(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリシロキサンが、シラノール基を有するシロキサンポリマー、シラノール基を有するシランモノマー、またはそれらの混合物と、表面に水酸基またはアルコキシ基を有するケイ素酸化物ナノ粒子とを、水性溶媒と有機性溶媒との混合溶媒中、相間移動触媒の存在下で反応させることにより得られることを特徴とするケイ素酸化物ナノ粒子とシロキサンポリマーの複合体である、請求項1または2に記載の方法。
前記ポリシロキサンが、シラノール基を有するシロキサンポリマー、シラノール基を有するシランモノマー、またはそれらの混合物と、表面に水酸基またはアルコキシ基を有する金属酸化物ナノ粒子とを、水性溶媒と有機性溶媒との混合溶媒中、相間移動触媒の存在下で反応させることにより得られることを特徴とする金属酸化物ナノ粒子とシロキサンポリマーとの複合体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
光機能性膜
本発明による光機能性膜は、シリカ質材料を含んでなる。ここでシリカ質材料とは、シロキサンを主体とした材料であり、このようなシリカ質材料を含む光機能性膜の形成方法は後述する。
【0017】
本発明において光機能性膜は、光学的な特徴を有している。すなわち、光機能性膜の一方の表面と反対側表面とで光に対する屈折率が異なっている。具体的には、光機能性膜の両側の表面をそれぞれAおよびBとしたとき、表面Aの光に対する屈折率n
Aが、反対側表面Bの光に対する屈折率n
Bに対して大きくなっている。そして、前記表面Aから前記表面Bまで、光に対する屈折率が連続的に減少している。ここで、屈折率は入射する光の波長によって変化するが、たとえば、光を利用するような表示装置の場合は、人間の眼の感度ピークである波長が555nm付近の光に対する屈折率を考慮すればよい。また、「光に対する屈折率が連続的に減少している」というのは、表面Aから厚さ方向(深さ方向)の距離に対して、屈折率をプロットしたときに、屈折率が不連続に変化しないことをいう。具体的には、表面Aからの距離(深さ)に対する屈折率をプロットしたときに、
図2〜4のようになだらかに変化することをいう。反対に、
図5に示されるように、表面Aと表面Bとにおける屈折率が異なっていても、表面Aからのある一定の距離となったときに、屈折率が不連続に変化するものは、「光に対する屈折率が連続的に減少している」とはいえない。この
図4に示されるような屈折率変化を示すのは、たとえば、屈折率が異なる2つの透明層を密着させたばあいである。このような場合、その2つの層の間に界面があり、その界面で屈折率が不連続に変化することになる。そして、この界面において光の反射が起こるために、本発明で達成される効果を得ることができない。言い換えれば、本発明による光機能性膜は、両側表面で屈折率が異なるにもかかわらず、界面を有していないものであるといえる。なお、従来、屈折率の差が小さい多数の膜を段階的に積層することで全体の光反射を抑制する方法も検討されているが、このような方法でも、屈折率の差は小さいながら界面は存在していた。本発明ではより簡単な構造で、内部に界面の無い光機能膜が提供される。なお、本発明における「光」とは、紫外光、可視光、および赤外光などの電磁波をいう。
【0018】
屈折率変化は、屈折率の高い表面Aから屈折率の低い表面Bにわたって、連続的に変化していればよい。たとえば、
図2に示されるように、表面Aから一定の距離までは変化せず、距離が一定の範囲内で屈折率が変化した後、さらに表面Bまでの屈折率が一定であるものであってもよい。このような光機能性膜は、後述する方法で比較的簡便に製造できるので好ましいものである。また、
図3に示されるように表面Aから表面Bにかけて、単調に屈折率が変化しても、また、
図4に示されるように屈折率が2段階で起こるものであってもよい。本発明による光機能性膜は、このように膜内に界面が無いために、膜内での光反射が起こらない。
【0019】
本発明による光機能性膜は、後述するように半導体素子などに適用されるものである。
したがって、この光機能性膜の表面Aおよび表面Bは、種々の媒体と接触するように配置される。たとえば、太陽電池などの受光素子の表面に用いられる場合には、通常、屈折率の高い表面Aが半導体素子の表面に接触し、屈折率の低い表面Bは空気に接触する。また、本発明による光機能性膜が発光素子の表面に用いられる場合には、発光素子の発光面に屈折率の高い表面Aが発光素子の表面に接触し、屈折率の低い表面Bは、さらに光機能性膜の上に設けられたガラス保護膜に接触することがある。
【0020】
このように本発明による光機能性膜は、その表面がほかの媒体に接触することがある。
このとき、表面Aに接触する媒体Xの屈折率がn
Xであり、表面Bに接触する媒体Yの屈折率がn
Yであるとき、
n
Y≦n
B<n
A≦n
X
の関係を満たすことが好ましい。特に、表面Bが空気に接触している時には、
1≦n
B<n
A≦n
X
であることが好ましい。そして、一表面の屈折率と、その表面に接触する媒体の屈折率との差が大きいと、その接触界面において光反射が大きくなる。したがって、n
Yとn
Bの差、およびn
Aとn
Xの差は小さいことが好ましい。理想的には、n
B−n
Y=0、n
x−n
A=0である。なお、n
Aとn
Xの差が1%未満であれば、n
A<n
Xであったとしても、本発明の効果は実質的に失われない。ここで、各屈折率は、光を利用する場合は、波長が555nmの光に対するものである。
【0021】
本発明による光機能性膜が発光素子などの保護膜や、半導体素子の反射防止膜に用いられる場合、空気に接触することになるが、屈折率の低い表面Bが空気に接触するように配置されるのが普通である。この場合には、n
Yが1であることが最も好ましい。
【0022】
本発明による光機能性膜において、n
x−n
Aが0に近い値であれば、媒体Xと表面Aとの間において界面が現れないので反射が起こらない。この結果、層内での多重反射が防止され、干渉による透過率の波長依存性はなくなる。
【0023】
なお、本発明においては、膜の表面の屈折率は、既知の屈折率のプリズムとの全反射角を利用するアッベ法屈折計(例えば株式会社アタゴ製アッベ屈折計DRシリーズ、NARシリーズあるいは、株式会社島津製作所の精密屈折計 KPR−3000等)によって測定することができる。
【0024】
また、本願発明による光機能性膜は、膜内部に屈折率の異なる層による界面が無いために反射が抑制される。例えば本発明による光機能性膜は、可視光を利用する表示装置に用いる場合には、波長555nmの光に対する全光線透過率が90%以上であることが好ましく、ヘイズが10%以下であることがより好ましい。本発明による光機能性膜はこのように優れた光学特性を有するため、反射防止膜や光学材料の保護膜として利用価値が高いものである。
【0025】
光機能性膜の製造方法
本発明による光機能性膜は、任意の方法により形成させることができる。形成方法に応じて、たとえば
図2〜
図4に示されるような屈折率の変化を示す光機能性膜を形成させることができるが、特に
図2に示されるような屈折率変化を示す光機能性膜を形成させることが比較的簡便であり、生産性に優れている。
【0026】
図2に示される光機能性膜は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0027】
基材の上にポリシロキサンと溶媒とを含む組成物を塗布し、表面の難溶化処理をして第1層を形成させる(第1層形成工程)。引き続き、前記第1層の表面に前記ポリシロキサンとは異なるポリシロキサンと、前記溶媒と同一または異なる溶媒とを含む組成物を塗布して第2層を形成させる(第2層形成工程)。その後、第1層と第2層とを加熱して硬化させる(加熱工程)。すなわち、まず基板上にポリシロキサンを含む第1層を形成させる。この第1層の基板に接触している面が、前記の表面AまたはBとなる。そして、その上に別のポリシロキサンを含む第2層を形成させる。この第2層の表面(第1層と接触していない方の表面)が、表面BまたはAとなる。
【0028】
ここで、第2層形成工程の最初、すなわち、第1層に第2層を形成する組成物が接触した時点から、加熱工程の終了までの間に、第1層と第2層との接触部分近傍で、異なるポリシロキサンが接触面付近で混ざり合い、接触面の界面が消失する。具体的には、第2層が第1層の上に塗布された直後に、第1層を構成するポリシロキサンの一部が第2層を形成する組成物に含まれる溶媒によって溶出したり、加熱工程において第1層または第2層を構成するポリシロキサンが相互に相溶したりすることによって、界面が消失する。その後、この膜を加熱してポリシロキサンをシリカ質材料に転換させることによって、本発明による光機能性膜を形成させることができる。ここで、第1層と第2層とで異なるポリシロキサンを用いているので、形成される光機能性膜のふたつの表面の屈折率が異なるものとなるのである。
【0029】
このような光機能性膜の製造方法について、より詳細に説明すると以下の通りである。
【0030】
まず、シリカ質材料の原料となるポリシロキサンを準備する。このポリシロキサンは、後に加熱することによってシリカ質材料に転換させるものであるので、シラノール基を有するポリシロキサンであることが好ましい。シラノール基を有することで加熱によるシリカ質材料への転換を容易に行うことができる。
【0031】
また、本発明による光機能性膜を形成させるためには、第1層および第2層を形成させるために、2種類のポリシロキサン含有組成物を準備することが必要である。ここで、それぞれの組成物は、異なるポリシロキサンを含んでいる。ポリシロキサンを原料として形成されるシリカ質材料は、ポリシロキサンの種類などに応じて異なった屈折率を示す。本発明による光機能性膜は、このように異なったポリシロキサンから形成される、異なった屈折率を有するシリカ質材料を組み合わせたものである。
【0032】
本発明において、ポリシロキサンとはSi−O−Si結合を含む重合体をさす。本発明においては非置換の無機ポリシロキサンのほかに有機基により置換された有機ポリシロキサンも含めてポリシロキサンという。このようなポリシロキサンは一般にシラノール基、アルコキシシリル基、またはアリールオキシシリル基を有するものである。これらの基は、ポリシロキサンをシリカ質材料に転換させる際の硬化反応に寄与するものと考えられている。このため、ポリシロキサンはこれらの基を有することが好ましい。
【0033】
本発明において用いられるポリシロキサンは、その構造は特に制限されず、目的に応じて任意のものから選択することができる。ポリシロキサンの骨格構造は、ケイ素原子に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が4)に分類できる。本発明においては、これらのいずれであってもよい。ポリシロキサン分子が、これらの骨格構造の複数の組み合わせを含んだものであってもよい。
【0034】
また、有機ポリシロキサンを用いる場合、それに含まれる置換基は本発明の効果を損なわない限り任意のものから選択することができる。このような置換基としては、シロキサン構造を構成するSi−O結合を含まない置換基、具体的にはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびアリール基、およびこれらの基の水素原子が不飽和炭化水素基に置換された基などが挙げられる。
【0035】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、シラノール基またはアルコキシシリル基以外の反応性基、例えばカルボキシル基、スルホニル基、アミノ基などがポリシロキサンに含まれてもよいが、これらの反応性基は一般に塗布組成物の保存安定性を劣化させる傾向にあるため、少ないことが好ましい。具体的にはケイ素原子に結合している水素または置換基の総数に対して、10mol%以下であることが好ましく、全く含まれないことが特に好ましい。
【0036】
また、本発明に用いられるポリシロキサンは、本発明の効果を損なわない範囲で、Si−O−Si結合の酸素が窒素で置換されていてもよい。すなわち、ポリシロキサンの一部として、シラザン構造やシルセスキアザン構造を含んでいてもよい。このような重合体は、ポリシロキサザンとも呼ばれる。
【0037】
本発明による光機能性膜の製造方法の一態様においては、2種類のポリシロキサン含有組成物が用いられる。これらの組成物に含まれるポリシロキサンは、たとえば分子量、ケイ素原子に結合した置換基、コポリマーにおけるコモノマーの配合比などが異なっている。それぞれのポリシロキサンは、光機能性膜を配置する場合に、接触する媒体の屈折率に応じて調整する。したがって、種々のポリシロキサンが利用可能であり特に限定されないが、たとえば以下のようなものが挙げられる。
【0038】
(I)屈折率が1.3〜1.6である、シリカ質材料からなる層を形成させるために用いられるポリシロキサンとしては、一般式(1):
R
11n1Si(OR
12)
4−n1 (1)(式中、
R
11は、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状のアルキル基、または炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよいアリール基を表し、
R
12は、水素または炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、を表し、
n1は0〜2を表す。)
であらわされるシラン化合物を、酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られるものである。このようなポリシロキサンからは、一般に屈折率が1.30〜1.60程度のシリカ質材料を得ることができる。
【0039】
一般式(1)において、R
11としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、およびトリル基などが挙げられる。特にR
11がメチル基の化合物は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、フェニル基は、当該ポリシロキサンの溶剤への溶解度を高め、硬化膜がひび割れしにくくなるため、好ましい。
【0040】
一方、一般式(1)において、R
12としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。一般式(1)において、R
12は複数含まれるが、それぞれのR
12は、同じでも異なっていてもよい。
【0041】
上記一般式(1)で示されるトリアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらの中で、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランは、入手しやすく好ましい化合物である。
【0042】
また、上記一般式(1)で示されるテトラアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、その中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどは反応性が高く、好ましい。
【0043】
ポリシロキサン(I)の製造に用いられるシラン化合物(1)は、1種類であっても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、シラン化合物(1)としてテトラアルコキシシランを用いると、パターンだれが低減する傾向がある。これは、ポリシロキサンの架橋密度が増加するためと考えられる。しかしながら、テトラアルコキシランの配合比が多すぎると感度が低下する可能性がある。このため、ポリシロキサン(I)の原料としてテトラアルコキシシランを用いる場合には、その配合比はトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの総モル数に対して、0.1〜40モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましい。
【0044】
本発明に用いられるポリシロキサン(I)は、上記のシラン化合物を、酸性または塩基性触媒の存在下で加水分解させ、縮合させることにより製造されるものであることが好ましい。
【0045】
例えば、有機溶媒、触媒、および水からなる反応溶媒に、シラン化合物またはシラン化合物の混合物を滴下し、加水分解および縮合反応をさせ、必要に応じて中和や洗浄による精製、また濃縮を行った後、必要に応じて反応溶媒を所望の有機溶媒に置換することで製造することができる。
【0046】
反応溶媒に使用する有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテートなどのエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、1,3−ジプロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒を挙げることができる、これらの有機溶媒は、単独もしくは複数を組み合わせて使用することができる。また、有機溶媒の使用量は、一般にシラン化合物の混合液の0.1〜10重量倍であり、0.5〜2重量倍が好ましい。
【0047】
加水分解および縮合反応を実施する反応温度は一般に0〜200℃であり、10〜60℃が好ましい。このとき、滴下するシラン化合物の温度と反応溶媒の温度が同じでも異なってよい。反応時間は、シラン化合物の種類などによっても異なるが、通常は数十分〜数十時間であり、好ましくは30分以上である。加水分解および縮合反応における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して、例えば、触媒量、反応温度、反応時間などを設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
【0048】
塩基性触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノ基を有するアルコキシシラン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、陰イオン交換樹脂やテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。用いることができる酸性触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸あるいはその無水物が挙げられる。触媒量はシラン化合物の混合物に対して0.0001〜10モル倍が好ましい。このような触媒を用いて合成されたポリシロキサンは、150℃以上の温度をかけると硬化が速やかに始まり、焼成後もパターンだれを起こすことなく綺麗な形状を維持することが出来るという特徴がある。
【0049】
加水分解度は反応溶媒に添加する水の添加量により調整することができる。一般に、シラン化合物の加水分解性アルコキシ基に対し、水を0.01〜10モル倍、好ましくは0.1〜5モル倍の割合で反応させることが望ましい。水の添加量が上記範囲より少な過ぎると加水分解度が低くなり、組成物の被膜形成が困難となるので好ましくなく、一方、多過ぎるとゲル化を起こし易く、保存安定性が悪くなるので好ましくない。また、使用する水はイオン交換水または蒸留水が好ましい。
【0050】
反応終了後は、中和剤を用いて反応溶液を中和してもよい。中和には、反応液に応じて、酸性化合物または塩基性化合物が用いられる。酸性化合物の例としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、またはフッ酸等の無機酸や、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、乳酸、アクリル酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、またはクエン酸の多価カルボン酸およびその無水物、p−トルエンスルホン酸、またはメタンスルホン酸等のスルホン酸等の有機酸が挙げられる。中和に用いられる塩基性化合物の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、またはジエタノールアミン、等の有機塩基、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウム等の無機塩基、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。また陽イオン交換樹脂を用いて中和することもできる。
【0051】
中和剤の量は、反応後の反応溶液のpHに応じて、適宜、選択されるが、触媒に対して、好ましくは0.5〜1.5モル倍、より好ましくは1〜1.1モル倍である。また、陽イオン交換樹脂を用いる場合には、陽イオン交換樹脂に含まれるイオン基の数が前記範囲内とすることが好ましい。
【0052】
中和後の反応溶液を必要性に応じて、洗浄し精製することもできる。洗浄方法は特に限定されないが、例えば中和後の反応溶液に疎水性有機溶剤と必要に応じて水を添加し、撹拌して、ポリシロキサンに有機溶剤を接触させて、少なくともポリシロキサン(I)を疎水性有機溶剤相に溶解させる。このとき疎水性有機溶剤としては、ポリシロキサン(I)を溶解し、水と混和しない化合物を使用する。水と混和しないとは、水と疎水性有機溶剤とを十分混合した後、静置すると、水相及び有機相に分離することを意味する。
【0053】
好ましい疎水性有機溶剤としては、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ブタノールなどの水に対し溶解性の乏しいアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。洗浄に用いられる疎水性有機溶剤は、反応溶媒として用いられた有機溶媒と同一であってよいし、異なってもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。このような洗浄により、反応過程において使用した触媒、中和剤、ならびに中和により生成した塩、さらに反応の副生成物であるアルコールや水の大半は水層に含まれ、有機層から実質的に除かれる。洗浄回数は必要性に応じて変更することができる。
【0054】
洗浄時の温度は、特に制限されないが、好ましくは0℃〜70℃、より好ましくは10℃〜60℃である。また、水相と有機相とを分離する温度もまた、特に限定されないが、好ましくは0℃〜70℃、分液時間を短縮する観点から、より好ましくは10℃〜60℃である。
【0055】
このような洗浄をすることによって、組成物の塗布性や保存安定性を改良することができる場合がある。
【0056】
洗浄後の反応溶液は、本発明による組成物にそのまま添加することもできるが、必要に応じて濃縮により溶媒や残存する反応の副生成物であるアルコールや水を除去して濃度を変更したり、さらに溶媒を他の溶媒に置換することもできる。濃縮を実施する場合、常圧(大気圧)または減圧下で実施することができ、濃縮度は留出量を制御することで任意に変更できる。濃縮時の温度は一般に30〜150℃であり、好ましくは40〜100℃である。また目的の溶媒組成になるよう適時所望の溶媒を添加しさらに濃縮することで溶媒置換することもできる。
【0057】
このような反応によって、シロキサンポリマーが得られる。得られるシロキサンポリマーの分子量は、原料の種類や反応条件によって変化するが、本発明において用いられるシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量は、一般に500〜20,000、好ましくは700〜5,000であり、数平均分子量は、一般に300〜5,000、好ましくは500〜2,000である。分子量は、フィルムの残膜率等の観点から大きいほうが有利であり、一方でポリマーの安定性の観点から小さいほうが有利である。
【0058】
(II)屈折率が1.4以下である、シリカ質材料からなる層は、例えば、ポリシロキサンとケイ素酸化物ナノ粒子を含む複合体を用いて形成させることができる。具体的には、シラノール基を有するシロキサンポリマー、シラノール基を有するシランモノマー、またはそれらの混合物と、表面に水酸基またはアルコキシ基を有するケイ素酸化物ナノ粒子とを、水性溶媒と有機性溶媒との混合溶媒中、相間移動触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。このようなケイ素酸化物ナノ粒子とシルセスキオキサンポリマーの複合体を焼成することにより、空隙を有するポリシロキサン硬化物を得ることができる。
このような複合体を含む被膜を焼成すると、ナノ粒子の周囲に空隙が形成されるのである。このような複合体を用いることにより、空隙率に応じて屈折率が1.05〜1.40程度のシリカ質材料を得ることができる。
【0059】
本発明の一実施形態に用いることができる、ケイ素酸化物ナノ粒子とシロキサンポリマーとの複合体(以下、簡単に「複合体(II)」ということがある。また、便宜的にこの複合体もポリシロキサンに包含されるものとする)は、特定の製造方法により製造することができる。この製造方法は、具体的には、シラノール基を有するシロキサンポリマー、シラノール基を有するシランモノマー、またはそれらの混合物と、表面に水酸基またはアルコキシ基を有するケイ素酸化物ナノ粒子とを、水性溶媒と有機性溶媒との混合溶媒中、相間移動触媒の存在下で反応させること含んでなる。以下、この方法を逆ミセル分散法ということがある。ここで用いることができるシロキサンポリマーは、(I)において説明されたものと同じものを用いることができる。
【0060】
このような反応によって、水酸基を有するシロキサンポリマーが得られる。得られるシロキサンポリマーの分子量は、原料の種類や反応条件によって変化するが、本発明において用いられるシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量は、一般に500〜20,000、好ましくは700〜5,000であり、数平均分子量は、一般に300〜5,000、好ましくは500〜2,000である。分子量は、フィルムの残膜率等の観点から大きいほうが有利であり、一方でケイ素酸化物粒子との反応性及びポリマーの安定性の観点から小さいほうが有利である。
【0061】
また、本発明においては、シロキサンポリマーに代えて、またはシロキサンポリマーに組み合わせてシランモノマーを用いることができる。またはシロキサンポリマーにシランポリマーを組み合わせて用いることができる。このようなシランモノマーとして好ましいものは、シロキサンポリマーの製造において出発モノマーとして挙げたR
11Si(OR
12)
3、およびSi(OR
12)
4を挙げることができる。本発明において、シラノール基を有するシランモノマーとは、上記Siに直接水酸基が結合していることを指すこととする。
【0062】
本発明によるシロキサンポリマーは、前記のシラノール基を有するシロキサンポリマーと、前記のケイ素酸化物ナノ粒子とを一部化学的に結合させることにより製造される。本発明においては、この反応の触媒に相間移動触媒を用いることを一つの特徴としている。
【0063】
すなわち、シロキサンは通常有機溶媒に溶かした状態で使用される。一方、そのシロキサンポリマー溶液にケイ素酸化物ナノ粒子を添加する場合、粉末で添加せず、水性媒体中に粒子が分散された分散物を添加するのが一般的である。これは、前記したようにケイ素酸化物が親水性であるために、有機溶媒に分散させることが困難であり、また粉末などの固体状の粒子を用いると、均一に分散されないからである。
【0064】
このため、シロキサンを含む有機相と、ケイ素酸化物を含む水性相との間で十分な反応が進行しにくい。そこで、本発明においては相間移動触媒を用いて、これらの反応を促進している。このような方法を本発明においては逆ミセル分散法と呼んでいる。逆ミセル分散法を、より具体的に説明すると以下の通りである。
【0065】
まず、シラノール基を有するシロキサンポリマーを有機溶媒に溶解させてポリマー溶液を調製する。このとき、有機溶媒には、PGMEA、n−プロピルアセテート(以下、nPAということがある)、PGMEなどが用いられる。これらのうち、水性溶媒との分液性の観点からnPAが、最終生成物である複合体(II)の安定性の観点からPGMEが好ましく用いられる。
【0066】
一方、ケイ素酸化物ナノ粒子分散物を用意する。このような分散物はケイ素酸化物をゾルゲル法で製造し、それを分散することによって調製することもできるが、市販物をそのまま用いることもできる。例えば、商標名KlebosolとしてAZエレクトロニックマテリアルズ株式会社より市販されている二酸化ケイ素分散物(平均粒子径10〜100nm)、商標名NanoTekとしてCIKナノテック株式会社より市販されている、二酸化ケイ素分散物の水性分散物(平均粒子径30nm前後)を用いることができる。
【0067】
次に、ケイ素酸化物ナノ粒子の水性分散物に所定量の相間移動触媒を加え、次いでシルセスキオキサンポリマー溶液を投入して反応させる。すなわち、反応は水性溶媒と有機性溶媒との混合溶媒中で行うこととなる。
【0068】
ここで、相間移動触媒としては第4級アンモニウム化合物、第4級フォスフォニウム化合物、ピリジニウム化合物、およびクラウンエーテルが用いられ、第4級アンモニウム化合物または第4級フォスフォニウム化合物を用いることが好ましい。第4級アンモニウム化合物または第4級フォスフォニウム化合物は、ケイ素酸化物ナノ粒子の表面に存在する水酸基と相互作用し、ケイ素酸化物ナノ粒子の有機溶媒に対する親和性をあげて、有機相への相間移動を促進する作用がある。ピリジニウム化合物も同様の作用を有する。また、クラウンエーテルはポリマー分子の一部を包摂することで同様の作用を有する。これらのうち、具体的にはテトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩が好ましく用いられる。相間移動触媒の使用量はケイ素酸化物ナノ粒子のモル数に対して10〜100mol%とすることが好ましく、20〜50mol%とすることがより好ましい。
【0069】
シロキサンポリマー、シランモノマーまたはそれらの混合物とケイ素酸化物ナノ粒子との配合比は、目的に応じて調整されるが、一般に重量を基準として、95:5〜5:95、好ましくは30:70〜80:20である。
【0070】
反応温度は−20〜120℃であることが好ましく、−5〜80℃であることがより好ましい。また反応時間は特に限定されないが、一般に1時間以上あれば十分に反応が進行する。
【0071】
このようにして得られた複合体(II)は、ポリマーマトリックス中に存在するシラノール基とケイ素酸化物ナノ粒子が化学的に結合している。この化学的な結合は、シロキサンポリマーに含まれていたシラノール基とケイ素酸化物ナノ粒子表面の水酸基またはアルコキシ基との間の縮合反応により形成されるものである。すなわち、シロキサンポリマーのケイ素原子と前記ケイ素酸化物ナノ粒子の表面が酸素原子を介して結合した構造となっている。
【0072】
(III)屈折率が1.5以上である、シリカ質材料からなる層は、例えば、前記した複合体とは異なる、ポリシロキサンと金属ナノ粒子を含む複合体を用いて形成させることができる。このような複合体は、例えば、シラノール基を有するシロキサンポリマー、シラノール基を有するシランモノマー、またはそれらの混合物と、表面に水酸基またはアルコキシ基を有する金属酸化物ナノ粒子とを、水性溶媒と有機性溶媒との混合溶媒中、相間移動触媒の存在下で反応させることにより得られることを特徴とする金属酸化物ナノ粒子とシロキサンポリマーとの複合体を挙げることができる。このようなポリシロキサン複合体からは、一般に屈折率が1.60〜2.50程度のシリカ質材料を得ることができる。
【0073】
本発明の一実施形態に用いることができる、金属酸化物ナノ粒子とシロキサンポリマーとの複合体(以下、簡単に「複合体(III)」ということがある。この複合体も便宜的にポリシロキサンに包含されるものとする。)は、前記した逆ミセル分散法により製造することができる。具体的には、シラノール基を有するシロキサンポリマーと、表面に水酸基またはアルコキシ基を有する金属酸化物ナノ粒子とを、水性溶媒と有機性溶媒との混合溶媒中、相間移動触媒の存在下で反応させること含んでなる。
【0074】
ここで用いることができるシロキサンポリマーは、(I)、(II)において説明されたものと同じものを用いることができる。また、用いられる金属酸化物ナノ粒子は、目的に応じて、種々のものを用いることができ、金属の種類は特に限定されない。一般に金属とは、第1族〜第12族の元素、第13族のアルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、第14族のスズ、鉛、第15族のビスマスの総称であるが、本発明においてはホウ素も包含するものとする。一般に遷移金属に有用なものが多い。
【0075】
また、用いる金属の種類に応じて、異なった特性を硬化膜に付与することができる。特に酸化チタンまたは酸化ジルコニウムのナノ粒子を用いた場合は、形成される硬化膜の屈折率が大きくなる傾向にあるので、本発明による光機能性膜に適用するのに有利である。
そのほか、ユーロピウム酸化物を用いた場合には、硬化膜に蛍光特性を付与することができ、酸化亜鉛を用いた場合は、UV吸収特性が付与され、酸化ホウ素を用いた場合は、フィルムの誘電率が低くなり、酸化アルミニウムを用いた場合は、赤外吸収特性が付与される。これらの特性改善または特性付与の観点から、チタン、ジルコニウム、亜鉛、ホウ素、またはアルミニウムの酸化物を用いることが好ましい。
【0076】
本発明において、前記した金属酸化物としては粒子の表面に水酸基またはアルコキシ基を有する金属酸化物が用いられる。このような金属酸化物ナノ粒子は、下記一般式(3)により表すことができる。
M
xO
y(OR
3)
z (3)(式中、
MはTi、Zr、Eu、Zn、B、Al、Ta、およびHfからなる群から選択される元素であり、
R
3は、水素、またはC
1〜C
10の、好ましくはC
1〜C
6の、アルキル基またはアルケニル基であり、
2y+z=x×[Mの価数]を満たす)
【0077】
ここで、金属元素Mおよび置換基Rは2種類以上を組み合わせることもできる。
【0078】
金属酸化物ナノ粒子の粒子径は、最終的に形成される膜の透過率に影響することがある。したがって、光の波長に応じて透過性を損なわない粒子径が選択される。具体的には、本発明において用いられる金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、5〜200nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましい。ここで、金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、動的光散乱測定により測定することができる。
【0079】
このような金属酸化物は、一般的なゾルゲル法により製造することができる。一方で、焼成により製造される酸化物には水酸基等がほとんど含まれない。したがって、ゾルゲル法により製造された金属酸化物ナノ粒子を用いることが好ましい。具体的には、M(OR
3)
4を出発原料としてゾルを調整することで、式(3)で表される金属酸化物ナノ粒子を調製することができる。
【0080】
シロキサンポリマー、シランモノマー、またはそれらの混合物と金属酸化物ナノ粒子との配合比は、目的に応じて調整されるが、一般に重量を基準として、95:5〜5:95、好ましくは30:70〜80:20である。
【0081】
複合体(III)は、前記した複合体(II)の項において説明した逆ミセル分散法を用いることによって製造することができる。ただし、ケイ素酸化物ナノ粒子を金属酸化物ナノ粒子に変更することが必要である。また、反応温度の調整が必要であり、複合体(III)の製造においては、反応温度は0〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることがより好ましい。
【0082】
このようにして得られた複合体(III)は、ポリマーマトリックス中に存在するシラノール基と金属酸化物ナノ粒子が化学的に結合している。この化学的な結合は、シロキサンポリマーに含まれていたシラノール基と金属酸化物ナノ粒子表面の水酸基またはアルコキシ基との間の縮合反応により形成されるものである。すなわち、シロキサンポリマーのケイ素原子と前記金属酸化物ナノ粒子の表面が酸素原子を介して結合した構造となっている。
【0083】
以上、本発明による光機能膜の製造に用いることができるポリシロキサンを、便宜的に3つに分類して例示したが、これらのほかにも任意のポリシロキサンを用いることができる。また、第1層に用いられるポリシロキサンと、第2層に用いられるポリシロキサンとを、異なった分類のポリシロキサンから選択する必要は無い。すなわち、例えば分類(I)に分類されるポリシロキサンのうちから、異なる2種類のポリシロキサンを選択して、それぞれを別の層に用いることもできる。また、ポリシロキサンとして同じものを用いても、加熱条件などを調整して、一方を多孔質構造とすれば、他方よりも低い屈折率を有する層とすることも可能である。
【0084】
また、ひとつのポリシロキサン含有組成物に、2種類以上のポリシロキサンを混合して用いることもできる。このような場合には、ポリシロキサン混合物をひとつのポリシロキサンとみなすことができる。たとえば、2つのポリシロキサン含有組成物が、それぞれポリシロキサン(I)および(II)を含んでいても、その混合比が異なる場合には、それぞれの組成物に含まれるポリシロキサンは異なるものである。
【0085】
本発明による光機能性膜の製造に用いられるポリシロキサン含有組成物は、前記したポリシロキサンまたは複合体と溶媒とを含む。以下、便宜的にポリシロキサンまたは複合体を総称してポリシロキサンということがある。ここで用いられる溶媒は、用いられるポリシロキサンを溶解できるものから選ばれる。
【0086】
このような溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。溶剤の配合比は、ポリシロキサン含有組成物の総重量を基準として、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上であり、通常90重量%以下、好ましくは85重量%以下とされる。なお、2つのポリシロキサン含有組成物に含まれる溶媒は、同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
また、本発明による組成物は必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、界面活性剤、平滑剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0088】
これらのうち、塗布性を改善するために界面活性剤を用いることが好ましい。本発明による組成物に使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0089】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシ脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友スリーエム株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)、又は有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0090】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩などが挙げられる。
【0091】
さらに両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0092】
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して使用することができ、その配合比は、組成物の総重量に対し、通常50〜5,000ppm、好ましくは100〜2,000ppmである。
【0093】
本発明による光機能性膜の製造法においては、まず、基材に第1のポリシロキサン含有組成物を塗布する。基材としては、ガラスやプラスチックフィルムなどの透明基材や、発光素子または受光素子などの半導体素子が挙げられる。このとき、第1のポリシロキサン含有組成物は、塗布する基材の表面における屈折率に近い屈折率を有するシリカ質材料を形成させることができるものが選択される。
【0094】
第1のポリシロキサン含有組成物の塗布は、一般的な塗布方法、即ち、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、スリットコート等、任意の方法により行うことができる。基材がフィルムである場合にはグラビア塗布も可能である。これらのうち、スピンコート、スリットコートが好ましい。必要に応じて1回又は2回以上繰り返して塗布することにより塗膜の膜厚を所望のものとすることもできる。
【0095】
次に、塗膜の表面に難溶化処理を施して第1層を形成させる。ここで、表面の難溶化処理とは、塗膜の完全な硬化をするものではない。その上に第2のポリシロキサン含有組成物を塗布した際に、基材上で第1のポリシロキサン含有組成物から形成される第1層と第2のポリシロキサン含有組成物から形成される第2層とが完全に混合して均一なひとつの層とならないようにする処理である。このため、第1層を完全に硬化してしまうと、後述する相溶が起こらないことがあるので注意が必要である。具体的な難溶化処理のひとつの方法として、加熱硬化が挙げられる。加熱による溶剤の一部または全部の除去や、加熱による部分的な硬化は好ましい難溶化処理である。このような加熱処理は、目的とする膜厚や組成物によって最適な温度は異なるが、たとえば100〜200℃、好ましくは、120〜170℃の温度で行われる、加熱時間は、たとえば1〜60分間とされる。より好ましくは、加熱時間1〜2分間である。そのほか、難溶化処理は、UVオゾン照射、またはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液による表面処理などによって、塗膜の表面を化学的に変性させることによって行うこともできる。なお、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いる場合、その濃度は比較的低いことが好ましく、一般に5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下の水溶液が用いられる。
【0096】
難溶化処理された第1層の表面に、第2のポリシロキサン含有組成物を塗布する。このときの塗布方法は前記した方法から任意に選択されるが、第1層に与える影響が小さくなるように、スピンコート、スリットコートが好ましい。この工程によって、第1層と第2層の積層構造が形成される。第2層の塗布も2回以上繰り返して、塗膜の膜厚を調製することができる。
【0097】
第2層を塗布した後、溶剤残存量を減少させるため、該膜をプリベーク(加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、目的とする膜厚や組成物によって最適な温度は異なるが、一般に70〜250℃、好ましくは90〜220℃の温度で、ホットプレートによる場合には10〜180秒間、好ましくは30〜1000秒間、クリーンオーブンによる場合には1〜30分間実施することができる。
【0098】
塗膜硬化時の加熱(焼成)温度は、塗膜が硬化する温度であれば任意に選択できる。しかし、焼成温度が低すぎると反応が十分に進行せず十分に硬化しないことがある。このために焼成温度は150℃以上であることが好ましい。また、温度が過度に高いと製造コストが上昇すること、ポリマーが分解することがあることなどから400℃以下であることが好ましい。また、焼成時間は特に限定されないが、一般に5分以上、好ましくは10分以上とされる。
【0099】
本発明による光機能性膜の製造方法においては、第1層と第2層との界面を消失させる相溶化処理が行われる。この相溶化処理は、任意の段階で、具体的には第1層の表面に第2層が塗布された時点から、加熱硬化処理が終了するまでの間に行われる。
【0100】
相溶化処理では、第1層と第2層との界面近傍で異なったポリシロキサンが混ざり合う。このような相溶化処理を実現するひとつの方法は加熱処理である。そして、この相溶化処理は、塗膜の硬化のための加熱処理と同時に行うことができる。すなわち、第2層の塗布後に行うプリベークまたは加熱硬化における温度などの条件を適切に調整することで、第1層と第2層との界面近傍でのポリシロキサンの混合を実現できる。そのほか、第2のポリシロキサン含有組成物の溶媒として、難溶化された第1層の表面を溶解し得るものを選択すれば、第1層と第2層の接触部分近傍で第1層が溶解して第2層と相溶させることができる。さらには、第1層に含まれるポリシロキサンと第2層に含まれるポリシロキサンとの誘電率の差を利用し、第2層を塗布した後に電場を印加することで第1層と第2層の接触部分近傍の相溶化を実現できる。なお、いずれの場合においても、第1層を塗布した後の難溶化処理が適切で無ければ相溶化が実現できないので、それぞれの相溶化処理に合わせた難溶化処理が必要である。
【0101】
なお、第2層の塗布後に前記と同様の方法によって難溶化処理を行い、さらに別のポリシロキサン含有組成物を塗布して第3層を設けることもできる。さらに、このように積層を繰り返して多層構成の光機能性膜を形成させることもできる。例えば、3つのポリシロキサン含有組成物を用いた3層構成とすることで、
図4に示されるような屈折率のパターンを有する光機能性膜を形成させることができる。しかしながら、光反射の少ない光機能性膜をより簡単に製造するために、積層の数は少ないことが好ましい。具体的には3層以下の構成であることが好ましく、2層構成が最も好ましい。
【0102】
半導体素子
本発明による光機能性膜は光反射が少ないため、半導体素子などの表面に用いるのに有用である。そして、シリカ質材料から形成されていることから、透過率、強度、誘電率などにも優れている。このため、本発明による光機能性膜を具備した半導体素子、たとえば太陽電池、LED及びOLEDなどは優れた特性を示すものである。そして、特に発光素子や太陽電池などの光を利用する素子には、高温耐性、環境耐性、光耐性、または化学薬品耐性等が要求されるため、シリカ質材料から形成されている本発明による光機能性膜は特に有用である。
【0103】
本発明を諸例により具体的に説明すると以下の通りである。
【0104】
製造例1(メチルシルセスキオキサン含有組成物Aの製造)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコ中で、水酸化ナトリウム20g、イソプロピルアルコール(以下、IPAという)300ml、および水13.5gを混合して反応溶媒を調製し、10℃に維持した。さらに、メチルトリメトキシシラン68gを加え混合溶液を調製した。その混合溶液を10℃にて滴下ロートを用いて反応溶媒に滴下し、10℃に維持しながら2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。反応液にトルエン200ml、および水300mlを添加して振とうした後、2層に分離させた。
得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度10重量%なるようにPGMEAを添加して、メチルシルセスキオキサン含有組成物A(以下、組成物Aという)を調整した。得られたメチルシルセスキオキサンの平均重量分子量(ポリスチレン換算)は3,562であった。
【0105】
製造例2(メチルフェニルシルセスキオキサン含有組成物Bの製造)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコ中で、25重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液36.5g、IPA300ml、および水1.5gを混合して反応溶媒を調製し、10℃に維持した。さらに、フェニルトリメトキシシラン44.6g、メチルトリメトキシシラン34.1g、およびテトラメトキシシラン3.8gの混合溶液を調製した。その混合溶液を10℃にて滴下ロートを用いて反応溶媒に滴下し、10℃に維持しながら2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。反応液にトルエン200ml、および水300mlを添加して振とうした後、2層に分離させた。得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度10重量%なるようにPGMEAを添加して、メチルフェニルシルセスキオキサン含有組成物B(以下、組成物Bという)を含む溶液を調整した。得られたメチルフェニルシルセスキオキサンの平均重量分子量(ポリスチレン換算)は2,180であった。
【0106】
比較例1
ガラス基板の表面に、組成物Aを塗布し、100℃90秒間プリベーク後、300℃1時間加熱して、厚さ1μmの被膜を形成させた。ガラス基板の屈折率は1.48、被膜の屈折率は1.38であった。
このとき、透過率は
図6に示す通りであり、450nmから800nmの平均は、93.3%であった。これは、透過光が、入射光とガラスの界面の反射(屈折率より計算した理論値3.87%)、ガラスの界面と被膜の界面の反射(理論値0.15%)、および被膜と空気の界面の反射(理論値2.55%)によって減少した結果と考えられる。なお、透過率の理論値は92.38%である。
【0107】
ここで、理論値は、前述したR
f=(n
1−n
0)
2/(n
1+n
0)
2に上記に記載の屈折率の値(ガラス1.48、被膜1.38、空気1.00)を代入することにより求めた。以下、理論値算出においても同様である。
【0108】
また、
図6に示すように、比較例1では透過率の波長依存が観測された。これは、被膜の屈折率とガラス基板の屈折率との差が大きいため、被膜とガラス基板の界面で光の反射が起き、反射光の干渉が起こったためと推測される。
【0109】
比較例2
ガラス基板の表面に、組成物Bを塗布し、100℃90秒間プリベーク後、300℃30分間加熱して、厚さ1μmの被膜を形成させた。被膜の屈折率は1.49であった。
このとき、透過率は
図6に示す通りであり、450nmから800nmの透過率の平均は92.3%であった。これは、透過光が、入射光とガラスの界面の反射(屈折率より計算した理論値3.87%)、ガラスの界面と被膜の界面の反射(理論値0.00%)、および被膜と空気の界面の反射(理論値3.75%)によって減少した結果と考えられる。
なお、透過率の理論値は92.23%である。
また、
図6に示すように、比較例2では、ガラス単独のときと同様に、波長依存はほとんど確認されなかった。これは、被膜の屈折率はガラスの屈折率とほぼ同等のため、ガラスと被膜の間で反射が起こらず、反射光の干渉が起こらなかったためと推測される。
【0110】
実施例1
ガラス基板の表面に、組成物Bを500nmの厚さとなるように塗布し、150℃90秒間加熱して第1層を形成させた。次いで、組成物Aを500nmの厚さとなるように塗布し、200℃90秒間プリベーク後、300℃1時間加熱して、第1層および第2層を完全に硬化させた。すなわち、異なる屈折率を有する第1層と第2層とが積層され、それらの界面部分が相溶した光機能性膜を形成させた。
このとき、透過率は
図7に示す通りであり、450nmから800nmの透過率の平均は93.2%であった。これは、透過光が、入射光とガラスの界面の反射(屈折率より計算した理論値3.87%)、ガラスの界面と光機能性膜の界面の反射(光機能性膜のガラスに近い部分の屈折率を1.49とすると、理論値0.00%)、および光機能性膜と空気の界面の反射(光機能性膜の空気に近い部分の屈折率を1.38とすると、理論値2.55%)によって減少した結果と考えられる。なお、透過率の理論値は93.58%である。
また、
図7に示すように、透過率の波長依存はほとんど観測されなかった。これは、これは、被膜の屈折率はガラスの屈折率とほぼ同等のため、ガラスと被膜の間で反射が起こらず、反射光の干渉が起こらなかったためと推測される。
以上より、実施例1は、透過率に優れ、かつ透過率が波長依存性のない優れた光機能性膜であると言える。
【0111】
参考例1〜3
第一層の組成物B塗布直後の加熱温度以外は実施例1と同様にして、光機能性膜を形成した。
参考例
1、2、および3の加熱温度は、それぞれ130℃、170℃、および200℃であった。
このとき、透過率は
図8に示す通りであり、450nmから800nmの透過率の平均は実施例と同等であった。
参考例1は、
図8に示すように透過率の波長依存性が若干見られた。これは、組成物B塗布直後の加熱温度が低いために、第2層の組成物Aの塗布時に、第1層の一部が溶解してしまい、結果として、実施例1で認められる程度の構造による波長依存性改良効果が得られなかったためと考えられる。
透過率の波長依存性は少ない光機能性膜が求められるので、第一層塗布後の加熱温度の最適化が必要と考えられる。