(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面が、互いに隔てて形成される複数本の線状の凸部を備える親水コートと、前記親水コートの隣り合う前記凸部の間に施された光触媒コートと、前記親水コート及び前記光触媒コートのそれぞれの表面の一部に外周部から中心に向けて形成される複数本の線状の撥水コートとで覆われ、
前記凸部は、前記光触媒コートの表面よりも突出していることを特徴とするセルフクリーニングレンズ。
レンズの表面が、互いに隔てて形成される複数本の線状の凸部を備える親水コートと、前記親水コートの隣り合う前記凸部の間に施された光触媒コートと、前記親水コート及び前記光触媒コートのそれぞれの表面の一部に外周部から中心に向けて形成される複数本の線状の撥水コートとで覆われ、前記凸部は、前記光触媒コートの表面よりも突出していることを特徴とするカメラ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、各図に示す符号FRはカメラの前方、符号UPはカメラの上方を示している。
図1は、本発明のセルフクリーニングレンズ11を備えるレンズアッシー10を示す斜視図であり、レンズアッシー10の斜め上方から見た図である。
レンズアッシー10は、カメラの前部に設けられ、セルフクリーニングレンズ11、レンズ支持部12及び鏡筒部13を備える。
セルフクリーニングレンズ11(以下、単に「レンズ11」と記す。)は、レンズ素材表面に異なる種類の複数のコーティングが施され、屋外で使用されるカメラに組み付けられる。上記した複数のコーティングによって、外部からの清掃動作を行うことなしに自己浄化によって、レンズ11の表面への水分、土埃等(汚れ)の付着が抑制され、カメラで撮影される画像や映像の品質が高められる。
レンズ支持部12は、レンズ11が取付けられる部分である。鏡筒部13は、レンズ支持部12の後部に設けられる筒状の部分である。
【0020】
図2は、レンズアッシー10を示す正面図である。
レンズ11の表面は、透光性を有する複数のコーティングからなるセルフクリーニングコート20で覆われている。セルフクリーニングコート20は、親水コート21、複数の光触媒コート22及び複数の撥水コート23を備える。
親水コート21は、上下に延びる複数の直線状の凸部21aと、隣り合う凸部21a,21a間に設けられた凹部21bとからなる。親水コート21は、親水性を有するコーティングであり、例えば、水接触角が90°以下である。
光触媒コート22は、親水コート21の凹部21b内に形成されている。光触媒コート22は、光(紫外線)が当たることで光触媒作用を示すコーティングであり、光触媒作用による強い酸化力でレンズ表面に付着した汚れを分解するとともに、高い親水状態を発生させる。これにより、雨が降ることで、光触媒コート22と汚れとの間に雨水が入り込み、汚れを洗い流すことが可能になる。
【0021】
撥水コート23は、親水コート21及び光触媒コート22の表面上に形成されている。撥水コート23は、撥水性を有するコーティングであり、例えば、水接触角が90°以上である。撥水コート23は、正面視では、レンズ11の中心24側から放射状に形成され、レンズ11の中心24を通って凸部21aに平行で鉛直に延びる直線25と、直線25に直交する直線26とに対してそれぞれ線対称に配置されている。直線25に対して、各撥水コート23は角度θ1だけ傾斜している。角度θ1は、例えば、 °〜 °が好適である。
撥水コート23は、正面視では直線状に形成され、それぞれレンズ11の中心24側の端部に対して外周側の端部が幅広く形成されている。
【0022】
また、レンズ11は、外周部(バレル面11c)に複数の水滴除去アーム29が取付けられている。水滴除去アーム29は、レンズ11の中心24側から放射状に配置され、バレル面11cから内側レンズ面11b(
図5参照)まで延びて親水コート21の凸部21aの表面に接触している。
水滴除去アーム29は、直線25上と、左右一対の撥水コート23,23のそれぞれの外側に隔てた位置とに設けられている。水滴除去アーム29は、親水性の高い材質(例えば、 )の材料ほど好ましい。
撥水コート23と、撥水コート23の左右外側の水滴除去アーム29とは、周方向で角度θ2だけ隔てている。例えば、角度θ2= °〜 °が好適である。
【0023】
以上に示したように、親水コート21を形成する複数の凸部21aは、上下方向に延びているので、凸部21aに沿って水滴をレンズ11の表面から落下しやすくすることができる。
また、撥水コート23は、レンズ上部とレンズ下部とにそれぞれ一対形成され、それぞれ一対の撥水コート23,23は、レンズ11の中心24を通る鉛直線としての直線25に対して対称に配置されるとともに、鋭角を成すように配置される。この構成によれば、水滴をレンズ11の中心部に一旦集めて流れやすくすることができる。また、車載カメラ50によって撮影される映像の両側部及び中央部を撥水コート23によって邪魔しないようにすることができる。
【0024】
図3は、レンズアッシー10を示す側面図、
図4は、レンズアッシー10を示す背面図である。
図3に示すように、レンズ11は、中央部が外周部(バレル面11c)よりも前方に突出している。
レンズ支持部12は、鏡筒部13側に位置する大径部12aと、大径部12aに隣接してレンズ11側に位置する小径部12bとを備える。小径部12bは、レンズ11の最大径よりも小径に形成され、小径部12bに、レンズ支持部12及び鏡筒部13の周囲を覆うカバー(不図示)がシール部材を介して取付けられる。
【0025】
図3及び
図4に示すように、鏡筒部13は、断面が菱形の筒状に形成され、鏡筒部13が取付けられるカメラボディ(不図示)に形成された菱形の穴に鏡筒部13が嵌合される。鏡筒部13は、上下に配置された一対の角部13e,13fと、左右に配置された一対の角部13g,13hとを有する。
鏡筒部13の内面13aによって形成される菱形の上下に延びる一方の対角線13bは、他の対角線13cよりも長い。対角線13bは、レンズ11の凸部21aと平行になっている。なお、長い対角線13bを上下方向に延びるようにしたが、これに限らず、短い対角線13cを上下方向に延びるようにしてもよい。
鏡筒部13を上記菱形に形成することで、カメラボディに対して鏡筒部13、即ちレンズアッシー10は、180°回転させて取付けることが可能である。レンズ11の各部は、直線25,26の両方に線対称であるから、180°回転させてもレンズ11の凸部21aは、常に上下方向に延びるので問題はない。
【0026】
以上の
図3及び
図4に示したように、レンズ外周部をレンズ支持部12を介して支持する鏡筒部13は、断面菱形に形成され、菱形の対向する一対の角部13e,13fが上下方向に並んでいる。この構成によれば、鏡筒部13を180°回転させて取付けても、親水コート21の凸部21aを常に上下方向に延びるようにレンズ11を取付けることができる。
【0027】
また、以上の
図2及び
図3に示したように、レンズ11の外周部のバレル面11cには、親水性を有する材料により水滴を除去する水滴除去アーム29が形成されている。この構成によれば、親水性を有する水滴除去アーム29によって、レンズ11の外周部から汚水を排出しやすくすることができる。
【0028】
また、水滴除去アーム29は、親水コート21及び光触媒コート22のそれぞれの表面まで延びて親水コート21及び光触媒コート22に接触している。この構成によれば、親水コート21、光触媒コート22及び水滴除去アーム29が一緒になって親水作用により汚水をより一層排出しやすくすることができる。
【0029】
図5は、
図2のV−V線断面図、
図6は、
図2のVI−VI線断面図である。
図5に示すように、レンズ11は、ガラス又は樹脂からなるレンズ素材であるレンズ本体11Lと、レンズ本体11Lにおける前方に指向する表面であるレンズ面11aに形成されたARコート(反射防止膜)31と、セルフクリーニングコート20とを備える。
レンズ面11aは、中央側に配置されて前方に凸状に湾曲した内側レンズ面11bと、内側レンズ面11bの外周部に設けられたテーパー形状のバレル面11c(
図2参照)とを備える。各種コーティングは、内側レンズ面11bに施され、内側レンズ面11bを通してカメラの画像及び映像が撮影される。
ARコート31の表面には、セルフクリーニングコート20を構成する親水コート21が形成されている。親水コート21は、ARコート31の表面全体を覆うベース部21cと、ベース部21cから前方に突出する複数の凸部21aと、凸部21a間に出来る複数の凹部21bとからなる。
【0030】
ベース部21cの厚さは、レンズ11の中心から半径方向外側に向かうにつれて次第に薄くなっている。ベース部21cの表面からの凸部21aの高さは、レンズ11の中心から半径方向外側に向かうにつれて次第に低くなり、凹部21bの深さは、レンズ11の中心から半径方向外側に向かうにつれて次第に浅くなっている。
各凹部21bの底には、光触媒コート22が形成されている。光触媒コート22の表面22aは、凸部21aの表面21dよりも後方に位置する。即ち、隣り合う凸部21a,21aと、光触媒コート22と囲まれる空間33が形成される。
図6に示すように、親水コート21の凸部21aの表面21d及び凹部21bの側面21eと光触媒コート22の表面22aとには、撥水コート23が形成されている。撥水コート23は、隣り合う凸部21a,21a間の空間33(
図3参照)を埋め尽くし、光触媒コート22上にも形成されている。
図5及び
図6において、セルフクリーニングコート20の外気に触れる外表面をコート面20aとする。
【0031】
以上の
図5及び
図6に示したように、凸部21aは、光触媒コート22の表面よりも突出しているので、光触媒コート22の表面に水分を一時的に溜めることができ、汚れを浮かせて流しやすくすることができる。
【0032】
図7は、車載カメラ50を示す側面図、
図8は、車載カメラ50を示す分解図である。
図7及び
図8に示すように、レンズアッシー10は、例えば、車載カメラ50に組み込まれる。
車載カメラ50は、レンズアッシー10の他に、カメラボディ51、基板52、イメージセンサー53を備える。
レンズアッシー10の鏡筒部13は、カメラボディ51に取付けられる。詳しくは、カメラボディ51は、鏡筒部13が挿入されるフランジ51aと、フランジ51aに設けられた複数のボス部51bとを備える。フランジ51aには、鏡筒部13が挿入されて固定される菱形状の穴部51cを備える。鏡筒部13は、図示せぬ締結部材によってフランジ51aに取付けられる。
【0033】
カメラボディ51の複数のボス部51bには、基板52が複数のビス54によって取付けられる。
基板52には、イメージセンサー53が取付けられている。イメージセンサー53は、レンズ11を通った光を電気信号に変換する、例えば、CMOSセンサーである。
レンズ支持部12、カメラボディ51、イメージセンサー53などは、外界の土埃、雨水等に晒されないように、カメラカバー56によって覆われる。例えば、カメラカバー56とレンズ支持部12、カメラカバー56と基板52との間には、それぞれ環状のシール部材57,58が設けられ、シール性が確保されている。
【0034】
以上の
図2、
図5、
図6及び
図7に示したように、カメラとしての車載カメラ50のレンズ11の表面が、互いに隔てて形成される複数本の線状の凸部21aを備える親水コート21と、親水コート21の隣り合う凸部21a,21a間に施された光触媒コート22と、親水コート21及び光触媒コート22のそれぞれの表面の一部に外周部から中心に向けて形成される複数本の線状の撥水コート23とで覆われる。
【0035】
この構成によれば、レンズ素材としてのレンズ本体11Lの表面に異なる種類のコーティングを追加するだけで、ワイパー機構やノズル噴出機構のような大がかりな周辺システム(モーター、ポンプ駆動部品、洗浄液、洗浄エア、ホース、コントロールユニット等)を必要としない。また、レンズ11の表面にワイパーのような継続磨耗力等の負荷をかけることもないことから耐久性に優れ、それぞれのコーティングの特性によって、単純な構成でより効果的にセルフクリーニングを行うことができ、コスト削減、小型化を図ることができる。これにより、セルフクリーニングコート20の異物付着による映像劣化を改善することができる。
【0036】
図9は、
図7のIX−IX線断面図である。
鏡筒部13が挿入される穴部51cは、菱形に形成されている。穴部51cは、縦長の菱形に形成されている。従って、鏡筒部13を穴部51cに組み付ける場合に、上下逆に挿入する(180°回転させて挿入する)ことはあっても、縦長の鏡筒部13を横に向けて挿入する(90°回転させて挿入する)ことはできない。即ち、本実施形態の車載カメラ50(
図8参照)では、誤組付を防止する構造が採用されている。
【0037】
以上に述べたセルフクリーニングコート20の形成要領を次に説明する。
図10は、レンズ本体11Lの内側レンズ面11bへの第1コーティング処理を示す作用図である。
まず、内側レンズ面11bにARコート31を形成する。次に、ARコート31の表面に親水コート21のベース部21cを形成する。ARコート31及び親水コート21は、共に真空蒸着法により形成される。
真空蒸着法は、真空中で金属や金属酸化物などの成膜材料を加熱して、溶融・蒸発又は昇華させて、基板(ここでは、レンズ本体11L又はARコート31)の表面に蒸発、昇華した粒子(原子や分子)を付着・堆積させて薄膜を形成する技術である。
【0038】
図11は、第1コーティング処理後の第2コーティング処理に使用する第1マスク治具71及び第1マスク治具71の使用方法を示す図である。
図11(A)〜
図11(C)は、第1マスク治具71を示す説明図であり、
図11(A)は第1マスク治具71の正面図、
図11(B)は第1マスク治具71のB矢視図、
図11(C)は第1マスク治具71のC矢視図である。
図11(D)は第1マスク治具71の使用方法を示す断面図である。
図12は、レンズ11の表面における第2コーティング処理後の状態を示す断面図である。
【0039】
図11(A)〜
図11(C)に示すように、第1マスク治具71は、矩形の板状部71aと、板状部71aの中央部に形成された円形の凹部71bと、凹部71bの底を形成する湾曲した底壁71cとを備える。
図11(D)に示すように、凹部71bには、レンズ本体11Lが挿入される。底壁71cは、凹部71bが形成された板状部71aの一側面とは反対側の他側面から突出するとともに突出方向に凸となるように湾曲している。底壁71cには、複数のスリット71dが平行に形成されている。スリット71dは、親水コート21(
図5参照)の凸部21a(
図5参照)を形成するための部分である。隣り合うスリット71d,71d間には、マスク部71eが出来ている。マスク部71eは、親水コート21の凹部21b(
図5参照)を形成するための部分である。
第1マスク治具71の凹部71bにレンズ本体11Lを挿入し、固定することで、レンズ本体11Lに第1マスク治具71が装着される。
この状態で、第1コーティング処理を終えたレンズ本体11Lに、真空蒸着法により更に親水コーティング処理を施す。
【0040】
図12に示すように、第1コーティング処理によって形成された親水コート21(詳しくは、ベース部21c)の表面には、第1マスク治具71(
図11(A)参照)の複数のスリット71d(
図11(D)参照)に対応した位置にそれぞれ親水コート21の凸部21aが形成される。また、隣り合う凸部21a,21a間には、第1マスク治具71の複数のマスク部71e(
図11(D)参照)に対応した凹部21bが形成される。
【0041】
図13は、第2コーティング処理後の第3コーティング処理に使用する第2マスク治具72及び第2マスク治具72の使用方法を示す図である。
図13(A)〜(C)は、第2マスク治具72を示す説明図であり、
図13(A)は第2マスク治具72の正面図、
図13(B)は第2マスク治具72のB矢視図、
図13(C)は第2マスク治具72のC矢視図である。
図13(D)は第2マスク治具72の使用方法を示す断面図である。
【0042】
図13(A)〜(C)に示すように、第2マスク治具72は、矩形の板状部72aと、板状部72aの中央部に形成された円形の凹部72bと、凹部72bの底を形成する底壁72cとを備える。
図13(D)に示すように、凹部72bには、レンズ本体11Lが挿入される。底壁72cは、凹部72bが形成された板状部72aの一側面とは反対側の他側面から突出するとともに突出方向に凸となるように湾曲している。底壁72cには、光触媒コート22(
図5参照)を形成するための複数のスリット72dが平行に形成されている。隣り合うスリット72d,72d間には、親水コート21(
図5参照)の凸部21a(
図5参照)を覆うためのマスク部72eが出来ている。
第2マスク治具72の凹部72bにレンズ本体11Lを挿入し、固定することで、レンズ本体11Lに第2マスク治具72が装着される。
この状態で、第2コーティング処理を終えたレンズ本体11Lに、真空蒸着法により光触媒コーティング処理を施す。
【0043】
図11(D)及び
図13(D)において、第2マスク治具72の底壁72cにおけるスリット72d及びマスク部72eの位置は、第1マスク治具71の底壁71cにおけるスリット71d及びマスク部71eの位置に対してスリット71d,72dと直交する方向にずれている。即ち、第2マスク治具72のスリット72dの位置は、第1マスク治具71のマスク部71eの位置に形成されている。また、第2マスク治具72のマスク部72eの位置は、第1マスク治具71のスリット71dの位置に形成されている。
【0044】
このように、第2マスク治具72のスリット72d及びマスク部72eの位置をずらすことで、
図5及び
図13(D)に示したように、親水コート21の凹部21b内にスリット72dを通じて光触媒コート22が形成される。
図5において、光触媒コート22は、親水コート21の凸部21aよりも低く形成され、隣り合う凸部21a,21aと、光触媒コート22とで空間33が形成される。このような空間33を形成することで、後で詳述するように、親水コート21上に付着した付着物(汚れ)を容易に落とすことが可能になる。
【0045】
図14は、第3コーティング処理後の第4コーティング処理に使用する第3マスク治具73及び第3マスク治具73の使用方法を示す図である。
図14(A)〜(C)は、第3マスク治具73を示す説明図であり、
図14(A)は第3マスク治具73の正面図、
図14(B)は第3マスク治具73のB−B線断面図、
図14(C)は第3マスク治具73のC−C線断面図である。
図14(D)は第3マスク治具73の使用方法を示す断面図である。
【0046】
図14(A)〜(C)に示すように、第3マスク治具73は、矩形の板状部73aと、板状部73aの中央部に形成された円形の凹部73bと、凹部73bの底を形成する底壁73cとを備える。
図14(D)に示すように、凹部73bには、レンズ本体11Lが挿入される。底壁73cは、凹部73bが形成された板状部73aの一側面とは反対側の他側面から突出するとともに突出方向に凸となるように湾曲している。底壁73cには、複数のスリット73dが放射状に形成されている。複数のスリット73d以外の部分には、マスク部73eが出来ている。底壁73cの中央部にはスリット73dが形成されていない。
第3マスク治具73の凹部73bにレンズ本体11Lを挿入し、固定することで、レンズ本体11Lに第3マスク治具73が装着される。
この状態で、第4コーティング処理を終えたレンズ本体11Lに、真空蒸着法により撥水コーティング処理を施す。
図6に示したように、親水コート21及び光触媒コート22の各表面の一部には撥水コート23が形成される。
【0047】
以上の
図10〜
図14に示したように、親水コート21、光触媒コート22及び撥水コート23は、それぞれ真空蒸着により形成されるので、親水コート21、光触媒コート22及び撥水コート23を、不純物が少なく、均一で吸着度の高い薄膜に形成することができる。
【0048】
図15は、撥水コート23の配置の要求範囲を説明する説明図であり、
図15(A)〜(C)には、車載カメラで撮影された映像が示されている。
図15(A)は追い越し時の他車の状況把握(追い越し検知)をする場合の映像の説明図、
図15(B)は駐車時の駐車スペース把握(駐車支援)をする場合の映像の説明図、
図15(C)は走行中に自車側方からの車両又は歩行者等の飛び出しに対する状況把握(飛び出し検知)をする場合の映像の説明図である。
【0049】
図15(A)に示すように、道路81を走行中に、他の車両82,83を追い越す、あるいは追い抜く場合に、映像の下側に道路81、映像の左右両側の領域R1,R2に他の車両82,83がそれぞれ映し出される。図中には、実施には映像には表示されないが、レンズ11(
図2参照)の撥水コート23を所定位置に示している。
撥水コート23は、水滴を弾き落とす機能を有するが、非常に小さな水滴は、撥水コート23によって弾き落とされずに、撥水コート23上にとどまり、映像を劣化させる。撥水コート23は、比較的大きな水滴が流れ落ちるときの流れを制御する。
従って、映像の少なくとも領域R1,R2を除く範囲に撥水コート23を配置する必要がある。
【0050】
図15(B)に示すように、壁84の手前に設けられた駐車スペース85を示す白線86,87,88内に自車を駐車する場合、映像の白線86,87,88が映し出される領域R3、R4、R5を除く範囲に撥水コート23を配置する必要がある。
図15(C)に示すように、自車が道路81を走行中に、自車の側方から道路81に他の車両89が飛び出してくることがあるため、映像の両側の領域R6,R7を除く範囲に撥水コート23を配置する必要がある。
以上の
図15(A)〜(C)に示した追い越し検知、駐車支援、飛び出し検知を考慮してレンズへの撥水コート23の位置を決定する。
【0051】
以上に述べたセルフクリーニングコート20の作用を次に説明する。
図16は、レンズ11の表面における左右一側部に付着した汚水(汚れ)91の除去を示す作用図である。なお、レンズ11は水平方向を指向した状態にある。
図16(A)はレンズ11の表面における左右一側部に汚水91が付着した状態を示す正面図、
図16(B)は汚水91がレンズ11の表面に広がった状態を示す正面図、
図16(C)は
図16(B)の親水コート21の凸部21aに沿った断面を示す断面図、
図16(D)は汚水91が水滴除去アーム29に接触した状態を示す正面図、
図16(E)は
図16(D)の親水コート21の凸部21aに沿った断面を示す断面図、
図16(F)は汚水91が水滴除去アーム29から落ちる直前の状態を示す正面図、
図16(G)は
図16(F)の親水コート21の凸部21aに沿った断面を示す断面図である。
【0052】
図16(A)は、レンズ11の表面(セルフクリーニングコート20の表面)の複数の撥水コート23よりも側方位置、ここでは一方の側方位置に汚水91が付着した場合を示す。
この場合、
図16(B),(C)に示すように、レンズ11の表面で親水コート21及び光触媒コート22による親水作用と、親水コート21及び光触媒コート22からなる凹凸形状による毛細管現象とが発生する。これによって、汚水91が、親水コート21の凸部21aの表面21d、凹部21bの側面21eと、光触媒コート22の表面22aに水膜を張りながら広がる。
【0053】
次に、
図16(D),(E)に示すように、汚水91は、自重によりレンズ11の表面(セルフクリーニングコート20の表面)を下方へ移動し、水滴除去アーム29に接触する。水滴除去アーム29は、親水性が高いので、汚水91は、水滴除去アーム29の表面に広がっていく。
更に、
図16(F),(G)に示すように、汚水91は、水滴除去アーム29の親水効果と自重とにより水滴除去アーム29の表面を伝わり、レンズ11のバレル面11c(
図2参照)に流れ落ち、レンズ11の表面から落下する。
【0054】
図17は、レンズ11の上部領域に付着した汚水(汚れ)91の除去を示す作用図(前半)である。なお、レンズ11は水平方向を指向した状態にある。
図17(A)はレンズ11の表面上部に汚水91が付着した状態を示す正面図、
図17(B)は汚水91がレンズ11の表面上部の限られた範囲に広がった状態を示す正面図、
図17(C)は汚水91がレンズ11の中央部に集められた状態を示す正面図である。
図17(A)は、レンズ11の複数の撥水コート23よりも上方位置に汚水(汚れ)91が付着した場合を示す。
【0055】
この場合、
図17(B)に示すように、レンズ11の表面上部で親水作用、光触媒作用及び凹凸形状による毛細管現象の総合的効果によって、汚水91が水膜を張りながら、一対の撥水コート23,23の内側の限られた範囲に広がる。
次に、
図17(C)に示すように、撥水コート23により、汚水91がレンズ11の中心部近くに集められる過程で、汚水91は、集合体になりつつ重量が徐々に増して流れ落ちやすくなる。ここで集めきれなかった残りの汚水91は、上部の水滴除去アーム29,29の親水作用効果と、親水コート21及び光触媒コート22からなる凹凸による毛細管現象によって水滴除去アーム29に吸い上げられた状態となる。
【0056】
図18は、レンズ11の上部領域に付着した汚水(汚れ)91の除去を示す作用図(後半)である。なお、レンズ11は水平方向を指向した状態にある。
図18(A)は汚水91がレンズ中心部から流れ落ち始める状態を示す正面図、
図18(B)は汚水91がレンズ表面下部に流れた状態を示す正面図、
図18(C)は汚水91がレンズ表面から落下する直前の状態を示す正面図である。
図17(C)においてレンズ11の中心部近くに集められた汚水91は、
図18(A)に示すように、その重量が更に増して、レンズ11の中央部からレンズ11の表面(セルフクリーニングコート20の表面)を流れ落ち始める。
【0057】
図18(B)に示すように、レンズ11の表面(セルフクリーニングコート20の表面)下部まで流れた汚水91は、水滴除去アーム29に接触し、水滴除去アーム29の親水作用と汚水91の表面張力とによって水滴除去アーム29に吸い付く。
更に、
図18(C)に示すように、汚水91は、水滴除去アーム29の親水作用と汚水91の自重とにより水滴除去アーム29上を下側に伝わり、バレル面11cに流れ落ち、レンズ11の表面から落下する。
【0058】
図19は、レンズ表面に付着した汚水の位置による汚水の流れ易さを比較する作用図である。
レンズ11の表面(セルフクリーニングコート20の表面)の上部に付着した汚水91Aには、汚水91A自体の表面張力と親水作用効果の吸着力との和である付着力FA、及び自重WAが作用する。
付着力FAはレンズ11の表面の接線に直角に発生し、自重WAは鉛直に発生するため、付着力FAと自重WAの成す角度は、鋭角になる。
レンズ11の表面の中心部に付着した汚水91Bには、汚水91B自体の表面張力と親水作用効果の吸着力との和である付着力FB、及び自重WBが作用する。
【0059】
付着力FBはレンズ11の表面の接線に直角に発生し、自重WAは鉛直に発生するため、付着力FAと自重WAの成す角度は、直角になる。
レンズ11の表面の下部に付着した汚水91Cには、汚水91C自体の表面張力と親水作用効果の吸着力との和である付着力FC、及び自重WCが作用する。
付着力FCはレンズの表面の接線に直角に発生し、自重WAは鉛直に発生するため、付着力FCと自重WCの成す角度は、鈍角になる。
以上から、汚水91A,91B,91Cにおいては、最も流れ易いのは、汚水91C、最も流れ難いのは汚水91A、汚水91Bは、汚水91Cと汚水91Aの間の流れ易さになる。
【0060】
図20は、レンズ11の表面に付着した粘性の高い汚れ93の除去を示す作用図である。
図20(A)は汚れ93が付着した状態を示す図、
図20(B)は光触媒コート22の光触媒作用を示す図、
図20(C)は汚れ93が浮いた状態を示す図、
図20(D)は汚れ93が剥がれ落ちる状態を示す図である。なお、この場合の車載カメラのレンズ11は、水平方向に指向する場合を説明するが、その他の方向(例えば、下向き)に指向していても良い。
図20(A)は、レンズ11の表面に粘性の高い汚れ93が付着した状態を示す。汚れ93は、レンズ11の表面(セルフクリーニングコート20の表面)の親水コート21及び光触媒コート22による凹凸形状に付着するため、雨水等の水分が供給されずに次第に乾燥して固形物となったときに、レンズ11の表面に強固に付着する。
【0061】
図20(B)に示すように、汚れ93における光触媒コート22との接触部は、光触媒コートの光触媒作用によって次第に分解され、汚れ93の一部が除去されて、汚れ93と光触媒コート22との間に隙間94が形成される。この結果、レンズ11の表面への汚れ93の付着力が低下する。
図20(C)に示すように、レンズ11の表面に雨水等の水分(液体)95が供給されると、親水コート21及び光触媒コート22の親水作用により、隙間94内に水分95が流れ込む。この結果、汚れ93が水分95で浮いた状態となり、
図20(D)に示すように、汚れ93(
図20(C)参照)がレンズ11の表面から剥がれ落ち、水分95(
図20(C)も流れ落ちる。
【0062】
図21は、下方に指向するレンズ11に付着した汚れの除去を示す作用図である。
図21(A)はレンズ11が下方に指向する状態を示す側面図、
図21(B)はレンズ11の表面中心部に汚水91が集まった状態を示す正面図、
図21(C)は汚水91が撥水コート23によって弾かれた状態を示す正面図、
図21(D)は
図21(C)における親水コート21の凸部21aに沿った断面を示す断面図、
図21(E)は
図21(D)の状態から汚水91が落下した状態を示す断面図である。
【0063】
図21(A)に示すように、レンズ11が下方に指向する場合、
図21(B)において、セルフクリーニングコート20の表面で、親水コート21及び光触媒コート22による親水作用及び凹凸形状での毛細管現象の総合的効果によって、汚水91が水膜を張りながら広がり、レンズ11の中心部に集められる。
図21(C),(D)に示すように、汚水91の集合体は、撥水コート23により弾かれるため、親水コート21及び光触媒コート22との接触面積が少なくなり、付着力が低下して垂れ落ちやすくなる。そして、汚水91の重量増加や風等の外力によって、
図21(E)に示すように落下する。
【0064】
図22は、
図23〜
図25に示す車載カメラを示す図であり、
図22(A)は車両搭載時の車載カメラ50,110,120のレンズの向きを示す側面図、
図22(B)は車載カメラ50,110,120の正面図である。
図22(A),(B)に示すように、車載カメラ50,110,120は、筐体101と、筐体101の前面に設けられたレンズ11,111,121とを備える。
車載カメラ50,110,120のレンズ11,111,121は、鉛直線103に対して角度θ3(例えば、60°)の向きに指向している。
【0065】
図23は、比較例1のレンズ111を備える車載カメラ110におけるレンズ111の汚れ及び映像を示す作用図である。
図23(A),(B)は雨天時悪路走行中の車載カメラ110のレンズ111の汚水96及び映像を示す図であり、
図23(A)はレンズ111への汚水96の付着状態を示す図、
図23(B)は映像への汚水96の映り込みを示す図である。また、
図23(C),(D)は、
図23(A),(B)に示した車載カメラ110をそのまま後日の雨天時悪路走行中に使用した際の車載カメラ110のレンズ111の汚水97及び映像を示す図であり、
図23(C)は後日のレンズ111への汚水97の付着状態を示す図、
図23(D)は後日の映像への汚水97の映り込みを示す図である。
比較例1のレンズ111は、レンズ表面に、ARコートと、ARコートの表面に重ねられた撥水コートとが形成されている。
【0066】
図23(A)に示すように、レンズ111の表面(撥水コートの表面)には、複数の汚水96が点在して付着している。
図23(B)に示すように、映像にはレンズ111の表面の複数の汚水96に対応して、複数の汚水映り込み部115が映っている。
図23(C)に示すように、レンズ111の表面(撥水コートの表面)には、複数の汚水97が点在して付着し、更に、レンズ111に全体的に白濁膜状の汚れ98が付着している。
図23(D)に示すように、映像にはレンズ111の表面の複数の汚水97に対応して、複数の汚水映り込み部116が映っている。
以上の
図23(A)〜(D)において、レンズ111のARコート及び撥水コートでは、汚水96,97を球状にするが、水量が少ないと、レンズ111の表面を転がり落ちにくい。後日には白濁膜状の汚れ98の皮膜が蓄積されて、撥水効果や映像の品質が劣化している。
【0067】
図24は、比較例2のレンズ121を備える車載カメラ120におけるレンズ121の汚れ及び映像を示す作用図である。
図24(A),(B)は雨天時悪路走行中の車載カメラ120のレンズ121の汚水(汚れ)105及び映像を示す図であり、
図24(A)はレンズ121への汚水105の付着状態を示す図、
図24(B)は映像への汚水105の映り込みを示す図である。また、
図24(C),(D)は、
図24(A),(B)に示した車載カメラ120をそのまま後日の雨天時悪路走行中に使用した際の車載カメラ120のレンズ121の汚水106及び映像を示す図であり、
図24(C)は後日のレンズ121への汚水106の付着状態を示す図、
図24(D)は後日の映像への汚水106の映り込みを示す図である。
比較例2のレンズ121は、レンズ表面に、ARコートと、ARコート上に重ねられた親水コートとが形成されている。
【0068】
図24(A)に示すように、最初は、レンズ121の表面(親水コートの表面)全体に薄く汚水105が付着するが、すぐに、汚水105は、自重でレンズ表面下部に集まる。
図24(B)に示すように、映像には、その下部に、レンズ121の表面の汚水105に対応して、汚水映り込み部117が映っている。
図24(C)に示すように、レンズ121の表面(親水コートの表面)には、複数の汚水106が点在して付着し、更に、レンズ121に全体的に白濁膜状の汚れ107が付着している。
図24(D)に示すように、映像にはレンズ121の表面の複数の汚水106に対応して、複数の汚水映り込み部118が映っている。
以上の
図24(A)〜(D)において、レンズ111の親水コートでは、汚水105を水膜として映像に影響が小さい状態とするが、レンズ表面下部に液溜りを作り、映像品質が劣化する。後日には、汚水106に加え、白濁膜状の汚れ107の皮膜が蓄積されて、親水作用による水膜形成及び映像の品質が劣化する。
【0069】
図25は、実施例1のレンズ11を備える車載カメラ50におけるレンズ11の汚れ及び映像を示す作用図である。
図25(A),(B)は雨天時悪路走行中の車載カメラ50のレンズ11の汚水(汚れ)91及び映像を示す図であり、
図25(A)はレンズ11への汚水91の付着状態を示す図、
図25(B)は映像への汚水91の映り込みを示す図である。また、
図25(C),(D)は、
図25(A),(B)に示した車載カメラ50をそのまま後日の雨天時悪路走行中に使用した際の車載カメラ50のレンズ11の汚水106及び映像を示す図であり、
図25(C)は後日のレンズ11への汚水91の付着状態を示す図、
図25(D)は後日の映像への汚水91の映り込みを示す図である。
実施例1のレンズ11は、レンズ11の表面に、ARコート及びセルフクリーニングコート20(親水コート21、光触媒コート22及び撥水コート23)が形成されている。
【0070】
図25(A)に示すように、初めは、レンズ11の表面に汚水91が薄く付着するが、すぐにレンズ11の表面の下部に移動し、レンズ11の表面から落下する。
図25(B)に示すように、映像には、撥水コート23上に汚水91の映り込み部92が映っている。しかし、他の車両82,83の映像が映っている範囲外のため、画像認識への影響は少ない。
図25(A),(B)に示すように、実施例1のセルフクリーニングコート20では、汚水91を水膜とし、液溜りを水滴除去アーム29により除去してレンズ11の表面から排除する。汚水91は、わずかに撥水コート23上に付着して残るが、映像にはへの影響は抑えられる。
図25(C),(D)に示すように、後日にも、
図25(A),(B)に示した状態に対して変化は少ない。光触媒コート22によって汚水91の蓄積は少なく、親水作用の効果が持続的に発揮され、映像の劣化も抑えられている。
【0071】
図26は、車両搭載時の
図27〜
図29に示す車載カメラ50,110,120のレンズ11,111,121の向きを示す側面図であり、
図27〜
図29に示す車載カメラ50,110,120を示す図である。
車載カメラ50,110,120のレンズは、下向きに指向している。
図27は、比較例3のレンズ111を備える車載カメラ110におけるレンズ111の汚れ及び映像を示す作用図である。
図27(A)はレンズ111への汚水108の付着状態を示す図、
図27(B)は映像への汚水108の映り込みを示す図である。
図27(A)に示すように、比較例3では、比較例1と同一のレンズ111を使用している。レンズ111の表面では、撥水コートによって、汚水108が複数の球に形成され、落下しにくくなっている。
図27(B)に示すように、映像にはレンズ111の表面の複数の汚水108に対応して、複数の汚水映り込み部119が映っている。
【0072】
図28は、比較例4のレンズ121を備える車載カメラ120におけるレンズ121の汚れ及び映像を示す作用図である。
図28(A)はレンズ121への汚水109の付着状態を示す図、
図28(B)は映像への汚水109の映り込みを示す図である。
比較例4では、比較例2と同じように、レンズ121は、レンズ表面に、ARコートと、ARコート上に重ねられた親水コートとが形成されている。
図28(A)に示すように、レンズ121の表面では、汚水109は、最初は、親水コートによって水膜を形成し、すぐに自重によってレンズ121の中心部で大きな液溜りになるが、汚水109とレンズ121の表面との接触面積が大きいため、落下しにくく、汚水109はレンズ121の表面にとどまる。
図28(B)に示すように、レンズ121の中央部の汚水109の大きな液溜りに対応して、映像には、汚水映り込み部123が映っている。従って、映像は著しく劣化する。
【0073】
図29は、実施例2のレンズ11を備える車載カメラ50におけるレンズ11の汚れ及び映像を示す作用図である。
図29(A)はレンズ11への汚水91の付着状態を示す図、
図29(B)は映像への汚水91の映り込みを示す図である。
実施例2では、実施例1と同じように、レンズ11は、表面にARコート及びセルフクリーニングコート20が形成されている。
図29(A)に示すように、初めは、レンズ11の表面に汚水99が水膜を形成するが、すぐに自重及び撥水コートによってレンズ11の表面の中心部に移動し、早期にレンズ11の表面から落下する。
このとき、
図29(B)に示すように、映像では、撥水コート23付近やレンズ11の表面中心部に小粒の汚水99に対応した汚水映り込み部100a,100bが残るが、汚水映り込み部100a,100bは、映像の左右側部以外に位置するため、画像認識への影響は少ない。
図29(A),(B)に示すように、実施例2のセルフクリーニングコート20では、汚水99を水膜とし、すぐに自重及び撥水コートによって汚水99の大部分をレンズ11の表面から排除するため、映像への影響は抑えられる。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態の車載カメラ50のレンズセルフクリーニング機能は、レンズ表面に、親水コート21、光触媒コート22及び撥水コート23の3種を共存させる。そして、共存させながら3種の親水コート21、光触媒コート22及び撥水コート23を独自配列(パターン)に形成させることで、水滴残り防止、汚れ分解、レンズ表面の異物除去の性能が得ることが可能になる。独自配列の形成は、既存製造手段である真空蒸着で行い、マスク治具によるマスク形状でコート形成位置をコントロールする。
独自配列(パターン)された親水コート21、光触媒コート22及び撥水コート23は、凹凸形状を形成し、親水材料以外にも形状にて親水性能を高める(毛細管現象)仕組みを有する。このような凹凸形状の凹部21bに光触媒コート22を施すことで、異物は分解され、凹凸形状の課題を解決している。付着物を分解して付着力低下させながら、親水作用により得られた水量を撥水コート23で抑制して、水流を生み出し、異物を最適に洗い流すことが可能になる。
【0075】
本実施形態では、晴れ(日中)の時には、紫外線が多く注ぎ、光触媒作用でレンズ表面の異物を浮かし続け、雨天時に雨水の親水作用で異物を洗い流す自然環境のみの力を最大限に且つ効率的に利用したセルフクリーニングをセルフクリーニングコート20によって行うことができる。
レンズ表面のバレル面11cには水滴除去アーム29が設置され、レンズ表面で液溜りができないように、レンズ表面外へ液体を排除させる構造をも有している。
車載カメラ50などは、サイドミラーに取り付ける場合、大抵レンズは真下に向いている。親水作用で得た水膜は、自重により、レンズ表面中心部に大量の水(大きい水滴)が集まって残留する傾向であり、カメラ映像にも水滴部分は影響し、水膜が厚くなるめに、ピンボケとなって映像が劣化するが、改善方法として親水作用のみでは対処が難しい。しかし、本実施形態では、撥水コート23による水膜の流れを制御してレンズが真下に向けた状態であっても、水滴を流れ落とすことが可能である。
【0076】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
本発明は、車載カメラに適用する場合に限らず、屋外に設置するカメラにも適用可能である。