特許第6879922号(P6879922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879922
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】アルコールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20210524BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20210524BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20210524BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/52
   A23L2/68
   C12G3/06
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-547872(P2017-547872)
(86)(22)【出願日】2016年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2016081983
(87)【国際公開番号】WO2017073704
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2018年4月4日
【審判番号】不服2019-17487(P2019-17487/J1)
【審判請求日】2019年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-212192(P2015-212192)
(32)【優先日】2015年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 俊治
(72)【発明者】
【氏名】占部 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】梶 悟
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 黒川 美陶
【審判官】 冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6506430号明細書(US,B1)
【文献】 特開2006−083131号公報
【文献】 特開2006−083138号公報
【文献】 “Alcohol−free“whisky−flavored drink”: Tasting ArKay.”,[online], Internet,2012年 1月 4日,[検索日:平成29年1月19日],URL,http://blog.wblakegray.com/2012/01/alcohol−free−whisky−flavored−drink.html
【文献】 LUMSDEN, B.,“The impact of micro−gravity on the release of oak extractives into spirit.”,[online], INTERNET,WayBack Machine,2015年 9月21日,[検索日:令和1年9月27日],URL,https://www.ardbeg.com/cdn/ardbeg−media/ardbeg/supernova/ARD9109SupernovaWhitePaperA4.pdf
【文献】 財団法人日本醸造協会, 醸造物の成分, 1999年12月10日発行, pp. 363−376
【文献】 S. J. Withers, et al., J. Inst. Brew., 1995, vol. 101, pp. 359−364
【文献】 M. Heller, et al., J. Agric. Food Chem., 2011, vol. 59, pp. 6882−6888
【文献】 K. MacNamara, et al., S. Afr. J. Enol. Vitic., 2001, vol. 22, no. 2, pp. 69−74
【文献】 “YOUR WORST NIGHTMARE: ALCOHOL−FREE WHISKY.”,[online], Internet,2009年 6月 9日,[検索日:平成29年1月19日],URL,https://blog.thewhiskyexchange.com/2009/06/your−worst−nightmare−alcohol−free−whisky/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-35/00
C12G1/00-3/12
C12H1/00-6/04
Mintel GNPD
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(Jdream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シナピルアルデヒドを5ppb以上かつ5.0×10ppb以下、
コニフェリルアルデヒドを5ppb以上かつ1.0×10ppb以下
シリングアルデヒドを20ppb以上かつ5.0×10ppb以下、及び
酸味付与物質
含んでな
該酸味付与物質に由来するクエン酸換算の酸度が0.02〜0.4g/100mlである、
アルコールテイスト飲料。
【請求項2】
前記シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒド合計含有量が5ppb以上である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
アルコール度数が1%(v/v)未満である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
炭酸ガスを含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
前記酸味付与物質に由来する酸度がクエン酸換算で0.05〜0.3g/100mlである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項6】
水溶性食物繊維を含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項7】
脱アルコールエキスを含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料
【請求項8】
シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドの合計含有量が40ppb以上である、請求項7に記載の飲料。
【請求項9】
シナピルアルデヒドを5ppb以上かつ5.0×10ppb以下、
コニフェリルアルデヒドを5ppb以上かつ1.0×10ppb以下
シリングアルデヒドを20ppb以上かつ5.0×10ppb以下、及び
酸味付与物質
配合し、
該酸味付与物質に由来するクエン酸換算の酸度を0.02〜0.4g/100mlに調整する
工程を含む、アルコールテイスト飲料の製造方法。
【請求項10】
前記シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒド合計配合量を5ppb以上にする、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
シナピルアルデヒドを5ppb以上かつ5.0×10ppb以下、
コニフェリルアルデヒドを5ppb以上かつ1.0×10ppb以下
シリングアルデヒドを20ppb以上かつ5.0×10ppb以下、及び
酸味付与物質
配合し、
該酸味付与物質に由来するクエン酸換算の酸度を0.02〜0.4g/100mlに調整する
工程を含む、アルコールテイスト飲料にブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する方法。
【請求項12】
前記シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒド合計配合量を5ppb以上に調整する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールテイスト飲料に特定のアルデヒドを一定量以上含有させることで、ブラウンスピリッツらしい味の厚みを持たせた、これまでにない新しいタイプのアルコールテイスト飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールテイスト飲料は、通常のアルコール飲料よりアルコール度数を低減させたもの、又は実質的にアルコールを含まないものを一般的に指す。アルコールテイスト飲料は市場に広く流通している。通常のアルコール飲料は一般的に若干の刺激感や酒らしい味わいを有するが、これらはアルコールに起因するものである。アルコールテイスト飲料は、アルコールを殆どもしくは全く含まないにも関わらず、若干の刺激感がある等、アルコールが含まれているかのような味わいを有している。
【0003】
アルコールが含まれているかのような味わいを有することは、アルコールテイスト飲料の重要な課題の1つであり、弱酸性重合高分子色素を一定の範囲で含ませる方法や(特許文献1)、炭素数4または5の脂肪族アルコールと収斂味付与物質を一定の範囲で含ませる方法(特許文献2)など、様々な方法が開示されている。そのため、アルコールが含まれているかのような味わいを有するだけでは、市場に広く流通する既存のアルコールテイスト飲料と差別化することは難しく、新たな価値を提供することが求められている。
【0004】
そこで、梅酒を減圧蒸留することによって得た残留液を加水して、Brixを50〜70に調整することで、梅酒エキスを製造し、当該梅酒エキスを使用することにより、梅酒特有の風味が再現されたノンアルコール梅酒飲料(特許文献3)、難消化性デキストリンを添加することで、非発酵のビール風味のアルコールテイスト飲料の泡持ちを向上させる方法(特許文献4)、などが開示されている。
【0005】
近年、ウイスキーブームがおこるなか、樽で熟成した本格的な味わいを持ったアルコール飲料を求める消費者もいる。これまで、様々な種類のアルコールテイスト飲料が開発されてきたが、その殆どがビールテイスト飲料やチューハイテイスト飲料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−132896号公報
【特許文献2】特開2012−60975号公報
【特許文献3】特開2013−42751号公報
【特許文献4】特開2014−180269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、アルコールテイスト飲料は数多く市場に出ているが、樽で貯蔵・熟成したかのような本格的な味わいを持った、ブラウンスピリッツらしいアルコールテイスト飲料は見当たらない。本発明は、ブラウンスピリッツらしいアルコールテイスト飲料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者らは、様々なアルコール飲料を対象として検討を行い、特定のアルデヒドがアルコールテイスト飲料にブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与することを突き止めた。本願の発明者らは、かかる知見に基づいて本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、限定されないが、以下を提供する。
(1)シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、アルコールテイスト飲料。
(2)前記シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、その合計含有量が1ppb以上である、(1)に記載の飲料。
(3)前記シナピルアルデヒドの含有量が2ppb以上である、(1)又は(2)に記載の飲料。
(4)前記コニフェリルアルデヒドの含有量が2ppb以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料。
(5)前記シリングアルデヒドの含有量が15ppb以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載の飲料。
(6)アルコール度数が1%(v/v)未満である、(1)〜(5)のいずれかに記載の飲料。
(7)炭酸ガスを含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の飲料。
(8)酸味付与物質を含む、(1)〜(7)のいずれかに記載の飲料。
(9)前記酸味付与物質に由来する酸度がクエン酸換算で0.02〜0.4g/100mlである、(8)に記載の飲料。
(10)水溶性食物繊維を含む、(1)〜(9)のいずれかに記載の飲料。
(11)シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでなる、脱アルコールエキス。
(12)(11)の脱アルコールエキスを含んでなり、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドの合計含有量が40ppb以上である、飲料。
(13)シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1つを配合する工程含む、アルコールテイスト飲料の製造方法。
(14)前記シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1つを配合する工程を含み、その合計配合量を1ppb以上にする、(13)に記載の製造方法。
(15)前記シナピルアルデヒドを2ppb以上で配合する工程を含む、(13)又は(14)に記載の製造方法。
(16)前記コニフェリルアルデヒドを2ppb以上で配合する工程を含む、(13)〜(15)のいずれかに記載の製造方法。
(17)前記シリングアルデヒドを15ppb以上で配合する工程を含む、(13)〜(16)のいずれかに記載の製造方法。
(18)酸味付与物質を配合し、当該酸味付与物質に由来するクエン酸換算の酸度を0.02〜0.4g/100mlに調整する工程を含む、(13)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
(19)シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1つを配合する工程を含む、アルコールテイスト飲料にブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する方法。
(20)前記シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1つを配合する工程を含み、その合計配合量を1ppb以上に調整する、(19)に記載の方法。
(21)前記シナピルアルデヒドを2ppb以上で配合する工程を含む、(19)又は(20)に記載の方法。
(22)前記コニフェリルアルデヒドを2ppb以上で配合する工程を含む、(19)〜(21)のいずれかに記載の方法。
(23)前記シリングアルデヒドを15ppb以上で配合する工程を含む、(19)〜(22)のいずれかに記載の方法。
(24)酸味付与物質を配合し、当該酸味付与物質に由来するクエン酸換算の酸度を0.02〜0.4g/100mlに調整する工程を含む、(19)〜(23)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ブラウンスピリッツらしい味の厚みを持った、これまでにない新たな価値をもったアルコールテイスト飲料が提供される。アルコール飲料に対しても同様の効果を発揮することができる。チューハイなどに配合して、ブラウンスピリッツらしい味の厚みをつけることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<アルコールテイスト飲料>
本発明は、アルコールテイスト飲料を提供する。本明細書において、「アルコールテイスト飲料」とは、アルコール飲料のテイストを有する飲料をいう。ここで、アルコール飲料は、発酵を経て得られたものであってよく、当該工程を経ずに得られたものであってもよい。また、アルコール飲料は合成酒であってもよい。限定されないが、例えば、ウイスキー(スコッチウイスキー、バーボンウイスキー等)、スピリッツ(ジン、ウオツカ、テキーラ、ラム等)、リキュール、ブランデー(コニャック、カルバトス、アルマニャック等)、ハイボール、焼酎、チューハイ、ワイン(赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン等)、シードル、シェリー酒、日本酒、梅酒、紹興酒、及びこれらの混合物等をアルコール飲料として挙げることができる。好ましくは、ウイスキー、スピリッツ、リキュール、ブランデー、ハイボールを挙げることができる。なお、本明細書において「アルコール」というときは、別段の記載がない限り、エタノールを意味するものとする。
【0012】
アルコールテイスト飲料はSinapinaldehyde (CAS番号:4206-58-0, 以下「シナピルアルデヒド」とする。)、Coniferaldehyde(CAS番号:458-36-6, 以下「コニフェリルアルデヒド」とする。)、及び4-Hydroxy-3,5-dimethoxybenzaldehyde,(CAS番号:134-96-3, 以下「シリングアルデヒド」とする。)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する。即ち、アルコールテイスト飲料は、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、又はシリングアルデヒドを単独で含有していてもよく、これらの2つ又は3つを含有していてもよい。当該2つとは、即ち、シナピルアルデヒド及びコニフェリルアルデヒド、シナピルアルデヒド及びシリングアルデヒド、並びに、コニフェリルアルデヒド及びシリングアルデヒドの組み合わせである。そして、前記3つとは、即ち、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドの組み合わせである。
【0013】
シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドはそれぞれ、植物、動物、微生物、及びその他の天然物、並びに飲食品から取得したものであってもよく、化学的に合成したものであってもよい。例えば、植物から抽出操作等によって取得してもよく、微生物の発酵により生産される目的物を抽出操作等により取得してもよく、酒等の飲食品の熟成過程で生産される目的物を抽出操作等により取得してもよい。あるいは、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドは、当業者に知られた方法により、有機化学的に合成してもよい。また、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドの少なくとも1つを含む香料等の市販品を入手してもよい。すなわち、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、シリングアルデヒドの取得方法は問わない。
【0014】
アルコールテイスト飲料は、シナピルアルデヒドを含有することができる。アルコールテイスト飲料は、シナピルアルデヒドをブラウンスピリッツらしい味の厚みの付与に有効な量で含有することができ、2ppb以上、好ましくは5ppb以上、より好ましくは25ppb以上、さらに好ましくは50ppb以上、さらに好ましくは200ppb以上で含有することができる。アルコールテイスト飲料において、シナピルアルデヒドの含有量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下としてもよい。本明細書において、ブラウンスピリッツらしい味の厚みとは、樽で貯蔵することで生じる熟成感を意味し、アルコール飲料が一般的に有する酒らしい味わい、すなわちアルコールそのものが持つ刺激感などとは異なる。
【0015】
アルコールテイスト飲料は、コニフェリルアルデヒドを含有することができる。アルコールテイスト飲料は、コニフェリルアルデヒドをブラウンスピリッツらしい味の厚みの付与に有効な量で含有することができ、2ppb以上、好ましくは5ppb以上、より好ましくは180ppb以上、さらに好ましくは360ppb以上、さらに好ましくは1200ppb以上で含有することができる。アルコールテイスト飲料において、コニフェリルアルデヒドの含有量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下としてもよい。
【0016】
アルコールテイスト飲料は、シリングアルデヒドを含有することができる。アルコールテイスト飲料は、シリングアルデヒドをブラウンスピリッツらしい味の厚みの付与に有効な量で含有することができ、15ppb以上、好ましくは20ppb以上、より好ましくは100ppb以上、さらに好ましくは200ppb以上、さらに好ましくは1200ppb以上で含有することができる。アルコールテイスト飲料において、シリングアルデヒドの含有量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下としてもよい。
【0017】
アルコールテイスト飲料における、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる1以上の合計含有量は、好ましくは1ppb以上、より好ましくは5ppb以上、さらに好ましくは7ppb以上、さらにより好ましくは200ppb以上とすることができる。当該合計含有量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下としてもよい。
【0018】
飲料中のシナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドの量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)などを用いて測定することができる。例えば以下の分析機種、条件にて測定することができる。
【0019】
測定機種:LC HP 1100 series(Agilent Technologies)
カラム:phenomenex Luna 5μ C18(2) 100A 1504.60mm(00F−4252−E0)
カラム温度:40℃
検出器:UV−VIS
注入量:5.0μl。
上記の分析に供する試料は、分析に先立って濃縮しなくてもよいが、必要に応じて濃縮してもよい。濃縮により、分析対象であるシナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドが検出しやすくなり得る。濃縮手段は、特に制限されず、当業者に知られたいずれの手段を用いることができる。
【0020】
アルコールテイスト飲料はアルコールを含有してもよい。アルコール度数は自由に調整でき、例えば、1%(v/v)未満、0.8%(v/v)未満、0.5%(v/v)未満、0.2%(v/v)未満、0%(v/v)であってよい。或いは、アルコールテイスト飲料はノンアルコールであってもよい。アルコールテイスト飲料は、好ましくは、ノンアルコール飲料であるが、これに限定されない。
【0021】
アルコール度数は、例えば、振動式密度計を用いて測定することができる。より詳細には、測定対象のアルコール飲料を濾過又は超音波処理することによって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算することによりアルコール度数を求めることができる。1.0(v/v)%未満のアルコール度数は、国税庁所定分析法3−4(アルコール分)に記載の「B)ガスクロマトグラフ分析法」を用いることによって測定することができる。本明細書においては、当該方法によりアルコール度数を測定するものとする。
【0022】
アルコールテイスト飲料は、酒を脱アルコールしたもの(以下、「脱アルコールエキス」とする)を含有することができる。ここで、脱アルコールエキスの原料になる酒は、酒類一般から選択することができ、例えば、ウイスキー(スコッチウイスキー、バーボンウイスキー等)、スピリッツ(ジン、ウオツカ、テキーラ、ラム等)、リキュール、ブランデー(コニャック、カルバトス、アルマニャック等)、焼酎、チューハイ、ワイン(赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン等)、シードル、シェリー酒、日本酒、梅酒、紹興酒、及びこれらの混合物等から選択することができる。脱アルコールエキスの原料になる酒は、好ましくは樽貯蔵を行うことを特徴とする酒である。当該樽貯蔵を行う酒としては、樽貯蔵を行う蒸留酒、いわゆるブラウンスピリッツがより好ましく、例えば、ウイスキー(スコッチウイスキー、バーボンウイスキー等)、スピリッツ(ジン、ウオツカ、テキーラ、ラム等)、ブランデー(コニャック、カルバトス、アルマニャック等)、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0023】
酒の脱アルコール処理は、公知の方法により行うことができる。例えば、メンブレンを用いる方法及び蒸留による方法(常圧蒸留法、減圧蒸留法等、温度:30〜100℃、時間:2−4時間、圧力:10kPa〜大気圧)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
脱アルコールエキスにはシナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドを含ませることができる。そのため、アルコールテイスト飲料が脱アルコールエキスを含む場合、結果として、それらのアルデヒドの一部または全てがアルコールテイスト飲料に含まれることになる。脱アルコールエキスという形でシナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドがアルコールテイスト飲料に含まれるようにした場合、それらのアルデヒドの合計含有量は、好ましくは40ppb以上、より好ましくは110ppb以上、さらに好ましくは150ppb以上、さらにより好ましくは300ppb以上とすることができる。当該合計含有量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下としてもよい。
【0025】
アルコールテイスト飲料は、炭酸ガスを含有することができる。炭酸ガスの濃度は、適宜設定することができる。脱アルコールエキスは単独でもブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する効果を発揮するが、炭酸ガスとの組み合わせによる相乗効果によって、その効果をさらに高めることを見出した。
【0026】
アルコールテイスト飲料は、その他の成分を含有することができる。ここで、その他の成分とは、糖類、香料、酸味料、pH調整剤、色素、果汁、ビタミン類、色素、酸化防止剤、高甘味度甘味料、乳化剤、保存料、調味料、水溶性食物繊維及びエキス類等が挙げられるが、これに限定されない。その他の成分の含有量は適宜設定することができる。脱アルコールエキスは単独でもブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する効果を発揮するが、酸味付与物質や水溶性食物繊維などその他の成分との組み合わせによる相乗効果によって、効果を高めることを見出した。酸味付与物質は特に限定されず、無機酸又は有機酸のいずれであってもよい。例えば、酸味付与物質として、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びそれらの塩が挙げられる。リン酸の塩として、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及びリン酸カルシウム等が例示される。クエン酸の塩として、クエン酸ナトリウム(クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)、クエン酸カリウム、及びクエン酸カルシウム等が例示される。リンゴ酸の塩として、リンゴ酸ナトリム、リンゴ酸カリウム、及びリンゴ酸カルシウム等が例示される。酒石酸の塩として、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、及び酒石酸水素カリウム等が例示される。アルコールテイスト飲料は、酸味付与物質を特定の酸度で含有することができる。アルコールテイスト飲料の酸味付与物質に由来する酸度(クエン酸換算)は、限定されないが、0.02〜0.4g/100ml、好ましくは0.05〜0.3g/100mlにすることができる。
【0027】
アルコールテイスト飲料は、容器詰めとすることができる。容器は、形態・材質を問わず、いずれのものを用いてもよいが、例えば、ガラスなどの瓶、スチールやアルミなどの缶、アルミなどのパウチ容器、樽、紙容器、金属箔やプラスチックフィルム等が積層されたラミネート容器、フラスコやビーカーなどのガラス又はプラスチック容器、各種カプセル型容器、又はペットボトル等を用いることができる。
【0028】
<アルコールテイスト飲料の製造方法>
本発明は、アルコールテイスト飲料の製造方法を提供する。当該製造方法は、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1つを配合することを含んでなる。即ち、当該製造方法においては、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、又はシリングアルデヒドを単独で配合してもよく、これらの2つ又は3つを配合してもよい。当該2つとは、即ち、シナピルアルデヒド及びコニフェリルアルデヒド、シナピルアルデヒド及びシリングアルデヒド、並びに、コニフェリルアルデヒド及びシリングアルデヒドの組み合わせである。そして、前記3つとは、即ち、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドの組み合わせである。
【0029】
アルコールテイスト飲料の製造方法は、シナピルアルデヒドを配合する工程を含むことができる。アルコールテイスト飲料のシナピルアルデヒドの含有量がブラウンスピリッツらしい味の厚みの付与に有効な量、2ppb以上、好ましくは5ppb以上、より好ましくは7ppb以上、さらに好ましくは25ppb以上、さらに好ましくは50ppb以上、さらに好ましくは200ppb以上となるようにシナピルアルデヒドを配合することができる。アルコールテイスト飲料中のシナピルアルデヒドの含有量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下としてもよい。
【0030】
アルコールテイスト飲料の製造方法は、コニフェリルアルデヒドを配合する工程を含むことができる。アルコールテイスト飲料のコニフェリルアルデヒドの含有量がブラウンスピリッツらしい味の厚みの付与に有効な量、2ppb以上、好ましくは5ppb以上、より好ましくは180ppb以上、さらに好ましくは360ppb以上、さらにより好ましくは1200ppb以上となるようにコニフェリルアルデヒドを配合することができる。アルコールテイスト飲料中のコニフェリルアルデヒドの含有量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下としてもよい。
【0031】
アルコールテイスト飲料の製造方法は、シリングアルデヒドを配合する工程を含むことができる。アルコールテイスト飲料のシリングアルデヒドの含有量がブラウンスピリッツらしい味の厚みの付与に有効な量、15ppb以上、好ましくは20ppb以上、より好ましくは100ppb以上、さらに好ましくは200ppb以上、さらにより好ましくは1200ppb以上となるようにシリングアルデヒドを配合することができる。アルコールテイスト飲料中のシリングアルデヒドの含有量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下としてもよい。
【0032】
アルコールテイスト飲料の製造方法においては、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる1以上は、アルコールテイスト飲料における合計配合量が、好ましくは1ppb以上、より好ましくは5ppb以上、さらに好ましくは7ppb以上、さらにより好ましくは200ppb以上となるように配合することができる。当該配合量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下となるように、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1以上を配合してもよい。
【0033】
アルコールテイスト飲料の製造方法は、アルコール度数を調整する工程を含んでもよく、アルコール度数は自由に調整してよい。例えば、アルコール度数を、1%(v/v)未満、0.8%(v/v)未満、0.5%(v/v)未満、0.2%(v/v)未満、0(v/v)%に調整することができる。当該調製は、例えば、アルコールを配合することにより行ってもよいし、アルコールを配合しないことにより行ってもよいし、アルコールを除去することにより行ってもよい。好ましくは、ノンアルコールのアルコールテイスト飲料を製造に向けられるが、これに限定されない。
【0034】
アルコールテイスト飲料の製造方法は、脱アルコールエキスを配合する工程を含むことができる。ここで、脱アルコールエキスの原料になる酒は、酒類一般から選択することができ、例えば、ウイスキー(スコッチウイスキー、バーボンウイスキー等)、スピリッツ(ジン、ウオツカ、テキーラ、ラム等)、リキュール、ブランデー(コニャック、カルバトス、アルマニャック等)、焼酎、チューハイ、ワイン(赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン等)、シードル、シェリー酒、日本酒、梅酒、紹興酒、及びこれらの混合物等から選択することができる。脱アルコールエキスの原料になる酒は、好ましくは、樽で貯蔵した酒である。樽で貯蔵した酒としては、樽貯蔵を行うことを特徴とする蒸留酒、いわゆるブラウンスピリッツがより好ましく、ウイスキー(スコッチウイスキー、バーボンウイスキー等)、スピリッツ(ジン、ウオツカ、テキーラ、ラム等)、ブランデー(コニャック、カルバトス、アルマニャック等)、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
酒の脱アルコール処理は、公知の方法により行うことができる。メンブレンを用いる方法、蒸留による方法(常圧蒸留法、減圧蒸留法等)(条件は限定されないが、例えば、温度30〜100℃、時間2〜4時間、圧力10kPa〜大気圧)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
脱アルコールエキスにはシナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドを含ませることができる。そのため、アルコールテイスト飲料に脱アルコールエキスを配合した場合、結果として、それらのアルデヒドの一部または全てをアルコールテイスト飲料に含ませるのと同じことになる。脱アルコールエキスという形でシナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドが含まれるようにした場合、それらのアルデヒドの合計配合量は、好ましくは40ppb以上、より好ましくは110ppb以上、さらに好ましくは150ppb以上、さらにより好ましくは300ppb以上に配合することができる。当該合計配合量の上限は特に制限されないが、必要に応じ、5.0×10ppb以下、好ましくは3.0×10ppb以下、より好ましくは2.0×10ppb以下、さらに好ましくは1.0×10ppb以下になるように配合してもよい。
【0037】
アルコールテイスト飲料の製造方法は、炭酸ガスを配合する工程を含むことができる。炭酸ガスの濃度は、適宜設定することができる。脱アルコールエキスは単独でもブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する効果を発揮するが、炭酸ガスとの組み合わせによる相乗効果で、その効果をさらに高めることを見出した。
【0038】
アルコールテイスト飲料の製造方法は、その他の成分を配合する工程を含むことができる。ここで、その他の成分とは、糖類、香料、酸味料、pH調整剤、色素、果汁、ビタミン類、色素、酸化防止剤、高甘味度甘味料、乳化剤、保存料、調味料、水溶性食物繊維及びエキス類等が挙げられるが、これに限定されない。その他の成分の配合量は適宜設定することができる。脱アルコールエキスは単独でもブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する効果を発揮するが、酸味付与物質や水溶性食物繊維などその他の成分との組み合わせによる相乗効果で、その効果をさらに高めることを見出した。酸味付与物質は特に限定されず、無機酸又は有機酸のいずれを用いてもよい。例えば、酸味付与物質として、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びそれらの塩が挙げられる。リン酸の塩として、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及びリン酸カルシウム等が例示される。クエン酸の塩として、クエン酸ナトリウム(クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)、クエン酸カリウム、及びクエン酸カルシウム等が例示される。リンゴ酸の塩として、リンゴ酸ナトリム、リンゴ酸カリウム、及びリンゴ酸カルシウム等が例示される。酒石酸の塩として、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、及び酒石酸水素カリウム等が例示される。アルコールテイスト飲料の製造において、酸味付与物質に由来する酸度を特定の範囲に調整することができる。アルコールテイスト飲料の酸味付与物質に由来する酸度(クエン酸換算)は、限定されないが、0.02〜0.4g/100ml、好ましくは0.05〜0.3g/100mlに調整することができる。
【0039】
<ブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する方法>
本発明は、更に、アルコールテイスト飲料にブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する方法により、これまでにない価値を持った新しいタイプのアルコールテイスト飲料を提供することができる。当該方法は、上記で言及したアルコールテイスト飲料の製造方法についての工程を行うことにより実施することができる。
【実施例】
【0040】
本実施例において、本発明の具体例を示す。本実施例は、発明の理解のために示されるものであり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0041】
[試験例1]
本試験において、ウイスキー香料、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドは、市販品を用いた。
【0042】
ウイスキー香料を1.0g/Lとなるように水に配合し、ベースを作成した。シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドをそれぞれ単独で、1.0×101ppb、1.0×102ppb、1.0×103ppb、及び1.0×10ppbとなるようにベースに配合し、試料を作成した。また、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドを等量でベースに配合し、これら3成分の合計量を1.0×101、1.0×102ppb、1.0×103ppb、及び1.0×10ppbに調整した試料を作成した。
【0043】
上記のように作成した試料のブラウンスピリッツらしい味の厚みについて、官能評価を実施した。3人の専門パネラーが、以下に示すように5段階で評価した。3点以上を効果ありと判断した。
1:感じない
2:やや感じる
3:感じる
4:よく感じる
5:とてもよく感じる
【0044】
そして、試料の飲みやすさについても以下に示すように5段階で評価した。飲みやすさは、飲用した際の渋味、苦味、重たさを総合的に評価し、渋みがない、重たくなくて渋み、苦味が少ないものを飲みやすいと評価した。3点以上を効果ありと判断した。
1:飲みにくい
2:やや飲みやすい
3:飲みやすい
4:とても飲みやすい
5:さらに飲みやすい
【0045】
【表1】
【0046】
結果を表1に示す。表中の評価は、3人の専門パネラーの評点の平均値を四捨五入して自然数としたものである。配合量0ppmを比較例、それ以外を実施例とする。シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドをそれぞれ単独で配合することにより、ブラウンスピリッツらしい味の厚みが増強された。シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドのいずれを配合した場合においても、配合量に依存してブラウンスピリッツらしい味の厚みが強くなる傾向にあった。シナピルアルデヒドとコニフェリルアルデヒドは配合量1.0×10ppb以上で明確にブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与し、シリングアルデヒドは1.0×102ppb以上で明確にブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与した。そして、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドを組み合わせて配合した場合にも、配合量に依存してブラウンスピリッツらしい味の厚みが増強されたが、単独で配合した場合に比べて、より低い配合量で効果が得られることが示された。例えば、配合量1.0×10ppb以上で比較すると、組み合わせの評価は4点であり、それぞれの単独の評価(3点、3点、2点)に比べて明らかに高いことがわかる。
【0047】
飲みやすさに関しては、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドをそれぞれ単独で配合した場合、並びにこれら3つを組み合わせて配合した場合のいずれにおいても、評価は良好であった。
【0048】
以上の結果より、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドはいずれも、ブラウンスピリッツらしい味の厚みの増強に有効であることが判明した。そして、これらを組み合わせた場合、ブラウンスピリッツらしい味の厚みをより顕著に増強することが可能であった。組み合わせにおける各成分の配合量が単独で配合した場合の配合量の3分の1であることに鑑みれば、当該組み合わせにより相乗的な効果が発揮されていると考えられる。
【0049】
[試験例2]
試験例1に従って、ベースを作成した。ウイスキーを常圧蒸留することによりアルコールを除去し、脱アルコールエキス(以下「ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)」とする。)を製造した。具体的には、ウイスキー製品5,000mlを蒸留釜に張り込み、常圧蒸留(蒸留温度:30〜100℃、蒸留時間:2〜4時間)に供して約3.7倍に濃縮することにより、ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)を製造した。ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)のシリングアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシナピルアルデヒドの含有量を表2に示す。ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)を分析したところ、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドが検出された(表2)。
【0050】
【表2】
【0051】
ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)を、0g/L、1g/L、2g/L、3g/L、5g/L、10g/L、30g/L、50g/L、及び100g/Lとなるようにベースに配合して試料を作成した。作成した試料のブラウンスピリッツらしい味の厚み及び飲みやすさについて、試験例1の方法に従って官能評価を実施した。
【0052】
【表3】
【0053】
結果を表3に示す。0g/Lを比較例、それ以外を実施例とする。表中の評価は、3人の専門パネラーの評点の平均値を四捨五入して自然数としたものである。ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)を配合することにより、ブラウンスピリッツらしい味の厚みが増強された。その配合量に依存して効果が強くなる傾向にあった。ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)は配合量2g/L以上で明確にブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与した。
【0054】
ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)には、表2より、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドが、それぞれ8.9×10ppb、5.5×10ppb、及び19.4×10ppb含まれている。このことから、ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)を2g/Lとなるようにベースに配合した試料は、シナピルアルデヒドを8.9ppm×0.2%(2g/L=0.2%)=17.8ppb、コニフェリルアルデヒドを5.5ppm×0.2%=11.0ppb、シリングアルデヒドを19.4ppm×0.2%=38.8ppb含有することが理解できる。
【0055】
飲みやすさに関しては、ウイスキー脱アルコールエキス(常圧)の配合量が50g/Lで評価が4点、100g/Lで評価が3点であったが、検討した配合量の範囲では、飲みやすさは良好であった。
【0056】
以上の結果より、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドは、ブラウンスピリッツらしい味の厚みの増強に有効であることが確認された。
【0057】
[試験例3]
試験例1に従って、ベースを作成した。ウイスキーとそれ以外のスピリッツ(ブランデー、ラム、テキーラ)を減圧蒸留することで、アルコールを除去して、脱アルコールエキスを製造した。具体的には、ウイスキーとそれ以外のスピリッツそれぞれの200mlを減圧蒸留(蒸留温度:30〜100℃、蒸留時間:2〜4時間、10kPa以上)に供して4倍濃縮することにより、脱アルコールエキスを製造した。
【0058】
【表4】
【0059】
得られた脱アルコールエキスを分析したところ、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドが検出された(表4)。ウイスキーと同様に、それ以外のスピリッツにもシナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、シリングアルデヒドが含まれていることが判明した。これらのアルデヒドはブラウンスピリッツらしい味の厚みを付与する効果を有することから、これらのアルデヒドを含むウイスキー以外のブラウンスピリッツを蒸留して得られる脱アルコールエキスを用いた場合にも、ブラウンスピリッツらしい味の厚みが付与されることが示唆される。
【0060】
[比較例1]
市販のアルコール風味のノンアルコール飲料を分析し、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドの存在を確認した。
【0061】
【表5】
【0062】
結果を表5に示す。シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドは、分析した市販品には存在しない、又は少なくとも検出限界以下であることが判明した。この結果から、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドを含有するアルコールテイスト飲料は見当たらないことが示唆される。
【0063】
[試験例4]
酒らしい味の厚みに対する酸味付与物質の影響を検討した。試験例1に従ってベースを作成した。シナピルアルデヒド(5ppb又は25ppb)、コニフェリルアルデヒド(5ppb又は180ppb)、及びシリングアルデヒド(20ppb又は100ppb)をそれぞれ単独でベースに配合した。更に、酸味付与物質としてクエン酸三ナトリウムを0〜0.161g/100mlとなるようにベースに配合し、ベースの酸度をクエン酸換算で0〜0.3g/100mlに調整した。これを試料として、ブラウンスピリッツらしい味の厚みについて官能評価を実施した。官能評価は試験例1に示した条件に従った。
【0064】
【表6】
【0065】
結果を表6に示す。シナピルアルデヒドを配合した試料に関し、酸度を特定の範囲(少なくとも、クエン酸換算の酸度で0.05〜0.3g/100ml)に調整した試料は、酸度を調整しない試料に比べて、ブラウンスピリッツらしい味の厚みが高いと評価された。この傾向は、シナピルアルデヒドの配合量が低い(5ppb)試料についての評価からより明確に理解することができる。コニフェリルアルデヒド及びシリングアルデヒドを配合した試料についても、シナピルアルデヒドを配合した試料と同様の評価であった。
【0066】
以上より、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドは、特定範囲の酸度との組み合わせにより、ブラウンスピリッツらしい味の厚みを一層高めることが理解できる。
【0067】
[試験例5]
酒らしい味の厚みに対する酸味付与物質の影響を更に検討した。試験例1に従ってベースを作成した。シナピルアルデヒド(5ppb)、コニフェリルアルデヒド(5ppb)、及びシリングアルデヒド(20ppb)をそれぞれ単独でベースに配合した。更に、酸味付与物質としてリンゴ酸、酒石酸、又はリン酸をベースに配合し、ベースの酸度をクエン酸換算で0.05g/100ml又は0.3g/100mlに調整した。これを試料として、ブラウンスピリッツらしい味の厚みについて官能評価を実施した。官能評価は試験例1に示した条件に従った。
【0068】
【表7】
【0069】
結果を表7に示す。シナピルアルデヒドを配合した試料に関し、酸度を特定の範囲(少なくとも、クエン酸換算の酸度で0.05〜0.3g/100ml)に調整した試料は、ブラウンスピリッツらしい味の厚みが高いと評価された。この傾向は、コニフェリルアルデヒド及びシリングアルデヒドを配合した試料についても同様であった。また、酸味付与物質の種類による影響は確認されなかった。
【0070】
この結果と試験例4の結果を併せて考慮すれば、シナピルアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、及びシリングアルデヒドは、特定範囲の酸度との組み合わせにより、ブラウンスピリッツらしい味の厚みを一層高めることが理解できる。