【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車やハイブリッド自動車において使用される電線やコネクタには、道路上という使用環境の特質により、確実に電線を接続させる強度、電線内や接続機器内への水の浸入を阻止する防水性、繰り返しの振動に耐え得る耐振性などが求められているが、従来の大電流対応のシールド付き電線用コネクタにおいては、低コストかつシンプルな構造で全ての性能を満足させることは難しい。
【0005】
特に、前記のように電気自動車やハイブリッド自動車においては、ノイズ対策としてシールド付きの電線を用いることが多いが、シールドと接地回路との電気的接続を確実に行うのは難しく、その為の作業も手間のかかるものである。接続を確実にするには、シールド付き電線用のコネクタの構造を複雑化せざるを得ず、これによりコストアップの要因ともなっている。
【0006】
この発明の目的は、車載における電線接続強度、防水性を確保し、振動がかかっても電線のシールドと接地回路との接続を確実に行うことが可能となり、シンプルな構造でかつ低コストで製作可能なシールド付き電線用コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のシールド付き電線用コネクタは、芯線、絶縁被覆、シールド、および外皮が同心に積層されたシールド付き電線を接続するコネクタであって、
前記シールド付き電線の端部における前記外皮が剥ぎ取られた箇所の前記シールドを折り返して前記外皮の外周に重ねてなるシールド折り返し部分の外周に被さる導電性スリーブと、
内周面が、前側および後ろ側の径変化面を介して順次大径となる前側孔部、中間孔部、および後側孔部からなる円筒面状とされ、前記前側孔部に前記シールド付き電線の前記端部における前記被覆が露出した部分を、前記中間孔部に前記導電性スリーブをそれぞれ挿入状態とする導電性のコネクタ本体と、
前記導電性スリーブに突き当て状態で前記後側孔部内で前記シールド付き電線の外周に嵌まり内周面から前記後側面に渡る内側環状凹部を有するリング状の防水材ホルダと、
この防水材ホルダの前記内側環状凹部に少なくとも一部が嵌まり前記シールド付き電線の外周面に密接するリング状の電線防水用パッキングと、
前記防水材ホルダと前記コネクタ本体の前記後ろ側の径変化面との間に介在する内部防水用パッキングと、
前記コネクタ本体の後端部に取付けられ前記電線防水用パッキングを押し付けると共に前記防水材ホルダに突き当てられてこの防水材ホルダにより前記導電性スリーブを前記コネクタ本体の前記前側の径変化面に押し付け状態とする締め付けホルダ、
とを備える。
前記径変化面は、例えば軸方向に垂直な段差面とされる。
【0008】
この構成によると、シールド付き電線のシールド折り返し部分に被さってシールドと導通状態となった導電性スリーブが、締め付けホルダの締め付けにより防水材ホルダで押し付けられる。これにより導電性スリーブがコネクタ本体の径変化面に押し付けられ、その押し付け箇所で、シールド付き電線のシールドとコネクタ本体との接地回路の接続が行われる。このように軸方向に押し付け状態で接触させるため、車載における電線接続強度が確保され、振動がかかっても電線のシールドと接地回路との接続を確実に維持することが可能となる。
また、防水材ホルダと締め付けホルダの間に電線防水用パッキングを挟み、コネクタ本体と防水材ホルダの間に内部防水用パッキングを挟み込んだ状態で締め付けホルダを取付けることにより、シールド付き電線とコネクタ本体との間の防水性が得られる。この場合に、電線防水用パッキングは、防水材ホルダの内周面から後側面に渡って形成された内側環状凹部に一部が入った状態で締め付けホルダに押されるため、シールド付き電線の外皮に食い込むように変形し、接触面の押し付け圧が強くて、優れた防水性が得られる。
さらに、上記のようにシールドと接地回路との接続が確実になされ、また確実な防水性が得られるため、この他に接続やシールの確実化のための煩雑な構成が不要であり、シンプルな構造となって低コストで製作可能である。
【0009】
この発明において、前記導電性スリーブは、全周が縮径状態に圧縮変形して前記シールド折り返し部分の外周に接触するようにしてもよい。
全周が縮径状態に圧縮変形して接触することにより、シールドと導電性スリーブとの電気的な接続が確実に保たれる。
【0010】
前記導電性スリーブは、円周方向の複数箇所に、前記導電性スリーブの外周側の面が陥没面となり内周側の面が突出面となって前記シールド折り返し部分に食い込むスポット状の陥没部を有していてもよい。
導電性スリーブの円周方向の複数箇所に陥没部を設けてシールド折り返し部分に食い込ませた場合、導電性スリーブのシールド付き電線に対する固定強度が向上する。
この場合に、導電性スリーブを縮径させた上で、さらに円周方向の複数箇所の陥没部でシールド折り返し部分に食い込ませることが好ましい。例えば、前記導電性スリーブは、その外周面の全周から面的にプレスして全面的に縮径させ、内周面をシールド折り返し部分に押圧状態に接触させた後に、前記陥没部をスポット的なかしめにより形成する。
このように、導電性スリーブを縮径させた上で、さらに円周方向の複数箇所の陥没部でシールド折り返し部分に食い込ませた場合、導電性スリーブのシールド付き電線に対する固定強度が向上し、シールドと導電性スリーブとの電気的な接続がより一層確実に保たれる。
【0011】
この発明において、前記コネクタ本体の前記前側の径変化面と前記導電性スリーブとの間に、導電性のシールド接続用ばねが介在していてもよい。
シールド接続用ばねを介在させて締め込むことにより、締め付けホルダの締め込みでのがたつきや、経年劣化での緩みが多少あった場合でも、電気的な接続が確保できる。
前記シールド接続用ばねは、導電性とばね性を持つ部材であればよく、例えば波座金や菊座金、スフリングワッシャ等を用いることができる。
【0012】
この発明において、前記防水材ホルダの前記内側環状凹部の内周面は、底側が縮径するテーパ状面であってもよい。
防水材ホルダの内側環状凹部の内周面が、底側が縮径するテーパ状面であると、電線防水用パッキングがコネクタ本体で軸方向に押されることで、縮径状態に弾性変形し、シールド付き電線の外周に強く接触する。そのため、防水性がより一層向上する。
【0013】
この発明において、前記締め付けホルダは、外周に設けられた雄ねじ部が、前記コネクタ本体の内周に設けられた雌ねじ部に螺合する構成であってもよい。
コネクタ本体の内周の雌ねじ部に締め付けホルダの外周の雄ねじ部が螺合する構成であると、簡素な構成で導電性スリーブおよび各パッキングの強い押し付け力が得られ、また押し付け力を得るための作業も回転により締め付けるだけでよくて、簡単である。