(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ガラス繊維(B成分)10〜300重量部、(C)アラミド繊維(C成分)1〜100重量部および(D)フッ素樹脂(D成分)5〜100重量部を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる釣り用リールのドラグ装置の音出し部材。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び
図2において、本発明の一実施形態を採用した両軸受リール100は、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル2と、スプール12と、ドラグ装置23と、を備える。
【0019】
<両軸受リールの概略構成>
リール本体1は、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6及び第2側カバー7と、機構装着板13と、を有する。フレーム5は、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された第1側板8及び第2側板9と、これらの第1側板8及び第2側板9を連結する前連結部10a及び下連結部10bとを有する。下連結部10bには、釣り竿装着用の竿装着脚部4が一体形成される。
【0020】
第1側カバー6は、スプール軸方向外側から見て略円形であり、第2側カバー7は、外径が異なる偏芯した2つの外周円で構成される。第1側カバー6は、
図2に示すように、第1側板8と一体的に形成される。第2側カバー7は、たとえば3本のねじにより第2側板9に固定される。第2側カバー7は、後述するスプール軸16を支持するための第1ボス部7aと、後述する駆動軸30を支持するための第2ボス部7bと、を有する。第1ボス部7aは、第2ボス部7bよりも後方かつ上方に設けられる。機構装着板13は、ハンドル2が一体的に回転可能に連結される駆動軸30及びスプール軸16を支持するために設けられる。機構装着板13は、第2側カバー7に着脱可能に装着される。
【0021】
ハンドル2は、
図1に示すように、駆動軸30(
図2参照)に一体的に回転可能に装着されるハンドルアーム2aと、ハンドルアーム2aの先端に回転自在に装着されたハンドル把手2bと、を有する。ハンドルアーム2aは、後述するスタードラグ3の軸方向外側に配置される。
【0022】
図2に示すように、フレーム5内には、スプール12と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチレバー17と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くためのレベルワインド機構18と、が配置される。フレーム5と第2側カバー7との間には、回転伝達機構19と、クラッチ機構21と、クラッチ制御機構22と、ドラグ装置23と、キャスティングコントロール機構24と、が配置される。また、フレーム5と第1側カバー6との間には、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための遠心ブレーキ機構25が配置される。
【0023】
回転伝達機構19は、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構18に伝える。クラッチ機構21は、回転伝達機構19の途中に設けられ、駆動軸30とスプール12とを連結及び遮断する。クラッチ制御機構22は、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構21の連結及び遮断を制御する。キャスティングコントロール機構24は、スプール12の回転時の抵抗力を調整する。
【0024】
スプール12は、その中心を貫通するスプール軸16に一体的に回転可能に連結される。スプール12は、釣り糸が巻き付けられる糸巻き胴部12aと、糸巻き胴部12aの両側に大径に一体的に形成された一対のフランジ部12bと、を有する。スプール軸16は、3つの軸受29a,29b,29cによってリール本体1に回転自在に支持される。
【0025】
クラッチレバー17は、一対の第1側板8及び第2側板9の間の後部でスプール12の後方に配置される。クラッチレバー17は第1側板8及び第2側板9の間で上下方向にスライドする。
【0026】
レベルワインド機構18は、スプール12の前方で第1側板8及び第2側板9の間に配置される。レベルワインド機構18は、外周面に交差する螺旋状溝46aが形成された螺軸46と、螺軸によりスプール軸方向に往復移動する釣り糸案内部47と、を有する。螺軸46は、両端が第1側板8及び第2側板9に回転自在に支持される。
【0027】
<回転伝達機構の構成>
回転伝達機構19は、
図2に示すように、駆動軸30と、駆動軸30に固定された駆動ギア31と、駆動ギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32と、駆動軸30の基端部に一体的に回転可能に装着された第1ギア部材50と、螺軸46の
図2右端に回転不能に装着された第2ギア部材51と、を有する。
【0028】
駆動軸30は、
図4に示すように、逆転防止機構55によって糸繰り出し方向の回転(逆転)が禁止される。これによって、ドラグ装置23が作動可能になる。逆転防止機構55は、ローラ型の第1ワンウェイクラッチ86と、爪式の第2ワンウェイクラッチ88と、を有する。第1ワンウェイクラッチ86は、駆動軸30の中間部に配置され、リール本体1の第2側カバー7の第2ボス部7bと駆動軸30との隙間に装着される。第1ワンウェイクラッチ86は、内輪遊転型のローラクラッチである。第1ワンウェイクラッチ86は、第2ボス部7bに回転不能に装着される外輪86aと、駆動軸30に一体的に回転可能に連結される内輪86bと、外輪86aと内輪86bとの間に配置されるローラ86cとを有する。内輪86bには、
図3に示すように、一対の係合突起86dが設けられている。一対の係合突起86dは、内輪86bの駆動ギア31側の端面から軸方向に突出して形成され、後述する第1ドラグ部材61のドラグ板66に一体的に回転可能に連結される。この実施形態では、内輪86bは、ドラグ板66を介して駆動軸30と一体的に回転可能に連結される。
【0029】
第2ワンウェイクラッチ88は、
図3に示すように、外周にラチェット歯90aを有するラチェットホイール90と、リール本体1の機構装着板13の外側面に揺動自在に装着されたラチェット爪92と、を有する。ラチェットホイール90は、駆動軸30の第1係止部30dに鍔部30cに接触して配置され、駆動軸30に一体的に回転可能である。そして、ラチェット歯90aにラチェット爪92が噛み込むことによって、駆動軸30の糸繰り出し方向の回転が禁止される。ラチェットホイール90と駆動ギア31との間には、ドラグ装置23のドラグディスク65dが配置される。ラチェットホイール90は、駆動軸30と一体的に回転可能なドラグ部材としても機能する。
【0030】
駆動軸30は、
図4に示すように、軸受28及び第1ワンウェイクラッチ86によって第2側カバー7及びフレーム5に回転自在に支持される。駆動軸30には、
図3及び
図4に示すように、基端側から先端側に向かって被支持部30a、トルク規制部30b、鍔部30c、第1係止部30d、第1雄ネジ部30e、第2雄ネジ部30f(
図3参照)、及び第2係止部30g(
図3参照)がそれぞれ形成される。
【0031】
被支持部30aには、駆動軸30を回転自在に支持するための軸受28(
図4参照)が装着される。トルク規制部30bは、被支持部30aよりも大径である。トルク規制部30bは、径方向外方に付勢された一対の規制ピン33によって許容トルク内で第1ギア部材50を駆動軸30に一体回転可能に連結する。鍔部30cは、トルク規制部30bよりも大径である。鍔部30cは、ドラグ装置23によって生じる押圧力を受けるために設けられる。第1係止部30dは、ドラグ装置23を構成する第1ドラグ部材61、第2ドラグ部材62、及びラチェットホイール90(それぞれ後述)を、駆動軸30に一体的に回転可能に連結するために設けられる。第1係止部30dは、鍔部30cよりも小径であり、互いに平行な2組の面取り部で構成される。第1雄ネジ部30eは、ドラグ装置23のスタードラグ3を螺合させるために設けられる。第1雄ネジ部30eは、第1係止部30dの先端側に第1係止部30dを除く外周面に形成される。第2雄ネジ部30fは、駆動軸30の先端部に第1雄ネジ部30eよりも小径に形成される。第2係止部30gは、第1係止部30dよりも小径であり、互いに平行な1組の面取り部によって構成される。第2係止部30gは、第2雄ネジ部30fが形成された駆動軸30の外周面に形成される。第2係止部30gは、ハンドル2を一体的に回転可能に連結するために設けられる。ハンドル2は、第2雄ネジ部30fにねじ込まれたナット53(
図2参照)によって駆動軸30に一体的に回転可能に固定される。
【0032】
駆動ギア31は、駆動軸30に回転自在に装着されており、駆動軸30とドラグ装置23を介して連結される。駆動ギア31は、筒状のギア部31aと、ギア部31aよりも薄肉の円板部31bと、ギア部31aの内周面に形成された少なくとも一つの第1係合凹部31cと、を有する。この実施形態では、第1係合凹部31cは、ギア部31aの内周部に円弧状に凹んで複数(例えば、2から6つ、この実施形態では4つ)形成される。ギア部31aは、駆動ギア31の外周側に形成されるギア歯31dを有する。円板部31bは、ギア部31aの内周側に一体形成され、駆動軸30に回転自在に装着される。円板部31bは、ギア部31aよりも薄肉である。円板部31bの中心に駆動軸30に支持される支持孔31eが形成される。また円板部31bは、ハンドル2側にドラグ装置23によって押圧される被押圧側面31fを有する。第1係合凹部31cは、第2ドラグ部材62を駆動ギア31に一体回転可能に連結するために設けられる。第1係合凹部31cは、駆動ギア31の第2側カバー7から遠い面に貫通して形成され、貫通部分には、円形の装着孔31gが形成される。
【0033】
駆動ギア31は、ドラグ装置23の後述する発音部材64が収容される収容部35をさらに有する。収容部35は、有底筒状の収容部本体35aと、収容部本体35aの外周面に円弧状に突出する位置決め突起35bと、を有する。収容部本体35aは、装着孔31g及び第1係合凹部31cに係合可能であり、かつ軸方向に移動自在である。収容部本体35aには、発音部材64が収容される。位置決め突起35bは、装着孔31gに収容部本体35aが装着されると、軸方向に配置された背面(ハンドル2から離れた面)が装着孔31gの周囲の円板部31bの壁面に接触し、かつ周方向の両面がギア部31aの内周面に接触する。これによって、収容部本体35aの軸方向の位置決め及び回り止めが行われる。なお、収容部35は、4つの装着孔31gのいずれにも装着可能である。
【0034】
ピニオンギア32は、
図2に示すように、第2側板9の外方から内方に延び、中心にスプール軸16が貫通する筒状部材である。ピニオンギア32は、軸受34a及び軸受34bによって軸方向移動自在かつ回転自在にリール本体1に支持される。軸受34aは、機構装着板13に装着される。軸受34bは、第2側カバー7の第1ボス部7aに装着される。
図4に示すように、ピニオンギア32の
図4左端部には、クラッチ機構21の後述する係合ピン21aに噛み合う噛み合い溝32aが形成される。この噛み合い溝32aと、スプール軸16に装着された係合ピン21aと、によってクラッチ機構21が構成される。また、ピニオンギア32の中間部にはくびれ部32bが、右端部には軸受34bに支持される支持部分32cがそれぞれ形成される。くびれ部32bと支持部分32cとの間に、駆動ギア31に噛み合うギア部32dが形成される。
【0035】
第1ギア部材50は、前述したように駆動軸30のトルク規制部30bに装着される。第1ギア部材50は、螺軸46又は第2ギア部材51が何らかの原因によって回転不能になって、許容トルク以上のトルクが第1ギア部材50に作用すると空転する。第1ギア部材50は、鍔部30cに駆動軸30の基端部側から当接している。螺軸46に装着された第2ギア部材51は、第1ギア部材50に噛み合っている。このような構成により、レベルワインド機構18の螺軸46は、駆動軸30の糸巻取方向の回転に連動して回転する。
【0036】
<ドラグ装置の構成>
ドラグ装置23は、スプール12に連動する駆動ギア31と駆動軸30との相対回転を所定のトルク量を超えるまで規制する。また、ドラグ装置23は、所定のトルク量を超えて駆動ギア31と駆動軸30とが相対回転すると、スプール12の糸繰り出し方向の回転を制動する。ドラグ装置23は、主として、
図2に示すスタードラグ3と、
図3及び
図4に示す第1ドラグ部材61、第2ドラグ部材62、第3ドラグ部材63、及び発音部材64と、複数枚(例えば、4枚)のドラグディスク65aからドラグディスク65dと、を備える。第1ドラグ部材61は、本件発明におけるドラグ部材の一例である。
【0037】
図2に示すように、スタードラグ3は、駆動軸30の第1雄ネジ部30eに螺合するナット部材3aと、ナット部材3aを一体回転可能かつ軸方向移動自在に支持する本体部材3bと、を有する。スタードラグ3は、ドラグ調整部材の一例である。スタードラグ3は、スタードラグ3よりも駆動軸30の基端側に装着された部材(例えば、第1ワンウェイクラッチ86の内輪86b、第1ドラグ部材61、第2ドラグ部材62,及び第3ドラグ部材63などの部材)を押圧して所定のトルク量を調整するための部材である。スタードラグ3と第1ワンウェイクラッチ86との間には複数枚(例えば2枚から6枚であり、この実施形態では、2枚)の皿バネ57が装着される。皿バネ57は、スタードラグ3の締め付け力を第1ドラグ部材61に緩やかに伝えるために設けられる。皿バネ57は、スタードラグ3と第1ワンウェイクラッチ86の内輪86bとにそれぞれワッシャを介して接触する。
【0038】
スタードラグ3は、その締め具合を調節することにより、皿バネ57を介して第2側カバー7に装着された第1ワンウェイクラッチ86の内輪86bを軸方向に移動させることができる。すなわち、スタードラグ3の調節によって、皿バネ57の押圧力が調整される。これによって、スタードラグ3によりドラグ装置23のドラグ力を細かく調整できる。
【0039】
第1ドラグ部材61は、
図3及び
図4に示すように、駆動軸30と一体的に回転可能であり、第1ワンウェイクラッチ86の内輪86bによって駆動ギア31に対して押圧される。第1ドラグ部材61は、駆動ギア31に対する押圧側面に形成された音出し部67aを有する。第1ドラグ部材61は、駆動軸30に一体的に回転可能に装着される。第1ドラグ部材61は、駆動ギア31を押圧可能なドラグ板66と、音出し部67aを有する音出しリング67と、を有する。
尚、音出し部67aを有する音出しリング67は、本件発明における釣り具用部材の一例であり、また、発音機構の音出し部材の一例である。
ドラグ板66は駆動軸30の第1係止部30dに一体的に回転可能に装着されている。音出しリング67はドラグ板66の外周側にドラグ板66と一体的に回転可能に装着されている。
【0040】
ドラグ板66は、
図3及び
図5に示すように、円板状の部材である。ドラグ板66は、外周部に形成され音出しリング67に係合する係合部68と、内周部に形成された非円形孔66aと、を有する。非円形孔66aは、駆動軸30の第1係止部30d及び第1ワンウェイクラッチ86の内輪86bの一対の係合突起86dに一体的に回転可能に係合する。非円形孔66aは、内輪86bの一対の係合突起86dに係合する一対の矩形凹部66bと、駆動軸30の第1係止部30dに係合する一対の直線部66cと、を有する。
【0041】
係合部68は、駆動ギア31を押圧する押圧方向(駆動軸の
図3左方向)に音出しリング67と係合する第1係合部68aと、周方向に音出しリング67と係合する第2係合部68bと、を有する。第1係合部68aは、押圧方向に突出する押圧部68cと、押圧部68cの外周側から径方向に延出されるフランジ部68dと、を有する。第2係合部68bは、ドラグ板66のフランジ部68dの周方向に間隔を隔てて配置された少なくとも一つの第2係合凹部68eを有する。第2係合凹部68eは、第2係合部の係合凹部の一例である。
【0042】
音出しリング67は、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ガラス繊維(B成分)10〜300重量部、(C)アラミド繊維(C成分)1〜100重量部および(D)フッ素樹脂(D成分)5〜100重量部を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる材料部材である。音出しリング67は、
図3、
図6、
図7、及び
図8に示すように、駆動ギア31に対向可能な面に音出し部67aと、ドラグ板66の係合部68に係合する被係合部69と、を有する。音出し部67aは、周方向に間隔を隔てて形成された複数の音出し凹部67bを有する。音出し凹部67bは、被衝突部の一例である。この実施形態では、音出し凹部67bは、
図7に示すように、波状に凹んで等間隔に形成される。
【0043】
被係合部69と係合部68との間には、所定の隙間が設けられる。被係合部69は、第1係合部68aと係合する第1被係合部69aと、第2係合部68bと係合する第2被係合部69bと、を有する。第1被係合部69aは、押圧部68cが挿通可能であり、かつ、フランジ部68dよりも小径の貫通孔69cを有する。第2被係合部69bは、ドラグ板66の第2係合凹部68eに係合する第2係合凸部69dを有する。第2係合凸部69dは、第2被係合部の係合凸部の一例である。
【0044】
図8に示すように、押圧部68cの押圧方向の長さL1は、貫通孔69cの押圧方向の長さL2よりも長い。具体的には、押圧部68cの長さL1は、貫通孔69cの長さL2よりも、少なくとも0.1mm長い。なお、
図8では、隙間をわかりやすくするために、貫通孔69cの長さL2を実際の長さよりも短く描いている。これによって、音出しリング67は、軸方向に長さL1−L2の差である両者の隙間分だけ、ドラグ板66に対して移動可能になる。
【0045】
図9に示すように、音出しリング67の第2係合凸部69dの周方向の長さL4は、ドラグ板66の第2係合凹部68eの周方向の長さL3よりも短い。具体的には、第2係合凸部69dの周方向の長さL4は、第2係合凹部68eの周方向の長さL3よりも、少なくとも0.1mm短い。なお、
図9では、隙間をわかりやすくするために、第2係合凸部69dの長さL4を実際の長さよりも短く描いている。これによって、音出しリング67は、周方向に長さL3−L4の差である両者の周方向の隙間分だけ、ドラグ板66に対して移動可能になる。
【0046】
第2ドラグ部材62は、
図3及び
図4に示すように、第1ドラグ部材61と第3ドラグ部材63との間に配置される。第2ドラグ部材62は、駆動ギア31のギア部31aの内周側に配置され、駆動ギア31と一体的に回転可能に設けられる。第2ドラグ部材62は、ドラグディスク65aを介して第1ドラグ部材61のドラグ板66の押圧部68cによって押圧される。第2ドラグ部材62は、外周部に駆動ギア31の複数の第1係合凹部31cに係合する少なくとも1つの第1係合凸部62aを有する。第1係合凸部62aは、第1係合凹部31cの数よりも少ないのが好ましい。この実施形態では、第1係合凹部31cの数は4つであり、第1係合凸部62aの数は3つである。また、第2ドラグ部材62は、発音部材64が通過可能な通過凹部62bを外周部に有する。通過凹部62bは、第1係合凸部62aが第1係合凹部31cに係合した状態で、余った第1係合凹部31cに対向可能な位置に配置される。したがって、第1係合凹部31cが等間隔で配置される場合、複数の第1係合凸部62aと少なくとも1つの通過凹部62bが等間隔に配置される。通過凹部62bは、収容部35に収容された発音部材64が通過可能に凹んで形成される。
【0047】
第3ドラグ部材63は、第2ドラグ部材62と駆動ギア31の間に配置される。第3ドラグ部材63は、ドラグ座金65bを介して第2ドラグ部材62によって押圧される。第3ドラグ部材63は、駆動ギア31のギア部31aの内周側に配置され、ドラグディスク65を介して内周側に駆動軸30の第1係止部30dに一体的に回転可能に係合する非円形孔63aを有する。第3ドラグ部材63は、ドラグディスク65cを介して駆動ギア31の円板部31bを押圧する。
【0048】
発音部材64は、本発明における発音部材の一例であり、
図7及び
図8に示すように、打撃ピン70と、打撃ピン70を付勢する付勢部材72と、を有する。打撃ピン70は、駆動ギア31のドラグ装置23によって押圧される被押圧側面31fに装着された収容部35に、第1ドラグ部材61の音出し部67aに対して進退自在に装着される。付勢部材72は、打撃ピンを音出し部67aに向けて弾性的に付勢する。
【0049】
打撃ピン70は、金属製の部材であり、音出し部67aに繰り返して衝突可能である。打撃ピン70は、先端に大径に設けられた頭部70aと、頭部70aの基端に一体で形成された軸部70bと、を有する。頭部70aは、銃弾形状に形成され、先端部は例えば球状に丸められる。頭部70aは、音出し凹部67bに係合可能な大きさである。具体的には、音出し凹部67bに進入可能な大きさである。頭部70aは、収容部35から突出して配置される。軸部70bは、頭部70aよりも小径であり、付勢部材72に係合して設けられる。
【0050】
付勢部材72は、打撃ピン70の軸部70bの外周側に配置されるコイルばねである。付勢部材72は、収容部35の底面35cと、打撃ピン70の頭部70aと軸部70bと、の段差70cの間に圧縮状態で配置される。
【0051】
この発音部材64と音出し部67aとによって発音機構74が構成される。付勢部材72によって音出し部67aに向けて付勢された打撃ピン70は、組み立てられた状態で第1ドラグ部材61をハンドル2側に付勢する。
【0052】
ドラグディスク65a〜ドラグディスク65dは、例えば、フェルト、カーボン等の部材で構成される。
【0053】
このような構成では、打撃ピン70は駆動ギア31に連動して回転し、駆動軸30及び第1ドラグ部材61は逆転防止機構55によって逆転が禁止されている。したがって、ドラグ装置23の作動により駆動軸30と駆動ギア31とが相対回転すると、打撃ピン70が第1ドラグ部材61の音出し部67aに対して衝突を繰り返して発音する。このとき、音出しリング67が配置された第2側カバー7に近い位置で発音するので、ドラグ装置23が作動すると、大きくかつ明瞭な音を発生できるようになる。
【0054】
次に、この両軸受リールの動作を説明する。
【0055】
釣り糸を巻き取るときには、ハンドル2を糸巻き取り方向に回す。ハンドル2の回転は駆動軸30からドラグ装置23を介して駆動軸30に連動する駆動ギア31及びピニオンギア32に伝達される。ピニオンギア32の回転は、クラッチ機構21によりピニオンギア32と嵌合しているスプール軸16に伝達され、スプール12が回転して釣り糸を巻き取る。この駆動軸30の回転は、第1ギア部材50及び第2ギア部材51を介して螺軸46にも伝達される。螺軸46の回転によって、レベルワインド機構18の釣り糸案内部47がスプール軸16に沿って往復運動する。この往復運動によって、スプール12に釣り糸が略均一に巻き取られる。
【0056】
一方、釣り糸を繰り出すときには、クラッチレバー17を操作してクラッチ制御機構22によりクラッチ機構21を離脱状態(クラッチオフ状態)にする。これにより、スプール軸16とピニオンギア32との嵌合が解除され、釣り糸の繰り出しによりスプール12が回転しても回転伝達機構19及び駆動軸30にはその回転は伝達されない。
【0057】
次に、ドラグ装置23の動作について説明する。
【0058】
魚を釣り上げる際には、釣り糸にテンションがかかる。これにより、スプール12には糸繰り出し方向に回転しようとするトルクが作用する。しかし、スタードラグ3の締め込みにより圧縮した皿バネ57によって、駆動ギア31がラチェットホイール90側に押圧されているために、スプール12に作用するトルクが小さい間は、駆動ギア31と駆動軸30が相対回転不能である。そして、駆動軸30は逆転防止機構55により糸繰り出し方向に回転しないように止められているので、駆動ギア31と連動するスプール12も糸繰り出し方向に回転しない。
【0059】
釣り糸にかかるテンションが高くなりスプール12にかかるトルクが大きくなると、駆動ギア31及び第2ドラグ部材62が、第1ドラグ部材61、第3ドラグ部材63及びラチェットホイール90に対してスリップしながら糸繰り出し方向に回転する。これにより、スプール12も糸繰り出し方向に回転する。このように、スプール12に作用するトルクが所定の値を超えると、言い換えれば釣り糸に過大な張力がかかると、ドラグ装置23が作動してスプール12が糸繰り出し方向に回転し、釣り糸を過大な張力から保護する。
【0060】
魚の釣り上げ時において上記のようにスプール12が糸繰り出し方向に回転する際に、発音機構74によって音を発生する。駆動軸30と駆動ギア31とが相対回転すると、駆動軸30に連動して回転する第1ドラグ部材61の音出し凹部67bと、駆動ギア31に連動して回転する打撃ピン70と、が干渉してクリック音を発生する。このクリック音は、等間隔に配置された音出し凹部67bに向けて付勢された打撃ピン70の頭部70aが間欠的に当接することによって発生する。このため、クリック音は、リズミカルな音である。この音発生時には、音出し部67aを有する第1ドラグ部材61が第2側カバー7に近い位置に配置され、両軸受リール100の外側に近い位置で発音するため、大きな音を明瞭に発生することができる。しかも、第1ドラグ部材61において、ドラグ板66と音出しリング67とが、周方向及び軸方向に隙間をあけて配置されるため、音出しリング67が振動しやすくなり、さらに大きな音を発生できる。
【0061】
このように、魚を釣り上げる際にスプール12が糸繰り出し方向に回転すると、明瞭な音が発生するので、釣り人はスプールの回転を認識することができ、釣り人にとって便利である。さらに、ドラグ装置23が作動しても音出しリング67は押圧されないので、発生する音が良く響き、音量も大きい。
【0062】
なお、スプール12を回転させるトルクの大きさ、つまりドラグ力の調節は、スタードラグ3の締め具合によって皿バネ57の押圧力を調整することにより駆動ギア31の押圧の度合いを変えることによって行う。
【0063】
(他の実施例)
図10及び
図11を用いて、他の実施例について説明する。なお、上述の実施例との違いのみを説明し、その他の部分については、同様であるため、その説明を省略する。
【0064】
上述した実施例においては、音出しリング74は、ドラグ板66は駆動軸30の第1係止部30dに一体的に回転可能に装着されているドラグ板66の外周側に、ドラグ板66と一体的に回転可能に装着されている。また、発音部材64は、駆動ギア31のドラグ装置23によって押圧される被押圧側面31fに装着された収容部35に、第1ドラグ部材61の音出し部67aに対して進退自在に装着されている。
【0065】
つまりは、駆動軸30と一体的に回転可能であり、音出し部67aを有する音出し部材としての音出しリング67と、駆動ギア31と一体的に回転可能であり、駆動ギア31と駆動軸30との相対回転により音出し部67aと干渉して音を発生する発音部材64と、から発音機構74を構成したものであるが、
図10及び
図11に示されるように、その他の実施例においては、発音機構174を、例えば、駆動ギア131に係合し一体回転可能であり、音出し凹部167aを有する音だしリング167と、駆動軸130の係合部131aと係合し一体回転可能なギア部材151に設けられ、駆動ギア131と駆動軸130との相対回転により音出し部167aと干渉して音を発生する発音部材164を有するようにすることもできる。
【0066】
以下、本発明の釣り具用部材の一実施例として用いた音出しリング67、167の成分について、詳細について説明する。
【0067】
(A成分:ポリアリーレンスルフィド樹脂)
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂、特にポリフェニレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。
【0068】
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができ、その中でも、p−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらに、ポリ(p−フェニレンスルフィド)がより好ましい。
【0069】
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総塩素含有量は、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは450ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。総塩素含有量が500ppmを超える場合には、発生ガス量が増加しウエルド強度を低下させる場合がある。
【0070】
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総ナトリウム含有量は、好ましくは39ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスの増加によりウエルド強度がを低下するだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性を低下させる場合がある。
【0071】
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される分散度(Mw/Mn)は好ましは2.7以上、より好ましくは2.8以上、さらに好ましくは2.9以上である。分散度が2.7未満の場合は、成形時のバリ発生が多くなる場合がある。なお、分散度(Mw/Mn)の上限は特に規定されないが、10以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出された値である。なお、溶媒には1−クロロナフタレンを使用し、カラム温度は210℃とした。
【0072】
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、既知の方法で重合されるが、特に好適な重合方法としては、米国登録特許第4,746,758号、第4,786,713号、特表2013−522385、特開2012−233210および特許5167276等に記載された製造方法が挙げられる。これらの製造方法は、ジヨードアリール化合物と固体硫黄を、極性溶媒なしに直接加熱して重合させる方法である。
【0073】
前記製造方法はヨウ化工程および重合工程を含む。該ヨウ化工程ではアリール化合物をヨードと反応させて、ジヨードアリール化合物を得る。続く重合工程で、重合停止剤を用いてジヨードアリール化合物を固体硫黄と重合反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する。ヨードはこの工程で気体状で発生し、これを回収して再びヨウ化工程に用いられる。実質的にヨードは触媒である。
【0074】
前記製造方法で用いられる代表的な固体硫黄としては、室温で8個の原子が連結されたシクロオクタ硫黄形態(S
8)が挙げられる。しかしながら重合反応に用いられる硫黄化合物は限定されるものではなく、常温で固体または液体であればいずれの形態でも使用し得る。
【0075】
前記製造方法で用いられる代表的なジヨードアリール化合物としては、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、ジヨードビフェニル、ジヨードビスフェノールおよびジヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、またアルキル基やスルホン基が結合していたり、酸素や窒素が導入されたりしているヨードアリール化合物の誘導体も使用される。ヨードアリール化合物はそのヨード原子の結合位置によって異なる異性体に分類され、これらの異性体のうち好ましい例は、p−ジヨードベンゼン、2,6−ジヨードナフタレン、及びp,p’−ジヨードビフェニルのようにヨードがアリール化合物の分子両端に対称的に位置する化合物である。該ヨードアリール化合物の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し500〜10,000重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0076】
前記製造方法で用いられる代表的な重合停止剤としては、モノヨードアリール化合物、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバメート類、芳香族スルフィド化合物などが挙げられる。モノヨードアリール化合物のうち好ましい例としては、ヨードビフェニル、ヨードフェノール、ヨードアニリン、ヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾール類のうち好ましい例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビスベンゾチアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾールスルフェンアミド類のうち好ましい例としては、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−モルホリノチオベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジベンゾチアゾールジスルファイド、N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。チウラム類のうち好ましい例としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ジチオカルバメート類のうち好ましい例としては、ジメチルジチオカルバメート酸亜鉛、ジエチルジチオカルバメート酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。芳香族スルフィド化合物のうち好ましい例としては、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルエーテル、ビフェニル、ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。またいずれの重合停止剤においても、共役芳香環骨格上に一つまたは複数の官能基が置換されていてもよい。前記官能基の例としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、スルホ基、ニトロ基などが挙げられ、好ましい例としてはカルボキシ基、アミノ基が挙げられ、さらに好ましい例としてはFT−IRスペクトル上で、1600〜1800cm
−1または3300〜3500cm
−1のピークを示すカルボキシ基、アミノ基が挙げられる。重合停止剤の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し1〜30重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0077】
前記製造方法では重合反応触媒を使用しても良く、代表的な重合反応触媒としては、ニトロベンゼン系触媒が上げられる。ニトロベンゼン系触媒のうち好ましい例としては、1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン、1−ヨード−4−ニトロベンゼン、2,6−ジヨード−4−ニトロフェノール、ヨードニトロベンゼン、2,6−ジヨード−4−ニトロアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。重合反応触媒の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し0.01〜20重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0078】
この重合方法を使うことにより、実質的に塩素含有量およびナトリウム含有量を低減させる必要が無く、コストパフォーマンスに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることができる。
【0079】
また本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂は、その他の重合方法によって得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を含んでいてもよい。
【0080】
(B成分:ガラス繊維)
本発明で使用されるガラス繊維は、当業者にとって周知のものであり、且つ多数の業者から入手可能である。ガラス繊維は、主として、本発明の釣り具用部材に剛性を付与することによって音質を改善するものであるが、音の劣化にも寄与していると考えられる。
【0081】
本発明で使用されるガラス繊維としては、Aガラス、Cガラス、Eガラス等のガラス組成を特に限定するものではなく、場合によりTiO
2、SO
3、P
2O
5等の成分を含有するものであっても良い。但し、Eガラス(無アルカリガラス)が熱可塑性樹脂と配合する場合により好ましい。ガラス繊維は溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定の繊維状にしたものである。かかる場合の急冷および延伸条件についても特に限定されるものではない。また断面の形状は真円状の他に、楕円状、マユ型、三つ葉型などの真円以外の形状ものを使用しても良い。更に真円状ガラス繊維と真円以外の形状のガラス繊維が混合したものでもよい。この中でより好ましいものは真円状のガラス繊維である。また、これらガラス繊維をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で、膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0082】
本発明で使用されるガラス繊維の繊維径は、3〜12μmが好ましく、より好ましくは5〜10μm、さらに好ましくは6〜9.5μmである。なお、繊維径は以下の方法により測定される。すなわち、ガラス繊維をデッキガラスの上に載せ、メタノールにて均一に開繊させたのち、十分に溶剤を揮発させ、日本光学工業株式会社製ニコンHFX−2型顕微鏡にて、対物レンズ40倍、接眼レンズ10倍を使用して測定する。(n=25)繊維径が3μm未満ではガラス繊維のコストが上がるため実用的ではなく、12μmを超えると優れた音が発生しない場合がある。
【0083】
ガラス繊維の含有量は、A成分100重量部に対し、10〜300重量部であり、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜80重量部である。添加量が多い場合には押出し性が著しく低下し、添加量が少ない場合は釣り具用部材の音質が低下し、長期使用時の音の劣化も進行する。
【0084】
(C成分:アラミド繊維)
本発明のC成分として使用されアラミド繊維として、アラミド繊維と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。本発明で使用されるアラミド繊維は、主として、本発明の釣り具用部材に摺動特性を付与することによって長期使用時の音の劣化を防ぐものであるが、音質の改善にも寄与していると考えられる。
【0085】
本発明のC成分として使用されアラミド繊維は、全芳香族アラミド繊維であることが好ましい。アラミド繊維としては、例えばメタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維などが挙げられる。
【0086】
全芳香族アラミド繊維の原料である全芳香族アラミド樹脂とは、実質的に一種以上の芳香族ジアミンと一種以上の芳香族ジカルボン酸ハライドによって得られるものである。但し一種以上の芳香族ジアミンと一種以上の芳香族ジカルボン酸に、例えばトリフェニルホスファイトおよびピリジンの系に代表される縮合剤を添加することもできる。アラミドはパラ型でもメタ型でもよいがパラ型がより好ましい。好ましい芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、ベンチジン、4,4”−ジアミノ−p−ターフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4´−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,10−ビス−(4−アミノフェニル)アントラセンなどが挙げられる。
【0087】
芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、該酸クロリドが特に好ましく、テレフタル酸クロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド、4,4´−ジフェニルジカルボン酸クロリド、およびその芳香環に1個以上の低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、などの非反応性官能基を含むものなどが挙げられる。さらに芳香族ジカルボン酸を使用する場合には、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、およびその芳香環に1個以上の低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、などの非反応性官能基を含むものなどが挙げられる。さらに本発明で好ましいアラミドの構造は、その主骨格が下記式で表されるものである。
【0089】
(但し、Ar
1、Ar
2は下記一般式[I]〜[IV]からなる群より選ばれる少なくとも1種類の芳香族残基を示す。なおAr
1、Ar
2は互いに同一であっても異なるものであってもよい。
【0090】
また、これらの芳香族残基は、その水素原子の一部がハロゲン原子または低級アルキル基で置換されていてもよい。)
【0095】
なかでも、前記Ar
1、Ar
2の合計を100モル%としたときに、一般式[I]と一般式[II]との合計、一般式[I]と一般式[III]との合計、一般式[I]と一般式[IV]との合計、または一般式[I]が80モル%以上であることが好ましい。より好ましくは一般式[I]と一般式[II]との合計、または一般式[I]と一般式[III]との合計が80モル%以上である。さらに好ましくは一般式[I]と一般式[II]との合計、または一般式[I]と一般式[III]との合計が80モル%以上であり、且つ一般式[II]または一般式[III]が1〜20モル%のものである。
【0096】
紡糸原液となるアラミドドープは、溶液重合を行ったものでも、別途得られた全芳香族アラミド樹脂を溶媒に溶解せしめたものでもよいが、溶液重合反応を行ったものが好ましい。また、溶解性を向上するために溶解助剤として無機塩を少量添加しても差し支えない。このような無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0097】
重合溶媒、あるいは再溶解溶媒としては一般に公知の非プロトン性有機極性溶媒を用いるが、例を挙げるとN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ブチルアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、N−アセチルピロリジン、N−アセチルピペリジン、N−メチルピペリドン−2,N,N´−ジメチルエチレン尿素、N,N´−ジメチルプロピレン尿素、N,N,N´,N´−テトラメチルマロンアミド、N−アセチルピロリドン、N,N,N´,N´−テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドなどがあり、さらに再溶解溶媒としては濃硫酸やメタンスルホン酸などの強酸が挙げられる。
【0098】
全芳香族アラミド樹脂の重合度は特に制限はないが、溶媒に溶解するならば重合度は大きい方が好ましい。全芳香族アラミド樹脂を溶液重合する場合、酸成分とジアミン成分との比は実質的に等モルで反応させるが、重合度制御のためいずれかの成分を過剰に用いることもできる。また、末端封鎖剤として単官能の酸成分、アミン成分を使用してもよい。
【0099】
全芳香族アラミド樹脂を繊維状に成形する場合には、通常アラミドドープを湿式成形する方法が使用され、該ドープを凝固浴の中に直接吐出する方法またはエアギャップを設けて凝固浴の中に吐出する方法がある。凝固浴には全芳香族アラミド樹脂の貧溶媒が用いられるが、アラミドドープの溶媒が急速に抜け出して全芳香族アラミド繊維に欠陥ができぬように、通常は良溶媒を添加して凝固速度を調節する。一般には貧溶媒として水、良溶媒としてアラミドドープの溶媒を用いるのが好ましい。良溶媒/貧溶媒の比は、全芳香族アラミド樹脂の溶解性や凝固性にもよるが、15/85〜40/60が好ましい。
【0100】
かかる全芳香族アラミド繊維の繊維長としては0.1mm〜6mmが好ましく、0.5mm〜3mmがより好ましい。最も好ましくは0.7mm〜1.5mmである。6mmを超えると製造時の取り扱いが困難になると共に組成物の流動性が劣り、成形性が不良となる場合がある。また、冷却時間を長く必要とするため、生産性が落ちるといった問題がある。0.1mm未満ではアラミド繊維自体の生産性が悪く現実的ではない。
【0101】
またかかる全芳香族アラミド繊維は集束の有無に関係なく効果を発揮するが、集束されているものは取り扱い易く好ましい。集束のための結合剤としてはポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン樹脂などがあげられ、その中でも芳香族ポリエステルが好ましい。本発明においてかかる耐熱有機繊維は単独あるいは2種以上の混合物として使用できる。
【0102】
C成分の含有量はA成分100重量部に対し、1〜100重量部であり、好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部である。C成分の含有量が1重量部未満では、音質が低下するとともに、長期使用の場合の音の劣化が生じ、100重量部を超えると、混練押出時にストランド切れやサージングなどが起こり生産性が低下するという問題が生ずる。
【0103】
(D成分:フッ素樹脂)
本発明のD成分として使用されるフッ素樹脂としては、主鎖に炭素鎖を有し、側鎖にフッ素原子の結合を有する重合体、またはそのような重合体を有する共重合体である。本発明で使用されるフッ素樹脂は、主として、本発明の釣り具用部材に摺動特性を付与することによって長期使用時の音の劣化を防ぐものであると考えられる。
【0104】
本発明のD成分として使用されるフッ素樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル−フルオロオレフィン共重合体、エチレン−トリクロロフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。なかでも好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンであり、焼成、未焼成のどちらのポリテトラフルオロエチレンでも使用可能であるが、ポリテトラフルオロエチレンは再凝集し易いので、再凝集し難くするために焼成処理等を施した粉末状ものが好ましく、特に焼成処理温度360℃以上で焼成されたポリテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。ポリテトラフルオロエチレンの融点は、再凝集し難くするためDSC法で測定して320〜335℃のものが好ましく、より好ましくは325〜330℃である。またポリテトラフルオロエチレンの粒子径は、パークロルエチレン中に分散させた分散液を光透過法により測定する方法で平均0.1〜100μmのものが好ましく、より好ましくは1μm〜20μmのポリテトラフルオロエチレンである。なおここでいう平均粒径はレーザー回折・散乱法(MICOTRAC法)を用いて測定した重量平均粒径である。また、このポリテトラフルオロエチレンは、数平均分子量としては10万以上のものが好ましく、より好ましくは20万以上のものである。
【0105】
このようなポリテトラフルオロエチレンの例としては、(株)喜多村よりKTL−620、KTL−450Aとして、ダイキン工業(株)よりルブロンL−5、L−2として、また旭アイシ−アイフロロポリマーズ(株)よりL150J、L169J、L170J、L172Jとして、また三井・デュポンフロロケミカル(株)よりテフロンTLP−10F−1として市販されており容易に入手可能である。
【0106】
D成分の含有量はA成分100重量部に対し、5〜100重量であり、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは5〜35重量部である。含有量が5重量部未満では、音質が低下するとともに、十分な摺動改善効果は得られないため長期使用の場合の音の劣化を招き、他方含有量が100重量部を超えると、混練時にストランド切れやサージングなどが発生しやすくなる。
【0107】
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物は、その他の成分を含むことができる。具体的には例えば、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などのB成分、C成分以外の繊維状充填材、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムおよびシリカなどの非繊維状充填材が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上併用することも可能である。
【0108】
また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で、膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0109】
本発明の樹脂組成物に導電性を付与するために充填材として、導電性フィラーが挙げられる。導電性フィラーは、通常樹脂の導電化に用いられる導電性フィラーであれば特に制限は無く、その具体例としては、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機フィラー、カーボン粉末、黒鉛、炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。金属繊維の金属種の具体例としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、黄銅などが例示できる。かかる金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0110】
金属酸化物の具体例としてはSnO
2(アンチモンドープ)、In
2O
3(アンチモンドープ)、ZnO(アルミニウムドープ)などが例示でき、これらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0111】
導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO
2(アンチモンドープ)、In
2O
3(アンチモンドープ)などが例示できる。また被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、チタン酸系ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0112】
カーボン粉末はその原料、製造法からアセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料、製造法は特に限定されないが、アセチレンブラック、ファーネスブラックが特に好適に用いられる。
【0113】
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物は上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは2軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。
【0114】
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.5mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜4mmである。
【0115】
本発明の樹脂組成物の総塩素含有量は、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。総塩素含有量が500ppmを超える場合には、発生ガス量が増加しウエルド強度が低下する場合がある。
【0116】
本発明の樹脂組成物の総ナトリウム含有量は、好ましくは39ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、最も好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスが増加しウエルド強度が低下するだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性を低下させる場合がある。
【0117】
(成形品について)
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出し成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また押出成形では、各種異形押出成形品、シート、フィルム等が得られる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により成形品とすることも可能である。
【0118】
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0119】
[実施例1〜14、比較例1−6]
表1および表2記載の各成分を表記載の配合割合で、径30mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30XSST)を使用しスクリュー根元の第1投入口からA成分、C成分およびD成分を計量器((株)クボタ製CWF)上に設けられた攪拌羽根式の供給機から供給した。一方、B成分は同じく計量器上に設けられた振動式の供給機を用いて所定の割合となるようサイドフィーダーに供給し、かかるフィーダーを通して押出機へ供給した。シリンダおよびダイス共に温度320℃にて押出を行い、スクリュー回転数250rpm、吐出量16kg/時、ベント吸引は6kPaにて行い、ストランドを製造し、次いでペレタイザーでペレット化した。
【0120】
(音の評価)
上記方法で作成したペレットを130℃で6時間乾燥した後、射出成形機[FANUC(株)製T−150D]により成形温度320℃、金型温度145℃、射出圧30MPaでJIS K7218に記載された中空円筒試験片を成形した。該樹脂製中空円筒試験片には摺動面にピッチ2mm、高さ0.35mmの凹凸を設けた。次に、樹脂製中空円筒試験片と同サイズのSUS304製中空円筒試験片の摺動面に穴をあけSUS304製の打撃ピン(先端r=1mm)を取付け、
図13に示すように、打撃ピンが樹脂製中空試験片の凹凸が設けられた摺動面に接するように設置した後、荷重を200Nかけ、速度320m/hで中空円筒試験片の摺動面の凹凸を打撃ピンではじいたときの音を評価した。
【0121】
評価は10人の審査員が各々10点満点で採点をし、金属調の音がよく響いたものを10点満点とし、金属調の音がするが響きが若干悪いものを8点、金属調の音が響かないものを6点、プラスチック調の音がするものを4点、プラスチック調の音が響かないものを2点、音が鳴らないものを0点とし、それぞれの中間点を含めて11段階で採点し、10人の平均を算出した。なお、音の評価は9点以上であることが好ましい。評価は、初期、および上記の試験を連続で50時間にわたって行った後に行った。
【0122】
(成形性の評価)
射出成型機(日精(株)製P 40T)によりシリンダー温度300℃、金型温度130℃、射出圧30MPaにて外径35mm、内径25mm、厚み1.3mmのリングを4点ピンゲート2個取りで成形した。該成形においてスプルーがとられない最短の成形サイクルを測定した。
評価結果を表1および表2に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
(A成分)
PPS 1:INITZ製PPS樹脂 ECOTRAN N060
PPS 2:DIC社製 MA−510
(B成分)
GF 1:セントラルグラスファイバー(株)製 ECS03‐630 3mmカット 繊維径9μm
GF 2:日本電気硝子(株)製 T−732H 3mmカット 繊維径10.5μm
GF 3:日東紡(株)製 3PE−944 3mmカット 繊維径13μm
GF 4:日本電気硝子(株)製 T−790DE 3mmカット 繊維径6μm
(C成分)
AF 1:帝人(株)製 テクノーラT322EH 1−12 繊維長1mm
AF 2:帝人(株)製 テクノーラT322EH 3−12 繊維長3mm
AF 3:帝人(株)製 コーネックスB 2.2×1 繊維長1mm
(D成分)
PTFE 1:(株)喜多村製 KTL−620
PTFE 2:ダイキン工業(株)製 ルブロンL−5
【0126】
表1および2から理解されるように、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)中に、ガラス繊維(B成分)、アラミド繊維(C成分)、およびフッ素樹脂(D成分)を含有している樹脂組成物からなる実施例の試験片は、初期及び50時間後の音がいずれも良好であり、劣化も小さく、音の劣化が0.5以下であった。また、実施例で用いた樹脂組成物は、成型性が良好であった。
【0127】
これに対して、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)中に、アラミド繊維(C成分)、およびフッ素樹脂(D成分)を含有しているが、ガラス繊維(B成分)を含有していない樹脂組成物からなる比較例2の試験片は、初期及び50時間後のいずれにおいても、音が不良であった。
【0128】
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)中に、ガラス繊維(B成分)、およびフッ素樹脂(D成分)を含有しているが、アラミド繊維(C成分)を含有していない樹脂組成物からなる比較例1の試験片、ならびにポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)中に、ガラス繊維(B成分)、およびアラミド繊維(C成分)を含有しているが、フッ素樹脂(D成分)を含有していない樹脂組成物からなる比較例3の試験片は、実施例の試験片に比べると劣るものの、初期の音が比較的良好であったが、50時間後の音の劣化が大きく、音の劣化が1.6以上であった。