその他の溶液について、前記脱硫装置に送液して再利用、前記水銀溶出部にて送液して再利用及び前記石膏分離回収部の前記洗浄液として再利用のうちの少なくとも1つ以上の再利用を行うように構成されたことを特徴とする請求項10に記載の石膏回収システム。
前記石膏分離回収部にて回収した石膏の一部を粉砕部に供給して粉砕し、前記粉砕した石膏を前記脱硫装置に供給して前記水銀除去剤として利用するように構成された粉砕機を更に備えることを特徴とする請求項13に記載の石膏回収システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る石膏回収システム及び石膏回収方法の実施の形態について、詳細に説明する。本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されない。また、添付図面は、本実施の形態の概要を説明するための図であり、付属する機器を一部省略している。
【0024】
[1.第一実施の形態]
1.1.石膏回収システム
図1に示すように、第一実施の形態に係る石膏回収システムは、排ガスを吸収液により脱硫する脱硫装置1の系外にそれぞれ配置した水銀除去装置10と、水銀回収装置20と、排水処理装置30とを備えている。本明細書にて「系外」とは、脱硫装置1を一つの設備として備えた排ガスを浄化するシステムの系外を意図しており、例えば、本明細書に記載のように、ボイラからの排ガスを脱硝する脱硝装置と、排ガスを集塵する集塵機と、石灰石膏法を用いて排ガスを脱硫する脱硫装置と、浄化した排ガスを排出する煙突とを備えることにより、排ガスを浄化するシステムの系外を意図している。また、このような脱硫装置から系外へ排出された石膏スラリーは、水と水銀とを少なくとも含有している。
【0025】
水銀除去装置10は、脱硫装置1の後流に位置し、水銀溶出部11と石膏分離部12と石膏回収部13とを備えている。水銀除去装置10は、脱硫装置1の系外に排出した水と水銀とを少なくとも含有する石膏スラリーを対象とし、石膏スラリー中の石膏から石膏スラリーの液相に水銀を溶出させることにより、水銀を分離するように構成されている。また、水銀除去装置10は、後述するように、石膏スラリーを洗浄しながら固液分離すると共に、石膏スラリー中の石膏を回収するように構成されている。
【0026】
水銀溶出部11は、ORP上昇−pH低下手段10Aを備え、脱硫装置1と排出流路L
0を介して連結し、石膏分離部12と流路L
11を介して連結し、水銀回収装置20と流路L
12を介して連結している。また、水銀溶出部11は、排水処理装置30と流路L
35を介して連結している。排出流路L
0には、脱硫装置1から系外へ排出した石膏スラリーの酸化還元電位(ORP:Oxidation-reduction Potential)及び/又はpH値を計測するための酸化還元電位計(ORP計)及び/又はpH計を設けることができる。また、これらORP計及び/又はpH計として、脱硫装置1内部や脱硫装置1の液循環ライン等の図示しない位置に設けたORP計及び/又はpH計を利用することもできる。
【0027】
具体的には、
図2に示すように、水銀溶出部11は、ORP上昇−pH低下手段10Aと、ORP計15aと、pH計15bと、制御装置15とを備え、例えば、その内部に石膏スラリーを貯留する分離槽である。また、水銀溶出部11は、ORP計15a及びpH計15bのいずれか一つを備えた構成とすることもできる。
【0028】
水銀溶出部11は、その内部の石膏スラリーのORPを上昇させるために、ORP上昇−pH低下手段10Aから酸化剤を供給するように構成されている。また、水銀溶出部11は、その内部の石膏スラリーのpHを低下するために、ORP上昇−pH低下手段10Aから酸を供給するように構成されている。ORP計15aは、水銀溶出部11内の石膏スラリーの酸化還元電位を計測する計測器であり、制御装置15と電気的に接続している。また、pH計15bは、水銀溶出部11内の石膏スラリーのpH計を計測する計測器であり、制御装置15と電気的に接続している。制御装置15は、前述のようにORP計15a及びpH計15bにそれぞれ独立して電気的に接続すると共に、ORP上昇−pH低下手段10Aに設けた開閉弁10aと電気的に接続している。開閉弁10aは、開閉状態とその内部の流量を調整できる流量調整弁である。このように、制御装置15は、ORP計15a及び/又はpH計15bにより計測した測定値に基づいて、制御装置15からの制御信号により又は制御装置15に開始命令を入力することにより、開閉弁10aの開閉状態と開閉弁10aを通過する酸化剤と酸の供給量をそれぞれ独立に制御するように構成されている。また、酸化剤と酸の供給については、制御装置15による制御を介さなくてもよく、ORP上昇−pH低下手段10Aから直接制御してもよい。すなわち、ORP上昇−pH低下手段10Aは、制御装置15からの自動制御又は手動操作により、水銀溶出部11内の石膏スラリーのORPとpH値の両方を調整するように酸化剤と酸の両方、水銀溶出部11内の石膏スラリーのORPのみを調整するように酸化剤のみ、若しくは水銀溶出部11内の石膏スラリーのpH値のみを調整するように酸のみを添加できるように構成されている。
【0029】
また、水銀溶出部11は、その内部の石膏スラリーのORPを第一規定値まで上昇させるようにORP上昇−pH低下手段10Aから酸化剤を供給するように構成されている。また、水銀溶出部11は、その内部の石膏スラリーのpH値を第二規定値まで低下させるように、酸を供給するように構成されている。前記第一規定値及び前記第二規定については後述する。
【0030】
図1に示すように、石膏分離部12は、水銀溶出部11の後流に位置し、流路L
34に連結した図示しない洗浄液供給部を備えた、ベルトフィルタ等の固液分離機である。石膏分離部12は、石膏回収部13と流路L
Gを介して連結し、水銀回収装置20と流路L
12を介して連結し、排水処理装置30と流路L
34を介して連結している。また、前記洗浄液供給部と流路L
34との間には、石膏分離部12上で洗浄を行うための水等の洗浄液を貯留する図示しない貯留槽が設けてある。このように、水銀除去装置10の石膏分離部12は、石膏回収部13と共に、石膏分離回収部として、石膏スラリーを洗浄しながら固液分離すると共に、固体の石膏を回収石膏として回収するように構成されている。
【0031】
水銀回収装置20は、水銀を主に含有する溶液の流れ方向に沿って水銀除去装置10の後流に位置し、水銀処理部21と、水銀分離部22と、水銀回収部23とを備えている。水銀を主に含有する溶液は、
図2中にて太矢印で示したように、流路L
0、L
11、L
12、L
21、L
Hgを流れる。
【0032】
水銀処理部21は、水銀を主に含有する溶液の流れ方向に沿って石膏分離部12の後流に位置し、図示しない薬剤供給手段を備えた分離槽である。水銀処理部21は、石膏分離部12と流路L
12を介して連結し、水銀回収部23と流路L
21を介して連結している。水銀分離部22は、水銀を含有する溶液の流れ方向に沿って水銀処理部21の後流に位置し、ベルトフィルタ等の固液分離機であり、排水処理装置30と流路L
31を介して連結している。また、水銀回収部23は、水銀の流れ方向沿って水銀分離部22の後流に位置し、水銀分離部22と回収流路L
Hgを介して連結している。
【0033】
水銀処理部21の薬剤供給手段から供給する薬剤は、水銀を固形化させて分離できる薬剤であればよく、硫化水素ナトリウム(NaHS)等を含有するキレート剤、キレート樹脂、活性炭等が挙げられる。これらのうち、水銀選択性の高いキレート剤、キレート樹脂又は活性炭の構成を適宜選択することができる。
【0034】
排水処理装置30は、水銀回収装置20にて水銀が回収された溶液の流れ方向に沿って水銀回収装置20の後流に位置し、流路L
31〜L
35とから構成される装置である。排水処理装置30は、系外の排水処理設備又は無排水化設備と流路L
32を介して連結し、脱硫装置1と流路L
33を介して連結し、水銀除去装置10の石膏分離部12の洗浄液供給部と流路L
34を介して連通し、水銀除去装置10の水銀溶出部11と流路L
35を介して連通している。また、流路L
33〜L
35には、図示しない開閉弁が設けられている。前記開閉弁は、手動弁又は自動開閉弁でもよく、これらの流量開閉弁でもよい。前記排水処理設備としては、例えば、キレート剤、キレート樹脂等による処理、硫化物等による凝集沈殿処理、イオン交換樹脂による処理、活性炭による処理、生物処理等の排水処理を行う設備が挙げられる。また、前記無排水化設備としては、例えば、灰やセメントと排水を混練するセメント固化する処理、高温のガスと液を接触させ液を蒸発させる方法(スプレードライヤ)による処理、排水を蒸発結晶化させる方法(Evaporator/Crystallizer)による処理等の無排水化処理を行う設備が挙げられる。なお、前記排水処理設備及び無排水化処理設備には、上記した例以外の処理も採用できる。
【0035】
以上の構成を備える石膏回収システムは、前述したように、例えば、石灰石膏法を用いて排ガスを脱硫する脱硫装置を一つの設備としたシステムの系外に配置されたシステムである。この場合、
図1に示す脱硫装置1は、煤塵が除去された後の排ガス中のSO
x及び二価水銀(Hg
2+)を、石灰石膏法を用いてその内部で除去する脱硫装置として構成されている。脱硫装置1は、排ガスをその塔底部の壁面側から送給すると共に、図示しない流路からの吸収液をその塔内の吸収液供給ノズル3から塔頂部側に向かって噴流させるように構成されている。脱硫装置1は、その塔底部側から上昇してくる排ガスと、吸収液供給ノズル3から噴流して流下する吸収液とを対向して気液接触させることにより、排ガス中のSO
xと二価水銀(Hg
2+)とを吸収液中に吸収して、排ガスから除去するように構成されている。吸収液を供給する方法として、例えばスプレー等による供給方法等の他の方法を採用することもできる。また、脱硫装置1は、吸収液により浄化した排ガスを、脱硫装置1の塔頂部側より排出し、煙突から外部に排出する。脱硫装置1内に供給する吸収液は、例えば、水に石灰石の粉末を溶解した石灰スラリー(CaCO
3)と、石灰と排ガス中のSO
xとの反応により生じた石膏スラリー(CaSO
4)と、水とを混合したスラリー状の液である。この場合、吸収液は、脱硫装置1内にて、下記式1及び式2に示すように、SO
xと水と空気と反応して石膏としてSO
xを捕獲する。排ガス中の二価水銀(Hg
2+)は、脱硫装置1において吸収液に捕集され、石膏が生成する過程で石膏中に取り込まれる。これにより、二価水銀(Hg
2+)は、石膏内に捕獲されることとなる。このように、脱硫装置1は、吸収液を用いて、安定な状態で固相の石膏中に二価水銀(Hg
2+)を閉じ込め、石膏スラリー(吸収液)を脱硫装置1内の塔底部に貯留するように構成されている。その結果、脱硫装置1の系外に排出する石膏スラリーは、二価水銀(Hg
2+)をその内部に捕獲した固相の石膏(CaSO
4・2H
2O)と水等の液相とを少なくとも含有している。また、このような脱硫装置の系外へ排出した石膏スラリーは、70〜90%程度の液相の水と10〜30%程度の固相の石膏とを少なくとも含有し、固相の石膏内に二価水銀を捕獲している。なお、吸収液供給ノズル3は、図中に示したように塔上部に向かって噴流させる形式のほか、塔底部側に向かって噴流させ、排ガスと対向接触させる形式や、上部と底部の双方向に同時噴霧する形式でも可能であり、図に示す方法に限定されない。
【0037】
1.2.石膏回収方法
次に、本発明に係る石膏回収方法の第一実施の形態を説明する。第一実施の形態に係る石膏回収方法は、石膏スラリー排出工程と、水銀除去工程と、水銀回収工程と、排水処理工程とを含む。
【0038】
石膏スラリー排出工程では、排ガスを吸収液により脱硫する脱硫装置の系外に水と水銀を少なくとも含有する石膏スラリーを排出する。本実施の形態では、先ず、排出した石膏スラリーを水銀除去装置10の水銀溶出部11内に流入させる。
【0039】
水銀除去工程では、水銀溶出工程として、水銀溶出部11にてORP上昇−pH低下手段10Aを用い、石膏スラリー中の石膏から石膏スラリーの液相に水銀を溶出させる。また、その液相に水銀が溶出した石膏スラリーを、石膏分離部12上に供給する。具体的には、水銀溶出部11内に供給された石膏スラリーに、ORP上昇−pH低下手段10Aから酸化剤を供給することにより、石膏スラリーの酸化還元電位を少なくとも第一規定値まで上昇させる。また、酸化還元電位を上昇する際に又は前記酸化還元電位の上昇とは独立して、水銀溶出部11内に供給された石膏スラリーに、ORP上昇−pH低下手段10Aから酸を供給することにより、石膏スラリーのpH値を少なくとも第二規定値まで低下させる。
【0040】
ORP上昇−pH低下手段10Aにより供給する酸化剤は、石膏スラリーの酸化還元電位を上昇させることができる酸化剤であればよく、空気、塩素化合物(Cl
2、ClO
−)、酸素(O
2)、オゾン(O
3)、過酸化水素(H
2O
2)、鉄化合物(Fe
2+、Fe
3+)等である。これらのうち、酸化剤は、空気又は塩素酸化合物が好ましく、空気、次亜塩素酸塩(NaClO等)又はオゾンがより好ましい。酸化剤として空気又は次亜塩素酸塩又はオゾンを用いれば、流路L
11の液が流路L
33を介して最終的に脱硫装置1に流入した際に、脱硫装置1への影響を最小限にとどめることができる。
【0041】
ORP上昇−pH低下手段10Aにより上昇させる石膏スラリーの酸化還元電位は、石膏スラリーの酸化還元電位を脱硫装置1の系外に排出した直後の石膏スラリーの酸化還元電位よりも高い値(第一規定値)まで上昇させればよい。第一規定値は、少なくとも400mVが好ましく、800mVがより好ましい。酸化還元電位を800mVまで上昇すれば、石膏中の水銀のほぼ全量を石膏スラリーの液相に溶出させることができる。
【0042】
また、前述したような脱硫装置1内では、還元雰囲気下で二価水銀(Hg
2+)が還元されて金属水銀(Hg
0)となり、排ガス中へ再飛散することを防止するために、石膏スラリー(吸収液)の酸化還元電位を100mV以上300mV以下の範囲に維持する必要がある。このため、脱硫装置1の系外に排出した直後の石膏スラリーの酸化還元電位は、100mV以上300mV以下と推定できる。したがって、ORP上昇−pH低下手段10Aにより、石膏スラリーの酸化還元電位を100mV以上300mV以下の範囲から少なくとも400mVまで上昇させることが好ましく、100mV以上300mV以下の範囲から少なくとも800mVまで上昇させることが更に好ましい。また、石膏スラリーの酸化還元電位については、前述したように、脱硫装置1内部や脱硫装置1の液循環ライン等の図示しない位置又は排出流路L
0に設けたORP計により確認できる。
【0043】
ORP上昇−pH低下手段10Aにより供給する酸は、石膏のpH値を低下させることができる酸であればよく、塩酸(HCl)、硝酸(HNO
3)、希硫酸等の硫酸(H
2SO
4)等である。これらのうち、酸は、硫酸が好ましい。酸として硫酸を用いれば、硫酸は脱硫装置1内に元々存在している物質であるため、流路L
11の液が流路L
33を介して最終的に脱硫装置1に流入した際に、脱硫装置1への影響を最小限にとどめることができる。
【0044】
ORP上昇−pH低下手段10Aにより低下させる石膏スラリーのpH値は、石膏スラリーのpH値を、脱硫装置1の系外に排出した直後の石膏スラリーのpH値よりも低い値(第二規定値)まで低下させればよい。第二規定値は、4.5以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。ORP上昇−pH低下手段10Aにより石膏スラリーのpH値を低下させるほど、石膏から石膏スラリーの液相へ溶出する水銀の量を増加できる。
【0045】
また、脱硫装置1内の石膏スラリーのpH値は、脱硫装置1内で脱硫率の低下や亜硫酸カルシウムの析出によるスケーリングの発生を防ぐために、4.0以上6.5以下の範囲に維持する必要がある。このため、脱硫装置1の系外に排出した直後の石膏スラリーのpH値は、4.0以上6.5以下と推定できる。したがって、ORP上昇−pH低下手段10Aにより低下させる石膏スラリーのpH値は、4.0以上6.5以下の範囲から4.5以下まで低下させることが好ましく、4.0以上6.5以下の範囲から4.0以下まで低下させることがより好ましい。また、石膏スラリーのpH値については、前述したように、脱硫装置1内部や脱硫装置1の液循環ライン等の図示しない位置又は排出流路L
0にpH計により確認できる。
【0046】
また、水銀除去工程では、石膏分離回収工程として、石膏分離部12上にその液相に水銀を含有する石膏スラリーを供給して固液分離する。また、固液分離中に、石膏分離部12上の石膏スラリーに図示しない洗浄液供給手段からの洗浄液を添加して、洗浄する。固液分離と洗浄により、石膏分離部12上には固体の石膏が残留し、水銀を含有する石膏スラリーの液相は石膏分離部12から水銀を含有する溶液として流路L
12に排出される。この水銀を含有する溶液は、主に石膏スラリーの液相と洗浄液からなる。石膏分離部12上に残留した固体の石膏を石膏回収部13に供給して、回収石膏として回収する。また、流路L
12に排出した水銀を含有する溶液を水銀回収装置20の水銀処理部21に送液する。
【0047】
また、水銀除去工程では、前記洗浄液の温度を、10℃以上80℃以下とすることが好ましく、50℃以上80℃以下とすることがより好ましい。このように、洗浄液の温度を常温より高くすることにより、水銀の溶解度が上昇し、水銀の溶出を促進することができる。
【0048】
また、水銀除去工程では、石膏当りの洗浄水量を0.1〜1000mL/g−石膏とすることが好ましく、1〜100mL/g−石膏とすることがより好ましい。これにより、石膏からの水銀除去効果が充分得られると共に、排水の水銀処理が必要となる排水量を低減することができる。
【0049】
水銀回収工程では、水銀処理部21内にて、水銀を含有する溶液に図示しない薬剤供給手段からの薬剤を供給することにより、溶液中の水銀を固形化して水銀化合物とする。固形化した水銀を含有する溶液を、水銀分離部22に供給する。次いで、水銀分離工程として、水銀分離部22上にて固形化した水銀を含有する溶液を供給して固液分離する。固液分離により、水銀分離部22上には固体の水銀化合物が残留し、水銀を分離した溶液は水銀分離部22から排水処理装置30の流路L
31に排出される。水銀分離部22上の固体の水銀化合物を水銀回収部23に送り、回収する。水銀化合物は、例えば、薬剤として硫化水素ナトリウムを含有するキレート剤を用いれば、辰砂(HgS)であり、キレート樹脂・活性炭等を用いれば、水銀を吸着した樹脂・活性炭等の化合物である。
【0050】
排水処理工程では、排水処理装置30の流路L
31に排出した溶液の一部を排水として流路L
32から系外に排出することにより、排水処理又は無排水化処理を行う。また、流路L
31に排出した溶液の他の一部を流路L
33から脱硫装置1に送液することにより、脱硫装置1内にて消費する水として再利用する。また、流路L
31に排出した溶液の別の他の一部を流路L
35から水銀除去装置10の水銀溶出部11に送液することにより、水銀溶出工程にて消費する水として再利用する。更に、流路L
31に排出した溶液の残部を流路L
34から石膏回収部12の洗浄液供給部に送液することにより、石膏回収工程にて消費する洗浄液として再利用する。前記排水以外の溶液の3つの再利用については、前述した流路L
33〜L
35に設けた開閉弁を開閉制御することにより、少なくとも1つ以上の再利用を任意選択的に行うことができる。
【0051】
第一実施の形態によれば、脱硫装置1の運転条件に干渉することなく、脱硫装置1の石膏スラリーから水銀を分離することにより、効率よく純度の高い石膏を回収できる。前述したように、脱硫装置1内では、吸収液中の水銀濃度が上昇すると、二価水銀(Hg
2+)として吸収された水銀が金属水銀に還元されて気相に放出される(再飛散)リスクが高まる虞がある。これに対して、本実施の形態では、脱硫装置1の系外で酸化還元電位を上げることにより、水銀が再飛散するリスクを低減しつつ石膏スラリーから水銀を分離できる。更に、脱硫装置1内では酸化阻害物質の存在等により吸収液の酸化還元電位を高い状態に維持できない可能性がある。これに対して、本実施の形態では、少なくとも酸化剤を用いるだけで酸化還元電位が高い状態を実現できる。また、脱硫装置1内でpH値が低下した場合、亜硫酸カルシウムの生成によるスケールが発生することにより、脱硫装置1の脱硫率が低下する虞がある。これに対して、本実施の形態によれば、上記した問題を考慮せずに、石膏から石膏スラリーの液相へ溶出する水銀の量を増加できる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、石膏回収システムを脱硫装置1の系外にて水銀回収部を配置して水銀を回収するように構成したため、脱硫装置1内での使用に不向きなキレート剤、キレート樹脂又は活性炭を薬剤として有効活用して水銀を除去することができる。例えば、脱硫装置1内に直接的に薬剤を投入した場合、薬剤は必ず水銀選択性を有しているわけではないため、装置液中に含まれる別の金属イオンを吸着してしまう虞がある。その結果、薬剤の消費量が増大して、処理に要するコストが増加する。また、薬剤の粒径が細かいため、石膏と分離することが困難となる虞がある。本実施の形態によれば、このような問題を解決することができる。
【0053】
[2.第二実施の形態]
2.1.石膏回収システム
次いで、
図3を参照して本発明に係る石膏回収システムの第二実施の形態について説明する。
図3に示すように、第二実施の形態に係る石膏回収システムは、第一実施の形態と比較して、水銀除去装置210と排水処理装置230を備える点において主に相違する。第一実施の形態と同様の構成については、同様の符号を付すと共に説明を省略する。また、図中にて太矢印で示したように、本実施の形態では、水銀を主に含有する溶液は流路L
0、L
12、L
21、L
Hgを流れる。
【0054】
水銀除去装置210は、脱硫装置1の後流に位置し、石膏分離部212と石膏回収部213とを備えている。水銀除装置210は、脱硫装置1の系外に排出した石膏スラリーを対象とし、洗浄により石膏スラリー中の石膏から水銀を溶出させながら固液分離すると共に、固体の石膏を回収石膏として回収するように構成されている。
【0055】
石膏分離部212は、脱硫装置1の後流に位置し、ORP上昇−pH低下手段210Aと流路L
34に連結した図示しない洗浄液供給部とを備えた、ベルトフィルタ等の固液分離機である。石膏分離部212は、石膏回収部213と流路L
Gを介して連結し、水銀回収装置20と流路L
12を介して連結し、排水回収装置230と流路L
34を介して連結している。また、前記洗浄液供給部と流路L
34との間には石膏分離部212上で洗浄を行うための水等の洗浄液を貯留する図示しない貯留槽が設けてある。ORP上昇−pH低下手段210Aは、第一実施の形態と同様の構成を採用できる。すなわち、石膏分離部212は、石膏スラリーのORPを上昇させるために、ORP上昇−pH低下手段210Aから洗浄液に酸化剤を供給するように構成されている。また、石膏分離部212は、石膏スラリーのpHを低下させるために、ORP上昇−pH低下手段210Aから洗浄液に酸を供給するように構成されている。
【0056】
石膏回収部213は、第一実施の形態と同様の構成を採用できる。したがって、石膏回収部213は、石膏分離部212と共に、第一実施の形態の石膏分離回収部として機能するように構成されている。このように、本実施の形態に係る水銀除去装置210は、石膏分離回収部が第一実施の形態の水銀溶出部10を兼ねることにより、石膏スラリー中の石膏から水銀を溶出させて分離するように構成されている。すなわち、本実施の形態に係る水銀除去装置210では、石膏分離回収部が、第一実施の形態の水銀溶出部として、ORP上昇−pH低下手段210Aを用いて、石膏スラリー中の石膏から石膏スラリーの液相に水銀を溶出させると共に、石膏スラリーを洗浄液供給部からの洗浄液により洗浄しながら固液分離し、固体の石膏を回収するように構成されている。
【0057】
また、石膏回収部213は、任意選択的に、図示しないORP計と、pH計と、制御装置を備えることができる。また、石膏回収部213は、ORP計及びpH計のいずれか一つを備えた構成とすることもできる。これらORP計、pH計及び制御装置は、第一実施の形態と同様の構成を採用できる。したがって、ORP上昇−pH低下手段210Aは、石膏回収部213の制御装置からの自動制御又は手動操作により、水銀溶出部212上の石膏のORPとpH値の両方を調整するように酸化剤と酸の両方、水銀溶出部212上の石膏のORPのみを調整するように酸化剤のみ、若しくは水銀溶出部212上の石膏スラリーのpH値のみを調整するように酸のみを添加できるように構成されている。更に、酸化剤と酸の供給については、制御装置を介さなくてもよく、ORP上昇−pH低下手段210Aから直接制御してもよい。
【0058】
排水処理装置230は、水銀回収装置20にて水銀が回収された溶液の流れ方向に沿って水銀回収装置20の後流に位置し、流路L
31〜L
34とから構成される装置である。排水処理装置230は、系外の排水処理設備又は無排水化設備と流路L
32を介して連結し、脱硫装置1と流路L
33を介して連結し、水銀除去装置210の石膏分離部212の洗浄液供給部と流路L
34を介して連通している。前記排水処理設備と無排水化設備には、第一実施の形態と同様の構成を採用できる。また、流路L
33と流路L
34には、第一実施形態と同様の開閉弁が設けられている。
【0059】
2.2.石膏回収方法
次に、本発明に係る石膏回収方法の第二実施の形態を説明する。第二実施の形態に係る石膏回収方法は、水銀除去工程と、水銀回収工程と、排水処理工程とを少なくとも含む。前述した第一実施の形態と同様の方法については説明を省略する。
【0060】
石膏スラリー排出工程では、排ガスを吸収液により脱硫する脱硫装置の系外に水と水銀を少なくとも含有する石膏スラリーを排出する。本実施の形態では、先ず、排出した石膏スラリーを水銀除去装置210の石膏分離部212に供給する。
【0061】
水銀除去工程では、石膏分離部212上に供給した石膏スラリーに対して、ORP上昇‐pH低下手段210Aを用い、ORPを上昇させた及び/又はpH値を低下させた洗浄液を添加し、前記洗浄液で石膏スラリーを洗浄しながら固液分離する。これにより、石膏スラリー中の石膏の水銀を、石膏スラリーの液相及び洗浄液に溶出させる。また、固液分離により、固体の石膏と水銀を含有する溶液とを分離する。この溶液は、石膏スラリーの液相及び洗浄液からなる。固液分離と洗浄により、石膏分離部212上には固体の石膏が残留し、水銀を含有する溶液は石膏分離部212から水銀を含有する溶液として流路L
12に排出される。この水銀を含有する溶液は、主に石膏スラリーの液相と洗浄液からなる。石膏分離部212上に残留した固体の石膏を石膏回収部213に供給して、回収石膏として回収する。また、流路L
12に排出した水銀を含有する溶液を水銀回収装置20の水銀処理部21に送液する。このように、本実施の形態に係る水銀除去工程では、第一実施の形態の水銀溶出工程と石膏分離回収工程とを同時に行うことにより、石膏スラリー中の石膏から水銀を溶出させて分離する。すなわち、本実施の形態に係る水銀除去工程では、水銀溶出工程として、ORP上昇−pH低下手段210Aを用いて、石膏スラリー中の石膏から石膏スラリーの液相に水銀を溶出させると共に、前記水銀除去工程中に、石膏分離回収工程として、前記石膏スラリーを洗浄液により洗浄しながら固液分離すると共に、固体の石膏を回収する。
【0062】
ORP上昇−pH低下手段210Aにより供給する酸化剤は、石膏スラリーの酸化還元電位を上昇させることができる酸化剤であればよく、空気、塩素化合物、酸素、オゾン、過酸化水素、鉄化合物等である。これらのうち、酸化剤は、実用的な観点から、空気、次亜塩素酸塩又はオゾンが好ましい。酸化剤として空気、次亜塩素酸塩又はオゾンを用いれば、流路L
11の液が流路L
33を介して最終的に脱硫装置1に流入した際に、脱硫装置1への影響を最小限にとどめることができる。
【0063】
ORP上昇−pH低下手段210Aにより上昇させる石膏スラリーの酸化還元電位は、脱硫装置1の系外に排出した直後の石膏スラリーの酸化還元電位よりも高い値(第一規定値)とすればよい。第一規定値としては、第一実施の形態に記載の第一規定値を好適に採用できる。また、脱硫装置1の系外に排出した直後の石膏スラリーの酸化還元電位としては、第一実施の形態に記載の値を好適に採用できる。
【0064】
ORP上昇−pH低下手段210Aにより供給する酸は、第一実施の形態に記載の酸を好適に採用できる。第二規定値としては、第一実施の形態に記載の第二規定値を好適に採用できる。また、脱硫装置1の系外に排出した直後の石膏スラリーのpH値としては、第一実施の形態に記載の値を好適に採用できる。
【0065】
排水処理工程では、排水処理装置230の流路L
31に排出した溶液の一部を排水として流路L
32から排出して排水処理設備又は無排水化設備に送ることにより、前記溶液の一部に対して排水処理又は無排水化処理を行う。また、流路L
31に排出した溶液の他の一部を前記脱硫装置1に送液することにより、脱硫装置1内にて消費する水として再利用する。更に、流路L
31に排出した溶液の残部を石膏分離部212に送液することにより、石膏回収工程にて消費する洗浄液として再利用する。前記排水以外の溶液の2つの再利用については、前述した流路L
33と流路L
34に設けた開閉弁を開閉制御することにより、少なくとも1つ以上の再利用を任意選択的に行うことができる。
【0066】
第二実施の形態によれば、第一実施の形態と同様の効果を奏すると共に、ベルトフィルタ等の石膏分離部212のみで水銀を分離した石膏を回収できるため、効率的に石膏を回収できる。
【0067】
[3.第三実施の形態]
3.1.石膏回収システム
次いで、
図4を参照して本発明に係る石膏回収システムの第三実施の形態について説明する。
図4に示すように、第三実施の形態に係る石膏回収システムは、第二実施の形態と比較して、固液分離部316と排水処理装置330を更に備える点において主に相違する。第二の実施の形態と同様の構成については、同様の符号を付すと共に説明を省略する。また、図中にて太矢印で示したように、本実施の形態では、水銀を主に含有する溶液は流路L
0、L
16、L
12、L
21、L
Hgを流れる。
【0068】
固液分離部316は、脱硫装置1の後流かつ水銀除去装置210の石膏分離部212の前流に位置し、ベルトフィルタ等の固液分離機である。固液分離部316は、脱硫装置1と流路L
0を介して連結し、石膏分離部212と流路L
16を介して連結し、排水処理装置330と流路L
36を介して連結している。
【0069】
排水処理装置330は、水銀回収装置20にて水銀が回収された溶液の流れ方向に沿って水銀回収装置20の後流に位置し、流路L
31〜L
34と流路L
36とから構成される装置である。排水処理装置330は、系外の排水処理設備又は無排水化設備と流路L
32を介して連結し、脱硫装置1と流路L
33を介して連結し、水銀除去装置210の石膏分離部212の洗浄液供給部と流路L
34を介して連通し、固液分離部316と流路L
36を介して連通している。前記排水処理設備と無排水化設備には、第一実施の形態と同様の構成を採用できる。また、流路L
33と流路L
34には、第一実施形態と同様の図示しない開閉弁が設けられている。
【0070】
3.2.石膏回収方法
次に、本発明に係る石膏回収方法の第三実施の形態を説明する。第三実施の形態に係る石膏回収方法は、第二実施の形態と比較して、固液分離工程を更に含む点で相違する。前述した第二実施の形態と同様の方法については説明を省略する。
【0071】
脱硫装置1の系外に排出した直後に石膏スラリーには、固相の石膏に対して多量の水分が含有され、この水分が主に石膏スラリーの液相を構成している。例えば、本明細書に記載の石灰石膏法を用いた脱硫装置1の系外へ排出された石膏には、10〜30%程度の固相の石膏に対して、70〜90%程度の水分が含有されている。また、脱硫装置1の系外に排出した石膏スラリーは、マンガン化合物を更に含んでいる。マンガン化合物の流入原として、排ガス中の煤塵や脱硫装置1に供給される石灰石、脱硫装置1にて使用されるマンガン化合物(Mn
2+、Mn
4+、Mn
7+)系の酸化剤が挙げられる。マンガン化合物は、酸化マンガン、二酸化マンガンとして石膏表面に析出することにより、石膏の着色の原因となる。
【0072】
固液分離工程では、水銀除去工程前に、脱硫装置1の系外に排出した直後の石膏スラリーを固液分離部316に供給して固液分離する。固液分離により、石膏スラリーからマンガン化合物を含有する石膏スラリーの液相の大部分を分離する。大部分の液相を分離した石膏スラリーを水銀除去装置210の石膏分離部212に供給することにより、水銀除去工程を実施する。また、石膏スラリーから分離した溶液を固液分離部316から排出流路L
36に排出することにより、排水処理工程の排水として合流させる。
【0073】
第三実施の形態によれば、第二実施の形態と同様の効果を奏すると共に、脱硫装置1の石膏スラリー中の70〜90%程度を占める水の大部分を固液分離部316により分離した(固液分離工程)後、石膏分離部212にてORP上昇−pH低下手段210Aと洗浄液供給部からの洗浄液を供給することにより、水銀を除去した石膏を回収できる。これにより、石膏分離部212にて洗浄液を貯留する図示しない貯留槽、水銀回収装置20の水銀処理部21の槽、第一実施形態に記載の水銀溶出部11等の槽等の水処理に用いる水量を少なくして、これら槽を小さくできる。更に、脱硫装置1に排出した直後の石膏スラリーからマンガン化合物を除去することにより、石膏回収処理中にマンガンが析出することを防ぐことができる。したがって、石膏回収部213にて回収する回収石膏が着色することを防ぐことができる。
【0074】
[4.第四実施の形態]
4.1.石膏回収システム
次いで、
図5を参照して本発明に係る石膏回収システムの第四実施の形態について説明する。
図5に示すように、第四実施の形態に係る石膏回収システムは、第二実施の形態と比較して、分級部417と、固液分離部418と、排水処理装置430と、流路L
19とを更に備える点において主に相違する。第二実施の形態と同様の構成については、同様の符号を付すと共に説明を省略する。また、図中にて太矢印で示したように、本実施の形態では、水銀を主に含有する溶液は流路L
0、L
17、L
12、L
21、L
Hgを流れる。図中にて点線矢印で示す流路L
19は、粒径の小さい石膏が流れる流路である。
【0075】
分級部417は、脱硫装置1の後流かつ水銀除去装置210の石膏分離部212よりも前流に位置し、供給された石膏を粒径の大小により区分けするように構成されている。具体的には、分級部417は、ハイドロサイクロン、沈降槽等の固液分離機であり、所定の石膏の分級方法により供給された石膏スラリーを大粒径の石膏を含む石膏スラリーと小粒径の石膏を含む石膏スラリーとに区分けするように構成されている。分級部417は、脱硫装置1と流路L
0を介して連結し、石膏分離部212と流路L
17を介して連結し、固液分離部418と流路L
37を介して連結している。また、分級部417は、大粒径の石膏を含む石膏スラリーを固液分離部418に送り、小粒径の石膏を含む石膏スラリーを石膏分離部212に送るように構成されている。
【0076】
固液分離部418は、大粒径の石膏を含む石膏スラリーの流れる方向に沿って分級部417の後流に位置した、ベルトフィルタ等の固液分離機である。排水処理装置430と流路L
38を介して連結し、石膏分離部212及び石膏回収部213の間の回収流路L
Gと流路L
18を介して連結している。固液分離部418は、大粒径の石膏を含む石膏スラリーを固液分離することにより大粒径の石膏と溶液とに分離し、大粒径の石膏を石膏回収部213に送ると共に、溶液を排水処理装置430に送るように構成されている。また、石膏分離部212と流路L
18及び回収流路L
Gとの連結点との間には、その一端にて回収流路L
Gと連結し、他端にて脱硫装置1に連結した流路L
19が設けてある。
【0077】
排水処理装置430は、水銀が回収された溶液の流れ方向に沿って水銀回収装置20の後流に位置し、流路L
31〜L
34と流路L
38とから構成される装置である。排水処理装置430は、系外の排水処理設備又は無排水化設備と流路L
32を介して連結し、脱硫装置1と流路L
33を介して連結し、水銀除去装置210の石膏分離部212の洗浄液供給部と流路L
34を介して連通し、固液分離部418と流路L
38を介して連通している。前記排水処理設備と無排水化設備には、第一実施の形態と同様の構成を採用できる。また、流路L
33と流路L
34には、第一実施形態と同様の図示しない開閉弁が設けられている。
【0078】
4.2.石膏回収方法
次に、本発明に係る石膏回収方法の第四実施の形態を説明する。第四実施の形態に係る石膏回収方法は、第二実施の形態と比較して、粒径分離工程を更に含む点にて主に相違する。前述した第二実施の形態と同様の方法については説明を省略する。
【0079】
粒径分離工程では、水銀除去工程前に、脱硫装置1から系外へ排出した石膏スラリーを分級部417に供給し、分級部417を用いて石膏スラリー中の石膏を粒径別に分離することにより、大粒径の石膏を含む石膏スラリーと小粒径の石膏を含む石膏スラリーとに分離する。粒径分離により、分級部417のオーバーフロー液である水銀含有濃度の高い小粒径の石膏を含む石膏スラリーを石膏分離部212に供給して、水銀除去工程を行う。また、粒径分離により、分級部417のアンダーフロー液となる大粒径の石膏を含む石膏スラリーを固液分離部418に供給して固液分離する。固液分離により溶液分離した大粒径の石膏を石膏回収部213に供給して、回収石膏として回収する。また、固液分離により大粒径の石膏スラリーから分離した溶液を、流路L
38を介して流路L
32に送液することにより、排水処理工程の前記排水として処理する。
【0080】
更に、石膏分離回収工程では、石膏回収部213にて回収石膏として回収する前の小粒径の石膏の一部を、流路L
19から脱硫装置1に供給して水銀除去剤として再利用する。
【0081】
脱硫装置1から系外へ排出された石膏スラリー中の石膏は、粒径に応じて大粒径の石膏と小粒径の石膏とに区別できる。小粒径の石膏は、通常の石膏と比較して重量当たりの水銀5〜10倍程度多い。これは、小粒径の石膏の重量当たりの表面積が大きく、水銀を吸着及び石膏に取り込むポテンシャルが高いことに由来すると推測できる。したがって、第四実施の形態によれば、第二実施の形態と同様の効果を奏すると共に、大粒径の石膏と比較して水銀の含有量が多い小粒径の石膏を選択的に分離することにより、水銀除去工程での洗浄に用いる洗浄液の量を低減できる。その結果、効率的に水銀を除去できる。更に、水銀除去工程後の洗浄後の小粒径の石膏を脱硫装置1に戻すことにより、小粒径の石膏を脱硫装置1の水銀除去剤として繰り返し使用できる。
【0082】
[5.第五実施の形態]
5.1.石膏回収システム
次いで、
図6を参照して本発明に係る石膏回収システムの第五実施の形態について説明する。
図6に示すように、第五実施の形態に係る石膏回収システムは、第四実施の形態と比較して、粉砕部520を更に備える点において主に相違する。第四実施の形態と同様の構成については、同様の符号を付すと共に説明を省略する。図中にて点線矢印で示す流路L
20及び流路L
21は、固体の石膏が流れる流路である。
【0083】
粉砕部520は、石膏回収部213と流路L
21を介して連結し、脱硫装置1と流路L
21を介して連結した、例えば粉砕機であり、石膏を粉砕してその粒径を小さくするように構成されている。
【0084】
5.2.石膏回収方法
次いで、本発明に係る石膏回収方法の第五実施の形態を説明する。本実施の形態に係る石膏回収方法は、第四実施の形態と比較して粉砕工程を更に含む。第四実施の形態と同様の方法については説明を省略する
【0085】
粉砕工程では、石膏分離回収工程にて石膏回収部213で回収した回収石膏の一部を粉砕部520に供給する。粉砕部520では、供給した回収石膏を粉砕することにより石膏の粒径を小さくする。粉砕部520により粒径を小さくした石膏を小粒径の石膏として
脱硫装置1に供給する。脱硫装置1内では、供給した小粒径の石膏を水銀吸着剤として利用する。
【0086】
第五実施の形態によれば、第四実施の形態と同様の効果を奏すると共に、脱硫装置1に水銀除去剤として供給する小粒径の石膏の量を増大させることができる。このため、脱硫装置1から系外に排出する石膏に含まれる水銀含有量の低減を図ることができる。
【0087】
なお、前述した実施の形態では、スラリーを固相の成分と液相の成分とに固液分離する固液分離機として、ベルトフィルタを例示した。本発明はこれに限定されない。固液分離機は、スラリーを固相と液相とに分離できる装置であればよく、例えば、遠心分離機、デカンタ型の遠心沈降機、重力式の沈殿濃縮槽等を採用できる。
【0088】
また、前述した実施の形態では、石膏分離部12、212上にて分離した石膏を石膏回収部13、313にて回収石膏として回収する構成及び方法を例示した。本発明はこれに限定されない。本発明に係る石膏回収システム及び石膏回収方法の構成及び方法は、石膏分離部12、212と石膏回収部13、213の間に、石膏を工業用水等の洗浄水で洗浄するための固液分離部を更に備える構成とすることができ、石膏分離回収工程にて回収前の石膏に対する石膏洗浄工程を更に含むことができる。これにより、回収石膏の純度を更に高めることができる。
【0089】
また、上述した各実施の形態では、本発明に係る石膏回収システム及び石膏回収方法の構成及び方法を例示した。本発明はこれに限定されない。本発明に係る石膏回収システム及び石膏回収方法では、脱硫装置1の運転条件に影響を受けることなく、石膏から不純物を効率よく分離し、純度の高い石膏を得ることができる範囲において、一実施の形態の一つ以の構成を他の実施の形態の構成に組み込むことにより、各実施の形態を適宜組み合わせることができる。例えば、第一形態の水銀溶出部11を他の実施の形態の石膏分離部12、212の前流に組み込むことにより、主に水銀の除去量を増大させる構成及び方法としてもよく、第三実施の形態の固液分離部316を他の実施の形態の石膏分離部12、212の前流に組み込むことにより、主にマンガン化合物を排除する構成及び方法としてもよい。また、第四実施の形態の分級部417を第一〜第三実施の形態の石膏分離部12、212の前流に組み込むことにより、又は第五実施の形態の粉砕部520を第一〜第三実施の石膏回収部13、213の後流に形態に組み込むことにより、主に脱硫装置1の水銀除去剤量を増大させる構成及び方法としてもよい。