特許第6879856号(P6879856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6879856ガス容器の固定具及びガス容器の固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879856
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】ガス容器の固定具及びガス容器の固定方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/08 20060101AFI20210524BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F17C13/08 301A
   G21D1/00 T
   G21D1/00 G
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-147059(P2017-147059)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-27506(P2019-27506A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 満
(72)【発明者】
【氏名】上田 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】網野 允則
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−157428(JP,U)
【文献】 特開平09−040078(JP,A)
【文献】 実開昭54−060722(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
G21D 1/00− 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に対して固定される剛性部材であって、表面において、ガス容器の外周部に接触する架台部と、
前記ガス容器を隔てて前記架台部の表面に対向して設けられる剛性部材であって、一方の表面において、前記架台部の表面が接触する側と反対側の前記ガス容器の外周部に接触する接触部を有し、前記一方の表面と反対側の他方の表面から一方の表面まで貫通する穴部が形成される押さえ部と、
前記穴部に挿入されて、前記押さえ部の他方の表面から前記穴部を通って前記架台部の表面まで延在して設けられ、前記押さえ部の他方の表面を前記架台部に向けて押し付けた状態で、前記押さえ部を前記架台部に固定することで、前記架台部と前記押さえ部とで前記ガス容器を挟持させる軸状の固定部と、
を有し、
前記架台部及び前記押さえ部は、想定される最大震度の地震動が入力された場合でも、変形しない剛性を有する、
ガス容器の固定具。
【請求項2】
前記架台部及び前記押さえ部は、所定方向に並んだ複数のガス容器を挟持し、
前記固定部は、複数の前記ガス容器の間に設けられる、請求項1に記載のガス容器の固定具。
【請求項3】
前記架台部は、前記表面に設けられた凹形状の架台凹部に前記ガス容器の外周部をはめ込み、前記押さえ部は、前記一方の表面に設けられた凹形状の押さえ凹部である前記接触部に前記ガス容器の外周部をはめ込む、請求項1又は請求項2に記載のガス容器の固定具。
【請求項4】
前記押さえ部の前記他方の表面が、平面状である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス容器の固定具。
【請求項5】
前記押さえ部は、前記ガス容器の長軸方向に沿って複数設けられる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス容器の固定具。
【請求項6】
前記固定部は、ボルトである、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガス容器の固定具。
【請求項7】
前記固定具は、原子力発電プラント内に設けられる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガス容器の固定具。
【請求項8】
設置面に対して固定される剛性部材である架台部の表面に、ガス容器の外周部を接触させる架台部取付ステップと、
剛性部材であり、一方の表面に接触部を有し、前記一方の表面から前記一方の表面と反対側の他方の表面から一方の表面まで貫通する穴部が形成される押さえ部を前記ガス容器を隔てて前記架台部の表面に対向して設け、前記押さえ部の前記接触部に、前記架台部の表面が接触する側と反対側の前記ガス容器の外周部を接触させる押さえ部取付ステップと、
前記押さえ部の他方の表面を前記架台部に向けて押し付けた状態で、前記押さえ部を前記架台部に固定して前記架台部と前記押さえ部とで前記ガス容器を挟持させるように、軸状の固定部を、前記押さえ部の他方の表面から前記穴部を通って前記架台部の表面まで延在するように前記穴部に挿入して取り付ける固定部取付ステップと、
を有し、
前記架台部及び前記押さえ部は、想定される最大震度の地震動が入力された場合でも、変形しない剛性を有する、
ガス容器の固定方法。
【請求項9】
接地面に対して垂直に固定されている架台部へガス容器を立て掛けて固定する方法であって、
平面に前記ガス容器の外周部に沿った形状の凹部を長さ方向に複数有する平板状の架台取付部を、
前記架台取付部の前記長さ方向を水平方向にして、前記架台部の垂直方向に複数取付け、
各前記架台取付部の前記凹部が垂直方向に並ぶようにして前記架台部に固定し、
前記ガス容器を立て掛けて垂直方向に並ぶ前記凹部にはめ込んで接地面に設置し、
平面に前記ガス容器の外周部に沿った形状の凹部を前記架台取付部の前記凹部と同間隔で長さ方向に複数有する平板状の押え部を、
前記押え部の前記長さ方向を水平方向にして、
前記架台取付部の凹部と前記押え部の凹部とが対向する位置で前記ガス容器にはめ込み、
固定部により前記架台取付部と前記押え部とを水平方向に締付けて前記ガス容器を挟持する、
ことを特徴とするガス容器の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス容器の固定具及びガス容器の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電プラントに要求される耐震性能は益々高くなっている。原子力発電プラントには、例えば電力が使用できない際に弁を作動させるためなどに備えて、ガス容器(ボンベ)が備えられる場合がある。このガス容器には、高圧で圧縮された気体などが封入されており、例えば、この気体を弁に供給することで、弁を作動させる。このガス容器に対しても、耐震性を確保する必要がある。例えば特許文献1には、液化ガス容器をバンド状の固定具で固定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−275898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のようにバンド状の固定具は、耐震性向上のために工夫された形状ではなく、耐震性向上のためには工夫の余地がある。また、耐震性が向上しているかの確認には、ガス容器や固定具のモデルを用いてシミュレーションを実施して強度評価を行う場合がある。このような場合、特許文献1のようなバンド状の固定具は、シミュレーション用のモデルの形状が複雑となり、シミュレーションを容易に実施することが困難となる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、ガス容器の耐震性を向上させ、強度評価のシミュレーションを容易に実施可能なガス容器の固定具及びガス容器の固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るガス容器の固定具は、設置面に対して固定される剛性部材であって、表面において、ガス容器の外周部に接触する架台部と、前記ガス容器を隔てて前記架台部の表面に対向して設けられる剛性部材であって、表面において、前記架台部の表面が接触する側と反対側の前記ガス容器の外周部に接触する押さえ部と、前記架台部の表面から前記押さえ部の表面まで延在して設けられ、前記押さえ部を前記架台部に向けて押し付けた状態で前記架台部に固定することで、前記架台部と前記押さえ部とで前記ガス容器を挟持させる固定部と、を有する。
【0007】
この固定具は、地震動を受けてもガス容器が倒れることを抑制し、ガス容器の耐震性を向上させる。また、固定具は、剛性部材である架台部及び押さえ部を、固定部で固定したものであるため、強度評価の際のモデル構築が容易となり、強度評価のシミュレーションを容易に実施することができる。
【0008】
前記架台部及び前記押さえ部は、所定方向に並んだ複数のガス容器を挟持し、前記固定部は、複数の前記ガス容器の間に設けられることが好ましい。この固定具は、複数のガス容器を固定する際に、固定部をガス容器の間に配置することで、複数のガス容器を適切に固定することができる。
【0009】
前記架台部は、前記表面に設けられた凹形状の架台凹部に前記ガス容器の外周部をはめ込み、前記押さえ部は、前記表面に設けられた凹形状の押さえ凹部に前記ガス容器の外周部をはめ込むことが好ましい。この固定具は、凹形状の架台凹部と押さえ凹部とでガス容器を挟持するため、ガス容器をより適切に固定することができる。
【0010】
前記押さえ部は、前記ガス容器に接触する表面とは反対側の表面が、平面状であることが好ましい。この固定具は、平面状となっているため、固定部で架台部に対して適切に固定することが可能となり、ガス容器をより適切に固定することができる。
【0011】
前記押さえ部は、前記ガス容器の長軸方向に沿って複数設けられることが好ましい。この固定具は、押さえ部を複数備えるため、ガス容器をより適切に固定することができる。
【0012】
前記固定部は、ボルトであることが好ましい。この固定具は、ボルトで押さえ部と架台部とを固定するため、ガス容器をより適切に固定することができる。
【0013】
前記固定具は、原子力発電プラント内に設けられることが好ましい。この固定具は、原子力発電プラント内でガス容器を適切に固定することができる。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るガス容器の固定方法は、設置面に対して固定される剛性部材である架台部の表面に、ガス容器の外周部を接触させる架台部取付ステップと、剛性部材である押さえ部を前記ガス容器を隔てて前記架台部の表面に対向して設け、前記押さえ部の表面に、前記架台部の表面が接触する側と反対側の前記ガス容器の外周部を接触させる押さえ部取付ステップと、前記押さえ部を前記架台部に向けて押し付けた状態で前記架台部に固定して前記架台部と前記押さえ部とで前記ガス容器を挟持させるように、前記架台部の表面から前記押さえ部の表面まで延在するように固定部を取り付ける固定部取付ステップと、を有する。この固定方法によると、ガス容器の耐震性を向上させ、強度評価のシミュレーションを容易に実施することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガス容器の耐震性を向上させ、強度評価のシミュレーションを容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る原子力発電プラントの一例を模式的に示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る固定具を説明するための模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る固定具を説明するための模式図である。
図4図4は、本実施形態に係る固定具を説明するための模式図である。
図5図5は、本実施形態に係る固定具によるガス容器の固定工程を説明するフローチャートである。
図6図6は、架台凹部及び押さえ凹部の別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0018】
図1は、本実施形態に係る原子力発電プラントの一例を模式的に示す図である。図1に示すように、原子力発電プラント1は、原子炉建屋2と、原子炉建屋2に格納される原子炉格納容器10と、原子炉格納容器10に格納される原子炉5を含む一次冷却系3と、一次冷却系3と熱交換する二次冷却系4とを備える。
【0019】
一次冷却系3は、原子炉5と、冷却水配管を介して原子炉5と接続される蒸気発生器7と、加圧器8とを有する。二次冷却系4は、蒸気発生器7と接続されたタービン22と、タービン22と接続された復水器23とを有する。タービン22に発電機25が接続される。また、二次冷却系4に空気冷却器30が接続される。
【0020】
また、図1には示されていないが、原子力発電プラント1には、種々のタンク、熱交換器、冷却器、及び使用済燃料ピット脱塩塔のような様々な補機類が設けられる。これら補機類は、容器及び容器を支持する支持脚を有する。さらに、図1には示されていないが、原子力発電プラント1には、ガス容器Aが設けられている。ガス容器Aは、内部に高圧で圧縮された気体が封入されているボンベである。ガス容器Aは、例えば、原子力発電プラント1において停電など電力が使用できない場合に、内部に封入された気体により、原子力発電プラント1の設備に設けられた弁を作動させる。ただし、ガス容器Aは、内部の気体をこのように使用することに限られず、任意の用途に使用してよい。また、ガス容器Aは、高圧で液状化した液体が封入されていてもよい。この液体は、大気圧では気体状であり、ガス容器A内では圧縮されて液体状になる物質である。
【0021】
ガス容器Aは、原子力発電プラント1内、さらに詳しくは原子力建屋2内において、固定具40によって固定された状態で配置されている。ガス容器Aは、固定具40によって固定されることで、耐震性が向上し、例えば地震が発生した場合でも、倒れたりすることが抑制される。以下、固定具40について説明する。
【0022】
図2から図4は、本実施形態に係る固定具を説明するための模式図である。図2は、固定具40の正面図であり、図3は、固定具40の上面図であり、図4は、固定具40の側面図である。図2に示すように、固定具40は、架台部42と、押さえ部44と、固定部46とを有する。固定具40は、原子炉建屋2内に設けられ、原子炉建屋2内に設けられたガス容器Aを固定する。ただし、固定具40及びガス容器Aは、原子力発電プラント1内に設けられていればよく、原子炉建屋2の外側、例えば屋外に設けられていてもよい。以下、原子炉建屋2の設置面Gに平行な方向を、方向Xとする。そして、方向Xのうち一方の方向を方向X1とし、方向Xのうち他方の方向、すなわち方向X1と反対方向を、方向X2とする。また、原子炉建屋2の設置面Gに平行な方向であって方向Xに直交する方向を、方向Yとする。そして、方向Yのうち一方の方向を方向Y1とし、方向Yのうち他方の方向、すなわち方向Y1と反対方向を、方向Y2とする。また、方向X及び方向Yに直交する方向、すなわち鉛直方向を、方向Zとする。そして、方向Zのうち一方の方向であって鉛直方向上方に向かう方向を、方向Z1とする。また、方向Zのうち他方の方向であって鉛直方向下方に向かう方向を、方向Z2とする。
【0023】
図2及び図3に示すように、ガス容器Aは、円筒状の容器(ボンベ)であり、外周部Abが、円形となっている。長軸方向(円筒の軸方向)の先端に、接続部Aaを有している。接続部Aaは、開閉可能な弁を有している。ガス容器Aは、接続部Aaの弁を開くことで、内部の気体を外部に放出し、弁を閉じることで、気体を内部に密封する。また、ガス容器Aは、長軸方向が方向Zに沿うように、すなわち先端の接続部Aaが方向Z1側に位置するように、固定具40に取付けられている。本実施形態では、ガス容器Aは、方向Xに沿って、固定具40に3つ取付けられている。固定具40は、複数のガス容器Aを固定することが好ましいが、固定具40が固定するガス容器Aの数は任意であり、1つであってもよい。
【0024】
次に、架台部42について説明する。図2に示すように、架台部42は、原子炉建屋2の設置面G上に設けられ、設置面Gに対して固定されている。設置面Gは、架台部42が設置されている原子炉建屋2の床面である。ただし、上述のように、固定具40は、原子炉建屋2の外であって原子力発電プラント1内に設けられていればよい。従って、設置面Gは、原子炉建屋2の床面であることに限られず、原子力発電プラント1内の、架台42が固定される設置面であればよい。架台部42は、架台本体部50と、架台取付部52とを有する。架台本体部50は、架台部42の本体部分であり、設置面Gに対して固定されている。
【0025】
架台取付部52は、剛性が高い剛性部材であり、例えば炭素鋼製の部材である。架台取付部52は、例えば想定される最大震度の地震動が入力された場合でも、変形しない程度の剛性を有している。具体的には、架台取付部52は、ガス容器Aと同等の強度を有している部材であることが好ましい。
【0026】
図2及び図3に示すように、架台取付部52は、架台本体部50の方向Y2側の表面に、架台本体部50に固定された状態で設けられている。架台取付部52は、架台本体部50に対して固定されているため、設置面Gに対して固定されているということができる。架台取付部52は、架台本体部50の方向Y2側の表面から方向Y2側に突出しており、方向Xに沿って延在する板状の部材である。架台取付部52の表面70は、後述する架台凹部72以外の領域において、方向Xに沿って、すなわち外周部Abに対する接線方向に沿って、平面状に延在している。表面70は、架台取付部52の架台本体部50と反対側(方向Y2側)の表面である。また、架台取付部52は、方向Zに沿って2つ設けられている。ただし、架台取付部52の数は任意であり、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0027】
また、図3に示すように、架台取付部52は、ガス容器Aを挟持している状態において、表面70が、ガス容器Aの外周部Ab1に接触している。外周部Ab1は、ガス容器Aの外周部Abの一部の箇所であり、外周部Abの方向Y1側の箇所である。より詳しくは、架台取付部52は、表面70に、架台凹部72が設けられている。架台凹部72は、表面70に設けられた凹形状の溝である。架台凹部72は、方向Zから見た場合に円弧状となっており、ガス容器Aの外周部Ab1に沿った形状となっている。言い換えれば、架台凹部72は、円弧状の溝が方向Zに沿って延在した形状となっている。架台取付部52は、この架台凹部72にガス容器Aの外周部Ab1がはめ込まれることで、架台凹部72が外周部Ab1に接触している。架台凹部72は、方向Xに沿って複数(ここでは3つ)設けられているが、ガス容器Aの取付け数に応じて任意に設けてよく、その数は任意である。
【0028】
また、図3に示すように、架台取付部52は、内部に、後述する固定部46が取り付けられている。架台取付部52は、方向Xに沿って隣接する架台凹部72(ガス容器A)同士の間の位置に、すなわち2つの架台凹部72(ガス容器A)の間に、固定部46が取り付けられている。本実施形態では、架台凹部72(ガス容器A)は3つ設けられているため、固定部46は、方向Xに沿って2つ設けられている。
【0029】
次に、押さえ部44について説明する。押さえ部44は、剛性が高い板状の剛性部材であり、例えば炭素鋼製の部材である。押さえ部44は、例えば想定される最大震度の地震動が入力された場合でも、変形しない程度の剛性を有している。具体的には、押さえ部44は、ガス容器Aと同等の強度を有している部材であることが好ましい。
【0030】
図2及び図3に示すように、押さえ部44は、ガス容器Aを隔てて架台取付部52の表面70に対向して設けられている。押さえ部44は、ガス容器Aの方向Y2側に設けられている。押さえ部44は、板状の部材であり、ガス容器Aを挟持している状態において、方向Xに沿って延在している。すなわち、押さえ部44は、ガス容器Aを挟持している状態において、ガス容器Aの外周部Abに沿っておらず、外周部Abに対する接線方向に沿って延在している。さらに言えば、押さえ部44は、方向Y1側の表面80と、表面80の反対側の表面82(方向Y2側の表面82)とを有している。押さえ部44の表面80は、後述する押さえ凹部84及び穴部86以外の領域において、方向Xに沿って、すなわち外周部Abに対する接線方向に沿って、平面状に延在している。また、表面82は、後述する穴部86以外の領域において、方向Xに沿って、すなわち外周部Abに対する接線方向に沿って、平面状に延在している。
【0031】
押さえ部44は、表面80において、ガス容器Aの外周部Ab2に接触している。外周部Ab2は、ガス容器Aの外周部Abの一部の箇所であり、外周部Ab1と反対側の箇所である。外周部Ab2は、外周部Abの方向Y2側の箇所である。より詳しくは、押さえ部44は、表面80に、押さえ凹部84が設けられている。押さえ凹部84は、表面80に設けられた凹形状の溝である。押さえ凹部84は、方向Zから見た場合に円弧状となっており、ガス容器Aの外周部Ab2に沿った形状となっている。言い換えれば、押さえ凹部84は、円弧状の溝が方向Zに沿って延在した形状となっている。押さえ部44は、この押さえ凹部84にガス容器Aの外周部Ab2がはめ込まれることで、押さえ凹部84が外周部Ab2に接触している。押さえ凹部84は、外周部Ab2に接触した状態において、方向Yから見た場合に架台凹部72に重畳する位置に設けられている。すなわち、押さえ凹部84は、外周部Ab2に接触した状態おいて、方向X及び方向Zに沿った位置が、架台凹部72と一致している。押さえ凹部84は、架台凹部72と同様に、方向Xに沿って複数(ここでは3つ)設けられているが、ガス容器Aの取付け数に応じて任意に設けてよく、その数は任意である。
【0032】
また、押さえ部44は、穴部86が開口している。穴部86は、表面80から表面82までを貫通する穴である。穴部86は、方向Xに沿って隣接する押さえ凹部84(ガス容器A)同士の間の位置に設けられている。すなわち、穴部86は、2つの押さえ凹部84(ガス容器A)の間に設けられている。本実施形態では、押さえ凹部84(ガス容器A)は3つ設けられているため、穴部86は、方向Xに沿って2つ設けられている。
【0033】
図2に示すように、押さえ部44は、方向Zに沿って、複数(ここでは2つ)設けられている。本実施形態では、ガス容器Aは、長軸方向が方向Zに沿うように取り付けられているため、押さえ部44は、ガス容器Aの長軸方向に沿って複数設けられているということができる。
【0034】
以上説明した押さえ部44は、架台取付部52と共にガス容器Aを挟持する。具体的には、架台取付部52の架台凹部72には、ガス容器Aの外周部Ab1がはめ込まれる。本実施形態では、架台取付部52は方向Zに沿って2つ設けられているため、方向Z1側の架台取付部52の架台凹部72には、ガス容器Aの方向Z1側の外周部Ab1がはめ込まれ、方向Z2側の架台取付部52の架台凹部72には、ガス容器Aの方向Z2側の外周部Ab1がはめ込まれる。そして、押さえ凹部84にガス容器Aの外周部Ab2がはめ込まれる。本実施形態では、押さえ部44は方向Zに沿って2つ設けられているため、方向Z1側の押さえ部44の押さえ凹部84には、ガス容器Aの方向Z1側の外周部Ab2がはめ込まれ、方向Z2側の押さえ部44の押さえ凹部84には、ガス容器Aの方向Z2側の外周部Ab2がはめ込まれる。架台取付部52と押さえ部44とは、このようにして、架台凹部72と押さえ凹部84とでガス容器Aを挟持する。これにより、ガス容器Aは、長軸方向が方向Zに沿った状態で、架台凹部72と押さえ凹部84とに挟持される。
【0035】
さらに言えば、架台取付部52は、方向Xに沿って架台凹部72が複数(ここでは3つ)設けられており、押さえ凹部84には、方向Xに沿って押さえ凹部84が複数(ここでは3つ)設けられている。架台取付部52と押さえ部44とは、それぞれの架台凹部72及び押さえ凹部84で1つずつガス容器Aを挟持している。架台取付部52及び押さえ部44で、このようにして、所定方向(ここでは方向X)に沿って並んだ複数(ここでは3つ)のガス容器Aを挟持する。なお、この場合、押さえ部44の端部44aは、複数のガス容器Aのうち最も方向X1側に位置するガス容器Aよりも方向X1側に位置しており、押さえ部44の端部44bは、複数のガス容器Aのうち最も方向X2側に位置するガス容器Aよりも方向X2側に位置している。端部44aは、押さえ部44の方向X1側の端部であり、端部44bは、押さえ部44の方向X2側の端部である。従って、押さえ部44は、複数のガス容器Aのうち最も方向X1側に位置するガス容器Aから、複数のガス容器Aのうち最も方向X2側に位置するガス容器Aまでにわたって延在しているということができる。同様に、架台取付部52も、複数のガス容器Aのうち最も方向X1側に位置するガス容器Aから、複数のガス容器Aのうち最も方向X2側に位置するガス容器Aまでにわたって延在している。
【0036】
次に、固定部46について説明する。図3に示すように、固定部46は、架台取付部52の表面70から押さえ部44の表面80にわたって延在して設けられる。固定部46は、剛性が高い軸状の剛性部材であり、例えば炭素鋼製の部材である。固定部46は、例えば想定される最大震度の地震動が入力された場合でも、変形しない程度の剛性を有している。具体的には、固定部46は、ガス容器Aと同等の強度を有している部材であることが好ましい。
【0037】
固定部46は、押さえ部44を架台取付部52(架台部42)に向けて押し付けた状態で、押さえ部44を架台取付部52(架台部42)に固定する。これにより、固定部46は、架台取付部52(架台部42)と押さえ部44とでガス容器Aを挟持させる。より詳しくは、本実施形態において、固定部46は、ボルトである。図3に示すように、固定部46は、ナット部90と、軸部92と、ナット部94とを有する。軸部92は、外周におねじが形成された軸状のおねじである。ナット部90、94は、内周に軸部92のおねじと螺合可能なめねじが形成されたナットである。ただし、固定部46は、押さえ部44を架台取付部52(架台部42)に向けて押し付けた状態で、押さえ部44を架台取付部52(架台部42)に固定するものであれば、ボルトに限られず、例えば軸状の圧入部材などであってもよい。
【0038】
図3に示すように、固定部46は、架台取付部52の内部において、軸部92の端部が、ナット部90に螺合されている。ナット部90は、固定部46内の座面に保持されている。また、軸部92は、架台取付部52の内部から、架台取付部52の表面70及び押さえ部44の表面80を経て、押さえ部44の穴部86の内部に挿入されている。軸部92は、穴部86よりも径が小さいため、穴部86を通って表面82側まで貫通している。すなわち、軸部92のナット部90と反対側の端部は、穴部86から押さえ部44の表面82側に突出している。軸部92は、表面82側に突出した端部に、ナット部94がねじ込まれている。固定部46は、このように軸部92がナット部90及びナット部94にねじ込まれることにより、押さえ部44及び架台取付部52に対し、方向Yに沿って互いに近づく軸力を作用させる。すなわち、固定部46は、このねじ込みにより、押さえ部44を架台取付部52に向けて押し付けた状態として、押し付けた状態で押さえ部44を架台取付部52に固定している。架台取付部52及び押さえ部44は、固定部46に固定されることにより、ガス容器Aを挟持した状態で固定する。
【0039】
図2及び図3に示すように、固定部46は、穴部86に対して1つずつ設けられている。従って、本実施形態では、固定部46は、複数(ここでは4つ)設けられている。さらに言えば、固定部46は、方向Xに沿って隣接するガス容器A同士の間の位置に設けられている。すなわち、固定部46は、2つのガス容器Aの間に設けられている。
【0040】
本実施形態に係る固定具40は、以上説明した構成となっている。以下に、固定具40によるガス容器Aの固定工程を説明する。図5は、本実施形態に係る固定具によるガス容器の固定工程を説明するフローチャートである。以下の説明では、作業者が固定具40を用いてガス容器Aを固定しているが、作業者でなく、ロボットなどの装置により、固定具40を用いて自動でガス容器Aの固定が行われてもよい。
【0041】
図5に示すように、ガス容器Aを固定する際には、最初に、架台部42にガス容器Aを取り付ける(ステップS10)。具体的には、作業者は、架台取付部52(架台部42)の表面70に、ガス容器Aの外周部Ab1を接触させることで、架台取付部52にガス容器Aを取り付ける。より詳しくは、作業者は、架台取付部52の架台凹部72に、ガス容器Aの外周部Ab1をはめ込む。なお、架台部42は、ガス容器Aを取り付ける前から、原子炉建屋2の設置面G上に固定されている。
【0042】
ガス容器Aを架台部42に取付けた後、作業者は、押さえ部44をガス容器Aに取付ける(ステップS12)。具体的には、作業者は、押さえ部44を、ガス容器Aを隔てて架台部42の表面70に対向した位置に配置する。そして、作業者は、架台部42に取付けられたガス容器Aの外周部Ab2に押さえ部44の表面80を接触させることで、押さえ部44をガス容器Aに取付ける。さらに詳しくは、作業者は、押さえ部44の押さえ凹部84に、ガス容器Aの外周部Ab2をはめ込む。これにより、架台部42と押さえ部44とは、ガス容器Aを挟んだ状態となる。
【0043】
押さえ部44をガス容器Aに取付けた後、作業者は、固定部46を、押さえ部44及び架台部42に取付ける(ステップS14)。具体的には、作業者は、架台取付部52の内部に固定部46を挿入する。そして、作業者は、軸部92を架台取付部52の表面70側から露出させ、軸部92を押さえ部44の穴部86の内部に挿入する。そして、作業者は、軸部92の端部を穴部86から表面82側に露出させる。そして、作業者は、軸部92の架台部42の内部の箇所を、ナット部90で螺合し、軸部92の表面82側に露出した端部を、ナット部94で螺合する。これにより、作業者は、押さえ部44を架台部42に向けて押し付けた状態とし、押し付けた状態で押さえ部44を架台部42に固定するように、固定部46を押さえ部44及び架台部42に取付けている。また、このように固定部46を取り付けることにより、作業者は、固定部46により、架台部42と押さえ部44とでガス容器Aを挟持させる。また、この場合、固定部46は、架台部42の表面70から押さえ部44の表面80まで延在するように取り付けられている。このステップS14により、ガス容器Aは、押さえ部44及び架台部42に挟持された状態で、固定具40(架台部42)に対して固定される。ステップS14により、本工程は終了する。
【0044】
ガス容器Aは、原子力発電プラント1に設けられる。原子力発電プラント1は、各設備に対する耐震性能を高くすることが求められている。従って、ガス容器Aにも、耐震性を向上させることが求められる。ガス容器Aは、地震により倒れることで、破損などが生じる可能性があるため、耐震性を向上させるには、想定される最大震度の地震動が入力された場合でも、倒れが抑制されることが必要となる。例えばチェーンやバンドなどでガス容器Aが固定されている場合、地震動により緩んでしまい、倒れるおそれがある。本実施形態に係る固定具40は、ガス容器Aを、剛性部材に対して適切に固定することで、地震動によるガス容器Aの倒れを抑制している。
【0045】
すなわち、本実施形態に係る固定具40は、架台部42と押さえ部44と固定部46とを有している。架台部42は、設置面Gに対して固定される剛性部材であって、表面70において、ガス容器Aの外周部Ab1に接触する。押さえ部44は、ガス容器Aを隔てて架台部42の表面70に対向して設けられる剛性部材であって、表面80において、ガス容器の外周部Ab2に接触する。固定部46は、架台部42の表面70から押さえ部44の表面80まで延在して設けられる。固定部46は、押さえ部44を架台部42に向けて押し付けた状態で架台部42に固定することで、架台部42と押さえ部44とでガス容器Aを挟持させる。
【0046】
この固定具40は、設置面Gに対して固定された剛性部材である架台部42と、剛性部材である押さえ部44とで、ガス容器Aを挟み込んでいる。そして、固定具40は、ガス容器Aを挟み込んだ状態で押さえ部44を架台部42に対して押し付けた状態で固定する。このように、この固定具40は、剛性部材である押さえ部44で、設置面Gに固定された架台部42に対して、ガス容器Aを押し付けるように固定する。従って、固定具40は、地震動を受けてもガス容器Aが倒れることを抑制し、ガス容器Aの耐震性を向上させる。また、固定具40は、ガス容器Aを剛性部材で挟持した状態で固定しているため、緩みが抑制され、ガス容器Aの耐震性をより好適に向上させる。また、固定具40は、剛性部材である架台部42及び押さえ部44を、固定部46で固定したものであるため、強度評価の際のモデル構築が容易となり、強度評価のシミュレーションを容易に実施することができる。
【0047】
また、架台部42及び押さえ部44は、所定方向(方向X)に並んだ複数のガス容器Aを挟持し、固定部46は、複数のガス容器Aの間に設けられる。この固定具40は、複数のガス容器Aを固定する際に、固定部46をガス容器Aの間に配置することで、複数のガス容器Aを適切に固定することができる。
【0048】
架台部42は、表面70に設けられた凹形状の架台凹部72にガス容器Aの外周部Ab1をはめ込む。また、押さえ部44は、表面80に設けられた凹形状の押さえ凹部84にガス容器Aの外周部Ab2をはめ込む。この固定具40は、凹形状の架台凹部72と押さえ凹部84とでガス容器Aを挟持するため、ガス容器Aをより適切に固定することができる。
【0049】
図6は、架台凹部及び押さえ凹部の別の例を示す模式図である。本実施形態では、架台凹部72及び押さえ凹部84の凹形状の表面は、上述の剛性部材であり別部材が設けられていないが、図6に示すように、別部材を設けてもよい。具体的には、図6に示すように、架台凹部72の凹形状の表面に、表面部材96を設けてもよい。表面部材96は、架台凹部72と反対側の表面が、ガス容器Aの外周部Abに沿った凹形状(円弧状)となっており、この表面でガス容器Aの外周部Abに接触する。この表面部材96は、高摩擦部材である。より詳しくは、表面部材96は、ガス容器Aの外周部Abに対する摩擦係数が、架台取付部52の剛性部材の、ガス容器Aの外周部Abに対する摩擦係数よりも高くなっている。表面部材96は、例えばゴムなどの樹脂製である。また、図6に示すように、押さえ凹部84の凹形状の表面に、表面部材98を設けてもよい。表面部材98は、押さえ凹部84と反対側の表面が、ガス容器Aの外周部Abに沿った凹形状(円弧状)となっており、この表面でガス容器Aの外周部Abに接触する。表面部材98は、表面部材96と同様の高摩擦部材であり、ガス容器Aの外周部Abに対する摩擦係数が、押さえ部44の剛性部材の、ガス容器Aの外周部Abに対する摩擦係数よりも高くなっている。
【0050】
また、押さえ部44は、ガス容器Aに接触する表面80とは反対側の表面82が、平面状である。この押さえ部44は、平面状となっているため、固定部46で架台部42に対して適切に固定することが可能となり、ガス容器Aをより適切に固定することができる。
【0051】
また、押さえ部44は、ガス容器Aの長軸方向(方向Z)に沿って複数設けられる。この固定具40は、押さえ部44を方向Zに沿って複数備えるため、ガス容器Aをより適切に固定することができる。
【0052】
また、固定部46は、ボルトである。この固定具40は、ボルトで押さえ部44と架台部42とを固定するため、ガス容器Aをより適切に固定することができる。
【0053】
また、固定具40は、原子力発電プラント1内に設けられる。固定具40は、原子力発電プラント1内でガス容器Aを適切に固定することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 原子力発電プラント
2 原子炉建屋
40 固定具
42 架台部
44 押さえ部
46 固定部
52 架台取付部
70、80、82 表面
72 架台凹部
84 押さえ凹部
A ガス容器
Ab、Ab1、Ab2 外周部
G 設置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6