特許第6879802号(P6879802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879802
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】三次元積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/205 20170101AFI20210524BHJP
   B29C 64/255 20170101ALI20210524BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210524BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20210524BHJP
   B05C 19/06 20060101ALI20210524BHJP
   B05C 19/04 20060101ALI20210524BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B29C64/205
   B29C64/255
   B33Y30/00
   B29C64/165
   B05C19/06
   B05C19/04
   B28B1/30
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-72131(P2017-72131)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171799(P2018-171799A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】高田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 勉司
(72)【発明者】
【氏名】山川 晟男
(72)【発明者】
【氏名】河上 高庸
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−279928(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/151783(WO,A1)
【文献】 特開2015−137144(JP,A)
【文献】 特開2015−193134(JP,A)
【文献】 特開2015−178245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体材料を層状に形成した後、前記粉体材料の層を固めることを繰り返して造形する三次元積層造形装置であって、
前記粉体材料を貯留可能であり、貯留される前記粉体材料を層状となるように排出するリコータと、
前記リコータの動作を制御する制御部と、を備え、
前記リコータは、
前記粉体材料を貯留可能な容器と、
前記容器に対して回転可能であり、前記容器内の前記粉体材料を回転軸線の延びる方向に搬送するスクリュー部材と、を備え、
前記制御部は、前記スクリュー部材の回転方向を、第1の回転方向と、前記第1の回転方向と逆方向である第2の回転方向とに切り替え可能に制御することを特徴とする、三次元積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体材料の層形成と、粉体材料の層における所定部分の固化とを繰り返すことにより、三次元造形物を製造する積層造形装置が知られている。
【0003】
そのような積層造形装置として、例えば、粉体材料としての砂を貯留するリコータユニットと、砂を結合させるバインダを吐出するプリントヘッドユニットとを備える積層造形装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、そのような積層造形装置では、リコータユニットが、移動するとともに砂を造形テーブルの上に撒いて砂層を形成した後、プリントヘッドユニットが、砂層の上にバインダを吐出・塗布して、砂層のバインダ塗布部分を固化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−189035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1に記載の積層造形装置では、リコータユニット内部において、砂が均一に貯留されずに偏る場合がある。この場合、リコータユニットが砂を撒いて砂層を形成すると、リコータユニット内部の砂の偏りに起因して、砂層の厚みが不均一となり、精度よく造形できないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、粉体材料を精度よく層状に形成でき、造形物の精度の向上を図ることができる三次元積層造形装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、粉体材料を層状に形成した後、前記粉体材料の層を固めることを繰り返して造形する三次元積層造形装置であって、前記粉体材料を貯留可能であり、貯留される前記粉体材料を層状となるように排出する排出部と、前記排出部の動作を制御する制御部と、を備え、前記排出部は、前記粉体材料を貯留可能な容器と、前記容器に対して回転可能であり、前記容器内の前記粉体材料を回転軸線の延びる方向に搬送するスクリュー部材と、を備え、前記制御部は、前記スクリュー部材の回転方向を、第1の回転方向と、前記第1の回転方向と逆方向である第2の回転方向とに切り替え可能に制御する、三次元積層造形装置を含んでいる。
【0009】
しかるに、図3Aに示すように、排出部の容器は、粉体材料が供給されることにより、粉体材料を貯留する。容器に貯留される粉体材料は、容器に形成される供給口の近傍に偏る場合がある。そこで、図3Bに示すように、容器にスクリュー部材を設けて、粉体材料を搬送することが検討される。
【0010】
しかし、粉体材料をスクリュー部材により搬送すると、粉体材料の搬送方向の下流側部分に粉体材料が溜まり、容器内部において粉体材料を均一に貯留できない場合がある。
【0011】
一方、上記の構成によれば、制御部が、スクリュー部材の回転方向を、第1の回転方向と、第1の回転方向と逆方向である第2の回転方向とに切り替え可能に制御する。そのため、スクリュー部材を第1の回転方向に回転させて、粉体材料を回転軸線の延びる方向の一方側から他方側に向けて搬送した後に、スクリュー部材の回転方向を第2の回転方向に切り替えて、粉体材料を回転軸線の延びる方向の他方側から一方側に搬送することができる。これにより、容器内部に粉体材料を均一に貯留することができる。その結果、排出部が粉体材料を精度よく層状に形成でき、造形物の精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の三次元積層造形装置によれば、粉体材料を精度よく層状に形成でき、造形物の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の三次元積層造形装置の一実施形態としての3Dプリンタの平面図である。
図2図2は、図1に示すリコータのA−A断面図である。
図3図3Aは、図1に示すリコータのB−B断面図であって、粉体材料が供給口の近傍に偏った状態を示す。図3Bは、図3Aに続いて、粉体材料がスクリュー部材により搬送された状態を示す。図3Cは、図3Bに続いて、粉体材料が容器内部に均一に貯留された状態を示す。
図4図4Aは、図2に示す3Dプリンタの斜視図であって、リコータが第1粉体材料層を形成する工程を示す。図4Bは、図4Aに示す工程を説明するための説明図である。
図5図5Aは、図2に示す3Dプリンタの斜視図であって、ジェットヘッドが第1粉体材料層にバインダを供給する工程を示す。図5Bは、図5Aに示す工程を説明するための説明図である。
図6図6Aは、図5Bに続いて、第1粉体材料層上に第2粉体材料層を形成する工程を示す。図6Bは、図6Aに続いて、第2粉体材料層にバインダを供給する工程を示す。
図7図7Aは、図6Bに続いて、粉体材料の層形成およびバインダの供給を順次繰り返し、造形物を造形する工程を示す。図7Bは、図7Aに示す造形物の斜視図である。
図8図8は、図1に示すリコータに貯留される粉体材料の一実施形態としての鋳物砂の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<3Dプリンタ>
図1図4Bを参照して、本発明の三次元積層造形装置の一実施形態としての3Dプリンタ1を説明する。
【0015】
3Dプリンタ1は、3D−CADデータに基づいて造形物を造形できる装置であって、粉体材料を層状に形成した後、粉体材料の層にバインダを供給して、粉体材料の層を固めることを繰り返して造形する。
【0016】
図1に示すように、3Dプリンタ1は、造形ユニット10と、排出部の一例としてのリコータ13と、ジェットヘッド14と、制御部20とを備えている。
(1)造形ユニット
図4Aおよび図4Bに示すように、造形ユニット10は、ジョブボックス11と、ステージ12と、支持軸18とを備えている。
【0017】
ジョブボックス11は、平面視略矩形枠状を有しており、上下方向に延びている。ジョブボックス11の上端部は、開放されている。
【0018】
ステージ12は、平面視略矩形の板状を有しており、ジョブボックス11内に配置されている。ステージ12は、上下方向に昇降可能な支持軸18の上端部に固定されている。ステージ12は、支持軸18の昇降によりジョブボックス11内において上下方向に移動可能である。
(2)リコータ
図3Cおよび図4Bに示すように、リコータ13は、粉体材料を貯留可能であり、貯留される粉体材料を、ステージ12上に層状となるように排出するように構成される。リコータ13は、ステージ12に対して間隔を空けて平行な状態で、ステージ12の上方を通過するようにステージ12の面方向の一方向に移動可能である。なお、以下において、リコータ13が移動可能な方向を横方向(X方向)とし、横方向および上下方向の両方向と直交する方向を縦方向(Y方向)とする。
【0019】
図2および図3Aに示すように、リコータ13は、容器15と、ブレード16と、スクリュー部材21とを備えている。
【0020】
容器15は、粉体材料を貯留可能である。容器15は、下底が上底より短い断面台形状を有しており、縦方向に延びている。容器15は、縦方向に互いに間隔を空けて配置される第1側壁15Aおよび第2側壁15Bと、横方向に互いに間隔を空けて配置される第3側壁15Cおよび第4側壁15Dと、容器15の下端部に位置する底壁15Eと、容器15の上端部に位置する上壁15Fとを備える。
【0021】
図3Aに示すように、第1側壁15Aは、縦方向における容器15の一端部に位置する。第2側壁15Bは、縦方向における容器15の他端部に位置する。
【0022】
図2に示すように、第3側壁15Cは、横方向における容器15の一端部に位置する。第3側壁15Cは、第1側壁15Aの横方向の一端部と、第2側壁15Bの横方向の一端部とを連結する。第3側壁15Cの下端部は、底壁15Eと間隔を隔てて位置する。
【0023】
第4側壁15Dは、横方向における容器15の他端部に位置する。第4側壁15Dは、第1側壁15Aの横方向の他端部と、第2側壁15Bの横方向の他端部とを連結する。
【0024】
底壁15Eは、第1側壁15Aの下端部と、第2側壁15Bの下端部とを連結する。底壁15Eは、第4側壁15Dの下端部と連続する一方、第3側壁15Cの下端部と間隔を隔てて位置する。
【0025】
第3側壁15Cの下端部と、底壁15Eの横方向一端部と、第1側壁15Aおよび第2側壁15Bとで、粉体材料を排出するための排出口17を区画する。排出口17は、第3側壁15Cの下方に位置する。排出口17は、容器15の内外を連通する。排出口17は、縦方向に延びる。排出口17の縦方向の寸法は、ステージ12の縦方向の寸法と略同じである。
【0026】
上壁15Fは、第1側壁15Aの上端部と、第2側壁15Bの上端部とを連結する。上壁15Fは、第3側壁15Cの上端部と、第4側壁15Dの上端部とを連結する。
【0027】
図1に示すように、上壁15Fは、粉体材料の供給を受け入れる供給口19を有する。供給口19は、縦方向における上壁15Fの一端部に位置する。供給口19は、図示しないが、粉体材料が収容されるタンクに接続されている。
【0028】
図2に示すように、ブレード16は、容器15内に配置されている。ブレード16は、容器15に貯留される粉体材料が、所望せずに流出することを規制する。また、ブレード16は、所望のタイミングで粉体材料が排出口17から排出されるように振動可能である。ブレード16は、側面視L字状を有しており、プレート16Aと、突出部16Bとを有している。
【0029】
プレート16Aは、第3側壁15Cに沿うように配置されている。突出部16Bは、第3側壁15Cにおける排出口17の上方近傍に位置する。突出部16Bは、プレート16Aの下端部から、第4側壁15Dに向かって突出している。突出部16Bの遊端部(プレート16Aと反対側の端部)は、第4側壁15Dに対して、横方向に間隔を隔てて配置されている。横方向における突出部16Bの遊端部と第4側壁15Dとの間の間隔Lは、例えば、0.3mm以上、好ましくは、0.7mm以上、例えば、6.0mm以下、好ましくは、1.5mm以下である。
【0030】
図3Aに示すように、スクリュー部材21は、容器15内の粉体材料を縦方向(回転軸線の延びる方向の一例)に搬送するように構成される。スクリュー部材21は、容器15内に配置される。スクリュー部材21は、軸部22と、スクリュー羽根23とを備える。
【0031】
軸部22は、縦方向に延びる略円柱形状を有する。縦方向における軸部22の両端部は、第1側壁15Aおよび第2側壁15Bに回転可能に支持される。
【0032】
スクリュー羽根23は、軸部22の周面に設けられており、第1側壁15Aと第2側壁15Bとの間に位置する。スクリュー羽根23は、縦方向の一方側から他方側に向かって、右巻き(時計回り)に延びる螺旋形状を有する。
【0033】
スクリュー部材21は、縦方向に延びる軸線を中心として、容器15に対して回転可能である。詳しくは、スクリュー部材21は、第1の回転方向と、第1の回転方向と逆方向である第2の回転方向とに回転可能である。スクリュー部材21は、第1の回転方向に回転したときに、容器15内の粉体材料を縦方向(軸線の延びる方向の一例)の一方側から他方側に向かって搬送する。スクリュー部材21は、第2の回転方向に回転したときに、容器15内の粉体材料を縦方向の他方側から一方側に向かって搬送する。
【0034】
(3)粉体材料
図3Cに示すように、粉体材料は、リコータ13の容器15に貯留される。詳しくは、粉体材料は、容器15内部において、ブレード16の突出部16Bよりも上側の空間に貯留される。粉体材料は、特に制限されず、三次元積層造形に適用可能な公知の造形材料が挙げられる。粉体材料として、例えば、鋳物砂、樹脂粒子、セラミックス粒子、ガラス粉末などが挙げられ、好ましくは、鋳物砂が挙げられる。
【0035】
鋳物砂として、例えば、砂(後述)と硬化剤(後述)との混合砂、図8に示す鋳物砂2などが挙げられ、好ましくは、図8に示す鋳物砂2が挙げられる。
【0036】
図8に示すように、鋳物砂2は、砂3と、砂3を被覆する樹脂硬化物を含有する表面改質層4と、表面改質層4の表面に付着する硬化剤からなる硬化剤層5とを備える。
【0037】
砂3として、例えば、天然珪砂、人工砂が挙げられる。
【0038】
表面改質層4が含有する樹脂硬化物として、例えば、フラン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、レゾール型フェノール樹脂などが挙げられ、耐熱性の観点から好ましくは、フラン樹脂が挙げられる。
【0039】
硬化剤層5の硬化剤は、例えば、後述するバインダを硬化させる酸触媒を含む。酸触媒として、例えば、脂肪族スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸など)、芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸など)、無機酸(例えば、硫酸、リン酸、塩酸など)、カルボン酸(例えば、マレイン酸、シュウ酸など)などが挙げられる。酸触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
鋳物砂2は、砂と、上記の樹脂硬化物に対応する樹脂組成物とを混合した後、硬化剤を添加することにより調製できる。
【0041】
(4)ジェットヘッド
図5Aおよび図5Bに示すように、ジェットヘッド14は、ステージ12上に形成される粉体材料の層にバインダを供給するように構成される。ジェットヘッド14は、図示しないが、バインダを収容するバインダタンクに接続されており、バインダタンクからバインダが補給される。ジェットヘッド14は、ステージ12に対して間隔を空けて平行な状態で、ステージ12の上方を通過するように、縦方向および横方向に移動可能である。
【0042】
バインダは、粉体材料を固めることができれば特に制限されない。バインダとして、例えば、フラン樹脂組成物、フェノール樹脂組成物、アルカリフェノール樹脂組成物などが挙げられ、好ましくは、フラン樹脂組成物などが挙げられる。
【0043】
(5)制御部
図1に示すように、制御部20は、リコータ13およびジェットヘッド14の動作を制御するように構成される。また、制御部20は、スクリュー部材21の回転方向を、第1の回転方向と、第2の回転方向とに切り替え可能である(図3A図3B参照)。制御部20は、リコータ13およびジェットヘッド14のそれぞれと電気的に接続される。また、制御部20は、外部から送信される3D−CADデータを受信可能である。
【0044】
(6)3Dプリンタによる造形
次に、図3A図7Bを参照して、3Dプリンタ1における造形方法を説明する。
【0045】
3Dプリンタ1における造形方法は、容器15内の粉体材料を略均一にする準備工程(図3A図3B参照)と、粉体材料を層状に形成する層形成工程(図4Aおよび図4B参照)と、粉体材料の層にバインダを供給して、粉体材料の層を固めるバインダ供給工程(図5Aおよび図5B参照)とを含む。そして、少なくとも層形成工程とバインダ供給工程とを繰り返して、造形物を製造する(図6A図7B参照)。
【0046】
(6−1)準備工程
図3Aに示すように、準備工程では、まず、粉体材料を、供給口19を介して容器15に供給する。そして、制御部20は、粉体材料の供給後に、容器15の内部において粉体材料が均一となるように、スクリュー部材21を第1の回転方向R1に回転させた後、スクリュー部材21を第2の回転方向R2に回転させる。
【0047】
詳しくは、制御部20は、粉体材料の供給開始から第1の時間T1が経過するまで、スクリュー部材21を第1の回転方向R1に回転させる。これにより、スクリュー部材21は、供給口19の下方に堆積する粉体材料を、縦方向の他方側に向かって搬送する。
【0048】
第1の時間T1は、第1の回転方向に回転するスクリュー部材21が、容器15の内部において、縦方向の一端部に位置する粉体材料を、縦方向の他端部まで搬送可能な時間である。
【0049】
次いで、図3Bに示すように、制御部20は、第1の時間T1が経過後、スクリュー部材21の回転方向を、第1の回転方向R1を第2の回転方向R2に切り替える。そして、制御部20は、回転方向の切り替えから第2の時間T2が経過するまで、スクリュー部材21を第2の回転方向R2に回転させる。これにより、スクリュー部材21は、容器15の内部において、縦方向の他端部に溜まる粉体材料を、均一となるように、縦方向の一方側に向かって搬送する。
【0050】
第2の時間T2は、第2の回転方向に回転するスクリュー部材21が、容器15の内部において、縦方向の他端部に溜まる粉体材料を均一となるように搬送可能な時間である。
【0051】
その後、制御部20は、必要により、スクリュー部材21の回転方向を、第2の回転方向R2から第1の回転方向R1に切り替えて、上記の動作を繰り返す。
【0052】
以上によって、図3Cに示すように、容器15の内部において粉体材料が略均一となり、リコータ13の準備が完了する。
【0053】
(6−2)層形成工程
次いで、図4Aおよび図4Bに示すように、層形成工程では、制御部20は、ブレード16を僅かに振動させながら、粉体材料を貯留するリコータ13を横方向に移動させる。すると、リコータ13は、粉体材料を排出口17からステージ12上に層状となるように排出する(図2参照)。これにより、ステージ12上に、第1粉体材料層25(粉体材料の層)が形成される。
【0054】
(6−3)バインダ供給工程
次いで、図5Aおよび図5Bに示すように、バインダ供給工程では、制御部20は、受信した3D−CADデータに基づいて、ジェットヘッド14により、第1粉体材料層25のうち造形物となる部分にバインダを供給する。これにより、第1粉体材料層25に、バインダが供給される第1供給部分26が形成される。第1供給部分26では、供給されたバインダが粉体材料を互いに接着する。これにより、第1供給部分26が固められる。
【0055】
なお、制御部20は、バインダ供給工程と同時に、上記した準備工程を実施することができる。つまり、ジェットヘッド14が第1粉体材料層25にバインダを供給する間に、容器15に粉体材料を補給し、容器15内部において粉体材料を略均一とすることができる。
【0056】
(6−4)層形成工程およびバインダ供給工程の繰り返し
次いで、図6Aに示すように、ステージ12が、第1粉体材料層25の厚み分下降した後、リコータ13が、第1粉体材料層25上に、再度、粉体材料を層状となるように排出して、第2粉体材料層27(粉体材料の層)を形成する。その後、図6Bに示すように、ジェットヘッド14が、第2粉体材料層27のうち砂型となる部分に、バインダを供給して、第2供給部分28を形成する。
【0057】
同様に、図7Aに示すように、リコータ13による粉体材料の層形成、および、ジェットヘッド14によるバインダの供給を順次繰り返す。粉体材料の層形成がn回繰り返された場合、第1粉体材料層25〜第n粉体材料層が順次積層され、第1供給部分26〜第n供給部分が順次形成される。
【0058】
その後、図7Bに示すように、粉体材料の層において、バインダが供給されていない部分を除去する。
【0059】
以上によって、造形物30が製造される。なお、図7Aでは、便宜上、造形物30の表面が段差を有するように示されているが、実際には、造形物30の表面は、図7Bに示すように、略平滑に形成されている。
【0060】
(7)作用効果
図3A図3Cに示すように、3Dプリンタ1では、制御部20が、スクリュー部材21の回転方向を、第1の回転方向R1と第2の回転方向R2とに切り替え可能に制御する。そのため、スクリュー部材21を第1の回転方向R1に回転させて、粉体材料を縦方向の他方側に搬送した後に、スクリュー部材21の回転方向を第2の回転方向R2に切り替えて、粉体材料を縦方向の一方側に搬送することができる。そのため、容器15の内部に粉体材料を均一に貯留することができる。また、容器15の内部において粉体材料が循環するので、粉体材料が、長期間排出されることなく滞留することを抑制できる。その結果、リコータ13が粉体材料を精度よく層状に形成でき、造形物の精度の向上を図ることができる。
【0061】
<変形例>
上記の実施形態では、第1の時間T1の開始のタイミング(つまり、スクリュー部材21の第1の回転方向R1の開始のタイミング)が、粉体材料の容器15に対する供給開始と同時であるが、第1の時間T1の開始のタイミングは、これに限定されない。例えば、粉体材料の容器15に対する供給が完了した後に、第1の時間T1を開始して、スクリュー部材21を第1の回転方向R1に回転させてもよい。
【0062】
上記の実施形態では、第1の時間T1が経過後、スクリュー部材21の回転方向を第2の回転方向R2に切り替えるが、回転方向の切り替えのタイミングは、これに限定されない。例えば、第1の回転方向R1と第2の回転方向R2との切り替えの間に、スクリュー部材21の回転を所定時間停止させてもよい。詳しくは、第1の時間T1が経過後、スクリュー部材21の回転を一旦停止した後、スクリュー部材21を第2の回転方向R2に回転させることができる。
【0063】
上記の実施形態では、制御部20が、時間を基準として、スクリュー部材21の回転方向の切り替えを制御するが、制御部20の制御は、これに限定されない。例えば、制御部20は、センサの検知結果に基づいて、スクリュー部材21の回転方向の切り替えを制御してもよい。
【0064】
このような変形例では、図3Bにおいて仮想線で示すように、3Dプリンタ1が、さらに、センサ50を備える。また、容器15の上壁15Fは、センサ50が容器15内の粉体材料を検知するためのセンサ開口51を有する。センサ開口51は、縦方向における上壁15Fの他端部に位置する。
【0065】
そして、センサ50が、センサ開口51を介して、容器15の内部における縦方向の他方側部分に溜まる粉体材料の量が所定量を超えたことを検知すると、制御部20が、スクリュー部材21の回転方向を、第1の回転方向R1から第2の回転方向R2に切り替える。なお、センサ50が、センサ開口51を介して、容器15の内部における縦方向の他方側部分に粉体材料があることを検知した後、スクリュー部材21の第1の回転方向R1への回転を所定時間維持し、次いで、スクリュー部材21の回転方向を第2の回転方向R2に切り替えることもできる。
【0066】
上記の実施形態では、3Dプリンタ1が、粉体材料の層にバインダを供給して固めるインクジェットタイプの三次元積層造形装置であるが、三次元積層造形装置は、これに限定されない。三次元積層造形装置は、粉体材料の層を溶融または焼結することにより固める溶融または焼結タイプの三次元積層造形装置であってもよい。この場合、三次元積層造形装置は、ジェットヘッド14に代えて、粉体材料を溶融可能な溶融部または粉体材料を焼結可能な焼結部を備える。
【0067】
これらによっても、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、これら実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 3Dプリンタ
13 リコータ
15 容器
20 制御部
21 スクリュー部材
R1 第1の回転方向
R2 第2の回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8