特許第6879924号(P6879924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6879924医薬として使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤との組み合わせ剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879924
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】医薬として使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤との組み合わせ剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20210524BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20210524BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
   A61K39/395 U
   A61K31/4704
   A61P43/00 121
   A61P35/00
   A61P13/10
   !A61K45/00
   !A61P35/02
【請求項の数】15
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2017-548203(P2017-548203)
(86)(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公表番号】特表2018-511586(P2018-511586A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】EP2016053288
(87)【国際公開番号】WO2016146329
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年1月28日
(31)【優先権主張番号】15290069.2
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520021554
【氏名又は名称】アクティブ バイオテック エイビー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ・アマウリ・ソアレス
(72)【発明者】
【氏名】エリック・シャタイレ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ナカル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・シュミードリン
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−500207(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/195852(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/083178(WO,A1)
【文献】 特表2014−517051(JP,A)
【文献】 特開2006−340714(JP,A)
【文献】 CANCER RESEARCH,2012年,VOL:73, NR:4,PAGE(S):1386 - 1399,URL,http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-12-2730
【文献】 NATURE,2014年,VOL:515, NR:7528,PAGE(S):558 - 562,URL,http://dx.doi.org/10.1038/nature13904
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 39/00−39/44
MEDLINE/EMBASE/CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱癌用の薬剤として使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1抗体および/またはPD−L1抗体とを含む組み合わせ剤。
【請求項2】
膀胱癌の治療に使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1抗体および/またはPD−L1抗体とを含む組み合わせ剤。
【請求項3】
非筋肉浸潤性膀胱癌、筋肉浸潤性膀胱癌または転移性尿路上皮膀胱癌の治療のための、請求項1又は2に記載の組み合せ剤。
【請求項4】
ステージI、ステージIIまたはステージIIIの膀胱癌の治療のための、請求項3に記載の組み合わせ剤。
【請求項5】
前記組み合わせ剤が無増悪生存期間および/または平均余命を改善する、請求項1〜4のいずれかに記載の組み合わせ剤。
【請求項6】
タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1抗体および/またはPD−L1抗体とが別々に、連続的にまたは同時に投与されるものである、請求項1〜5のいずれかに記載の組み合わせ剤。
【請求項7】
前記PD−1抗体および/またはPD−L1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブおよびアテゾリズマブから選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の組み合わせ剤。
【請求項8】
タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1抗体および/またはPD−L1抗体とを含む、膀胱癌の治療用の医薬組成物。
【請求項9】
前記PD−1抗体および/またはPD−L1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブおよびアテゾリズマブから選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
膀胱癌の治療のための同時使用、別々の使用又は連続的使用用の組み合わせ製剤としての、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1抗体および/またはPD−L1抗体とを含む製品。
【請求項11】
前記PD−1抗体および/またはPD−L1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブおよびアテゾリズマブから選択される、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
膀胱癌の第一選択治療としての治療に使用するための、請求項1〜7のいずれかに記載の組み合わせ剤、または請求項8若しくは9に記載の医薬組成物、または請求項10若しくは11に記載の製品。
【請求項13】
癌細胞が検出可能な又は増加レベルのPD−1および/またはPD−L1を発現する膀胱癌の治療に使用するための、請求項1〜7のいずれかに記載の組み合わせ剤、または請求項8若しくは9に記載の医薬組成物、または請求項10若しくは11に記載の製品。
【請求項14】
膀胱癌を治療するためのキットであって、タスキニモドと、PD−1抗体および/またはPD−L1抗体と、個体における膀胱癌を治療するための説明書を含む添付文書とを備えるキット。
【請求項15】
前記PD−1抗体および/またはPD−L1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブおよびアテゾリズマブから選択される、請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤として使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む組み合わせ剤に関する。また、本発明は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む医薬組成物、キットおよび治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
膀胱癌は、膀胱の上皮内層(すなわち、尿路上皮)から生じる数種の癌のいずれかである。ごくまれに、膀胱はリンパ腫や肉腫などの非上皮性癌を伴う。これは、異常細胞が膀胱内で制御不能に増殖する疾患である。最も一般的なタイプの膀胱癌は、尿路上皮の正常組織生成を繰り返すため、転移性細胞癌またはより適切には尿路上皮細胞癌として知られている。米国における5年生存率は約77%である(SEER Stat Fact Sheets:Bladder Cancer. NCI、2014年6月18日検索)。膀胱癌は、2012年に43万の新規症例(世界がん報告書2014、世界保健機関、2014年、第1.1章、ISBN 9283204298)および165,000人の死亡者が発生した癌の第9番目の主因である。
【0003】
過去30年間において転移性尿路上皮膀胱癌(UBC)の治療に大きな進歩はなかった。化学療法が依然として治療の基準である。患者の成果は、特に化学療法が有効でない又は耐容性が低い患者については依然として乏しい(Choueiri,T.K.外,Double−blind, randomized trial of docetaxel plus vandetanib versus docetaxel plus placebo in platinum−pretreated metastatic urothelial cancer. J. Clin. Oncol. 30, 507−512 (2012));Phase III trial of vinflunine plus best supportive care compared with best supportive care alone after a platinum−containing regimen in patients with advanced transitional cell carcinoma of the urothelial tract,J. Clin. Oncol., 27, 4454−4461(2009))。
【0004】
UBCの特徴の一つは、体細胞突然変異率が高いことである(Cancer Genome Atlas Research Network.,Comprehensive molecular characterization of urothelial bladder carcinoma, Nature 507,315−322 (2014);Lawrence,M.S.外,Mutational heterogeneity in cancer and the search for new cancer−associated genes,Nature 499,214−218(2013);Kandoth,C.外,Mutational landscape and significance across 12 major cancer types, Nature 502,333−339(2013))。これらの変化は、抗原数の増加のため、宿主免疫系が腫瘍細胞を異物として認識する能力を増強する場合がある(Chen,D.S.&Mellman,I.Oncology meets immunology:the cancer−immunity cycle,Immunity39,1−10(2013))。
【0005】
しかし、これらの癌は、腫瘍微小環境においてプログラム死−リガンド1(PD−L1;CD274またはB7−H1とも呼ばれる)の発現を介して免疫監視および根絶を逃れる可能性がある(Chen外,Molecular pathways: next−generation immunotherapy−inhibiting programmed death−ligand 1 and programmed death−1.Clin. Cancer Res.,18,6580−6587(2012);Van Rooij,N.外,Tumor exome analysis reveals neoantigen−specific T−cell reactivity in an ipilimumab−responsive melanoma,J.Clin.Oncol.31,e439−e442(2013))。
【0006】
PD−L1は、有効なT細胞機能の阻害による免疫活性化の負の制御因子である。同時阻害性受容体プログラム死1(PD−1)およびそのリガンドは、広範囲の免疫応答における重要な調節因子であり、自己免疫および自己免疫のみならず癌免疫においても重要な役割を果たす。新たな証拠から、癌細胞が抗腫瘍免疫を回避するためにPD−1/PD−リガンド(PDL)経路を使用する可能性があることが示唆されている。この証拠に基づいて、現在、PD−1/PDL経路を標的とする初期ヒト臨床試験が複数のヒト癌について進行中である。抗PD−L1抗体が転移性膀胱癌フェーズII開発段階にある(Powles外,MPDL3280A(anti−PD−L1)treatment leads to clinical activity in metastatic bladder cancer,Nature.2014 Nov 27;515(7528):558−62.doi:10.1038/nature13904.;Errico A.,Immunotherapy:PD−1−PD−L1 axis:efficient checkpoint blockade against cancer,Nat Rev Clin Oncol.2015 Feb;12(2):63.doi:10.1038/nrclinonc.2014.221.Epub 2014 Dec 23.;Muenst S外,The PD−1/PD−L1 pathway:biological background and clinical relevance of an emerging treatment target in immunotherapy.,Expert Opin Ther Targets.,2015 Feb;19(2):201−11.doi:10.1517/14728222.2014.980235.,Epub 2014 Dec 10;M.S.Soloway.Intravesical and systemic chemotherapy in the management of superficial bladder cancer.Urol.Clin.North Am.11(4):623−635,1984)。
【0007】
キノリン−3−カルボキシアミドアナログであるタスキニモド(TasQとも呼ばれている)は、S100A9と呼ばれるタンパク質とその異なる受容体(TLR4、RAGE、EMMPRIN)との相互作用を阻害する。タスキニモドは、免疫調節性、抗血管新生性および抗転移活性を有する。S100A9を標的化することにより、タスキニモドは、骨髄由来抑制性細胞およびマクロファージを含めた抑制性骨髄性細胞を調節する(Shen L外,Tasquinimod Modulates Suppressive Myeloid Cells and Enhances Cancer Immunotherapies in Murine Models.,Cancer Immunol Res.2014 Nov 4.;Jennbacken K外,Inhibition of metastasis in a castration resistant prostate cancer model by the quinoline−3−carboxamide tasquinimod(ABR−215050), Prostate.2012 Jun 1;72(8):913−24,doi:10.1002/pros.21495.Epub 2011 Oct 5;Isaacs外,Identification of ABR−215050 as lead second generation quinoline−3−carboxamide anti−angiogenic agent for the treatment of prostate cancer,Prostate.2006 Dec 1;66(16):1768−78)。タスキニモドは、前立腺癌および他の固形腫瘍の第IIIフェーズ臨床開発段階にある。
【0008】
タスキニモドは、腫瘍微小環境を標的とし、調節性骨髄性細胞機能を調節し、免疫調節性、抗血管新生性および抗転移性を発揮する。タスキニモドは腫瘍低酸素応答も抑制し、その腫瘍微小環境に影響を及ぼすことに寄与する可能性がある。
【0009】
Isaacs外(Cancer Res. 73(4)February 15,2013)には、前臨床モデルに基づいて、タスキニモドがヒト前立腺、乳房、膀胱および結腸腫瘍異種移植片に対する単独療法剤として有効であり、その際、その効果は、腫瘍内皮細胞を選択的に死滅させる標的化タプシガルジンプロドラッグ(G202)と併用してさらに強化することができる可能性があることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤とが相乗的に腫瘍増殖をブロックし、かつ、これらを特に癌の治療、より具体的には膀胱癌の治療のための医薬として併用することができることを実証した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の説明
したがって、本発明は、薬剤として使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む組み合わせ剤に関する。
【0012】
一実施形態では、PD−1および/またはPD−L1阻害剤は、抗体およびペプチドから選択される。
【0013】
また、本発明は、薬剤として使用するための、タスキニモドまたは薬学的に許容されるその塩とPD−1および/またはPD−L1抗体とを含む組み合わせ剤に関する。
【0014】
また、本発明は、薬剤として使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と抗体ではないPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む組み合わせ剤に関するものでもある。好ましくは、本発明は、薬剤として使用するための、タスキニモドまたは薬学的に許容されるその塩と、PD−1および/またはPD−L1阻害剤としてのペプチドとを含む組み合わせ剤に関するものでもある。
【0015】
本発明の一実施形態では、阻害剤、抗体またはペプチドは、PD−L1を阻害する。別の実施形態では、阻害剤、抗体またはペプチドは、PD−1を阻害する。
【0016】
また、本発明は、癌の治療に使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む組み合わせ剤に関する。
【0017】
また、本発明は、癌の治療に使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1抗体とを含む組み合わせ剤に関する。
【0018】
また、本発明は、癌の治療に使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と抗体ではないPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む組み合わせ剤に関する。好ましくは、本発明は、癌の治療に使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1および/またはPD−L1としてのペプチドとを含む組み合わせ剤に関するものでもある。
【0019】
一実施形態では、この組み合わせ剤は、進行癌の治療に使用するためのものである。進行癌は、例えば、転移性癌または末期癌から選択できる。
【0020】
特に、前記癌は、膀胱癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)などの肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵癌、前立腺癌、腎細胞癌、血液悪性腫瘍、特に進行性血液悪性腫瘍、卵巣癌、特に白金耐性卵巣癌、神経内分泌腫瘍(NET)および胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GEP−NET)から選択される。本発明の組み合わせ剤で治療される癌は、任意の段階、例えば初期または後期であることができる。いくつかの実施形態では、治療は、治療の終了後に個体において持続的な応答を生じる。いくつかの実施形態では、治療は、個体における完全な応答、部分的な応答、または不変を生じさせる。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明は、膀胱癌、メラノーマ、肺癌、前立腺癌、腎細胞癌、血液悪性腫瘍、特に進行性血液悪性腫瘍、卵巣癌、特に白金耐性卵巣癌、神経内分泌腫瘍(NET)、特に胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GEP−NET)の治療に使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤、特にPD−1および/またはPD−L1抗体とを含む組み合わせ剤に関するものでもある。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明は、膀胱癌、前立腺癌および腎細胞癌から選択される癌の治療に使用するための、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤、特にPD−1および/またはPD−L1抗体とを含む組み合わせ剤に関するものでもある。
【0023】
特に、上記使用のための組み合わせ剤は、膀胱癌、特に非筋肉浸潤性膀胱癌、筋肉浸潤性膀胱癌並びに転移性および尿道膀胱癌の治療のためのものである。
【0024】
一実施形態では、癌は膀胱癌である。
【0025】
膀胱癌は、癌治療チームが、癌がどれだけ広がっているかを説明するための標準的な方法である病期分類システムによって定義される。膀胱癌のために最も頻繁に使用される病期分類システムは米国がん合同委員会(AJCC)TNMシステムであり、これは次の3つの重要な情報に基づく:
Tは、主な(原発)腫瘍が膀胱壁を通してどれだけ成長したか、およびそれが近くの組織にまで成長したかどうかを示す。
Nは、膀胱付近のリンパ節にまで広がった癌を示す。
Mは、癌が膀胱付近ではない他の器官又はリンパ節などの遠位部位にまで広がっている(転移)かどうかを示す。
【0026】
T、N、Mの後には、これらの要因のそれぞれについての詳細を与えるための数字や文字が表示される。数値が高いほど癌が進行していることを意味する。
【0027】
特に、Tカテゴリーは、主な腫瘍が膀胱の壁にまで(またはそれを越えて)どの程度成長したかを示す。
【0028】
膀胱壁には4つの主要層がある。
・最も内側の内層は、尿路上皮または移行上皮と呼ばれる。
・尿路上皮の下には、結合組織、血管、神経の薄い層がある。
・次が厚い筋肉層である。
・この筋肉の外側では、脂肪結合組織の層が膀胱を他の近くの器官から隔てている。
【0029】
ほぼ全ての膀胱癌は尿路上皮から始まる。癌は、膀胱内の他の層にまでまたは他の層を通って成長するにつれて進行性となる。
・TX:情報不足のため主な腫瘍を評価することができない
・T0:原発腫瘍の証拠がない
・Ta:非侵襲性乳頭状癌
・Tis:非侵襲性扁平上皮癌(扁平上皮癌、CIS)
・T1:腫瘍が膀胱を覆う細胞層から下にある結合組織にまで成長した。腫瘍は膀胱の筋肉層までには成長していない。
・T2:腫瘍が筋肉層にまで成長した。
・T2a:腫瘍が筋肉層の内側半分にのみ成長した。
・T2b:腫瘍が筋肉層の外側半分にまで成長した。
・T3:腫瘍が膀胱の筋肉層を通してそれを取り囲む脂肪組織層にまで成長した。
・T3a:脂肪組織への広がりが顕微鏡を使用することによってのみ見ることができる。
・T3b:脂肪組織への広がりが画像検査で見られる又は外科医が見る又は感じる程度に十分大きい。
・T4:腫瘍が脂肪組織を越えて近くの器官または構造にまで広がった。腫瘍が前立腺の間質(主組織)、精嚢、子宮、膣、骨盤壁、または腹壁のいずれかにまで成長している可能性がある。
・T4a:腫瘍が前立腺の間質(男性)あるいは子宮および/または膣(女性)に広がった。
・T4b:腫瘍が骨盤壁または腹壁にまで広がった。
【0030】
膀胱癌は膀胱の多くの領域に同時に影響を及ぼすことがある。複数の腫瘍が発見される場合には、文字mが適切なTカテゴリーに追加される。
【0031】
膀胱癌のNカテゴリー
Nカテゴリーは、膀胱(真の骨盤内)付近のリンパ節および一般的な腸骨動脈と呼ばれる血管に沿ったリンパ節にのみ広がることを示す。これらのリンパ節は所属リンパ節と呼ばれる。他のリンパ節は遠位リンパ節とみなされる。遠位リンパ節への広がりは転移とみなされる(Mカテゴリーに記載)。リンパ節への癌の転移は、画像検査ではほとんど見られないため、手術が必要である。
・NX:情報不足のためリンパ節の評価ができない。
・N0:リンパ節転移がない。
・N1:癌が真の骨盤内の単一リンパ節に広がった。
・N2:真の骨盤内の2以上のリンパ節に広がった。
・N3:癌が総腸骨動脈に沿ってリンパ節に広がった。
【0032】
膀胱癌のMカテゴリー
・M0:遠位に広がる兆候がない。
・M1:癌が身体の遠位部分に広がった(最も一般的な部位は遠位リンパ節、骨、肺、肝臓である。)。
【0033】
膀胱癌の病期
T、NおよびMのカテゴリーを決定したら、この情報を組み合わせて癌ステージ全体を見出す。膀胱癌のステージは、0およびローマ数字I〜IV(1〜4)を用いて定義される。ステージ0は最も早いステージであり、ステージIVは最も進んだステージである。
【0034】
・ステージ0a(Ta、N0、M0)
癌は非侵襲性乳頭癌(Ta)である。これは膀胱の中空中心に向かって成長しているが、膀胱壁の結合組織または筋肉には成長していない。これは近くのリンパ節(N0)または遠位部位(M0)には広がっていない。
【0035】
・ステージ0is(Tis、N0、M0)
この癌は平坦な非侵襲性癌腫(Tis)であり、平坦上皮内癌(CIS)としても知られている。この癌は膀胱の内層でしか増殖していない。これは膀胱の中空部に向かって内側には成長しておらず、また膀胱壁の結合組織または筋肉には侵入していない。これは近くのリンパ節(N0)または遠位部位(M0)には広がっていない。
【0036】
・ステージI(T1、N0、M0)
この癌は、膀胱の内層下の結合組織層にまで成長しているが、膀胱壁の筋肉層には達していない(T1)。この癌は、近くのリンパ節(N0)または遠位部位(M0)には広がっていない。
【0037】
・ステージII(T2aまたはT2b、N0、M0)
この癌は膀胱壁の厚い筋肉層にまで成長しているが、膀胱を取り囲む脂肪組織層に達するまで筋肉を完全に貫通していない(T2)。この癌は、近くのリンパ節(N0)または遠位部位(M0)には広がっていない。
【0038】
・ステージIII(T3a、T3b、またはT4a、N0、M0)
この癌は膀胱を取り囲む脂肪組織の層にまで成長している(T3aまたはT3b)。前立腺、子宮または膣に広がっている場合があるが、骨盤または腹壁には成長していない(T4a)。癌は近くのリンパ節(N0)または遠位部位(M0)には広がっていない。
【0039】
・ステージIV
次のいずれかが適用される:
T4b、N0、M0:癌が膀胱壁を通って骨盤または腹壁にまで成長している(T4b)。この癌は近くのリンパ節(N0)または遠位部位(M0)には広がっていない。
又は、
任意のT、N1〜N3、M0:癌は近くのリンパ節(N1−N3)には広がっているが遠位部位(M0)には広がっていない。
又は
任意のT、任意のN、M1:癌が遠位リンパ節または骨、肝臓若しくは肺(M1)などの部位に広がっている。
【0040】
本発明の組み合わせ剤は、上記カテゴリーまたはステージのいずれか1つの膀胱癌の治療に使用するためのものである。好ましくは、ステージI以上の膀胱癌、ステージII以上の膀胱癌またはステージIIIの膀胱癌の治療に使用するためのものである。
【0041】
一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤は、無増悪生存期間および/または平均余命を改善する。
【0042】
本発明に係る組み合わせ剤の一実施形態では、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤とは、別々に、連続的にまたは同時に投与される。
【0043】
本発明に係る組み合わせ剤の一実施形態では、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1抗体とは、別々に、連続的にまたは同時に投与される。
【0044】
本発明に係る組み合わせ剤の一実施形態では、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1および/またはPD−L1阻害剤として使用されるペプチドとは、別々に、連続的にまたは同時に投与される。
【0045】
また、本発明は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む医薬組成物に関する。
【0046】
また、発明は、タスキニモドまたは薬学的に許容されるその塩と、PD−1および/またはPD−L1抗体とを含む医薬組成物に関する。
【0047】
また、本発明は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1および/またはPD−L1としてのペプチドとを含む医薬組成物に関する。
【0048】
特に、該医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0049】
また、本発明は、癌、特に膀胱癌の治療のための同時使用、別々の使用又は時間をかけた使用(すなわち、連続的使用)用の組み合わせ製剤としての、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1および/またはPD−L1阻害剤、特にPD−1および/またはPD−L1抗体とを含む製品に関するものでもある。別の好ましい実施形態では、本発明は、癌、特に例えば筋肉浸潤性膀胱癌および転移性尿路上皮膀胱癌および上記任意のカテゴリーまたはステージの膀胱癌を含めた膀胱癌の治療のために同時使用、別々に使用または時間をかけて使用するための組み合わせ製剤としての、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1および/またはPD−L1阻害剤としてのペプチドとを含む製品に関するものでもある。好ましくは、膀胱癌は、ステージI以上またはステージII以上またはステージIIIの膀胱癌である。
【0050】
さらに、本発明は、癌、特に膀胱癌の治療方法であって、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1および/またはPD−L1阻害剤、特にPD−1および/またはPD−L1抗体或いはPD−1および/またはPD−L1阻害剤としてのペプチドを含む組み合わせ剤の治療有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
【0051】
別の態様では、本発明は、癌に罹患している個体における癌を治療し又は癌の進行を遅延させるための、タスキニモドとPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含むキットに関する。このキットは、PD−1および/またはPD−L1阻害剤と、タスキニモドとPD−1および/またはPD−L1阻害剤を併用して個体における癌を治療しまたは癌の進行遅延させるための説明書を含む添付文書とを含むことができる。また、このキットは、PD−1および/またはPD−L1阻害剤と、PD−1および/またはPD−L1阻害剤をタスキニモドと併用して癌に罹患している個体において癌を治療または癌の進行を遅延させるための使用説明書とを含むこともできる。また、このキットは、タスキニモドと、PD−1および/またはPD−L1阻害剤と、タスキニモド並びにPD−1および/またはPD−L1阻害剤を使用して個体において癌を治療しまたは癌の進行を遅延させるための使用説明書を含む添付文書とを含むことができる。
【0052】
添付文書には、キットを使用して治療される癌が特定されている。本発明の実施形態では、膀胱癌としては、例えば、筋層非浸潤性膀胱癌、筋肉浸潤性膀胱癌および転移性尿路上皮膀胱癌並びに上記の任意のカテゴリーまたはステージの膀胱癌が挙げられる。好ましくは、膀胱癌は、ステージI以上またはステージII以上またはステージIIIの膀胱癌である。
【0053】
4−ヒドロキシ−5−メトキシ−N,1−ジメチル−2−オキソ−N−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(CAS番号254964−60−8)としても知られているタスキニモドは、次式(IT)の化合物である:
【化1】
【0054】
この化合物並びにタスキニモド様化合物およびそれらの製造方法は、国際特許出願公開WO00/03991号(特に実施例8)に記載されている。その内容は参照として援用される。
【0055】
タスキニモド様化合物は、例えば、次の一般式(I)の化合物:
【化2】
(式中、
Aは水素及び−CORA(ここで、Aはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、フェニル、ベンジルおよびフェネチルから選択される)から選択され;
2は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチルおよびアリルから選択され;
3はメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチルおよびOCHxy(ここで、x=0〜2、y=1〜3であるが、但し、x+y=3であり、Rがメチルである場合にはR’は水素ではないものとする。)から選択され;
4は水素、フルオロ及びクロロから選択されるが、但し、R4はR’がフルオロ及びクロロから選択される場合にのみフルオロ及びクロロから選択されるものとし;
1はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、ジメチルアミノ、−OCHxyおよび−OCH2CHxy(ここで、x=0〜2、y=1〜3であるが、但しx+y=3であるものとする)から選択される。)
或いは任意の互変異性体および/またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0056】
このような化合物の例は次のものである:N−エチル−N−(3−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−5−クロロ−1−メチル−2−オキソキノリン−3−カルボキサミド;N−メチル−N−(2,4−ジフルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−5−クロロ−1−メチル−2−オキソキノリン−3−カルボキサミド;N−メチル−N−(2,5−ジフルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−5−クロロ−1−メチル−2−オキソキノリン−3−カルボキサミド;N−エチル−N−(3−メトキシフェニル)−1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−5−エチル−1−メチル−2−オキソキノリン−3−カルボキサミド;N−メチル−N−(2,5−ジフルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−5−メトキシ−1−メチル−2−オキソキノリン−3−カルボキサミド;N−メチル−N−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−5−メトキシ−1−メチル−2−オキソキノリン−3−カルボキサミド;またはN−メチル−N−(2,4−ジフルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−5,6−メチレンジオキシ−1−メチル−2−オキソキノリン−3−カルボキサミド。
【0057】
タスキニモド様化合物は、好ましくは、次式(Ia)の化合物:
【化3】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
1はH、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択され;
2はC1〜C4アルキルであり;
3はメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択され;
4は水素、フルオロおよびクロロから選択されるが、但し、R4はR3がフルオロおよびクロロから選択される場合にのみフルオロおよびクロロから選択される;
またはその薬学的に許容される塩である。
【0058】
用語「C1〜C4アルキル」とは、1、2、3または4個の炭素原子を有する分岐または非分岐アルキル基、すなわちメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチルまたはt−ブチルをいう。
【0059】
いくつかの実施形態では、R1は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択される。いくつかの他の実施形態では、R1は、エチル、n−プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択される。さらに他の実施形態では、R1は、エチル、メトキシ、クロロおよびトリフルオロメチルから選択される。いくつかの特定の実施形態では、R1はメトキシである。
【0060】
部分R2はC1〜C4アルキル基であり、この基は分岐状または直鎖状であってよい。いくつかの実施形態では、R2はC1〜C3アルキル基である。いくつかの実施形態では、R2はメチルまたはエチルである。いくつかの特定の実施形態では、R2はメチルである。
【0061】
部分R3は、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択される。いくつかの実施形態では、R3は、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択される。いくつかの特定の実施形態では、R3はトリフルオロメチルである。
【0062】
4は水素、フルオロ及びクロロから選択されるが、但し、R4はR3がフルオロ及びクロロから選択される場合にのみフルオロ及びクロロから選択される。いくつかの実施形態では、R4は水素またはフルオロである。いくつかの特定の実施形態では、R4は水素である。
【0063】
いくつかの特定の実施形態では、式(Ia)の化合物において、
1およびR4は上で定義した通りであり;
2はメチルまたはエチル、特にメチルであり;
3はメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択される。
【0064】
いくつかの他の特定の実施形態では、式(Ia)の化合物において、
1は上で定義した通りであり;
2はメチルまたはエチル、特にメチルであり;
3は、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択され;
4はHである。
【0065】
いくつかの実施形態では、R3はパラ位にある、すなわち式(Ia)の化合物は次式(Ib)で表される:
【化4】
式中、R1、R2、R3およびR4は、上で定義した通りである。
【0066】
例えば、式(Ib)の化合物のいくつかの実施形態では、
1およびR4は上で定義した通りであり;
2はメチルまたはエチル、特にメチルであり;
3はメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択される。
いくつかの他の特定の実施形態では、式(Ib)の化合物において、
1は上で定義した通りであり;
2はメチルまたはエチル、特にメチルであり;
3はメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択され;
4はHである。
【0067】
上記のように、いくつかの実施形態では、R4は水素である。これらの実施形態では、式(Ia)の化合物は、次式(Ic)によって表すことができる:
【化5】
式中、R1、R2、R3およびR4は、上で定義した通りである。
【0068】
例えば、式(Ic)の化合物のいくつかの実施形態では、
2はメチルまたはエチル、特にメチルであり;
3はメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択され;
1は上で定義した通りである。
【0069】
式(Ia)の化合物のいくつかの特定の実施形態では、R3はパラ位にあり、R4はHであり、ここで定義される化合物は、次式(Id)によって表すことができる:
【化6】
式中、R1、R2、R3およびR4は、上で定義した通りである。
【0070】
式(Id)の化合物のいくつかの特定の実施形態では、R2はメチルまたはエチル、特にメチルであり;R3はメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシから選択され;R1はここで定義される通りである。
【0071】
本発明の目的上、式(I)の化合物に対する言及は、特に示さない限り又は文脈から明らかな限り、式(Ia)、(Ib)(Ic)および(Id)のいずれか一つの化合物に対する言及であると解すべきである。
【0072】
式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)および(Id)において上で定義されたタスキニモド様化合物のいずれかまたは全ては、癌の治療用のPD−1および/またはPD−L1阻害剤と併用して相乗効果を示すことが予想される。したがって、本発明は、特に癌に使用するための、特に膀胱癌に使用するための薬剤としての使用のためのタスキニモド様化合物とPD−1および/またはPD−L1阻害剤との組み合わせ剤に関するものでもある。タスキニモドとPD−1および/またはPD−L1阻害剤との組み合わせ剤について本明細書に記載される全ての実施形態は、タスキニモド様化合物とPD−1および/またはPD−L1阻害剤との組み合わせ剤についても同様に適用される。同様に、医薬組成物、製品、キット、治療方法および使用について本明細書に記載される全ての実施形態は、タスキニモド様化合物とPD−1および/またはPD−L1阻害剤との組み合わせ剤にも同様に適用される。
【0073】
タスキニモドまたはタスキニモド様化合物の「薬学的に許容される塩」とは、化合物がその酸塩または塩基塩を生成することによって修飾されることを意味する。薬学的に許容される塩としては、化合物の従来の非毒性塩または第四級アンモニウム塩、例えば非毒性無機酸または有機酸が挙げられる。例えば、このような従来の非毒性塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸;及び酢酸、プロパン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸などの有機酸から誘導されたものが挙げられる。さらなる付加塩としては、トロメタミン、メグルミン、エポラミンなどのアンモニウム塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛またはマグネシウムなどの金属塩が挙げられる。タスキニモドの薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって親化合物から合成できる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基形態と化学量論量の適切な塩基または酸とを、水中若しくは有機溶媒中またはその2種の混合物中で反応させることによって製造できる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストがRemington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,Mack Publishing Company,Easton,PA,1985,p.1418に記載されている。
【0074】
PD−1は、免疫グロブリンスーパーファミリーのI型膜貫通タンパク質であり(Ishida外,Induced expression of PD−1,a novel member of the immunoglobulin gene superfamily,upon programmed cell death.EMBO J 1992; 11(11):3887−95)、その構造は、免疫グロブリンの可変領域に類似した細胞外ドメインを含み、その後膜貫通領域および細胞質テールを含む(Zhang外,Structural and functional analysis of the costimulatory receptor programmed death−1.Immunity 2004; 20(3):337−4)。
【0075】
このものは、B7タンパク質ファミリーに属するPD−L1(B7−H1、CD274)およびPDL2(B7−DC、CD273)として知られている2つのリガンドに結合する。PD−L1は、分化クラスター274(CD274)またはB7相同体1(B7−H1)としても知られており、ヒトにおいてはCD274遺伝子によってコードされるタンパク質である。PD−L1は、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患および肝炎などの他の疾患状態といった特定の事象中に免疫系を抑制するのに主要な役割を果たすと推測されている40kDaの1型膜貫通タンパク質である。通常、免疫系は外来抗原に反応し、その際、リンパ節または脾臓に蓄積し、これが抗原特異的CD8+T細胞の増殖の引き金となる。PD−1受容体/PD−L1またはB7.1受容体PD−L1リガンド複合体の形成がこれらのCD8+T細胞のリンパ節での増殖を減少させる阻害シグナルを伝達し、また、PD−1の補充も、Bcl−2遺伝子のより低い調節によってさらに仲介されるアポトーシスによるリンパ節における外来抗原特異的T細胞の蓄積を制御することができる(Chemnitz外,(2004年7月)、SHP−1 and SHP−2 associate with immunoreceptor tyrosine−based switch motif of programmed death 1 upon primary human T cell stimulation, but only receptor ligation prevents T cell activation, Journal of Immunology 173 (2): 945−54)。
【0076】
「PD−1阻害剤」とは、PD−1の生物学的効果の任意の阻害剤またはアンタゴニスト、すなわちPD−1とそのリガンドであるPD−L1およびPDL2との相互作用を遮断する分子を意味する。
【0077】
「PD−L1阻害剤」とは、PD−L1の生物学的効果の任意の阻害剤またはアンタゴニスト、すなわちPD−L1とその受容体または複数の受容体、例えばPD−1および/またはB7.1(CD80)との相互作用を遮断する分子を意味する。
【0078】
PD−1および/またはPD−L1阻害剤は、例えば、小分子、ペプチド、タンパク質、抗体、拮抗性核酸、例えばsiRNA、miRNA、アンチセンスRNAなどとすることができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品若しくはキット、または本発明に係る方法において、PD−1および/またはPD−L1阻害剤は、抗体またはペプチドから選択される。
【0080】
当業者であれば、化合物がPD−1および/またはPD−L1阻害剤であるかどうかを適切なアッセイで試験することによって決定する方法が分かる。PD−1および/またはPD−L1および/またはPDL2に対する阻害剤の結合は、例えば、当該分野において周知のELISA型アッセイで測定できる。PD−1および/またはPD−L1および/またはPDL2阻害の生物学的効果を測定するためのバイオアッセイは当業者に周知である。例えば、「混合リンパ球反応(MLR)アッセイ」と呼ばれるアッセイが記載されている(ポスターLB−266、米国癌学会2014年会議、AACR2014で提示)。このアッセイでは、ヒトのドナーから単離された末梢血単球を樹状細胞(DC)に分化させ、次いで第2ドナーから単離されたCD4+T細胞と混合する。漸増濃度のPD−1および/またはPD−L1阻害剤の存在下または非存在下で48時間後にIL−2レベルを成熟させ、阻害剤が抗体である場合にはアイソタイプ対照などの適切な対照と比較する。
【0081】
ペプチドである好適なPD−L1阻害剤の例は、例えば、 WO2013/144704号に記載されているペプチド、特に、Proceedings:AACR Annual Meeting 2014;April 5−9,2014;San Diego,CAに記載されかつPD−L1活性およびPLD2活性の両方に拮抗する、AUR−012と呼ばれるペプチドである。
【0082】
「PD−1および/またはPD−L1抗体」とは、PD−1および/またはPD−L1経路を、好ましくはPD−1とPD−L1との結合を阻害することにより遮断することができる抗体を意味する。このような抗体は当業者に知られている。例としては、ONO−4538、BMS−936558またはMDX1106(Bristol−Myers Squibb)としても知られているニボルマブ、商品名Opdivo(登録商標)が挙げられる。ニボルマブはIgG4であり、PD−1を阻害する。さらなる例は、MK−3475(Merck&Co.)としても知られているペンブロリズマブ、CT−011(CureTech)としても知られているのみならずPD−1を阻害するピジリズマブである。PD−L1抗体の例は、例えば、BMS936559、完全ヒト化IGG4抗体、またはMPDL3280A若しくはMEDI4736(両方ともヒトIgG1抗体)である。AMP−224は、PD−1受容体を競合的に遮断することができるB7−DC−Fc融合タンパク質である。AMP−224などの融合タンパク質は、本発明の組み合わせ剤、医薬組成物、生成物、キットまたは方法において使用することができるPD−1および/またはPD−L1阻害剤である。
【0083】
いくつかの実施形態では、PD−1および/またはPD−L1阻害剤は、抗PD−1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体は、ニボルマブ(MDX−1106)、ペンブロリズマブ(Merck3475)およびCT−011よりなる群より選択される。いくつかの実施形態では、PD−1および/またはPD−L1阻害剤はイムノアドヘシン、例えば、免疫グロブリン配列のFc領域などの定常領域に融合されたPD−L1またはPDL2の細胞外またはPD−1結合部分を含むイムノアドヘシンである。いくつかの実施形態では、PD−1および/またはPD−L1阻害剤はAMP−224である。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは抗PD−L1抗体である。いくつかの実施形態では、PD−1および/またはPD−L1阻害剤は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)およびMDX−1105よりなる群から選択される。BMS−936559としても知られているMDX−1105は、WO2007/005874号に記載されている抗PD−L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634号に記載されている抗PD−L1である。MDX−1106−04、ONO−4538またはBMS−936558としても知られているMDX−1106は、WO2006/121168号に記載されている抗PD1抗体である。MK−3475またはSCH−900475としても知られているMerck3745は、WO2009/114335号に記載されている抗PD−1抗体である。hBATまたはhBAT−1としても知られているCT−011は、WO2009/10161号に記載されている抗PD−1抗体である。B7−DCIgとしても知られているAMP−224は、WO2010/027827号およびWO2011/066342号に記載されているPDL2−Fc融合可溶性受容体である。アテゾリズマブ(MPDL3280A)は、転移性膀胱癌において有望な結果を示したため、本発明の枠内での使用に好ましい抗体である。特に、アテゾリズマブの製造元であるRocheは、2015年7月に次の点を公開した:
・このフェーズ1a試験においてPD−L1発現レベルが最も高い患者の半数以上(57%)が1年生存していた;
・完全応答(CR)が20%の人々で観察された;
・結果は、PD−L1の発現が、以前にアテゾリズマブによる治療を受けた転移性膀胱癌の人々とよく相関することを示した。
【0084】
本発明の一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品、または本発明に係る方法において、好ましいPD−1および/またはPD−L1抗体は、ペンブロリズマブおよびニボルマブである。本発明の範囲内で使用するための別の好ましい抗体はアテゾリズマブである。
【0085】
本発明の一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品、または本発明に係る方法は、タスキニモドまたはその任意の薬学的に許容される塩、およびPD−1/PD−L1抗体としてのペンブロリズマブを含む。
【0086】
本発明の一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品、または本発明に係る方法は、タスキニモドまたはその任意の薬学的に許容される塩、およびPD−1/PD−L1抗体としてのピジリズマブを含む。
【0087】
本発明の一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品、または本発明に係る方法は、タスキニモドまたはその任意の薬学的に許容される塩及びPD−1/PD−L1抗体としてのニボルマブを含む。
【0088】
本発明の一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品、または本発明に係る方法は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩及びPD−1/PD−L1抗体としてのアテゾリズマブ(MPDL3280A)を含む。
【0089】
本発明の一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品、または本発明に係る方法は、タスキニモドまたはその任意の薬学的に許容される塩及びPD−1/PD−L1抗体としてのBMS936559を含む。
【0090】
本発明の一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品、または本発明に係る方法は、タスキニモドまたはその任意の薬学的に許容される塩およびPD−1/PD−L1阻害剤としてのAUR−012を含む。
【0091】
「抗体」は、2つの重鎖がジスルフィド結合によって互いに結合し、各重鎖がジスルフィド結合によって軽鎖に結合した天然または従来の抗体とすることができる。軽鎖にはラムダ(l)とカッパ(k)の2種類がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(または同位体):IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEがあり、それぞれα、δ、ε、γおよびμと称する重鎖を有する。γおよびαクラスは、CH配列および機能の比較的わずかな相違に基づいてさらにサブクラスに分類され、例えば、ヒトは次のサブクラスを発現する:IgG配列、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。各鎖は異なる配列ドメインを含む。軽鎖は、2つのドメインまたは領域、すなわち可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、すなわち1個の可変ドメイン(VH)および3個の定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3、まとめてCHと呼ばれる)を含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽(CL)鎖および重(CH)鎖の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、終胎盤移動性、補体結合およびFc受容体(FcR)に対する結合などの重要な生物学的特性を付与する。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、かつ、1個の軽鎖および1個の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性に帰する。抗体結合部位は、主として超可変領域または相補性決定領域(CDR)に由来する残基から構成される。非高頻度可変領域またはフレームワーク領域(FR)由来の残基がドメイン構造全体、そのため結合部位に影響を及ぼす場合がある。相補性決定領域またはCDRとは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を共に規定するアミノ酸配列をいう。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それぞれCDR1−L、CDR2−L、CDR3−LおよびCDR1−H、CDR2−H、CDR3−Hと呼ばれる3つのCDRを有する。したがって、従来の抗体抗原結合部位は、重鎖および軽鎖V領域のそれぞれからのCDRセットを含む6つのCDRを有する。
【0092】
「フレームワーク領域」(FR)とは、CDR間、すなわち、単一種の異なる免疫グロブリン間で比較的保存されている免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域の部分に挟まれたアミノ酸配列をいう。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それぞれFR1−L、FR2−L、FR3−L、FR4−LおよびFR1−H、FR2−H、FR3−H、FR4−Hと呼ばれる4つのFRを有する。
【0093】
本明細書で使用するときに、「ヒトフレームワーク領域」は、天然型ヒト抗体のフレームワーク領域と実質的に同一である(約85%以上、特に90%、95%、97%、99%または100%)であるフレームワーク領域である。
【0094】
本明細書で使用するときに、用語「抗体」とは、従来の抗体およびそのフラグメント、並びに単一ドメイン抗体およびそのフラグメント、特に単一ドメイン抗体の可変重鎖およびキメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体をいう。
【0095】
本明細書で使用するときに、抗体または免疫グロブリンには、直近で記載しかつ相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である「単一ドメイン抗体」も含まれる。単一ドメイン抗体の例としては、重鎖抗体、軽鎖が天然には存在しない抗体、従来の4本鎖抗体から誘導される単一ドメイン抗体、操作された単一ドメイン抗体が挙げられる。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギおよびウシ(これらに限定されない)を含めた任意の種に由来することができる。単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られている天然に存在する単一ドメイン抗体でとすることができる。特に、ラクダ科の種、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカおよびグアナコは、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体を産生する。ラクダ科の重鎖抗体は、CH1ドメインも欠失している。
【0096】
軽鎖を欠くこれらの単一ドメイン抗体の可変重鎖は、当該技術分野では「VHH」または「ナノボディ」として知られている。従来のVHドメインと同様に、VHHは4つのFRおよび3つのCDRを含む。ナノボディは、従来の抗体を超える利点がある:これらは、IgG分子の約10分の1であり、その結果、適切に折りたたまれた機能的なナノボディを試験管内発現によって産生できると共に高い収率を達成することができる。さらに、ナノボディは非常に安定であり、プロテアーゼの作用に耐性がある。ナノボディの特性および産生は、Harmsen及びDe Haard HJによって概説されている(Appl.Microbiol.Biotechnol.2007 Nov;77(1):13−22)。
【0097】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体とすることができる。該モノクローナル抗体はヒト化されていてもよい。別の例では、抗体は、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、ダイアボディおよびVHHよりなる群から選択されるフラグメントとすることができる。
【0098】
本明細書で使用するときに、用語「モノクローナル抗体」または「mAb」とは、特定の抗原に対して指向される単一アミノ酸組成の抗体分子をいい、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとは解釈されない。モノクローナル抗体は、B細胞またはハイブリドーマの単一のクローンによって産生され得るが、組換え、すなわちタンパク質工学によって産生されてもよい。
【0099】
用語「キメラ抗体」とは、その最も広い意味において、1種の抗体からの1以上の領域および1種以上の他の抗体からの1以上の領域を含む操作された抗体をいう。特に、キメラ抗体は、別の抗体、特にヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインに関して、非ヒト動物由来の抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む。非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ等の任意の動物を使用することができる。また、キメラ抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対する特異性を有する多重特異性抗体を示すこともできる。一実施形態では、キメラ抗体は、マウス由来の可変ドメインおよびヒト由来の定常ドメインを有する。
【0100】
用語「ヒト化抗体」とは、最初は完全にまたは部分的に非ヒト起源であり、かつ、ヒトにおける免疫応答を回避する又は最小化するために、特に重鎖および軽鎖のフレームワーク領域内における所定のアミノ酸を置換するように改変された抗体をいう。ヒト化抗体の定常ドメインは、ほとんどの場合、ヒトCHおよびCLドメインである。一実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト由来の定常ドメインを有する。
【0101】
抗体の「フラグメント」は、完全な抗体の一部、特に完全な抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、抗体フラグメントから形成されるFv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、ダイアボディ、二重特異性抗体および多重特異性抗体が挙げられる。抗体のフラグメントは、重鎖抗体またはVHHなどの単一ドメイン抗体であってもよい。
【0102】
用語「Fab」とは、約50,000Daの分子量および抗原結合活性を有する抗体フラグメントであって、IgGをプロテアーゼであるパパインで処理したフラグメントのうち、H鎖のN末端側およびL鎖全体の約半分がジスルフィド結合で結合しているものをいう。
【0103】
用語「F(ab’)2」は、約100,000Daの分子量および抗原結合活性を有する抗体フラグメントであって、IgGをプロテアーゼのペプシンで処理することによって得られたフラグメントのうち、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたFabよりもわずかに大きいものをいう。
【0104】
用語「Fab’」とは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる、約50,000Daの分子量および抗原結合活性を有する抗体フラグメントをいう。
【0105】
一本鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーによって連結されたVHおよびVLコード遺伝子を含めた遺伝子融合体から通常発現される、共有結合VH::VLヘテロ二量体である。本発明のヒトscFvフラグメントは、特に遺伝子組換え技術を使用することにより、適切なコンフォメーションで保持されるCDRを含む。二価および多価抗体フラグメントは、一価scFvの会合によって自発的に形成できる又は二価sc(Fv)2などのペプチドリンカーによって一価scFvを結合させることによって生成できる。「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化されたVH::VLヘテロ二量体である。
【0106】
「(dsFv)2」とは、ペプチドリンカーによって結合した2個のdsFvをいう。
【0107】
用語「二重特異性抗体」または「BsAb」とは、単一分子内の2つの抗体の抗原結合部位を組み合わせた抗体をいう。したがって、BsAbは2つの異なる抗原に同時に結合することができる。例えば欧州特許出願公開第20050764号明細書に記載されているように、所望の結合特性およびエフェクター機能のセットを有する抗体または抗体誘導体を設計、修飾および産生するために遺伝子工学がますます使用されている。
【0108】
用語「多重特異性抗体」とは、単一分子内の2つ以上の抗体の抗原結合部位を組み合わせた抗体をいう。
【0109】
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントであって、重鎖可変ドメイン(VH)が同じポリペプチド鎖(VH−VL)中の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結されたものをいう。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合し、2つの抗原結合部位を形成する。
【0110】
典型的には、抗体は従来の方法に従って調製される。モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilsteinの方法(Nature,256:495,1975)の方法を使用して生成できる。本発明に有用なモノクローナル抗体を調製するために、マウスまたは他の適切な宿主動物を、適切な抗原形態を用いて好適な間隔(例えば、週2回、週1回、月2回または月に2回)で免疫化する。この動物に、犠牲の1週間以内に抗原の最終的な「追加免疫」を投与することができる。免疫化の間に免疫アジュバントを使用することが望ましい場合が多い。好適な免疫アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Ribiアジュバント、ハンターのTitermax、サポニンアジュバント、例えばQS21若しくはQuilA、またはCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドが挙げられる。他の好適なアジュバントは当該分野において周知である。動物を、皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、鼻腔内または他の経路によって免疫化できる。所定の動物は、複数の経路によって抗原の複数の形態で免疫化可能である。
【0111】
本発明は、所定の実施形態において、抗体のヒト化形態を含む組成物および方法を提供する。ヒト化の方法としては、米国特許第4,816,567号、同第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号及び同第5,859,205号に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの文献は参照により本明細書において援用する。また、上記米国特許第5,585,089号および第5,693,761号並びにWO90/07861号は、ヒト化抗体を設計する際に使用できる4つの可能な基準を提案する。第1の提案は、受容体について、ヒト化されるドナー免疫グロブリンに対して著しく相同的である特定のヒト免疫グロブリン由来のフレームワークを使用すること、または多くのヒト抗体由来のコンセンサスフレームワークを使用することであった。第2の提案は、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク中のアミノ酸が異常であり、その位置のドナーアミノ酸がヒト配列に典型的である場合に、アクセプターではなくドナーアミノ酸を選択することができることであった。第3の提案は、ヒト化免疫グロブリン鎖中の3つのCDRにすぐ隣接する位置において、アクセプターアミノ酸ではなくドナーアミノ酸を選択することができることであった。第4の提案は、アミノ酸が抗体の3次元モデルにおいてCDRの3A以内に側鎖原子を有すると予測され、かつ、CDRと相互作用することができると予測されるフレームワーク位置にドナーアミノ酸残基を使用することであった。上記の方法は、当業者がヒト化抗体を作製するために使用することができる方法のいくつかの単なる例示である。当業者であれば、抗体ヒト化のための他の方法に精通しているであろう。
【0112】
抗体のヒト化形態の一実施形態では、CDR領域の外側にあるアミノ酸のいくつか、ほとんどまたは全てがヒト免疫グロブリン分子由来のアミノ酸で置換されているが、1以上のCDR領域内のいくつか、ほとんどまたは全てのアミノ酸は変更されていない。所定の抗原に結合する抗体の能力を無効にしない限りにおいて、アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換または修飾が許容される。好適なヒト免疫グロブリン分子としては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgM分子が挙げられるであろう。「ヒト化」抗体は、元の抗体と同様の抗原特異性を保持する。しかしながら、所定のヒト化方法を使用して、抗体の結合の親和性および/または特異性をWu外,/.Mol.Biol.294:151,1999に記載されるような「指向進化」の方法を用いて増大させることができる。この文献の内容を参照により本明細書において援用する。
【0113】
また、完全ヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子座の大部分についてトランスジェニックマウスを免疫することによって調製することもできる。例えば、米国特許第5,591,669号、同第5,598,369号、同第5,545,806号、同第5,545,807号、同第6,150,584号およびこれらで引用された文献を参照されたい。これらの文献は本明細書において参照により援用する。これらの動物は、内因性(例えば、マウス)抗体の産生において機能的欠失が存在するように遺伝子改変されている。さらに、これらの動物は、これらの動物の免疫感作により目的の抗原に対する完全なヒト抗体が産生されるように、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含むように改変される。これらのマウス(例えば、XenoMouse(Abgenix)、HuMAbマウス(Medarex/GenPharm))の免疫化後に、モノクローナル抗体を標準的なハイブリドーマ技術に従って調製することができる。これらのモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列を有するので、ヒトに投与した際にヒト抗マウス抗体(KAMA)応答を引き起こさない。
【0114】
ヒト抗体を産生するために試験管内方法も存在する。これらの方法としては、ファージディスプレイ技術(米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号)並びにヒトB細胞の試験管内刺激(米国特許第5,229,275号および同第5,567,610号)が挙げられる。これらの特許文献の内容を参照により本明細書において援用する。
【0115】
一実施形態では、本発明の抗体は、抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞毒性(CDC)機能を仲介する能力を低減又は阻害するように改変される(すなわち、Fcエフェクター機能が低下した抗体)。特に、本発明の抗体はFc部分を有さずまたはFcγRIおよびC1qに結合しないFc部分を有する。一実施形態では、抗体のFc部分はFcγRI、C1qまたはFcγRIIIに結合しない。このような機能を有する抗体は一般的に知られている。このような抗体、例えばIgG4のFc領域を有する抗体が天然に存在する。抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞毒性(CDC)機能を排除するために遺伝的にまたは化学的に改変されたFc部分を有する抗体も存在する。
【0116】
本明細書で使用するときに、用語「治療する」、「治療される」または「治療」は、被験体の症状を無くすまたは軽減する治療的処置をいう。有益なまたは望ましい臨床結果としては、症状の消失、症状の緩和、状態の程度の減少、状態の安定化(すなわち悪化しない)状態、状態の進行の遅延または遅延が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書で使用するときに、他に定義されない限り、「癌」とは、体内の異常な細胞の増殖、分裂または増殖をいう。本明細書に記載した組み合わせ剤、医薬組成物、製品および方法で治療することができる癌としては、膀胱癌、メラノーマ、NSCLC(非小細胞肺癌)などの肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、腎細胞癌、血液系腫瘍、特に進行性血液系腫瘍、卵巣癌、特に白金耐性卵巣癌、神経内分泌腫瘍(NET)および胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GEP−NET)が挙げられるが、これらに限定されない。特に、上記のように、本発明に従って治療できる癌の1つは、膀胱癌、例えば非筋肉浸潤性膀胱癌、筋肉浸潤性膀胱癌および転移性尿路上皮膀胱癌である。
【0118】
本発明は、上で詳細に説明した膀胱癌のカテゴリーおよび/またはステージのいずれか、特にステージI以上の進行期またはステージII以上の進行期またはステージIIIの治療に関する。
【0119】
以下の実施例2に示すように、実験的腫瘍モデルからのデータは、タスキニモドによる癌の治療が、タスキニモドの抗腫瘍効果を減弱させる場合がある骨髄細胞上でのPD−L1レベルを増加させる可能性があることを示す。したがって、タスキニモドにPD−1/PD−L1阻害剤を添加すると、タスキニモドの抗腫瘍活性を増強することができる。
【0120】
このデータを考慮すると、本発明は、癌細胞がPD−1および/またはPD−L1および/またはPDL2の検出可能なまたは増加したレベルを発現する癌に罹患している患者を、タスキニモドとPD−1および/またはPLD1阻害剤との組み合わせ剤の治療上有効な量をその治療を必要とする患者に投与することによって治療する方法に関するものでもある。
【0121】
一実施形態では、まず、患者を第1期間にわたってタスキニモドで治療し、その後、第2期間にわたって本発明に係る組み合わせ剤で治療する。第1期間は、例えば、患者由来の癌細胞が検出可能なレベルのPD−1および/またはPD−L1および/またはPDL2を発現しない期間とすることができる。第2期間は、例えば、患者由来の癌細胞が検出可能なレベルのPD−1および/またはPD−L1および/またはPDL2を発現する期間とすることができる。
【0122】
結果として、本発明は、癌細胞が検出可能な又は増加レベルのPD−1および/またはPD−L1および/またはPDL2を発現する癌の治療に使用するための、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品(キットを含む)に関するものでもある。例えば、本発明の組み合わせ剤は、癌細胞が検出可能なレベルのPD−L1を発現する膀胱癌の治療に使用することができる。
【0123】
さらに、本発明は、癌、例えば膀胱癌に罹患している患者であって、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む組み合わせ剤による治療によって最も利益を受ける可能性が高い患者を同定するための方法であって、該方法は、
(i)該患者から得られた試料において、癌細胞によって発現されたPD−1またはPD−L1またはPDL2の発現レベルを決定すること
を含み、基準値と比較した、該患者から得られた試料におけるPD−1またはPD−L1またはPDL2の検出可能なまたは増加したレベルは、該患者が該組み合わせ剤による治療から最も利益を受ける可能性が高いことを示す方法に関するものでもある。
【0124】
PD−1またはPD−L1またはPDL2の発現レベルは、例えば、当業者に知られている任意の方法、例えば、PCRによるRNA発現分析、例えば、定量的リアルタイムPCR、またはイムノアッセイ、例えば酵素結合免疫吸着測定法、またはフローサイトメトリー(FACS)分析の分析方法、例えば、質量分析(MS)、キャピラリー電気泳動質量分析法(CE−MS)、質量分析計に結合された液体クロマトグラフィー(LC−MS、LC−MS/MS)などによって決定できる。
【0125】
本発明に従って使用される「イムノアッセイ」という用語には、競合、直接反応またはサンドイッチ型アッセイが含まれる。このようなアッセイとしては、凝集試験、酵素標識および仲介イムノアッセイ、例えばELISA、ビオチン/アビジン型アッセイ、放射免疫測定法、免疫電気泳動法、および免疫沈降法などが挙げられるがこれらに限定されず、また、より直接的にはELISAに関連する。
【0126】
質量分析(MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE−MS)、質量分析に結合した液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)は、全て当業者に周知の分析方法である。
【0127】
上で引用した技術は、PD−1またはPD−L1またはPDL2のレベルを測定するための適切な方法として記載されているが、本発明の範囲はこれらの例には限定されない。PD−1またはPD−L1またはPDL2の発現レベルを検出するための当業者に知られている他の方法を使用することができる。
【0128】
本明細書で使用するときに、用語「試料」とは、生物起源の物質を意味する。生物学的試料の例としては、血液、血漿、血清、生検または唾液が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の生物学的試料は、当業者に知られている任意の適切なサンプリング手段によって被験体から得ることができる。
【0129】
癌細胞におけるPD−1またはPD−L1またはPDL2の発現レベルを決定するために、試料は、好ましくは腫瘍、例えば膀胱腫瘍の生検である。
【0130】
好ましくは、基準値は、上記の方法の工程(i)の患者の試料と同じ組織由来の試料で測定される。
【0131】
好ましくは、「基準値」は、PD−1またはPD−L1またはPDL2の正常レベルに対応する。
【0132】
本明細書の目的上、PD−1またはPD−L1またはPDL2の「正常レベル」とは、試料中のPD−L1のレベルが、PD−1またはPD−L1またはPDL2についての標準カットオフ値内にあることを意味する。標準は、試料の種類および試料中におけるPD−1またはPD−L1またはPDL2のレベルを測定するために使用される方法に依存する。特に、PD−1またはPD−L1またはPDL2の基準値は、正常細胞におけるPD−1またはPD−L1またはPDL2の発現の非存在または基礎レベルに相当し得る。
【0133】
検出可能な発現レベルは、患者の生物学的試料中におけるPD−1またはPD−L1またはPDL2の発現レベルがPD−1またはPD−L1またはPDL2の検出不可能レベルから検出可能レベルにまで増加した場合に統計学的に有意であると考えられる。患者の生物学的試料中におけるPD−1またはPD−L1またはPDL2の発現レベルが、発現レベルの基準値と比較して少なくとも10または15または20または25または30または35または40又は45または50%のオーダーで増加した場合に、発現レベルの増加は統計学的に有意であると考えられる。
【0134】
これに関連して、癌、例えば膀胱癌に罹患している患者であってタスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤とを含む組み合わせ剤による治療から最も利益を受ける可能性の高い患者を同定するための方法は、キットを使用して実施できる。このキットは、例えば、患者試料中におけるPD−1および/またはPD−L1を検出するための薬剤を含むことができる。PD−1および/またはPD−L1阻害剤は、好ましくは抗体である。患者試料は、治療される腫瘍についての任意の適切な試料、例えば、膀胱壁由来の血液、尿または生検から選択される。このキットは、患者を治療するために使用されるタスキニモドとPD−1および/またはPD−L1阻害剤とをさらに含むことができる。
【0135】
本明細書で使用するときに、用語「患者」とは、本明細書に記載される1以上の疾患および状態に罹患している又はそれに罹患している可能性がある哺乳動物、特にヒトの男性または女性などの温血動物をいう。
【0136】
本明細書で使用するときに、「治療有効量」とは、本明細書に記載の疾患および状態の症状を軽減し、無くし、治療しまたは制御するのに有効な量をいう。「有効量」は、少なくとも、特定の疾患の測定可能な改善または予防を達成するのに必要な最小濃度である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、および体重並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの因子によって変化する場合がある。また、有効量は、治療の毒性または有害な影響を治療上有益な効果が上回る量である。予防的使用について、有益なまたは望ましい結果としては、リスクの排除しまたは減少させること、重症度の軽減させること、または疾患の発生中に現れる疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症状、その合併症および中間病理学的表現型を含めた疾患の発症を遅延させることなどの結果が挙げられる。治療的使用について、有益なまたは望ましい結果としては、疾患に起因する1以上の症状を減少させること、疾患に罹患している人々の生活の質を向上させること、疾患を治療するのに必要な他の薬物の用量を減少させること、例えば標的化を介して別の薬物の効果を増強させること、疾患の進行を遅延させること、および/または生存を延長することなどの結果が挙げられる。癌または腫瘍の場合には、薬物の有効量が癌細胞の数を減少させる;腫瘍のサイズを減少させる;末梢器官への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度減速させるまたは望ましく停止させる);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度減速させ、望ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度阻害する;および/または障害に関連する症状の1以上をある程度緩和することに影響を及ぼすことができる。有効量を1回以上の投与で投与することができる。本発明の目的上、薬剤、化合物、若しくは医薬組成物またはそれらの組み合わせの有効量は、予防的または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。また、2種以上の治療剤を投与する状況における「有効量」とは、1種以上の他の薬剤と併せて望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合には、単一の薬剤の量をいう。
【0137】
「制御する」という用語は、本明細書に記載の疾患および状態の進行を減速させ、遅延し、中断し、阻止しまたは停止させることができる全てのプロセスをいうことを意図するが、ただし必ずしも全ての疾患及び症状を完全に無くすことを示しているわけではなく、予防的治療および慢性的使用を含むことを意図する。
【0138】
本明細書で使用するときに、「薬学的に許容される賦形剤」とは、哺乳動物、特にヒトに適切に投与されたときに、有害なアレルギー性その他の有害な反応を生じさせない分子物質および組成物をいう。薬学的に許容される賦形剤は、任意のタイプの非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料または製剤助剤をいう。
【0139】
一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明による製品を使用して、化学療法がまだ臨床的に示されていない患者の膀胱癌を治療する。
【0140】
したがって、本発明は、癌、特に膀胱癌の第一選択治療としての治療に使用するための、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品に関するものでもある。
【0141】
また、本発明は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1阻害剤、特に抗体とを含む組み合わせ剤が第一選択治療である、本発明に係る治療方法に関するものでもある。
【0142】
本発明において、「第一選択治療」または「第一選択療法」とは、癌、特に膀胱癌を治療するために与えられる最初の治療を意味する。これは手術及び放射線などの標準的な治療法の一部とすることができる。また、これはそれ自体でも使用できる。また、これは誘導療法または一次療法と呼ばれることもある。
【0143】
別の実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品は、他の療法が以前の治療として示された患者の癌、特に膀胱癌を治療するために使用される。このような治療とは、手術、マイトマイシンCなどの化学療法、シスプラチン系の化学療法、ゲムシタビン+シスプラチンまたはメトトレキセート、ビンフルニン、ビンブラスチンまたはドキソルビシン、または放射線療法が挙げられる。
【0144】
したがって、本発明は、癌、特に膀胱癌の第二、第三又は第四選択治療としての治療に使用するための、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品に関するものでもある。
【0145】
また、本発明は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩とPD−1および/またはPD−L1抗体とを含む組み合わせ剤が、第二、第三または第四選択治療である、本発明に係る治療方法に関する。
【0146】
「第二選択治療」または「第二選択療法」とは、化学療法(第一選択治療)などの初期治療が機能しない、または機能しなった場合に行われる治療を意味する。
【0147】
「第三選択治療」または「第三選択療法」とは、化学療法(第一選択治療)などの初期治療およびその後の治療(第二選択治療)の両方が機能しないまたは機能しなくなった場合に行われる治療を意味する。
【0148】
「第四選択治療」または「第四選択療法」とは、化学療法(第一選択治療)などの初期治療およびその後の治療(第二及び第三選択治療)の両方が機能しない又は機能しなくなった場合に行われる治療を意味する。
【0149】
一実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤は、タスキニモドまたは薬学的に許容されるその塩と、PD−1/PD−L1PD−1および/またはPD−L1抗体、特にペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、MK−3475、Merck社)またはニボルマブ(Opdivo、Bristol−Myers Squibb)またはアテゾリズマブ(MPDL3280A)とからなる。
【0150】
本発明の組み合わせ剤、医薬組成物および製品の化合物は、様々な合成経路によって製造できる。試薬および出発物質は、市販されておりまたは当業者によって周知の技術で容易に合成される。
【0151】
本明細書に記載の疾患および状態の治療を必要とする被験体の同定は、当業者の能力および知識の範囲内にある。当業者であれば、臨床試験の使用により、身体検査および医療歴/家族歴、このような治療を必要とする被験体を容易に同定することができる。
【0152】
治療有効量は、当業者としての主治医または診断医によって、従来技術の使用によって、および同様の状況下で得られた結果を観察することによって容易に決定できる。治療有効量を決定する際には、主治医または診断医によって多くの要因が考慮される:例えば、被験体の種;そのサイズ、年齢、および一般的な健康状態;関与する特定の疾患;疾患の程度または重症度;個々の被験体の応答;投与される特定の化合物;投与の様式;投与される製剤の生物学的利用能特性;選択された投与計画;付随する薬剤の使用;他の関連する状況が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
所望の生物学的効果を達成するために必要とされる本発明の組み合わせ剤、医薬組成物および製品の各化合物の量は、投与される薬剤の容量、使用される化合物の化学的特性(例えば疎水性)、化合物の効力、疾患のタイプ、患者の疾患状態、および投与経路を含めて、多数の要因に依存して変化し得る。
【0154】
特に、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品は、治療される疾患、特に癌においてPD−1阻害剤および/またはPD−L1阻害剤に対して活性なものとして知られている用量を含む。
【0155】
特に、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品は、0.001〜50、特に0.01〜20、好ましい実施形態では0.1〜5mg/日のタスキニモドまたはその薬学的に許容される塩を含む。一実施形態では、タスキニモドは、本発明の枠内において約0.25mgまたは約0.5mgまたは約1.0mg、好ましくは毎日、好ましくは経口で使用される。
【0156】
特に、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品は、0.1〜1または5mg/日のタスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、治療される疾患、特に癌におけるPD−1阻害剤および/またはPD−L1阻害剤の活性用量に相当する用量とを含む。
【0157】
本発明に係る組み合わせ剤の各化合物は、別々に、連続的にまたは同時に投与できる。同時に投与される場合には、本発明の組み合わせ剤の化合物は、例えば、単一の医薬組成物で製剤化できる。あるいは、各化合物を製剤化して独立して投与することができる。
【0158】
したがって、本発明は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩と、PD−1および/またはPD−L1阻害剤とを別々に、連続的にまたは同時に投与する、上記使用のための組み合わせ剤に関するものでもある。
【0159】
連続的に投与される場合には、投与の順序は柔軟性がある。例えば、PD−1および/またはPD−L1阻害剤は、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩の投与前に投与できる。あるいは、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩の投与は、PD−1および/またはPD−L1阻害剤の投与に先行することができる。
【0160】
一実施形態では、本発明の組み合わせ剤は、約0.5mgのタスキニモドと約5mg/kgのPD−1および/またはPD−L1阻害剤、例えば、ニボルマブ、イピリムマブまたはアテゾリズマブとを含む。
【0161】
一実施形態では、本発明の組み合わせ剤は、約0.25mgのタスキニモドと約3mg/kgのPD−1および/またはPD−L1阻害剤、例えば、ニボルマブ、イピリムマブまたはアテゾリズマブとを含む。
【0162】
他の実施形態では、本発明の組み合わせ剤は、約0.1mgのタスキニモドと約1mg/kgのPD−1および/またはPD−L1阻害剤、例えばニボルマブ、イピリムマブまたはアテゾリズマブとを含む。
【0163】
別々に投与される場合には、同一のまたは異なる投与様式によって投与できる。投与様式の例としては、非経口、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、並びに経口投与が挙げられる。本発明の一実施形態では、PD−1および/またはPD−L1阻害剤は非経口投与され、タスキニモドは経口投与される。
【0164】
別の実施形態では、本発明に係る使用のための組み合わせ剤、または本発明に係る医薬組成物、または本発明に係る製品は、経口投与のためのものである。
【0165】
上で定義した組み合わせ剤、医薬組成物および組成物の化合物を別々に、連続的にまたは同時に投与するかどうかにかかわらず、該組成物、組み合わせ剤および製品は様々な形態をとることができる。これらのものは、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版;Gennaro,A.R.,Ed.;Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,PA,2000に記載されているように、製薬業界で周知の方法のいずれかによって調製できる。薬学的に相溶性のある結合剤および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることができる。経口組成物は、一般に、不活性希釈剤キャリアまたは食用キャリアを含む。これらのものは、単位用量形態で投与でき、ここで、用語「単位用量」とは、活性化合物自体を含む物理的および化学的に安定な単位用量としてまたは薬学的に許容される組成物として残る、患者に投与することができかつ容易に取り扱うことや包装することができる単回用量を意味する。
【0166】
ここで提供される化合物は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と混合することによって、医薬組成物に製剤化できる。このような組成物は、経口投与、特に錠剤またはカプセル剤、特に口腔内(lyoc)錠剤の形態又は非経口投与、特に液体溶液、懸濁液またはエマルジョンの形態での使用のために調製できる。
【0167】
特に、PD−1および/またはPD−L1抗体は、注射用の形態で処方される。特に、PD−1および/またはPD−L1抗体は、2週間または3週間ごとに投与される。例えば、ペンブロリズマブは、注射用の凍結乾燥粉末で処方され、3週間毎に2mg/kgの用量で投与される。ニボルマブは、注射用の液体形態で処方され、2週間ごとに3mg/kgの用量で投与される。
【0168】
特に、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩は、特に0.1〜10mg、具体的には0.2〜1.5mgのタスキニモドまたはその薬学的に許容される塩を含む錠剤または硬質ゼラチンカプセル剤の形態で、例えば該化合物の0.25、0.5または1mgの錠剤で処方される。特に、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩は、1日2回投与される。
【0169】
錠剤、丸薬、粉末剤、カプセル剤、トローチなどは、次の成分の1種以上、または類似の性質の化合物を含むことができる:微結晶性セルロースまたはトラガカントガムなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの希釈剤;デンプンおよびセルロース誘導体などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミントやサリチル酸メチルなどの香味剤。カプセル剤は、硬質カプセル剤または軟質カプセル剤の形態であってもよく、これらは一般に、可塑剤とブレンドされていてよいゼラチンブレンド並びにデンプンカプセル剤から作製される。さらに、投与単位形態は、投与単位の物理的形態を改変する様々な他の材料、例えば、糖、シェラック、または腸溶性物質の被覆剤を含むことができる。他の経口剤形シロップまたはエリキシル剤は、甘味剤、防腐剤、染料、着色剤および香味料を含むことができる。さらに、活性化合物は、速溶性、調節放出または徐放性製剤および処方物に取り入れることができ、このような徐放性製剤は好ましくはバイモーダルである。
【0170】
例えば、タスキニモドまたはその薬学的に許容される塩は、錠剤または硬質ゼラチンカプセル剤の形態で製剤化できる。
【0171】
例えば、PD−1および/またはPD−L1阻害剤は、注射による投与のために再構成および/または希釈された液体または凍結乾燥粉末の形態で製剤化できる。
【0172】
投与用の液体製剤としては、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。また、液体組成物は、結合剤、緩衝剤、保存剤、キレート剤、甘味剤、香味剤および着色剤などを含むことができる。非水性溶媒としては、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アクリレート共重合体、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの有機エステルが挙げられる。
【0173】
水性キャリアとしては、アルコールと水の混合物、ヒドロゲル、緩衝媒体、および生理食塩水が挙げられる。特に、生体適合性で生分解性のラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体は、活性化合物の放出を制御するのに有用な賦形剤であることができる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補充剤、電解質補充剤、例えばリンガーデキストロースをベースとするものなどを挙げることができる。
【0174】
本発明の使用、医薬組成物、製品、キットまたは治療方法の組み合わせを、癌、例えば進行性膀胱癌などの膀胱癌の適切な追加治療、例えば化学療法または膀胱切除とさらに組み合わせることができる。
【0175】
本発明を、次の図面および実施例によってさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0176】
図1】タスキニモドとPD−1/PD−L1抗体との組み合わせ剤は単独療法と比較して抗腫瘍効果を相乗的に増幅する。
図2】腫瘍接種後10日目から1日2回30mg/kgのタスキニモドの経口投与で治療したマウスに由来するMBT−2腫瘍における遺伝子発現プロファイリング。タスキニモド治療を10日間実施した。データは、対照腫瘍と比較した治療腫瘍の倍数変化として表される。
図3】タスキニモドで治療した腫瘍を有するマウス由来のCD11b+細胞におけるPD−L1のメジアン蛍光強度(MFI)。マウスを腫瘍接種後10日目から毎日2回30mg/kgのタスキニモド経口投与で治療した。タスキニモド治療を7日間実施した。この分析はサイトメトリーにより行った。
図4】タスキニモドによる治療は、確立されたMBT−2腫瘍増殖に影響を及ぼさず、PD−1/PD−L1軸のプロファイルの変化を誘導した。腫瘍細胞接種後11日目(n=12)の無作為化後の30mg/kg(経口強制栄養法、1日2回)のタスキニモドで治療したMBT−2腫瘍の(A)増殖曲線および(B)腫瘍重量。マウスを犠牲にした。腫瘍を採取し、消化し、次いで表面染色した。(C)ビヒクル(対照)またはタスキニモド30mg/kgで15日目に治療した骨髄細胞でのPD−L1発現。(D)浸潤骨髄細胞CD11b+(*、P<0.05;Mann−Whitney検定、群あたりn=5のマウス)でゲートされたPD−L1のメジアン蛍光強度の定量データ。
図5】106個のMBT−2細胞をC3H/HeNRjマウスに皮下注射した。動物を抗PD−L1またはそのアイソタイプ(IgG2B)で腹腔内注射により200μgの用量で治療した。治療は(A)1日目(スチューデント試験;左のパネル:*、P=0.0223)または(B)腫瘍細胞接種後11日目に開始した。腫瘍重量の対応する平均±SEMを右のパネルに示す:(A)1日目:抗PD−L1 448±258.3mg対IgG2B 1535±289.9mg(スチューデント試験;右のパネル:*、P=0.0188);(B)11日目:抗PD−L1 806±400.2mg対IgG2B 1180±367.4mg。
図6】タスキニモドと抗PD−L1療法との組み合わせは腫瘍増殖を相乗的に減少させる。(A)試験設計:皮下MBT−2腫瘍を、平均サイズが50〜100mm3(8日目)に達するまで増殖させた。マウス(n=16)をIgG2B(対照)、抗PD−L1、タスキニモドまたはタスキニモド+抗PD−L1の組み合わせ剤で治療した。(B)腫瘍増殖曲線は、連続カリパス測定値を表す。エラーバーは、平均±SEM(一元配置ANOVA;**、P<0.005、***、P<0.001)を示す。終了点(15日目)での腫瘍重量を(C)に示す(Kruskal−Wallis試験;*、P<0.05、**、P<0.005、***、P<0.001)。実験を少なくとも4回繰り返した。1つの代表的な実験の結果を示す。
図7】タスキニモドと抗PD−L1との組み合わせ剤は細胞傷害性T細胞活性を増加させる。(A)治療後15日目の腫瘍浸潤CD8+細胞の割合の定量データ(n=6)。(B)左のパネル:対照または治療群からの腫瘍におけるグランザイムB(褐色染色)の免疫染色を示す代表的な画像。元の倍率:X200、挿入図:腫瘍の概要。スケールバー:50μm。右のパネル:グランザイムBに対する抗体を用いた全細胞のパーセンテージとして表した腫瘍切片上のグランザイムB陽性細胞の定量化(Kruskal−Wallis検定;*、P=0.0326)。(C)各群からの腫瘍溶解物中における次のサイトカイン:IL−1β、IL−7、IL−12(P70)およびIL−15の濃度レベル(pg/ml)をルミネックス技術を使用して定量した(n=5)。(D)各群の脾細胞(n=5)をブレフェルジンAの存在下でPMA/イオノマイシンで刺激した。IL−2、TNF−αおよびIFN−γ産生を細胞内染色によって調べた。代表的なデータ(平均±SEM)は、フローサイトメトリーによって分析されたCD8+でゲートされた異なるサイトカインのパーセンテージを示した。アスタリスクは一元配置ANOVA(*、P<0.05;**、P<0.005)を使用した統計的有意性を示す。(E)棒グラフは、各治療群の10匹のマウスの血清中におけるIFN−γ濃度を表す。P値は、異なる群間でのKruskal−Wallis検定に基づいて算出した(*、P<0.05;**、P<0.005)。
図8】浸潤性骨髄系細胞の調節因子とPD−1/PD−L1軸の阻害因子を組み合わせることにより、T細胞増殖およびT細胞産生IFN−γが増加する。骨髄細胞CD11b+を、BD FACSAria II(BD Biosciences)を使用して腫瘍から単離した。T細胞を、マウス汎T細胞単離キット(Miltenyei)を使用してナイーブマウスの脾臓から単離した。CFSE標識T細胞をCD3/CD28ビーズ比1:1(Life Technologies)で刺激した。刺激されたT細胞をCD11b+(1:1のCD11b:T細胞比)で培養し、37℃で72時間にわたってインキュベートした。(A)CD8+でゲートされたCFSE−T細胞の蛍光強度を示すFACS分析によって得られた代表的なヒストグラム。(B)異なる治療群からの増殖CD8+細胞のパーセンテージを示す。(C)共培養物の上清中のIFN−γ分泌を、Luminex Technologyを使用して37℃でのインキュベーションの72時間後に測定する。実験を2回繰り返した(Kruskal−Wallis検定、*、P<0.05)。
図9】MBT−2腫瘍細胞を雌のC3H/HeJマウスに同所的に注射した。簡単に説明すると、4時間の脱水後、ケタミンとキシラジンの混合物を使用してマウスに麻酔をした。カテーテル(参照:381212 24G、BD Insyte)を尿道から膀胱に挿入し、30μLの0.1N HClを15秒間注入し、次いで30μLの0.1N NaOHで15秒間にわたって置換した。MBT−2腫瘍細胞(2×106)を45分間にわたって膀胱に注入した。治療を3日目に開始した。タスキニモドを経口胃管栄養法により30mg/kgの投与量で21日間連続して1日2回投与した。抗PD1(クローン:RMP1−14)またはそのアイソタイプ対照(クローン2A3)を10mg/kgの用量で2週間連続して週2回(4日目、7日目、11日目および14日目に)腹腔内経路で注射した。抗PD1、タスキニモド、組み合わせ剤、またはIgG対照で治療したMBT−2腫瘍保持マウスの生存率を図9に示す(n=13)。Dunnet−Hsu試験を使用して群間の全生存率を比較した。
【実施例】
【0177】
例1:癌マウスモデルにおける腫瘍体積の減少に及ぼすタスキニモドとPD−1/PD−L1抗体との組み合わせ剤の相乗効果
タスキニモドとPD−1/PD−L1抗体との組み合わせ剤の効果を評価するための初期研究を次のとおりに実施した。
【0178】
実験手順
マウスおよび細胞株
6〜7週齢のC3H/HeN雄マウスをJANVIER Labsから購入した。MBT−2のマウス膀胱癌細胞株(M.S.Soloway.,Intravesical and systemic chemotherapy in the management of superficial bladder cancer,Urol.Clin.North Am.11(4):623−635,1984)を、JCRB Cell Bankから入手し、そして10%ウシ胎仔血清を補充したイーグル最小必須培地(Life Technologies)中で培養した。
【0179】
腫瘍の成長及び治療
1×106個の細胞をマウスの横腹に皮下注射し、腫瘍が40〜130mm3の体積に達するまで増殖させた(腫瘍細胞接種後約10〜11日)。次いで、腫瘍を有する動物を、表1に示した4つの異なる群に無作為化した。
【0180】
【表1】
【0181】
腫瘍体積(mm3)をキャリパー測定によって評価し、式=(幅)2×長さ/2で算出した。
【0182】
表2に示すように、マウスをタスキニモド(30mg/kg)でp.o(口当たり、すなわち経口投与)により1日2回治療する。PD−L1の遮断のために、200μgのPD−1/PD−L1抗体(クローン10F.9G2;Bio−XCell)を(腹腔内に)3日ごとにマウスにi.p.(腹腔内)投与した。全ての研究は、IPSENの生物倫理委員会(CE2A)およびフランス農林水産省の獣医学サービスによって認可された。
【0183】
【表2】
【0184】
結果
PD−1/PD−L1抗体またはタスキニモド単独は、MBT−2腫瘍の腫瘍増殖にわずかな非有意な影響を及ぼした(表3および図1参照)。
これに対し、両方の化合物の組み合わせによるマウスの治療は腫瘍増殖を効果的に制御した。
【0185】
【表3】
【0186】
結論
上記のように、タスキニモドとPD−1/PD−L1抗体との組み合わせ剤による治療は、マウスにおける抗腫瘍活性を相乗的に促進する。
【0187】
例2:腫瘍における遺伝子発現プロファイリングおよびタスキニモドで治療したマウス由来の骨髄細胞におけるPD−L1発現
方法
定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)
マウスを例1に記載したとおりに治療した。タスキニモドによる治療の10日後、すなわち腫瘍接種20日後に、Trizol試薬(LifeTechnologies)を使用して100μmのOCT包埋腫瘍凍結切片から腫瘍由来のRNAを単離した。RNA濃度および純度を、NanoDrop ND−1000分光光度計を用いてA260/A280比を測定することによって決定した。RNAの完全性を、Agilent 2100 Bioanalyzerを使用して確認した。高容量cDNA逆転写キット(LifeTechnologies)を使用して、製造者の指示に従ってcDNAを調製した。q−PCRを、Taqman遺伝子発現(LifeTechnologies)を使用して3ステップPCRプロトコールで実施した(95℃で10分間、続いて95℃で15秒間、そして60℃で1分間の40サイクル)。発現レベルを、標的遺伝子とTaqman技術に関する2つの「ハウスキーピング」HmbsおよびシクロフィリンAとの間の正規化ΔCt発現値として算出した。データを、対照腫瘍と比較した治療腫瘍の誘導倍率(2ΔΔCt)として示した。実験で使用したプローブは次のとおりである。
【0188】
【表4】
【0189】
FACS分析
マウスを例1に記載したとおりに治療した。タスキニモドによる治療の7日後、すなわち腫瘍接種の17日後に、単一細胞懸濁液を、切断して小片にした腫瘍を8mg/mlコラゲナーゼIV型(lifetechnologies)および0.1%DNアーゼ(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)中において37℃で45分間インキュベートすることによって調製した。腫瘍を70μmの細胞ストレーナで捕捉した。細胞をFc−ブロッカー(クローン2.4G2;BD Biosciences)でブロックし、次いでそれぞれBD Biosciences(San Jose、CA)およびeBioscienceから購入したCD11b APC(クローンM1/70)およびCD274 PE Cy7(クローンMIH5)で染色した。細胞をFortessa X−20(BD Biosciences)により分析した。
【0190】
結果
M2マクロファージマーカーであるCD206の発現の低下、およびマクロファージM1によって放出されることが知られているnos2およびIl−12bの発現の増加が観察された(図2)。タスキニモドによって誘導されたこのマクロファージのM2からM1への表現型転換は、腫瘍微小環境におけるCd274のmRNA発現の増加と関連していた。興味深いことにかつ予想外のことに、本発明者は、タスキニモドで治療した腫瘍を有するマウスの骨髄細胞で発現されたPD−L1のメジアン蛍光強度が増加することも見出した(図3)。本発明者の知見は、タスキニモドが腫瘍において局部的な前炎症環境を誘導し、これが次にPD−L1の発現を誘導する可能性があることを強く示唆するものである。このタスキニモド治療後のPD−L1増加は、その抗腫瘍免疫応答を減弱させ、かつ、活動的な膀胱癌においてタスキニモドと抗PD−L1とを組み合わせてその抗腫瘍活性を増強することの理論的根拠の洞察を与える。
【0191】
例3:タスキニモド治療後の腫瘍組織においてPD−L1の発現が増加する
また、本発明者は、タスキニモドが腫瘍移植後の後の時点で与えられたときに、確立された腫瘍で腫瘍の進行を阻害できるかどうかを調査した。この目的のために、MBT−2腫瘍が50〜100mm3の範囲の腫瘍体積に達したときに動物を治療した(図4AおよびB)。この状況において、驚くべきことに、タスキニモド(30mg/kg)は、腫瘍成長を阻害する能力を失った。依然として維持されていたタスキニモドの免疫刺激効果にもかかわらず(表S1)、原発腫瘍を根絶するための適応免疫応答の最適な活性化は損なわれているようである。本発明者は、このタスキニモド治療に対する耐性がPD−1/PD−L1軸などのT細胞阻害経路の誘導に起因する可能性があるとの仮説をたてた。実際に、タスキニモドで治療したMBT−2腫瘍において、PD−L1のmRNA発現が増加することが見出された(表S1)。さらに、本発明者は、MBT−2腫瘍由来の単球性MDSCを含めたCD11b+細胞でゲートされたPD−L1の発現が増加することを観察した(図4CおよびD)。PD−1の発現レベルは、タスキニモド治療の結果として変化しなかった(図示せず)。これらのデータから、PD−L1発現の変化がタスキニモド治療を受けた確立されたMBT−2腫瘍における腫瘍増殖阻害の欠如の原因となる可能性があることが示唆される。本発明者の知見は、腫瘍がタスキニモド治療の効果を逃れる潜在的な耐性機構として骨髄細胞のPD−L1発現の上昇を確認するものであった。これらの知見は、タスキニモド及びPD−L1/PD−1軸遮断を含めた併用治療計画を使用することで、この耐性を克服することができることを示している。
【0192】
表S1:タスキニモド治療後のmRNA発現の差異
異なる遺伝子の相対的mRNA発現を、対照群と比較してタスキニモドを用いた治療動物のMBT−2腫瘍で調査した。治療は腫瘍細胞接種後11日目に開始し、qRT−PCR分析を15日目に行った。結果を対照と比較した平均倍数変化として表す。P値を、スチューデント試験を使用して評価した。
【0193】
【表5】
【0194】
例4:タスキニモド/抗PD−L1の組み合わせ剤の治療はBCaにおける抗腫瘍効果を向上させる
MBT−2腫瘍モデルにおけるタスキニモド治療で観察されるように、抗PD−L1は、腫瘍細胞接種後1日目に単薬として投与される場合に腫瘍発生を阻害した(図5A)。しかし、抗PD−L1単独の抗腫瘍活性は、潜在的には腫瘍負荷の増加のため、確立された腫瘍の治療の際に失われた(図6Bおよび5A)。したがって、本発明者は、骨髄性細胞機能のモジュレーターと免疫チェックポイント阻害剤とを組み合わせることによって、抗腫瘍応答が増強され得るかどうかを調査した(図6A)。その結果から、タスキニモドと抗PD−L1とを組み合わせて治療したマウスは、単一治療または対照群と比較して、腫瘍増殖および腫瘍重量(図6C)の有意な減速を示すことが示された(図6B;対照413±51mm3;PD−L1 325±52mm3;タスキニモド343±67;組み合わせ剤129±15mm3)。本発明者は、抗腫瘍応答を発揮する際にいずれの薬剤による単独療法よりも優れていることを実証した。
【0195】
例5:治療の組み合せはT細胞の活性化を増大させる
次に、本発明者は、併用療法が適応免疫応答を活性化できるかどうかを調査した。本発明者は、TILの割合およびそれらのエフェクターサイトカイン放出能を分析した。タスキニモドと抗PD−L1との組み合わせ剤は、CD8+TILの2.7倍の増加を誘導した(図7A)。並行して、対照と比較すると併用処置群においてもグランザイムBを産生するリンパ球の割合が有意に増加ずることが観察された(図7B)。また、本発明者は、7日間にわたる治療を受けた腫瘍におけるサイトカイン発現プロファイルも分析した(図7C)。IL−2スーパーファミリーに属するIL−7およびIL−15は、IL−2.31よりもT細胞の生存率および細胞傷害効果をより大きく増大させることが報告されている。対照と比較して、タスキニモドと抗PD−L1との組み合わせ剤で治療した腫瘍においてIL−7、IL−15およびIL−12の産生の顕著な増加が見られた(図7C)。これらのサイトカインは、単一治療群では有意には増加しなかった。
【0196】
MBT−2腫瘍モデルにおいてタスキニモドと抗PD−L1との組み合わせ剤によって誘導された免疫応答をさらに調査するために、腫瘍を有するマウスから脾細胞を単離し、PMA/イオノマイシンで4時間にわたって刺激した。対照と比較して、CD8+でゲートされたIL−2、IFN−γおよびTNF−αの細胞内発現が増加することが対照群で見られた(図7D)。また、抗PD−L1単独で治療した腫瘍においてもCD8+産生IFN−γが増加した。さらに、単剤または対照群と比較して、併用療法で治療したマウスの血清中への多量のIFN−γが見られた(図7E)。これらのデータは、全て、タスキニモドと抗PD−L1治療との組み合わせが適応免疫系を活性化して細胞傷害性免疫応答を発揮することを示すものであった。
【0197】
例6:強力な免疫応答を誘導するためには自然免疫細胞および適応免疫細胞の両方の活性化が必要である
併用群において観察された細胞傷害性サイトカインを産生するCD8+細胞の増加の基礎をなす機構をさらに理解するために、本発明者は、治療を受けた腫瘍に由来する骨髄細胞がT細胞と直接相互作用してそれらの機能に影響を及ぼす可能性があると仮定した。この目的のために、本発明者は、腫瘍から骨髄細胞CD11b+を単離し、未処置マウスの脾臓に由来するT細胞を培養液に入れた。
【0198】
タスキニモドで治療された確立された腫瘍に由来するCD11b+の免疫調節は、生体外で刺激されたCD8+T細胞の増殖増加能を制限した(図8AおよびB)。さらに、抗PD−L1治療腫瘍に由来するCD11b+中のPD−L1の遮断も生体外でT細胞を活性化する中等度の能力を有していた。重要なことに、骨髄細胞およびT細胞阻害機能の両方のモジュレーターを組み合わせることで、増殖CD8+細胞の割合が大きく増加した。これは、対照、タスキニモド単独または抗PD−L1単独(図8C)と比較して、上清中へのIFN−γの強力な分泌を伴う。まとめると、本発明者は、MBT−2腫瘍におけるタスキニモドと抗PD−L1との組み合わせ剤が、CD8陽性T細胞増殖およびIFN−γの産生に影響を与える免疫抑制性骨髄細胞を調節することを見出した。さらに、これらのデータは、骨髄性細胞とT細胞との間の相乗的相互作用をさらに確証し、先天性および適応性の免疫系の両方の細胞集団間の連絡を調節することを目的とする抗腫瘍介入治療を示唆する。
【0199】
例7:タスキニモドと抗PD−1抗体の組み合わせ剤は単独で使用されるいずれの薬剤による治療後の生存を有意に超えて腫瘍モデルにおけるマウスの生存を延長する
30mg/kgの用量でのタスキニモド単独では、対照マウスについての29日間(図9)と比較して、マウスのメジアン生存期間を延長させることができなかった(27日間)。しかしながら、抗PD−1治療はマウスの生存期間の中央値を43日まで延長させることができるにもかかわらず、タスキニモドと抗PD−1との組み合わせ剤は単独で使用されたいずれの薬剤よりも極めて優れていた。
【0200】
材料および方法
細胞株
MBT−2をJCRB Cell Bankから購入し、10%ウシ胎仔血清を補充したEMEM(Life Technologies)中で培養した。AY−27をOncodesign(Dijon、France)から入手し、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640中で維持した。これらの細胞株にマイコプラズマ汚染はなかった。他の認証アッセイは実施しなかった。
【0201】
生体内実験
6〜7週齢の雄のC3H/HeNRjマウスをJANVIER Labsから購入した。5〜6週齢の雌フィッシャー344(F344/IcoCrl)ラットをCHARLES RIVERから得た。
【0202】
MBT−2細胞(1×106)をマウスの脇腹に皮下注射し、得られた腫瘍を21日間にわたって成長させた。腫瘍をキャリパーで測定し、腫瘍体積(mm3)を、式=(幅)2×長さ/2の式を用いて算出した。
【0203】
動物を経口胃管栄養法により異なる用量のタスキニモド(0、1、1、10および30mg/kg)で1日2回10ml/kgの量で21日間治療した。PD−L1をブロックするために、抗PD−L1(10F.9G2;BioXCell)またはそのアイソタイプ対照(LTF−2;BioXCell)200μgをマウスに腹腔内経路で100μlの容量で3日間毎に各実験について合計3〜4回の注射で投与する。
【0204】
膀胱内AY−27癌モデルの手順を、Oncodesign(フランスDijon)によって実施した。腫瘍細胞(1×106)を膀胱壁の内面に同所的に注射した。タスキニモドによる治療は、4日目に2mg/kgの用量で1日2回、28日連続して開始した。腫瘍細胞の接種後4日目から7日ごとに1日1回、シスプラチン(CDDP、EBEVE)を2mg/kgで投与した。全ての磁気共鳴画像(MRI)を、ParaVision(登録商標)(Bruker Biospin)を使用して行った。
【0205】
動物を使用する全ての手順は、Oncodesign(Oncomets)の動物管理および使用委員会並びにIPSEN(C2EA)によって検証され、フランス研究省によって認可された。
【0206】
FACS分析
小片にクロスカットした腫瘍を8mg/mlコラゲナーゼIV(Life Technologies)および0.1%DNアーゼ(Sigma−Aldrich)中において37℃で45分間インキュベートすることによって、腫瘍から単一細胞懸濁液を調製した。細胞をFc−ブロッカー(2.4G2)でブロックし、その後、BD Biosciences、eBioscienceおよびBioLegendから購入したCD11b(M1/70)、F4/80(クローンBM8)、CD206(C068C2)、Ly6C(AL−21)、Ly6G(1A8)、CD4 (RM4−5)、CD3ε(145−2C11)、NK−1.1(PK136)及びCD8a(53−6.7)に対する様々な抗体で染色した。サイトカイン染色については、細胞をGolgiPlug(商標)(BD Biosciences)の存在下で4時間にわたって白血球活性化カクテルにより試験管内で刺激し、BD Cytofix/Cytoperm(商標)(BD Biosciences)を使用して浸透させて固定し、次いでeBioscienceから購入した抗IL−2(JES6−5H4)、抗TNF−α(MP6−XT22)および抗IFN−γ(XMG1.2)抗体で染色した。フローサイトメトリー分析を、BD FortessaX−20(BD Biosciences)を用いて行った。FlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.)を使用してデータを分析した。CD11b+選別を、キューリー研究所コア施設(フランスOrsay)の支援を受けて、BD FACSAria(商標)II(BD Biosciences)で実施したところ、到達した最終純度は95%を超えた。あるいは、CD11b+細胞を、MACS(登録商標)マイクロビーズ(Miltenyi)を使用して分離した。この手順により、FACS分析によって評価したときに主として80%を超える純度のCD11b+細胞が得られた。
【0207】
生体外T細胞増殖アッセイ
T細胞(1×105)を、汎T細胞単離キット(Miltenyi)を使用してナイーブマウスの脾臓から単離した。T細胞をCellTrace(商標)CFSE細胞増殖キット(Life Technologies)で標識し、Dynabeads(登録商標)マウスT−アクティベーターCD3/CD28(Life Technologies)によって1:1のビーズ対細胞比で活性化した。腫瘍由来の単離CD11b+細胞(1×105)を1:1のCD11b:T細胞比で標識T細胞に添加し、72時間にわたって培養液中でインキュベートした。
【0208】
サイトカイン誘導アッセイ
脾細胞(1×106)をGolgiPlug(商標)(BD Biosciences)の存在下でPMAとイオノマイシンとの混合物により4時間刺激した。細胞を採取し、表面マーカーについて染色し、その後透過性にし、固定し、そして抗IL−2(JES6−5H4)、抗TNF−α(MP6−XT22)および抗IFN−γ(XMG1)により細胞内サイトカインに対して染色した。
【0209】
免疫化学
S100A9染色を、複数の癌組織(がん実態調査、AsterandからのOrigenおよびTop4多発腫瘍)またはBCa腫瘍(FFPE TMA、#BLC241および膀胱癌腫切片#HuCAT416、Usbiomax)からなるヒト組織マイクロアレイ(TMA)からのFFPEで実施した。低pH溶液(Dako)およびペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジン反応で抗原回収した後、腫瘍切片をS100A9に対する抗体(1:5000;Abcam#ab92507)と共にインキュベートした。染色強度を半定量的に評価した。
【0210】
動物の腫瘍をサンプリングし、2片に切断し、そしてOCT化合物に包埋し、又はホルマリンに24時間浸漬固定し、そしてパラフィンに包埋した。FFPE切片(5μm)を、低pH溶液(Dako)中で抗原回収した後にグランザイムB(1:100;Abcam#ab4059)、S100A9(1:1000;R&D systems#AF2065/Abcam#ab62227)またはCD8(1:200;AbD Serotec#MCA48R)と共にインキュベートした。ペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジン反応により染色が明らかになった。画像解析を、Haloソフトウェア(Indica labs)を使用してスライドスキャンで行った。グランザイムB染色細胞を計数し、腫瘍切片中の細胞の総数に関して報告した。
【0211】
多重アッセイによるサイトカイン測定
サイトカインを、凍結OCT化合物(フランスVWR)包埋腫瘍の厚さ1mmの切片から抽出した。PBSで3回洗浄した後、ペレットをPBS+プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)に再懸濁し、ホモジナイザー(Fastprep(登録商標)、MP Biomedicals)中においてセラミックビーズで粉砕した。異なる試料についてタンパク質濃度をアッセイした。サイトカインを、多重免疫アッセイキット(Merck−Millipore)を使用して、製造者の指示に従って測定した。シグナル検出をLuminex 200(Luminex)で行い、メジアン蛍光強度(MFI)を記録した。
【0212】
定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)
がん実態調査cDNAアレイをOrigeneから購入し、これは正常領域または疾患領域のいずれかの17種のヒト組織型からの381cDNA(2〜3ng/ウェル)を含むものであった。
【0213】
マウスCD11b+のRNA抽出を、PicoPure(登録商標)RNA単離キット(Life Technologies)を使用して行った。腫瘍中のRNAを、Trizol試薬(Life Technologies)を使用してOCT包埋腫瘍の厚さ100μmの凍結切片から単離した。高容量cDNA逆転写キット(Life Technologies)を製造者の指示に従って使用してcDNAを調製した。CD11b+単離細胞由来のcDNAを、TaqMan PreAmp Master Mix(Life Technologies)を使用して予備増幅した(14サイクル)。リアルタイムPCR(q−PCR)を、Taqman遺伝子発現(Life Technologies)を使用して2段階PCRプロトコール(95℃で10分間、続いて95℃で15秒間、そして60℃で1分間の40サイクル)で実施した。使用したプローブを表S2に示す。Hmbsを「ハウスキーピング」遺伝子として使用し、この遺伝子の発現は、他のハウスキーピング定量化遺伝子(例えば、シクロフィリンA)と相関があった。発現レベルを、標的遺伝子と「ハウスキーピング」遺伝子との間の正規化ΔCt発現値として算出した。
【0214】
【表6】
【0215】
統計
Prism6.0ソフトウェア(GraphPad Software)を使用してデータを分析し、生物統計学者が検証した。実験を必要に応じて2〜4回繰り返した。データ正規分布を、Shapiro−Wilk検定を使用して評価した。その際、P値をスチューデントt検定または分散分析(ANOVA)のいずれかによって評価した。他のデータ分布については、Mann−WhitneyまたはKruskal−Wallis検定を使用した。0.05未満のP値を統計的に有意であるとみなした(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)。
図1
図2
図3
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図5
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図9