(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879930
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】流量制限装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20210524BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20210524BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20210524BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20210524BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20210524BHJP
F16L 55/027 20060101ALI20210524BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210524BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20210524BHJP
【FI】
B29C64/153
F02C7/22 D
F02C7/00 D
F02C7/00 C
B22F3/105
B22F3/16
F16L55/027
B33Y10/00
B33Y80/00
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-551608(P2017-551608)
(86)(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公表番号】特表2018-519181(P2018-519181A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】FR2016050717
(87)【国際公開番号】WO2016156740
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年3月25日
(31)【優先権主張番号】1552882
(32)【優先日】2015年4月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファルガレイロ,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】バリトー,エリザ
(72)【発明者】
【氏名】トリー,エリーズ
(72)【発明者】
【氏名】リゾ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ロンジン,アレクシ
【審査官】
今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−514483(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0304449(US,A1)
【文献】
特開2014−040663(JP,A)
【文献】
特開昭61−286536(JP,A)
【文献】
特開昭51−089001(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0163651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/153
B22F 3/105
B22F 3/16
F02C 7/00
F02C 7/22
F16L 55/027
B33Y 10/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体取入れ口と流体出口とを含む本体を備える流量制限装置であって、本体には、第1の端部において流体取入れ口に結合され第2の端部において流体出口に結合された異なる断面の一連のチャンバを備える流体循環パイプが配置され、パイプが略円筒形状を有し、パイプは、パイプ内を循環する流体を保持する領域を含まずパイプが円形螺旋をなす一連のアセンブリとなるような、湾曲した底部を有し、アセンブリのそれぞれは、第1の副チャンバが続く、第1の断面を有する主円筒形チャンバと、第2の副チャンバが続く、第2の断面を有する円筒形スプリンクラとを備え、主チャンバ、スプリンクラ、第1の副チャンバおよび第2の副チャンバは、パイプの湾曲した底部が規則的な螺旋状曲線をなしパイプ内を循環する流体を保持する領域がないように、つながっている、流量制限装置。
【請求項2】
第1の副チャンバが、円錐台形状を有し、流体の循環方向に収束し、第2の副チャンバが、円錐台形状を有し、流体の循環方向に広がる、請求項1に記載の流量制限装置。
【請求項3】
流体取入れ口(2)に結合され、流体循環方向に流体取入れ口の下流に配置された濾過器(4)を備える、請求項1または2に記載の流量制限装置。
【請求項4】
流体出口(3)に結合され、流体循環方向に流体出口の上流に配置された濾過器(4)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の流量制限装置。
【請求項5】
前記流量制限装置が、付加製造によって製造されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の流量制限装置の製造方法。
【請求項6】
付加製造が、レーザ粉末溶融型である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
粉末が、例えばAS7G06アルミニウムまたはニッケルベースのハステロイXといった金属である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の少なくとも1つの流量制限装置を備える航空機タービンエンジンの燃料回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量制限装置、特に航空機のターボ機械のエンジンに取り付けられた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流量制限装置は、主回路から集められた流体を制限し、したがって制御するために従来から使用されている。
【0003】
配向されたスロットプレートを介して得られた一連のスプリンクラから成る流量制限装置は、米国特許第3323550号明細書から公知である。これらのプレートは、重ね合わされ、相互結合される。
【0004】
これらの解決策の1つの問題は、それらのプレートが、しばしば手作業で、現場で組み立てなければならない複数の部品を必要とすることである。
【0005】
加えて、これらの解決策は、これらの領域内にコーキングの問題を引き起こす可能性のある保持領域を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3323550号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの欠点の少なくとも1つを軽減することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、流体取入れ口と流体出口とを含む本体を備える流量制限装置を提案しており、本体内部には、一方では流体取入れ口に、他方では流体出口に結合された異なる断面の一連のチャンバを備える流体循環パイプが配置され、パイプが略円筒形状を有し、パイプが規則的な曲線を含む底部を含み、その結果、パイプはパイプ内を循環する流体を保持する領域を含まない。
【0009】
本発明は、単独で、または技術的に可能な任意の組み合わせで持つ、以下の特徴によって有利に完成される。
【0010】
この制限装置は、付加製造プロセスによって得られる。
【0011】
付加製造プロセスは、レーザ粉末溶融型である。
【0012】
粉末が、好ましくは金属であり、典型的にはニッケルまたはアルミニウム基のハステロイX、AS7G06タイプである。
【0013】
パイプは、螺旋の形状を有す。
【0014】
パイプは、第1の副チャンバが続く、第1の断面を有する主円筒形チャンバと、第2の副チャンバが続く、第2の断面を有する円筒形スプリンクラと、をそれぞれ備える一連のアセンブリである。
【0015】
主チャンバ、スプリンクラ、第1の副チャンバおよび第2の副チャンバは共通のジェネレータを共有し、その結果、パイプの底部が規則的な螺旋状曲線である。
【0016】
第1の副チャンバは、円錐台形状を有し、流体循環方向に収束し、第2の副チャンバは円錐台形状を有し、流体の循環方向に広がる。
【0017】
制限装置は、流体取入れ口に結合され、流体循環方向に流体取入れ口の下流に配置された濾過器を含む。
【0018】
制限装置は、流体出口に結合され、流体循環方向に流体出口の上流に配置された濾過器を含む。
【0019】
本発明は、本発明による少なくとも1つの流量制限装置を備える航空機タービンエンジンの燃料回路にさらに関する。
【0020】
すべての図において、同様の要素は同一の参照符号を付している。
【0021】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の説明によって明らかになるであろうが、以下の説明は、単なる例示であって、限定するものではなく、添付の図面を参照して読まれなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態による流量制限装置の概略図である。
【
図2】第2の実施形態による流量制限装置の概略図である。
【
図6】流量制限装置を製造するための装置の概略図である。
【0023】
すべての図において、同様の要素は同一の参照符号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1および
図2は、流体取入れ口2および流体出口3を含む本体1を備える流量制限装置を示す。
【0025】
制限装置の中に流入する流体は、取入れ口2から出口3に向かって循環する(
図1および
図2の矢印F)。
【0026】
本体1は、必ずしも規則的ではない外面を有する略円筒形または円錐台形を有する。
【0027】
取入れ口2は、本体1の中に配置された円筒から成り、パイプ5と流体連通している。
【0028】
有利なことに、濾過器4が、流体循環方向に、制限装置の取入れ口2の直ぐ下流に配置される(
図3参照)。これは、取入れ口2に配置されたグリッドであり、濾過器4はパイプ5と流体連通している。
【0029】
濾過器4は、流入する流体が濾過されることを可能にし、濾過器4の下流に位置するパイプ5の中に不純物が侵入することを回避することができる。
【0030】
別法として、または補助として、濾過器4は制限装置の出口3に配置され得る(図示せず)。
【0031】
濾過器4は、好ましくは同一寸法の複数の孔6を備える円錐の形態であることが好ましい。しかし、他の形状も考えられる。
【0032】
加えて、一実施形態(図示せず)によれば、制限装置の取入れ口に濾過器、および制限装置の出口に濾過器を設けることが可能である。
【0033】
しかしながら、濾過器4の存在は強制的ではないことに留意されたい。
【0034】
パイプ5が、取入れ口2と出口3との間に本体1の中に配置され(
図1および
図2および
図4参照)、略管形状を有し、規則的な曲線を含む底部を含み、その結果、パイプ5がパイプ5内で循環する流体を保持する領域を含まない。
【0035】
パイプ5は、異なる断面を有する一連のチャンバ7,8,9,10を備える(
図5参照)。
【0036】
特に、大きい方の断面を有する主チャンバ7の間に配置された一連のスプリンクラ9が存在し、スプリンクラ9は、流体循環方向に、スプリンクラ9の上流に対して収束する形状を有し、流体循環方向に、スプリンクラ9の下流に対して広がる形状を有する円錐台形状の副チャンバ8および10を通って主チャンバ7に結合されている。
【0037】
スプリンクラを連続させることにより、小さい流域を有する単一のスプリンクラに相当する構成要素を提供することが可能となり、同時に詰まり(小さなスプリンクラを閉塞する可能性があるが、大きい方の流れ領域を自由に通過し、それを通過する流体の空気混入/キャビテーションに対する感度を低下させる汚染物質粒子)の危険性を低減する。パイプ5は、好ましくは、円形螺旋の形状である(
図5参照)。
【0038】
パイプの螺旋形状は、所定の使用可能な空間内で、まっすぐである場合よりも多くのスプリンクラを有することを可能にする。螺旋の半径は、本体1の寸法およびパイプ5のチャンバの断面に依存する。
【0039】
したがって、パイプ5は、制限装置内の流体の循環を可能にする傾斜を有する。加えて、下死点、すなわちパイプ内で循環中の流体の保持につながる可能性があるパイプ領域が存在しないことを、重力(
図1および
図2の矢印G)によって保証するように、制限装置は配向されている。
【0040】
特に、パイプ5は、副チャンバ8が続く、第1の断面を有する主円筒形チャンバ7と、第2の副チャンバ10が続く、第2の断面を有する円筒形スプリンクラ9と、をそれぞれ備える一連のアセンブリEである。第1の副チャンバおよび第2の副チャンバは、円錐台形状を有する。前述のように、第1の副チャンバは、流体循環方向に、スプリンクラ9の上流側に対して収束する形状、および流体循環方向に、スプリンクラ9の下流側に対して広がる形状を有する円錐台形状を有する。
【0041】
加えて、主チャンバ、第1の副チャンバおよび第2の副チャンバ、ならびにスプリンクラは共通のジェネレータを共有し、その結果、パイプの底部が規則的な螺旋状曲線である。
【0042】
スプリンクラ9は、
図5に明瞭に図示されているように、下方部分に配置されている。加えて、異なるチャンバ間には、常に変化または破損のない規則的なスロープが存在する。したがって、パイプ5の底部は常に連続している。
【0043】
このように、スプリンクラ9には、パイプ5にコーキング現象を引き起こす可能性がある保持領域が存在しない。
【0044】
再び
図1に関連して、流量制限装置は、パイプDの外径が10〜20mm、内径dが5〜10mm、高さhが15〜30mmである。
【0045】
上記の制限装置は、好ましくは、選択的レーザ粉末溶融型の材料追加を用いる製造手段、付加製造によって得られる。
【0046】
粉末が、好ましくは金属であり、典型的にはニッケルまたはアルミニウム基のハステロイX、AS7G06タイプである。粉末はまた、プラスチックから成ることも可能である。
【0047】
レーザは、層ごとに部品を構築する目的で粉末を局所的に溶融することができる高エネルギービームである。
【0048】
図6は、選択的レーザ粉末溶融型の材料付加製造装置を示す。
【0049】
この装置は、移動可能な粉末供給リザーバ20を備え、粉末床を広げるためのシステム21は、部品23(制限装置)が製造されるにつれて徐々に上昇する可動構築プラットフォーム22に粉末を持ち運ぶ。粉末回収リザーバ24は、使用されていない粉末を回収するために使用される。
【0050】
製造は、レーザ溶融を可能にする制御された環境で行われる。これを達成するために、製造装置は環境制御システム25を備える。
【0051】
加えて、製造装置は、レーザ源26と、レーザビームを構築プラットフォーム22に向けることを可能にする光学システム27とを備える。
【0052】
この方法(
図6参照)の範囲内で、部品23は数十ミクロンの連続した層によって製造される。レーザ型のエネルギー源26は、3D設計モデルに従って粉末の層を選択的に1つずつ溶融させる。
【0053】
この方法により、材料を除去することによって、製作できない部品を製造することが可能になる。
【0054】
この方法のおかげで、制限装置を構成する様々な要素は、いかなる場合でも改良を加えられることが可能であり、組み立てにおける不正確さを引き起こし、結果的に特にパイプ内に傾斜破損を生じさせる可能性がある、複雑なアセンブリから構成されるのではない。
【0055】
付加製造は、制限装置の構造を成長させることによって制限装置を徐々に作り出すことを可能にする。
【0056】
したがって、制限装置の構造について必要な様々な部品のすべての機械加工の問題が解決される。