特許第6879839号(P6879839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6879839ライセンスプレート用グラフィックフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879839
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】ライセンスプレート用グラフィックフィルム
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/10 20060101AFI20210524BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20210524BHJP
   G09F 7/16 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
   B60R13/10
   !B32B27/00 B
   !B32B27/00 E
   !G09F7/16 F
   !G09F7/16 N
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-125271(P2017-125271)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-6313(P2019-6313A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】村本 章
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−515707(JP,A)
【文献】 特開2016−210286(JP,A)
【文献】 特表2012−512428(JP,A)
【文献】 特表2015−530299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0177963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/10
B32B 27/00
G09F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、及び該基材上又は上方に配置された一以上のセキュリティマークを有するマーキング層を含むライセンスプレート用グラフィックフィルムであって、
前記セキュリティマークは、波長600nm〜1000nmの間の光透過率が80%以上のイエローインクからなる、ライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【請求項2】
前記セキュリティマークの単位パターン領域の光学濃度が0.15〜1.20である、請求項1に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【請求項3】
前記セキュリティマークの単位パターン領域の網点面積率が12%〜80%である、請求項1又は2に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【請求項4】
識別表示が適用される識別表示領域の少なくとも1つの領域内に、少なくとも1つの前記セキュリティマークが配置される、請求項1〜3の何れか一項に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【請求項5】
装飾層をさらに有する、請求項1〜4の何れか一項に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【請求項6】
前記マーキング層と前記装飾層が同一面上に配置される、請求項5に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【請求項7】
ライセンスプレートの長辺方向に沿って、前記識別表示領域を横断して、複数のセキュリティマークが一列以上配置される、請求項1〜6の何れか一項に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【請求項8】
非再帰反射性である、請求項1〜7の何れか一項に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【請求項9】
前記マーキング層は、インクジェット印刷層である、請求項1〜8の何れか一項に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セキュリティマークを有するライセンスプレート用グラフィックフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
通行する車両のライセンスプレート(ナンバープレートともいう。本開示において以下同じ。)を無人で読み取るために、路上又はその近辺に設置されるALPR(自動ライセンスプレート読取機、Automated License Plate Reader)システムなどが従来広く用いられている。ALPRシステムは、典型的にはカメラシステムによって車両を検知及び認識する。ALPRシステムの使用例は、道路交通法の施行、犯罪に関係する車両の捜査、及び施設のアクセス制御である。ALPRシステムでは、典型的には、ライセンスプレートの読み取りのために赤外線カメラが使用されるので、ライセンスプレートに赤外線が照射される。
【0003】
米国では、図柄などの印刷画像を有する反射式ライセンスプレートが普及している。一方、日本でも、原動機付自転車用ナンバープレートとして、図柄入り非反射式又は反射式ナンバープレートが使われている。また、国土交通省は、図柄入りナンバープレートを自動車などの一般車両についても導入する計画をしていることが報道されている。
【0004】
特許文献1(特開2014−024537号公報)には、基材と、セシウムタングステン酸化物を含む無色又は有色の赤外線吸収性マーキング層とを有する、ナンバープレート用シートが記載されている。また、幾つかの態様において、このマーキング層は、セキュリティマークであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−024537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、赤外線吸収性マーキング層を有するライセンスプレートでは、このマーキング層がALPRシステムの赤外線カメラで視認され、ALPRの読取り性に影響するため、識別表示等を正しく認識できない場合がある。
【0007】
無色のマーキング層を有するライセンスプレートの場合、マーキング層を肉眼で視認することができず偽造されやすいため、盗難のおそれがある。一方、有色のマーキング層を有するライセンスプレートの場合、ALPRの読取り性や可視光の監視カメラ等の識別表示の視認性を阻害するおそれがあり、ライセンスプレートの見栄えも悪化させる場合がある。
【0008】
本開示は、自動ライセンスプレート読取機(ALPR)による識別表示の読取り性、可視光の監視カメラ等による識別表示の視認性、及びライセンスプレートの見栄えへの悪影響が少ない、偽造防止性を有する、ライセンスプレート用グラフィックフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施態様によれば、基材、及び該基材上又は上方に配置された一以上のセキュリティマークを有するマーキング層を含むライセンスプレート用グラフィックフィルムであって、セキュリティマークは、波長約600nm〜約1000nmの間の光透過率が約80%以上のイエローインクからなる、ライセンスプレート用グラフィックフィルムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、セキュリティマークが、波長約600nm〜約1000nmの間の光透過率が約80%以上のイエローインクで形成されることによって、識別表示のALPRによる読取り性、可視光の監視カメラ等による識別表示の視認性、及びライセンスプレートの見栄えへの悪影響が少なく、偽造防止性を有するライセンスプレート用グラフィックフィルムを提供することができる。
【0011】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施態様のライセンスプレート用グラフィックフィルムの概略上面図である。
図2図1のグラフィックフィルムの概略断面図である。
図3】本開示の別の実施態様のライセンスプレート用グラフィックフィルムの概略断面図である。
図4】本開示の一実施態様のライセンスプレートの概略断面図である。
図5】本開示の別の実施態様のライセンスプレートの概略断面図である。
図6】本開示の別の実施態様のライセンスプレートの概略断面図である。
図7】株式会社ミマキエンジニアリング製JV5溶剤インクジェットプリンタ用純正イエローインクによる印刷層(網点面積率100%)の透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、基材、及び該基材上又は上方に配置された一以上のセキュリティマークを有するマーキング層を含み、このセキュリティマークが、波長約600nm〜約1000nmの間の光透過率が約80%以上のイエローインクで形成されている。セキュリティマークを係るインクで形成することによって、識別表示のALPRによる読取り性、可視光の監視カメラ等による識別表示の視認性、及びライセンスプレートの見栄えへの悪影響が少なく、偽造防止性を有するライセンスプレート用グラフィックフィルムを提供することができる。
【0014】
第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、セキュリティマークの単位パターン領域の光学濃度を約0.15〜約1.20にすることができ、又は、セキュリティマークの単位パターン領域の網点面積率を約12%〜約80%にすることができる。このような光学濃度又は網点面積率を有するセキュリティマークを含むグラフィックフィルムを適用したライセンスプレートは、例えば、肉眼(視力1.0)で、約3m離れた地点では視認できるが、約10m離れた地点からでは視認できないという性能を発揮することができる。すなわち、ライセンスプレートのグラフィックが施された場合、このグラフィック画像の画質や見栄えを実質的に阻害しない。
【0015】
第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、識別表示が適用される識別表示領域の少なくとも1つの領域内に、少なくとも1つのセキュリティマークを配置することができる。このような構成にすることによって、識別表示の偽造をより防止することができる。
【0016】
第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、装飾層をさらに有することができる。このような構成にすることによって、図柄等の装飾模様を有するライセンスプレートを得ることができる。
【0017】
第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、マーキング層と装飾層を同一面上に配置することができる。マーキング層と装飾層を、例えば、基材の同一面上にインクジェット印刷により同時に形成することができるため、生産性を向上させることができる。
【0018】
第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、ライセンスプレートの長辺方向に沿って、識別表示領域を横断して、複数のセキュリティマークを一列以上配置することができる。このような構成にすることによって、識別表示の偽造をより防止することができる。
【0019】
第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、非再帰反射性であってもよい。従来の偽造防止技術では、非再帰反射性のグラフィックフィルム又はライセンスプレートに採用することは困難であったが、本開示の構成であれば、非再帰反射性であっても偽造防止性を発現させることができる。
【0020】
第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、マーキング層がインクジェット印刷層であってもよい。インクジェット印刷によるマーキング層は、セキュリティマークの、形状、光学濃度、網点面積率等を調整し易いため、生産性を大幅に向上することができる。
【0021】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。図面の参照番号について、異なる図面において類似する番号が付された要素は、類似又は対応する要素であることを示す。
【0022】
本開示における用語の定義は以下のとおりである。
【0023】
「フィルム」には「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0024】
「透明」とは、対象とする特定の波長又は波長域の光の平均透過率が、約60%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上であることを意味する。
【0025】
「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0026】
「再帰反射性」とは、ある材料に入射する光源からの光が反射して該光源の方向に反射する現象又は材料の特性を意味し、「非再帰反射性」とは、再帰反射性を持たない材料の特性を意味する。
【0027】
「イエローインク」とは、図7に例示するように、400nm〜500nmの領域の、吸収域を有するとともに、600nm〜1000nmの間で80%以上の光透過率を有するインクをいうものとする。なお、「イエローインクからなる」セキュリティマークとは、イエローインクのみからなるセキュリティマーク以外に、ほぼイエローインク単色で形成されているセキュリティマークも意味する。セキュリティマークの近距離(例えば約3m)での視認性及び遠距離(例えば約10m)での非視認性にほとんど影響を与えない範囲で、セキュリティマークにおいて網点面積率数%程度以下でシアンインクやマゼンタインク等がある場合や、イエローインク中に他の色のインクや不純物等が混在する場合も含まれるものとする。
【0028】
本開示の一実施態様のライセンスプレート用グラフィックフィルムは、少なくとも、基材、及び該基材上又は上方に配置された一以上のセキュリティマークを有するマーキング層を含む。
【0029】
本開示の一実施態様のライセンスプレート用グラフィックフィルムの概略上面図を図1に、概略断面図を図2に示す。グラフィックフィルム10は、基材12上に配置された装飾層14及びマーキング層15を有する。図1には、点線で囲まれた矩形の識別表示領域24、及び点線で輪郭を縁取られた識別表示26が点線で示されている。識別表示領域24には、目視で確認できるような識別表示のための枠線、着色などは一般に施されていない。識別表示26はグラフィックフィルム10には未だ付与されておらず、一般にライセンスプレートの製造時に付与される。
【0030】
識別表示は、ライセンスプレート上に車両識別の目的で表示される文字のセットである。識別表示を構成する文字のセットは、ライセンスプレートの管轄地域により様々である。例えば日本国においては、識別表示は、地名、分類番号、平仮名、及び4桁の数字の組合せである。
【0031】
識別表示領域は、ALPRによる識別表示の識別に必要な領域であり、ALPRの車両及びライセンスプレート検知システム、赤外線カメラの撮影条件及び分解能、ライセンスプレート認識アルゴリズム、OCRソフトウェアなどによって、その領域の大きさ及び形状は変化しうる。
【0032】
一実施態様では、識別表示領域は、ライセンスプレートの管轄地域における法規制に従って規定される識別表示の配置領域である。別のいくつかの実施態様では、識別表示領域は、識別表示の配置領域の外縁から外側に、例えば約0.1mm以上、約0.5mm以上、又は約1mm以上、約5mm以下、約3mm以下、又は約2mm以下の距離で位置する輪郭線によって囲まれる領域として定義される。例えば日本国においては、道路運送車両法施行規則の第1号様式にライセンスプレートの識別表示の配置領域が規定されており、地名及び平仮名は縦40mm×横40mmの正方形領域に、4桁の数字は縦80mm×横40mm又は縦120mm×横60mmの矩形領域に、それぞれ1文字ずつ配置される。上記様式では数字の輪郭の一部が識別表示の配置領域の外縁に接することから、識別表示領域は、識別表示の配置領域の外縁から外側に、例えば約0.1mm以上、又は約0.5mm以上、約3mm以下、又は約2mm以下の距離で位置する輪郭線によって囲まれる領域として定義することができる。識別表示の配置領域が文字に対して十分大きい場合、文字の全体が識別表示領域に包含されていることを条件として、識別表示領域を、識別表示の配置領域の外縁から内側に、例えば約0.1mm以上、約0.5mm以上、又は約1mm以上、約5mm以下、約3mm以下、又は約2mm以下の距離で位置する輪郭線によって囲まれる領域として定義することもできる。このように識別表示の配置領域を基準として識別表示領域を定義することにより、一種類のグラフィックフィルムを、同じライセンスプレートの管轄地域において異なる識別表示を有するライセンスプレートに適用することができる。
【0033】
別のいくつかの実施態様では、識別表示領域を、識別表示の文字の輪郭から外側に、例えば約0.1mm以上、約0.5mm以上、又は約1mm以上、約5mm以下、約3mm以下、又は約2mm以下の距離で位置する輪郭線によって囲まれる領域として定義される。
【0034】
さらに別のいくつかの実施態様では、識別表示領域を、ある文字に対しては上記のように識別表示の配置領域とする、又は識別表示の配置領域を基準とした輪郭線によって定義し、一方で別の文字に対しては上記のように文字の輪郭から外側に位置する輪郭線によって囲まれる領域として定義してもよい。
【0035】
グラフィックフィルムの基材として、例えば、ライセンスプレート用途に適した物性を有する、従来公知の種々のポリマーシートを用いることができる。ポリマーとして、ポリウレタン、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル−アミド、又はそれらの組合せなどを挙げることができる。基材は複数の材料の積層体であってもよい。
【0036】
いくつかの実施態様において、基材は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、又はそれらの組合せを含む。これらのポリマーは画像受容性に優れており、基材上に高品質の印刷画像を形成することができる。
【0037】
いくつかの実施態様において、基材は、ライセンスプレートの製造に際し、クラック又は浮き上がりが生じ難い材質であること、すなわち、エンボス部又はデボス部の変形形状への追従性に十分な可とう性及び延伸性を有することが好ましい。この観点から好ましいポリマーとして、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィンなどを挙げることができる。
【0038】
基材は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料を含んでもよく、これらの白色顔料を含むコーティングを有してもよい。白色顔料を含む基材、又は白色顔料を含むコーティングを有する基材を用いることにより、ベースプレートの地色を隠蔽してより鮮明な印刷画像を提供することができるとともに、イエローインクを含むセキュリティマークの近距離(例えば約3m)での視認性及び遠距離(例えば約10m)での非視認性といった作用効果を発現させやすくなる。白色の基材としては、自動車番号標用標準限界色票(一般財団法人日本色彩研究所等製作)やISO7591:1982に規定される色の範囲の基材が使用できる。
【0039】
基材は必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑材、帯電防止剤、難燃剤、充填剤などの従来公知の添加剤を含んでもよい。
【0040】
いくつかの実施態様において、基材は非再帰反射性であってもよく、係る基材を備えるグラフィックフィルム及びライセンスプレートは非再帰反射性を呈することができる。非再帰反射性基材は、ペイント式ライセンスプレートの読取り用に調整されたALPRによる識別表示の良好な識別性という観点から有利である。
【0041】
非再帰反射性基材として、一又は複数の上記ポリマーを用いて形成されたシート、一又は複数の上記ポリマーとフッ素樹脂を組み合わせて含むシートなどが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施態様において、基材は再帰反射性であってもよく、係る基材を備えるグラフィックフィルム及びライセンスプレートは再帰反射性を呈することができる。再帰反射性基材は、夜間の少ない光の下又は離れた距離などでのライセンスプレートの視認性が良好である点で有利である。再帰反射性基材としては、従来公知の種々の再帰反射性シートを使用できる。例えば、光透過性のビーズ又はキューブコーナーなどの再帰反射性要素、及び必要に応じて反射層を有するシートなどが例示される。再帰反射性シートとして、例えば、特許第2642099号公報、特許第2788030号公報、特許第2960478号公報、特許第3038218号公報、特許第3594969号公報、特表2000−506623号公報及び特表2000−508434号公報に記載されたようなシートを使用することができる。
【0043】
基材の再帰反射性について、観測角0.2度、入射角5度における再帰反射係数(JIS Z 9117に準拠する)は少なくとも約1cd/lx/mである。ある好適な実施態様では、再帰性反射シートの再帰反射係数は約45cd/lx/m以上、又は約50cd/lx/m以上である。例えば、ISO7591:1982に規定される白については、約45cd/lx/m以上、黄については約30cd/lx/m以上であることが望ましい。JIS Z 9117の封入レンズ型タイプ1−B−bである場合、白については約35cd/lx/m以上、黄については約25cd/lx/m以上、赤については約10cd/lx/m以上、黄赤については約13cd/lx/m以上、緑については約5cd/lx/m以上、青については約3cd/lx/m以上であることが望ましい。
【0044】
ライセンスプレートが非再帰反射性であるか、再帰反射性であるかによって、通常はALPRの読取りの設定又はグラフィックフィルムの設計を変更する必要がある。しかしながら、本開示のグラフィックフィルムは、非再帰反射性基材及び再帰反射性基材のいずれを用いた場合であっても、ALPRシステムに対する良好な識別性をライセンスプレートに付与することができる。
【0045】
基材の厚さは、ライセンスプレートの耐久性の観点から、約15μm以上、約30μm以上、又は約45μm以上であることが好ましく、ライセンスプレートにエンボス部又はデボス部を形成する場合、変形形状への追従性の観点から、約300μm以下、約250μm以下、又は約220μm以下であることが好ましい。
【0046】
基材の破断強度は、良好な耐久性の観点から、好ましくは約5N/25mm以上、約10N/25mm以上、又は約20N/25mm以上であり、製造容易性の観点から、好ましくは約200N/25mm以下、約175N/25mm以下、又は約150N/25mm以下である。本開示において、破断強度はJIS Z 0237に準拠して測定される値である。
【0047】
基材の伸びは、エンボス加工又はデボス加工時のクラックの発生の防止、及びベースプレートからの浮き上がり防止の観点から、好ましくは、約30%以上、又は約35%以上であり、良好な機械強度の観点から、好ましくは約400%以下、又は約350%以下である。本開示において、伸びはASTM試験法D882−80aに準拠して測定される値である。
【0048】
基材として種々の市販品を使用することができる。例えば、基材として印刷画像の形成に適したグラフィックフィルムなどを有利に使用することができる。市販のグラフィックフィルムの例として、3M(登録商標)コントロールタック(登録商標)グラフィックフィルムIJ180−10(3M社)、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムIJ5331及びRG5333R(3M社)などが挙げられる。
【0049】
市販の再帰反射性フィルムの例として、例えば3M(登録商標)反射シートBR190500、3M(登録商標)Preclear Reflective License Plate Sheeting 4750及び4770、3M(登録商標)High Definition License Plate Sheeting Series 6700(3M社)などが挙げられる。
【0050】
グラフィックフィルムのマーキング層はセキュリティマークを有し、係るセキュリティマークは、波長約600nm〜約1000nmの間の光透過率が約80%以上のイエローインクによって形成される。セキュリティマークが係るイエローインクを所定量含むマーク形成用インクで形成されることによって、ライセンスプレートの識別表示のALPRによる読取り性、可視光の監視カメラ等による識別表示の視認性、及びライセンスプレート、特に、以下で説明する、図柄等を含む装飾層の見栄えへの悪影響が少なく、偽造防止性を発現することができる。このような性能を阻害しない範囲で、セキュリティマークを形成するインクには、イエローインク以外に、他のインクを混合することもできる。例えば、セキュリティマークの近距離(例えば約3m)での視認性及び遠距離(例えば約10m)での非視認性といった作用効果を発揮する範囲において、網点面積率数%程度のシアンインクやマゼンタインクを混ぜてもよい。セキュリティマークの近距離(例えば約3m)での視認性及び遠距離(例えば約10m)での非視認性をより向上させる観点から、セキュリティマークはイエローインクのみから形成されていることが好ましい。セキュリティマークはイエローインクの単一色で形成されることが望ましいが、わずかにマゼンタインクや他の色のインクが混在していてもよい。マーク形成用インクは一般に、対応する色の顔料又は染料と、バインダー又はビヒクルとを含み、必要に応じてさらに水、有機溶剤、分散剤、硬化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、フロー向上剤、レベリング剤、帯電防止剤、難燃剤などを含んでもよい。
【0051】
セキュリティマークを有するマーキング層は、上述したマーク形成用インクを用い、基材又は下記に示す保護層に、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、静電印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などの印刷技術を用いて印刷することにより形成することができる。様々なセキュリティマークに対応するマーク画像データに基づいて小さいロット単位でもセキュリティマークを基材又は保護層に簡便に印刷できることから、インクジェット印刷を用いることが有利である。インクジェット印刷に使用されるプリンタとして、溶剤インクジェットプリンタ、UVインクジェットプリンタなどが挙げられる。
【0052】
インクジェット印刷用のインクとしては、例えば、株式会社ミマキエンジニアリング製JV5溶剤インクジェットプリンタ用純正インク、株式会社セイコーアイ・インフォテック社製ColorPainter H2−104S溶剤インクジェットプリンタ用純正インク、株式会社ミマキエンジニアリング製UJV500−160UVインクジェットプリンタ用純正インクなどを使用することができる。一例として、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムRG5333Rに、株式会社ミマキエンジニアリング製JV5溶剤インクジェットプリンタ及びこのプリンタ用の純正イエローインクを使って、イエロー(Y)の網点面積率100%の領域を印刷し、株式会社島津製作所製SolidSpec−3700分光光度計を用いて測定したインクの透過スペクトルを図7に示す。
【0053】
セキュリティマークは、偽造防止効果を発揮し得るマークであれば如何なるものであってもよく、次のものに限定されないが、例えば、数字、図形、図柄、ロゴ、バーコード、2次元コード(例えばQRコード(登録商標))、国旗、国章、都道府県旗、都道府県章、市町村旗、市町村章などの1種以上を使用することができる。例えば、ライセンスプレートにおけるナンバー等の情報を提供し得るQRコード(登録商標)のみを採用してもよく、又はQRコード(登録商標)と図柄等のマークを併用してもよい。以下で説明する装飾層も図柄等を含み得るが、遠距離、例えば約10m離れた地点から肉眼(視力1.0)でマークを観察した場合、マーキング層の方は、マークの大きさ又は形状に関わらず、上記インクから形成されているため視認することはできないが、装飾層の方は、視認させることを目的とするため視認することができる。したがって、たとえ同一の図柄であっても、この観点からマーキング層と装飾層とを区別することができる。
【0054】
セキュリティマークのサイズは、肉眼での視認性、それに伴う偽造防止の要求性能等に応じ適宜設定することができ、次のものに限定されないが、近距離、例えば約3m離れた地点から肉眼(視力1.0)でマークを観察した場合にセキュリティマークを視認可能とするには、セキュリティマークのサイズとしては、係るマークの外周と接する最大の矩形領域の面積を、約9mm以上、約16mm以上、又は約25mm以上にすることができる。
【0055】
セキュリティマークは、セキュリティマークの単位パターン領域の光学濃度を、約0.15以上、約0.20以上、又は約0.25以上、約1.20以下、約1.10以下、又は約1.00以下にすることができる。ここで「セキュリティマークの単位パターン領域」とは、マークの外周と接する最大の矩形領域(以下、「最大矩形領域」という場合がある。)の面積を意味する。なお、ここで矩形領域の縦辺及び横辺は、ライセンスプレートの短辺及び長辺に平行な辺とする。組み合わさって一概念として成立するマークの場合、例えば、複数の花が組み合わさったリングのようなマークの場合には、個々の花を単位パターン領域として設定するのではなく、複数の花を備えるリング全体を単位パターン領域として設定し、例えば、「3M」というロゴマークの場合には、「3」又は「M」の個々の文字を単位パターン領域として設定するのではなく、「3M」を1単位として単位パターン領域を設定することができる。組み合わさって一概念を有しない、文字、記号、図形、図柄等のマークの単なるランダムな羅列の場合には、個々のマークを単位パターン領域として設定することができる。このような光学濃度を有するセキュリティマークは、例えば、肉眼(視力1.0)で、約3m離れた地点では視認できるが、約10m離れた地点からでは視認できないという性能を発揮することができる。光学濃度は、背景色を基準とした光学濃度であり、濃度計又は分光光度計などによって測定することができる。単位パターン領域が計測器の測定領域を超える大きさの場合には、単位パターン領域を測定領域の範囲内に適宜分割し、その平均値から光学濃度を算出することができる。
【0056】
あるいは、セキュリティマークを例えばインクジェット印刷により形成する場合、係るマークは所定サイズの網点(ドット)の集合体として形成することができる。このマークを構成する網点(ドット)の集合体は、下記で説明する網点面積率で数値化することができるため、矩形以外の形状のマークの場合には、係るマークの網点面積率に基づき、幅1cm×高さ1cmの矩形を作成し、その矩形の光学濃度を「セキュリティマークの単位パターン領域の光学濃度」とすることもできる。
【0057】
セキュリティマークは、セキュリティマークの単位パターン領域の網点面積率を、約12%以上、約15%以上、又は約20%以上、約80%以下、約75%以下、又は約70%以下にすることができる。ここで「セキュリティマークの単位パターン領域の網点面積率」とは、上記の最大矩形領域に含まれるマーク形成用インクの網点(ドット)の面積割合として定義することができる。このような網点面積率を有するセキュリティマークは、例えば、肉眼(視力1.0)で、約3m離れた地点では視認できるが、約10m離れた地点からでは視認できないという性能を発揮することができる。グラフィックフィルム上に印刷されたセキュリティマークにおけるインクの網点面積率は、最大矩形領域を光学顕微鏡で拡大(例えば100倍)した画像について、Adobe Illustrator(登録商標)又はAdobe Photoshop(登録商標)などの画像処理ソフトを使って、画像全体のピクセル数に対するインクのピクセル数の比率を計算し、別の領域又は部分に対して上記操作を繰り返すことにより決定することができる。また、Adobe Illustrator(登録商標)又はAdobe Photoshop(登録商標)などの画像処理ソフトにより、eps形式などの印刷データを開いて網点面積率を確認することができる。
【0058】
セキュリティマークの単位パターン領域が、係る光学濃度又は網点面積率の範囲内であったとしても、上述したマーク形成用インク以外のインク、例えば、グリーン又はブルーのインクからなるセキュリティマークでは、セキュリティマークの近距離(例えば約3m)での視認性及び遠距離(例えば約10m)での非視認性に悪影響を及ぼす。
【0059】
本開示のグラフィックフィルムは、識別表示が適用される識別表示領域の少なくとも1つの領域内に、少なくとも1つのセキュリティマークを配置することができる。盗難されたライセンスプレートは、識別表示領域内の識別表示を切り抜き、それを他の盗難プレートの識別表示領域内に貼り合わせて使用される場合があるため、少なくとも1つのセキュリティマークを係る構成で配置することにより、ライセンスプレートの偽造を容易に判別することができる。ここで「識別表示領域の少なくとも1つの領域内に配置する」とは、識別表示領域よりも内部にセキュリティマークが配置されることに限らず、例えば、図1の「1」の識別表示領域24のように、セキュリティマークを有するマーキング層15が識別表示領域24に接触している場合も包含する。盗難防止の観点から、2つ以上、3つ以上、又は全ての識別表示領域内に(但し、下記で説明する装飾層が識別表示領域全体を覆っている場合には、この覆われた識別表示領域を除く全ての識別表示領域内に)、少なくとも1つのセキュリティマークが配置されることが好ましい。
【0060】
本開示のグラフィックフィルムは、ライセンスプレートの長辺方向に沿って、識別表示領域を横断して、複数のセキュリティマークを一列以上配置することができる。係る構成は、盗難防止性をより向上させることができる。ここで「識別表示領域を横断して」とは、ライセンスプレートの長辺方向の少なくとも2つの識別表示領域を横断することを意図し、例えば、図1では、セキュリティマークの長辺方向の列が、識別表示領域24を横断して六列形成されている。盗難防止の観点から、全ての識別表示領域(但し、下記で説明する装飾層が識別表示領域全体を覆っている場合には、この覆われた識別表示領域を除く全ての識別表示領域)を横断するように、一列以上のセキュリティマークが形成されていることが好ましい。
【0061】
セキュリティマークを有するマーキング層の厚さは様々であってよく、一般に、溶剤系インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約2μm以上、約8μm以下、又は約5μm以下である。UV系インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
【0062】
グラフィックフィルムの装飾層は、ライセンスプレートに装飾性、意匠性、識別性などを付与する。例えば、装飾層は、ライセンスプレートの識別表示以外の背景部分に図柄、パターンなどを付与することができ、又は図1に示されるように、ライセンスプレートの識別表示と重なるように付与することができる。装飾層は、基材又は下記に示す保護層にインク、トナーなどの着色剤を、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、静電印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などの印刷技術を用いて印刷することにより形成することができる。様々な画像に対応する印刷画像データに基づいて小さいロット単位でも装飾層を基材又は保護層に簡便に印刷でき、屋外耐候性を有するフルカラー印刷画像が得られることから、インクジェット印刷又は熱転写印刷を用いることが有利である。インクジェット印刷に使用されるプリンタとして、溶剤インクジェットプリンタ、UVインクジェットプリンタなどが挙げられる。熱転写印刷に使用されるプリンタとして、熱溶融型熱転写プリンタ、昇華型熱転写プリンタなどが挙げられる。
【0063】
インクジェット印刷、熱転写印刷などの印刷インクは、一般にシアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク、及びブラック(K)インクの4色インクセットとして提供されてフルカラー印刷を可能にする。ハイライトの再現性を高めるために、これらの4色に、ライトシアンインク及びライトマゼンタインクを加えた6色インクセット、又はさらにグレーインク若しくはダークイエローインクを加えた7色インクセットが用いられる場合もある。これらのインクは従来公知であり、一般にそれぞれ対応する色の顔料又は染料と、バインダー又はビヒクルとを含み、必要に応じてさらに水、有機溶剤、分散剤、硬化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、フロー向上剤、レベリング剤、帯電防止剤、難燃剤などを含んでもよい。
【0064】
インクジェット印刷インクとして、例えば、株式会社ミマキエンジニアリング製JV5溶剤インクジェットプリンタ用純正インク、株式会社セイコーアイ・インフォテック社製ColorPainter H2−104S溶剤インクジェットプリンタ用純正インク、株式会社ミマキエンジニアリング製UJV500−160UVインクジェットプリンタ用純正インクなどを使用することができる。熱転写印刷インクとして、例えば、3M(登録商標)スコッチマスター(商標)エッジIIシステム(熱転写プリンタ)用インクセットなどを使用することができる。
【0065】
装飾層の厚さは様々であってよく、一般に、溶剤系インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約2μm以上、約8μm以下、又は約5μm以下である。UV系インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
【0066】
グラフィックフィルムは、マーキング層、装飾層又は基材を被覆して各種汚染等から保護するための保護層をさらに有してもよい。保護層としては様々な樹脂フィルムを使用することができる。例えば、保護層に好適に使用される樹脂として、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、これらの組合せなどを挙げることができる。保護層は、マーキング層及び装飾層の視認性及びALPRの識別性に影響を与えないように可視光及び赤外光に対して透明であることが好ましい。
【0067】
保護層の厚さは様々であってよく、一般に、約40μm以上、約50μm以上、又は約60μm以上、約200μm以下、約150μm以下、又は約100μm以下とすることができる。
【0068】
基材と保護層との間に必要に応じて接合層を配置してもよい。接合層は、従来知られている接着剤から形成することができ、被接合物の材質に応じて適宜選択される。接着剤として、例えば(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステルなどをベースとする接着剤を使用することができる。接合層は、マーキング層及び装飾層の視認性及びALPRの識別性に影響を与えないように可視光及び赤外光に対して透明であることが好ましい。
【0069】
接合層の厚さは様々であってよく、一般に、約10μm以上、又は約20μm以上、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。
【0070】
図3に本開示の別の実施態様のライセンスプレート用グラフィックフィルムとして概略断面図で示されるグラフィックフィルム10は、装飾層14、マーキング層15及び基材12を被覆する保護層16と、装飾層14、マーキング層15及び基材12と保護層16との間に配置された接合層18とを含む。
【0071】
グラフィックフィルムは、ライセンスプレートのベースプレートに接着させるための接着層を有してもよい。接着層に好適に使用することができる接着剤として、架橋され可塑化された(メタ)アクリル系感圧接着剤又はホットメルトの感圧接着剤が挙げられる。天然ゴム、合成ゴム、シリコーン又は他のポリマーをベースとし、必要に応じて粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などの添加剤を含む、他の感圧接着剤を使用することもできる。本開示において「感圧接着剤」とは、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない接着剤を指す。接着剤は架橋剤によって熱架橋又は放射線(例えば電子線ビーム又は紫外線)で架橋されたものでもよい。
【0072】
接着層の厚さは様々であってよく、一般に、約30μm以上、約40μm以上、又は約50μm以上、約150μm以下、約90μm以下、又は約60μm以下とすることができる。
【0073】
グラフィックフィルムは、接着層を保護するライナーをさらに有してもよい。ライナーとして、例えば、紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料;このようなプラスチック材料で被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナーの厚さは、一般に、約5μm以上、約15μm以上又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下又は約150μm以下である。
【0074】
本開示の一実施態様のライセンスプレートは、ベースプレートと、ベースプレートの上に取り付けられた上記グラフィックフィルムと、グラフィックフィルムの識別表示領域の内部に配置された識別表示とを備える。
【0075】
ライセンスプレートのベースプレートとして、一般に金属板又は樹脂板を使用することができる。金属板として、アルミニウム板、ステンレス板、鉄板などが挙げられる。樹脂板として、ポリカーボネート板、ポリエステル板、塩化ビニル板などが挙げられる。必要に応じて、これらの板材をフレームなどの形状に成形加工してもよい。
【0076】
ベースプレートへのグラフィックフィルムの取り付けは、グラフィックフィルムが有する接着層を介して、又は接着剤をグラフィックフィルムとベースプレートの間に塗布して、ベースプレートとグラフィックフィルムを接着することにより行うことができる。
【0077】
ベースプレートにグラフィックフィルムを取り付けて形成した積層体を、例えばブランクプレスダイなどを用いて所望の大きさにブランクプレスして切り出してもよい。
【0078】
識別表示は、インクジェット印刷、ロールコーティングなどを用いて、グラフィックフィルムの識別表示領域の内部に、例えば顔料及びバインダー樹脂を含むインク組成物を適用して着色層を形成することにより、ライセンスプレートに配置することができる。識別表示の輪郭に合わせて形成されたエンボス部又はデボス部にインク組成物を適用して着色層を形成してもよい。エンボス部又はデボス部の形成は、一般にベースプレートにグラフィックフィルムを取り付けて積層体を形成した後、積層体を雄雌ダイに挟んでプレス機で加圧することによって行うことができる。このときに、ライセンスプレートの辺縁部にフレーム部を形成してもよい。フレーム部はライセンスプレートの変形を防止するための強度をライセンスプレートに付与することができる。エンボス部、デボス部又はフレーム部の深さは、一般にそれぞれ約1mm以上、約2mm以下であるが、この範囲に限定されない。一実施態様では、識別表示がライセンスプレートのエンボス部上に配置されている。
【0079】
識別表示を表示する着色層の厚さは様々であってよく、一般に、約5μm以上、約6μm以上、又は約8μm以上、約30μm以下、約25μm以下、又は約20μm以下とすることができる。
【0080】
ライセンスプレートは識別表示を表示する着色層を保護するクリアコートをさらに有してもよい。クリアコートは従来公知の種々のクリアコート剤をライセンスプレートに塗布又は噴霧し、必要に応じて乾燥又は硬化することにより形成することができる。
【0081】
本開示の一実施態様のライセンスプレートとして図4に概略断面図で示されるライセンスプレート20は、接着層19を介してベースプレート22に取り付けられた、基材12、装飾層14、マーキング層15、接合層18及び保護層16を備えるグラフィックフィルムを含み、エンボス部上に識別表示26が配置されている。装飾層14及びマーキング層15は、基材12の同一面上に、例えばインクジェット印刷により同時に形成することができる。この実施態様の変形例として、装飾層14及びマーキング層15を、基材12の下側(接着層19側)、又は保護層16の下側(接合層18側)及び/若しくは上側(識別表示26側)の同一面上に形成することもできる。図4では、装飾層14及びマーキング層15が間隔をあけて形成されているが、一部重なるように形成されていてもよい。
【0082】
本開示の別の実施態様のライセンスプレートとして図5及び図6に概略断面図で示されるライセンスプレート20は、図4における装飾層14及びマーキング層15の配置の変形例であり、装飾層14及びマーキング層15が各々異なる面に配置されている。図5では、装飾層14が基材12上に形成され、マーキング層15が保護層16の下側に形成されているが、装飾層14は基材12の下側に形成されていてもよく、装飾層14及びマーキング層15は逆の配置であってもよい。図6では、装飾層14が基材12上に形成され、マーキング層15が保護層16の上側に形成されているが、装飾層14は基材12の下側に形成されていてもよく、装飾層14及びマーキング層15は逆の配置であってもよい。図5図6で示されるような構成であれば、例えば、装飾層14及びマーキング層15を別々の部材にインクジェット印刷、グラビア印刷等の種々の印刷手段によって形成しておくことができるため、装飾層を備える部材とマーキング層を備える部材とを適宜組み合わせて使用することができる。図5及び図6では、ライセンスプレートを上方から視認した場合、装飾層14及びマーキング層15が一部重なるように配置されているが、図4に示されるように両層を重ならないように配置してもよい。
【0083】
グラフィックフィルムが装飾層及びマーキング層を各々複数有する場合には、装飾層及びマーキング層は上述した配置を適宜組み合わせて採用することもできる。
【0084】
本開示のライセンスプレート用グラフィックフィルムを含むライセンスプレートは、ALPRに適合したライセンスプレートとして使用することができる。
【実施例】
【0085】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0086】
[ALPR読み取り試験]
<例1>
Adobe Illustrator(登録商標)上で、登録番号「多摩 599 あ 42−49」をブラック(K)の網点面積率を100%として描き、幅20mm×高さ20mmのセキュリティマークとしての矩形を平仮名「あ」の左側に配置した。描いた矩形をイエロー(Y)の網点面積率80%の設定で塗り、eps形式の印刷画像データを生成した。印刷画像データを、株式会社ミマキエンジニアリング製JV5溶剤インクジェットプリンタ及びその純正インクを使って、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムIJ5331(ポリ塩化ビニル製の白色不透明フィルム)に印刷画像データの指定色どおりに印刷した。印刷したグラフィックフィルムを幅330mm×高さ165mmのアルミニウム板に貼り、さらにその全面に保護層として3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムRG5333Rを貼り、余分なグラフィックフィルム部分をカットして例1のライセンスプレートを作製した。背景色を基準とした矩形のイエローの光学濃度について、分光光度計SPM50(グレタグマクベス社製)を用いてDIN NBフィルタに設定して測定した結果、1.11であった。例1のライセンスプレートについて、ALPR(株式会社エイテック製可搬式ナンバープレート自動観測装置OC−i SYSTEM)を用いて登録番号の読み取り試験を行ったところ、登録番号を正しく読み取ることができた。
【0087】
<比較例1>
アミノ基を含有する(メタ)アクリル系ポリマーとして、アクリル樹脂1(メチルメタクリレート(MMA)/ブチルメタアクリレート(BMA)/ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の組成比が60:34:6(質量比)であり、重量平均分子量(Mw)が約7万であり、Tgが約66℃であり、酢酸エチル溶液として提供)を準備した。さらに、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系ポリマーとして、アクリル樹脂2(ブチルアクリレート(BA)/2エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/酢酸ビニル(Vac)/アクリル酸(AA)の組成比が40:47:8:5(質量比)であり、Tgが約−51℃であり、Mwが約55万であり、酢酸エチル溶液として提供)を準備した。アクリル樹脂1およびアクリル樹脂2の混合比を、アクリル樹脂1が100質量部(固形分質量基準)、アクリル樹脂2が70質量部(固形分質量基準)としてそれらを混合し、アクリル樹脂溶液Aを準備した。溶液の固形分は32質量%であった。次いで、アクリル樹脂溶液Aを100質量部と、メチルイソブチルケトン(MIBK)を50質量部と、セシウムタングステン酸化物を含有する赤外線吸収剤(住友金属鉱山株式会社製の「YMF−02A」)を5.5質量部とを混合し、赤外線吸収性インクを作製した。この赤外線吸収性インクを用いて、矩形を形成したこと以外は、例1と同じ方法で比較例1のライセンスプレートを作製した。赤外線吸収性のマーキング層のイエローの光学濃度を例1と同じ方法で測定した結果、0.20であった。比較例1のライセンスプレートについて、例1と同じ方法で登録番号の読み取り試験を行ったところ、登録番号を正しく読み取ることができなかった。
【0088】
[矩形の視認性]
<例2:非再帰反射式ライセンスプレート>
Adobe Illustrator(登録商標)上で、イエロー(Y)の網点面積率を指定して塗った幅25mm×高さ25mmの矩形を、横方向に45mm間隔、縦方向に50mm間隔で配置した。その上に登録番号「多摩 599 あ 42−49」をブラック(K)の網点面積率を100%として描き、eps形式の印刷画像データを生成したこと以外は、例1と同じ方法で例2のライセンスプレートを作製した。作製したライセンスプレートを地上50cmの高さにおいて地面に対して垂直になるように配置し、板面照度が200ルクスになるように照明を調整し、プレートから3m及び10m離れたところから、肉眼(視力1.0)で背景の矩形を判別できるか視認性の試験を行った。ここで、矩形のイエロー(Y)の網点面積率を表1に示すように変更して各矩形の視認性の試験を行った。同時に、背景色を基準とした矩形のイエロー(Y)の光学濃度について、例1と同じ方法で測定し、その結果も表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
<例3:再帰反射式ライセンスプレート>
3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムIJ5331に代えて、3M(登録商標)High Definition Reflective License Plate Sheeting(再帰性反射シート)を使用したこと以外は、例2と同じ方法で例3のライセンスプレートを作製し、矩形の視認性の試験を行った。その結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
<比較例2>
矩形のインクをイエロー(Y)からマゼンタ(M)に変更したこと以外は、例2と同じ方法で比較例2のライセンスプレートを作製し、同様に、矩形の視認性の試験を行った。その結果、マゼンタ(M)の場合は、網点面積率が10%の矩形であっても、距離10mにおいて矩形が判別可能であった。背景色を基準とした網点面積率10%の矩形のイエロー(Y)の光学濃度を例1と同じ方法で測定した結果、0.01であった。
【0093】
[ロゴの視認性]
<例4:基材面へのロゴ印刷>
Adobe Illustrator(登録商標)上で、図1に示されるような装飾層14の位置付近に装飾層であるピンクの花柄を複数配置した上に、イエロー(Y)の網点面積率20%の設定で塗った幅10mm×高さ5mmの「3M」のロゴを45度傾斜させ、横方向に35mm間隔、縦方向にも35mm間隔で配置した。その上に登録番号「多摩 599 あ 42−49」をブラック(K)の網点面積率を100%として描き、eps形式の印刷画像データを生成したこと以外は、例1と同じ方法で例4のライセンスプレートを作製した。作製したライセンスプレートを地上50cmの高さにおいて地面に対して垂直になるように配置し、板面照度が200ルクスになるように照明を調整し、肉眼(視力1.0)で視認性の試験を行ったところ、プレートから距離3mの地点ではロゴを視認できたが、距離10mの地点ではロゴは視認できず、花柄の図柄と登録番号のみ視認できた。
【0094】
<例5:保護層面へのロゴ印刷>
Adobe Illustrator(登録商標)上で、図1に示されるような装飾層14の位置付近に装飾層であるピンクの花柄を複数配置したeps形式の印刷画像データを、株式会社ミマキエンジニアリング製JV5溶剤インクジェットプリンタ及び純正インクを使って、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムIJ5331に印刷画像データの指定色どおりに印刷した。次にイエロー(Y)の網点面積率30%の設定で塗った幅22mm×高さ12mmの「3M」のロゴを45度傾斜させ、横方向に50mm間隔、縦方向にも35mm間隔で配置し、その上に登録番号「多摩 599 あ 42−49」をブラック(K)の網点面積率を100%として描いたeps形式の印刷画像データを、株式会社ミマキエンジニアリング製JV5溶剤インクジェットプリンタ及び純正インクを使って、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムRG5333Rに印刷画像データの指定色どおりに印刷した。印刷を施したグラフィックフィルムIJ5331を幅330mm×高さ165mmのアルミニウム板に貼り、さらにその上に印刷を施したグラフィックフィルムRG5333Rを貼り、余分なグラフィックフィルム部分をカットして例5のライセンスプレートを作製した。例4と同様に視認性の試験を行ったところ、プレートから距離3mの地点ではロゴを視認できたが、プレートから距離10mの地点では、ロゴは視認できず、花柄の図柄と登録番号のみ視認できた。
【0095】
[QRコード(登録商標)の読み取り試験]
<例6>
例1における矩形の代わりに、登録番号「多摩 599 あ 42−49」の情報を備える幅25mm×高さ25mmのQRコード(登録商標)を配置し、eps形式の印刷画像データを生成し、かつ、QRコード(登録商標)と同じ網点面積率の設定で塗った幅1cm×高さ1cmの光学濃度測定用の矩形をQRコード(登録商標)から1cm離れた距離に配置したこと以外は、例1と同じ方法で例6のライセンスプレートを作製した。
【0096】
iPhone(登録商標)アプリであるSimpleAct Inc.社の「QuickMark(登録商標) QRコード(登録商標)スキャナー」をインストールしたiPhone(登録商標)6sにより、QRコード(登録商標)の読み取り試験を行った。ここで、QRコード(登録商標)のイエロー(Y)の網点面積率を表3に示すように変更して読み取り試験を行った。同時に、網点面積率を表3に示すように変更した光学濃度測定用の矩形のイエロー(Y)の背景色を基準とした光学濃度について、例1と同じ方法で測定した。これらの結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0099】
10 ライセンスプレート用グラフィックフィルム
12 基材
14 装飾層
15 マーキング層
16 保護層
18 接合層
19 接着層
20 ライセンスプレート
22 ベースプレート
24 識別表示領域
26 識別表示
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7