特許第6879919号(P6879919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6879919固体撮像素子、電子機器、及び、固体撮像素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879919
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】固体撮像素子、電子機器、及び、固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20210524BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20210524BHJP
   H04N 5/374 20110101ALI20210524BHJP
【FI】
   H01L27/146 A
   H01L31/10 A
   H04N5/374
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-539836(P2017-539836)
(86)(22)【出願日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2016075936
(87)【国際公開番号】WO2017047422
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-184538(P2015-184538)
(32)【優先日】2015年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 晋
(72)【発明者】
【氏名】寄門 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】戸田 淳
【審査官】 田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−157665(JP,A)
【文献】 特表2008−527702(JP,A)
【文献】 特開2011−166394(JP,A)
【文献】 特開2011−129637(JP,A)
【文献】 特開平04−291968(JP,A)
【文献】 特開平08−288524(JP,A)
【文献】 特開2011−035204(JP,A)
【文献】 特開2009−088430(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/080769(WO,A1)
【文献】 特開2013−229606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/10
H04N 5/374
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードと、
前記半導体基板の面に形成され、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜と
を備える固体撮像素子。
【請求項2】
前記膜と前記半導体基板との間に形成されている絶縁膜を
さらに備える請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記膜は、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、又は、ランタノイドの酸化膜若しくは窒化膜、又は、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、又は、ランタノイドの酸化物と窒化物の混晶系の膜からなる
請求項1又は2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記膜は固定電荷を有する
請求項1乃至3のいずれかに記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記膜は、前記第1の領域の近傍と前記第2の領域の近傍とで固定電荷が異なる
請求項4に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記膜は、前記第1の領域が矩形の筒状である場合、前記第1の領域の角周辺を少なくとも覆うように形成される
請求項1乃至5のいずれかに記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記第1の領域が筒状であり、
前記半導体基板の一方の面側において、前記第1の領域の上面又は底面に沿って形成され、1つ以上の不連続部を有する電極をさらに備え、
前記膜は、前記半導体基板と前記電極との間において、少なくとも前記電極の不連続部周辺を覆うように形成される
請求項1乃至6のいずれかに記載の固体撮像素子。
【請求項8】
1画素内に、前記アバランシェフォトダイオードの構造が2以上繰り返し形成されている
請求項1乃至7のいずれかに記載の固体撮像素子。
【請求項9】
それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードが形成される前記半導体基板の面に、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜を形成する工程を
含む固体撮像素子の製造方法。
【請求項10】
固体撮像素子と、
前記固体撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部と
を備え、
前記固体撮像素子は、
それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードと、
前記半導体基板の面に形成され、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜と
を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、固体撮像素子、電子機器、及び、固体撮像素子の製造方法に関し、特に、アバランシェ増倍を利用した固体撮像素子、電子機器、及び、固体撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子の小型化や高精細化を実現するために、画素サイズの縮小化が進んでいる。しかし、画像サイズを縮小すると、受光素子であるフォトダイオードの受光面積だけでなく、光電変換を行う領域の体積も小さくなるため、受光効率が低下してしまう。
【0003】
一方、暗所の撮影や微量な放射線検出など、入射光の少ない状態でも高画質の画像を撮影できるように、固体撮像素子の高感度化が要望されている。
【0004】
これに対して、小型化と高感度化を両立するため、アバランシェ増倍を利用したアバランシェフォトダイオードを用いた固体撮像素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−157665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガイガーモードで駆動されるアバランシェフォトダイオードでは、ダイオードの降伏電圧近傍のバイアス電圧を印加しておくことで、単一光子に対して感度を有するようになる。そのため、ダイオードの降伏電圧は重要なパラメータとなる。
【0007】
一方、アバランシェフォトダイオードでは、pn接合の端部で電界強度の曲率が高くなり、降伏電圧が低下する。これは、エッジ効果やフリンジ効果と呼ばれる現象である。例えば、特許文献1に記載の発明では、アバランシェフォトダイオードが形成されている半導体基板の表面にpn接合の端部が存在する。その結果、半導体基板の表面において不純物の外向拡散やパイルアップを生じやすくなり、降伏電圧が低下する。
【0008】
そして、例えば、降伏電圧が低下した領域に合わせてバイアス電圧を印加するようにすると、その他の領域において、降伏電圧より低い電圧しか印加されなくなる。その結果、アバランシェフォトダイオードの受光感度が低下する。
【0009】
これに対して、従来、低濃度領域を設けて不純物濃度勾配を緩和するなどの対策が提案されている。しかし、半導体基板の表面付近に低濃度領域を形成すると、短波長の入射光に対する受光感度が低下する。
【0010】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、アバランシェフォトダイオードの受光感度の低下を防止するようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術の第1の側面の固体撮像素子は、それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードと、前記半導体基板の面に形成され、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜とを備える。
【0012】
前記膜と前記半導体基板との間に形成されている絶縁膜をさらに設けることができる。
【0013】
前記膜を、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、又は、ランタノイドの酸化膜若しくは窒化膜、又は、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、又は、ランタノイドの酸化物と窒化物の混晶系の膜とすることができる。
【0014】
前記膜を、固定電荷を有するようにすることができる。
【0015】
前記膜を、前記第1の領域の近傍と前記第2の領域の近傍とで固定電荷が異なるようにすることができる。
【0016】
前記膜を、前記第1の領域が矩形の筒状である場合、前記第1の領域の角周辺を少なくとも覆うように形成することができる。
【0017】
前記第1の領域と筒状でし、前記半導体基板の一方の面側において、前記第1の領域の上面又は底面に沿って形成され、1つ以上の不連続部を有する電極をさらに設け、前記膜を、前記半導体基板と前記電極との間において、少なくとも前記電極の不連続部周辺を覆うように形成することができる。
【0018】
1画素内に、前記アバランシェフォトダイオードの構造を2以上繰り返し形成するようにすることができる。
【0019】
本技術の第2の側面の固体撮像素子の製造方法は、それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードが形成される前記半導体基板の面に、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜を形成する工程を含む。
【0020】
本技術の第3の側面の電子機器は、固体撮像素子と、前記固体撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部とを備え、前記固体撮像素子は、それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードと、前記半導体基板の面に形成され、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜とを備える。
【0021】
本技術の第1又は第3の側面においては、半導体基板の面に形成された金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜により、アバランシェフォトダイオードの降伏電圧の変動や暗電流の発生が抑制される。
【0022】
本技術の第2の側面においては、それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードが形成される前記半導体基板の面に、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜が形成される。
【発明の効果】
【0023】
本技術の第1乃至第3の側面によれば、アバランシェフォトダイオードの受光感度の低下を防止することができる。
【0024】
なお、本明細書に記載された効果は、あくまで例示であり、本技術の効果は、本明細書に記載された効果に限定されるものではなく、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本技術を適用したCMOSイメージセンサの概略構成例を示すブロック図である。
図2】CMOSイメージセンサの第1の実施の形態を示す断面図である。
図3】アバランシェフォトダイオードの平面パターンの例を示す図である。
図4】固定電荷膜を設けない場合のアバランシェフォトダイオードの電界の分布を模式的に示す図である。
図5】固定電荷膜を設けた場合のアバランシェフォトダイオードの電界の分布を模式的に示す図である。
図6】CMOSイメージセンサの第2の実施の形態を示す断面図である。
図7】CMOSイメージセンサの第3の実施の形態を示す断面図である。
図8図7のCMOSイメージセンサの固定電荷膜の製造方法を説明するための図である。
図9図7のCMOSイメージセンサの固定電荷膜の製造方法を説明するための図である。
図10】アバランシェフォトダイオードの平面パターンの第1の変形例を示す図である。
図11図10のアバランシェフォトダイオードに対して固定電荷膜を配置する領域の例を示す図である。
図12】アバランシェフォトダイオードの平面パターンの第2の変形例を示す図である。
図13図12のアバランシェフォトダイオードに対して固定電荷膜を配置する領域の例を示す図である。
図14】固体撮像素子の使用例を示す図である。
図15】本技術を適用した電子機器の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本技術を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.本技術が適用される固体撮像素子
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態(絶縁膜を設けた例)
4.第3の実施の形態(固定電荷が異なる固定電荷膜を設けた例)
5.変形例
6.固体撮像素子の使用例
【0027】
<1.本技術が適用される固体撮像素子>
{基本的なシステム構成}
図1は、本技術が適用される固体撮像素子、例えばX−Yアドレス方式固体撮像素子の一種であるCMOSイメージセンサの構成の概略を示すシステム構成図である。ここで、CMOSイメージセンサとは、CMOSプロセスを応用して、または、部分的に使用して作成されたイメージセンサである。
【0028】
本適用例に係るCMOSイメージセンサ10は、半導体基板107(図2)上に形成された画素アレイ部11と、当該画素アレイ部11と同じ半導体基板107上に集積された周辺回路部とを有する構成となっている。周辺回路部は、例えば、垂直駆動部12、カラム処理部13、水平駆動部14及びシステム制御部15から構成されている。
【0029】
CMOSイメージセンサ10は更に、信号処理部18及びデータ格納部19を備えている。信号処理部18及びデータ格納部19については、本CMOSイメージセンサ10と同じ基板上に搭載しても構わないし、本CMOSイメージセンサ10とは別の基板上に配置するようにしても構わない。また、信号処理部18及びデータ格納部19の各処理については、本CMOSイメージセンサ10とは別の基板に設けられる外部信号処理部、例えば、DSP(Digital Signal Processor)回路やソフトウェアによる処理でも構わない。
【0030】
画素アレイ部11は、複数の単位画素(以下、単に「画素」と記述する場合もある)が行方向及び列方向に配置された構成となっている。ここで、行方向とは画素行の画素の配列方向(すなわち、水平方向)を言い、列方向とは画素列の画素の配列方向(すなわち、垂直方向)を言う。
【0031】
単位画素は、受光した光量に応じた電荷を生成しかつ蓄積する光電変換部(例えば、フォトダイオード)、及び、複数の画素トランジスタ(いわゆるMOSトランジスタ)を有する。複数の画素トランジスタは、例えば、転送トランジスタ、リセットトランジスタ、および増幅トランジスタの3つのトランジスタで構成することができる。或いは、複数の画素トランジスタは、さらに選択トランジスタを追加して4つのトランジスタで構成することもできる。なお、各画素の等価回路は一般的なものと同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0032】
また、単位画素は、共有画素構造とすることもできる。共有画素構造は、複数の光電変換部、複数の転送トランジスタ、共有される1つのフローティングディフュージョン、および共有される1つずつの他の画素トランジスタから構成される。
【0033】
画素アレイ部11において、画素行ごとに行信号線としての画素駆動線16が行方向に沿って配線され、画素列ごとに列信号線としての垂直信号線17が列方向に沿って配線されている。画素駆動線16は、画素から信号を読み出す際の駆動を行うための駆動信号を伝送する。図1では、画素駆動線16について1本の配線として示しているが、1本に限られるものではない。画素駆動線16の一端は、垂直駆動部12の各行に対応した出力端に接続されている。
【0034】
垂直駆動部12は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどによって構成され、画素アレイ部11の各画素を全画素同時あるいは行単位等で駆動する。すなわち、垂直駆動部12は、当該垂直駆動部12を制御するシステム制御部15と共に、画素アレイ部11の各画素の動作を制御する駆動部を構成している。この垂直駆動部12はその具体的な構成については図示を省略するが、一般的に、読出し走査系と掃出し走査系の2つの走査系を有する構成となっている。
【0035】
読出し走査系は、単位画素から信号を読み出すために、画素アレイ部11の単位画素を行単位で順に選択走査する。単位画素から読み出される信号はアナログ信号である。掃出し走査系は、読出し走査系によって読出し走査が行われる読出し行に対して、その読出し走査よりも露光時間分だけ先行して掃出し走査を行う。
【0036】
この掃出し走査系による掃出し走査により、読出し行の単位画素の光電変換部から不要な電荷が掃き出されることによって当該光電変換部がリセットされる。そして、この掃出し走査系による不要電荷の掃き出す(リセットする)ことにより、所謂電子シャッタ動作が行われる。ここで、電子シャッタ動作とは、光電変換部の電荷を捨てて、新たに露光を開始する(電荷の蓄積を開始する)動作のことを言う。
【0037】
読出し走査系による読出し動作によって読み出される信号は、その直前の読出し動作または電子シャッタ動作以降に受光した光量に対応するものである。そして、直前の読出し動作による読出しタイミングまたは電子シャッタ動作による掃出しタイミングから、今回の読出し動作による読出しタイミングまでの期間が、単位画素における電荷の露光期間となる。
【0038】
垂直駆動部12によって選択走査された画素行の各単位画素から出力される信号は、画素列ごとに垂直信号線17の各々を通してカラム処理部13に入力される。カラム処理部13は、画素アレイ部11の画素列ごとに、選択行の各画素から垂直信号線17を通して出力される信号に対して所定の信号処理を行うとともに、信号処理後の画素信号を一時的に保持する。
【0039】
具体的には、カラム処理部13は、信号処理として少なくとも、ノイズ除去処理、例えばCDS(Correlated Double Sampling;相関二重サンプリング)処理や、DDS(Double Data Sampling)処理を行う。例えば、CDS処理により、リセットノイズや画素内の増幅トランジスタの閾値ばらつき等の画素固有の固定パターンノイズが除去される。カラム処理部13にノイズ除去処理以外に、例えば、AD(アナログ−デジタル)変換機能を持たせ、アナログの画素信号をデジタル信号に変換して出力することも可能である。
【0040】
水平駆動部14は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどによって構成され、カラム処理部13の画素列に対応する単位回路を順番に選択する。この水平駆動部14による選択走査により、カラム処理部13において単位回路ごとに信号処理された画素信号が順番に出力される。
【0041】
システム制御部15は、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータなどによって構成され、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミングを基に、垂直駆動部12、カラム処理部13、及び、水平駆動部14などの駆動制御を行う。
【0042】
信号処理部18は、少なくとも演算処理機能を有し、カラム処理部13から出力される画素信号に対して演算処理等の種々の信号処理を行う。データ格納部19は、信号処理部18での信号処理に当たって、その処理に必要なデータを一時的に格納する。
【0043】
<2.第1の実施の形態>
次に、図2乃至図4を参照して、図1のCMOSイメージセンサ10の第1の実施の形態であるCMOSイメージセンサ10Aについて説明する。
【0044】
{CMOSイメージセンサ10Aの構成例}
図2は、CMOSイメージセンサ10Aの構成例を模式的に示す断面図である。なお、この図には、2つの画素を含む部分の断面が示されているが、他の画素についても基本的に同じ構成を有している。
【0045】
CMOSイメージセンサ10Aでは、p型の半導体基板107にn型のウエル層101が、画素毎に島状に分離して形成されている。このn型のウエル層101内に、画素を構成するフォトダイオードが形成されている。
【0046】
半導体基板107の上には、固定電荷膜114、透過率・屈折率調整層113、パッシベーション層112、透過率・屈折率調整層111が積層され、さらにその上に、画素毎に対応する色のカラーフィルタ109,110が形成されている。
【0047】
カラーフィルタ109,110の上には、平坦化層118を介して、オンチップレンズ108が形成されている。
【0048】
一方、半導体基板107の下には、固定電荷膜115、絶縁層117が積層され、絶縁層117の中に金属配線層116が形成されている。各金属配線層116は、絶縁層117によって絶縁されている。
【0049】
CMOSイメージセンサ10Aでは、金属配線層116が設けられた絶縁層117と、カラーフィルタ109,110及びオンチップレンズ108とが、フォトダイオードが形成された半導体基板107の互いに逆側の面に形成されている。すなわち、CMOSイメージセンサ10Aは、配線が設けられている半導体基板107のオモテ面とは反対側の裏面側から光を照射する、いわゆる裏面照射型の固体撮像素子である。
【0050】
なお、以下、半導体基板107の裏面を上面とも称し、半導体基板107のオモテ面を下面とも称する。
【0051】
本実施の形態においては、特に、n+領域102/アバランシェ領域104/p+領域103からなるアバランシェフォトダイオードの構造が、1画素内に複数個繰り返して形成されている。具体的には、n+領域102、p+領域103、及び、アバランシェ領域104は、それぞれ、n型のウエル層101内に、半導体基板107の厚さ方向(図2の上下方向)に延びるように形成されている。そして、n+領域102とp+領域103との間にアバランシェ領域104が挟まれた構造とすることにより、アバランシェフォトダイオードが構成されている。
【0052】
また、図2に示すように、隣接するn+領域102/アバランシェ領域104/p+領域103からなる構造間で、n+領域102或いはp+領域103が共有されている。これにより、3つのn+領域102及び2つのp+領域103により、合計4つのアバランシェ領域104を設けることができる。
【0053】
n+領域102は、下層の絶縁層117内に形成されている電極(カソード電極)105に、図示せぬ配線等を介して接続されている。p+領域103は、下層の絶縁層117内に形成されている、電極(アノード電極)106に、図示せぬ配線等を介して接続されている。各電極105は、図2の断面とは別の部分で接続されており、同じ電位に設定される。電極106についても同様である。
【0054】
また、アバランシェフォトダイオードを構成するn+領域102、p+領域103、及び、アバランシェ領域104の上面の高さがほぼ揃えられており、この上面をn型のウエル層101及び半導体基板107が覆っている。
【0055】
図3は、図2のA−Aにおける水平断面図を示している。図3において、図の左右方向が図2の左右方向に対応しており、上下方向が図2の紙面に垂直な方向に対応している。
【0056】
アバランシェフォトダイオードを構成するn+領域102、p+領域103、及び、アバランシェ領域104は、図2の断面においても、図3の断面においても、互いに平行に延びるように形成されている。
【0057】
また、図2及び図3におけるアバランシェ領域104の幅によって、n+領域102及びp+領域103に与える電圧(電位差)と形成される電界との関係が決まる。アバランシェ領域104の幅が狭いほど、必要な電圧を小さくすることができる。アバランシェ領域104の幅は、例えば、0.05μm〜1μmの範囲内に設定される。
【0058】
半導体基板107としては、n型又はp型不純物がドープされたシリコンを使用することができる。また、Geや、GaAs,InP,GaP,InAs,GaSb,InSb、並びに、3元素や4元素から成るより大きいバンドギャップの半導体材料も使用することが可能である。
【0059】
アバランシェ領域104は、低濃度の不純物(n型又はp型)がドープされた領域、もしくは、ノンドープの領域により構成される。
【0060】
例えば、アバランシェフォトダイオードを構成するn+領域102、p+領域103、及び、アバランシェ領域104は、各画素に形成されたn型のウエル層101内に、各領域のパターンに対応したマスクを使用してn型不純物やp型不純物のイオン注入を行うことにより、形成することができる。
【0061】
固定電荷膜114及び115は、正又は負の固定電荷を持つ膜からなる。例えば、固定電荷膜114及び115は、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、又は、ランタノイド等の酸化物からなる金属酸化膜、又は、上記の物質の窒化物からなる金属窒化膜からなる。或いは、固定電荷膜114及び115は、上記の物質の酸化物と窒化物の混晶系の膜からなる。
【0062】
以上のように、アバランシェ領域104を半導体基板107の厚さ方向に延びるように形成することにより、検出すべき光の波長に応じてアバランシェ領域104の深さを設定することが可能である。また、入射光を充分に吸収して、光子からアバランシェ増倍により多数のキャリアを生成することができる。
【0063】
さらに、アバランシェフォトダイオードの構造を1画素内に複数個繰り返して形成することにより、n+領域102及びp+領域103の間のアバランシェ領域104の幅を、構造が1個のみの場合の半分以下に狭めることができる。その結果、アバランシェ増倍を発生させるために必要となる印加電圧を低減することができる。これにより、駆動電圧が比較的低いCMOSイメージセンサにも、アバランシェフォトダイオードを適用することが可能になる。
【0064】
また、必要な印加電圧を低減することにより、隣接する画素とのクロストークの発生や熱の発生を抑制することができる。これにより、厚い絶縁分離領域やペルチエ素子を設ける必要がなくなり、CMOSイメージセンサ10Aの固体撮像素子の画素の微細化を実現することができる。
【0065】
一方、印加電圧を同じとして比較すると、1個の構造のみの場合よりも、アバランシェ領域104にかかる電界を強くすることができるので、1光子当たりに発生するキャリア数を増やすことができる。これにより、低光量に対する応答性能を向上することが可能になる。従って、広いダイナミックレンジを保ったままで、低光量レベルに対する感度の向上を実現することが可能になる。
【0066】
また、アバランシェフォトダイオードを構成するn+領域102、p+領域103、及び、アバランシェ領域104の上面の高さをほぼ揃えることにより、アバランシェ領域104全体に、ほぼ均一な電界が印加される。
【0067】
さらに、固定電荷膜114及び115を設けることにより、アバランシェフォトダイオードの降伏電圧の変動や暗電流の発生を抑制することができる。この点について、図4及び図5を参照して説明する。
【0068】
図4は、固定電荷膜114及び115を設けない場合のアバランシェフォトダイオードのP+領域103の周囲の電界の分布を模式的に示している。図5は、固定電荷膜114及び115を設けた場合のアバランシェフォトダイオードのP+領域103の周囲の電界の分布を模式的に示している。なお、図4及び図5のp+領域103の周囲の点線は、等電位線を示している。また、図4及び図5においては、n型のウエル層101の図示は省略している。
【0069】
図4の矢印で示される部分のように、アバランシェフォトダイオードのpn接合端部の形状や深さ、及び、半導体基板107の不純物の表面パイルアップや外方拡散・吸出しにより、半導体基板107のオモテ面や裏面付近において電界が集中する。その結果、半導体基板107のオモテ面や裏面付近において、アバランシェフォトダイオードの降伏電圧の変動や暗電流ノイズが発生する。
【0070】
一方、図5に示されるように、固定電荷膜114及び115を設けることにより、半導体基板107のオモテ面や裏面における電界の集中が緩和される。その結果、アバランシェフォトダイオードのエッジ効果やフリンジ効果などの影響が抑制される。
【0071】
これにより、アバランシェフォトダイオードの降伏電圧が安定し、一様に分布するようになる。すなわち、アバランシェフォトダイオードの各位置(特に深さ方向の各位置)における降伏電圧がほぼ一定になる。その結果、アバランシェフォトダイオードの受光感度の低下を防止することができる。
【0072】
また、上述したような低濃度領域を設けて不純物濃度勾配を緩和する等の対策が行われないため、受光感度の低下が発生しない。
【0073】
従って、短波長から長波長に渡る入射光に対して高い感度をもつアバランシェフォトダイオードが実現される。
【0074】
また、固定電荷膜114及び115の表面ピニング効果により、半導体基板107のオモテ面及び裏面付近の暗電流の発生が抑制される。その結果、ノイズの少ない画像を得ることができる。
【0075】
<3.第2の実施の形態>
次に、図6を参照して、図1のCMOSイメージセンサ10の第2の実施の形態であるCMOSイメージセンサ10Bについて説明する。
【0076】
{CMOSイメージセンサ10Bの構成例}
図6は、CMOSイメージセンサ10Bの構成例を模式的に示す断面図である。なお、図中、図2と対応する部分には同じ符号を付してある。
【0077】
CMOSイメージセンサ10Bは、図2のCMOSイメージセンサ10Aと比較して、絶縁膜119及び120が追加されている点が異なる。
【0078】
絶縁膜119は、半導体基板107と固定電荷膜114の間に形成されている。絶縁膜120は、半導体基板107と固定電荷膜115の間に形成されている。
【0079】
このように、半導体基板107と固定電荷膜114の間に絶縁膜119を配置することにより、固定電荷膜114が導電性を有する場合、アバランシェフォトダイオードと固定電荷膜114が電気的にショートされることが防止される。同様に、半導体基板107と固定電荷膜115の間に絶縁膜120を配置することにより、固定電荷膜115が導電性を有する場合、アバランシェフォトダイオードと固定電荷膜115が電気的にショートされることが防止される。
【0080】
<4.第3の実施の形態>
次に、図7乃至図9を参照して、図1のCMOSイメージセンサ10の第3の実施の形態であるCMOSイメージセンサ10Cについて説明する。
【0081】
{CMOSイメージセンサ10Cの構成例}
図7は、CMOSイメージセンサ10Cの構成例を模式的に示す断面図である。なお、図中、図2と対応する部分には同じ符号を付してある。
【0082】
CMOSイメージセンサ10Cは、図2のCMOSイメージセンサ10Aと比較して、固定電荷膜114の代わりに、固定電荷膜114a及び114bが形成され、固定電荷膜115の代わりに、固定電荷膜115a及び115bが形成されている点が異なる。
【0083】
固定電荷膜114a及び114bは、図2のCMOSイメージセンサ10Aの固定電荷膜114と同じ層に形成されている。ただし、固定電荷膜114aは、n+領域102の近傍(上方)にのみ形成されている。固定電荷膜114bは、p+領域103の近傍(上方)にのみ形成されている。n+領域102及びp+領域103が形成されていない画素間には、固定電荷膜114a及び114bは形成されていない。
【0084】
固定電荷膜115a及び115bは、図2のCMOSイメージセンサ10Bの固定電荷膜115と同じ層に形成されている。ただし、固定電荷膜115aは、n+領域102の近傍(下方)にのみ形成されている。固定電荷膜115bは、p+領域103の近傍(下方)にのみ形成されている。n+領域102及びp+領域103が形成されていない画素間には、固定電荷膜115a及び115bは形成されていない。
【0085】
また、固定電荷膜114a及び固定電荷膜115aは、同じ材質の膜からなり、同じ固定電荷を有する。固定電荷膜114b及び固定電荷膜115bは、固定電荷膜114a及び固定電荷膜115aとは異なる材質の膜からなり、固定電荷膜114a及び固定電荷膜115aと異なる固定電荷を有する。従って、n+領域102の近傍とp+領域103の近傍とで固定電荷膜の固定電荷が異なる。
【0086】
なお、固定電荷膜114a、114b、115a及び115bには、例えば、図2の固定電荷膜114及び115の例として挙げた材質のうちのいずれかが用いられる。
【0087】
このように、n+領域102及びp+領域103のレイアウトに応じて、固定電荷の異なる固定電荷膜を適切に配置することにより、電界集中をより適切に緩和することができる。
【0088】
なお、図7に示されるように、電界集中を緩和する必要がない画素間には、必ずしも固定電荷膜を設けなくてもよい。
【0089】
なお、CMOSイメージセンサ10Cにおいて、図6のCMOSイメージセンサ10Bと同様に、半導体基板107と固定電荷膜114a及び114bとの間、並びに、半導体基板107と固定電荷膜115a及び115bとの間に絶縁膜を設けるようにしてもよい。
【0090】
{固定電荷膜114a及び114bの製造方法}
次に、図8及び図9を参照して、CMOSイメージセンサ10Cの固定電荷膜114a及び114bの製造方法について説明する。
【0091】
なお、図8及び図9においては、固定電荷膜114a及び114bの製造方法の説明に必要な部分のみを図示している。また、n型のウエル層101の図示は省略している。
【0092】
まず、図8のAに示されるように、半導体基板107の上面に酸化シリコン(SiO2)膜201が成膜される。
【0093】
次に、図8のBに示されるように、酸化シリコン膜201のパターニングが行われる。これにより、p+領域103の上方において、酸化シリコン膜201に開口部201Aが形成される。
【0094】
次に、図8のCに示されるように、半導体基板107の上面及び酸化シリコン膜201の上面に固定電荷膜114bが成膜される。このとき、酸化シリコン膜201の開口部201Aに固定電荷膜114bが埋め込まれる。
【0095】
次に、図8のDに示されるように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)による固定電荷膜114bの研磨が行われる。これにより、酸化シリコン膜201の開口部201A内以外の固定電荷膜114bが除去される。
【0096】
次に、図9のEに示されるように、酸化シリコン膜201のパターニングが行われる。これにより、n+領域102の上方において、酸化シリコン膜201に開口部201Bが形成される。
【0097】
次に、図9のFに示されるように、半導体基板107の上面及び酸化シリコン膜201の上面に固定電荷膜114aが成膜される。このとき、酸化シリコン膜201の開口部201Bに固定電荷膜114aが埋め込まれる。
【0098】
次に、図9のGに示されるように、CMPによる固定電荷膜114aの研磨が行われる。これにより、酸化シリコン膜201の開口部201B内以外の固定電荷膜114aが除去される。
【0099】
このようにして、固定電荷膜114a及び114bが形成される。
【0100】
<5.変形例>
以下、上述した本技術の実施の形態の変形例について説明する。
【0101】
{アバランシェフォトダイオードの平面パターンの変形例}
まず、図10乃至図13を参照して、アバランシェフォトダイオードを構成するn+領域102、p+領域103、及び、アバランシェ領域104の平面パターンの変形例について説明する。
【0102】
図10は、図2のA−Aにおける水平断面図の第1の変形例を示している。図10において、図3と同様に、図の左右方向が図2の左右方向に対応しており、図の上下方向が図2の紙面に垂直な方向に対応している。
【0103】
この例では、n+領域102は、n+領域102A及び102Bからなる。アバランシェ領域104は、アバランシェ領域104A及び104Bからなる。
【0104】
n+領域102Aは、円形の断面を有する円柱状の領域であり、画素の中央に配置されている。n+領域102B、p+領域103、並びに、アバランシェ領域104A及び104Bは、円形の枠状の断面を有する円筒状の領域である。そして、内側から、アバランシェ領域104A、p+領域103、アバランシェ領域104B、n+領域102Bの順に、各領域がn+領域102Aの周囲を同心円状に囲むように配置されている。
【0105】
図11は、図2のB−Bにおける水平断面図を示している。図11において、図3及び図10と同様に、図の左右方向が図2の左右方向に対応しており、図の上下方向が図2の紙面に垂直な方向に対応している。
【0106】
電極105は、電極105A、接続部105B及び電極105Cからなる。電極106は、電極106A及び接続部106Bからなる。
【0107】
電極105Aは、断面が図10のn+領域102Aとほぼ同様の形状であり、図示せぬ配線等を介して、n+領域102Aに接続される。電極105Cは、断面が図10のn+領域102Bの底面(円形の枠)に沿った円弧状の領域であり、図示せぬ配線等を介して、n+領域102Bに接続される。また、電極105Cには、円弧の一部が不連続となる不連続部105Dが形成されている。
【0108】
電極106Aは、断面が図10のp+領域103の底面(円形の枠)に沿った円弧状の領域であり、図示せぬ配線等を介して、p+領域103に接続される。また、電極106Aには、円弧の一部が不連続となる不連続部106Cが形成されている。
【0109】
電極105Aと電極105Cとは、電極106Aの不連続部106Cを通り、断面が直線状の接続部105Bにより接続されている。電極106Aは、電極105Cの不連続部105Dを通り、断面が直線状の接続部106Bを介して、画素の周縁部の配線等(不図示)に接続さていれる。
【0110】
この例の場合、電極105Cと接続されるn+領域102Bの下端部において、電極105Cの不連続部105D付近に電界集中が発生しやすい。また、電極106Aと接続されるp+領域103の下端部において、電極106Aの不連続部106C付近に電界集中が発生しやすい。
【0111】
そこで、例えば、半導体基板107と絶縁層117の間において、図11の点線で囲まれた領域301及び領域302にのみ固定電荷膜115を配置するようにしてもよい。なお、領域301は、不連続部106Cの上方周辺を少なくとも覆っている。領域302は、不連続部105Dの上方周辺を少なくとも覆っている。
【0112】
なお、例えば、p+領域103とn+領域102Bの極性の違いに応じて、領域301と領域302とで、固定電荷膜115の固定電荷を変えるようにしてもよい。
【0113】
或いは、例えば、領域301及び302と他の領域とで、固定電荷膜115の材質を変えるようにしてもよい。
【0114】
図12は、図2のA−Aにおける水平断面図の第2の変形例を示している。図12において、図3と同様に、図の左右方向が図2の左右方向に対応しており、図の上下方向が図2の紙面に垂直な方向に対応している。
【0115】
この例では、n+領域102は、n+領域102A及び102Bからなる。アバランシェ領域104は、アバランシェ領域104A及び104Bからなる。
【0116】
n+領域102Aは、矩形の断面を有する四角柱状の領域であり、画素の中央に配置されている。n+領域102B、p+領域103、並びに、アバランシェ領域104A及び104Bは、矩形の枠状の断面を有する四角筒状の領域である。そして、内側から、アバランシェ領域104A、p+領域103、アバランシェ領域104B、n+領域102Bの順に、各領域がn+領域102Aの周囲を額縁状に囲むように配置されている。
【0117】
この例の場合、n+領域102Aの角周辺、及び、p+領域103の角周辺において特に電界が集中しやすい。
【0118】
そこで、例えば、図11の点線で囲まれた領域321a乃至321d及び領域322a乃至322dにのみ固定電荷膜114及び115を配置するようにしてもよい。なお、領域321a乃至321dは、それぞれn+領域102Aの各角周辺を少なくとも覆っている。領域322a乃至322dは、それぞれp+領域103の各角周辺を少なくとも覆っている。
【0119】
なお、n+領域102Aとp+領域102Bの極性の違いに応じて、領域321a乃至321dと領域322a乃至322dとで、固定電荷膜114の固定電荷を変えるようにしてもよい。同様に、領域321a乃至321dと領域322a乃至322dとで、固定電荷膜115の固定電荷を変えるようにしてもよい。
【0120】
或いは、領域321a乃至321d及び領域322a乃至322dと他の領域とで、固定電荷膜114及び115の材質を変えるようにしてもよい。
【0121】
なお、図10及び図12の例の場合、各画素のアバランシェフォトダイオードの構造のうち、最も外側にある領域がn+領域102Bに限定される。従って、隣接する画素間で最も外側にある領域が同じ導電型になり、画素間の絶縁分離が容易になる。
【0122】
また、アバランシェフォトダイオードを構成するn+領域102、p+領域103、及び、アバランシェ領域104の平面パターンは、上述した例に限定されるものではなく、その他の平面パターンを採用することができる。ただし、図3図10及び図12に示した例のように、単純な形状のパターンの繰り返しとすることが好ましい。単純な形状のパターンとすることにより、イオン注入のマスクずれに対応するためのマージンを確保しやすくなるため、パターン幅を狭くして電圧を低減することが容易になる。
【0123】
さらに、例えば、n+領域102とp+領域103の配置を上述した例と逆にすることも可能である。また、例えば、n+領域102、p+領域103、及び、アバランシェ領域104の繰り返し数を増やしたり、減らしたりすることも可能である。
【0124】
また、図10及び図11を参照して上述した例において、例えば、電極の不連続部が2つ以上ある場合、各不連続部周辺を少なくとも覆うように固定電荷膜を配置するようにすればよい。また、例えば、円弧以外の形状(例えば、矩形)のフレーム状の電極に不連続部が形成されている場合も同様に、各不連続部周辺を少なくとも覆うように固定電荷膜を配置するようにすればよい。
【0125】
さらに、例えば、アバランシェフォトダイオードの構造において、四角柱以外の角柱状、又は、矩形以外の多角形の筒状のn+領域又はp+領域が設けられている場合も、図12及び図13を参照して上述した例と同様に、各領域の角周辺を少なくとも覆うように固定電荷膜を配置するようにすればよい。
【0126】
{その他の変形例}
上記の実施の形態では、本技術を単位画素が行列状に配置されたCMOSイメージセンサに適用した場合を例に挙げて説明したが、本技術はCMOSイメージセンサへの適用に限られるものではない。すなわち、本技術は、半導体基板の厚さ方向に延びる構造のアバランシェフォトダイオードを備える固体撮像素子全般に適用することが可能である。
【0127】
また、本技術は、表面照射型の固体撮像素子に適用することも可能である。
【0128】
さらに、以上の説明では、半導体基板のオモテ面と裏面の両方に固定電荷膜を設ける例を示したが、いずれか一方の面のみに設けるようにすることも可能である。
【0129】
また、本技術を適用した固体撮像素子は、例えば、ワンチップとして形成された形態であってもよいし、撮像部と、信号処理部または光学系とがまとめてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態であってもよい。
【0130】
<6.固体撮像素子の使用例>
図14は、上述の固体撮像素子の使用例を示す図である。
【0131】
上述した固体撮像素子は、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに使用することができる。
【0132】
・デジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置
【0133】
{撮像装置}
図15は、本技術を適用した電子機器の一例である撮像装置(カメラ装置)の構成例を示すブロック図である。
【0134】
図15に示すように、撮像装置は、レンズ群501などを含む光学系、撮像素子502、カメラ信号処理部であるDSP回路503、フレームメモリ504、表示装置505、記録装置506、操作系507、及び、電源系508等を有している。そして、DSP回路503、フレームメモリ504、表示装置505、記録装置506、操作系507、及び、電源系508がバスライン509を介して相互に接続された構成となっている。
【0135】
レンズ群501は、被写体からの入射光(像光)を取り込んで撮像素子502の撮像面上に結像する。撮像素子502は、レンズ群501によって撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。
【0136】
表示装置505は、液晶表示装置や有機EL(electro luminescence)表示装置等のパネル型表示装置から成り、撮像素子502で撮像された動画または静止画を表示する。記録装置506は、撮像素子502で撮像された動画または静止画を、メモリカードやビデオテープやDVD(Digital Versatile Disk)等の記録媒体に記録する。
【0137】
操作系507は、ユーザによる操作の下に、本撮像装置が持つ様々な機能について操作指令を発する。電源系508は、DSP回路503、フレームメモリ504、表示装置505、記録装置506、及び、操作系507の動作電源となる各種の電源を、これら供給対象に対して適宜供給する。
【0138】
このような撮像装置は、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ、更には、スマートフォン、携帯電話機等のモバイル機器向けカメラモジュールに適用される。そして、この撮像装置において、撮像素子502として、上述した各実施形態に係る固体撮像素子を用いることができる。これにより、撮像装置の画質を向上させることができる。
【0139】
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0140】
また、例えば、本技術は以下のような構成も取ることができる。
【0141】
(1)
それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードと、
前記半導体基板の少なくとも一方の面に形成され、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜と
を備える固体撮像素子。
(2)
前記膜と前記半導体基板との間に形成されている絶縁膜を
さらに備える前記(1)に記載の固体撮像素子。
(3)
前記膜は、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、又は、ランタノイドの酸化膜若しくは窒化膜、又は、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、又は、ランタノイドの酸化物と窒化物の混晶系の膜からなる
前記(1)又は(2)に記載の固体撮像素子。
(4)
前記膜は固定電荷を有する
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(5)
前記膜は、前記第1の領域の近傍と前記第2の領域の近傍とで固定電荷が異なる
前記(4)に記載の固体撮像素子。
(6)
前記膜は、前記第1の領域が矩形の筒状である場合、前記第1の領域の角周辺を少なくとも覆うように形成される
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(7)
前記第1の領域が筒状であり、
前記半導体基板の一方の面側において、前記第1の領域の上面又は底面に沿って形成され、1つ以上の不連続部を有する電極をさらに備え、
前記膜は、前記半導体基板と前記電極との間において、少なくとも前記電極の不連続部周辺を覆うように形成される
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(8)
1画素内に、前記アバランシェフォトダイオードの構造が2以上繰り返し形成されている
前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(9)
それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードが形成される前記半導体基板の少なくとも一方の面に、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜を形成する工程を
含む固体撮像素子の製造方法。
(10)
固体撮像素子と、
前記固体撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部と
を備え、
前記固体撮像素子は、
それぞれ半導体基板の厚さ方向に延びる、第1の導電型の第1の領域、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域、及び、前記第1の領域と前記第2の領域に挟まれたアバランシェ領域を有するアバランシェフォトダイオードと、
前記半導体基板の少なくとも一方の面に形成され、金属酸化膜、金属窒化膜、又は、金属酸化膜と金属窒化膜の混晶系の膜からなる膜と
を備える電子機器。
【符号の説明】
【0142】
10,10A乃至10C CMOSイメージセンサ, 11 画素アレイ部, 101 n型のウエル層, 102,102A,102B n+領域, 103 p+領域, 104,104A,104B アバランシェ領域, 105,105A,105C 電極, 105B 接続部, 105D 不連続部, 106,106A 電極, 106C 不連続部, 107 半導体基板, 114,114a,114b,115,115a,115b 固定電荷膜, 119,120 絶縁膜, 301,302,321,322 領域
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