【文献】
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【文献】
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【文献】
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【文献】
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【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願は、(i)第1の化合物、(ii)少なくとも1つの更なる治療剤、および(iii)任意選択的に、1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に関し、第1の化合物は、FXRアゴニストであり、少なくとも1つの更なる治療剤は、血中グルコースレベルを引き下げ、インスリン分泌を刺激し、かつ/またはインスリン感受性を高める。
【0017】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、インスリン分泌を増大させる剤である。別の例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、標的細胞、組織、または器官の、インスリンに対する感受性を高める剤である。別の例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、血中グルコースレベルを引き下げる剤である。
【0018】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、インスリンまたはインスリン類似体である。更なる例において、インスリンまたはインスリン類似体は、ヒューマリン(登録商標)R、インスリンリスプロ(Humalog(登録商標))、インスリンアスパルト(Novolog(登録商標))、インスリングルリシン(Apidra(登録商標))、速効型インスリン亜鉛(Semilente(登録商標))、インスリングラルギン(Lantus(登録商標))、インスリンデテミル(Levemir(登録商標))、イソフェンインスリン、インスリン亜鉛(Lente(登録商標))、持続型インスリン亜鉛(Ultralente(登録商標))、インスリンデグルデク、エクスベラ(登録商標)、およびAfrezza(登録商標)から選択される。
【0019】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、膵臓ベータ細胞内のATP感受性K
+チャンネルの阻害剤である。更なる例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、スルホニル尿素である。更なる例において、スルホニル尿素は、トルブタミド(Orinase(登録商標))、アセトヘキサミド(Dymelor)、トラザミド(Tolinase(登録商標))、クロルプロパミド(Diabinese(登録商標))、カルブタミド(Glucidoral(登録商標))、メタヘキサミド、グリピジド(Glucotrol(登録商標))、グリブリドまたはグリベンクラミド(Micronase(登録商標))、グリコピラミド、グリキドン(Glurenorm)、グリクラジド(Uni Diamicron)、グリボルヌリド、グリソキセピド、グリメピリド(Amaryl(登録商標))、およびJB253(Broichhagen et al.,Nature Comm.5,Article No.5116(2014))から選択される。別の更なる例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、メグリチニド、レパグリニド(Prandin(登録商標))、ナテグリニド(Starlix(登録商標))、ミチグリニド、およびリノグリリドから選択される。
【0020】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、FFA1/GPR40(遊離脂肪酸受容体1)のアゴニストである。更なる例において、FFA1/GPR40アゴニストはファシグリファムである。
【0021】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、インクレチン模擬物である。更なる例において、インクレチン模擬物は、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)またはそのGLP−1受容体のアゴニストである。更なる例において、GLP−1受容体アゴニストは、エキセナチド/エキセンディン−4、リラグルチド、タスポグルチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、セマグルチド、BRX−0585(Pfizer/Biorexis)、およびCJC−1134−PC(ヒトアルブミンに結合したエキセンディン−4)から選択される。別の更なる例において、インクレチン模擬物は、胃抑制ペプチド(GIP)またはGIP類似体である。
【0022】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4、当該技術においてDPP−IVとしても知られている)の阻害剤である。更なる例において、DPP−4阻害剤は、ビルダグリプチン(Galvus(登録商標))、シタグリプチン(Januvia(登録商標))、サキサグリプチン(Onglyza(登録商標))、リナグリプチン(Tradjenta(登録商標))、アログリプチン、セプタグリプチン、アナグリプチン、ゲミグリプチン、テネリグリプチン、カルメグリプチン、ゴソグリプチン、デュトグリプチン、ベルベリン、およびルペオールから選択される。
【0023】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、ヒトペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体(PPAR)ガンマアゴニストである。更なる例において、PPARガンマアゴニストは、チアゾリジンジオンおよびグリタゾン、例えば、ロシグリタゾン、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、バラグリタゾン、リボグリタゾン、シグリタゾン、ロベグリタゾン、およびネトグリタゾンから選択される。
【0024】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、ビグアナイドである。更なる例において、ビグアナイドは、メトホルミン、ブホルミン、およびフェンホルミンから選択される。
【0025】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、胆汁酸吸着剤である。更なる例において、胆汁酸吸着剤は、陰イオン交換樹脂、四級アミン(例えば、コレスチラミンまたはコレスチポール)、および回腸胆汁酸トランスポータ阻害剤から選択される。
【0026】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、グルコースの代謝(例えば、グルコースのリン酸化)を促進する剤である。一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、グルコキナーゼ活性剤である。更なる例において、グルコキナーゼ活性剤は、国際公開第2000/058293号パンフレットに記載される化合物である。
【0027】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、グルコースの腎臓再吸収を阻止する剤である。一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、SGLT−2阻害剤である。更なる例において、SGLT−2阻害剤は、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、レモグリフロジン、セルグリフロジン、トホグリフロジン、イプラグリフロジン、およびエルツグリフロジンから選択される。
【0028】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、腸におけるグルコース吸収を低下させる剤である。一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤である。更なる例において、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤は、ミグリトール(Glyset(登録商標))、アカルボース(Precose(登録商標))、およびボグリボースから選択される。
【0029】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、胃内容物排出を減速させ、かつ/またはグルカゴンを抑制する剤である。一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、アミリンまたはアミリン類似体である。更なる例において、アミリン類似体は、プラムリンチドである。
【0030】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤である。更なる例において、MTP阻害剤は、ミダグリゾール、イサグリドール、デリグリドール、イダゾキサン、エファロキサン、およびフルパロキサンから選択される。
【0031】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、ブロモクリプチン、ベンフルオレクス、およびトルレスタットから選択される。
【0032】
一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、グルココルチコイドの濃度を引き下げる剤である。一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、11ベータ−HSD1阻害剤である。更なる例において、11ベータ−HSD1阻害剤は、グリチルリジン酸、グリチルレチン酸(エノキソロン)、カルベノキソロン、アビエチン酸、フラボノイドナリンゲニン、アントラキノンエモジン、アダマンチル[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]アゼピン、BVT−2733、BVT−116429、BVT−3498/AMG−311、AMG−221、PF−915275、HSD−016、INCB−13739、INCB−20817、MK0916、MK0736、AZD−4017、AZD−8329、RG−4929、RG−7234、BMS−816336、およびJTT−654、
【化2】
【化3】
ならびに以下の表から選択される化合物から選択される。
【化4】
【化5】
【化6】
【0033】
一例において、医薬組成物の第1の化合物は、式Iの化合物:
【化7】
またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体であり、式中:
R
1は、水素または非置換C
1〜C
6アルキルであり;
R
2は、水素またはα−ヒドロキシルであり;
R
4は、ヒドロキシルまたは水素であり;
R
7は、ヒドロキシルまたは水素である。
【0034】
一例において、R
1は、非置換C
1〜C
6アルキルである。更なる例において、R
1は非置換C
1〜C
3アルキルである。更なる例において、R
1は、メチル、エチル、またはプロピルである。更なる例において、R
1はエチルである。
【0035】
一例において、R
2は水素である。別の例において、R
2はα−ヒドロキシルである。
【0036】
一例において、R
4はヒドロキシルであり、R
7は水素である。別の例において、R
4は水素であり、R
7はヒドロキシルである。
【0037】
更なる例において、R
1は、メチル、エチル、およびプロピルから選択され、R
4はヒドロキシルであり、R
7は水素であり、R
2は水素である。更なる例において、R
1はエチルである。
【0038】
更なる例において、R
1は、メチル、エチル、およびプロピルから選択され、R
4は水素であり、R
7はヒドロキシルであり、R
2は水素である。更なる例において、R
1はエチルである。
【0039】
更なる例において、R
1は、メチル、エチル、およびプロピルから選択され、R
4はヒドロキシルであり、R
7は水素であり、R
2はα−ヒドロキシルである。更なる例において、R
1はエチルである。
【0040】
更なる例において、R
1は、メチル、エチル、およびプロピルから選択され、R
4は水素であり、R
7はヒドロキシルであり、R
2はα−ヒドロキシルである。更なる例において、R
1はエチルである。
【0041】
一例において、アミノ酸抱合体はグリシン抱合体である。一例において、アミノ酸抱合体はタウリン抱合体である。
【0042】
更なる例において、化合物は、
【化8】
またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体である。
【0043】
本出願が解決しようとする課題の1つが、血中グルコース濃度の上昇に関係する症状、例えばFXR介在性疾患(例えば、NAFLDおよびNASH)、高血糖、および糖尿病の処置または予防のための、血中グルコースレベルの引下げのための、インスリン分泌の引上げのための、そしてインスリン感受性の引上げのための併用療法の同定である。例えば、本出願は、血中グルコースレベルを引き下げ、かつ/またはインスリン分泌および/もしくはインスリン感受性を高めることによる、FXR介在性疾患(例えば、NAFLDおよびNASH)の処置または予防のための併用療法を同定する。一実施形態において、疾患または症状は、FXR活性化によって処置される。グルコースレベルの上昇に関係する症状用の薬物が入手可能であるが、当該薬物は多くの場合、種々の理由のために、多くの患者に適していない。例えば、多くの薬物に、副作用、例えば吐き気、嘔吐、下痢、めまい、頭痛、および脱力感がある。一部の薬物は、単独で投与される場合、処置が不十分な場合がある。例えば、一部の状況では、一インスリン分泌刺激剤は単独で、多くの患者(例えば、NAFLDまたはNASHの患者)に存在する重篤なレベルの高血糖を制御するのに、不十分である。不活性である、または効力があまりない代謝物質になる高代謝に起因して、一部の薬物は、高用量の投与、またはより頻度が高い投与を必要とする場合がある。リラグルチドが挙げられる治療剤のいくつかのクラスが、注射を介して投与される。第2の治療剤を経口的に共投与する利点は、結果として注射の回数および/または頻度の低減を導き得る。回数および/または頻度を減らすことによって、治療投薬レジメンは、患者の、とりわけ注射に慣れていない可能性があるNASH患者の、より高い遵守を可能にし得る。本明細書中に記載される併用療法は、先で述べられた課題を解決することができ、例えば、相乗作用、薬物の有効性を失うことのない1日の投薬回数の低減、患者における血中グルコースの引下げ、効力、選択性、組織浸透力、半減期、および/または代謝安定性の向上の1つまたは複数の利点を有し得る。
【0044】
本出願の組成物、パック、またはキット、方法および使用において、第1の化合物は、遊離酸であってもよいし、薬学的に許容可能な塩またはアミノ酸抱合体(例えば、グリシンまたはタウリン抱合体)であってもよい。一例において、第1の化合物は、あらゆるFXRアゴニストである。一態様において、第1の化合物は、式Iの化合物である。一態様において、第1の化合物は、オベチコール酸(化合物1)である。一例において、第1の化合物は、式Iの化合物の遊離酸である。一例において、第1の化合物は、式Iの化合物のグリシン抱合体である。一例において、第1の化合物は、式Iの化合物のタウリン抱合体である。
【0045】
本出願の組成物、パックまたはキット、方法、および使用において、少なくとも1つの更なる治療剤は、本明細書中に記載されるあらゆる剤であってよい。一例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、インスリン分泌を増大させる剤である。別の例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、インスリンに対する標的細胞、組織、または器官の感受性を高める剤である。別の例において、少なくとも1つの更なる治療剤は、血中グルコースレベルを引き下げる剤である。
【0046】
本出願の化合物はまた、本出願の第1の化合物(例えば式Iの化合物)と同一の構造を有するが、1つまたは複数の原子が、自然界で最も一般的に見出される原子量または質量数と異なる原子量または質量数を有する原子によって置換されるという事実について、同位体で標識された第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体を包含する。第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体中に組み込まれ得る同位体の例として、水素、炭素、窒素、フッ素の同位体、例えば
3H、
11C、
14C、および
18Fが挙げられる。
【0047】
上述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体は、本明細書の範囲内である。第1の同位体標識化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体、例えば、
3Hおよび/または
14C等の放射性同位体が組み込まれている第1の化合物が、薬物および/または基質の組織内分配アッセイに有用である。トリチウム同位体、すなわち
3H、および炭素14、すなわち
14C同位体が、調製の簡略化および検出能のために用いられる。さらに、重水素、すなわち
2H等のより重い同位体との置換が、より大きな代謝安定性、例えばインビボ半減期の延長または必要投薬量の引下げに由来する特定の治療学的利点を与えることができるので、一部の状況において用いられ得る。第1の同位体標識化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体は一般に、本明細書のスキームおよび/または実施例に開示される手順を実行することにより、容易に入手可能な同位体標識試薬を非同位体標識試薬の代わりに用いることによって、調製され得る。一例において、オベチコール酸、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体は、同位体標識されない。
【0048】
本出願はまた、疾患または症状を処置または予防する方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。
【0049】
一例において、疾患または症状は、FXR介在性の疾患または症状である。FXR介在性の疾患または症状の例として、限定されないが、肝疾患、例えば胆汁鬱滞性の、または非胆汁鬱滞性の疾患または症状が挙げられる。一実施形態において、FXR介在性の疾患または症状は、FXR活性化に関係がある。胆汁鬱滞性肝疾患として、限定されないが、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、門脈圧亢進、胆道閉鎖、胆汁酸性下痢、進行性線維症に起因する肝障害、肝線維症、および慢性肝疾患が挙げられる。非胆汁鬱滞性の肝疾患または肝症状として、限定されないが、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、C型肝炎感染症、アルコール性肝障害、進行性線維症に起因する肝障害、肝臓癌、消化管癌、および胆道癌、例えば肝細胞癌、胆管癌、結腸直腸癌、胃癌、および腎臓癌、肝線維症、メトトレキサート、イソニアジド、オキシフェニスタチン、メチルドパ、クロルプロマジン、トルブタミド、またはアミオダロンによって誘導される肝疾患;自己免疫肝炎;サルコイドーシス、ウィルソン病、血色素沈着症、ゴーシェ病、III、IV、VI、IX、およびX型グリコーゲン蓄積疾患、α1−アンチトリプシン欠損症、ツェルヴェーガー症候群;チロシン血症、フルクトース血症、ガラクトース血症、バッド−キアリ症候群、静脈閉塞性疾患、または門脈血栓症を伴う血管障害;ならびに先天性肝線維症が挙げられる。また、FXR活性化によって処置可能な疾患または症状の例として、高血糖、糖尿病、肥満症、インスリン抵抗性、高脂血症、高LDLコレステロール、高HDLコレステロール、高トリグリセリド、および心血管疾患も挙げられる。
【0050】
NAFLDは、肝臓における脂肪の蓄積(脂肪浸潤と呼ばれる)によって特徴付けられる医学的症状である。NAFLDは、慢性肝疾患の最も一般的な原因の1つであり、肝細胞における脂質堆積を伴う症状の全形態を包含する。これは、脂肪変性(単純な脂肪肝)から非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に、そして進行性の線維症および肝硬変にまで及ぶ。疾患は、ほとんどの場合静かであり、多くの場合、付随的に上昇する肝酵素レベルにより発見される。NAFLDは、肥満症およびインスリン抵抗性と強く関連し、現在、多くの人々によって、メタボリックシンドロームの肝臓成分とみなされている。
【0051】
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝臓における脂肪および線維性(瘢痕)組織の炎症および蓄積を引き起こす症状である。血中の肝酵素レベルは、非アルコール性脂肪肝(NAFL)で見られる穏やかな上昇よりも高められ得る。類似した症状が、アルコールを乱用する人々において見られ得るが、NASHは、アルコールをほとんど飲まない人々において見られる。NASHは、アメリカ人の2〜5パーセントに発症し、以下の状態の1つまたは複数が見られる人々において、最も頻繁に認められる:肥満症、糖尿病、高脂血症、インスリン抵抗性、特定の医薬品の使用、および毒素への曝露。NASHは増々、慢性肝疾患の世界的に共通の病因となっており、肝硬変が不在の場合でさえ、肝臓関連死亡率および肝臓癌の増大を伴う。NASHは、冒されている個体の15〜20%において肝硬変に進行し、今では、米国において、肝臓移植のための優れた指標の1つである。現在、NASHの承認された療法はない。
【0052】
本出願はまた、NAFLDまたはNASHを処置または予防する方法を提供する。一例において、本出願は、血中グルコースレベルの上昇、インスリン分泌の低下、および/またはインスリン感受性の低下を伴うNAFLDまたはNASHを処置または予防する方法を提供する。一例において、本出願は、少なくとも部分的に、血中グルコースレベルの引下げ、ならびに/またはインスリン分泌および/もしくはインスリン感受性の引上げにより、NAFLDまたはNASHを処置または予防する方法を提供する。一例において、本出願は、NASHを処置または予防する方法を提供する。一例において、本出願は、血中グルコースレベルの上昇、インスリン分泌の低下、および/またはインスリン感受性の低下を伴うNASHを処置または予防する方法を提供する。一例において、本出願は、少なくとも部分的に、血中グルコースレベルの引下げ、ならびに/またはインスリン分泌および/もしくはインスリン感受性の引上げにより、NASHを処置または予防する方法を提供する。
【0053】
一例において、疾患または症状は、血中グルコースレベルの上昇、インスリン分泌の低下、および/またはインスリン感受性の低下に関係している。疾患または症状の例として、限定されないが、FXR介在性疾患(例えば、NAFLDおよびNASH)、高血糖、糖尿病、肥満症、およびインスリン抵抗性が挙げられる。
【0054】
一例において、疾患または症状は、FXR介在性疾患である。一例において、疾患または症状は、NAFLDまたはNASHである。一例において、疾患または症状は、NASHである。
【0055】
一例において、疾患または症状は、高血糖、糖尿病、肥満症、またはインスリン抵抗性である。一例において、疾患または症状は、高血糖である。一例において、疾患または症状は、糖尿病である。更なる例において、糖尿病はI型糖尿病である。別の更なる例において、糖尿病はII型糖尿病である。一例において、疾患または症状は、肥満症である。一例において、疾患または症状は、インスリン抵抗性である。
【0056】
本出願はまた、高血糖、糖尿病、肥満症、またはインスリン抵抗性を処置または予防する方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。一例において、対象は、胆汁鬱滞性症状に苦しんでいない。別の例において、対象は、胆汁鬱滞性症状に苦しんでいる。一例において、対象は、肝疾患に苦しんでいない。別の例において、対象は、肝疾患に苦しんでいる。更なる例において、肝疾患は、胆汁鬱滞性肝疾患、例えばPBC、PSC、門脈圧亢進、胆汁酸性下痢、進行性線維症に起因する肝障害、肝線維症、および慢性肝疾患から選択される。更なる例において、対象は、PBC、NAFLD、またはNASHに苦しんでいる。更なる例において、対象は、線維症に苦しんでいる。別の更なる例において、対象は、非胆汁鬱滞性肝疾患または症状、例えば非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、C型肝炎感染症、アルコール性肝障害、進行性線維症に起因する肝障害、肝臓癌、消化管癌、および胆道癌、例えば肝細胞癌、胆管癌、結腸直腸癌、胃癌、および腎臓癌、肝線維症、メトトレキサート、イソニアジド、オキシフェニスタチン、メチルドパ、クロルプロマジン、トルブタミド、またはアミオダロンによって誘導される肝疾患;自己免疫肝炎;サルコイドーシス、ウィルソン病、血色素沈着症、ゴーシェ病、III、IV、VI、IX、およびX型グリコーゲン蓄積疾患、α1−アンチトリプシン欠損症、ツェルヴェーガー症候群;チロシン血症、フルクトース血症、ガラクトース血症、バッド−キアリ症候群、静脈閉塞性疾患、または門脈血栓症を伴う血管障害;ならびに先天性肝線維症に苦しんでいる。
【0057】
本出願はまた、血中グルコースレベルを引き下げ、インスリン分泌を刺激し、かつ/またはインスリン感受性を高める方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。一例において、対象は、胆汁鬱滞性症状に苦しんでいない。別の例において、対象は、胆汁鬱滞性症状に苦しんでいる。一例において、対象は、肝疾患に苦しんでいない。別の例において、対象は、肝疾患に苦しんでいる。更なる例において、肝疾患は、胆汁鬱滞性肝疾患、例えばPBC、PSC、門脈圧亢進、胆汁酸性下痢、慢性肝疾患、NAFLD、NASH、C型肝炎感染症、アルコール性肝障害、進行性線維症に起因する肝障害、肝臓線維症、および慢性肝疾患から選択される。更なる例において、対象は、PBC、NAFLD、またはNASHに苦しんでいる。別の更なる例において、対象は、線維症に苦しんでいる。別の例において、対象は、非胆汁鬱滞性の肝疾患または肝症状、例えば非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、C型肝炎感染症、アルコール性肝障害、進行性線維症に起因する肝障害、肝臓癌、消化管癌、および胆道癌、例えば肝細胞癌、胆管癌、結腸直腸癌、胃癌、および腎臓癌、肝線維症、メトトレキサート、イソニアジド、オキシフェニスタチン、メチルドパ、クロルプロマジン、トルブタミド、またはアミオダロンによって誘導される肝疾患;自己免疫肝炎;サルコイドーシス、ウィルソン病、血色素沈着症、ゴーシェ病、III、IV、VI、IX、およびX型グリコーゲン蓄積疾患、α1−アンチトリプシン欠損症、ツェルヴェーガー症候群;チロシン血症、フルクトース血症、ガラクトース血症、バッド−キアリ症候群、静脈閉塞性疾患、または門脈血栓症を伴う血管障害;ならびに先天性肝線維症に苦しんでいる。
【0058】
本出願はまた、線維症を阻害し、または回復に向かわせる方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。一例において、対象は、胆汁鬱滞性症状に苦しんでいない。別の例において、対象は、胆汁鬱滞性症状に苦しんでいる。
【0059】
一例において、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量が投与される対象は、原発性の肝癌および胆道癌、例えば肝細胞癌、結腸直腸癌、および胆管癌、転移性癌、敗血症、完全非経口的栄養、嚢胞性線維症、ならびに肉芽腫肝疾患からなる群から選択される疾患または症状を伴う胆汁鬱滞性症状に苦しんでいない。一例において、阻害されることになる、または回復に向かわせられることになる線維症は、FXRが発現される器官において見られる。
【0060】
一例において、胆汁鬱滞性症状は、アルカリホスファターゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、および/または5’ヌクレオチダーゼの血清レベルが異常に高い症状と定義される。別の例において、胆汁鬱滞性症状はさらに、少なくとも1つの臨床的症候を呈する症状と定義される。一例において、症候はむず痒さ(痒み)である。別の例において、胆汁鬱滞性症状は、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PBS)、薬物性胆汁鬱滞、遺伝性胆汁鬱滞、および妊娠性肝内性胆汁鬱滞からなる群から選択される。
【0061】
一例において、線維症は、肝線維症、腎線維症、および腸内線維症からなる群から選択される。
【0062】
一例において、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量が投与される対象は、B型肝炎;C型肝炎;寄生虫性肝疾患;移植後の細菌感染症、ウィルス感染症、および真菌感染症;アルコール性肝疾患(ALD);非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD);非アルコール性脂肪肝炎(NASH);メトトレキサート、イソニアジド、オキシフェニスタチン、メチルドパ、クロルプロマジン、トルブタミド、またはアミオダロンによって誘導される肝疾患;自己免疫性肝炎;サルコイドーシス;ウィルソン病;血色素沈着症;ゴーシェ病;III、IV、VI、IX、およびX型グリコーゲン蓄積疾患;α1−アンチトリプシン欠乏症;ゼルウィガー症候群;チロシン血症;フルクトース血症;ガラクトース血症;バッド−キアリ症候群、静脈閉鎖性疾患、または門脈血栓症を伴う血管障害;ならびに先天性肝臓線維症からなる群から選択される疾患を伴う肝臓線維症を患う。
【0063】
別の例において、対象は、クローン病、潰瘍性大腸炎、照射後大腸炎(post−radiation colitis)、および顕微鏡的大腸炎(microscopic colitis)からなる群から選択される疾患を伴う腸内線維症を患う。
【0064】
別の例において、対象は、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、慢性糸球体腎炎、慢性移植片糸球体症、慢性間隙腎炎、および多発性嚢胞腎からなる群から選択される疾患を伴う腎線維症を患う。
【0065】
別の例において、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量が投与される対象は、クローン病、潰瘍性大腸炎、照射後大腸炎、および顕微鏡的大腸炎からなる群から選択される疾患を伴う腸内線維症を患う。
【0066】
別の例において、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量が投与される対象は、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、慢性糸球体腎炎、慢性移植片糸球体症、慢性間隙腎炎、および多発性嚢胞腎からなる群から選択される疾患を伴う腎線維症を患う。
【0067】
本出願はまた、血清ビリルビン、および/または1つもしくは複数の肝酵素の量を引き下げる方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。
【0068】
一例において、本出願の方法は、コントロール対象(例えば、本明細書の組成物が投与されていない対象)と比較して、血清ビリルビンの量を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%引き下げる。一例において、対象は、健康な対象(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、ビリルビンのレベルが高い。一例において、本出願の方法は、ビリルビンのレベルを正常なレベル(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体におけるビリルビンのレベルに類似)に引き下げる。更なる例において、本出願の方法は、ビリルビンのレベルを、10mg/L、9mg/L、8mg/L、7mg/L、6mg/L、5mg/L、4mg/L、3mg/L、2mg/L、1.5mg/L、1.2mg/L、または1mg/L未満に引き下げる。更なる例において、本出願の方法は、ビリルビンのレベルを、2mg/L、1.5mg/L、1.2mg/L、または1mg/L未満に引き下げる。
【0069】
一例において、肝臓酵素は、アルカリホスファターゼ(ALP、AP、またはAlk Phos)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ガンマ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、および5’ヌクレオチダーゼからなる群から選択される。一例において、本出願の方法は、1つまたは複数の肝臓酵素の量を、コントロール対象(例えば、本明細書の組成物が投与されていない対象)と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%引き下げる。一例において、対象は、1つまたは複数の肝臓酵素のレベルを、健康な対象(例えば、本明細書中で記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、高めた。一例において、本出願の方法は、1つまたは複数の肝臓酵素(例えば、ALP、ALT、AST、GGT、LDH、および5’ヌクレオチダーゼ)のレベルを、正常なレベル(例えば、本明細書中で記載されるような疾患または症状のない個体における肝臓酵素のレベルに類似)に引き下げる。
【0070】
更なる例において、本出願の方法は、ALPの血清レベルを、500IU/L(リットルあたりの国際単位)、400IU/L、300IU/L、200IU/L、180IU/L、160IU/L、または150IU/L未満に引き下げる。更なる例において、本出願の方法は、ALPのレベルを、約40IU/Lから約150IU/Lにまで引き下げる。
【0071】
更なる例において、本出願の方法は、ALTのレベルを、200IU/L(リットルあたりの国際単位)、150IU/L、100IU/L、80IU/L、60IU/L、または50IU/L未満に引き下げる。更なる例において、本出願の方法は、ALTのレベルを、約5IU/Lから約50IU/Lにまで引き下げる。
【0072】
更なる例において、本出願の方法は、ASTのレベルを、200IU/L(リットルあたりの国際単位)、150IU/L、100IU/L、80IU/L、60IU/L、50IU/L、または40IU/L未満に引き下げる。更なる例において、本出願の方法は、ASTのレベルを、約10IU/Lから約50IU/Lにまで引き下げる。
【0073】
更なる例において、本出願の方法は、GGTのレベルを、200IU/L(リットルあたりの国際単位)、150IU/L、100IU/L、90IU/L、80IU/L、70IU/L、または60IU/L未満に引き下げる。更なる例において、本出願の方法は、GGTのレベルを、約15IU/Lから約50IU/L、または約5IU/Lから約30IU/Lにまで引き下げる。
【0074】
更なる例において、本出願の方法は、LDHのレベルを、500IU/L(リットルあたりの国際単位)、400IU/L、300IU/L、200IU/L、180IU/L、160IU/L、150IU/L、140IU/L、または130IU/L未満に引き下げる。更なる例において、本出願の方法は、LDHのレベルを、約120IU/Lから約220IU/Lにまで引き下げる。
【0075】
更なる例において、本出願の方法は、5’ヌクレオチダーゼのレベルを、50IU/L(リットルあたりの国際単位)、40IU/L、30IU/L、20IU/L、18IU/L、17IU/L、16IU/L、15IU/L、14IU/L、13IU/L、12IU/L、11IU/L、10IU/L、9IU/L、8IU/L、7IU/L、6IU/L、または5IU/L未満に引き下げる。更なる例において、本出願の方法は、5’ヌクレオチダーゼのレベルを、約2IU/Lから約15IU/Lにまで引き下げる。
【0076】
本出願はまた、例えば血中の、グルコースレベル(すなわち、グルコースの量)を引き下げる方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。一例において、当該方法は、コントロール対象(例えば、本出願の組成物が投与されていない対象)と比較して、食後のグルコースレベルを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%引き下げる。一例において、対象は、健康な対象(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、食後のグルコースレベルが高い。一例において、本出願の方法は、食後のグルコースレベルを、正常なレベル(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体におけるグルコースレベルに類似)に引き下げる。一例において、当該方法は、コントロール対象(例えば、本出願の組成物が投与されていない対象)と比較して、空腹時グルコースレベルを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%引き下げる。一例において、対象は、健康な対象(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、空腹時グルコースレベルが高い。一例において、本出願の方法は、空腹時グルコースレベルを、正常なレベル(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体におけるグルコースレベルに類似)に引き下げる。
【0077】
一例において、対象は、健康な対象(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、グルコースレベルが高い。一例において、本出願の方法は、食後のグルコースレベルを、800mg/L、700mg/L、600mg/L、500mg/L、400mg/L、350mg/L、300mg/L、250mg/L、240mg/L、230mg/L、220mg/L、210mg/L、200mg/L、190mg/L、180mg/L、170mg/L、160mg/L、または150mg/L未満に引き下げる。一例において、本出願の方法は、食後のグルコースレベルを、200mg/L、190mg/L、180mg/L、170mg/L、160mg/L、または150mg/L未満に引き下げる。一例において、本出願の方法は、空腹時のグルコースレベルを、70〜800mg/L、70〜700mg/L、70〜600mg/L、70〜500mg/L、70〜400mg/L、70〜350mg/L、70〜300mg/L、70〜250mg/L、70〜240mg/L、70〜230mg/L、70〜220mg/L、70〜210mg/L、70〜200mg/L、70〜190mg/L、70〜180mg/L、70〜170mg/L、70〜160mg/L、70〜150mg/L、70〜140mg/L、70〜130mg/L、70〜120mg/L、70〜110mg/L、70〜100mg/L、90〜130mg/L、90〜120mg/L、90〜110mg/L、または90〜100mg/Lに引き下げる。一例において、本出願の方法は、食後のグルコースレベルを、70〜200mg/L、70〜190mg/L、70〜180mg/L、70〜170mg/L、70〜160mg/L、70〜150mg/L、70〜140mg/L、70〜130mg/L、70〜120mg/L、70〜110mg/L、70〜100mg/L、90〜130mg/L、90〜120mg/L、90〜110mg/L、または90〜100mg/Lに引き下げる。
【0078】
本出願はまた、例えば血中の、ヘモグロビンA1c(HbA1c)レベル(すなわちHbA1cの量)を引き下げる方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。一例において、当該方法は、コントロール対象(例えば、本出願の組成物が投与されていない対象)と比較して、HbA1cレベルを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%引き下げる。一例において、対象は、健康な対象(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、HbA1cレベルが高い。一例において、本出願の方法は、HbA1cレベルを、正常なレベル(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体におけるHbA1cレベルに類似)に引き下げる。
【0079】
一例において、対象は、健康な対象(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、HbA1cのレベルが高い。一例において、本出願の方法は、HbA1cレベルを、10%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.4%、6.3%、6.2%、6.1%、6.0%、5.9%、5.8%、または5.7%未満引き下げる。一例において、本出願の方法は、HbA1cレベルを、8.0%、7.9%、7.8%、7.7%、7.6%、7.5%、7.4%、7.3%、7.2%、7.1%、7.0%、6.9%、6.8%、6.7%、6.6%、6.5%、6.4%、6.3%、6.2%、6.1%、6.0%、5.9%、5.8%、または5.7%未満引き下げる。一例において、本出願の方法は、HbA1cレベルを、6.5%、6.4%、6.3%、6.2%、6.1%、6.0%、5.9%、5.8%、または5.7%未満引き下げる。
【0080】
本出願はまた、インスリン分泌(すなわちインスリンの量)を増大させる方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。一例において、本出願の方法は、コントロール対象(例えば、本出願の組成物が投与されていない対象)と比較して、インスリンの分泌を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%増大させる。一例において、対象は、健康な対象(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、インスリンの分泌が少ない。一例において、本出願の方法は、インスリンレベルが2〜9.0mIU/ml、2〜8.9mIU/mL、2〜8.8mIU/mL、2〜8.7mIU/mL、2〜8.6mIU/mL、2〜8.5mIU/mL、2〜8.4mIU/mL、2〜8.3mIU/mL、2〜8.2mIU/mL、2〜8.1mIU/mL、2〜8.0mIU/mL、2〜7.9mIU/mL、2〜7.8mIU/mL、2〜7.7mIU/mL、2〜7.6mIU/mL、2〜7.5mIU/mL、2〜7.4mIU/mL、2〜7.3mIU/mL、2〜7.2mIU/mL、2〜7.1mIU/mL、2〜7.0mIU/mL、2〜6.9mIU/mL、2〜6.8mIU/mL、2〜6.7mIU/mL、2〜6.6mIU/mL、2〜6.5mIU/mL、2〜6.4mIU/mL、2〜6.3mIU/mL、2〜6.2mIU/mL、2〜6.1mIU/mL、2〜6.0mIU/mL、3〜9.0mIU/mL、3〜8.9mIU/mL、3〜8.8mIU/mL、3〜8.7mIU/mL、3〜8.6mIU/mL、3〜8.5mIU/mL、3〜8.4mIU/mL、3〜8.3mIU/mL、3〜8.2mIU/mL、3〜8.1mIU/mL、3〜8.0mIU/mL、3〜7.9mIU/mL、3〜7.8mIU/mL、3〜7.7mIU/mL、3〜7.6mIU/mL、3〜7.5mIU/mL、3〜7.4mIU/mL、3〜7.3mIU/mL、3〜7.2mIU/mL、3〜7.1mIU/mL、3〜7.0mIU/mL、3〜6.9mIU/mL、3〜6.8mIU/mL、3〜6.7mIU/mL、3〜6.6mIU/mL、3〜6.5mIU/mL、3〜6.4mIU/mL、3〜6.3mIU/mL、3〜6.2mIU/mL、3〜6.1mIU/mL、3〜6.0mIU/mL、4〜9.0mIU/mL、4〜8.9mIU/mL、4〜8.8mIU/mL、4〜8.7mIU/mL、4〜8.6mIU/mL、4〜8.5mIU/mL、4〜8.4mIU/mL、4〜8.3mIU/mL、4〜8.2mIU/mL、4〜8.1mIU/mL、4〜8.0mIU/mL、4〜7.9mIU/mL、4〜7.8mIU/mL、4〜7.7mIU/mL、4〜7.6mIU/mL、4〜7.5mIU/mL、4〜7.4mIU/mL、4〜7.3mIU/mL、4〜7.2mIU/mL、4〜7.1mIU/mL、4〜7.0mIU/mL、4〜6.9mIU/mL、4〜6.8mIU/mL、4〜6.7mIU/mL、4〜6.6mIU/mL、4〜6.5mIU/mL、4〜6.4mIU/mL、4〜6.3mIU/mL、4〜6.2mIU/mL、4〜6.1mIU/mL、4〜6.0mIU/mL、5〜9.0mIU/mL、5〜8.9mIU/mL、5〜8.8mIU/mL、5〜8.7mIU/mL、5〜8.6mIU/mL、5〜8.5mIU/mL、5〜8.4mIU/mL、5〜8.3mIU/mL、5〜8.2mIU/mL、5〜8.1mIU/mL、5〜8.0mIU/mL、5〜7.9mIU/mL、5〜7.8mIU/mL、5〜7.7mIU/mL、5〜7.6mIU/mL、5〜7.5mIU/mL、5〜7.4mIU/mL、5〜7.3mIU/mL、5〜7.2mIU/mL、5〜7.1mIU/mL、5〜7.0mIU/mL、5〜6.9mIU/mL、5〜6.8mIU/mL、5〜6.7mIU/mL、5〜6.6mIU/mL、5〜6.5mIU/mL、5〜6.4mIU/mL、5〜6.3mIU/mL、5〜6.2mIU/mL、5〜6.1mIU/mL、または5〜6.0mIU/mLとなるように、インスリン分泌を増大させる。
【0081】
本出願はまた、インスリン感受性を高める(すなわち、インスリン抵抗性を低下させる)方法であって、本出願の医薬組成物の治療的に有効な量を、そうすることが必要な対象に投与することを含む方法を提供する。一例において、本出願の方法は、インスリン感受性を、コントロール対象(例えば、本出願の組成物が投与されていない対象)と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%高める(すなわち、インスリン抵抗性を低下させる)。一例において、対象は、健康な対象(例えば、本明細書中に記載されるような疾患または症状のない個体)と比較して、インスリン感受性が低い(すなわち、インスリン抵抗性が高い)。
【0082】
インスリン感受性は、インスリンの作用に対して体がどれくらい感受性であるかを指す。インスリン感受性であると言われる人は、血中グルコースレベルを低くするのに、感受性が低い誰かよりも、必要とすることとなるインスリンの量が少ない。
【0083】
インスリン抵抗性(IR)は、細胞、組織、または器官が、インスリンの正常な作用に反応しない生理学的症状である。したがって、細胞組織、または体内の器官は、インスリンに対して抵抗して、正常な細胞、組織、または器官(例えば、健康な対象の細胞、組織、または器官)と同じくらい効果的にインスリンを用いることができない。
【0084】
一例において、対象は哺乳類である。一例において、哺乳類はヒトである。
【0085】
一例において、第1の化合物および1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、相互的な(two−way)組合せで投与される。別の例において、第1の化合物および2つ以上の更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、相互的な組合せで投与される。
【0086】
第1の化合物は、少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)と共に、相乗作用、例えば、個々の治療に対して抵抗性となり得るグルコースレベル、HbA1cレベル、および/またはインスリン抵抗性の相乗的引下げを達成することができる。それゆえに、第1の化合物および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)の組合せは、有利である。第1の化合物および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)のそのような組合せが、遵守を、そしてそれゆえに有効性を高めるように設計された、医薬の許容可能なキャリアを有する単一の医薬組成物で(例えば単一のカプセル形態で)提供されることは、特に有利であり得る。したがって、本出願はさらに、第1の化合物の有効量、および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)の有効量を、1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、アジュバント、または賦形剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0087】
一例において、第1の化合物および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、同時に投与される。例えば、第1の化合物および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、医薬の許容可能なキャリアと共に、単一の医薬組成物で投与される。別の例において、第1の化合物と少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中で記載される更なる治療剤)は、逐次的に投与される。例えば、第1の化合物は、少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)よりも前に、またはそれよりも後に投与される。
【0088】
一例において、第1の化合物が、第1の期間、第1の用量にて投与されてから、第1の化合物が、第2の期間、第2の用量にて投与される。一例において、第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体が、第1の期間、0.1〜1500mg、0.2〜1200mg、0.3〜1000mg、0.4〜800mg、0.5〜600mg、0.6〜500mg、0.7〜400mg、0.8〜300mg、1〜200mg、1〜100mg、1〜50mg、1〜30mg、4〜26mg、または5〜25mgの1日総量にて投与されてから、第2の化合物が、0.1〜1500mg、0.2〜1200mg、0.3〜1000mg、0.4〜800mg、0.5〜600mg、0.6〜500mg、0.7〜400mg、0.8〜300mg、1〜200mg、1〜100mg、1〜50mg、1〜30mg、4〜26mg、または5〜25mgの1日総量にて投与される。一例において、総量が、1日1回経口投与される。一例において、第1の用量は、第2の用量と異なる。更なる例において、第1の用量は、第2の用量よりも低い。別の例において、第1の用量は、第2の用量よりも高い。一例において、第1の用量は、約5mg(例えば、4.8mgから5.2mg)であり、第2の用量は、約10mg(例えば、9.8mgから10.2mg)である。一例において、第1の期間は約6ヵ月である。一例において、第2の期間は約6ヵ月である。
【0089】
一例において、医薬組成物は、経口的に、非経口的に、または局所的に投与される。別の例において、医薬組成物は経口投与される。
【0090】
本出願に従う組成物は典型的に、第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体、および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)を、それぞれの所望される1日用量が、単一の単位剤型で、例えば錠剤またはカプセルで、または1日の間に同時に、もしくは間隔を置いて投与されることになる2つ以上の単位剤型で、それらが必要な対象に投与されるのを可能にするほど十分に含有することとなる。
【0091】
本明細書の方法において、活性物質が、1日単回用量で、または1日あたり2、3、4回、もしくはそれ以上の同一もしくは異なる分割用量で投与されてよく、これらは1日の間で同時に投与されてもよいし、異なる時点にて投与されてもよい。通常、活性物質は同時に、より一般的には単一の組合せ剤型で、投与されることとなる。
【0092】
一態様において、第1の化合物および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、それぞれの単剤療法において投与される投薬量と実質的に同じ投薬量にて投与される。一態様において、第1の化合物は、その単剤療法の投薬量よりも少ない(例えば、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満)投薬量で投与される。一態様において、少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、その単剤療法の投薬量よりも少ない(例えば、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満)投薬量にて投与される。一態様において、第1の化合物および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は双方とも、それぞれの単剤療法の投薬量よりも少ない(例えば、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満)投薬量で投与される。
【0093】
本出願の医薬組成物は、経口投与に都合のいいあらゆる形態、例えば錠剤、カプセル、粉末、ロゼンジ、ピル、トローチ、エリキシル、凍結乾燥した粉末、溶液、顆粒、懸濁液、エマルジョン、シロップ、またはチンキであってよい。徐放性の形態または遅延放出性の形態、例えば、コーティングされた粒子、多層錠剤、カプセル内カプセル、カプセル内錠剤、または微粒剤の形態が調製されてもよい。
【0094】
経口投与用の固体形態は、薬学的に許容可能な結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香味剤、コーティング剤、防腐剤、潤滑剤、および/または時間遅延剤を含有してよい。適切な結合剤として、アラビアゴム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、またはポリエチレングリコールが挙げられる。適切な甘味料として、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、またはサッカリンが挙げられる。適切な崩壊剤として、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンゴム、ベントナイト、アルギン酸、またはアガーが挙げられる。適切な希釈剤として、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、またはリン酸二カルシウムが挙げられる。適切な香味剤として、ペパーミント油、冬緑油、チェリー、オレンジ、またはラズベリー香料が挙げられる。適切なコーティング剤として、ポリマーもしくはコポリマー、アクリル酸および/もしくはメタクリル酸、ならびに/またはそれらのエステル、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラック、もしくはグルテンが挙げられる。適切な防腐剤として、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファ−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、または亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。適切な潤滑剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、またはタルクが挙げられる。適切な時間遅延剤として、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルが挙げられる。
【0095】
経口投与用の液体形態は、上記の剤に加えて、液体キャリアを含有してよい。適切な液体キャリアとして、水、油、例えばオリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ラッカセイ油、ココヤシ油、液体パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、またはそれらのミクスチュアが挙げられる。
【0096】
経口投与用の懸濁液としてさらに、分散剤および/または懸濁剤が挙げられ得る。適切な懸濁剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、またはセチルアルコールが挙げられる。適切な分散剤として、レシチン、脂肪酸、例えばステアリン酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノ−またはジ−オレエート、−ステアレートまたは−ラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノ−またはジ−オレエート、−ステアレートまたは−ラウレート等が挙げられる。
【0097】
経口投与用のエマルジョンとしてさらに、1つまたは複数の乳化剤が挙げられ得る。適切な乳化剤として、先で例示される分散剤または天然ゴム、例えばアラビアゴムもしくはトラガカントゴムが挙げられる。
【0098】
本出願の医薬組成物は、第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体、および少なくとも1つの更なる治療剤を、選択された賦形剤、キャリア、アジュバント、および/または希釈剤と一緒に混合(blending)、粉砕、均質化、懸濁、溶解、乳化、分散、かつ/または混合(mixing)することによって、調製されてよい。錠剤またはカプセルの形態の本出願の医薬組成物の一タイプが、(a)第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体から選択される活性物質の少なくとも1つ、および少なくとも1つの更なる治療剤を、所望されるあらゆる賦形剤、キャリア、アジュバント、および/または希釈剤と共に含む第1の錠剤を調製し、かつ(b)第2の錠剤またはカプセルを調製することによって、調製されてよく、第2の錠剤またはカプセルは、残りの活性物質および第1の錠剤を含む。カプセルの形態の本出願の医薬組成物の別のタイプが、(a)第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体から選択される活性物質の少なくとも1つ、および更なる治療剤を、所望されるあらゆる賦形剤、キャリア、アジュバント、および/または希釈剤と共に含む第1のカプセルを調製し、かつ(b)第2のカプセルを調製することによって、調製されてよく、第2のカプセルは、残りの活性物質および第1のカプセルを含む。錠剤の形態の本出願の医薬組成物の更なるタイプが、(a)第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体から選択される活性物質の少なくとも1つ、および少なくとも1つの更なる治療剤を、所望されるあらゆる賦形剤、キャリア、アジュバント、および/または希釈剤と共に含むカプセルを調製し、かつ(b)錠剤を調製することによって、調製されてよく、錠剤は、残りの活性物質およびカプセルを含む。
【0099】
例において、少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、即時放出性錠剤として、または徐放錠剤として用いられる。特に、徐放錠剤で提供される場合に有効である。種々の更なる治療剤の徐放錠剤が市販されている。長期間にわたって作用するには、錠剤は徐放形態であることが好ましい。
【0100】
別の例において、本出願の医薬組成物は、第1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体を含有するカプセル内に、少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)を含有するカプセルを含む。典型的には、この形態において、少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、即時放出性の形態で示される。その場合、組成物を1日3回投与するのが普通である。投与の別のモードは、少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)を、先に記載されるように徐放形態または非徐放形態のいずれかで含有する組成物を、1日2回与えるものであり、投与される組成物の1日量は、所望される1日投薬量を患者に与えるのに十分な量の活性物質を含有する。
【0101】
一例において、本出願の医薬組成物は、第1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体を、0.1〜1500mg、0.2〜1200mg、0.3〜1000mg、0.4〜800mg、0.5〜600mg、0.6〜500mg、0.7〜400mg、0.8〜300mg、1〜200mg、1〜100mg、1〜50mg、1〜30mg、4〜26mg、または5〜25mgの1日総量で含む剤型である。
【0102】
本出願の医薬組成物は、患者によって生涯用いられて、生存を延ばし得る。血中グルコースの引下げ、インスリン分泌の増大、および/またはインスリン抵抗性の低下は、関連する疾患、例えば糖尿病および肥満症の進行の軽減を確実にする。第1の化合物および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)の組合せは、高血糖を伴う原発性胆汁性肝硬変(PBC)の、そして抵抗性の原発性胆汁性肝硬変(PBC)の選択療法となる見込みがある。本出願によって提供される投薬は単純であるため、本出願の併用療法は、患者の体重および臨床反応に応じた用量の増大に用いられ得る。
【0103】
本明細書中に開示される第1の化合物は、従来の方法(例えば、米国特許出願公開第2009/0062526号明細書、米国特許第7138390号明細書、および国際公開第2006/122977号パンフレットに記載されるもの)によって、例えば、以下のスキーム1に示される、高度に純粋な化合物1(オベチコール酸またはOCA)を生産するための、6ステップ合成に続く1精製ステップによって、調製され得る。
【化9】
【0104】
上記のプロセスは、国際公開第2013/192097号パンフレットに記載されており、この出願の内容は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。当該プロセスは、6ステップ合成に続く1精製ステップである。ステップ1は、メチルエステル化合物aを生産するための、酸性触媒および熱の存在下でメタノールを用いる、7−ケトリトコール酸(KLCA)のC−24カルボン酸のエステル化である。ステップ2は、化合物cを生産するための、強塩基を用いてからクロロシランによる処理が続く、化合物1からのシリルエノールエーテルの形成である。ステップ3は、化合物dを生産するための、シリルエノールエーテル化合物cおよびアセトアルデヒドのアルドール縮合反応である。ステップ4は、化合物eを生産するための、化合物dのC−24メチルエステルの鹸化である。ステップ5は、化合物fを生産するための、化合物eの6−エチリデン部分の水素添加である。ステップ6は、結晶化合物1を生産するための、7α−ヒドロキシ基への化合物fの7−ケト基の選択的還元である。ステップ7は、結晶化合物の、化合物1(オベチコール酸形態1またはOCA形態1)への変換である。
【0105】
本出願の医薬組成物の生物活性および/または治療活性は、当該技術において知られている従来方法によって測定され得る。本出願の開示を限定することなく、いくつかの適切な方法が本明細書中で提供される。
【0106】
肝細胞の単離
ツーステップインサイチュコラゲナーゼ潅流法が、肝細胞を単離するのに利用され得る。肝細胞が、適切な動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ)から単離される。適切な潅流の後、肝臓が摘出されて、潅流バッファに移される。生じた細胞懸濁液が濾過されて、収集される。肝細胞が(例えば、Percoll密度遠心分離技術を用いて)分離される。
【0107】
肝細胞のサンドイッチ培養
単離された肝細胞が、コラーゲンでコーティングされた組織培養プレート上で培養されて、血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、表皮増殖因子、インスリン、グルカゴン、およびヒドロコルチゾンが補われた培地中で維持される。サンドイッチ系について、更なるコラーゲンゲル溶液が、細胞上に分配される。培養プレートは、37℃にてインキュベートされて、第2のゲル層のゲル化および付着が生じ得る。培地は毎日替えられて、更なる分析用に−20℃にて保存される。本出願の医薬組成物は、肝細胞に施されてから、細胞に及ぼす作用が測定される。
【0108】
肝細胞の懸濁培養
単離の後直ちに、肝細胞が洗浄されて、再懸濁される。懸濁された細胞は、本出願の医薬組成物の不在下または存在下で培養される。ポジティブコントロール(例えば、グルカコン(glucacon)の存在下で培養された細胞)が含まれてよい。
【0109】
インキュベーション期間の後、培地中に放出されたグルコースが(例えば、Trinderアッセイキット(Sigma)を用いたグルコースオキシダーゼ法で)判定されることとなる。
【0110】
また、[5−
3H]−グルコースの存在下での肝細胞のインキュベーション後、グルコース利用が、(脂肪酸酸化実験に関しての)トリチウム水の生産として判定され得る。2−[
3H]−デオキシグルコースの吸収が、インスリン有り、または無しで判定される(Perdomo et al.,J.Biol.Chem.279,27177(2004))。グリコーゲン中へのD−[
14C]−グルコースの組込みは、インスリンの不在下または存在下で測定され得る(Perdomo et al.2004)。
【0111】
HepG2細胞培養
ヒト肝芽腫細胞(HepG2)が、記載される(Wang et al.,Mol.Endocrinol.22,1622(2008))ようにして、培地中で増殖される。翌日、細胞が、本出願の医薬組成物で処理される。処理後、細胞は、TPA、LPS、またはTNF−αで処理されてから、RNAの単離用に収集される。
【0112】
HepG2細胞の一過性トランスフェクションが(例えば、Lipofectamine 2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて)実行されることとなる。トランスフェクションの24時間後に、細胞が、本出願の医薬組成物で前処理される。その後、細胞は、LPSもしくはTPA有り、または無しで処理される。その後、細胞は収穫されて、ルシフェラーゼ活性が、デュアルルシフェラーゼリポータアッセイ系を用いて判定されることとなる。
【0113】
マウスモデル
マウス(例えば、野生型またはFXR
−/−)が、標準的な12:12時間の明/暗サイクル下の病原体フリー動物施設内で維持される。マウスは、標準的な齧歯類食および水が不断給餌される。マウスは、一晩断食されてから、LPS、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または本出願の医薬組成物の単回用量が腹膜内注射されてから、水が不断給餌される。注射後、マウスは殺されて、血液および肝臓が、更なる分析用に取り出される。全ての手順は、ラボ動物の取扱いおよび使用についての国立衛生研究所(National Institutes of Health)のガイドラインに従った。
【0114】
MetSウサギモデル
MetSのHFD誘発ウサギモデルが、以前に記載される(Filippi et al.,J.Sexual Med.6,3274(2009))ようにして得られる。雄New Zealand Whiteウサギが、ランダムに番号をつけられて、2つの異なる群に割り当てられる:12週間、コントロール食(CON)を給餌した未処理群、またはHFD(例えば、0.5%コレステロールおよび4%ピーナッツ油)を給餌した処理群。HFDウサギの亜群が、本出願の医薬組成物で処理される。
【0115】
血液サンプルが、ベースラインにて、そして12週目に得られる。処理の12週後、ウサギは殺されて、肝臓、VAT(腸係蹄と腸間膜との間に蓄積)、および胆嚢の標本が、その後の分析用に摘出され、秤量され、収集され、そして処理される。全ウサギ群由来のVATサンプルはまた、前脂肪細胞の単離用に処理される。生化学的分析およびホルモンによる血清分析(hormonal serum analyse)が、以前に記載される(Filippi et al.2009,Morelli et al.,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.132,80(2012),Vignozzi et al.,J.Endocrinology 212,71(2012))ようにして、実行される。
【0116】
MetSの作用を評価するために、以下の要因の1つまたは複数の、ダミー変数としての存在を考慮するアルゴリズムが設計される:高血糖、高トリグリセリドレベル、高コレステロールレベル、高血圧、および内臓脂肪蓄積。各因子についてのカットオフが、CONウサギにおいて測定された、分析されたパラメータの平均±2S.D.によって導き出される。3またはそれ以上の要因についての陽性が、MetSを示す。
【0117】
VATの組織形態計測的分析
以前に記載される(Maneschi et al.2012)ように、脂肪細胞の直径を測定するために、VAT標本が、ヘマトキシリンおよびエオシン染色によって分析される。
【0118】
低酸素状態の検出および免疫組織化学
以前に記載される(Maneschi et al.2012,Morelli et al.2012,2013,Vignozzi et al.2012)ようにして、生体内還元性薬物ピモニダゾール塩酸塩を用いて、殺す前にi.p.注射されて、VAT酸化が分析された。
【0119】
総および膜/細胞質ゾル画分の調製
VATサンプルからのタンパク質抽出のために、凍結された組織が液体窒素中ですり潰されて、2つのアリコートに分割される:一方が総タンパク質抽出用、そして他方が膜/細胞質ゾル調製用。膜画分および細胞質ゾル画分が調製される。タンパク質抽出物が、BCA試薬(Pierce,Rockford,IL,米国)で定量化されて、SDS−PAGEによって分析される。以前に記載される(Maneschi et al.2012)ようにして、ウエスタンブロット分析が実行される。
【0120】
肝臓の組織学
肝臓の脂肪変性が、肝臓切片のOil Red O染色によって評価される。凍結された切片がクリオスタット内でカットされて、固定されて、Oil Red Oで染色される。Oil Red O染色後に、肝細胞核を強調するために、切片は洗浄されて、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色される。最後に、切片は写真に撮られて、Adobe Photoshopソフトウェアを用いたバックグラウンド除去後に、Oil Red O陽性のコンピュータ支援定量化がなされる。
【0121】
肝臓切片中の炎症性マーカーについての免疫組織化学
肝臓切片が、種々の炎症性マーカー(例えば、TNFα、Cd68、Il−6、Il−1b、およびIl−12)に対する一次抗体とインキュベートされる。切片はリンスされて、ビオチン化された二次抗体と、その後ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体とインキュベートされる。反応産物は、クロモゲンとしての3’,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(Sigma−Aldrich)で現像される。コントロール実験は、一次抗体を除くことによって実行される。炎症性マーカーに対する染色のコンピュータ支援定量化が、Adobe Photoshopソフトウェアを用いたバックグラウンド除去後になされる。
【0122】
ウサギ内蔵脂肪の前脂肪細胞の単離、特徴付け、および分化
VATからのウサギ前脂肪細胞(rPAD)の単離は、以前に記載される(Maneschi et al.2012)ようにして実行される。細胞は、完全培地中で培養される。P1培養体が用いられる。rPADは、種々のモノクローナル抗体(例えば、以前に記載される(Maneschi et al.2012)、CD34−PE、CD45−FITC、CD31−FITC、CD14−PE、CD90−PE、CD106−FITC、およびCD105−PE)によるフローサイトメトリによって特徴付けられる。コンフルエンスの2日後に、rPADの分化が、rPADを分化ミクスチュア(DIM)(例えば、5%stripped FBSを補ったDMEM中、5mg/mlインスリン、1mMデキサメタゾン、および0.5mM3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)を含有するミクスチュア)に曝すことによって、誘導される。
【0123】
グルコース吸収
rPADによるグルコース吸収が、以前に記載される(Maneschi et al.2012)ようにして測定される。DIMに曝されたrPADが、血清フリー培地内で24時間培養されてから、インスリンの濃度を増大させてインキュベーションされて、インスリン依存性の刺激が評価される。インキュベーション期間の終了後、rPADがさらに、
3H−2−デオキシ−D−グルコースとインキュベートされる。組み込まれた放射活性が、シンチレーション分光測定法を用いて測定される。
【0124】
実験動物および食餌
動物は、12:12時間の明暗サイクルで、22℃の標準的なケージ内に個々に収容される。マウスは、(例えば、The Jackson Laboratory(Bar Harbour,ME)から)購入され得る。雄GLP−1受容体欠損(GLP−1RKO)マウスが、ヘテロ交配対に由来する(Scrocchi et al.,Nat.Med.2,1254(1996))。NASHを誘導するために、高脂肪、高フルクトース、および高コレステロールで構成される、脂肪源がトランス脂肪またはラードとなる2食が試験される。フルクトースもコレステロールも含まない低脂肪食が、コントロール食として用いられる。
【0125】
研究および薬物投与
NASHの進行を特徴付けるために、低脂肪食(LFD)、高トランス脂肪、高フルクトース、高コレステロール食(HTF)、または高ラード脂肪、高フルクトース、高コレステロール食(HLF)のLep
ob/Lep
obマウスまたはB6マウスが(例えば、8または12週間)維持される。マウスは、ビヒクル(例えば、滅菌水中50%DMSO)または本出願の医薬組成物を送達する単一の浸透圧ミニポンプが皮下移植される。加えて、または代わりに、マウスは、ビヒクル、または本出願の医薬組成物が、経口強制飼養を介して1日1回投与されてよい。
【0126】
肝臓エンドポイントに及ぼす体重損失の影響を評価するために、先に記載されるLFD食またはHTF食に曝されたLep
ob/Lep
obマウスにおける最初の研究が、繰り返されてよい。LFD食またはHTF食に基づく8週後に、全マウスは、ビヒクルまたは本出願の医薬組成物を送達する浸透圧ミニポンプが移植される。加えて、または代わりに、マウスは、ビヒクル、または本出願の医薬組成物が、他の投与経路、例えば経口強制飼養を介して、1日1回投与されてよい。HTF群のサブセットは、ビヒクル含有ミニポンプが移植され、かつカロリー制限されて、薬物処理されるマウスにおいて観察されるのと類似した体重損失の程度が誘発される。
【0127】
肝臓組織の組織学的分析および生化学的分析
終了後、肝臓組織が摘出されて、(例えば、10%中性緩衝ホルマリン内で)固定される。肝臓組織がパラフィン包埋されて、切片化されて、マウントされて、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色される。線維症を視覚化するために、切片の別のセットが、マッソントリクローム染色で染色される。切片は最初に、ワイゲルト鉄へマトキシリンで、続いてビーブリッヒスカーレット、リンタングステン酸/リンモリブデン酸、およびアニリンブルー処理で染色される。切片の第2のセットが、マクロファージマーカーMac−2を標的とする抗体を用いて免疫染色される。全ての組織学的分析は、処理条件について盲検化された病理医によって行われる。
【0128】
血漿ホルモンおよび代謝物質の分析
血漿グルコース、トリグリセリド、総コレステロール、ALT、およびアスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルが(例えば、Olympus AU400e Bioanalyzer(Olympus America Diagnostics,Center Valley,PA)を用いることによって)測定される。血漿サンプルが、標準曲線の範囲内でのALTおよびASTの検出のために、PBSで1:10に希釈される。総血漿アディポネクチンが(例えば、市販のELISAを用いて、メーカーの説明書に従って(Millipore,Billerica,MA)測定される。
【0129】
定義
便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語が、ここに収集される。
【0130】
本明細書中で用いられる用語「FXRアゴニスト」は、FXRを活性化するあらゆる化合物を指す。一態様において、FXRアゴニストは、CDCAに対して、FXRの少なくとも50%の活性化を達成し、アッセイ法において適切なポジティブコントロールが、国際公開第2000/037077号パンフレットに記載されている。別の態様において、FXRアゴニストは、シンチレーション近接アッセイ、または国際公開第2000/037077号パンフレットに記載されるHTRFアッセイにおいて、FXRの100%の活性化を達成する。FXRアゴニストの例として、米国特許第7138390号明細書;米国特許第7932244号明細書;米国特許出願公開第20120283234号明細書;米国特許出願公開第20120232116号明細書;米国特許出願公開第20120053163号明細書;米国特許出願公開第20110105475号明細書;米国特許出願公開第20100210660号明細書;米国特許出願公開第20100184809号明細書;米国特許出願公開第20100172870号明細書;米国特許出願公開第20100152166号明細書;米国特許出願公開第20100069367号明細書;米国特許出願公開第20100063018号明細書;米国特許出願公開第20100022498号明細書;米国特許出願公開第20090270460号明細書;米国特許出願公開第20090215748号明細書;米国特許出願公開第20090163474号明細書;米国特許出願公開第20090093524号明細書;米国特許出願公開第20080300235号明細書;米国特許出願公開第20080299118号明細書;米国特許出願公開第20080182832号明細書;米国特許出願公開第20080039435号明細書;米国特許出願公開第20070142340号明細書;米国特許出願公開第20060069070号明細書;米国特許出願公開第20050080064号明細書;米国特許出願公開第20040176426号明細書;米国特許出願公開第20030130296号明細書;米国特許出願公開第20030109467号明細書;米国特許出願公開第20030003520号明細書;米国特許出願公開第20020132223号明細書;および米国特許出願公開第20020120137号明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
本明細書中で用いられる用語「オベチコール酸」または「OCA」は、化学構造:
【化10】
を有する化合物を指す。
【0132】
オベチコール酸は、オベチコール酸形態1、INT−747、3α,7α−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン−24−酸、6α−エチル−ケノデオキシコール酸、6−エチル−CDCA、6ECDCA、コラン−24−酸、6−エチル−3,7−ジヒドロキシ−,(3α,5β,6α,7α)またはとも呼ばれ、米国特許出願公開第2009/0062526A1号明細書、米国特許第7138390号明細書、および国際公開第2006/122977号パンフレットに記載される方法によって調製され得る。オベチコール酸についてのCAS登録番号は、459789−99−2である。
【0133】
本明細書中で用いられる用語「結晶オベチコール酸」は、化学構造:
【化11】
を有する化合物のあらゆる結晶形態を指す。
【0134】
結晶オベチコール酸は、化合物が、三空間次元における特定の結晶充填配置に結晶化され、または化合物が外表面(external face plane)を有することを意味する。オベチコール酸の固体形態は、様々な結晶充填配置に結晶化し得、それらの全てが、オベチコール酸の同じ元素組成を有する。様々な結晶形態は通常、X線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学的特性および電気的特性、安定性、ならびに溶解度が異なる。再結晶溶媒、結晶化速度、保存温度、および他の要因により、一結晶形態が優位を占め得る。オベチコール酸の結晶は、様々な条件下、例えば、様々な溶媒、温度その他の下での結晶化によって、調製され得る。OCAの結晶形態の例が、同時係属中の米国特許出願公開第20130345188号明細書に記載されている。
【0135】
用語「第1の化合物」は、式Iの化合物もしくは化合物1、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体を意味する。当該用語が本明細書の文脈で用いられる場合はいつでも、遊離基、同位体標識化合物、結晶化合物、またはそれらの対応する薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体がその状況下で可能であり、かつ/または適切であるならば、そのようなものに言及していることが理解されるべきである。
【0136】
本明細書中で用いられる用語「アミノ酸抱合体」は、本明細書の第1の化合物(例えば式Iの化合物)の、あらゆる適切なアミノ酸を有する抱合体を指す。例えば、式Iの化合物のそのような適切なアミノ酸抱合体は、胆汁または腸液における完全性が増強されるという付加的な利点を有し得る。適切なアミノ酸として、グリシン、サルコシンおよびタウリンが挙げられるが、これらに限定されない。ゆえに、本明細書は、本明細書の第1の化合物(例えば化合物1)のグリシン抱合体、サルコシン抱合体およびタウリン抱合体を包含する。
【0137】
「処置すること」は、症状、疾患、障害、その他の向上をもたらすあらゆる効果、例えば、小さくすること、引き下げること、調節すること、または除外することを含む。疾患状態を「処置する」こと、または疾患状態の「処置」は:疾患状態を阻害すること、すなわち、疾患状態もしくはその臨床的症候の進行を抑えること、または疾患状態を和らげること、すなわち、疾患状態もしくはその臨床的症候の一時的退行もしくは永続的退行を引き起こすことを含む。
【0138】
疾患状態を「予防すること」は、疾患状態に曝され得、または疾患状態の傾向があり得るが、疾患状態の症候をまだ経験も示しもしていない対象において、疾患状態の臨床的症候を進行させないことを含む。
【0139】
本明細書中で用いられる用語「阻害すること」または「阻害」は、疾患または症状の発症または進行に及ぼすあらゆる検出可能なポジティブ効果を指す。そのようなポジティブ効果は、疾患または症状の少なくとも1つの症候または徴候の発症の遅延または予防、症候または徴候の緩和または反転、および症候または徴候の更なる悪化の減速または予防を含み得る。
【0140】
「疾患状態」は、あらゆる疾患、障害、症状、症候、または徴候を意味する。
【0141】
本明細書中で用いられる用語「有効な量」または「治療的に有効な量」は、適切な用量の投与直後の急性的な、または長期間にわたる治療効果を、単独で、または組み合わせてもたらす第1の化合物(例えば、FXR活性化リガンド)、または少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)の量を指す。一例において、第1の化合物(例えば、FXR活性化リガンド)の有効な量または治療的に有効な量は、少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)と組み合わされて、適切な用量の投与直後の急性的な、または長期間にわたる治療効果をもたらす。当該効果として、疾患/症状(例えば、肝臓、腎臓、または腸の線維症)、および関連する合併症の症候、徴候、および根底にある病状の、何らかの検出可能な程度までの予防、矯正、阻害、または反転が挙げられる。「有効な量」または「治療的に有効な量」は、第1の化合物、更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)、疾患およびその重篤度、ならびに処置されることになる対象の年齢、体重その他に応じて変わることとなる。
【0142】
第1の化合物の治療的に有効な量が、ヒトまたは非ヒト動物への投与用の、1つまたは複数の更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)、および、任意選択的に、1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリアと共に製剤化され得る。したがって、本出願の医薬組成物は、例えば経口経路、非経口経路、または局所的経路を介して投与されて、第1の化合物および更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)の有効な量を提供することができる。代替例において、本出願の組成物は、医療デバイス、例えばステントをコーティングする、または含浸させるのに用いられてよい。
【0143】
本明細書中で用いられる「薬理効果」は、療法の意図される目的を達成する、対象においてもたらされる効果を包含する。一例において、薬理効果は、処置されることになる対象の主な徴候(primary indication)が予防され、緩和され、または引き下げられることを意味する。例えば、薬理効果は、処置された対象における主な徴候の予防、緩和、または引下げをもたらすものであろう。別の例において、薬理効果は、処置されることになる対象の主な徴候の障害または症候が予防され、緩和され、または引き下げられることを意味する。例えば、薬理効果は、処置された対象における障害または症候の予防、緩和、または引下げをもたらすものであろう。
【0144】
特に明記しない限り、不斉炭素原子から生じる異性体(例えば、全てのエナンチオマーおよびジアステレオマー)が、本明細書の範囲内に含まれることが理解されるべきである。そのような異性体は、古典的な分離技術によって、そして立体化学的に制御される合成によって、実質的に純粋な形態で得られ得る。
【0145】
「医薬組成物」は、治療剤、例えば第1の化合物および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)を、対象への投与に適した形態で含有する製剤である。一例において、医薬組成物は、バルクまたは単位剤型である。投与の簡略化および投薬量の均一性のために、組成物を投薬量単位形態で製剤化することが有利であり得る。本明細書中で用いられる投薬量単位形態は、処置されることになる対象にとってユニタリ投薬量として適した、物理的に不連続な単位を指す;各単位は、必要とされる医薬キャリアと協働して所望の治療効果をもたらすと算出される活性試薬の所定量を含有する。本明細書の投薬量単位形態についての仕様は、活性剤の固有の特性、および達成されることになる特定の治療効果、ならびに個体の処置用のそのような活性剤を調合する、当該技術において固有の制限によって決定され、そしてこれらに直接依存する。
【0146】
用語「単位剤型」は、ヒトおよび他の哺乳類にとってユニタリ投薬量として適した物理的に不連続な単位を指し、各単位は、本明細書中で記載されるように、適切な医薬賦形剤と協働して所望の治療効果をもたらすと算出される活性物質の所定量を含有する。
【0147】
単位剤型は、種々の形態のいずれかであり、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エーロゾル吸入器上の単一ポンプ、またはバイアルが挙げられる。第1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはアミノ酸抱合体の、組成物の単位用量での量は、有効量であり、関係する特定の処置および/または治療に使用される更なる治療剤に従って変動する。当業者であれば、患者の年齢および症状に応じて、投薬量をルーチン的に変えることが時折必須であることを理解するであろう。投薬量はまた、投与の経路によっても決まることとなる。種々の経路が考えられ、経口、肺、直腸、腸管外、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹膜内、吸入、口腔内、舌下、胸膜内、髄腔内、鼻腔内等が挙げられる。本発明の化合物の局所投与または経皮投与のための剤型として、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入薬が挙げられる。一例において、第1の化合物および/または少なくとも1つの更なる治療剤は、滅菌条件下で、薬学的に許容可能なキャリアと、そして必要とされるあらゆる防腐剤、バッファ、または推進剤と混合される。
【0148】
本明細書中で用いられる「PO」または「経口の」は、経口投与を指し;「SQ」は、皮下投与を指し;そして「QD」は、1日1回の投与を指す。
【0149】
用語「フラッシュ用量」は、迅速に分散する剤型である製剤を指す。
【0150】
用語「即時放出」は、比較的短い期間、一般に最大約60分での、剤型からの治療剤(例えば、第1の化合物または少なくとも1つの更なる治療剤)の放出と定義される。用語「調節放出」は、遅延放出、徐放、およびパルス化放出を含むと定義される。用語「パルス化放出」は、剤型からの薬物の一連の放出と定義される。用語「徐放(sustained release)」または「徐放(extended release)」は、長期間にわたる剤型からの治療剤の連続的放出と定義される。
【0151】
「対象」として、哺乳類、例えば、ヒト、ペット(例えば、イヌ、ネコ、鳥類等)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、家禽等)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、鳥類等)が挙げられる。一例において、対象はヒトである。一態様において、対象はメスである。一態様において、対象はオスである。
【0152】
本明細書中で用いられるフレーズ「薬学的に許容可能な」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、炎症、アレルギー反応もなければ、他の問題も合併症もない、ヒトおよび動物の組織と接触する使用に適し、妥当な利点/リスク比に相応した化合物、材料、組成物、キャリア、および/または剤型を指す。
【0153】
「薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤」は、概して安全な、非毒性の、生物学的にも、それ以外ででも不所望でない医薬組成物を調製するのに有用なキャリアまたは賦形剤を意味し、動物用途およびヒト医薬用途に許容可能である賦形剤が挙げられる。明細書および特許請求の範囲において用いられる「薬学的に許容可能な賦形剤」は、1つのそのような賦形剤および複数のそのような賦形剤の双方を含む。
【0154】
第1の化合物を、いかなる製剤化もなく直接投与することが可能である一方、第1の化合物は、薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬製剤の形態で投与され得る。当該製剤は、経口、口腔内、直腸、鼻腔内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、および鼻腔内が挙げられる種々の経路によって投与され得る。
【0155】
一例において、第1の化合物および/または少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載される更なる治療剤)は、経皮投与され得る。経皮投与するために、経皮送達装置(「パッチ」)が必要である。そのような経皮パッチは、本明細書の化合物の連続的注入または非連続的注入を、量を制御して実現するのに用いられ得る。医薬剤の送達用の経皮パッチの構築および使用は、当該技術において周知である。例えば、米国特許第5023252号明細書参照。そのようなパッチは、医薬剤の連続送達、パルス状送達、またはオンデマンド送達用に構築され得る。
【0156】
一例において、本明細書の医薬組成物は、口腔内投与および/もしくは舌下投与、または経鼻投与に適している。この例は、胃複合体(gastric complication)、例えば胃系による、そして/または肝臓を通しての第1の通過代謝を回避するようにして、第1の化合物の投与を実現する。この投与経路はまた、吸着時間を短くして、治療利点のより迅速な出現を実現し得る。
【0157】
第1の化合物は、広い投薬量範囲にわたって投与され得る。例えば、1日あたりの投薬量が通常、体重の約0.0001〜約30mg/kgの範囲内に入る。成人の処置において、約0.1〜約15mg/kg/日の範囲が、単回用量または分割用量で用いられる。一例において、製剤は、約0.1mg〜約1500mgの第1の化合物を含む。別の例において、製剤は、約1mg〜約100mgの第1の化合物を含む。別の例において、製剤は、約1mg〜約50mgの第1の化合物を含む。別の例において、製剤は、約1mg〜約30mgの第1の化合物を含む。別の例において、製剤は、約4mg〜約26mgの第1の化合物を含む。別の例において、製剤は、約5mg〜約25mgの第1の化合物を含む。別の例において、製剤は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、または約50mgの第1の化合物を含む。しかしながら、実際に投与される第1の化合物の量は、処置されるべき症状、選択される投与経路、投与される第1の化合物の形態、投与される更なる治療剤、個々の患者の年齢、体重および反応、ならびに患者の症候の重篤度が挙げられる、関連する状況に照らして、医師によって決定されることとなることが理解されよう。したがって、先の投薬量範囲は、本明細書の範囲をいかなる形であれ限定することが意図されない。前述の範囲の下限を下回る投薬量レベルが十二分に適切であり得る場合もある一方で、さらにより大きな用量が、1日を通しての投与用に、いくつかのより小さな用量に最初に分割されることを条件として、そのようなより大きな用量が、いかなる有害な副作用も引き起こすことなく使用され得る場合もある。
【0158】
「線維症」は、組織または器官における、過剰な線維性結合組織、例えば瘢痕組織の発達を包含する症状を指す。瘢痕組織のそのような生成は、疾患、外傷、化学毒性等に起因する器官の感染、炎症、または損傷に応じて、起こり得る。線維症は、肝臓、腎臓、腸、肺、心臓その他が挙げられる種々の異なる組織および器官において発症し得る。
【0159】
本明細書中で用いられる「胆汁鬱滞性症状」は、肝臓からの胆汁排泄が損なわれ、または阻止されるあらゆる疾患または症状を指し、これらは、肝臓において、または胆管において起こり得る。肝内胆汁鬱滞および肝外胆汁鬱滞が、胆汁鬱滞性症状の2つの型である。肝内胆汁鬱滞(肝臓の内側で起こる)は、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、敗血症(全身感染症)、急性アルコール性肝炎、薬物毒性、完全非経口的栄養(静脈内に供給される)、悪性腫瘍、嚢胞性線維症、および妊娠において最も一般的に見られる。肝外胆汁鬱滞(肝臓の外側で起こる)は、胆管腫瘍、狭窄、嚢胞、憩室、総胆管における結石形成、膵炎、膵腫瘍または膵仮性嚢胞、および近隣器官における腫瘤または腫瘍に起因する圧迫によって引き起こされ得る。
【0160】
胆汁鬱滞性症状の臨床的症候および徴候として:むず痒さ(痒み)、疲労、黄疸にかかったような皮膚または眼、特定の食物の消化不能、吐き気、嘔吐、白色便、暗色尿、および右上腹部痛が挙げられる。患者の血清中のアルカリホスファターゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、5’ヌクレオチダーゼ、ビリルビン、胆汁酸、およびコレステロールのレベルの測定が挙げられる、一組の標準的な臨床検査に基づいて、胆汁鬱滞性症状のある患者が臨床的に診断かつ追跡され得る。通常、診断マーカーであるアルカリホスファターゼ、GGT、および5’ヌクレオチダーゼの3つ全ての血清レベルが、異常に高いとみなされるならば、患者は胆汁鬱滞性症状があると診断される。これらのマーカーの正常な血清レベルは、試験プロトコルに応じて、ラボごとに、そして手順ごとに、ある程度変わり得る。ゆえに、医師は、特定のラボおよび試験手順に基づいて、各マーカーについて、異常に高い血中レベルがどれほどのものであるかを決定することができるであろう。例えば、胆汁鬱滞性症状に苦しむ患者は一般に、血中のアルカリホスファターゼが約125IU/L超、GGTが約65IU/L超、そして5’’ヌクレオチダーゼが約17IU/L超である。血清マーカーのレベルの変動性のため、胆汁鬱滞性症状は、先で言及される症候、例えばむず痒さ(痒み)の少なくとも1つに加えて、これらの3つのマーカーの異常なレベルに基づいて、診断され得る。
【0161】
用語「原発性胆汁性肝硬変」は、用語「原発性胆汁性胆管炎」と互換的に用いられ、多くの場合PBCと省略される。PBCは、肝臓の小胆管のゆっくりした進行性の破壊によって示される肝臓の自己免疫疾患であり、小葉内管(Hering管)が、疾患の初期に冒される。当該管が損傷を受けた場合、胆汁が肝臓内で蓄積して(胆汁鬱滞)、経時的に組織に損傷を与える。これは、瘢痕化、線維症、および肝硬変の原因となり得る。原発性胆汁性肝硬変は、小葉間胆管の破壊によって特徴付けられる。原発性胆汁性肝硬変の組織病理学的発見として:上皮内リンパ球によって特徴付けられる胆管の炎症、および管周囲類上皮肉芽腫が挙げられる。PBCの4つのステージがある。
【0162】
ステージ1−門脈ステージ:正常なサイズの三管;門脈炎症、微妙な胆管の損傷。肉芽腫が多くの場合、このステージにおいて検出される。
ステージ2−門脈周囲ステージ:拡大した三管;門脈周囲線維症および/または炎症。典型的に、このステージは、小胆管の増殖の発見によって特徴付けられる。
ステージ3−隔壁ステージ:能動線維中隔および/または受動線維中隔。
ステージ4−胆汁性肝硬変:小節が存在する;花輪(garland)。
【0163】
用語「原発性硬化性胆管炎」(PSC)は、肝内(肝臓の内側)レベルおよび肝外(肝臓の外側)レベルの双方で、胆管の炎症およびその後の閉塞症を引き起こす胆管の疾患である。炎症は、腸への胆汁のフローを妨げ、これは最終的に、肝硬変、肝不全、および肝癌の原因となり得る。
【0164】
用語「非アルコール性脂肪肝炎」(NASH)は、肝臓における脂肪の蓄積によって引き起こされる肝臓炎症である。一部の人々において、脂肪の蓄積は、肝臓の炎症を引き起こす。炎症のため、肝臓は機能しないし、機能するはずもない。NASHはよりひどくなって肝臓の瘢痕化を引き起こし、これが肝硬変の原因となり得る。NASHは、長期の、大量飲酒によって引き起こされるような肝疾患に類似するが、NASHはアルコールを乱用しない人々において起こる。
【0165】
用語「器官」は、細胞および組織からなり、かつ生体において一部の特定の機能を実行する、分化した構造体(心臓、肺、腎臓、肝臓、その他にみられる)を指す。当該用語はまた、機能を実行し、または活動に協力する身体の部分(例えば、眼、および視覚的な器官を構成する関連した構造体)を包含する。用語「器官」はさらに、分化した細胞のあらゆる部分的構造、および完全な構造体に潜在的に発達することができる組織(例えば、肝臓の葉または切片)を包含する。
【0166】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許文書は、そのような各刊行物または各文書が参照によって本明細書に組み込まれることが具体的に、かつ個々に示されているがごとく、参照によって本明細書に組み込まれる。刊行物および特許文書の引用は、いずれも関連する先行技術であるという承認として意図されないし、その内容または日付に関していかなる承認も構成しない。本明細書は次に、説明文として記載され、当業者であれば、本明細書に記載される組成物および方法が、種々の実施例で実行され得ること、そして本明細書中に提供される記載および実施例が、後に続く特許請求の範囲の限定のためにではなく説明のためにあることを認識するであろう。
【0167】
本明細書において、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、単数形は複数も含む。別段の定めがない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合、本明細書が優先されることとなる。本明細書中で用いられる全てのパーセンテージおよび比率は、特に明記されない限り、重量による。
【実施例】
【0168】
実施例1:C57BL/6jマウスにおける食餌誘導肥満NASH
食餌誘導肥満NASHマウスにおける代謝パラメータ、肝臓病理、およびNAS活性スコアに及ぼす、オベチコール酸(OCA)、および血中グルコースレベルを減少させ、インスリン分泌を刺激し、かつ/またはインスリン感受性を高める治療剤の、単独での、または組み合わせての作用を評価する研究を行った。実施例2、3および4で用いた治療剤はそれぞれ、リラグルチド(LIRA)、メトホルミン(MET)、またはシタグリプチン(SIT)であった。一研究において、抗血糖剤は、エンパグリフロジン(EMP)である。加えて、組合せが、いずれの単剤療法処置によっても調節されない新規の遺伝子を調節するか、そして/または単剤療法によっても影響が与えられる遺伝子をより強く調節するかを判定するために、肝臓遺伝子発現プロファイリングおよびその後の経路分析を実行した。
【0169】
【表1】
【0170】
動物、収容、および食餌
5週齢の雄C57BL/6マウスを、JanVier、フランスから購入して、試験小屋に移した。順化および高脂肪食誘導期間中に、マウスを、12:12時間の明暗サイクル(午前3時〜午後3時の明)下、制御温度条件(22±1℃;50±10%の相対湿度)のオーダーメードのキャビネット内に、1ケージあたり5頭を群で収容した。食餌誘導および研究期間の全体を通して、マウスを、高脂肪食(n=110、DIO−NASH)(D09100301、Research Diet、米国)(40%脂肪(18%トランス脂肪)、40%炭水化物(20%フルクトース)、および2%コレステロール)または定期的な齧歯類食(n=10、LEAN−CHOW)(Altromin 1324、Brogaarden、デンマーク)、および水道水に自由裁量でアクセスさせた。動物は実験前に28週間食餌を続け、研究期間の全体を通して食餌を維持した。手術後の回収の間、そして研究期間の全体を通して、全動物を一個体で収容した。
【0171】
研究への割当て、階層化した無作為化、およびベースラインモニタリング
食餌誘導の27週後、組織学的評価による肝臓の脂肪変性進行用の肝生検を得た。投薬以前の−2週目(SIT組合せ)または−1週目(LIRAおよびMET組合せ)に、処置群への階層化した無作為化を、脂肪変性スコアおよび体重に従って実行した。体組成分析を判定するために、EchoMRI(EchoMRI、米国)を用いて、動物をスキャンした。EchoMRIスキャンは、脂肪、および脂肪のない組織量を測定する。ALT、AST、TG、およびTCレベルのベースライン血漿分析のために、非空腹時の、意識がある状態で、頬(顎下)から血液サンプルを収集した。
【0172】
プレ生検手順
手術手順の日に、マウスを100%酸素中イソフルラン(2〜3%)で麻酔した。正中線において小さく開腹して、肝臓の左葉を露出させた。肝臓組織の円錐形状の楔部分(約100mg)を、葉の遠位部分から摘出して、秤量して、組織学用に4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定した。肝臓のカット表面を即座に、バイポーラ凝固(ERBE VIO 100電気手術器)を用いて電気凝固させた。肝臓を腹腔に戻して、腹壁を縫合して、皮膚をホッチキスで閉じた。手術後の回復のために、手術日に、そして手術後1および2日目に、所定のカルプロフェン(5mg/ml〜0.01ml/10g)およびエンロフロキサジン(enrofloxazin)(5mg/ml〜1ml/kg)をマウスに皮下投与した。
【0173】
組織学的評価のための肝生検の調製:4%PFA中での一晩の保存後、自動化Miles Scientific Tissue−TEK VIP Tissue Processor内で肝生検をパラフィン中で一晩中浸透させてから、パラフィンブロック中に包埋した。5頭の異なる動物由来の生検を、1ブロックに包埋した。その次にブロックをトリミングして、2つの3μm切片を、Microm HM340E Microtome(Thermo Scientific)で(H&E染色用に)カットした。2つのブロックを一スライド上に置いて、10頭の異なる動物を代表する、スライドあたり合計10個の生検を与えた。切片を一晩乾燥させたままにした。処置群への階層化および無作為化のための脂肪変性程度の評価を、処理条件について盲検化された組織学者が、Kleiner et al.(2005)によって概説されるように実行した。
【0174】
血液および血漿の分析
血液サンプルを、ヘパリン処理した10μLガラス毛細管チューブ中に収集した。サンプルを直ちにバッファ(0.5mlのグルコース/ラクテート系溶液(EKF−diagnostics、ドイツ))中に懸濁して、試験日に、BIOSEN c−Lineグルコースメータ(EKF−diagnostics、ドイツ)を用いて、グルコースについて分析した。トリグリセリドおよびコレステロールの含有量について、100μlの血液を、リチウム−ヘパリンチューブ中に収集した。血漿を分離して、分析前にサンプルを4℃にて1日保存した。
【0175】
経口グルコース負荷試験(OGTT)
処置の4週目(LIRAおよびMET組合せ)または6週目(SIT組合せ)に、意識のある、自由に動く動物に、OGTTを実行した。OGTTの約18時間前に、最後の薬物用量を投与した。動物は、試験前に、薬物投薬を受けなかった。試験開始前の4時間、動物を断食させた(午前6時から午前10時まで食物を取下げ)。t=0にて、マウスは、経口強制飼養(10ml/kg)によって、グルコースの経口ボーラス(200mg/ml; Fresenius Kabi、スウェーデン)を受けた(2g/kg)。血液サンプルを、尾部静脈から(切って)収集して、血中グルコースを、経口グルコース投与後、0、15、30、60および120分の時点にて測定した。血液サンプリング、および通常通りの薬物の投薬後に、マウスを再給餌した。
【0176】
殺処分および死体解剖
動物を、非空腹状態で8週目(処置56日目)に殺処分した。最後の薬物用量を、殺処分の約18時間前に投与した。動物は、殺処分前に、薬物投薬を受けなかった。動物をCO
2/O
2によって誘導して、麻酔(イソフルラン)中に腹腔を開き、終末の血漿を収集するために心臓血液を得た。死体解剖と同時に、肝臓全体を収集し、秤量した。左葉を破片に分割して、遺伝子発現分析のために液体窒素中で、そして組織学的分析および生化学的分析のために4%PFA中で急速凍結した。肝臓の破片を、生化学的分析のために液体窒素中で急速凍結した。
【0177】
肝臓組織のプロセシング
終末の肝臓組織:処置の8週後、肝臓全体を収集し、秤量し、左葉由来の肝生検を摘出して直ちに、4%PFA(約150〜200mg)中に入れて急速凍結した(約50mg)。肝臓破片(約100mg)をFastPrepチューブ内に収集して、液体窒素中で急速凍結した。
【0178】
組織学用の固定、包埋、および切片:4%PFA中での一晩の固定後、自動化Miles Scientific Tissue−TEK VIP Tissue Processor内で肝生検をパラフィン中で一晩中浸透させてから、パラフィンブロック中に包埋した。5頭の異なる動物由来の生検を、1ブロックに包埋した。ブロックをトリミングして、1ブロックあたり2つの3μm切片を、Microm HM340E Microtome(Thermo Scientific)でカットした。
【0179】
肝臓トリグリセリドおよびコレステロールの分析用の組織ホモジェネーション(homogenation):1mLの5%NH−40/ddH
2O溶液(ab142227,Abcam)を、高速用FastPrepチューブに加えた。チューブをFastPrepホモジェナイザ内に入れて、2×60秒間振盪させた。ホモジェナイゼーション後、サンプルを加熱ブロック内で3分間、80〜100℃にゆっくり加熱した。室温に冷却した後、加熱ステップを繰り返した。マイクロセントリフュージを用いて、サンプルをトップスピードにて2分間遠心分離して、あらゆる不溶性物質を除去した。上澄みを、使用まで−80℃にて保存した。市販のキットによるオートアナライザCobas C−111(Roche Diagnostics、ドイツ)を用いて、メーカーの説明書に従って、トリグリセリドおよび肝臓ホモジェネートのコレステロール含有量を、1回の判定で測定した。
【0180】
RNAseq用のRNA精製:MP FastPrep系を用いて、組織の溶解を実行した。簡潔に、供給会社によって推奨されるようにして、30〜50mgの肝生検をホモジナイズして、NucleoSpin Plus RNAカラム(Macherey−Nagel)でのRNA抽出に用いる。NanoDrop 2000分光光度計(ThermoScientific)を用いて、RNAの量を評価した。
【0181】
肝臓の脂肪変性の評価
肝臓の脂肪変性を評価するために、肝臓切片をH&Eで染色してから、Visiomorphソフトウェア(Visiopharm,Copenhagen、デンマーク)で分析した。特定の目的で設計したプロトコルを用いて、総面積のパーセンテージとして、脂肪変性の終末の肝臓定量的評価を記載した。HE染色:パラフィン包埋切片をキシレン中で脱パラフィンして、一連の勾配エタノール中で再水和させた。次に、切片をMayer’s Hematoxylin(Cat no.S3309,Dako)中で5分間インキュベートして、流れる水道水中で5分間洗浄してから、Eosin Y solution(Cat.No.HT110280 2.5L,Sigma−Aldrich)中で15秒間染色した。スライドを水和させて、Pertexでマウントして、スキャン前に乾燥させた。
【0182】
総NAFLD(NAS)活性スコア
NAFLD活性スコア(NAS)は、おそらくNASHである患者に数値を与えるものであり、脂肪変性(0〜3)、小葉炎症(0〜3)、および肝細胞風船様腫大(0〜3)についての別々のスコアの総計である。大部分のNASH患者は、≧5のNASスコアを呈する。当該実験において、Kleinerおよび共同研究者らによって概説される臨床基準(Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease,Kleiner et al,Hepatology 41;2005)を用いて、左葉由来の終末の肝臓組織を、NAS用に収集した。NASを判定するのに用いた基準を、以下の表1に記載する。
【0183】
【表2】
【0184】
RNAseq:肝臓の終末の遺伝子発現、および生物情報科学的分析
Spliced Transcripts Alignment to a Reference(STAR)ソフトウェアを用いて、配列データを、Ensemblデータベースから得たハツカネズミ(Mus musculus)ゲノムに対してアラインした。HTSeqパッケージ内で利用可能なパイソンスクリプトHTSeq−カウントを用いて、注釈領域にマッピングするリードの数をカウントした。全下流分析ステップを、Rについてのスクリプトとして実行した。バイオインフォマティクス分析のために、標準的なRNAseq品質コントロールパラメータを用いて、データの品質を評価した。群間変動および群内変動を評価するために、主成分分析および階層的クラスタリングを実行した。示差的に発現された遺伝子を同定するために、R−パッケージのedgeRを用いた。示差的に発現された遺伝子のリストを、確立されたNASHバイオマーカーに関する情報と相互参照した。経路分析を実行して、群間での示差的に変動した経路を同定した。
【0185】
実施例2.C57BL/6jマウスにおける食餌誘導肥満NASH:オベチコール酸(OCA)±リラグルチド(LIRA)
この研究のためのプロトコルおよび分析を、実施例1に記載している。
【0186】
処置群
群1:ビヒクル(PO)+ビヒクル(SQ)
マウス(n=12)に、0から8週までビヒクルを投与した。
群2:OCA(PO)+ビヒクル(SQ)
マウス(n=12)に、0から8週まで、10mg/kgの用量にてOCAを投与した。
群3:LIRA(SQ)+ビヒクル(PO)
マウス(n=12)に、0から8週まで、0.1mg/kgの用量にてLIRAを投与した。
群4:OCA(PO)+ビヒクル(SQ)
マウス(n=12)に、0から8週まで、30mg/kgの用量にてOCAを投与した。
群5:LIRA(SQ)+ビヒクル(PO)
マウス(n=12)に、0から8週まで、0.4mg/kgの用量にてLIRAを投与した。
群6:OCA(PO)+LIRA(SQ)
マウス(n=12)に、0から8週まで、10mg/kgの用量にてOCAを、そして0.1mg/kgの用量にてLIRAを投与した。
群7:OCA(PO)+LIRA(PO)
マウス(n=12)に、0から8週まで、30mg/kgの用量にてOCAを、そして0.4mg/kgの用量にてLIRAを投与した。
群8:リーン食コントロール群
マウス(n=9)に、0から8週まで、リーン食を給餌した。
【0187】
化合物および投薬
全マウスは、PO(OCA)またはSQ(LIRA)投薬を1日1回受けた。0日目が投薬の最初の日であった一方、55日目が最後の日であった。ゆえに、0日目から55日目まで、55日目を含めて、マウスに1日1回投薬した。マウスは、治療剤またはビヒクルを単独で合計112用量受けた。動物を、午後2:00〜4:00の間に処理した。OCAを、10mg/kgおよび30mg/kgの最終用量濃度にするために、それぞれ1mg/mlおよび3mg/mlの最終ストック濃度に溶解した。OCAに用いるビヒクルは、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)であった。
【0188】
結果および考察
NASスコア
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断は、肝生検の脂肪変性、炎症、および肝細胞風船様腫大の特性パターンの存在によって確立される。NAFLD活性スコア(NAS)は、おそらくNASHである患者に数値を与えるものであり、大部分のNASH患者は、NAS値が≧5である。DIO−NASHマウスにおいて、全体の、そして個々の成分のNAS値に及ぼす、OCA(10および30mg/kg、PO)およびLIRA(0.1および0.4mg/kg、SQ)の、単独での、そして組み合わせた作用を評価した。例1Aにおいて用いたように、低用量の組合せは、OCA(10mg/kg)/LIRA(0.1mg/kg)を指す一方、高用量は、OCA(30mg/kg)/LIRA(0.4mg/kg)を指す。
【0189】
図1Aおよび
図1Bはそれぞれ、8週の処置後のOCAおよびLIRAの低用量の組合せおよび高用量の組合せの、NASスコアの引下げを表す。データは、低用量の組合せおよび高用量の組合せが双方とも、コントロールに対して、総NASを引き下げることを示している。特に、OCAおよびLIRAの低用量組合せの作用は、ビヒクル群およびOCA単独の低用量に対して、統計学的に有意であった。NASにおける最大の向上は、約3ポイントであった。高用量組合せによる向上は、NAS値を4.6から1.6まで引き下げた(p<0.05、対OCA単剤療法)。おおよそ2ポイントは、脂肪変性成分の引下げに起因した。脂肪変性成分に及ぼすOCAおよびLIRAの低用量の組合せおよび高用量の組合せの作用を、それぞれ
図2Aおよび
図2Bに示す。双方の用量組合せは、統計学的に有意に(p<0.05、対OCA単剤療法またはLIRA単剤療法)、脂肪変性を改善した。
【0190】
肝臓のトリグリセリドおよびコレステロール
トリグリセリドおよびコレステロールが挙げられる脂質の蓄積によって脂肪肝が特徴付けられるので、OCAおよびLIRAの低用量の組合せおよび高用量の組合せの作用を調査した。8週の処置後、当該組合せは、
図3Aおよび
図3Bに示すように、肝臓トリグリセリドを統計学的に有意に引き下げた。双方の用量組合せが、肝臓トリグリセリドおよびコレステロールのレベルを引き下げた一方、低用量の組合せが相乗作用を実現した。コレステロールに関して、高用量の組合せは、
図4Aおよび
図4Bに示すように、肝臓中のコレステロールレベルを統計学的に有意に引き下げた。
【0191】
体重および組成
LIRAは、米国において、肥満した個体における長期間にわたる体重管理のためのライフスタイルの付属物として示されている。しかしながら、甲状腺髄様癌、および壊死性膵炎が挙げられる急性膵炎のリスクが挙げられる、LIRAに関連する潜在的リスクに起因して、REMS(リスク評価・リスク緩和戦略:Risk Evaluation and Mitigation Strategy)が、FDAによって要求された。ゆえに、より低い用量のLIRAを用いる一方で、その最大体重減少作用を維持することが非常に所望される。体重に及ぼす低用量の組合せの作用を、
図5に示す。
図5に示すように、OCAおよびLIRAの低用量の組合せは、単剤療法単独に対して、体重を約13%、相乗的に減少させた。体組成に関して、
図6Aおよび
図6Bは、低用量の組合せおよび高用量の組合せが、体重に対して脂肪過多(または脂肪組織量)を引き下げたことを明らかにしている。特に、OCAおよびLIRAの高用量組合せは、マウスにおける脂肪過多を相乗的に引き下げた。
【0192】
トランスクリプトミクス分析
研究マウス由来の肝臓mRNAサンプルにRNA配列決定を実行して、併用療法による総NASの改善に関する、根底にある機構および経路に対する洞察を得た。以下の遺伝子を調査した:細胞死誘導DFFA様エフェクタC;死エフェクタドメイン含有DNA結合タンパク質2;2−ヒドロキシアシル−CoAリアーゼ1、レクチングラクトース(glactose)結合;オキシステロール結合タンパク質様3;エストロゲン受容体;インスリン誘導遺伝子、リピン1;およびユビキノール−チトクロームCレダクターゼヒンジタンパク質。低用量の組合せと、高用量の組合せと、コントロールと、各単剤療法との間で示差的に調節される遺伝子を比較した。研究由来の高脂肪食でマウスを維持した影響により、有意に上方制御される遺伝子および下方制御される遺伝子が、単剤療法処置または併用療法処置に応じて変化したプロセスが示される。単剤療法に対して、低用量組合せに影響された発現レベルの定量値を、
図7A〜
図7Eに示す。表2は、線維症の進行に関与する遺伝子の予測される機能および質的調節を記載している。組合せは、遺伝子発現を、ビヒクル群に対して統計学的に有意に調節した。
【0193】
【表3】
【0194】
高用量の組合せに影響される発現レベルの比較を、
図8A〜
図8Dに記載する。表3は、NASHの進行における各遺伝子の予測された役割または機能を記載している。
【0195】
【表4】
【0196】
実施例3.C57BL/6jマウスにおける食餌誘導肥満NASH:オベチコール酸(OCA)±メトホルミン(MET)
この研究用のプロトコルおよび分析を、実施例1に記載している。
【0197】
処置群
群1:ビヒクル(PO)
マウス(n=11)に、0〜8週までビヒクル(0.5%のCMC)を投与した。
群2:OCA(PO)+ビヒクル(PO)
マウス(n=11)に、0〜8週まで、10mg/kgの用量にてOCAを投与した。
群3:MET(PO)+ビヒクル(PO)
マウス(n=12)に、0〜8週まで、50mg/kgの用量にてMETを投与した。
群4:OCA(PO)+ビヒクル(PO)
マウス(n=11)に、0〜8週まで、30mg/kgの用量にてOCAを投与した。
群5:MET(PO)+ビヒクル(PO)
マウス(n=12)に、0〜8週まで、150mg/kgの用量にてMETを投与した。
群6:OCA(PO)+MET(PO)
マウス(n=12)に、0〜8週まで、10mg/kgの用量にてOCAを、そして50mg/kgの用量にてMETを投与した。
群7:OCA(PO)+MET(PO)
マウス(n=10)に、0〜8週まで、30mg/kgの用量にてOCAを、そして150mg/kgの用量にてMETを投与した。
群8:リーン食コントロール群
マウス(n=10)に、0〜8週まで、リーン食を給餌した。
【0198】
化合物および投薬
全マウスは、PO投薬を1日1回受けた。0日目が投薬の最初の日であった一方、55日目が最後の日であった。ゆえに、0日目から55日目まで、55日目を含めて、マウスに1日1回投薬した。マウスは、合計56用量受けた。動物を、午後2:00〜4:00の間に処理した。OCAを、10mg/kgおよび30mg/kgの最終用量濃度にするために、それぞれ1mg/mlおよび3mg/mlの最終ストック濃度に溶解した。投薬容量は、10mL/kgであった。METを、50mg/kgおよび150mg/kgの最終用量濃度にするために、それぞれ5mg/mlおよび15mg/mlの最終ストック濃度に調製した。投薬容量は、10mL/kgであった。OCAおよびMETに用いるビヒクルは、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)であった。
【0199】
結果
NASスコア
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断は、肝生検の脂肪変性、炎症、および肝細胞風船様腫大の特性パターンの存在によって確立される。NAFLD活性スコア(NAS)は、おそらくNASHである患者に数値を与えるものであり、大部分のNASH患者は、NASスコアが≧5である。DIO−NASHマウスにおいて、全体の、そして個々の成分のNASに及ぼす、OCA(10および30mg/kg、PO)およびMET(50および150mg/kg、PO)の、単独での、そして組み合わせた作用を調査した。例1Bにおけるように、低用量の組合せは、OCA(10mg/kg)/MET(50mg/kg)を指す一方、高用量の組合せは、OCA(30mg/kg)/MET(150mg/kg)を指す。
【0200】
図9Aは、総NASに及ぼす、OCAおよびMETの高用量の組合せの作用を表す。OCAおよびMETの高用量の組合せは、研究の終了時、NASを、統計学的に有意に引き下げた(p<0.05、対OCAコントロール)。個々の成分に関して、脂肪変性成分に及ぼす、OCAおよびMETの高用量の組合せの作用を、
図9Bに示す。
【0201】
血中グルコースレベル
経口グルコース負荷試験(OGTT)は、血液からグルコースが一掃される時間を判定するために、グルコースを経口投与して、後になって血液サンプルを採る医学的試験である。アッセイを実行して、糖尿病、インスリン抵抗性、および障害のあるベータ細胞の機能を試験する。研究の4週目に、グルコースの用量を経口投与して、血中レベルを4時間後に分析した。
図10Aおよび
図10Bは、OCAおよびMETの低用量の組合せおよび高用量の組合せが、DIO−NASHビヒクル群と比較して、処置の4週目に血中グルコースを引き下げたことを示す。表4は、OGTTにおいて測定したように、低用量の組合せおよび高用量の組合せの血中グルコースレベル(AUC)を記載する。
【0202】
【表5】
【0203】
示差的遺伝子発現分析
研究マウス由来の肝臓mRNAサンプルにRNA配列決定を実行して、併用療法による総NASの改善に関する、根底にある機構および経路に対する洞察を得た。OCAおよびMETで単独で、そして組み合わせて処理した動物から収集した終末の肝臓サンプルに、示差的遺伝子発現分析を行った。低用量の組合せと各単剤療法との間で示差的に調節される遺伝子を比較した。
図11、および表5のデータは、OCAおよびMETによって単独で、そして組み合わせて調節された遺伝子の数を開示している。通常、単剤療法処置は、ビヒクル群に対して、遺伝子を変えない一方、組み合わされて、ビヒクル群に対して、いくつかの遺伝子が一意的に調節され、これは、NASHを改善する相乗作用と矛盾がない。
図12A〜
図12Cのヴェン図は、調節された遺伝子の数の比較を容易にする。結果は、特有の線維症関連遺伝子が、単剤療法群に対して、組み合わされて調節されたことを実証しており、これは、NASHを改善する相乗作用と矛盾がない。
【0204】
【表6】
【0205】
低用量の組合せについて、コラーゲン受容体ファミリにおける以下の遺伝子が、一意的に調節された:コラーゲン14a1型、コラーゲン6a1型、およびコラーゲン6a2型。それぞれ
図13A〜
図13C参照。調節された他の注目する遺伝子は、デコリン受容体、コレクチンサブファミリメンバ10、トランスフォーミング増殖因子β受容体III、およびトランスフォーミング増殖因子(ベータ誘導)である。
図14A〜
図14F参照。
【0206】
高用量の組合せについて、コラーゲン受容体ファミリにおける、示差的に調節された遺伝子は、コラーゲン14a1型、コラーゲン6a1型、およびコラーゲン6a2型である。それぞれ
図15A〜
図15C参照。他の注目する遺伝子、例えば、血小板由来増殖因子受容体ベータ、デコリン、コレクチンサブファミリメンバ10、トランスフォーミング増殖因子ベータ受容体III、およびトランスフォーミング増殖因子(ベータ誘導)(
図16A〜
図16E)を調査した。
【0207】
線維症因子遺伝子に関して、コラーゲン受容体ファミリが特に注目される。コラーゲンは、全身の多くの場所に見られる。しかしながら、ヒト体内のコラーゲンの90%超は、I型である。動物組織中には29の遺伝的に異なるコラーゲンが存在する。コラーゲンI、II、III、V、およびXI型は、D周期の横紋細線維(D−periodic cross−striated fibril)に自己集合する。ここで、Dはおおよそ67nmであり、コラーゲンの軸方向の定期性は特徴的である。これらは、脊椎動物において最も豊富なコラーゲンを形成する。
【0208】
ラミニン1受容体は、膜リモデリングに関与している(より低いラミニンレベルを達成することが、線維症を処置するために所望される)。コレクチンは、コラーゲン様配列および炭水化物認識ドメインを有するタンパク質であるC−レクチンファミリのメンバをコードする。このファミリの他のメンバは、分泌タンパク質であり、微生物上の炭水化物抗原に結合して、その認識および除去を促進する。デコリンは、コラーゲン細線維集合において役割を果たす。このタンパク質の、多様な細胞表面受容体への結合が、自食および炎症に及ぼす促進作用、ならびに血管形成および腫瘍形成に及ぼす阻害作用が挙げられる、腫瘍抑制におけるその役割を果たす。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリおよびトランスフォーミング増殖因子は、炎症/線維化の進行に関与している。
【0209】
実施例4.C57BL/6jマウスの食餌誘導肥満NASH:オベチコール酸(OCA)±シタグリプチン(SIT)
この研究用のプロトコルおよび分析を、実施例1に記載している。
【0210】
処置群
群1:ビヒクル(PO)+ビヒクル(PO)
マウス(n=11)に、0〜8週まで、ビヒクル(0.5%CMC)を投与した。
群2:OCA(PO)+ビヒクル(SQ)
マウス(n=11)に、0〜8週まで、10mg/kgの用量にてOCAを投与した。
群3:SIT(PO)+ビヒクル(PO)
マウス(n=12)に、0〜8週まで、10mg/kgの用量にてSITを投与した。
群4:OCA(PO)+ビヒクル(SQ)
マウス(n=11)に、0〜8週まで、30mg/kgの用量にてOCAを投与した。
群5:SIT(PO)+ビヒクル(PO)
マウス(n=12)に、0〜8週まで、30mg/kgの用量にてSITを投与した。
群6:OCA(PO)+SIT(PO)
マウス(n=12)に、0〜8週まで、10mg/kgの用量にてOCAを、そして10mg/kgの用量にてSITを投与した。
群7:OCA(PO)+SIT(PO)
マウス(n=10)に、0〜8週まで、30mg/kgの用量にてOCAを、そして30mg/kgの用量にてSITを投与した。
群8:リーン食コントロール群
マウス(n=10)に、0〜8週まで、リーン食を給餌した。
【0211】
化合物および投薬
全マウスは、PO投薬を1日1回受けた。0日目が投薬の最初の日であった一方、55日目が最後の日であった。ゆえに、0日目から55日目まで、55日目を含めて、マウスに1日1回投薬した。マウスは、合計56用量受けた。動物を、午後2:00〜4:00の間に処理した。OCAを、10mg/kgおよび30mg/kgの最終用量濃度にするために、それぞれ1mg/mlおよび3mg/mlの最終ストック濃度に溶解した。投薬容量は、10mL/kgであった。SITを、10mg/kgおよび30mg/kgの最終用量濃度にするために、それぞれ5mg/mlおよび15mg/mlの最終ストック濃度に調製した。投薬容量は、10mL/kgであった。OCAおよびSITに用いるビヒクルは、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)であった。
【0212】
結果
DPP−IV活性
処置の2週目のDIO−NASHマウスの血漿DPP−IV活性に及ぼすOCA(10および30mg/kg、PO)の単独での、そしてSIT(10および30mg/kg、PO)と組み合わせた作用を調査した。低用量の組合せは、OCA(10mg/kg)/SIT(10mg/kg)を指す一方、高用量の組合せは、OCA(30mg/kg)/SIT(30mg/kg)を指す。OCAおよびSITの低用量の組合せは、DPP−IV活性を、統計学的に有意に引き下げた(p<0.01、対DIO−NASHビヒクル)。さらに、OCAおよびSITの高用量の組合せは、DPP−IV活性を、統計学的に有意に引き下げた(p<0.01、対DIO−NASHビヒクル)。薬理学的結果は、治療剤が、予想される作用、すなわちDPP−IV阻害をもたらしたことを実証している。
【0213】
実施例5.オベチコール酸(OCA)±エンパグリフロジン(EMP)
処置群
群1:ビヒクル(PO)
マウスに、週0〜8までビヒクル(0.5%CMC)を投与する。
群2:OCA(PO)+ビヒクル(PO)
マウスに、週0〜8まで、10mg/kgの用量にてOCAを投与する。
群3:EMP(PO)+ビヒクル(PO)
マウスに、週0〜8まで、3mg/kgの用量にてEMPを投与する。
群4:OCA(PO)+ビヒクル(PO)
マウスに、週0〜8まで、30mg/kgの用量にてOCAを投与する。
群5:EMP(PO)+ビヒクル(PO)
マウスに、週0〜8まで、10mg/kgの用量にてEMPを投与する。
群6:OCA(PO)+EMP(PO)
マウスに、週0〜8まで、10mg/kgの用量にてOCAを、そして3mg/kgの用量にてEMPを投与する。
群7:OCA(PO)+EMP(PO)
マウスに、週0〜8まで、30mg/kgの用量にてOCAを、そして10mg/kgの用量にてEMPを投与する。
群8:リーン食コントロール群
マウス(n=10)に、週0〜8まで、リーン食を給餌する。
【0214】
化合物および投薬
全マウスは、PO投薬を1日1回受けることになる。0日目が投薬の最初の日である一方、55日目が最後の日であった。ゆえに、0日目から55日目まで、55日目を含めて、マウスに1日1回投薬する。マウスは、合計56用量受けることとなる。動物を、午後2:00〜4:00の間に処理する。OCAを、10mg/kgおよび30mg/kgの最終用量濃度にするために、それぞれ1mg/mlおよび3mg/mlの最終ストック濃度に溶解する。投薬容量は、10mL/kgである。EMPを、3mg/kgおよび10mg/kgの最終用量濃度にするために、それぞれ5mg/mlおよび15mg/mlの最終ストック濃度に調製した。投薬容量は、10mL/kgであった。OCAおよびEMPに用いるビヒクルは、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)であった。
【0215】
Honda,et al.,「The Selective SGLT2 Inhibitor Ipragliflozin Has a Therapeutic Effect on Nonalcoholic Steatohepatitis in Mice」,PloS,2016は、ナトリウムグルコース共輸送体2阻害剤(例えばエンパグリフロジン)の、DIO−NASHマウスにおける作用について調査したことを記載している。
【0216】
実施例6:肝細胞のサンドイッチ培養
試薬および溶液
適切な細胞培地として、Waymouth’s MB−752/1、Ham’s F12、RPMI 1640、Dulbecco’s改変Eagle’s培地、Williams’培地E、Leibovitz’s L15、および改変Chee’s培地が挙げられる。IV型コラゲナーゼ、I型コラーゲン、パーコール、培地、および補助剤が、培地(例えば、血清、抗生物質、アミノ酸、ホルモン、例えばDEX、インスリン、および増殖因子)、潅流バッファ、および他の溶液に加えられて、市販され、または市販の材料から製造された。他のタイプのコラーゲン(II〜IV型)、ラミニン、フィブロネクチン、およびヘパリン硫酸プロテオグリカンを、サンドイッチ肝細胞培養に用いることができる。しかしながら、細胞を培養する際に、I型およびIV型コラーゲンが、フィブロネクチンおよびラミニンよりも優れていたことが示された。
【0217】
肝細胞の単離
肝細胞を単離するのに、ツーステップインサイチュコラゲナーゼ潅流法を利用する。簡潔に、肝細胞を雌ルイスラットから単離する。動物を麻酔する。肝臓を最初に、門脈を通してインサイチュで、潅流バッファで潅流する。潅流液は、肝臓に入る前に平衡化される。その後、肝臓を、潅流バッファ中コラゲナーゼで潅流する。肝臓を摘出して、氷冷した潅流バッファに移す。肝被膜を解し分けて(tease apart)、生じた細胞懸濁液を濾過する。細胞ペレットを遠心分離によって収集して、再懸濁させる。パーコールを懸濁液に加えて、パーコール密度遠心分離技術を用いて、肝細胞を分離する。ミクスチュアを遠心分離して、細胞ペレットを培地で2回洗浄する。肝細胞生存率を、トリパンブルー排除によって判定する。これ以外にも、フレッシュに単離した肝細胞の代わりに、低温保存した肝細胞を用いる。
【0218】
肝細胞のサンドイッチ培養
コラーゲンコーティングした組織培養プレート上で、単離した肝細胞を培養して、血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、表皮増殖因子、インスリン、グルカゴン、およびヒドロコルチゾンを補った培地中で維持する。I型コラーゲン溶液および培地を混合することによって、コラーゲンゲル化溶液を調製する。組織培養プレートをゲル化溶液でコーティングし、そして37℃でインキュベートして、ゲル形成を促進する。肝細胞を適切な密度で播種して、37℃にて維持する。培地を24時間毎に置き換える。
【0219】
サンドイッチ系について、培養の1日後、細胞を覆うように更なるコラーゲンゲル溶液を分配する。コラーゲンゲルの第2の層が、プレート全体をおおって平らに広がるのを確実にするように、培地を注意深く除去する。培養プレートを37℃にてインキュベートして、第2のゲル層のゲル化および付着が認められてから、培地を置き換える。培地は毎日変える。培地サンプルを、更なる分析用に、−20℃にて保存する。
【0220】
ゲル化したコラーゲンの層の間で培養された肝細胞は、インビボで観察されるのと類似する、三次元の立方体様の形状、および細胞骨格タンパク質の分布を維持する。
【0221】
胆細管ネットワーク形成の最適化
タウロコール酸塩の蓄積および胆汁排泄を最適化するために、特定の培地、例えばWilliams’培地EおよびDulbecco’s改変Eagle’s培地を、サンドイッチ肝細胞培養に用いることができる。
【0222】
被験物質
研究用に意図するFXRアゴニストは、「OCA」および6−エチルケノデオキシコール酸(6−ECDCA)としても知られているオベチコール酸である。
【0223】
実施例7:肝細胞からのグルコース放出に及ぼす被験物質の作用の評価
肝細胞の単離
断食の12時間後に、6ヵ月齢の雌のブタから肝臓を得る。組織を動物から収穫する。Seglen(Seglen,Methods in Cell Biol.13,29(1976))によって記載される手順に基づくツーステップインサイチュコラゲナーゼ潅流法の改変によって、肝細胞を単離する。動物を殺して15分以内に、肝臓の右葉を取り出してから、37℃の肝臓潅流培地で15〜20分間、続いて肝臓消化培地で20〜30分間、潅流する。肝細胞を、懸濁培地[5.5mMグルコースおよび1mMピルビン酸Naが入ったDMEM中、26.5mM NaHCO
3、8.99mM Na−HEPES、0.2%(wt/vol)BSA画分V、2.22mM D−フクルトース]中での消化した肝臓の穏やかな破壊によって単離して、200μmメッシュで濾過する。生じた細胞懸濁液を500rpmにて遠心分離して、上澄みを破棄する。細胞ペレットを、予め温めた(37℃)懸濁培地中に再懸濁させる。細胞生存率は、トリパンブルー排除法(Life Technologies,Grand Island,NY)を用いて評価すると、一貫して85%よりも高い。細胞計数を3反復実行して、平均値を得る。
【0224】
懸濁培養
単離の後直ちに、肝細胞を、グルコースもピルビン酸塩もない血清フリーDMEMで3回洗浄してから、600μlの同じ培地中に、50mlのコニカルチューブ中30×10
6/mlの細胞密度にて再懸濁させる。チューブを継続的に振盪しながら、単独で、または、濃度を増大させた、本出願の化合物(例えばOCA)、および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)と一緒に、10、20、そして40分間、37℃にてインキュベートする。各実験において、100nMグルカゴンによる刺激後のグルコース産生を、ポジティブコントロールとして用いる。
【0225】
インキュベーション期間の後、培地中に放出されるグルコースを、Trinderアッセイキット(Sigma)を用いて、グルコースオキシダーゼ法で判定して、全反復の結果を、Bio−Radタンパク質アッセイキットを用いて判定するタンパク質含有量について、正規化する。
【0226】
実施例8:肝細胞におけるグルコース代謝に及ぼす被験物質の作用の評価
細胞培養
以前に記載される(Brown et al.,Biochem.J.262,425(1989))ようにして、雄Sprague−Dawleyラット(200〜250g)から肝細胞を、肝臓のコラゲナーゼ潅流によって単離する。トリパンブルー排除によって評価する生存率は、ごく普通に90%を超える。6ウェルの、コラーゲンコーティングしたプレートに、10%(vol/vol)ウシ胎児血清を含有する2mLのDulbecco改変Eagle培地と共に、ウェルあたり10
6個の生細胞をロードする。1時間(この間、生細胞のみがプレートに付着した)後に、培地を(付着していない死細胞と共に)吸い出して、フレッシュな培地と置き換える。細胞を、最大48時間維持する(少なくとも1回、培地を24時間目に変える)。動物の手順は、米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)の人道的取扱い基準(humane care criteria)に従う。
【0227】
グルコース代謝
肝細胞グルコース代謝のパラメータを、本出願の化合物(例えばOCA)、および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)の不在下または存在下での18時間のインキュベーション後に、測定する。[5−
3H]−グルコースの存在下(6.5μCi/mL)での2時間の肝細胞のインキュベーション後、グルコース利用を、(脂肪酸酸化実験に関しての)トリチウム水の生産として判定する。2−[
3H]−デオキシグルコース(DOG;10μmol/L、0.5μCi/mL)の吸収を、各期間中、100nmol/Lインスリンを含めた、または含めないプレインキュベーションの30分後に、5分にわたって判定する(Perdomo et al.,J.Biol.Chem.279,27177(2004))。グリコーゲン中へのD−[
14C]−グルコース(2μCi/mL)の組込みを、1時間にわたって、インスリンの不在下または存在下で測定する(Perdomo et al.2004)。
【0228】
実施例9:肝細胞およびマウスにおける、グルコース代謝に及ぼす被験物質の作用の評価
細胞培養および一過性トランスフェクション
記載される(Wang et al.,Mol.Endocrinol.22,1622(2008))ようにして、ヒト肝芽腫細胞(HepG2)を、6ウェルプレート中に播種して(1×10
6細胞/ウェル)、完全培地[10%(vol/vol)不活化ウシ胎児血清および1%(vol/vol)抗生物質−抗真菌薬を与えた高グルコースDulbecco’s改変Eagle’s培地(L−グルタミン入り)]中で増殖させる。翌日、細胞を、本出願(例えばOCA)の化合物、および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)で処理する。処理の18時間後に、細胞を、TPA(50nM)、LPS(1μg/mL)、またはTNF−α(10ng/mL)で処理してから、6時間のインキュベーション後に、RNA単離のために収集する。
【0229】
Lipofectamine 2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、HepG2細胞の一過性トランスフェクションを実行する。特に明記しない限り、細胞を18時間、本出願の化合物(例えばOCA)、および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)で前処理する。細胞を、LPSもしくはTPA有り、または無しで処理する。6時間のインキュベーション後に、細胞を収穫して、デュアルルシフェラーゼリポータアッセイ系を用いて、メーカーの説明書(Promega,Madison,WI)に従って、ルシフェラーゼ活性を判定する。コントロールチミジンキナーゼ駆動レニラルシフェラーゼプラスミド、phRL−Tkのコトランスフェクションを介して、ルシフェラーゼ活性を正規化する。データを、非刺激セットの活性化に対する活性化の倍数として表す。
【0230】
マウス一次肝細胞培養
記載される(Huang et al.,Mol.Endocrinol.18,2402(2004),Huang et al.,J.Clin.Invest.113,137(2004),Qiao et al.,Mol.Biol.Cell 12,2629(2001))ようにして、8週齢のマウスから、一次肝細胞を調製する。細胞を、本出願(例えばOCA)の化合物、および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)で処理する。処理の18時間後に、細胞を、LPS(20μg/mL)、TPA(150nM)、またはTNF−α(10ng/mL)で処理してから、6時間のインキュベーション後に、RNA単離のために収集する。
【0231】
RNA単離および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
HepG2細胞、一次マウス肝細胞、およびマウス肝臓からの全RNA単離、ならびに定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、記載される(Yang et al.,Cancer Res.67,863(2007))ようにして、実行する。内部基準として、β−アクチンの増幅を用いる。
【0232】
動物
特に明記しない限り、8週齢のマウス用いる。野生型マウスおよびFXR
−/−マウスを、標準的な12:12時間の明/暗サイクル下の病原体フリー動物施設内で維持する。マウスに、標準的な齧歯類食および水を不断給餌する。8週齢の雌の野生型マウスおよびFXR
−/−マウスを、一晩断食させてから、LPS(20mg/kg)もしくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または本出願の化合物(例えばOCA)および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)の単回用量を腹膜内注射してから、水を不断給餌する。注射の6時間後に、マウスを殺して、血液および肝臓を、更なる分析用に取り出す。全ての手順は、ラボ動物の取扱いおよび使用についての国立衛生研究所のガイドラインに従った。
【0233】
実施例10:動物モデルにおける被験物質の作用の評価
インスリン抵抗性は、メタボリックシンドローム(MetS)において、脂肪組織(AT)機能障害を肝臓炎症および脂肪変性と関連付ける推定の重要な基礎的機構である。OCAが、インスリン抵抗性および代謝プロフィールを改善して、MetSの高脂肪食(HFD)誘導ウサギモデルにおける内臓AT(VAT)の量を著しく引き下げることが実証されてきた。免疫組織化学、ウエスタンブロット、およびRT−PCRによるVATおよび肝臓の分析により、脂肪細胞サイズ、低酸素症、ならびに、コントロール食に基づくウサギと比較して、HFDウサギから単離されるVATにおいて有意に増大する、ペリリピンおよび細胞質ゾルインスリン調節グルコーストランスポータGLUT4(SLC2A4)の発現を、インビボOCA投薬が正常化することが示されてきた。インビボOCA投薬はまた、HFDウサギにおける脂肪変性および炎症マーカーの発現を正常化する。
【0234】
MetSウサギモデル
以前に記載されるようにして(Filippi et al.,J.Sexual Med.6,3274(2009))、MetSのHFD誘導ウサギモデルを得る。約3kgの体重の雄New Zealand Whiteウサギにランダムに番号をつけて、2つの異なる群:12週間、コントロール食(CON)を給餌した未処理群、またはHFD(0.5%コレステロールおよび4%ピーナッツ油)を給餌した処理群に割り当てる。HFDウサギの亜群を、本出願の化合物(例えばOCA)および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)で処理する。用いるOCAの用量を、齧歯類における有効性、および実行する薬物動態学的分析に基づいて、選択してよい(Pellicciari et al.,J.Med.Chem.45,3569(2002))。また、本明細書中に記載するもの等の更なる治療剤の用量を、文献において公開されるように、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ)における有効性、および薬物動態学的分析に基づいて、選択してよい。
【0235】
全ての群において、ベースラインにて、そして12週目に、耳末梢静脈から血液サンプルを得る。以前に記載される(Filippi et al.2009)ようにして、平均動脈圧測定および経口グルコース負荷試験を、殺す前に実行する。処理の12週後、致死量のペントバルビタール(100mg/kg)を用いてウサギを殺して、肝臓、VAT(腸係蹄と腸間膜との間に蓄積)、および胆嚢の標本を、その後の分析用に注意深く摘出し、秤量し、収集し、そして処理する。全ウサギ群由来のVATサンプルを、前脂肪細胞の単離用に処理する。以前に記載される(Filippi et al.2009,Morelli et al.,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.132,80(2012),Vignozzi et al.,J.Endocrinology 212,71(2012))ようにして、生化学的分析およびホルモンによる血清分析を実行する。
【0236】
MetSの作用を評価するために、以下の要因の1つまたは複数の、ダミー変数としての存在を考慮するアルゴリズムを設計する:高血糖、高トリグリセリドレベル、高コレステロールレベル、高血圧、および内臓脂肪蓄積。各因子についてのカットオフを、CONウサギにおいて測定した、分析したパラメータの平均±2S.D.によって導き出す。3またはそれ以上の要因についての陽性が、MetSを示す。
【0237】
サンプルサイズ
MetSの発生の可能性をCON群において2.5%、そしてHFD群において可能性を60%とみなして(Filippi et al.2009,Vignozzi et al.,J.Sexual Med.8,57(2011),Vignozzi et al.2012,Maneschi et al.,J.Endocrinology 215,347(2012),Morelli et al.2012,Morelli et al.,Prostate 73,428(2013))、群間の割当て比率を1:1にして74頭のウサギを用いると、2つの処理群間でのMetSの進行速度の差異を区別するのに、100%に近い力が認められることとなる。MetSの発生の可能性を、HFDを供給した群において60%に等しく、そしてHFD、ならびに本出願の化合物(例えばOCA)および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)を供給した群において可能性を10%とみなして(Vignozzi et al.2011,Morelli et al.2012)、割当て比率を2:1にして54頭のウサギを用いると、2つの処理群間でのMetSの進行速度の差異を区別するのに、約95%の力が認められることとなる。
【0238】
VATの組織形態計測的分析
以前に記載される(Maneschi et al.2012)ようにして、脂肪細胞の直径を測定するために、フリーソフトウェアプログラムImageJ(NIH,Bethesda,MD、米国)を備えるNikon Microphot−FXA顕微鏡(株式会社ニコン、東京、日本)を用いて、脂肪細胞が一様に球形であるとみなして、ヘマトキシリンおよびエオシン染色によって、VAT標本を分析する。
【0239】
低酸素症の検出および免疫組織化学
以前に記載される(Maneschi et al.2012,Morelli et al.2012,2013,Vignozzi et al.2012)ようにして、生体内還元性薬物ピモニダゾール塩酸塩(hypoxyprobe−1、60mg/kg)を用いて、殺す1時間前にi.p.注射して、VAT酸化を分析する。
【0240】
ウエスタンブロット分析用の総および膜/細胞質ゾル画分の調製
VATサンプルからのタンパク質抽出のために、凍結した組織を液体窒素中ですり潰して、2つのアリコートに分割する:一方が総タンパク質抽出用、そして他方が膜/細胞質ゾル調製用。ProteoExtract subcellular proteome抽出キット(Calbiochem−Merck KGaA,Darmstadt、ドイツ)を用いて、メーカーの説明書に従って、膜画分および細胞質ゾル画分を調製する。タンパク質抽出物を、BCA試薬(Pierce,Rockford,IL,米国)で定量化して、各サンプルの15mgを、10%SDS−PAGEによって分析する。以前に記載される(Maneschi et al.2012)ようにして、抗グルコーストランスポータ4型(GLUT4)抗体(Upstate Biotechnology,Lake Placid,NY、米国)および抗ペリリピン抗体(Santa Cruz Biotechnology,Inc.)によるウエスタンブロット分析を実行する。抗アクチン抗体(Santa Cruz Biotechnology,Inc.)で膜を再プロービングすることによって、等しいタンパク質ローディングを確認する。Adobe Photoshopソフトウェアを用いて、バンド強度の濃度測定分析を実行する。
【0241】
肝臓の組織学
肝臓の脂肪変性を、肝臓切片のOil Red O染色によって評価する。凍結した切片をクリオスタット内でカットして、4%パラホルムアルデヒド中で室温(RT)にて20分間固定する。次に、切片をイソプロパノールで2〜5分間処理して、Oil Red Oで20分間染色する。ストック溶液(100mlイソプロパノール中0.3gOil Red O)を水で希釈(3:2)してから濾過することによって、Oil Red Oを調製する。Oil Red O染色後に、肝細胞核を強調するために、切片を水中で数回洗浄して、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。最後に、切片を写真に撮って、Adobe Photoshopソフトウェアを用いたバックグラウンド除去後に、Oil Red O陽性のコンピュータ支援定量化を行う。
【0242】
肝臓切片中の炎症性マーカーについての免疫組織化学
肝臓切片を、種々の炎症性マーカー(例えば、TNFα、Cd68、Il−6、Il−1b、およびIl−12)に対する一次抗体と、48℃にて一晩インキュベートする。切片をPBS中でリンスして、ビオチン化された二次抗体と、その後ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体とインキュベートする(Ultravision large volume detection system anti−polyvalent,Lab Vision,Fremont,CA、米国)。反応産物を、クロモゲンとしての3’,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(Sigma−Aldrich)で現像する。一次抗体を除くことによって、コントロール実験を実行する。Nikon Microphot−FXA顕微鏡を用いて、スライドを評価して、写真に撮る。Adobe Photoshopソフトウェアを用いたバックグラウンド除去後に、炎症性マーカーに対する染色のコンピュータ支援定量化を行う。
【0243】
ウサギ内蔵脂肪の前脂肪細胞の単離、特徴付け、および分化
以前に記載される(Maneschi et al.2012)ようにして、VATからのウサギ前脂肪細胞(rPADs)の単離を実行する。簡潔に、VATサンプルを、1mg/mlのコラゲナーゼ2型(Sigma−Aldrich)で1時間消化して、赤血球溶解バッファ(155mM NH
4Cl、10mM KHCO
3、および0.1mM EDTA;室温にて10分)で処理してから、2000gで室温にて10分間遠心分離して、完全培地(10%ウシ胎児血清(FB)、100mg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリン、2mM L−グルタミン、および1mg/mlアンホテリシンBを含有するDMEM;Sigma−Aldrich)中に再懸濁させて、150mmのメッシュフィルタで濾過して、残渣を除去する。最後に、細胞を、完全培地中で、95%空気−5%CO
2の加湿雰囲気下で37℃にて培養する。継代0(P0)でのサブコンフルエント(細胞培養皿の90%)な均質の線維芽細胞様細胞集団が、培養の4〜5日後に得られる。サブコンフルエントな細胞をトリプシン処理して、細胞培養皿内にプレーティングする(P1)。全ての実験について、P1培養体のみを用いる。各実験群について、少なくとも3つの異なるrPAD調製体を用いて、実験を繰り返す。以下の結合モノクローナル抗体:以前に記載される(Maneschi et al.2012)、CD34−PE、CD45−FITC、CD31−FITC、CD14−PE、CD90−PE、CD106−FITC(BD Pharmingen,San Diego,CA、米国)、およびCD105−PE(Ancell,Bayport,MN、米国)によるフローサイトメトリによって、rPADを特徴付ける。コンフルエンスの2日後(0時)に、5%stripped FBSを補ったDMEM中5mg/mlインスリン、1mMデキサメタゾン、および0.5mM3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)を含有する分化ミクスチュア(DIM)にrPADを8日間曝すことによって、rPADの分化を誘導する。培地を48時間毎に置き換えてから、細胞を48時間、5mg/mlのインスリンを含有する培地中に移す。
【0244】
グルコース吸収
以前に記載される(Maneschi et al.2012)ようにして、rPADによるグルコース吸収を測定する。DIMに曝したrPADを、血清フリー培地内で24時間培養してから、グルコースフリーKrebsリン酸バッファ(2.5mmol Ca
2Cおよび1mg/ml BSA)中に希釈するインスリンの濃度を引き上げて(1、5、10、および50nM)インキュベーションして、インスリン依存性の刺激を評価する。インキュベーション期間の終了後、rPADをさらに、
3H−2−デオキシ−D−グルコース(16mM(1mCi/ml);ICN Pharmaceuticals,Costa Mesa,CA、米国)と5分間インキュベートする。細胞をPBSで洗浄して、0.5M NaOHで溶解して、β−カウンター(Perkin−Elmer)を用いたシンチレーション分光測定法によって、組み込まれた放射活性を測定する。データを、タンパク質含有量で正規化する。
【0245】
統計学的分析
指定するように、n実験についての平均+S.E.M.として、結果を表す。群間の差を評価するために、一元配置ANOVA検定に続くTukey−Kramer事後分析によって統計学的分析を実行し、P<0.05が有意であるとみなす。Spearman法を用いて相関を評価し、Statistical Package for the Social Sciences(SPSS,Inc.)for Windows(登録商標) 15.0により統計学的分析を実行する。適切な場合はいつでも、段階的多重線形回帰を多変量解析に用いる。コンピュータープログラムALLFITを用いて、半最大反応作用濃度(EC
50)値および最大作用(E
max)値を算出する。
【0246】
実施例11:動物モデルにおける被験物質の作用の評価
実験動物および食餌
動物を、12:12時間の明暗サイクルで、22℃の標準的なケージ内に個々に収容する。約7週齢の雄C57BL6(B6)マウスまたはLep
ob/Lep
obマウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbour,ME)から購入する。試験食を、Research Diets(New Brunswick,NJ)から供給する。NASHを誘導するために、高脂肪(40%kcal)および高フルクトース(22wt%)で構成される食餌を試験する。ここで、脂肪源は、トランス脂肪である(部分的に水素添加された植物油ショートニングのプレミックス、cat.no.D09100301)。フルクトースもコレステロールも含まない低脂肪食(10%kcal/脂肪)を、コントロール食として用いる(cat.no.D09100304)。HTF食がNASHの誘導に優れていると考えて、その後の研究に利用する。
【0247】
研究および薬物投与
これらの食餌に基づくNASHの進行を特徴付けるために、低脂肪食(LFD)、高トランス脂肪、高フルクトース、高コレステロール食(HTF)、または高ラード脂肪、高フルクトース、高コレステロール食(HLF)のLep
ob/Lep
obマウスまたはB6マウスをそれぞれ、8または12週間維持する。マウスに、ビヒクル(滅菌水中50%DMSO)または本出願の化合物(例えばOCA)および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)を送達する単一の浸透圧ミニポンプ(model 2004;Alzet,Cupertino,CA)を皮下移植する。加えて、または代わりに、マウスに、ビヒクル、または本出願の医薬組成物を、経口強制飼養を介して1日1回投与してよい。体重を毎週測定する。体組成を、ベースライン(ポンプ注入の前日)にて、そして終了時に、NMR(Echo Medical Systems,Houston,TX)によって測定する。
【0248】
肝臓エンドポイントに及ぼす体重損失の影響を評価するために、先に記載するLFD食またはHTF食に曝したLep
ob/Lep
obマウスにおける最初の研究を繰り返す。LFD食またはHTF食に基づく8週後に、全マウスに、本出願の化合物(例えばOCA)および少なくとも1つの更なる治療剤(例えば、本明細書中に記載するもの)を8または12週間、経口投与する。
【0249】
終了後、肝臓組織を摘出して、10%中性緩衝ホルマリン内で(室温にて少なくとも7日)固定する。次に、肝臓組織をパラフィン包埋して、切片化して、マウントして、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色することにする。線維症を視覚化するために、切片の別のセットを、Sirius Red(Sigma−Aldrich,St Louis,MO)で染色する。切片を最初に、ワイゲルト鉄へマトキシリンで、続いてビーブリッヒスカーレット、リンタングステン酸/リンモリブデン酸、およびアニリンブルー処理で染色する。切片の第2のセットを、マクロファージマーカーMac−2(Cedarlane Laboratories,Burlington,NC)を標的とする抗体を用いて、標準的なプロトコルに従って免疫染色する。全ての組織学的分析を、処理条件について盲検化された病理医が行う。
【0250】
Folch et al.(J.Biol.Chem.226,497(1957))を改変したプロトコルを用いて、総肝臓脂質を肝臓から抽出する。おおよそ0.5gの凍結した肝臓組織を、10mlの2:1クロロホルム/メタノール溶液中でホモジナイズする。脂肪フリー紙を用いて、ホモジェネートを濾過して、予め計量した15mlのガラス遠心管に送る。次に、更なる5mlの2:1クロロホルム/メタノール溶液に続いて、2.5mlの0.9%NaClを加える。その後、濾過した抽出物を混合して、2,000rpm、10℃にて5分間遠心分離する。水層を破棄して、脂質ペレットが乾燥するまで、チューブを窒素でフラッシュする。脂質ペレットを含有するチューブを秤量して、出発肝臓のグラムあたりの抽出総脂質を算出する。
【0251】
ウエスタンブロット分析用に、摘出した肝臓組織を秤量してから、液体窒素中で急速凍結して、処理するまで−80℃にて保存する。タンパク質を、各肝臓のフラグメントから以下のように単離する。凍結した肝臓組織をドライアイス上で破砕してから、プロテアーゼ阻害剤により溶解バッファ中でホモジナイズする(cat.no.05892791001;Roche Complete Tablets;および0.6mM PMSF)。一掃した上澄みのタンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce,Rockford,IL)で測定する。肝臓組織溶解物(50μg)を、メーカーのプロトコル(Invitrogen,Carlsbad,CA)に従って、還元Nupageゲル上で分離して、PVDF膜に移す。50kDaと60kDaのマーカー間で膜をカットして、5%Blottoでブロックする;上半分を抗コラーゲン1型(1:350;cat.no.NBP1−30054;Novus Biologicals,Littleton,CO)で、そして正規化用に、下半分を抗GAPDH(1:10,000;ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合;cat no.3683;Cell Signaling Technologies,Danvers,MA)でプロービングする。ホースラディッシュペルオキシダーゼ抗ウサギ抗体とのインキュベーション後に、タンパク質発現を、増強化学ルミネセンス(Pierce)により検出する。FluorChem System(Cell Biosciences,Santa Clara,CA)を用いて、濃度測定を実行する。
【0252】
組織遺伝子発現
終了後、肝臓を摘出して、秤量して、液体窒素中で急速凍結して、保存する(−80℃)。TRI試薬(Ambion,Austin,TX)を用いて、RNeasyカラム(Qiagen,Chatsworth,CA)により、全RNAを抽出して、RETROscript RT−PCR逆転写系(Ambion)を用いて、cDNAを生じさせる。NASH病理に関与する遺伝子(例えば、脂肪変性、炎症、および線維症に関与する遺伝子)についての定量的リアルタイムPCR(ABI PRISM 7900 Sequence Detection System;Applied Biosystems;Foster City,CA)。Taqman gene expression assays−on−demandおよびUniversal PCR master mix(Applied Biosystems)を用いて、アッセイを実行することができる。
【0253】
血漿ホルモンおよび代謝物質の分析
Olympus AU400e Bioanalyzer(Olympus America Diagnostics,Center Valley,PA)を用いて、血漿グルコース、トリグリセリド、総コレステロール、ALT、およびアスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルを測定する。血漿サンプルを、標準曲線の範囲内でのALTおよびASTの検出のために、PBSで1:10に希釈する。総血漿アディポネクチンを、市販のELISAを用いて、メーカーの説明書に従って(Millipore,Billerica,MA)測定する。